説明

マンホール用脱臭装置

【課題】水分に対する劣化が解消され、かつ通気抵抗が低く、既存設備に組み込みが容易なマンホール用脱臭装置を提供する。
【解決手段】臭気性ガスが流通するガス流路26を有するマンホール用脱臭装置24であって、ガス流路26に金属酸化触媒及び吸着剤を主成分とする脱臭体25を備え、マンホール内に流入する雨水等をガス流路26とは別経路でマンホール内に送り込む排出路を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマンホール用脱臭装置に関し、詳しくは、雨水などの影響を受け難く、硫化水素等の悪臭成分を効率よく吸着して除去することができるマンホール用脱臭装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マンホール、雨水枡、汚水枡、浄化槽などの下水処理設備或いは廃棄物処理施設から発生する悪臭を防ぐ種々の防臭構造或いは脱臭装置が考えられている。先ず、悪臭を遮断する構造として雨水枡の防臭構造について説明する。図6(a),(b)は雨水枡の防臭構造を示し、雨水枡1の蓋体2には切欠部2aと長孔2bが設けられ、蓋体2の底部に雨水案内枠3が切欠部2aと長孔2bの直下に設けられ、雨水案内枠3には開口部3aが設けられ、開口部3aを塞ぐ受け皿4が設けられ、受け皿4と重り5とが蝶番6を支点として平衡を保ち、開口部3aを塞いでいるが、受け皿4に雨水や土砂が溜まるとその重みで蝶番6を回転軸として矢印のように回動し、開口部3aが開かれ雨水や土砂が雨水枡内1に流れ込む。受け皿4が開口部3aを塞ぐことによって、開口部3aを通して臭気が外部に漏れ出すのを防止している。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、図7のマンホール用脱臭装置は、フィルター部材を用いて臭気を除去するものであり、マンホール内にカートリッジ8が設けられ、カートリッジ底部に消臭ガス圧で昇降する蓋が設けられた防臭蓋装置9が設けられ、カートリッジ内部に活性炭などによる脱臭濾材8aが充填され、その上部には同様の材質の脱臭濾材8bが設けられるとともに、蓋体10から流入する雨水がマンホール内に流れ込み、雨水流路11を通して開閉蓋12を押し開いてマンホール内に流れ込むようしたものがあり、消臭ガスは蓋9aから流入して脱臭濾材8aを通過し、さらに上部の脱臭濾材8bを通過して蓋体10の開口部から外部に排出される。また、蓋体10の開口部から流入した雨水がカートリッジ内に侵入して脱臭濾材8a,8bを濡らすことがないように、脱臭濾材8bを覆う案内板13などが設けられている。(例えば、特許文献2参照)
【0004】
【特許文献1】特開平11−350583号公報(明細書全文,図面全図)
【特許文献2】特開2005−232836号公報(明細書全文,図面全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前者従来例は、公共下水道からの臭気が雨水枡の長孔等を通して流れ出るのを防止すべく、開口部を設けた雨水案内枠が雨水枡の裏側に設けられ、この開口部を受け皿で塞ぐようにして臭気が外部に流れ出すのを防止しており、悪臭による生活環境の悪化を抑制する効果はあるが、悪臭を除去するものではなかった。
【0006】
また、後者従来例は、マンホール内に脱臭濾材を配置したものであるが、活性炭などの脱臭濾材をカートリッジ内に充填したものであり、増水時はマンホール内の水位が上昇し、カートリッジ内の脱臭濾材が浸水して脱臭機能が劣化するおそれがあった。また、マンホール内では湿度が極めて高い悪臭ガスが排出されており、また、結露による水分が脱臭濾材に付着・吸収して脱臭性能が悪化し、これらを解消する手立てはなかった。また、活性炭などの脱臭濾材では、吸着能力が直ぐに飽和状態になり、脱臭濾材を頻繁に交換する必要があり、維持管理コストを上昇させる欠点があった。
【0007】
また、活性炭などを充填した脱臭濾材は極めて通気性が悪く、マンホール内の急激な空気圧変化に対しては対応することができず、この空気圧変化を他の隣接する脱臭装置を設置していないマンホールの蓋体に影響を与えて空気圧により蓋体を吹き上げるといった危険性が増すおそれがあった。
【0008】
