説明

マンホール型の災害用トイレ

【課題】耐荷性に優れるとともに所望の箇所に不具合なく設置可能なマンホール型の災害用トイレを提供する。
【解決手段】地中に埋設しておき、災害発生時に利用するマンホール型の災害用トイレTであって、コンクリートにより一体成型された直壁11と、この直壁の下端に設けられた底版12とを備え内部に屎尿貯留空間Sを形成するマンホール1を具備してなり、前記屎尿貯留空間Sの上方に屎尿投入用の投入口3を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難場所に予め敷設され、災害発生時に利用されるマンホール型の災害用トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
地震や洪水等の災害によって、建物や住居などの施設機能の低下や、ライフラインのうちの上下水道の損傷により、水洗などのトイレが使用できなくなる場合がある。その際、被災直後の避難住民及び地域住民の健康と衛生を守るため、防災公園等に非常用トイレが建設される。
【0003】
従来は、このような非常用トイレとして、防災公園の芝生部分に、頂版の開口部にマンホール蓋を設けた通常のボックスカルバート製品を複数横連結し、両端を閉塞版で閉塞して便槽とし、使用時にはマンホール蓋の代わりに便器を設置して使用するもの(従来例1)がある。
【0004】
また、地下に埋設された既設の下水道管と直結する直径300mm程度の塩化ビニル管等を地表面まで立ち上げ、その開口に汚水蓋を設置し(下水道直結流下式)、使用時には汚水蓋の代わりに便器を設置して使用するもの(従来例2)がある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
さらには、地下部に独立した壺状のFRP製便槽と、そのFRP製便槽の蓋として地表面にマンホール蓋を設置した(独立便槽方式)ものを必要個数埋設し、使用時にはマンホール蓋の代わりに便器を設置して使用するもの(従来例3)がある。
【0006】
従来例1のような場合には、対象人数により算定された必要容量を有する複数のボックスカルバートを連結することとなる。これらボックスカルバートは、大型車両の荷重にも対応できるため、防災公園内の道路下に設置することができるものである。このため、車椅子での使用も可能である。しかしながら、従来例1の場合は、通常のボックスカルバートの頂版に開口を設けただけで、便槽内の排出物を集めることができず清掃が困難なものであった。
【0007】
従来例2の場合には、既設の下水道管の上部にのみ必要個数の便器を設置する形態となる。この形態は汲み取り式ではないので使用後の清掃は容易であり衛生的にも問題はないが、使用時のプライバシーを守るトイレテント、便器等の必要物資の備蓄倉庫を既設の下水道管とは別個に併設する必要がある。また、地下災害で下水道管が損傷している場合は使用することができない。さらに、このようなものは防災公園周辺に多数設置できないといった問題がある。しかも、従来例2の場合には、大型の車両の荷重に対応できるものではないため、緑地帯内に設置されることとなり、結果として車椅子での使用が難しいものとなる。
【0008】
従来例3の場合には、必要数の便槽を防災公園内に掘削・埋設する形態となる。このものでは、使用時のプライバシーを守るためのトイレテントや、便器等の必要備蓄物資をFRP製便槽内に収納することはできる。しかしながら、FRP製の便槽は軽量であるため、災害時に地下水位が上昇したり、地盤の液状化が生じたりした際には、便槽が浮き上がって使用できない場合がある。さらに、FRP製の便槽は、大型の車両の荷重には対応することができず、緑地帯内に設置されることとなるため、車椅子での使用が難しい。また、槽内の臭気が籠もるものの、これまでは臭気を抑制するため具体的な対策がなされていなかったため、使用者に不快感を与えるものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−337397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも耐荷性に優れるとともに所望の箇所に不具合なく設置可能なマンホール型の災害用トイレを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明のマンホール型の災害用トイレは、地中に埋設しておき、災害発生時に利用するマンホール型の災害用トイレであって、コンクリートにより一体成型された直壁と、この直壁の下端に設けられた底版とを備え内部に屎尿貯留空間を形成するマンホールを具備してなり、前記屎尿貯留空間の上方に屎尿投入用の投入口を設けたことを特徴とする。
