説明

ミストブロワ

【課題】送風量を大きくすることなく送風管から吐出される薬液を確実に径方向外側に拡散させることで薬液を広範囲に散布することのできるミストブロワを提供する。
【解決手段】拡散カバー80に、送風管60の端部から吐出される空気および薬液の流れを整える整流フィン81と、整流フィン81よりも径方向外側に傾斜するように設けられ、空気および薬液を径方向外側に案内するための拡散フィン82と、を設けている。これにより、拡散カバー80の開口率を小さくすることなく、薬液を混入させた空気の一部を拡散フィン82によって径方向外側に向けて吐出させることができるので、薬液を広範囲に散布するために送風量を大きくする必要はなく、装置の軽量化を図ることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風管から吐出される空気に農薬等の薬液を混入させることによって薬液を散布するミストブロワに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のミストブロワでは、送風機から送出された空気を流通させて端部から吐出させる送風管を備えており、送風管から吐出される空気に農薬等の薬液を混入させることによって薬液を散布するようにしたものが知られている。また、送風管の先端には、送風管から吐出される薬液を混入させた空気を径方向外側に拡散させるための拡散カバーが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平03−47053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記拡散カバーは、互いに間隔をおいて設けられた複数のフィンを有し、各フィンが拡散カバーの表面に対してそれぞれ所定角度を成している。送風管から吐出される薬液を広範囲に散布するためには、拡散カバーの各フィンを送風管の径方向外側に傾斜させる必要がある。拡散カバーは、各フィンを送風管の径方向外側に傾斜させると開口率が低くなるため、送風管から吐出される薬液を混入させた空気の流通抵抗が大きく、送風管から吐出される空気の流量を大きくしない限り、薬液の飛距離を確保しつつ薬液を広範囲に散布することができない。
また、前記ミストブロワでは、拡散カバーを交換したり、使用状態に応じて拡散カバーを送風管の端部から取り外して使用したりする場合がある。しかし、前記ミストブロワでは、拡散カバーが送風管と一体に構成されており、送風管の端部に対して拡散カバーを着脱することができない。
【0005】
本発明の目的とするところは、送風量を大きくすることなく送風管から吐出される薬液を混入させた空気を確実に径方向外側に拡散させることで薬液を広範囲に散布することのできるミストブロワを提供することにある。
また、本発明の目的とするところは、拡散カバーの着脱が容易なミストブロワを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、送風機から送出された空気を流通させて先端部から吐出させる送風管を備え、前記送風管を流通する空気に薬液を混合することによって薬液を散布するミストブロワにおいて、前記送風管の先端部に設けられ、前記送風管から吐出される薬液が混入した空気を径方向外側に拡散させる拡散カバーを備え、前記拡散カバーには、前記送風管から吐出される薬液が混入した空気の流れを整える整流フィンと、前記整流フィンよりも径方向外側に傾斜するように設けられ、薬液が混入した空気の一部を径方向外側に案内する拡散フィンと、が設けられている。
【0007】
これにより、薬液を混入させた空気の一部が拡散フィンによって径方向外側に案内されることから、拡散カバーの開口率を小さくすることなく、薬液を混入させた空気の一部が径方向外側に向けて吐出される。
【0008】
また、前記目的を達成するために、送風機から送出された空気を流通させて先端部から吐出させる送風管を備え、前記送風管を流通する空気に薬液を混合することによって薬液を散布するミストブロワにおいて、前記送風管の先端部に設けられ、前記送風管から吐出される薬液が混入した空気を径方向外側に拡散させる拡散カバーを備え、前記拡散カバーの外周部には、径方向に延びる延出部が設けられ、前記送風管の端部には、前記送風管の端部に前記拡散カバーを当接させながら回転させることによって前記延出部が係合可能であり、前記送風管の端部に前記拡散カバーを着脱自在に係止する係止片が設けられている。
【0009】
これにより、送風管の端部に拡散カバーを当接させながら回転させることによって延出部が係止片に係合することから、拡散カバーを回転させることによって送風管に対して拡散カバーが着脱される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、拡散カバーの開口率を小さくすることなく、拡散フィンによって一部の空気および薬液を径方向外側に向けて吐出させることができるので、薬液を広範囲に散布するために送風量を大きくする必要はなく、装置の軽量化を図ることが可能となる。
