説明

ミュート制御装置、ミュート制御方法及びミュート制御プログラム

【課題】 ミュート回路のインピーダンスを大きくすることなく、かつ、瞬時にミュート状態に制御すること。
【解決手段】 ミュート解除状態からミュート状態に制御する場合、最初に、ミュート回路3が非減衰状態から減衰状態に移行することにより音声信号をミュート回路によって所定減衰量減衰させ、その後、ボリューム制御手段2の減衰量が最大減衰量に設定されることにより音声信号をボリューム制御手段2によって最大減衰量減衰させる。従って、電源オン時やセレクタ切換時に生じるポップノイズのレベルをミュート回路によって減衰することができ、定常状態ではボリューム制御回路によって音声信号を減衰するので、ミュート回路の減衰量を小さくでき、インピーダンスを小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号をミュート状態に制御するミュート制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンプ装置などのオーディオ機器において、入力される音声信号をミュート状態に制御して、後段のアンプ回路に出力される音声信号のボリュームレベルを0に減衰するボリューム制御装置が用いられている。音声信号をミュート状態に制御する場合としては、ユーザ操作によってミュート状態に制御する指示が入力された場合の他に、アンプ装置の電源をスタンバイ状態から電源オン状態に移行されるとき、または、入力される複数の音声信号の中から1つの音声信号を選択してアンプ回路に出力するセレクタ回路を(例えば、チューナからCDプレーヤなどに)切り換えるときなどが挙げられる。電源オン状態に移行するときやセレクタ回路を切り換えるときにミュート状態にするのは、ポップノイズのレベルを低減することによって、スピーカーからポップノイズが再生されることを抑制するためである。
【0003】
音声信号をミュート状態に制御する方法として、一般的には、音声信号の信号ラインにミュート回路が設けられている。ミュート回路は、音声信号ラインに直列に挿入された抵抗と、音声信号ラインと接地電位との間に挿入されたトランジスタとから構成されており、マイコンからの制御信号によってトランジスタをオン状態にすることによって、音声信号ラインを接地電位に接続し、後段のアンプ回路に出力される音声信号のレベルを減衰する。ここで、ミュート回路がミュート状態に制御されたときの音声信号の減衰量は、挿入される抵抗の抵抗値によって決定されるが、音声信号の減衰量を大きくし、音声信号のボリューム値を完全に0にするためには、抵抗値を大きくする必要がある。または、抵抗およびトランジスタからなるミュート回路を多数直列に設けることによって、合成抵抗を大きくする必要がある。しかし、抵抗値を大きくする又はミュート回路を多数直列に設けると、音声信号にとって不要である大きなインピーダンス成分を音声信号ラインに設けることになるので、ミュート解除状態である通常再生時における音声信号の音質を劣化させるという問題がある。
【0004】
下記特許文献1には、電子ボリュームのボリューム値を0に制御することによって、音声信号をミュート状態に制御する音量制御装置が記載されている。しかし、電子ボリュームの特性上、マイコンからボリューム値を0にする指示が入力されたときに瞬時にボリューム値を0に設定することが困難であり、ボリューム値を0に設定するまでに多少の時間がかかる。従って、アンプ装置の電源がスタンバイ状態からオン状態に移行する際やセレクタ回路を切り換える際にミュート状態に制御する場合に、電子ボリュームのボリューム値を0に設定し終える前にポップノイズがスピーカーから出力されてしまうという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特許平6−120752号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ミュート回路のインピーダンスを大きくすることなく、かつ、瞬時にミュート状態に制御することができるミュート制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の好ましい実施形態によるミュート制御装置は、入力される音声信号をミュート状態に制御するミュート制御装置であって、減衰量が設定可能であり、入力される音声信号のボリュームレベルを制御するボリューム制御手段と、減衰状態と非減衰状態とに切換可能であり、減衰状態において音声信号を所定減衰量だけ減衰させるミュート回路と、音声信号をミュート状態に制御する場合、前記ボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量に設定されるように制御し、かつ、前記ミュート回路を減衰状態に移行させるように制御する制御手段とを備え、ミュート解除状態からミュート状態に制御する場合、最初に、前記ミュート回路が非減衰状態から減衰状態に移行することにより音声信号を前記ミュート回路によって前記所定減衰量減衰させ、その後、前記ボリューム制御手段の減衰量が前記最大減衰量に設定されることにより音声信号を前記ボリューム制御手段によって前記最大減衰量減衰させる。
