説明

ミシンの糸切断装置

【課題】糸切断動作を安定して行う。
【解決手段】前後に往復回動動作可能に支持された動メス2と、動メスに摺接すると共に前後に往復回動動作可能に支持された待機メス3と、下軸1から動力を得て回転を行うカムの原節となるカム体41と、動メスに前後の往復回動動作を付与するカム従節44とを有するカム機構40と、カム機構との動メスの動力伝達の接続と切断とを、動メスの最後退位置からの前進及び最後退位置への後退の各動作の付与により行うアクチュエータ51と、待機メスがその最前進位置に到達するまで前進移動を行う動メスと連動させる連動機構60と、動メスの後退移動時に待機メスが後退しないように待機させる待機機構70と、動メスの切断位置の通過後に待機機構による待機状態を解除する解除手段24と、待機メスを最後退位置に復帰させる復帰手段12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動メスと待機メスとの協働により糸を切断する糸切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンの糸切断装置は、前後方向に往復回動動作を行う動メスと、切断位置まで前進して待機し、後退する動メスとの協働により糸切断を行う待機メスと、釜軸を駆動源として動メスに往復回動動作を付与するカム機構と、待機メスにその初期位置からの前進移動動作を付与するエアシリンダと、動メスに設けられ、待機メスに当接して前進方向に動メスを連動させる突起とを備えている。
そして、糸切断時には、エアシリンダが待機メスをその初期位置から前進方向に回動させ、これにより、動メスに設けられた突起が待機メスに押圧され動メスにも前進移動が付与される。
その結果、動メスと一体的に動作するカムコロが溝カムの溝に進入し、動メスの前進動作がカム機構に引き継がれることとなる。カム機構は、カム軸の回転により動メスを往復回動させ、動メスの後退移動時に糸を捕捉すると共に切断位置まで糸を引き込んでゆく。
その間、待機メスは、エアシリンダにより切断位置を保持され、動メスが切断位置に到達することにより互いの刃先に挟まれた糸が切断されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−068004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の糸切断装置にあっては、エアシリンダが、待機メスを切断位置まで前進させる機能を有すると共に、待機メスを介して動メスを前進させてカムコロを溝カムに導く機能と待機メスを切断維持に保持する機能をも有している。
そして、動メスには待機メスの連動を図る突起が設けられているため、動メスの後退時には、突起が待機メスに衝突による動作不良を回避するために、適切なタイミングでエアシリンダを作動させて待機メスを後退移動させなければならない。
しかしながら、エアシリンダは待機メスを切断位置に保持する機能も有しており、早すぎるタイミングで待機メスを後退させると切断不良を生じてしまうことから、エアシリンダの後退動作のタイミング調節が非常に難しく、そのため良好な糸切断動作が困難となっていた。
また、糸の種類によっては、切断後の待機メスの後退移動時に摩擦を生じ、エアシリンダの後退動作のタイミングを遅らせる場合があり、さらにエアシリンダの動作タイミング調節を困難とし、良好な糸切断動作を困難としていた。
【0005】
本発明は、糸切断動作を良好に行うことをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、前後に往復回動動作可能に支持された動メスと、前記動メスに摺接すると共に前後に往復回動動作可能に支持された待機メスと、前記動メスの後退時に切断位置において前記待機メスとの協働により糸の切断を行う、水平釜の釜軸台又はその周囲に設けられたミシンの糸切断装置において、下軸から動力を得て回転を行うカムの原節となるカム体と、前記動メスに前後の往復回動動作を付与するカム従節とを有するカム機構と、前記カム機構との前記動メスの動力伝達の接続と切断とを、前記動メスの最後退位置からの前進及び最後退位置への後退の各動作を付与するアクチュエータと、前記待機メスがその最前進位置に到達するまで前進移動を行う前記動メスと連動させる連動機構と、前記動メスの後退移動時に前記待機メスが後退しないように待機させる待機機構と、前記動メスの切断位置の通過後に前記待機機構による待機状態を解除する解除手段と、前記待機メスを最後退位置に復帰させる復帰手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記待機機構は、前記動メスの最前進位置到達時に前記待機メスを後退しないように係止する爪を有するラッチ機構であり、前記解除手段は、前記動メスと一体的に後退移動すると共に、前記動メスの切断位置の通過後に前記爪を解除方向に移動させる突状体であることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記解除手段の突状体は、前記動メスと分離可能な別部材からなることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記連動機構は、前記動メス又は当該動メスと一体となって往復回動動作を行う部材が前記待機メス又は当該待機メスと一体となって往復回動動作を行う部材を押圧することにより前記動メスの前進方向の動作のみを前記待機メスに連動させることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記アクチュエータは、往復の移動動作を行う動作部を備えると共に、当該動作部を前記動メスと連結し、前記カム機構により前記動メスに往復動を付与されている間は、前記アクチュエータの動作部が外力に従って自在に移動可能となるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、動メスとカム機構の動力の接続及び切断の切り替えを、待機メスではなく動メスに対してアクチュエータが前後動作を付与することにより行うので、従来技術の場合のような、糸の切断の完了を待ってからアクチュエータによる後退動作の付与を行わねばならないとする動作上の制限がなくなり、アクチュエータの後退動作開始タイミングを適宜調節することによりカム機構とアクチュエータとの干渉の発生を低減し、トラブルのない良好な切断動作を実現することが可能となる。
また、待機メスではなく動メスに対してアクチュエータが前後動作を付与することにより行うので、糸種類による待機メスの動作遅れの影響を低減し、かかる理由からも良好な切断動作を実現することが可能となる。
【0012】
請求項2は、待機機構をラッチ機構とし、動メスと一体的に後退移動する突状体がラッチ機構の爪を解除するので、動メスと待機メスとを個別の駆動源により動作させて所定のタイミングで同期させる場合と異なり、動メスの後退動作時における解除タイミングを常に一定にすることが可能となり、さらなる良好な切断動作を実現することが可能となる。
【0013】
請求項3記載の発明は、解除手段の突状体を動メスと分離可能な別部材で構成したので、突状体による待機メスの解除タイミングを変えることなく、動メスの位置調節を図ることが可能となる。
【0014】
請求項4記載の発明は、メス又は部材同士の押圧接触により動メスと待機メスの前進方向の連動を図るので、動メスと待機メスの前進方向のみを連動させ、後退方向を互いにフリーとする連動機構の構成を簡易な構造により実現可能とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、カム機構により動メスに往復動を付与されている間は、アクチュエータの動作部が外力に従って自在に移動可能となるようにアクチュエータを制御するので、動メスとアクチュエータ又は動メスとカム機構との連動の切り替えを行う手段を不要としつつ、アクチュエータの影響を受けることなくカム機構の動作付与を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における糸切断装置の構成を示す斜視図である。
【図2】動メス及び動メス支持機構を示す斜視図である。
【図3】動メスの先端部の一部を切り欠いた平面図である。
【図4】待機メス支持手段の分解斜視図である。
【図5】待機メス周辺の平面図である。
【図6】カム機構及びエアシリンダ機構の斜視図である。
【図7】動メス軸及びカム機構の動メスリンク軸の中心線を通る断面を示したカム機構及びエアシリンダ機構の断面図である。
【図8】釜軸台を除いて図示した糸切断装置の斜視図である。
【図9】釜軸台を下方から見た斜視図である。
【図10】糸切断時の動作説明図であり、図10(A)〜(C)の順で動作が進行する。
【図11】図10に続く糸切断時の動作説明図であり、図11(A)〜(C)の順で動作が進行する。
【図12】図11に続く糸切断時の動作説明図であり、図12(A)〜(C)の順で動作が進行する。
【図13】復帰手段の他の例を示す斜視図である。
【図14】待機メスの調節構造を付加した例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図12を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。また、本実施形態においては、各図中に示したXYZ軸を基準にしてミシンの糸切断装置10の各部の方向を説明するものとする。Z軸方向は鉛直上下方向を示し、X軸方向及びY軸方向はいずれも水平方向であって互いに直交する方向を示すものとする。また、ミシンは水平面に設置されており、ミシンベッド部の長手方向がY軸方向に平行に向けられている状態であることを前提として、ミシン内部に設置された糸切断装置10の説明を行うものとする。
【0018】
(ミシン)
本実施形態では、ミシンとして特に限定はないが、ここでは総合送りミシンに搭載される場合を例に説明する。総合送りミシン(以下、単にミシンとする)は、例えば、送り動作に伴う被縫製物のずれを防止するために、針上下動機構による縫い針の上下動及び針振り機構による針振りを同調させた針送り動作と、上送り機構及び下送り機構による送り動作とを同調させることで、厚手の被縫製物(例えば、皮物)に縫い針を突き刺した状態で送りを行うミシンである。