また、拡散カバーを回転させることによって送風管に対して拡散カバーを着脱できるので、拡散カバーの交換作業や拡散カバーを取り外して使用する作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態を示すミストブロワの斜視図である。
【図2】送風管の要部断面図である。
【図3】拡散カバーの正面図である。
【図4】図3のA−A´断面図である。
【図5】送風管に対して拡散カバーを取り付ける方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図5は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明のミストブロワ10は、使用者が背負いながら薬液等の液体を散布する作業を行うものである。
【0014】
このミストブロワ10は、図1に示すように、前面側に位置する液タンク20と、液タンク20に取り付けられ、液タンク20の下面側から後方に延びるフレーム30と、フレーム30の後側に位置するエンジン40と、液タンク20とエンジン40との間に配置された送風機50と、送風機50の右側面から前方に延びる送風管60と、を備えている。
【0015】
液タンク20は、上下方向に延びる中空状に形成されており、内部に散布用の薬液が貯蔵される。液タンク20の前面には背当部21が設けられ、背当部21には使用者がミストブロワ10を背負う際に肩に掛ける肩ベルト22が設けられている。
【0016】
フレーム30は、管状の部材を屈曲することによって、液タンク20の左右両側を上下方向に延びるとともに、それぞれの下端側から後方に延びるように形成されている。フレーム30の幅方向両側を後方に延びる部分には、板状の部材が架け渡されており、その上にエンジン40および送風機50が取り付けられる。
【0017】
エンジン40は、4ストローク式のエンジンであり、送風機50を駆動する動力源となる。
【0018】
送風機50は、回転軸がエンジン40に連結された遠心ファンであり、右側面に送風管60が接続されている。また、送風機50には、液タンク20内を加圧するための加圧管51の一端が接続され、加圧管51の他端が液タンク20の上部側に接続されている。
【0019】
送風管60は、円筒形状の部材からなり、可撓性を有する蛇腹管61を介して送風機50に接続されている。送風管60には、外周部から上方に延びるように設けられ、使用者が右手で把持するためのハンドル62が設けられている。ハンドル62の上部には、ハンドル62を把持した手で操作可能なスロットルレバー62aが設けられ、スロットルレバー62aの操作によってエンジン40の回転数が調整可能である。
【0020】
送風管60の先端側には、送風管60を流通する空気に薬液を混入させるための混合部70が先端部から間隔をおいて設けられている。
【0021】
混合部70は、図2に示すように、薬液を送風管60の外側から内側に流入させるための薬液流路71と、薬液流路71の下流側に設けられ、ベンチュリ効果によって薬液流路71を流通する薬液を空気に混入させるためのベンチュリ部72と、を有している。
【0022】
薬液流路71は、送風管60の外周部から径方向中央部まで延びるとともに、屈曲して送風管60の先端側に向かって延びている。送風管60内に位置する薬液流路71の流出側の端部には、薬液を送風管60内に噴霧するためのノズル71aが設けられている。また、薬液流路71の流入側には、薬液流路71を開閉するコック71bが設けられている。さらに、薬液流路71の流入側の端部には、液タンク20内の薬液を薬液流路71に流入させるための送液管71cが接続されている。送液管71cには、図1に示すように、薬液の流路を開閉するための流路開閉弁71dが設けられている。
【0023】
ベンチュリ部72は、図2に示すように、送風管60内において送風管60と同一の方向に延びる略円筒形状に形成されている。ベンチュリ部72は、外径寸法が送風管60の内径寸法よりも小さく形成され、送風管60の径方向略中央部に配置されている。ベンチュリ部72には、内径寸法が他の部分の内径寸法よりも小さく形成された縮径部72aが設けられ、縮径部72aから基端側および先端側のそれぞれに向かって漸次内径寸法が大きく形成されている。ベンチュリ部72の縮径部72aの径方向略中央部には、薬液流路71の流出側の端部が位置している。ここで、ベンチュリ部72を略円筒形状としているが、略円筒形状のベンチュリ部72には、例えば、下流側に向かって外径寸法が漸次大きくなる円錐台形の筒状に形成するものも含まれる。
【0024】
また、送風管60の先端には、混合部70において薬液を混入させた空気を送風管60から吐出させる際に送風管60の径方向外側に拡散させるための拡散カバー80が設けられている。
【0025】
