説明

ミストサウナ装置

【課題】浴室に配置した噴霧ヘッド2に連なる噴霧用流路9に介設した液々熱交換器10を備え、噴霧ヘッドに供給する水を熱源機5から熱媒循環路11を介して液々熱交換器に供給する熱媒体により加熱するようにしたミストサウナ装置であって、液々熱交換器の上流側の噴霧用流路の部分に介設した給水弁14と、熱媒循環路に介設した熱媒弁12とを備えるものにおいて、液々熱交換器の内部漏れを生じた場合にこれを検出できるようにして信頼性を向上させる。
【解決手段】液々熱交換器10の下流側の噴霧用流路9の部分の温度を検出する温度センサ16を備える。ミスト運転が行われていないときに、給水弁14を閉弁したまま熱源機5を作動させると共に熱媒弁12を開弁させ、温度センサ16の検出温度の変化に基づいて内部漏れの有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室に配置した噴霧ヘッドから温水を噴霧させてサウナ効果を得られるようにしたミストサウナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のミストサウナ装置では、一般に、熱源機の給湯用熱源部で加熱された温水を噴霧ヘッドに供給している(例えば、特許文献1参照)。ここで、給湯用熱源部のバーナを燃焼させるには、所定の最低作動流量(例えば、4リットル/分)以上の水を給湯用熱源部の熱交換器に流す必要がある。一方、噴霧ヘッドで温水をミスト状に噴出させるのに適した流量は微少量(例えば、2リットル/分)であり、給湯用熱源部で加熱された温水を全て噴霧ヘッドから噴出させるとミスト粒径が大きくなって、使用者に不快感を与える虞がある。そこで、上記特許文献1に記載のものでは、給湯用熱源部と噴霧ヘッドとの間の経路から排水路を分岐し、給湯用熱源部で加熱された温水の一部を排水して、噴霧ヘッドに適量の温水が供給されるようにしている。
【0003】
然し、このように温水の一部を排水したのでは、資源の無駄になりランニングコストが増大する。そこで、噴霧ヘッドに連なる噴霧用流路の上流端に、水道水を供給する給水配管を接続すると共に、噴霧用流路の途中に液々熱交換器を介設し、熱源機の暖房用熱源部から熱媒循環路を介して液々熱交換器に供給される不凍液などの熱媒体により、噴霧ヘッドに供給する水を加熱するようにしたミストサウナ装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。これによれば、給湯用熱源部を使用する場合のような最低作動流量による流量の制限を受けず、液々熱交換器に流す水の流量を抑えることにより、液々熱交換器で加熱された温水の全量を噴霧ヘッドから所望のミスト粒径で噴霧することができる。そのため、排水が不要になり、ランニングコストを低減できる。
【0004】
尚、このものでは、液々熱交換器の上流側の噴霧用流路の部分に閉弁で液々熱交換器への給水を遮断する給水弁が介設され、液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分に閉弁で噴霧ヘッドへの給水を遮断する噴霧弁が介設されると共に、液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分の温度を検出する噴霧温度センサが設けられ、また、熱媒循環路に閉弁で液々熱交換器への熱媒体の供給を遮断する熱媒弁が介設されると共に、熱媒循環路に流れる熱媒体の温度を検出する熱媒温度センサが設けられている。そして、ミスト運転の開始指令が出されたとき、先ず、熱源機を作動させると共に熱媒弁を開弁し、熱媒温度センサの検出温度が所定の予熱完了温度に上昇したところで給水弁及び噴霧弁を開弁してミスト運転を開始し、以後、噴霧温度センサの検出温度が設定温度に維持されるように温調制御を行っている。また、噴霧弁の下流側の噴霧用流路の部分に排水弁を介設した排水路を分岐接続し、ミスト運転終了後に排水弁を開弁して、噴霧弁の下流側の噴霧用流路の部分に残留する水を排水路を介して排水するようにしている。