【0012】
このようなものであれば、従来から下水道の面整備に使用されてきた製品であるマンホールを利用するものであるので、耐震性、水密性及び耐荷性に優れたものとなる。しかも、この災害用トイレは、コンクリートにより一体成形された直壁を有するマンホール型のものであるので、コンクリートによる独立便槽をなし、既設の下水道管等を必要としないものとなり、特に耐荷性を有することにより防災公園内の道路下に設置することができるなど、所望の箇所に不具合なく設置することができるものとなる。
【0013】
前記投入口としては、前記屎尿貯留空間の上方に蓋着されたマンホール蓋に開閉可能に形成されたものや、前記屎尿貯留空間の上方に蓋着されたマンホール蓋に代えて装着される便器に形成されたものを挙げることができる。
【0014】
マンホールとしては、前記直壁と前記底版とがコンクリートにより一体成型されているものがある。
【0015】
使用後の汲み取りをより容易なものとするには、前記底版に、屎尿汲み取り用のピットを設けているものが好ましい。
【0016】
前記直壁としては、円筒状をなすものや四角筒状をなすものを挙げることができる。
【0017】
マンホールの具体的な構成としては、前記直壁の上端に連続する斜壁を具備しているものを挙げることができる。
【0018】
前記底版が、平面視において前記直壁よりも外方に延出した張り出し部を備えたものであれば、地震時に地盤が不安定になった際にも、安定して地中に保持されるものとなる。特に、地盤が液状化した場合などには、前記張り出し部に、上下に貫通する貫通孔を有しているものとすれば、浮き上がりを好適に抑制するものとなる。
【0019】
災害時における使用者の快適な利用に供するには、前記屎尿貯留空間に、屎尿のはね上がり防止用のネットを配しているものや、前記屎尿貯留空間に、防臭用の防臭剤を配しているものが好ましい。
【0020】
使用後におけるメンテナンス性を高めるには、前記底版が、樹脂塗料によりコーティングされているものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、耐荷性に優れるとともに所望の箇所に不具合なく設置可能なマンホール型の災害用トイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態(第一実施形態)を示す平面図。
【図2】同実施形態を示す図1におけるA−A線側断面図。
【図3】同実施形態における使用時の態様を示す平面図。
【図4】同実施形態を示す図3におけるB−B線側断面図。
【図5】他の実施形態(第二実施形態)を示す平面図。
【図6】同実施形態を示す図5におけるC−C線断面図。
【図7】さらに他の実施形態(第三実施形態)を示す概略側断面図。
【図8】さらに他の実施形態(第四実施形態)を示す概略側断面図。
【図9】さらに他の実施形態(第五実施形態)を示す概略側断面図。
【図10】さらに他の実施形態(第六実施形態)を示す平面図。
【図11】同実施形態を示す図10におけるD−D断面図。
【図12】さらに他の実施形態(第七実施形態)を示す概略側断面図。
【図13】さらに他の実施形態(第八実施形態)を示す概略側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態(以下、説明の便宜上、「第一実施形態」という。)を、図1〜4を参照して説明する。なお、図1及び図2では不使用時の状態(災害等が無く使用されない状態)のものを示しており、図3及び図4では使用時の状態(災害発生時に使用可能にした状態)のものを示している。また、図1及び図3では、説明の便宜上、地盤Lを省略して示しており、図4では使用時の状態として、地盤L上に、トイレテントN1を付加したものを示している。
【0024】
このマンホール型の災害用トイレTは、主として災害時に利用できるようにしたもので、例えば、避難場所の植栽地や道路下などの地中に予め埋設されるものである。そして、災害が発生してから通常の生活インフラが復旧するまでの一定期間に限り、使用者である避難者等の利用に供するものである。
【0025】
災害用トイレTは、コンクリートにより一体成型された直壁11と、この直壁11の下端に設けられた底版12と、前記直壁11の上端に連続する斜壁13とを備え、これら直壁11、底版12及び斜壁13によって屎尿を貯留するための屎尿貯留空間Sを形成してなるマンホール1を主体に構成されている。
【0026】