さらに、臭気を発生する設備には、雨水枡やマンホール以外に廃棄物、汚物、汚水の貯留設備があり、これらの脱臭設備を施工しようとすると、脱臭材の設置スペースが限られて制約を受ける場合が多く、特に、既設の貯留設備に脱臭設備を施工する場合、その周辺に他の設備が配置されていることが多く、既存設備の外部設備として設置するのは困難な面があり、脱臭設備或いは脱臭装置の設置スペースを省スペース化し、既存設備に組み込みが可能なもの小型のものが要求されていた。
【0009】
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであって、水分に対する劣化が解消され、かつ通気抵抗が低く、既存設備に組み込みが容易なマンホール用脱臭装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、請求項1の発明は、臭気性ガスが流通するガス流路を有するマンホール用脱臭装置であって、流入する雨水等をマンホール内に送り込む排出路が設けられ、該排出路とは別経路の前記ガス流路に金属酸化触媒及び吸着剤を主成分とする脱臭体を備えることを特徴とするマンホール用脱臭装置である。マンホールは、雨水枡、汚水枡、浄化槽、或いは、汚水、汚物、廃棄物等の貯留設備等を含むものとする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のマンホール用脱臭装置において、前記脱臭体は金属酸化触媒及び吸着剤を多流路構造体に担持したものであることを特徴とするマンホール用脱臭装置である。
【0012】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のマンホール用脱臭装置において、前記排出路は断面漏斗状であり、ガス流通遮断機構が該排出路に有することを特徴とするマンホール用脱臭装置である。
【0013】
また、請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、前記金属酸化触媒は鉄−マンガン複合酸化物であることを特徴とするマンホール用脱臭装置である。
【0014】
また、請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、前記吸着剤はゼオライトであることを特徴とするマンホール用脱臭装置である。なお、ゼオライトは疎水性ゼオライトが好ましい。
【0015】
また、請求項6の発明は、請求項1〜5の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、前記多流路構造体はセラミックによるハニカム状又はコルゲート状成型体であることを特徴とするマンホール用脱臭装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、臭気性ガスが流通するガス流路を有するマンホール用脱臭装置であって、流入する雨水等をマンホール内に送り込む排出路が設けられ、該排出路とは別経路の前記ガス流路に金属酸化触媒及び吸着剤を主成分とする脱臭体を備えることを特徴とするマンホール用脱臭装置であるので、臭気性ガスがガス流路を流れ、このガス流路に設けられた金属酸化触媒及び吸着剤による化学吸着能力と物理吸着能力を併せ持った脱臭体により、臭気性ガスが外部に漏れ出すのを抑制することができるし、活性炭による脱臭と比較して硫黄系臭気やアンモニアなどの脱臭効果に優れ、吸着性能の劣化が少ないといった利点がある。また、この脱臭装置はガス流路に脱臭体を設けたものであって、省スペース化されており、既存のマンホールは基より、廃棄物、汚物、汚水の貯留設備に組み込むことが可能である。
【0017】
また、請求項2の発明では、請求項1に記載のマンホール用脱臭装置において、前記脱臭体は、金属酸化触媒及び吸着剤を多流路構造体に担持したものであることを特徴とするマンホール用脱臭装置であるので、臭気性ガスが脱臭体の無数の流路を通過する際に金属酸化触媒及び吸着剤に接触して吸着・分解され、臭気性ガスが無臭化されて排出される利点があるとともに、臭気性ガスが多流路構造体に設けられた多数の流路を通過するために接触面積が大きく、また、活性炭を充填したものと比較し、臭気性ガスの通気抵抗を低く抑えることができる利点があり、マンホール内の空気圧が急激に上昇したとしても、多流路構造体の流路を通して減圧されるので、隣接する脱臭装置が設置されていないマンホールの蓋体を吹き上げるといった危険性を解消することができる利点がある。