拡散カバー80は、図2に示すように、送風管60の先端部の開口から空気の吐出方向に張り出すドーム形状の部材からなる。拡散カバー80は、図3に示すように、互いに同心円状に配置されたリング形状の複数の整流フィン81と、ベンチュリ部72の先端部側からベンチュリ部72の内面を延長した位置(図2の二点鎖線)に対応する部分に沿ってリング状に形成された拡散フィン82と、径方向中央部からそれぞれ径方向外側に延びるように設けられ、各整流フィン81および拡散フィン82を連結する複数の連結部83と、を有している。
【0026】
各整流フィン81は、図4に示すように、拡散カバー80の表面に対してそれぞれ同じ角度をなすように所定角度径方向外側に傾斜している。また、拡散フィン82は、拡散カバー80の表面に対して各整流フィン81のなす傾斜角度よりも大きく径方向外側に傾斜している。
【0027】
拡散カバー80の外周部には、互いに周方向に間隔をおいて径方向内側に延びるように設けられた複数の延出部84が設けられている。延出部84は、拡散カバー80の周方向一方に向かって厚さ寸法が大きくなるように形成されている。延出部84は、送風管60の先端部に対して、拡散カバー80の外周部を当接させながら拡散カバー80を周方向他方に回転させることによって、送風管60の先端部に設けられた係止片63に係合する。また、拡散カバー80の外周面には、使用者が指を掛けることが可能なように凹状に設けられた複数の把持部85が互いに周方向に間隔をおいて設けられている。
【0028】
また、送風管60の係止片63の基端側には、周方向に連続して径方向外側に延びるフランジ64が形成されている。フランジ64の外径寸法は、拡散カバー80の外径寸法よりも大きく形成されている。
【0029】
以上のように構成されたミストブロワでは、エンジン40の動力によって送風機50を駆動させると、送風機50の周囲の空気を吸入し、吸入した空気を送風管60内に流通させて送風管60の先端から吐出する。送風管60の先端から吐出される空気の風量は、スロットルレバー62aの操作によって調整可能である。この状態で、流路開閉弁71dを操作して薬液流路71を開放すると、液タンク20内の薬液が、混合部70において送風管60を流通する空気と混合され、空気と共に送風管60の先端から吐出される。
【0030】
このとき、送風管60の先端側を流通する空気は、一部がベンチュリ部72の内周部に流入する。ベンチュリ部72の内周部に流入した空気は、縮径部72aにおいて流速が上昇すると共に圧力が低下する。これにより、薬液流路71内の薬液は、縮径部72aに位置するノズル71aから吸引されてベンチュリ部72において空気と混合され、送風管60の先端から吐出される。
【0031】
また、送風管60の先端から吐出される薬液を混入させた空気は、拡散カバー80によって吐出方向が方向付けられる。送風管60の先端から吐出される空気および薬液は、大部分が各整流フィン81によって拡散カバー80の表面に対して所定角度径方向外側に案内される。また、ベンチュリ部72の内周部の外周側を流通する薬液を混入させた空気は、ベンチュリ部72の内面に沿って流通し、拡散フィン82によって各整流フィン81よりも大きく径方向外側に案内される。これにより、薬液を混合させた空気の中で最外周側の空気が拡散フィン82によって径方向外側に案内されることから、送風管60の先端から吐出される薬液が広範囲に散布される。
【0032】
また、拡散カバー80は、図5に示すように、送風管60の端部に外周部を当接させた後に回転させて延出部84を係止片63に係合させることにより、送風管60に取り付けられる。拡散カバー80は、送風管60に対して回転させることにより、係止片63に対する延出部84の係合と係合の解除とが切り換えられる。これにより、拡散カバー80は、必要に応じて送風管60に対して着脱可能である。
【0033】
このように、本実施形態のミストブロワによれば、拡散カバー80に、送風管60の端部から吐出される空気および薬液の流れを整える整流フィン81と、整流フィン81よりも径方向外側に傾斜するように設けられ、空気および薬液を径方向外側に案内するための拡散フィン82と、を設けている。これにより、拡散カバー80の開口率を小さくすることなく、薬液を混入させた空気の一部を拡散フィン82によって径方向外側に向けて吐出させることができるので、薬液を広範囲に散布するために送風量を大きくする必要はなく、装置の軽量化を図ることが可能となる。
【0034】
また、拡散フィン82は、拡散カバー80のベンチュリ部72の先端部側から内面を延長した位置に対応する部分に沿ってリング状に形成されている。これにより、ベンチュリ部72の内周部の外周側を流通する薬液を混入させた空気を送風管60の径方向外側に吐出させることが可能となるので、送風管60の径方向中央部から径方向外側までの広範囲に確実に薬液を散布することが可能となる。
【0035】