マンホール1は、屎尿を貯留するための便槽を形成するプレキャストコンクリート製のもので、直壁11と、底版12と、斜壁13とを鉛直方向にボルト等で連結してなるものである。
【0027】
直壁11は、プレキャストコンクリート製の円筒状をなすものである。直壁11の下端部は、水の浸入を防ぐべくシール剤(図示せず)等を介して前記底版12の周縁近傍の上面部に緊密に接続される。
【0028】
底版12は、プレキャストコンクリート製のもので、平面視円形状をなしており、その外周縁121は直壁11の外面111よりも外側に若干延出している。底版12の上面122は、使用後のメンテナンス性を高めるべく、樹脂塗料(図示せず)を塗布することによりコーティングされている。
【0029】
斜壁13は、プレキャストコンクリート製のもので、直壁11の上端部から連続して上方に延びるもので、上方に向かって漸次その開口幅が狭くなるように形成されている。斜壁13の上端には円形状の開口Kが形成され、この円形状の開口Kの開口縁部131に調整リングRを介してマンホール蓋2が設けられる。斜壁13は、直壁11の上端部から斜め上方に延びており、平面視において斜壁13の開口縁部131の一部分が、直壁11における開口縁部112の一部分の略鉛直上に位置するように設定されている。このようにすることで、メンテナンス時に作業者が容易に内部へアクセスできるようにしている。例えば、必要時には梯子(図示せず)等を設置することも可能であり、一般的には足掛け金具が設置されている。
【0030】
斜壁13の下端部は、水の浸入を防ぐべくシール剤(図示せず)等を介して前記直壁11の上端部に緊密に接続される。
【0031】
前記直壁11、底版12及び斜壁13により囲繞された領域には、屎尿を貯留するための屎尿貯留空間Sが形成される。屎尿貯留空間Sは、災害時において約100人の使用者が3日間程度利用することができる大きさに設定されている。しかして、屎尿貯留空間Sの上方に屎尿投入用の投入口3が設けられている。なお、不使用時において、前記屎尿貯留空間Sには、使用時のプライバシーを守るためのトイレテントN1や後述する防臭剤7や便器(図示せず)等の必要備蓄物資Nが収納されており、不使用時において、屎尿貯留空間Sは、必要備蓄物資Nを備蓄するための備蓄倉庫としての機能を発揮している。
【0032】
第一実施形態では、前記屎尿投入用の投入口3が、前記屎尿貯留空間Sの上方に蓋着されたマンホール蓋2に開閉可能に形成されている。
【0033】
マンホール蓋2は、金属製やFRP製の円形盤状をなすもので、雨水等が内部に進入することを回避するため、シール性に優れた完全密閉蓋を採用している。このマンホール蓋2は、使用時において中央部に屎尿投入用の投入口3が形成される蓋本体21と、不使用時には前記投入口3を閉塞するとともに使用時には前記蓋本体21から離脱される内蓋22とを具備してなる。災害用トイレTは、地中に埋設されるものであるが、より詳しく言えば、地盤Lの表面LSに、マンホール蓋2の上面が略面一になるように埋設される。
【0034】
以上説明するような構成をなす災害用トイレTは、災害が発生した場合には次のようにして使用者が使用可能な状態に設営される。すなわち、まず地盤Lの表面LSに略面一に位置しているマンホール蓋2を、マンホール1から取り外し、続いて、屎尿貯留空間Sに収納されたトイレテントN1などの必要備蓄物資Nを取り出す。その後、内蓋22が取り外され、投入口3が形成されている蓋本体21をマンホール1に取り付ける。そして、投入口3の周囲に、トイレのスペースを区画して使用者のプライバシーを守るためのトイレテントN1を設立する。また、投入口3の開口縁には、使用者に対して視覚的に恐怖感を感じさせないようにする等の目的で、図示しない開口縁カバーが取り付けられる。
【0035】
しかして、災害用トイレTは、一定期間の利用に供した後は使用前の状態に戻される。すなわち、屎尿貯留空間S内に溜まった屎尿が汲み取られ、しかる後に清掃が行われ、その後再び必要備蓄物資Nを屎尿貯留空間S内に収納することにより、使用前の状態に戻される。
【0036】
このように、第一実施形態に係る災害用トイレTは、プレキャストコンクリートを用いて形成されたマンホール1により、使用時には1人の使用者のみが占有するようにした、いわゆるシングルタイプの便槽を構築している。このため、従来から下水道の面整備に使用されてきた製品を応用するものであるため、耐震性、水密性、耐荷性に優れたものとなる。また、災害用トイレTは、左右方向に延びる下水道管等に連結する構成としないもの、換言すれば、独立した汲み取り式タイプの便槽を備えたものであり、構造上耐震性に優れ、地震災害時でも問題なく利用することができる。