【0018】
また、請求項3の発明では、請求項1又は2に記載のマンホール用脱臭装置において、前記排出路は断面漏斗状であるので、マンホール内に雨水や土砂等が流れ込んだとしても断面漏斗状の排出路を通して流入した土砂などを雨水により押し流すことができ、雨水等は排出路からマンホール内に排出される。さらに、該排水路にはガス流通遮断機構が設けられているため、該排出路を経由して直接臭気性ガスが外部に流出することはほとんどない。なお、ガス流路はガス流通遮断機構の近傍に開口するが、排水路とは別の経路であり、脱臭体のガス流路を塞ぐことがなく、雨水等により脱臭体の消臭機能が劣化するおそれがない利点がある。
【0019】
また、請求項4の発明では、請求項1〜3の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、前記金属酸化触媒は鉄−マンガン複合酸化物であることを特徴とするマンホール用脱臭装置であるので、触媒の活性が大きく、触媒体に臭気性ガスを通過させると、素早く脱臭される効果がある。さらに、鉄,マンガンは脱臭体を焼成する際の温度を高温にすることができる利点があり、また、水分が付着したとしても化学的吸着性能が劣化することがない利点がある。
【0020】
また、請求項5の発明では、請求項1〜4の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、前記吸着剤はゼオライトであることを特徴とするマンホール用脱臭装置であるので、吸着性能が高く、素早く吸着して分解することができる。また、ゼオライトをセラミックシートに担持して焼成する際の温度を高温にすることができる利点があり、さらに、水分が浸水したとしても物理的吸着性能が劣化することがない利点がある。なお、疎水性ゼオライトであれば、高温多湿環境下であっても水分を染み込まず弾いて、水分に強い吸着剤とすることができる。
【0021】
また、請求項6の発明では、請求項1〜5の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、前記多流路構造体はセラミックによるハニカム状又はコルゲート状成型体であることを特徴とするマンホール用脱臭装置であるので、微細な直径の流路を多数形成することができ、臭気性ガスと金属酸化触媒及び吸着剤との接触面積が増大して触媒反応及び吸着性能を高めることが可能であり、臭気性ガスの吸収分解に効果的であるとともに、多湿な環境下であっても脱臭性能が劣化し難い利点がある。さらに、活性炭などを充填したものより通気抵抗が軽減され、マンホール内の空気圧が急激に上昇したとしても、多流路構造体の流路を通して減圧することができ、隣接する脱臭装置が設置されていないマンホールの蓋体を吹き上げるといった危険性を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るマンホール用脱臭装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。本実施形態のマンホール用脱臭装置は、図1(a),(b)に示すように、マンホール20の上部に設けられた調整ブロック30に取付金具31をアンカーで取り付け、その取付金具31の上部に円板状の取付板22を載置して設けられる。調整ブロック30上には設置枠21が設けられ、その開口部21aに貫通孔23aが設けられた蓋体23が載置される。マンホール用脱臭装置24には、マンホール20内から発生する臭気性ガスが通過する脱臭体25と、脱臭体25を通過した脱臭ガスの流路であるガス流路26と、蓋体23の貫通孔23aから流入する雨水や土砂或いはごみ等をマンホール20内に送り込む断面漏斗状の排出路27と、排出路27の下端部に設けられた扉28とにより構成され、脱臭体25は多流路構造体であり、この多流路構造体には臭気性ガスを吸着・除去する金属酸化触媒と吸着剤とが担持されている。また、マンホール用脱臭装置24は、マンホール20内から発生する臭気性ガスが外部に流出するのを防止するために取付板22にチューブ状のパッキン29が設けられている。