【0008】
本発明によると、ミュート状態の定常状態においてはボリューム制御手段によって音声信号を最大減衰量で減衰させ、ミュート回路の減衰量はボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量に設定し終えるまでの間だけ音声信号を減衰するために適用されるので、ミュート回路の減衰量はポップノイズが聴取者に聞こえない程度の比較的小さな減衰量に設定することができる。従って、ミュート回路のインピーダンスを比較的小さく設定することができるので、ボリューム解除時である通常再生時の音声信号の音質劣化を防止することができる。
【0009】
さらに、ボリューム制御手段が最大減衰量に設定されるまでに多少の時間がかかるが、ミュート回路は瞬時に減衰状態に移行することができるので、制御手段によってミュート状態に移行する指示が供給されると直ぐに、最初にミュート回路によって所定減衰量で音声信号を減衰できる状態になる。従って、例えば電源オン時やセレクタ切換時に生じるポップノイズのレベルをミュート回路によって減衰することができる。
【0010】
好ましい実施形態においては、ミュート状態からミュート解除状態に制御する場合、最初に、前記ボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量からミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に設定されることにより前記ミュート回路によって音声信号を前記所定減衰量減衰し、その後、前記ミュート回路が減衰状態から非減衰状態に移行することによってミュート解除状態になる。
【0011】
ミュート解除状態からミュート状態に移行する際に、ミュート回路によって音声信号を所定減衰量で減衰させる状態を経由してからミュート解除状態に移行することにより、段階的に減衰量を小さくすることができる。従って、瞬間的にミュート解除状態に移行すればポップノイズが生じる可能性があるが、ミュート回路によって音声信号を所定減衰量で減衰させる状態を経由することによって、このようなポップノイズの発生を防止することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によるミュート制御方法は、減衰量を設定可能なボリューム制御手段と、減衰状態と非減衰状態とが切換可能なミュート回路とによって音声信号をミュート状態に制御するミュート制御方法であって、ミュート解除状態からミュート状態に制御する場合に、前記ボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量に設定されていない状態で、前記ミュート回路が非減衰状態から減衰状態に移行することにより音声信号を前記ミュート回路によって所定減衰量減衰させるステップと、前記ミュート回路が減衰状態である状態で、前記ボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量に設定されることにより音声信号を前記ボリューム制御手段によって前記最大減衰量で減衰させるステップとを含む。
【0013】
好ましい実施形態においては、ミュート状態からミュート解除状態に制御する場合に、前記ミュート回路が減衰状態である状態で、前記ボリューム制御手段の減衰量を最大減衰量からミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に設定されることにより、音声信号を前記ミュート回路によって所定減衰量減衰させるステップと、前記ボリューム制御手段の減衰量がミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に設定されている状態で、前記ミュート回路が減衰状態から非減衰状態に移行されるステップとをさらに含む。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によるミュート制御プログラムは、上記各ステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、ミュート回路のインピーダンスを大きくすることなく、かつ、瞬時にミュート状態に制御することができるミュート制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態によるミュート制御装置10について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図1は、ミュート制御装置10を示す概略回路図である。ミュート制御装置10は、アンプ装置などに適用され、音声信号の入力側回路とアンプ回路(図示せず)との間に設けられたボリューム制御回路2と、ミュート回路3と、これらを制御する制御手段(例えばマイコン)1とを備える。
【0017】