【0037】
また、マンホール1が、コンクリート製のものであり一定の重量を備えているので、安定的に地中に設置されるものとなる。このため、地震等により地盤が液状化した場合でも、浮き上がりの発生を好適に抑制することができる。
【0038】
マンホール1が、コンクリート製のものであるため、大型車両にも対応できる堅牢な構造をなし、防災公園内の道路下に設置することができる。換言すれば、消防車等の大型車両に対する耐荷性を有したものであり、防災公園内の道路下にも設置することができるとともに車椅子使用者も利用することができるものとなる。より詳しく言えば、第一実施形態における非常用トイレTは、防災公園内の緑地帯内だけでなく園内道路にもなんら不具合なく設置することができるものとなり、非常用トイレTの設置箇所の選択肢が大幅に広がるものとなる。
【0039】
マンホール蓋2は、完全密閉蓋を使用しているので、雨水や地下水の便槽内への進入を完全に防止することができ、計画通りに便槽を使用することができるものとなる。
【0040】
便槽内の底版12を樹脂塗料によりコーティングしているので、使用後の便槽内の清掃をより効率的に行うことができる。
【0041】
なお、本発明は、以上に詳述した第一実施形態に示されるものに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変更が可能である。
【0042】
例えば、マンホールを構成する底版の形状は、上述した第一実施形態に限定されるものではない。
【0043】
ここで、図5及び図6に示すものは、第二実施形態である災害用トイレT2における底版12aを説明するための平面図及び側断面図(いずれも不使用時の状態)である。図5では、説明の便宜上、地盤Lを省略して示している。なお、以下に述べる第二実施形態から第八実施形態の説明において、前述した第一実施形態と同一若しくは同等の構成部分については、同一の符号を用いるものとし、説明を省略する。
【0044】
図5及び図6に示すように、底版12aは、平面視において直壁11よりも外方に延出した張り出し部123を備えたものである。このような構成であれば、地盤Lが地震等により液状化したり、地盤L内の地下水位が上昇したりした場合でも、張り出し部123により、地盤L内におけるマンホール1の上下方向の移動が規制され、マンホール1の浮き上がりをより確実に抑制することできるものとなる。
【0045】
また、図5及び図6に示す実施形態では、底版12aの張り出し部123に、上下方向に貫通する貫通孔124を複数穿設している。このような構成であれば、張り出し部123に設けられた複数の貫通孔124に液状化した土や地下水などを通過させることができ、マンホール1の浮き上がりをさらに抑制することができるものとなる。
【0046】
第一実施形態では、直壁と底版とが別体であるものを示していたが、かかる態様に限定されるものではない。
【0047】
ここで、図7に示すものは、第三実施形態である災害用トイレT3の側断面図(不使用時の状態)である。このものは、前記直壁11bと前記底版12bとがコンクリートにより一体成型されている。このようなものであれば、コンクリート一体成型の構造により水密性が向上するとともに施工性も向上するものとなる。
【0048】
第一実施形態では、底版が略平板状のものを示していたが、かかる態様に限定されるものではなく、例えば、屎尿汲み取りに便宜な種々の対策を講じても良い。
【0049】
ここで、図8及び図9では、第四実施形態である災害用トイレT4(いずれも使用時の状態)を示している。すなわち、図8及び図9に示すものでは、便槽の下部、具体的には底版12に、屎尿汲み取り用のピットPが設けられている。このようなものであれば、底版12にピットPを有するものとすることができ、換言すれば、底版12が、ポンプによる屎尿汲み取り時に便宜となる窪みを備えたものとなり、汲み取り作業を効率化することができるものとなる。
【0050】
各図に示すものをより具体的に説明すると、図8に示すものは、底版12の上面122の略中央部近傍に図示しない屎尿汲み取りポンプの先端を位置付けるようにするため、底版12の上面122に、ピットPを形成するための台版125が、底版12の中央部分を避けるようにして設けられている。台版125は、その外周面125aが直壁11の内周面113に当接する大きさに設定されている。また台版125は、側断面視において外方に向かってその高さ寸法が高くなるように形成されている。このため、便槽の下部中央付近が屎尿汲み取りに便宜となる凹んだ形状となっている。
【0051】