【0023】
次に、本実施形態のマンホール用脱臭装置24について、図2,図3を参照して説明する。マンホール用脱臭装置24は、その本体である断面漏斗状の排出路27にフランジ部24aが設けられ、略円板状の取付板22に穿設された長四角形状の開口部22aに装着され取り付けられる。排出路27は、互いに向かい合う傾斜板27aと傾斜板27b,27cとが側壁27d間に形成されたものであり、傾斜板27a〜27cを鉛直方向に切断した形状が断面漏斗状であり、排出路27に流入した雨水や土砂等を受けてマンホール内に流し込み易い形状である。傾斜板27b,27cは略平行に配置されて傾斜した隙間が形成され、この傾斜板27b,27cによるこの隙間をガス流路26としている。かつ、傾斜板27aの下端部には、ガス流通遮断機構として扉28がヒンジ部28aを軸として回動自在に設けられている。このように排出路27には、その下端開口部24bを開閉する扉28による開閉機構が設けられ、通常、扉28は傾斜板27cの下端部に接触して下端開口部24bを閉じている。ガス流路26は下り傾斜の流路であり、この開閉機構の近傍に開口している。
【0024】
マンホール用脱臭装置24では、蓋体23の貫通孔23aから雨水や土砂等が断面漏斗状の排出路27に流入すると、雨水等に押されて扉28が開かれ、雨水等がマンホール内に流れ込む。雨水等は脱臭ガスのガス流路26とは別経路の排出路27からマンホール内へ送り込まれ、雨水等の排出路27への流入が終われば、扉28は閉じられてマンホール内の臭気性ガスは排出路27を通して外部に流れ出すことはない。一方、マンホール内は、脱臭体25の流路を通して外気と連通しており、マンホール内で発生した臭気性ガスは、脱臭体25の流路を通過する際、吸着材による物理的吸着と金属酸化触媒による化学的吸着による脱臭される。
【0025】
さらに、詳細に説明すると、脱臭体25は多数の流路が形成された多流路構造体であり、排出路27の傾斜板27b,27cで形成されたガス流路26に近いマンホール内側に設けられ、この多流路構造体の上部流路開口端が傾斜板27bと27cとで形成されたガス流路26の一開口端に開口し、その下部流路開口端がマンホール内に開口している。マンホール用脱臭装置24の周囲にはパッキン29が設けられ、マンホール内で発生した臭気性ガスは脱臭体25の流路を通過し、マンホール用脱臭装置24の周囲から漏れることがないし、また、排出路27の開閉機構である扉28が閉じられているので、矢印Aで示すように、脱臭体25の下部流路開口端から脱臭体25内の流路に流入し、臭気性ガスの臭気成分は脱臭体25の吸着剤により吸着され、さらに、金属酸化触媒による触媒作用により分解されて脱臭される。脱臭されたガスは、脱臭体25の上部流路開口端からガス流路26を経て蓋体23の貫通孔23aを通過して外部へと排出される。
【0026】
多流路構造体である脱臭体25は、図4に示すように、板状のセラミックシート25a上に波形に成型したセラミックシート25bを設けたものを多数積層としたコルゲート状成型体であり、断面形状が波形の多数の流路が形成されたものであり、これらのセラミックシート25a,25bには金属酸化触媒及び吸着剤が担持されている。無論、脱臭体25の構造は断面蜂の巣状の流路が多数形成されたハニカム状成型体であってもよい。また、金属酸化触媒としては、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛の酸化物があり、これらの何れか1種又は2種以上が選択される。最も好適な金属酸化触媒としては、遷移金属系複合酸化物である鉄−マンガン複合酸化物が挙げられる。また、吸着剤としては、ゼオライトが好ましく、殊に疎水性ゼオライトが最も好ましい。
【0027】
脱臭体25は、酸化シリコンを主体とする基体であるセラミックシート25a,25bに金属酸化触媒及び吸着剤を付着させて焼成した成型体であり、吸着剤として、例えば疎水性ゼオライトが付着していると、脱臭体25が高湿度下に曝されたり、雨水が脱臭体25に掛かったとしても、水を吸収し難く、また水分を弾くので、脱臭体25の臭気性ガスの吸着能力が劣化することがなく、さらに、遷移金属系複合酸化物として鉄−マンガン複合酸化物が使用されていると、吸着剤により吸収された臭気性ガス(硫黄系臭気,アンモニア)を分解し無臭化する。この金属酸化触媒及び吸着剤による吸着能力は、硫黄系臭気やアンモニアに対して活性炭の体積当たり数倍の吸着能力を有する。
