説明

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌のための反応培地

本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を検出および/または同定するための反応培地であって、発色性基質、セファロスポリン系統に属する第1抗生物質、及びアミノグリコシド系統に属する第2抗生物質を含んでなる培地に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を検出するための反応培地に関する。本発明は、この培地の使用とMRSA細菌を同定する方法に関する。
【0002】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、抗生物質メチシリン及びオキサシリンのような抗生物質に対する耐性によって特徴づけられる黄色ブドウ球菌の菌株である。MRSA細菌は、院内感染の高いパーセンテージを示し、しばしば深刻で潜在的に致命的な健康問題の原因となる。最も一般には医療スタッフを経て患者間で相互感染し、MRSAは制御が非常に困難な固有の感染症の原因となる。適切な治療に加えて、MRSA保菌者と入ってくる患者の分離のためのスクリーニングは、公的組織(例えば米国医療疫学学会)によって現在推奨されている最も有効な方法で構成される。従って、初期の組織的スクリーニングは不可欠である。
【0003】
MRSAはさまざまな技術によって検出することができる。例えば分子生物学技術によってMRSAを検出することが可能である。これに関して、欧州出願EP887424を挙げることができる。しかしながら、上記の方法はルーチンテストとしては高価なままであり、有資格のスタッフを必要とする。
【0004】
また、黄色ブドウ球菌を検出するために従来の培養培地(例えば欧州出願EP1390524に記載されている培地)を使用することができる。MRSAの検出は、特異的な凝集検査(Slidex MRSA、ビオメリュー)によって、又はオキサシリン、セホキシチンまたはモキサラクタム・ディスクの存在下で寒天内拡散法によって、追加の工程で実施される(Antibiogram Committee of the French Society for Microbiology及び臨床検査標準協会の推奨)。
【0005】
また、抗生物質を含む寒天培地上で培養できる細菌はMRSAである場合がある。また、上記の培地は発色性であってもよく、それによりMRSAの読み取りと検出を容易にする。特に欧州出願EP1543147に記載されている培地を挙げることができる。しかしながら、記載されている条件でのホスファターゼ活性の検出はあまり特異的でないので、それを複数の他の酵素の活性の検出と組合わせる必要があり、それによって培地の繁殖性が減少し、そのコストが増大する。
【0006】
本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の分離及び迅速な同定を可能にする新規の感受性の高い、特異的な反応培地を提供することによって従来技術の隙間を埋めることを提案する。
【0007】
驚くべきことに、本願発明者は、セファロスポリンとアミノグリコシドを含む抗生物質の特定の組合せの使用は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を分離して同定するための優れた反応培地を得ることを可能にすることを証明した。
【0008】
更に続ける前に、以下に示す定義は、より明確に本発明を理解することを可能にするものであり、限定するものではない。
本発明のために、「反応培地」なる用語は、微生物(例えば黄色ブドウ球菌)の生存及び/又は増殖のために必要な成分の全てを含む培地を意味することを目的とする。この反応培地は、検出(revealing)培地のみとしても、あるいは培養且つ検出培地としても用いられる。前者の場合は、微生物は接種前に培養され、後者の場合は反応培地は更に培養培地を構成する。
【0009】
反応培地は、固体、半固体又は液体であってもよい。「固形培地」なる用語は、例えば、ゲル化培地を意味することを目的とする。好ましくは、本発明の培地はゲル化培地である。寒天は微生物を培養するための微生物学の従来のゲル化剤であるが、ゲルライト、ゼラチンまたはアガロースを使用することも可能である。一定数の製品が市販されており、コロンビア寒天、トリプチカーゼ大豆寒天、マッコンキー寒天、チャップマン寒天、サブロー寒天またはさらに一般的にはthe Handbook of Microbiological Media(CRC Press)に記載されているものである。
【0010】
本発明による反応培地は、その他の可能な添加物、例えばペプトン、一つ以上の増殖因子、糖質、一つ以上の選択剤、緩衝液、一つ以上のゲル化剤等を含んでもよい。この反応培地は、すぐに使用できる液体またはゲルの形態、すなわちチューブ中またはフラスコ中にまたはシャーレ上において接種する準備ができているものであってもよい。提供される形態がフラスコ中のゲル形態である場合、培地の事前の再生はシャーレに注入される前に(100℃に変化させる)実施することが好ましい。
【0011】
好ましくは、本発明の培地は、選択培地、すなわち黄色ブドウ球菌細菌の増殖を助けるインヒビターを含んでなる培地である。特に塩化リチウム(LiCl)、アジ化ナトリウム(NaN)、コリスチン、アンフォテリシン、アズトレオナム、コリマイシン、塩化ナトリウム(NaCl)、デフェロキサミン及びビブリオ菌増殖阻害化合物O/129を挙げることができる。