【0005】
ところで、液々熱交換器を用いる場合、長期間使用すると、腐食等で液々熱交換器の内部漏れを生ずる可能性がある。然し、上記特許文献2に記載のものでは、液々熱交換器の内部漏れに対する対策が全く講じられておらず、内部漏れを生じてもそのまま放置されてしまう。
【特許文献1】特開2002−489号公報
【特許文献2】特開2003−334230号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、液々熱交換器の内部漏れを生じた場合にこれを検出できるようにして信頼性を向上させたミストサウナ装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、熱源機と、浴室に配置した噴霧ヘッドと、噴霧ヘッドに連なる噴霧用流路に介設した液々熱交換器とを備え、噴霧ヘッドに供給する水を熱源機から熱媒循環路を介して液々熱交換器に供給する熱媒体により加熱し、噴霧ヘッドから温水を噴霧させるミスト運転を行うようにしたミストサウナ装置であって、液々熱交換器の上流側の噴霧用流路の部分に介設した、閉弁で液々熱交換器への給水を遮断する給水弁と、熱媒循環路に介設した、閉弁で液々熱交換器への熱媒体の供給を遮断する熱媒弁とを備えるものにおいて、液々熱交換器の内部漏れを検査する漏れ検査手段が設けられ、漏れ検査手段は、ミスト運転が行われていない時に給水弁を閉弁したまま熱源機を作動させると共に熱媒弁を開弁させて検査運転を行う運転制御手段と、検査運転時に液々熱交換器の内部漏れによる噴霧用流路への熱媒体の混入に起因して変化する状態量を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいて内部漏れの有無を判別する判別手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
検査運転時には、給水弁が開弁されないため、噴霧用流路の液々熱交換器内の流路部分に水圧が作用しない。従って、液々熱交換器の内部漏れが有ると、検査運転時に熱媒弁の開弁により液々熱交換器内の熱媒循環路の部分に液圧が作用したところで噴霧用流路に熱媒体が混入する。そして、本発明では、噴霧用流路への熱媒体の混入に起因して変化する状態量を検出する検出手段の検出結果に基づいて内部漏れの有無を判別するため、内部漏れを生じたときはこれを速やかに検出でき、信頼性が向上する。
【0009】
ここで、ミスト運転停止時に液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の残留水が排水されていると、噴霧用流路への熱媒体の混入で液々熱交換器の下流側の噴霧用流路内の水位が上昇する。また、液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分に排水弁を介設した排水路が分岐接続されている場合、検査運転時に排水弁を開弁させれば、排水路の分岐部上流側の噴霧用流路の部分に残留する水が噴霧用流路への熱媒体の混入で排水路に押し出されて、排水路に水が流れる。また、噴霧用流路に熱媒体が混入すると、液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分の温度上昇速度が混入した熱媒体の熱影響で速くなる。従って、液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分の水位や、排水路の水流や、液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分の温度を上記状態量として、内部漏れの有無を判別することができる。
【0010】