ミシンは、図示はしないが、ミシンアーム部内に周知の針上下動機構を備え、ミシンベッド部内には、針板の下側に水平釜を備えている。そして、針上下動機構は上軸を介してミシンモータの動力を伝達され、水平釜は下軸及び釜軸を介してミシンモータの動力を伝達されるようになっている。そして、上軸及び下軸はY軸方向に平行に配設され、釜軸はZ軸方向に平行に配設されている。また、下軸と釜軸の双方には相互に噛合して動力伝達を行う笠羽歯車が設けられている。
またのその他のミシンに一般に搭載される各種の構成については周知であるため、ここでは説明を省略するものとする。
【0019】
(糸切断装置)
次に、本実施形態における糸切断装置10の構成について詳しく説明する。
図1は糸切断装置10の全体構成を示す斜視図である。
糸切断装置10は、ミシンベッド部内において釜軸を支持する釜軸台11と、前後に往復回動を行う動メス2と、釜軸台11に対して往復回動可能となるように動メス2を支持する動メス支持機構20と、動メス2に摺接すると共に前後に往復回動を行う待機メス3と、釜軸台11に対して往復回動可能となるように待機メス3を支持する待機メス支持手段30と、動メス2に往復回動動作を付与する第一の動作付与機構としてのカム機構40と、動メス2に往復回動動作を付与する第二の動作付与機構としてのエアシリンダ機構50と、動メス2の最前進位置の手前の所定位置から最前進位置までの前進移動(図1における黒矢印の方向)について待機メス3を連動させる連動機構60と、動メス2の後退移動時(図1における白矢印の方向)に待機メス3を後退しないように待機させる待機機構70と、動メス2の切断位置の通過後に待機機構70による待機状態を解除する解除手段としての突起部(突状体)24と、待機メス3を最後退位置に復帰させる復帰手段としての復帰バネ12とを備えている。
【0020】
(釜軸台)
釜軸台11は、ミシンベッド部内において図示しない送り歯の下方に固定設置され、糸切断装置10のほぼ全ての構成を支持している。また、この釜軸台11は、その下部に下軸1が挿通されるY軸方向に沿った貫通穴と当該貫通穴に隣接して釜軸が挿通されるZ軸方向に沿った貫通穴とが形成されている。かかる下軸から釜軸へは笠羽歯車を介して動力伝達が行われ、釜軸の上端部(釜軸台11の真上)に設けられた水平釜に回転力が付与される構造となっている。後述する動メス2は、水平釜のすぐ上側で往復回動を行う配置となっている。
【0021】
(動メス及び動メス支持機構)
図2は動メス2及び動メス支持機構20を示す斜視図である。
動メス支持機構20は、動メス2の回動動作の中心軸となる動メス軸21と、動メス軸21の上端部に一体的に形成された支持板22と、支持板22の上面にネジ止めにより装着される動メス台23とを備えており、動メス台23は、やはりネジ止めにより動メス2の基端部を保持している。
上記動メス軸21は、Z軸方向に平行な状態で、後述する中空の待機メス軸31を介して釜軸台11に対して回転可能に支持されている。これにより、動メス2はZ軸回りで往復回動を行うこととなり、動メス2の回動端部はX−Y平面に沿って往復動作を行うこととなる。
【0022】
支持板22は、X−Y平面に沿った平板状をなし、いずれも動メス軸21を中心とする半径方向外側に向かって延出された突状部24と入力部25とを備えている。
突状部24は、その先端部が動メス2の後退回動(図1における白矢印の方向)に連動して所定のタイミングで後述する待機機構70による待機メス3の待機状態(後退阻止状態)を解除させるためのものであり、その作用は待機機構70の構造説明において詳述する。
入力部25はその上面に、後述するカム機構40の角駒46が段ネジによりZ軸回りに回動可能に装備されており、カム機構40による動メス2に対する回動動作の動力が支持板22を通じて行われるようになっている。
さらに、支持板22の下面には、後述する連動機構60の連動ピン61が動メス軸21に隣接して下方に突出した状態で設けられている。
また、支持板22の上面には、動メス台23の位置決めピン26が上方に突出した状態で設けられている。この位置決めピン26は前述した動メス軸21と同心となるように設けられている。
【0023】
動メス台23は、動メス2の基端部を保持する保持溝27が形成されており、当該保持溝27に沿って動メス2の基端部を移動させて止めネジ28で固定することにより同方向における位置調節を可能としている。かかる保持溝27は前述した動メス軸21の軸線上に設けられており、動メス2の先端部の回動半径の調節を可能としている。
また、動メス台23は、その下面側に前述した位置決めピン26に嵌合する図示しない嵌合穴が形成されている。また、動メス台23は、止めネジ29の外径よりも幾分大きな貫通穴を介して支持板22に取り付けられており、位置決めピン26回りに回動させて止めネジ29で締結することにより動メス2の動メス軸21回りの角度調節を行うことを可能としている。かかる角度調節により、動メス2の最前進位置や切断位置を調節することが可能となっている。
【0024】