【0028】
また、脱臭体25は多流路構造体であり、臭気性ガスが流れる多数の流路が形成されており、マンホール内の空気圧変動に対して、従来の活性炭を充填した脱臭装置と比較して通気抵抗が少なく、脱臭体25を通して圧力上昇を逃がすことができる。従って、マンホール内の空気圧上昇を防止することができ、脱臭装置を装着していない隣接するマンホールの蓋体を空気圧上昇により吹き上げるといった危険性を解消することができる。
【0029】
次に、本発明の他の実施形態について図5(a),(b)を参照して説明する。図5(a)の実施形態は、上記実施形態と略同一であるが、マンホール用脱臭装置24は、調整ブロック30に設けた取付金具31上に設けられ、取付板22bが下方に屈曲した構造であり、取付板22bの屈曲部22cにフランジ部24aが設けられて、傾斜板27aと傾斜板27b,27cとによるよる断面漏斗状の排出路27が形成されている。この実施形態では、上記実施形態の排出路27よりも貫通孔23aと間隔を十分に取って、雨水が蓋体23の貫通孔23aからマンホール内に流入し易くしたり、脱臭されたガスが放出され易い構造としている。マンホール用脱臭装置24の取付構造は、マンホールの構造等に応じて適宜変更可能であり、実施形態に限定されるものではない。なお、上記実施形態では、排出路27にガス流通遮断機構として雨水等が流入した際に開放する開閉機構28を設けたが、図5(b)に示すように水33で封じるように構成した排水管32を用いてもよい。
【実施例】
【0030】
本発明の脱臭性能について実施例を参照して説明する。本発明のマンホール用脱臭装置における脱臭体は、図4に示したコルゲート状成型体であり、脱臭体25にはセラミックシートに金属酸化触媒及び吸着剤を付着させて焼成して担持したものである。金属酸化触媒が鉄−マンガン複合酸化物であり、吸着剤が疎水性ゼオライトである。この脱臭体25に硫化水素を通過させて、脱臭体25の脱臭体下部(流入側)と脱臭体上部(流出側)の気体を検知管に採取して硫化水素濃度を測定した。その測定結果を以下の表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
上記表1の測定結果から明らかなように、脱臭体25の脱臭体下部(流入側)が設置1時間後、140ppmであり、設置後175時間経過した後では45ppmであり、設置後4171時間経過後では75ppmであった。硫化水素濃度は、流入側において、0〜150PPM程度の範囲で変動した。このような硫化水素濃度下において、流出側の気体の硫化水素濃度は、それぞれの経過時間後の濃硫化水素度が、1.0ppm、0.0ppm、1.5ppmであり、設置半年間にわたって2ppm以下に抑えられ、脱臭効果があることが確認された。脱臭体25は、臭気性ガスを吸着・分解により脱臭していることを示し、しかも脱臭体25としての脱臭性能は経時変化に対し性能の劣化が少なく安定していることを示した。
【0033】
さらに、マンホールに設置し、183日後に脱臭装置本体から取り外し、脱臭体25を水を満たした容器内に浸漬した。その後、再び、脱臭体25を装着したマンホール用脱臭装置をマンホールに設置して脱臭効果を確認した。このような過酷な環境試験を行った後の脱臭効果を表2に示した。
【0034】
【表2】

【0035】
表2から明らかなように、脱臭体25を水没した直後の流出側の硫化水素濃度は、5.0ppmであり、脱臭効果が若干低下した。しかし、1時間経過後には0.0ppmであり、脱臭効果が回復した。その後、24時間後も特に脱臭効果の低下は認められなかった。本実施例の脱臭体25は、多湿環境下であっても脱臭効果が低下しないことがこの実験結果から検証できた。
【0036】