ミュート制御装置10は、ミュート状態とミュート解除状態とを有する。ミュート状態は音声信号のボリュームレベルをボリューム制御回路2および/またはミュート回路3によって減衰し、音声信号のボリュームレベルを完全に0にする、または、0に近づけるようにする状態である。ミュート状態には、ミュート回路3のみがミュート状態として機能する第1ミュート状態と、ボリューム制御回路2及びミュート回路3がミュート状態として機能する第2ミュート状態とを含む。ボリューム制御回路2がミュート状態として機能する第2ミュート状態になる前に、ミュート回路3のみがミュート状態として機能する第1ミュート状態を経由することによって、スピーカーからポップノイズが再生されることをより確実に抑制することができる。ミュート解除状態は、ボリューム制御回路2およびミュート回路3がミュート状態として機能せずに、ユーザ操作によって設定されたボリュームレベルにボリューム制御回路2が音声信号のレベルを制御して出力する状態である。
【0018】
ボリューム制御回路2は、マイコン1からの指示に応答して減衰量を設定可能であり、音声信号のボリュームレベルを設定された減衰量で調整するものである。ボリューム制御回路2は、アンプ装置の入力側回路(例えばLPF回路等)とミュート回路3との間に設けられており、代表的には、1チップの電子ボリュームICによって構成されている。ボリューム制御回路2は、入力される音声信号(左音声信号Lch,右音声信号Rch)のボリュームレベルを制御して、後段のミュート回路3に出力する。
【0019】
ボリューム制御回路2は、ミュート解除状態からミュート状態に制御される場合、マイコン1から減衰量を最大減衰量に設定する指示が供給される。ボリューム制御回路2は、マイコン1からの指示に応じて、減衰量を最大減衰量に設定することによって、ミュート状態として機能する状態となる。つまり、減衰量が最大減衰量に設定されると、後述する図2の期間T3や図3の期間T4に示すように音声信号のボリュームレベルを完全に0に制御することができる。すなわち、本発明で言う最大減衰量とは、ボリューム制御回路2で設定可能な最大の減衰量の他に、ボリュームレベルを完全に0にすることができる減衰量を意味する。
【0020】
ボリューム制御回路2は、その特性上、ミュート回路3と比較してマイコン1からの指示に応答して瞬時に減衰量を最大減衰量に設定することはできず、減衰量を最大減衰量に設定するまでに多少の時間が必要である。従って、マイコン1からボリューム制御回路2とミュート回路3とに略同時にミュート状態に移行するための指示が送信される場合に、ミュート回路3がミュート状態として機能する状態に移行してから、所定時間経過後にボリューム制御回路2が減衰量を最大減衰量に設定することができる。
【0021】
ミュート回路3は、マイコン1からの指示に応答して、減衰状態と非減衰状態とに切り換えられる。減衰状態は、所定減衰量でボリューム回路2から出力される音声信号を減衰する状態であり、ミュート状態として機能する状態である。非減衰状態は、ボリューム回路2から出力される音声信号を所定減衰量で減衰しない状態であり、ミュート状態として機能しない状態である。ミュート回路3は、ボリューム制御回路2とアンプ回路との間に設けられており、例えば、抵抗R1〜R4、および、トランジスタQ1〜Q4を有している。
【0022】
抵抗R1,R2は左音声信号ラインに対して直列に挿入されており、トランジスタQ1,Q2は左音声信号ラインに対して並列に(左音声信号ラインと接地電位との間に)挿入されている。抵抗R3,R4は右音声信号ラインに対して直列に挿入されており、トランジスタQ3,Q4は右音声信号ラインに対して並列に(右音声信号ラインと接地電位との間に)挿入されている。
【0023】
トランジスタQ1〜Q4のベースにはマイコン1からの制御信号が供給されており、制御信号がハイレベルの時にトランジスタQ1〜Q4がオン状態になり、左音声信号ライン及び右音声信号ラインが抵抗R1〜R4を介して接地電位に接続され、音声信号が所定減衰量で減衰される。一方、制御信号がローレベルの時にトランジスタQ1〜Q4がオフ状態になり、左音声信号ライン及び右音声信号ラインは接地電位に接続されていない状態になり、音声信号が所定減衰量で減衰されない。
【0024】
ミュート回路3の所定減衰量は抵抗R1〜R4によって設定され得る。抵抗R1〜R4は、従来と比べて抵抗値が比較的小さく(例えば100kΩに)設定されている。これにより、音声信号ラインに接続されているミュート回路3のインピーダンスを小さくすることができるので、ミュート解除状態である通常再生時においてアンプ回路へ供給される音声信号の音質を劣化させることを防止できる。従って、ミュート回路3の減衰量はあまり大きくすることができないので、図2の期間T2や図3の期間T5に示すように、ミュート回路3が減衰状態になっても、音声信号のボリューム値を完全に0にすることはできない。
【0025】