然し、水位や水流を上記状態量とする場合には、検出手段として水位センサや水流スイッチ等を特別に設ける必要があり、コストが高くなる。一方、従来から温調制御のために液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分の温度を検出する噴霧温度センサは設けられている。従って、液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分の温度を上記状態量とする場合は、噴霧温度センサを検出手段に兼用でき、コスト的に有利である。
【0011】
このように検出手段として噴霧温度センサを用いる場合、判別手段は、噴霧温度センサの検出温度の所定時期からの上昇量が所定の検査時間内に所定の判定値以上になった場合に内部漏れ有りと判別するように構成されていることが望ましい。ここで、噴霧温度センサの検出温度(液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分の温度)は噴霧用流路への熱媒体の混入を生ずると内部漏れの無い正常時より速く上昇し、検査時間内の温度上昇量が大きくなる。従って、上記判定値を正常時における検査時間内の温度上昇量の上限よりも若干高く設定しておくことにより、内部漏れの有無を正確に判別できる。
【0012】
尚、液々熱交換器における熱交換量は熱媒循環路に流れる熱媒体の温度と噴霧用流路の液々熱交換器内の流路部分に残留する水の温度との温度差に応じて変化し、初期水温が低いほどその後の噴霧温度センサの検出温度の上昇速度が速くなり、正常時における検査時間内の温度上昇量も大きくなる。従って、上記判定値を一義的に定める場合には、初期水温が低い場合における正常時の温度上昇量を考慮して比較的大きな値に設定する必要がある。然し、これでは、初期水温が高い場合、噴霧用流路への熱媒体の混入を生じても、噴霧温度センサの検出温度の検査時間内の上昇量が判定値を下回り、内部漏れ有りと判定できなくなる可能性がある。
【0013】
かかる不具合を解消するため、上記判定値は、熱媒循環路に流れる熱媒体の温度が安定した時の熱媒温度センサの検出温度と上記所定時期の噴霧温度センサの検出温度との差に応じて可変設定されることが望ましい。尚、熱媒温度センサは、熱媒循環路に流れる熱媒体の温度を検出するセンサとして従来から設けられているものであり、コストアップの要因にはならない。また、「熱媒体の温度が安定した時」とは、熱媒体の温度が熱源機で設定される加熱温度に上昇してほぼ一定になった時を意味する。ここで、熱媒体の温度が安定した時の熱媒温度センサの検出温度と上記所定時期の噴霧温度センサの検出温度との差は液々熱交換器での熱交換量と密接な関係があり、この差に応じて判定値を可変設定することにより誤判定を防止できる。
【0014】
尚、上記所定時期は検査運転の開始時であることが望ましいが、熱媒体に流れる熱媒体の温度が安定した時を所定時期とすることも可能である。
【0015】
また、検出手段として噴霧温度センサを用いる場合は、噴霧温度センサの配置部の下流側の噴霧用流路の部分に、排水弁を介設した排水路が分岐接続され、検査運転時に排水弁が開弁されることが望ましい。これによれば、噴霧用流路に熱媒体が混入した場合、混入した熱媒体が噴霧温度センサの配置部を経由して排水路に流れるようになる。そのため、噴霧温度センサの検出温度の上昇量がより大きくなり、内部漏れの検査精度が向上する。
【0016】
ところで、ミスト運転の停止直後等で噴霧温度センサの検出温度がかなり高い場合には、漏れ検査手段による漏れ検査の実行時に噴霧用流路に熱媒体が混入しても、噴霧温度センサの検出温度は然程上昇せず、誤判定を生じ易くなる。この場合、漏れ検査手段による漏れ検査を実行する前に噴霧温度センサで検出された温度が所定の基準温度を上回っているときは漏れ検査の実行を禁止する禁止手段を備えていれば、このような誤判定を防止でき、有利である。
【0017】