動メス2は、真っ直ぐに伸びる基端部2aが動メス台23に保持され、基端部2aから大きく湾曲形成されて延出されたその先端部2bには糸切断を行う刃先2cが形成されている。動メス2は、前述した動メス支持機構20により回動可能に支持され、前進回動(図1における黒矢印の方向)を行うことでその先端部が針落ち位置に向かって接近する方向に移動し、後退回動(図1における白矢印の方向)を行うことで針落ち位置から離間する方向に移動する。
また、動メス2の先端部2bにおける下面側には糸を捕捉するための係止部が形成されており、回動における最前進位置は、動メス2の係止部が針落ち位置を幾分通過した位置に設定されている。
図3は動メス2の先端部2bの一部を切り欠いた平面図である。動メス2の先端部2bは先鋭な形状に形成されると共にその長手方向が動メス軸21を中心とする円弧に沿って延出されている。また、その先端近傍にはその外側の側面から内側に側面に貫通穴2dが穿設されている。かかる貫通穴2dは外側の側面に対して傾斜して形成されており、貫通穴2dの端縁部における先端部よりの部分が刃先2cとなっている。かかる刃先2cは、貫通穴2dが斜めに形成されることで鋭角をなしており、当該刃先2cと待機メス3の先端部の刃先3aとに挟まれることで糸が切断されるようになっている。
【0025】
(待機メス及び待機メス支持手段)
図4は待機メス支持手段の分解斜視図、図5は待機メス周辺の平面図である。
待機メス支持機構30は、待機メス3の回動動作の中心軸となる待機メス軸31と、待機メス軸31の上端部に固定装備されたアーム状の待機メス台32と、釜軸台11の上面にZ軸方向に沿って形成された開口に装備され、待機メス軸31を回転可能に支持するメタル軸受け33とを備えている。
前述したように、待機メス軸31は、中空に形成され、その内部に動メス軸21が挿入されて回転可能に支持する構造となっている。
待機メス台32は、その基端部が待機メス軸31の上端部に抱き締めにより取り付けられており、その回動端部には待機メス3が装着されている。
【0026】
また、待機メス台32には、後退回動方向(待機メス3が針落ち位置から離間する方向:図1における白矢印の方向)への回動を常時付勢する復帰バネ12が連結されており、前進回動方向への外力が付与されない限り、ストッパ34に当接する最後退位置(図5の位置)で待機するようになっている。
なお、メタル軸受け33には、当該軸受け33を介して待機メス軸31及び動メス軸21を上下に高さ調節を行う高さ調節ネジ37が併設されている(図1,図7参照)。かかる高さ調節ネジ37はX軸方向に沿って釜軸台11を貫通して回転可能に支持されており、その先端部には偏心した突起が設けられており、メタル軸受け33の外周面に設けられた凹部に挿入されている。そして、高さ調節ネジ37が回転操作されると、その先端の偏心突起が上下に位置変化を生じるのでこれに伴いメタル軸受け33も上下に高さ調節がなされ、動メス2及び待機メス3も同様にして高さが調節されるようになっている。
【0027】
待機メス3は、動メス2の外側の側面に沿った平板状であり、その先端部が刃先3aとなっている。かかる待機メス3の刃先3aは、動メス2と待機メス3の相対的な回動動作により摺接するように配置され、前述したように、互いの刃先2aと刃先3aとが相対する切断位置において糸の切断を行うようになっている。
かかる待機メス3は、待機メス台32の前進回動により針落ち位置に近接する最前進位置(切断位置)まで移動することで、切断後の被縫製物からの糸の余り端部の長さが極力短くすることを可能としている。
また、待機メス3の外側には、糸ガイド35が併設されており、かかる糸ガイド35の先端部が待機メス3の刃先3aと動メス2の刃先2c以外の部位とに挟まれて切断されないように糸をガイドしている。
また、図1に示すように、クランプバネ台38を介して釜軸台11にクランプばね36が取り付けられている。クランプバネ36は動メス2の内側の側面に圧接するように設けられており、水平釜側から延びる糸の切断端部を動メス2の内側の側面とクランプバネ36とにより挟んで保持するようになっている。
【0028】
(カム機構)
図6はカム機構40及びエアシリンダ機構50の斜視図、図7は動メス軸21及びカム機構40の動メスリンク軸42の中心線を通る断面を示したカム機構40及びエアシリンダ機構50の断面図、図8は釜軸台11を除いて図示した糸切断装置10の斜視図、図9は釜軸台11を下方から見た斜視図である。
カム機構40は、下軸1に固定装備され、その外周面にカム溝41aが形成された原節となるカム体41と、釜軸台11によりZ軸方向に沿った状態で回転可能に支持された動メスリンク軸42と、動メスリンク軸42の下端部に抱き締めにより固定装備された動メス駆動腕43と、動メス駆動腕43の回動端部に上方に向けて設けられたカム従節としてのカムコロ44と、動メスリンク軸42の上端部に固定装備された動メスリンク腕45と、動メスリンク腕45に係合して支持板22及び動メス2に回動動作を伝達する角駒46とを備えている。
【0029】