また、拡散カバー80の外周部には、径方向内側に延出する延出部84が設けられ、送風管60の端部には、送風管60の端部に拡散カバー80を当接させながら回転させることによって延出部84が係合可能であり、送風管60の端部に拡散カバー80を着脱自在に係止する係止片63が外側に延びるように設けられている。これにより、送風管60に対して拡散カバー80を確実に取り付けることが可能となるので、送風管60に取り付けられた拡散カバー80が他の物に接触して不用意に外れることを防止できる。また、送風管60に取り付けられた拡散カバー80の取り外しが容易なので、拡散カバー80の交換作業や拡散カバー80を取り外して使用する作業の作業効率を向上させることが可能となる。
【0036】
また、送風管60の先端側には、拡散カバー80の外径寸法よりも大きく形成されたフランジ64が設けられている。これにより、送風管60の先端が他の物に接触する場合に、フランジ64を接触させることができるので、拡散カバー80が直に他の物に接触して送風管60から拡散カバー80が脱落することを防止することが可能となる。
【0037】
尚、前記実施形態では、拡散カバー80に1つの拡散フィン82を設けているものを示したが、これに限られるものではない。例えば、ベンチュリ部72の先端部側からベンチュリ部72の内面を延長した位置に対応する部分であれば、拡散カバー80に複数の拡散フィンを設けるようにしてもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、送風管60の径方向略中央部にベンチュリ部72を設けるとともに、拡散カバー80の径方向略中央部を中心としてリング状の拡散フィン82を形成したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、ベンチュリ部72および拡散フィン82は、互いに対応する位置であれば、送風管60および拡散カバー80の中心から外れた位置に設けられていてもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、延出部84を拡散カバー80の外周部から径方向内側に延びるように形成したものを示したが、これに限られるものではない。例えば、延出部を拡散カバー80の外周部から径方向外側に延びるように形成し、径方向外側に延びる延出部と係合可能な係止片を送風管60に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10…ミストブロワ、60…送風管、63…係止片、64…フランジ、70…混合部、71…薬液流路、72…ベンチュリ部、80…拡散カバー、81…整流フィン、82…拡散フィン、84…延出部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機から送出された空気を流通させて先端部から吐出させる送風管を備え、前記送風管を流通する空気に薬液を混合することによって薬液を散布するミストブロワにおいて、
前記送風管の先端部に設けられ、前記送風管から吐出される薬液が混入した空気を径方向外側に拡散させる拡散カバーを備え、
前記拡散カバーには、前記送風管から吐出される薬液が混入した空気の流れを整える整流フィンと、前記整流フィンよりも径方向外側に傾斜するように設けられ、薬液が混入した空気の一部を径方向外側に案内する拡散フィンと、が設けられている
ことを特徴とするミストブロワ。
【請求項2】
前記送風管の先端部の近傍の内部には、ベンチュリ効果によって薬液を空気中に混入させる略円筒形状のベンチュリ部が設けられ、
前記拡散フィンは、前記ベンチュリ部の内面を前記円筒形状に沿って延長した位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のミストブロワ。
【請求項3】
送風機から送出された空気を流通させて先端部から吐出させる送風管を備え、前記送風管を流通する空気に薬液を混合することによって薬液を散布するミストブロワにおいて、
前記送風管の先端部に設けられ、前記送風管から吐出される薬液が混入した空気を径方向外側に拡散させる拡散カバーを備え、
前記拡散カバーの外周部には、径方向に延びる延出部が設けられ、
前記送風管の端部には、前記送風管の端部に前記拡散カバーを当接させながら回転させることによって前記延出部が係合可能であり、前記送風管の端部に前記拡散カバーを着脱自在に係止する係止片が設けられている
ことを特徴とするミストブロワ。
【請求項4】
前記送風管の先端側には、前記拡散カバーの外径寸法よりも大きく形成されたフランジが設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載のミストブロワ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−91023(P2013−91023A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234042(P2011−234042)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】