また、図9に示すものは、ピットP2を形成するための他の実施形態を示している。すなわち、第五実施形態である災害用トイレT5は、底版12cが中央部に上下方向に貫通する貫通孔126を形成している。そして、貫通孔126を有した底版12cの下面に、上面側中央部分にピットP2が形成されたピット部材PBを取り付けている。ピット部材PBは、底版12bの貫通孔126の開口縁に略対応する開口部を備えた有底穴、すなわち、下方に向かうにつれて開口幅が漸次幅狭になるように形成された凹み部分であるピットP2を備えている。このため、便槽の下部中央付近が屎尿汲み取りに便宜となる凹んだ形状となっている。このピットP2は、必要に応じて樹脂塗料によりコーティングがなされる。
【0052】
第一実施形態では、直壁が円筒状であるものを示していたが、かかるものに限定されるものではない。
【0053】
図10及び図11に示すものは、第六実施形態である災害用トイレT6の平面図及び側断面図(いずれも使用時の状態)である。なお、図10においてトイレテントN1や地盤Lは省略して示している。このものは、直壁11dが、側方に連通孔を有しておらず、略四角筒状をなしており、全体として桝型をなすマンホール1aを形成している。直壁11dの上端部には、プレキャストコンクリート製の略矩形状をなす頂版14が取り付けられている。また、この頂版14の左右二箇所にマンホール蓋2を設置可能な開口K2が形成されている。このようなものであれば、既存の製品である角型マンホールを応用するものであるため施工性が向上するものとなる。しかも、図10及び図11に示すように、全体をコンパクトな桝形状としながらも二人の使用者がプライバシーを保ちつつ同時に使用可能な形態を実現しており、大きな容量の屎尿貯留空間Sを備えた二人用の災害用トイレT6を比較的容易に設置することができるものとなる。なお、図11に想像線で示すように、不使用時の状態では、必要備蓄物資Nを複数収容することができるため、備蓄倉庫としての機能に優れている。また、第六実施形態に示すものは、直壁11dと底版12dとがコンクリートにより一体成型されているため、水密性が向上するとともに施工性も向上するものとなる。
【0054】
第一実施形態では、マンホール1に、使用者の不快感を抑制するための手段を講じているものではなかったが、使用者の不快感を好適に抑制するための手段を適宜講じて良いのはもちろんのことである。
【0055】
図12に示すものは、第七実施形態である災害用トイレT7(使用時の状態)を示しているが、このものは、屎尿貯留空間Sに、屎尿のはね上がりを防止するためのネット6を配している。図12に示すように、ネット6は、その端部が直壁11の対向する内周面113にそれぞれ取り付けられ、屎尿貯留空間Sにおける使用者の屎尿が通過し得る領域に設けられるようにしており、具体的には、直壁11の対向する内周面113間に適宜の方法により架設されるものである。ネット6は、約10cm四方の網目を有するものなどが好適に用いられるが、これに限定されるものではなく、種々の大きさの網目のネット6を用いることができる。このようなものであれば、使用時の屎尿のはね上がりが好適に抑制されるものとなり、使用者の不快感を低減することができるものとなる。このネット6は、不使用時においては、前述した必要備蓄物資Nとして、屎尿貯留空間Sに収納されている。
【0056】
また、図13に示すものは、第8実施形態である災害用トイレT8(使用時の状態)を示しているが、このものは、屎尿貯留空間Sに、防臭用の防臭剤7を配している。図13に示すように、防臭剤7は、マンホール1における斜壁13の内側面に取り付けられるもので、屎尿貯留空間Sに籠る臭気を抑制し、使用時における使用者の不快感を低減することができるようにしている。より具体的に説明すれば、防臭剤7はボックスタイプのものであり、使用時に包装フィルムを取り除く等により防臭機能を発揮できるようにしたものである。防臭剤7は、斜壁13の内側面に設けたボルトVに引っ掛けられ、屎尿貯留空間S内に吊るされて配設される。このようなものであれば、防臭剤7が屎尿の臭気を低減、抑制することにより使用時における使用者の不快感を低減することができるものとなる。防臭材7は、不使用時においては、前述した必要備蓄物資Nとして、屎尿貯留空間Sに収納されている。
【0057】
第一実施形態では、マンホール蓋2に、屎尿投入用の投入口を設けているものを示していたが、かかる態様に限定されないのはもちろんのことである。例えば、屎尿投入用の投入口が、前記屎尿貯留空間の上方に蓋着されたマンホール蓋に代えて装着される便器に形成されたものであってもよい。