カム体41は、下軸1を中心とする円筒形であり、その外周面にカム溝41aが形成されている。かかるカム溝41aは、カム体41の一方の端面側に入り口と出口とが形成されており、カムコロ44は動メス駆動腕43の回動によりカム溝41aの入り口から進入するようになっている。
カムコロ44は、Z軸方向に沿って形成された円柱体であり、糸の非切断時にはカム体41の一方の端面から離れたところで待機しており、後述するエアシリンダ機構50により動メス駆動腕43がカム体41側に回動されてカム溝41aの入り口から進入を行う。そして、進入後のカムコロ44は、カム溝41aの変位に従って動メス駆動腕43に往復の回動動作を付与し、カム溝41aから排出される。排出後は、進入時と同様にエアシリンダ機構50により動メス駆動腕43がカム体41から離れる方向に回動されて、カムコロ44は元の待機位置に戻されるようになっている。
【0030】
動メス駆動腕43は、動メスリンク軸42を中心とする半径方向外側に向かって延出されており、その延出端部にカムコロ44を保持している。そして、カムコロ44を介してカム溝41aの変位に従って往復回動を付与され、動メスリンク軸42,動メスリンク腕45等を介して動メス2に往復回動による糸切断動作を付与する機能を有している。なお、カム溝41aにより回動を行う際には、動メス駆動腕43は、図6における時計方向(黒矢印の方向)、反時計方向(白矢印の方向)の順番で往復回動を行う。
【0031】
動メスリンク腕45は、動メスリンク軸42により動メス駆動腕43に直結されており、連動して回動を行う。
動メスリンク腕45は、その回動端部から動メスリンク軸42側に向かって半径方向に沿った長溝状の切り欠き45aが形成されている。かかる切り欠き45aの内側には角駒46が嵌合し、当該切り欠き45aの長手方向に沿った滑動が可能となっている。従って、動メスリンク腕45がカム体41により回動を行うと、角駒46は動メス軸21を中心とする円弧の軌跡に沿って移動を行うため、角駒46と動メスリンク軸42との距離は変化することとなるが、当該距離変化は角駒46が切り欠き45aに沿って滑動することにより吸収される。従って、動メスリンク腕45が往復回動を行うと、支持板22も動メス軸回りの往復回動を行うこととなり、動メス2に円滑に往復回動動作が伝達される。
なお、動メスリンク腕45と支持板22とは、互いに逆方向に回動動作を行うこととなるので、支持板22は図6における反時計方向、時計方向の順番で往復回動を行う。つまり、カム体41のカム溝41aにより動メス2は前進(図6における黒矢印の方向)した後に後退移動(図6における白矢印の方向)を行う。
【0032】
(エアシリンダ機構)
図1及び図6〜9に基づいてエアシリンダ機構50について説明する。エアシリンダ機構50は、釜軸台11の下部に固定装備されたブラケット52により動作方向をY軸方向に向けて取り付けられたアクチュエータとしてのエアシリンダ51と、エアシリンダ51の進退動作を行うプランジャの先端に取り付けられた動作部としてのジョイント53と、動メス軸21の下端部に抱き締めによりその基端部が固定された入力腕54と、入力腕54の回動端部とジョイント53とを連結するピン55とを備えている。
【0033】
上記入力腕54は動メス軸21に軸支された状態にあり、その回動端部はエアシリンダ51のプランジャのジョイント53に連結されている。つまり、エアシリンダ51の進退動作出力に応じて動メス軸21に対して回動動作を付与する構造となっている。
なお、エアシリンダ51のジョイント53は直進動作を行う一方で、入力腕54の回動端部は円弧軌跡で移動を行うが、エアシリンダ51がブラケット52にピンによって連結されているので、入力腕54の円弧移動によるX軸方向の変位は吸収され、エアシリンダ51の駆動により入力腕54は円滑に回動を行うようになっている。
【0034】
かかるエアシリンダ機構50の主たる機能は、最後退位置にある動メス2を前進移動させて動メス2と連動するカム機構40のカムコロ44をカム体41のカム溝41aに進入させて動メス2の回動動作の駆動源をカム機構40に切り替えること及びカム機構40による動メス2の往復回動が終了し、カムコロ44がカム溝41aから排出されてから動メス2を最後退位置まで後退させること、さらには、動メス2を最後退位置で保持することにある。
エアシリンダ51は、プランジャに前進動作と後退動作とを付与する個別の空気室を有するいわゆる復動式のものが使用される。つまり、前進移動時には前進側の空気室に圧縮空気が供給されると共に後退側の空気室は大気に開放され、後退移動時には後退側の空気室に圧縮空気が供給されると共に前進側の空気室は大気に開放される。つまり、糸切断装置10は、図示はしないが、エアシリンダ51に対して上記の制御を行うことが可能な空気回路を備えており、上記圧縮空気の供給及び大気開放などを実行するための電磁弁は、ミシンの制御回路により制御されるようなっている。