ミュート回路3は、マイコン1からのハイレベルの制御信号に応じて瞬時に非減衰状態から減衰状態に移行することができる。ハイレベルの制御信号に応答しトランジスタQ1〜Q4が瞬時にオン状態になるからである。従って、マイコン1がボリューム制御回路2とミュート回路3とに略同時に制御信号を送信した際に、ボリューム制御回路2の減衰量が最大減衰量に設定されるまでに多少の時間がかかるのに対して、ミュート回路3は瞬時に減衰状態に移行することができる。従って、ミュート回路3が瞬時に減衰状態になることによって、ボリューム制御回路2の減衰量が最大減衰量に設定されるまでの間、ミュート回路2による減衰がポップノイズのレベルの低減に寄与する。
【0026】
マイコン1は、図示しないメモリに格納されているプログラムを読み出して実行することにより、アンプ装置の動作を制御するものである。例えば、マイコン1は、ボリューム制御回路2およびミュート回路3を、ミュート状態又はミュート解除状態に制御する。ミュート解除状態からミュート状態に制御する場合、マイコン1は、ボリューム制御回路2に対して減衰量を最大減衰量に設定するように制御する。また、マイコン1は、ミュート回路3にハイレベルの制御信号を供給することにより、ミュート回路3を減衰状態(トランジスタQ1〜Q4をオン状態)に制御する。マイコン1が音声信号をミュート状態に制御するのは、ユーザ操作によってミュート状態に移行する指示が入力されたとき、アンプ装置の電源をスタンバイ状態から電源オン状態に移行させるとき、または、セレクタ回路の選択状態(チューナ、CDプレーヤ等)を切り換えるとき等である。
【0027】
また、ミュート状態からミュート解除状態に制御する場合、マイコン1は、ボリューム制御回路2に対して減衰量をミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に再度設定するように制御する。ミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量の情報はマイコン1内の図示しないメモリに保存されている。また、マイコン1は、ミュート回路3にローレベルの制御信号を供給することにより、ミュート回路3を減衰状態から非減衰状態(トランジスタQ1〜Q4をオフ状態)に制御する。なお、マイコン1が音声信号をミュート解除状態に制御するのは、ユーザ操作によってミュート解除状態に移行する指示が入力されたとき、アンプ装置の電源をスタンバイ状態から電源オン状態に移行させた後、または、セレクタ回路の選択状態(チューナ、CDプレーヤ等)を切り換えた後等である。
【0028】
なお、ミュート状態からミュート解除状態に移行させる場合、マイコン1は、最初に、ボリューム制御回路2の減衰量をミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に設定させることにより、ミュート回路3のみがミュート状態として機能する第1ミュート状態を経由させる。その後、所定期間経過後に、ミュート回路3を非減衰状態に移行させ、ミュート解除状態に制御する。これにより、ミュート状態からミュート解除状態に瞬間的に切り換えられるとポップノイズが発生する可能性があるが、第1ミュート状態を経由してミュート解除状態に移行することによって、段階的に減衰量を小さくできるので、ポップノイズの発生を抑制することができる。
【0029】
以上の構成を有するミュート制御装置10についてその動作を説明する。図2はミュート解除状態からミュート状態に移行する際の音声信号のボリュームレベルを示すタイムチャートである。図3はミュート状態からミュート解除状態に移行する際の音声信号のボリュームレベルを示すタイムチャートである。図4は、マイコン1の処理を示すフローチャートである。
【0030】
まず、図2,図4を参照して、ミュート解除状態からミュート状態に移行する場合を説明する。図2の期間T1では、ボリューム制御回路2もミュート回路3もミュート状態に対応した状態になっておらず、音声信号はユーザ操作によって設定されているボリュームレベルに制御されて出力されている。
【0031】
図4に示すとおり、マイコン10は、ミュート状態であるか否かを判断する(S1)。ミュート状態であるか否かはS6,S10で設定されるミュート状態フラグを確認することによって判断できる。ここでは、図2の期間T1のように、ミュート解除状態である(S1でNO)。マイコン1は、ミュート状態に移行する指示(例えば、ユーザ操作によるミュート指示、電源オン指示、セレクタ切換指示)が入力されたか否かを判断する(S2)。
【0032】
ミュート状態に移行する指示が入力された場合(S2でYES)、マイコン1は、ミュート回路3を減衰状態に制御する(S3)。すなわち、マイコン1は、ミュート回路3のトランジスタQ1〜Q4のベースにハイレベルの制御信号を供給する。トランジスタQ1〜Q4はベースにハイレベルの制御信号が供給されるとオン状態になり、左音声信号ライン及び右音声信号ラインが接地電位に接続され、非減衰状態から減衰状態に移行する。このとき、ボリューム制御回路2の減衰量は未だ最大減衰量に設定されていないので、ボリューム制御回路2においてユーザ操作によって設定されているボリューム値に減衰された音声信号(T1のボリュームレベル参照)が、期間T2に示すようにミュート回路3に設定されている所定減衰量で減衰されて出力される(第1ミュート状態になる)。