尚、後述する実施形態において、上記運転制御手段に相当するのは図2のS4のステップの処理であり、上記判別手段に相当するのは図2のS8〜S10のステップの処理であり、上記禁止手段に相当するのは図2のS3のステップの処理である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1を参照して、1は浴室を示している。浴室1には、噴霧ヘッド2と、浴室暖房器3とが配置されている。浴室暖房器3は、浴室1内の空気を循環させる図示省略した循環ファンと放熱器4とを内蔵している。放熱器4は、浴室1の外部(屋外等)に配置した熱源機5に熱媒循環路6を介して接続されている。そして、熱源機5の作動により、熱源機5で加熱された熱媒体(水、不凍液等)が熱媒循環路6を介して放熱器4に供給され、放熱器4で加熱された空気が循環ファンにより浴室1に循環されて、浴室1の暖房が行われる。尚、熱源機5には、必要に応じて浴室暖房器3以外の暖房端末も各別の熱媒循環路を介して接続される。ここで、暖房端末には浴室暖房器3を含む温風暖房器等の高温暖房端末と床暖房等の低温暖房端末とがあり、高温暖房端末の運転時には熱源機5における熱媒体の加熱設定温度を比較的高く(例えば、85℃)し、低温暖房端末のみの運転時には熱媒体の加熱設定温度を比較的低く(例えば、70℃)としている。
【0019】
噴霧ヘッド2には、水道管7に逆止弁8を介して接続される噴霧用流路9を介して水が供給される。噴霧用流路9には液々熱交換器10が介設されている。そして、熱源機5で加熱された熱媒体を浴室暖房器3用の熱媒循環路6から分岐した液々熱交換器用の熱媒循環路11を介して液々熱交換器10に供給し、噴霧ヘッド2に供給する水を液々熱交換器10において熱媒体により加熱できるようにしている。熱媒循環路11には熱媒弁12が介設されており、熱媒弁12の閉弁で液々熱交換器10への熱媒体の供給が遮断されるようにしている。尚、本実施形態の熱媒弁12は熱媒体の流量を調節可能な流量調節弁で構成されている。また、熱媒循環路11には、これに流れる熱媒体の温度を検出する熱媒温度センサ13が設けられている。
【0020】
液々熱交換器10は、噴霧用流路9の上流側が下、下流側が上に位置するように起立姿勢で配置されている。そして、液々熱交換器10の上流側の噴霧用流路9の部分に給水弁14を介設すると共に、液々熱交換器10の下流側の噴霧流路9の部分に噴霧弁15を介設し、給水弁14の閉弁で液々熱交換器10への給水が遮断され、噴霧弁15の閉弁で噴霧ヘッド2への給水が遮断されるようにしている。更に、液々熱交換器10と噴霧弁15との間の噴霧用流路9の部分に、噴霧用流路9の温度を検出する噴霧温度センサ16を設け、更に、噴霧温度センサ16の配置部と噴霧弁15との間の噴霧用流路9の部分に排水路17を分岐接続し、この排水路17に排水弁18を介設している。
【0021】
液々熱交換器10、熱媒弁12、熱媒温度センサ13、給水弁14、噴霧弁15、噴霧温度センサ16及び排水弁18は熱源機5とは別置きの噴霧ユニット19に内蔵されている。そして、噴霧ユニット19に設けた噴霧コントローラ20に熱媒温度センサ13と噴霧温度センサ16の検出信号を入力し、この噴霧コントローラ20により熱媒弁12、給水弁14、噴霧弁15及び排水弁18を制御するようにしている。尚、噴霧コントローラ20は、熱源機5用のコントローラ(図示せず)に通信可能に接続されている。また、図外のリモコンが噴霧コントローラ20に通信可能に接続され、リモコンに設けられたミストスイッチがオンされたときに噴霧コントローラ20によるミスト運転制御が行われる。
【0022】