また、エアシリンダ51は、動メス2の往復動作の駆動源がカム機構40に移行してからも、そのプランジャのジョイント53は入力腕54に連結されたままであるため、カム機構40により動メス軸21に回動動作が付与されると、入力腕54を介してエアシリンダ51のプランジャも前後動作を行うこととなる。従って、動メス2の往復動作の駆動がカム機構40により行われている期間はエアシリンダ51の両方の空気室は大気開放され、プランジャをフリーの状態とする制御が行われる。これにより、カム機構40による動メス2の往復回動動作はエアシリンダ51の影響を受けることなく円滑に行われる。そして、カム機構40による往復回動が終わってカムコロ44がカム溝41aから排出されると、後退側の空気室に圧縮空気が供給されると共に前進側の空気室は大気開放状態を維持する制御が行われ、動メス2は最後退位置に戻される。
なお、エアシリンダ51の両方の空気室を大気開放にするタイミングと再び圧縮空気の供給を復活させるタイミングは、カムコロ44がカム溝41aに進入するタイイングと排出されるタイミングであることから、上軸角度或いは下軸角度を監視することにより得ることが可能である。従って、ミシンに通常的に搭載されている上軸角度検出装置などを利用して適切なタイミングでエアシリンダ51を制御する。
【0035】
(連動機構)
連動機構60は、図1,4,5,8に示すように、支持板22の下面に固定装備された連動ピン61と、待機メス軸31の上端部に配置された扇形の待機メス固定板62と、待機メス固定板62を待機メス台32に固定する止めネジ63とを備えている。
即ち、上記待機メス固定板62は、待機メス軸31を挿入する貫通穴を備え、待機メス軸31を中心に回動可能となっている。さらに、待機メス固定板62は、待機メス軸31を中心とする円弧に沿った長穴62aが貫通形成されており、当該長穴62aに挿通された状態で止めネジ63が待機メス台32に設けられたネジ穴に締結されると、待機メス固定板62は待機メス軸31に対して固定され、一体となって回動を行うようになっているまた、止めネジ63をゆるめることで、長穴62aの範囲で待機メス軸31に対する待機メス固定板62の角度調節を行うことができ、かかる角度調節により、切断位置を調節することが可能となっている。
【0036】
上記連動ピン61は、動メス2が最後退位置にあるときには待機メス固定板62から離れた位置にあり、動メス2が前進回動を開始して所定角度に至ると待機メス固定板62の端縁部に当接し、それ以降は連動ピン61が待機メス固定板62を押圧して、動メス2が最前進位置に到達するまで動メス2と待機メス3との相対位置を維持させつつこれらを同時に回動させる。なお、連動ピン61が待機メス固定板62を押圧することで連動を図っているので、動メス2が最前進位置から後退を開始すると、連動状態は解除される。
糸切断時において、動メス2の最前進位置と待機メス3の最前進位置(待機メス3の場合には最前進位置が切断位置でもある)とでは一定の角度の差があり、上記連動機構60は、当該角度差を維持しながら動メス2と待機メス3とが前進方向に連動して回動を行うように連動ピン61と待機メス固定板62との位置関係が設定されている。
【0037】
(待機機構)
待機機構70は、図1,5,8に示すように、待機メス固定板62に隣接して釜軸台11に設けられた待機メスストッパ71と、待機メスストッパ71が待機メス固定板62を係止する方向に付勢するストッパバネ72とを備えている。
上記待機メスストッパ71は、その基端部がZ軸方向に沿った段ネジ73により釜軸台11に対して回動可能に軸支されており、その回動端部には係止爪74が待機メス固定板62に向かって突出装備されている。
待機メス3が最後退位置に位置するときには、支持板22に設けられた突状部24の円弧状の端縁部に待機メスストッパ71の係止爪74の先端部がストッパバネ72の付勢により押圧接触するように、突状部24と待機メスストッパ71とは相互に配置されている(図10(A)参照)。そして、待機メス3が最前進位置まで前進回動を行うと、待機メス固定板62の円弧状の端縁部の終端が待機メスストッパ71の係止爪74を通過するように、待機メス固定板62の待機メス軸31に対する取り付け角度が調整されている。これにより、待機メスストッパ71の係止爪74はストッパバネ72の付勢により待機メス固定板62の円弧状の端縁部の終端角部に係止され、待機メス3が最前進位置から後退方向に回動しないように保持する(図11(B)参照)。つまり、待機機構70は、待機メス固定板62を含めてラッチ機構として機能するようになっている。待機メス3は待機メス台32を介して復帰バネ12により後退回動方向に常時付勢されているが、待機機構70による保持により、動メス2が後退回動方向に回動を行い、連動機構60による連動状態が解除されても待機メス3は最前進位置を維持する。
【0038】
なお、かかる待機機構70の保持状態の解除は、前述した支持板22に設けられた突起部24により行われる。動メス2が後退方向に回動を行うと、保持機構70により保持された待機メス3の刃先3aと後退する動メス2の刃先2cとが合致する位置(動メス2における切断位置)で糸の切断を行い、少なくともこの切断位置を動メス2が通過してから、突起部24が待機メスストッパ71の係止爪74に当接し、当該係止爪74をストッパバネ72に抗して押し戻す構造となっている。これにより係止爪74による待機メス固定板62の保持状態が解除され、待機メス3は復帰バネ12に付勢されて最後退位置まで戻されることとなる。