【0033】
ミュート回路3はハイレベルの制御信号が供給されると、瞬時に、トランジスタQ1〜Q4がオン状態になり、減衰状態に移行することができるので、マイコン1がハイレベルの制御信号を出力すると略同時に期間T2のような減衰状態(第1ミュート状態)に移行することができる。従って、電源オン時やセレクタ切換時に生じるポップノイズのレベルを低減し、スピーカーから再生されるポップノイズのボリュームレベルを聴取者に不快にならない程度まで低減することができる。
【0034】
続いて、マイコン1は、ボリューム制御回路2に設定されている現在の減衰量を図示しないメモリに保存する(S4)。ミュート解除状態に移行する際に、ボリューム制御回路2の減衰量をミュート状態に移行する前にユーザ操作によって設定されていた減衰量に再度設定するためである。
【0035】
続いて、マイコン1は、ボリューム制御回路2に対して減衰量を最大減衰量に設定する指示を送信する(S5)。ボリューム制御回路2は、マイコン1から当該指示を受信すると、減衰量を最大減衰量に設定する。これにより、期間T3に示すように、音声信号がボリューム制御回路2によって最大減衰量で減衰される状態(第2ミュート状態)になり、ボリューム値が完全に0になるように制御される。ボリューム制御回路2がマイコン1からの指示に応答して減衰量を最大減衰量に設定し終えるには多少の時間がかかるが、上記の通り、既に期間T2においてミュート回路3の所定減衰量で音声信号のボリュームレベルが減衰されているので、ユーザに不快感を与えることが防止できる。
【0036】
その後、マイコン1は、図示しないメモリ内のミュート状態フラグをセットすることにより、ミュート状態であることを管理する(S6)。
【0037】
次に、ミュート状態からミュート解除状態に移行する場合を、図3,図4を参照して説明する。図3の期間T4は第2ミュート状態であり、ボリューム制御回路2の減衰量が最大減衰量に設定されており、ミュート回路3が減衰状態に制御されている。従って、音声信号はボリューム制御回路2によって最大減衰量で減衰され、音声信号のボリュームレベルは完全に0になっている。
【0038】
S1においてミュート状態であることが判断されると(S1でYES)、マイコン1は、ミュート解除の指示が入力されたか否かを判断する(S7)。ミュート解除の指示が入力された場合(S7でYES)、マイコン1は、ボリューム制御回路2の減衰量を、最大減衰量から、ミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に戻すように制御する(S8)。すなわち、S4においてメモリに保存された減衰量を読み出してボリューム制御回路2に送信する。ボリューム制御回路2は、マイコン1から減衰量の情報を取得すると、最大減衰量から、マイコン1から取得したミュート状態に移行する前の減衰量に再度設定する(すなわち、ミュート状態として機能しない状態になる)。このとき、ミュート回路3にはまだローレベルの制御信号が供給されていないので、ミュート回路3は減衰状態を維持しており(ミュート状態として機能しており)、図3の期間T5のように、ボリューム制御回路2においてユーザ操作によって設定されているボリューム値に調整された音声信号(T6のボリュームレベル参照)が、期間T5に示すように、ミュート回路3に設定されている所定減衰量で減衰されて出力される(すなわち、第1ミュート状態に移行する)。
【0039】
続いて、ボリューム制御回路2の減衰量がミュート状態に移行する前の減衰量に設定されてから所定期間(期間T5)経過後に、マイコン1は、ミュート回路3を減衰状態から非減衰状態に移行するように制御する(S9)。すなわち、マイコン1は、ミュート回路3のトランジスタQ1〜Q4のベースにローレベルの制御信号を供給する。トランジスタQ1〜Q4はベースにローレベルの制御信号が供給されるとオフ状態になり、左音声信号ライン及び右音声信号ラインが接地電位から開放され、減衰状態から非減衰状態に移行する。上記の通り、ボリューム制御回路2の減衰量はミュート状態に移行する前の減衰量に復帰しているので、期間T6に示すように、ミュート解除状態とされ、音声信号はボリューム制御回路2においてユーザ操作によって設定されているボリュームレベルに調整されて、出力される。
【0040】
以上のように、本発明によると、ボリューム制御回路2が最大減衰量に設定されるまでに多少の時間がかかるが、ミュート回路3は瞬時に減衰状態に移行することができるので、マイコン1によってミュート状態に移行する指示が出力されると直ぐに、ミュート回路3によって所定減衰量で音声信号を減衰できる第1ミュート状態になる。従って、電源オン時やセレクタ切換時に生じるポップノイズのレベルをミュート回路3によって減衰することができる。また、ミュート解除状態から第1ミュート状態を経由して第2ミュート状態に移行することによって、段階的に減衰量が大きくなるので、ミュート状態に移行する際にポップノイズが生じることも防止できる。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。本発明は、上記ミュート制御装置の各処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム又はそれを記録した記録媒体という形態で提供されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、例えば、アンプ装置のボリューム制御装置に好適に採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるボリューム制御装置を示す概略回路図である。