ミスト運転制御では、先ず、熱源機5に作動指令を送って熱源機5を作動させると共に熱媒弁12を開弁させ、熱源機5で加熱された熱媒体を熱媒循環路11を介して液々熱交換器10に供給する。そして、熱媒温度センサ13の検出温度が所定の予熱完了温度に上昇したところで給水弁14と噴霧弁15とを開弁させる。これにより液々熱交換器10で加熱された温水が噴霧ヘッド2に供給され、噴霧ヘッド2から温水を噴霧するミスト運転が開始される。ミスト運転中は、噴霧温度センサ16の検出温度が所定の設定温度に維持されるように、熱媒弁12により熱媒体の流量を制御する温調制御を行う。ミスト運転の停止時は、熱媒弁12を閉弁して液々熱交換器10への熱媒体の供給を停止すると共に、給水弁14を閉弁して液々熱交換器10への給水を停止する。次に、排水弁18を開弁し、排水路17の分岐部より下流側の噴霧用流路9の部分に残留する水を排水した後、噴霧弁15と排水弁18を閉弁する。尚、噴霧弁15が無くても、給水弁14の開閉で噴霧ヘッド2からの温水噴霧とその停止とを行うことができるため、噴霧弁15は省略しても良い。
【0023】
ところで、長期間使用すると、腐食等により液々熱交換器10の内部漏れを生ずることがある。そこで、噴霧コントローラ20は、液々熱交換器10の内部漏れを検査する漏れ検査制御も行うように構成されている。
【0024】
漏れ検査制御の詳細は図2に示す通りであり、先ず、S1のステップで前回の漏れ検査から所定の検査時間間隔(例えば、720時間)が経過したか否かを判別し、経過したときにS2のステップでミスト運転が行われているか否かを判別する。ミスト運転が行われていないときは、S3のステップで噴霧温度センサ16の検出温度Tfが所定の基準温度(例えば、40℃)以下であるか否かを判別する。
【0025】
Tfが基準温度以下のときは、S4のステップに進んで検査運転処理を実行する。検査運転処理では、熱源機5に作動指令を送って熱源機5を作動させると共に、熱媒弁12と排水弁18とを開弁させる。給水弁14と噴霧弁15は閉弁状態に維持される。次に、S5のステップで検査運転開始時の噴霧温度センサ16の検出温度Tfを初期水温Tfsとして記憶した後、S6のステップで熱媒循環路11に流れる熱媒体の温度が安定したか否かを判別する。熱媒体の温度は熱源機5での加熱に伴い次第に上昇し、熱源機5における熱媒体の加熱設定温度に上昇したところでほぼ一定になって安定する。S6のステップでの判別は、熱媒温度センサ13の検出温度Tnに基づいて行っても良いが、検査運転開始時からある程度時間が経過すると熱媒体の温度が加熱設定温度に上昇して安定するため、検査運転開始時から所定の待ち時間(例えば、30秒)経過したときに熱媒体の温度が安定したと判定することも可能である。尚、加熱設定温度は、何れの暖房端末も運転されていない時に検査運転が行われた場合や高温暖房端末の運転時に検査運転が行われた場合は比較的高くなり、低温暖房端末の運転時に検査運転が行われた場合は比較的低くなる。
【0026】
熱媒体の温度が安定したと判定されたときは、S7のステップに進み、その時点での熱媒温度センサ13の検出温度Tnと上記初期水温Tfsとの差の3分の1を第2の判定値YT2として設定する。次に、S8のステップに進み、その時点での噴霧温度センサ16の検出温度Tfの検査運転開始時からの上昇量(=Tf−Tfs)が所定の固定値に設定される第1の判定値YT1以上になったか否かを判別する。Tf−Tfs<YT1であれば、S9のステップでTf−Tfsが第2判定値YT2以上になったか否かを判別する。Tf−Tfs<YT2であれば、S10のステップで検査運転開始時から所定の検査時間(例えば、3分)が経過したか否かを判別し、検査時間が経過するまではS8のステップからS10のステップまでの処理を繰り返す。
【0027】
そして、Tf−Tfsが第1と第2の各判定値YT1,YT2以上になることなく検査時間が経過したときは、S11のステップで液々熱交換器10の内部漏れ無しと判断すると共に、S12のステップで熱源機5に作動停止指令を送ると共に熱媒弁12及び排水弁18を閉弁させる検査運転の終了処理を行った後、S1のステップに戻り次回の検査に備える。
【0028】
一方、検査時間が経過する前に、Tf−Tfsが第1の判定値YT1または第2の判定値YT2以上になったときは、S13のステップで液々熱交換器10の内部漏れ有りと判断すると共に、S14のステップで異常処理を行う。異常処理では、リモコンで異常の発生を報知すると共に、以後のミスト運転を禁止する。