【0058】
本発明は、以上に説明した各第一実施形態〜第八実施形態の構成を適宜組み合わせて構成して良いのはもちろんのことである。
【0059】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1(1a)…マンホール
2…マンホール蓋
3…投入口
6…ネット
7…防臭剤
11(11b、11d)…直壁
12(12a、12b、12c、12d)…底版
13…斜壁
14…頂版
21…蓋本体
22…内蓋
111…外面
113…内周面
121…外周縁
122…上面
123…張り出し部
124…貫通孔
125…台版
126…貫通孔
K(K2)…開口
L…地盤
LS…表面
N…必要備蓄物資
N1…トイレテント
P(P2)…ピット
PB…ピット部材
R…調整リング
S…屎尿貯留空間
T(T2〜T8)…災害用トイレ
V…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設しておき、災害発生時に利用するマンホール型の災害用トイレであって、
コンクリートにより一体成型された直壁と、この直壁の下端に設けられた底版とを備え内部に屎尿貯留空間を形成するマンホールを具備してなり、前記屎尿貯留空間の上方に屎尿投入用の投入口を設けたことを特徴とするマンホール型の災害用トイレ。
【請求項2】
前記投入口が、前記屎尿貯留空間の上方に蓋着されたマンホール蓋に開閉可能に形成されたものである請求項1記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項3】
前記投入口が、前記屎尿貯留空間の上方に蓋着されたマンホール蓋に代えて装着される便器に形成されたものである請求項1記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項4】
前記直壁と前記底版とがコンクリートにより一体成型されている請求項1、2又は3記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項5】
前記底版に、屎尿汲み取り用のピットを設けている請求項1、2、3又は4記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項6】
前記直壁が、円筒状をなすものである請求項1、2、3、4又は5記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項7】
前記直壁の上端に連続する斜壁を具備してなる請求項1、2、3、4、5又は6記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項8】
前記直壁が、四角筒状をなすものである請求項1、2、3、4又は5記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項9】
前記底版が、平面視において前記直壁よりも外方に延出した張り出し部を備えたものである請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項10】
前記張り出し部に、上下に貫通する貫通孔を有している請求項9記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項11】
前記屎尿貯留空間に、屎尿のはね上がり防止用のネットを配している請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項12】
前記屎尿貯留空間に、防臭用の防臭剤を配している請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載のマンホール型の災害用トイレ。
【請求項13】
前記底版が、樹脂塗料によりコーティングされている請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載のマンホール型の災害用トイレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−24328(P2012−24328A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165739(P2010−165739)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000116769)旭コンクリート工業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】