なお、マンホールは、下水設備における下水管渠の起点、管渠の方向、勾配、管径の変化する箇所に設けられ、通気孔或いは保守管理用孔を兼ねており、通気孔等の用途は、雨水枡、汚水枡、浄化槽、汚水或いは廃棄物の貯留設備等にも必要なものであり、これらの設備で発生する臭気性ガスは通気孔からも放出され、上記で説明したような問題がある。本実施形態のマンホール用脱臭装置は、マンホールのみに限定するものではなく、これらの設備の通気孔に適用することができる。即ち、マンホールは、臭気性ガスを放出する雨水枡、汚水枡、浄化槽、汚水或いは廃棄物の貯留設備等の全てに適用することが可能であり、マンホールはこれらの全ての総称的用語として用いたものである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の活用例としては、下水道のマンホールは基より、雨水枡、汚水枡、浄化槽、或いは汚水、汚物、廃棄物等の貯留設備等の脱臭装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)はマンホールに本発明のマンホール用脱臭装置を装着した一実施形態を示す断面図であり、(b)はその要部断面図である。
【図2】(a)はマンホールに脱臭装置の上面図であり、(b)はその矢印に沿ったY−Y断面図である。
【図3】本実施形態におけるマンホール用脱臭装置本体の概略断面図である。
【図4】本実施形態の脱臭体の斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態を示す要部断面図であり、(a)は排出部に開閉機構を用いた例であり、(b)は封水管を用いた例である。
【図6】(a)は従来の防臭構造を設置した雨水枡を示す上面図であり、(b)はその要部断面図である。
【図7】従来のマンホール用脱臭装置の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
20 マンホール
21 設置枠
21a 開口部
22,22b 取付板
22a 開口部
22c 屈曲部
23 蓋体
23a 貫通孔
24 マンホール用脱臭装置
24a フランジ部
25 脱臭体
25a,25b セラミックシート
26 ガス流路
27 排出路
27a〜27c 傾斜板
28 扉(開閉機構)
28a ヒンジ部
29 パッキン
30 調整ブロック
31 取付金具
32 封水管
33 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気性ガスが流通するガス流路を有するマンホール用脱臭装置であって、
流入する雨水等をマンホール内に送り込む排出路が設けられ、該排出路とは別経路の前記ガス流路に金属酸化触媒及び吸着剤を主成分とする脱臭体を備えることを特徴とするマンホール用脱臭装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマンホール用脱臭装置において、
前記脱臭体は金属酸化触媒及び吸着剤を多流路構造体に担持したものであることを特徴とするマンホール用脱臭装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマンホール用脱臭装置において、
前記排出路は断面漏斗状であり、ガス流通遮断機構を該排出路に有することを特徴とするマンホール用脱臭装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、
前記金属酸化触媒は鉄−マンガン複合酸化物であることを特徴とするマンホール用脱臭装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、
前記吸着剤はゼオライトであることを特徴とするマンホール用脱臭装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載のマンホール用脱臭装置において、
前記多流路構造体はセラミックによるハニカム状又はコルゲート状成型体であることを特徴とするマンホール用脱臭装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2007−332662(P2007−332662A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165718(P2006−165718)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(591043581)東京都 (107)
【Fターム(参考)】