【0029】
ここで、検査運転時には、給水弁14が開弁されないため、噴霧用流路9の液々熱交換器10内の流路部分に水圧が作用しない。従って、液々熱交換器10の内部漏れが有ると、検査運転時に熱媒弁12の開弁により液々熱交換器10内の熱媒循環路11の部分に液圧が作用したところで噴霧用流路9に熱媒体が混入する。噴霧温度センサ16の検出温度Tfは、液々熱交換器10の内部漏れが無い正常時でも液々熱交換器10から配管及び残留水を介して伝達される熱媒体の熱により上昇するが、内部漏れにより噴霧用流路9に熱媒体が混入すると、混入した熱媒体の熱影響でTfが正常時に比し速く上昇する。特に、本実施形態では、検査運転時に排水弁18が開弁されるため、噴霧用流路9に熱媒体が混入した場合、混入した熱媒体が噴霧温度センサ16の配置部を経由して排水路18に流れるようになる。従って、噴霧温度センサ16の検出温度Tfの上昇速度がより速くなる。そして、噴霧用流路9に熱媒体が混入すると、噴霧温度センサ16の検出温度Tfの検査運転開始時からの上昇量が検査時間内に第1や第2の判定値YT1,YT2以上になり、上記の如く内部漏れ有りと判定される。
【0030】
尚、液々熱交換器10における熱交換量は熱媒循環路11に流れる熱媒体の温度と噴霧用流路9の液々熱交換器10内の流路部分に残留する水の温度との温度差に応じて変化する。そして、残留水の初期水温が低いほど又熱媒体の温度が高いほどその後の噴霧温度センサ16の検出温度Tfの上昇速度が速くなり、正常時における検査時間内の温度上昇量も大きくなる。従って、固定値である第1判定値YT1は、初期水温が低く、且つ、熱媒体の温度高い場合における正常時の温度上昇量を考慮して比較的大きな値(例えば、15℃)に設定する必要がある。その結果、初期水温が高い場合や熱媒体の温度が低い場合には、噴霧用流路9への熱媒体の混入を生じても、噴霧温度センサ16の検出温度Tfの検査時間内の上昇量が第1判定値YT1以上にならないことがある。
【0031】
そのため、本実施形態では、判定値として第1判定値YT1に加え、熱媒体の温度が安定した時の熱媒温度センサ13の検出温度Tnと初期水温Tfsとの差に応じて可変設定される第2判定値YT2を用意している。ここで、熱媒温度センサ13の検出温度Tnと初期水温Tfsとの差は液々熱交換器10での熱交換量、即ち、正常時における噴霧温度センサ16の検出温度Tfの上昇量に密接に関係する。そして、正常時における噴霧温度センサ16の検出温度Tfの検査時間内の上昇量の上限より若干大きくなるように熱媒温度センサ13の検出温度Tnと初期水温Tfsとの差に応じて第2判定値YT2を設定することができる。尚、本実施形態では、熱媒温度センサ13の検出温度Tnと初期水温Tfsとの差を「3」で除した値を第2判定値YT2としているが、除数は液々熱交換器10の種類や検査時間の長さによって変わる。何れにしても、第2判定値YT2は初期水温Tfsが高いほど又熱媒体の温度が低いほど小さくなる。例えば、Tn=70℃、Tfs=40℃の場合、本実施形態ではYT2=10℃になる。従って、初期水温が高い場合や熱媒体の温度が低い場合でも、噴霧用流路9への熱媒体の混入を生じたときは噴霧温度センサ16の検出温度Tfの検査時間内の上昇量が第2判定値YT2以上になり、内部漏れ有りと正確に判定される。
【0032】
但し、初期水温Tfsが低い場合や熱媒体の温度が高い場合、例えば、Tn=85℃、Tfs=10℃の場合にはYT2が35℃と過大になる。従って、初期水温が低い場合や熱媒体の温度が高い場合には、噴霧用流路9への熱媒体の混入を生じても、噴霧温度センサ16の検出温度Tfの検査時間内の上昇量が第2判定値YT2以上にならない可能性がある。そのため、判定値として第1判定値YT1と第2判定値YT2とを併用することが望ましい。
【0033】