【0039】
(糸切断装置による糸切断動作)
上記構成からなる糸切断装置10の糸切断動作について、図10〜図12の動作説明図により説明する。
ミシンの縫製中は、動メス2及び待機メス3はそれぞれの最後退位置に待機している。そして、ミシンの縫製後、糸切り信号が入力されると、エアシリンダ51が作動し、動メス2の前進回動を開始させる(図10(A))。この段階では、まだ、連動機構60の連動ピン61は待機メス固定板62に到達せず、待機メス3は待機状態を維持している。
そして、動メス2の回動に伴い、カム機構40のカムコロ44がカム体41のカム溝41a内に進入し、エアシリンダ51はプランジャのフリー状態に切り替え制御が行われる。そして、動メス2がカム機構40による作動に切り替わり、その後、動メス2と待機メス3とが所定の開き角度(互いの最前進位置の角度差)になると、連動ピン61は待機メス固定板62に当接し(図10(B))、押圧することで、待機メス3が動メス2と連動して前進回動を開始する(図10(C))。
【0040】
そして、待機機構70の待機メスストッパ71の係止爪74が待機メス固定板62の端部を係止すると共に(図11(A))、動メス2及び待機メス3が各々の最前進位置に到達する(図11(B))。このとき、動メス2の先端部は最終針における水平釜の剣先により捕捉された糸のループに突入している。
そして、カム機構40は後退回動の付与に切り替わり、動メス2は単独で後退回動を開始する。これにより動メス2は糸を捕捉して切断位置(最前進位置)で待機する待機メス3側に引き寄せてゆく。
そして、動メス2における切断位置に当接すると、待機メス3との協働により糸の切断が行われる(図11(C))。
【0041】
さらに、動メス2が後退を続けると、突状部24が待機メスストッパ71の係止爪74に当接し、これを外側に押し戻す(図12(A))。
その結果、待機メス固定板62が解放されて、復帰バネ12により待機メス3は最後退位置まで引き戻される(図12(B))。
そして、カム機構40のカムコロ44はカム溝41aから排出され、エアシリンダ51はプランジャのフリー状態が解除され、後退駆動が行われる。これにより、動メス2は最後退位置まで引き戻され、糸切断動作が終了する(図12(C))。
【0042】
(糸切断装置の効果)
上記糸切断装置10は、動メス2とカム機構40の動力の接続及び切断の切り替えを、待機メス3ではなく動メス2に対してエアシリンダ51が前後動作を付与することにより行うので、従来技術の場合のような、カム機構で後退移動を行う動メスに対して非常に正確なタイミングで待機メスをエアシリンダにより後退させるような必要性がなく、エアシリンダ51の後退動作開始タイミングを適宜調節することによりカム機構40とエアシリンダ51との干渉の発生を低減し、トラブルのない良好な切断動作を実現することが可能となる。
また、待機メス3ではなく動メス2に対してエアシリンダ51が前後動作を付与することにより行うので、糸種類による待機メス3の動作遅れの影響を低減し、かかる理由からも良好な切断動作を実現することが可能となる。
【0043】
さらに、待機機構70は係止爪74を用いて待機メス3の回動を規制するラッチ機構とし、動メス2と一体的に後退移動する突起部24が係止爪74を解除するので、動メス2と待機メス3とを個別の駆動源により動作させて所定のタイミングで同期させる場合と異なり、動メス2の後退動作時における解除タイミングを常に一定することが可能となり、さらなる良好な切断動作を実現することが可能となる。
さらに、突起部24を備える支持板22を動メス2と分離可能な別部材で構成したので、突起部24による待機メス3の解除タイミングを変えることなく、動メス2の位置調節を図ることが可能となる。
さらに、動メス2と一体で動作する連動ピン61と待機メス3と一体的に動作する待機メス固定板62との押圧接触により動メス2と待機メス3の前進方向の連動を図っているので、動メス2と待機メス3の前進方向のみを連動させ、後退方向を互いにフリーとする連動機構の構成を簡易な構造により実現可能とする。
また、カム機構40により動メス2に往復動を付与されている間は、エアシリンダ51のジョイント53が外力に従って自在に移動可能となるようにエアシリンダ51を制御しているので、動メス2とエアシリンダ51又は動メス2とカム機構40との連動の切り替えを行う手段を不要としつつ、エアシリンダ51の影響を受けることなくカム機構40の動作付与を行うことが可能となる。
【0044】
(その他)
なお、上記糸切断装置10では、復帰手段として復帰バネ12を利用しているが、これに限らずアクチュエータを利用しても良い。
例えば、図13に示す例のように、復帰手段としてのアクチュエータとしてエアシリンダ12Aを利用しても良い。この場合、待機メス軸31(図13では図示略)に連結されて待機メス軸31と共に回動を行う入力腕13Aの回動端部にエアシリンダ12Aのプランジャに取り付けられたジョイントを連結し、待機機構70(図13では図示略)の待機状態が解除されたときにエアシリンダ12Aを作動させて待機メス3を最前進位置から最後退位置に復帰させるように制御する。動メス2の駆動は動メスリンク軸42に連結されて動メスリンク軸42と共に回動を行う入力腕13Aの回動端部に連結したエアシリンダ12Aで行う。