【図2】ミュート解除状態からミュート状態に移行する際の音声信号のボリュームレベルを示すタイムチャートである。
【図3】ミュート状態からミュート解除状態に移行する際の音声信号のボリュームレベルを示すタイムチャートである。
【図4】マイコン1の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
1 マイコン
2 ボリューム制御回路
3 ミュート回路
10 ボリューム制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される音声信号をミュート状態に制御するミュート制御装置であって、
減衰量が設定可能であり、入力される音声信号のボリュームレベルを制御するボリューム制御手段と、
減衰状態と非減衰状態とに切換可能であり、減衰状態において音声信号を所定減衰量だけ減衰させるミュート回路と、
音声信号をミュート状態に制御する場合、前記ボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量に設定されるように制御し、かつ、前記ミュート回路を減衰状態に移行させるように制御する制御手段とを備え、
ミュート解除状態からミュート状態に制御する場合、最初に、前記ミュート回路が非減衰状態から減衰状態に移行することにより音声信号を前記ミュート回路によって前記所定減衰量減衰させ、その後、前記ボリューム制御手段の減衰量が前記最大減衰量に設定されることにより音声信号を前記ボリューム制御手段によって前記最大減衰量減衰させる、ミュート制御装置。
【請求項2】
ミュート状態からミュート解除状態に制御する場合、最初に、前記ボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量からミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に設定されることにより前記ミュート回路によって音声信号を前記所定減衰量減衰し、その後、前記ミュート回路が減衰状態から非減衰状態に移行することによってミュート解除状態になる、請求項1に記載のミュート制御装置。
【請求項3】
減衰量を設定可能なボリューム制御手段と、減衰状態と非減衰状態とが切換可能なミュート回路とによって音声信号をミュート状態に制御するミュート制御方法であって、
ミュート解除状態からミュート状態に制御する場合に、前記ボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量に設定されていない状態で、前記ミュート回路が非減衰状態から減衰状態に移行することにより音声信号を前記ミュート回路によって所定減衰量減衰させるステップと、
前記ミュート回路が減衰状態である状態で、前記ボリューム制御手段の減衰量が最大減衰量に設定されることにより音声信号を前記ボリューム制御手段によって前記最大減衰量で減衰させるステップとを含む、ミュート制御方法。
【請求項4】
ミュート状態からミュート解除状態に制御する場合に、前記ミュート回路が減衰状態である状態で、前記ボリューム制御手段の減衰量を最大減衰量からミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に設定されることにより、音声信号を前記ミュート回路によって所定減衰量減衰させるステップと、
前記ボリューム制御手段の減衰量がミュート状態に移行する前に設定されていた減衰量に設定されている状態で、前記ミュート回路が減衰状態から非減衰状態に移行されるステップとをさらに含む、請求項3に記載のミュート制御方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の各ステップをコンピュータに実行させるためのミュート制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−188668(P2009−188668A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25648(P2008−25648)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【特許番号】特許第4259602号(P4259602)
【特許公報発行日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】