尚、上記実施形態では、Tfsを検査運転開始時の噴霧温度センサ16の検出温度Tfとしているが、熱媒循環路11に流れる熱媒体の温度が安定した時の噴霧温度センサ16の検出温度TfをTfsとして、S8,S9のステップでの判別処理を行うことも可能である。
【0034】
また、ミスト運転の停止直後等で検査運転開始時の噴霧温度センサ16の検出温度Tfがかなり高い場合には、検査運転中に噴霧用流路9に熱媒体が混入しても、噴霧温度センサ16の検出温度Tfは然程上昇せず、誤判定を生じ易くなる。そこで、上記実施形態では、S3のステップにおいて噴霧温度センサ16の検出温度Tfと基準温度とを比較し、Tfが基準温度を上回っているときはS4以下のステップに進んで漏れ検査を実行することを禁止している。これにより、誤判定が未然に防止される。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、上記実施形態では、S2のステップでミスト運転が行われているか否かを判別しているが、S2のステップでミストスイッチがオンされたか否かを判別し、オンされたときに、S3以下のステップに進むようにしても良い。ミストスイッチがオンされたときは、通常、給水弁14、噴霧弁15及び排水弁18を閉弁したまま、熱源機5に作動指令を送って熱源機5を作動させると共に熱媒弁12を開弁させる予熱運転を行い、熱媒温度センサ13の検出温度が所定の予熱完了温度に上昇したところで、給水弁14及び噴霧弁15を開弁してミスト運転を開始する。そして、上記制御によれば、ミストスイッチがオンされてからミスト運転が開始されるまでの間の「ミスト運転が行われていない時」に予熱運転に代えて検査運転が行われることになる。尚、この場合には、S11のステップで内部漏れ無しと判断されたとき、S12のステップで排水弁18を閉弁すると共に給水弁14及び噴霧弁15を開弁して、ミスト運転を開始する。
【0036】
また、上記実施形態では、検査運転時に排水弁18を開弁しているが、排水弁18は閉弁したままでも良い。但し、排水弁18を開弁すれば、液々熱交換器10の内部漏れにより噴霧用流路9に混入した熱媒体が上記の如く噴霧温度センサ16の配置部を経由して排水路17に流れるため、噴霧温度センサ16の検出温度Tfの上昇量が排水弁18を閉弁状態に維持する場合より大きくなり、検査精度が向上する。
【0037】
また、上記実施形態では、液々熱交換器10の内部漏れによる噴霧用流路9への熱媒体の混入に起因して変化する状態量として、噴霧温度センサ16で検出される液々熱交換器10の下流側の噴霧用流路9の部分の温度を用い、この温度の変化に基づいて液々熱交換器10の内部漏れの有無を判別しているが、これに限らない。例えば、検査運転時に排水弁18を閉じたまま噴霧弁15を開弁すると、給水弁14から排水路17の分岐部までの噴霧用流路9の部分にミスト運転停止時の排水後にも残留する残留水の水位が噴霧用流路9への熱媒体の混入で排水路17の分岐部より高い位置まで上昇する。また、検査運転時に排水弁18を開弁させれば、排水路17の分岐部上流側の噴霧用流路9の部分に残留する水が噴霧用流路9への熱媒体の混入で排水路17に押し出されて、排水路17に水が流れる。従って、液々熱交換器10の内部漏れによる噴霧用流路9への熱媒体の混入に起因して変化する状態量として噴霧用流路9の水位や排水路17の水流を用い、これら水位や水流の変化に基づいて内部漏れの有無を判別することも可能である。但し、この場合には、水位センサや水流スイッチといった漏れ検査専用の検出手段を設ける必要がある。これに対し、上記実施形態では、ミスト運転時の温調制御のために設ける噴霧温度センサ16を漏れ検査用の検出手段に兼用できるため、コスト的に有利である。
【0038】
また、上記実施形態では、熱媒弁12を流量調節弁で構成し、ミスト運転時に熱媒弁12による熱媒体の流量調節で噴霧温度センサ16の検出温度を設定温度に維持するための温調制御を行っているが、熱媒弁12を開閉弁で構成すると共に給水弁14を流量調節弁で構成し、ミスト運転時に給水弁14による通水量の調節で温調制御を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態のミストサウナ装置の全体構成を示す説明図。