また、この構成の場合も、連動機構60(図13では図示略)により待機メス3が前進回動を行っている間はプランジャがフリーとなるように空気圧回路を制御することが望ましい。
【0045】
また、上記糸切断装置10では、カム機構40により動メス2に動力の付与が行われている期間はエアシリンダ51のプランジャをフリーとする制御を行っているが、これに限定されず、例えば、エアシリンダ51はプランジャの後退位置と前進位置とでそれぞれ大気解放を行わずにその位置を維持する制御を行って良い。その場合、カム機構40により動メス2に回動動作が付与されている期間は、エアシリンダ51が動作を阻害しないように、ジョイント53と入力腕54との間をバネなどの弾性部材で連結することが望ましい。これにより、カム機構40の動力付与期間中は、バネを引き延ばしながら入力腕54はジョイント53から離れて動作することができる。また或いは、ジョイント53と入力腕54とをマグネット等で連結し、カム機構40の動力付与期間中は互いに分離可能としても良い。いずれの場合も、カム機構40の動力付与期間が終了すると、再びエアシリンダ51のジョイント53を後退移動するように駆動することにより、動作メス2を最後退位置に戻すことが可能である。
【0046】
また、上記実施形態では、待機メス3が待機メス台32の回動端部に固定装備されたものを例示したが、図14に示す例のように、待機メス3の基端部にその回動半径方向におおむね沿っている長穴3bを形成し、当該長穴3bを介して二つの止めネジ3cにより待機メス台32の回動端部に締結装備しても良い。かかる構造により、待機メス3をその回動半径方向に沿って移動調節することができ、待機メス3と動メス2のかみ合わせの調節を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 下軸
2 動メス
3 待機メス
10 糸切断装置
12 復帰バネ(復帰手段)
24 突起部(解除手段、突状体)
40 カム機構
41 カム体(原節)
44 カムコロ(カム従節)
51 エアシリンダ(アクチュエータ)
53 ジョイント(動作部)
60 連動機構
61 連動ピン
62 待機メス固定板
70 待機機構
74 係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に往復回動動作可能に支持された動メスと、
前記動メスに摺接すると共に前後に往復回動動作可能に支持された待機メスと、
前記動メスの後退時に切断位置において前記待機メスとの協働により糸の切断を行う、水平釜の釜軸台又はその周囲に設けられたミシンの糸切断装置において、
下軸から動力を得て回転を行うカムの原節となるカム体と、前記動メスに前後の往復回動動作を付与するカム従節とを有するカム機構と、
前記カム機構との前記動メスの動力伝達の接続と切断とを、前記動メスの最後退位置からの前進及び最後退位置への後退の各動作を付与するアクチュエータと、
前記待機メスがその最前進位置に到達するまで前進移動を行う前記動メスと連動させる連動機構と、
前記動メスの後退移動時に前記待機メスが後退しないように待機させる待機機構と、
前記動メスの切断位置の通過後に前記待機機構による待機状態を解除する解除手段と、
前記待機メスを最後退位置に復帰させる復帰手段とを備えることを特徴とするミシンの糸切断装置。
【請求項2】
前記待機機構は、前記動メスの最前進位置到達時に前記待機メスを後退しないように係止する爪を有するラッチ機構であり、
前記解除手段は、前記動メスと一体的に後退移動すると共に、前記動メスの切断位置の通過後に前記爪を解除方向に移動させる突状体であることを特徴とする請求項1記載のミシンの糸切断装置。
【請求項3】
前記解除手段の突状体は、前記動メスと分離可能な別部材からなることを特徴とする請求項2記載のミシンの糸切断装置。
【請求項4】
前記連動機構は、前記動メス又は当該動メスと一体となって往復回動動作を行う部材が前記待機メス又は当該待機メスと一体となって往復回動動作を行う部材を押圧することにより前記動メスの前進方向の動作のみを前記待機メスに連動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシンの糸切断装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、往復の移動動作を行う動作部を備えると共に、当該動作部を前記動メスと連結し、
前記カム機構により前記動メスに往復動を付与されている間は、前記アクチュエータの動作部が外力に従って自在に移動可能となるように前記アクチュエータを制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシンの糸切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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