【図2】実施形態のミストサウナ装置で実行する漏れ検査制御の内容を示すフロー図。
【符号の説明】
【0040】
1…浴室、2…噴霧ヘッド、5…熱源機、9…噴霧用流路、10…液々熱交換器、11…熱媒循環路、12…熱媒弁、13…熱媒温度センサ、14…給水弁、16…噴霧温度センサ、17…排水路、18…排水弁、20…噴霧コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機と、浴室に配置した噴霧ヘッドと、噴霧ヘッドに連なる噴霧用流路に介設した液々熱交換器とを備え、噴霧ヘッドに供給する水を熱源機から熱媒循環路を介して液々熱交換器に供給する熱媒体により加熱し、噴霧ヘッドから温水を噴霧させるミスト運転を行うようにしたミストサウナ装置であって、液々熱交換器の上流側の噴霧用流路の部分に介設した、閉弁で液々熱交換器への給水を遮断する給水弁と、熱媒循環路に介設した、閉弁で液々熱交換器への熱媒体の供給を遮断する熱媒弁とを備えるものにおいて、
液々熱交換器の内部漏れを検査する漏れ検査手段が設けられ、漏れ検査手段は、ミスト運転が行われていない時に給水弁を閉弁したまま熱源機を作動させると共に熱媒弁を開弁させて検査運転を行う運転制御手段と、検査運転時に液々熱交換器の内部漏れによる噴霧用流路への熱媒体の混入に起因して変化する状態量を検出する検出手段と、検出手段の検出結果に基づいて内部漏れの有無を判別する判別手段とを備えることを特徴とするミストサウナ装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記液々熱交換器の下流側の噴霧用流路の部分の温度を前記状態量として検出する噴霧温度センサで構成されることを特徴とする請求項1記載のミストサウナ装置。
【請求項3】
前記判別手段は、前記噴霧温度センサの検出温度の所定時期からの上昇量が所定の検査時間内に所定の判定値以上になった場合に内部漏れ有りと判別するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のミストサウナ装置。
【請求項4】
前記熱媒循環路に流れる熱媒体の温度を検出する熱媒温度センサを備え、前記判定値は、熱媒循環路に流れる熱媒体の温度が安定した時の熱媒温度センサの検出温度と前記所定時期の前記噴霧温度センサの検出温度との差に応じて可変設定されることを特徴とする請求項3記載のミストサウナ装置。
【請求項5】
前記所定時期は検査運転の開始時であることを特徴とする請求項3または4記載のミストサウナ装置。
【請求項6】
前記所定時期は、前記熱媒循環路に流れる熱媒体の温度が安定した時であることを特徴とする請求項3または4記載のミストサウナ装置。
【請求項7】
前記噴霧温度センサの配置部の下流側の前記噴霧用流路の部分に、排水弁を介設した排水路が分岐接続され、前記検査運転時に排水弁が開弁されることを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載のミストサウナ装置。
【請求項8】
前記漏れ検査手段による漏れ検査を実行する前に前記噴霧温度センサで検出された温度が所定の基準温度を上回っているときは漏れ検査の実行を禁止する禁止手段を備えることを特徴とする請求項2〜7の何れか1項に記載のミストサウナ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−125217(P2007−125217A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320681(P2005−320681)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】