本発明では、酵素又は代謝活性用の基質は、酵素活性または代謝(例えば、特にオシダーゼ活性、好ましくはα−グルクロニダーゼ、グルコシダーゼ、またはガラクトシダーゼ活性)の直接的または間接的な検出を可能にする生成物に加水分解されることができる任意の基質から選択される。
【0012】
それは天然基質でも合成基質であってもよい。基質の代謝によって、反応培地又は生物の細胞の生理化学的性質に変化が生じる。この変化は、物理化学的方法、特に光学的方法、オペーレーターの視覚により、または分光計、電気、磁気等の計測器を使用して検出することができる。それは、吸収、蛍光または発光の変化のような光学的性質の変異であることが望ましい。
【0013】
本出願において、「色」なる用語は、可視スペクトルにおける光の吸収である色、又はある波長での吸収(λex)とより高い波長での放出である蛍光(λem、λem>λex)をカバーするために使用される。
【0014】
本発明のために、発色性基質なる用語は、酵素活性(例えば、特にオシダーゼ活性、好ましくはα−グルコシダーゼ活性、エステラーゼ活性、好ましくはホスファターゼ活性またはペプチダーゼ活性、好ましくはコアグラーゼ活性)の直接的または間接的な検出を可能にする生成物を与えるために加水分解されることができる任意の基質を意味することを目的とする。
特に、インドキシル、フラボン、アリザリン、アクリジン、フェノキサジン、ニトロフェノール、ニトロアニリン、ナフトール、カテコール、ヒドロキシキノリン、クマリンまたはヒドロキシフェニルキノザゾル−4−ワン(hydroxyphenylquinoxazol-4-one)に基づく基質を挙げることできる。好ましくは、本発明において使用する基質は、インドキシルに基づくものである。
【0015】
α−グルコシダーゼ基質として、特に基質5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル−α−グルコシド;ジヒドロキシフラボン−α−グルコシド;3,4−シクロヘキサノエスクレチン−α−グルコシド;8−ヒドロキシキノリン−α−グルコシド;5−ブロモ−4−クロル−3−インドキシル−α−グルコシド;5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−メチル−α−グルコシド;6−クロロ−3−インドキシル−α−グルコシド;5−ブロモ−3−インドキシル−α−グルコシド;5−ヨウ化−3−インドキシル−α−グルコシド;6−フルオロ−3−インドキシル−α−グルコシド;アリザリン−α−グルコシド;ニトロフェニル−α−グルコシド;4−メチルウンベリフェリル−α−グルコシド;ナフトールベンゼイン−α−グルコシド;インドキシル−N−メチル−α−グルコシド;ナフチル−α−グルコシド;アミノフェニル−α−グルコシド;ジクロロアミノフェニル−α−グルコシドを挙げることができる。使用するα−グルコシダーゼ基質は、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−メチル−α−グルコシドまたは5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−グルコシドであることが望ましい。
【0016】
ホスファターゼ基質として、特に基質5−ブロモ−6−クロロ−3−インドキシル・ホスフェート;3,4−シクロヘキサノエスクレチン・ホスフェート;5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル・ホスフェート;5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−メチル・ホスフェート;6−クロル−3−インドキシル・ホスフェート;5−ブロモ−3−インドキシル・ホスフェート;5−ヨード−3−インドキシル・ホスフェート; 6−フルオロ−3−インドキシル・ホスフェート;ニトロフェニル・ホスフェート;4−メチルウンベリフェリル・ホスフェート;インドキシル−N−メチル・ホスフェート;ナフチル・ホスフェート、ELF97−ホスフェートを挙げることができる。好ましくは、使用するホスファターゼ基質は6−クロロ−3インドキシル・ホスフェートであることが望ましい。
【0017】
本発明において使用する基質は、オシダーゼ、エステラーゼ及び特にホスファターゼまたはホスホリパーゼ、ペプチダーゼ、及び特にコアグラーゼのような他の基質と組合せられてもよい。特に、培地は2−α−グルコシダーゼ基質を含んでもよい。
【0018】
本発明の基質は、広いpH範囲において、特にpH5.5から10、好ましくは6.5から9の間で使用することができる。
【0019】
本発明のために、「セファロスポリン系統に属する抗生物質」は、好ましくは以下の抗生物質から選択される:
・第一世代のセファロスポリンは、例えば、セファレキシン、セファロリジン、セファロチン、セファゾリン、セファドロキシル、セファゼドン、セファトリジン、セファピリン、セフラジン、セファセトリル、セフロダキシン(cefrodaxine)、セフテゾールであり;
・第二世代のセファロスポリンは、例えば、セホキシチン、セフロキシム、セファマンドール、セファクロール、セフォテタン、セフォニシド、セホチアム、ロラカルベフ、セフメタゾール、セフプロジル、セホラニド、セフミノクスであり;
・第三世代のセファロスポリンは、例えば、セフォタキシム、セフタジジム、セフスロジン、セフトリアキソン、セフメノキシム、ラタモキセフ、セフチゾキシム、セフィキシム、セフォジジム、セフェタメト、セフピラミド、セホペラゾン、セフポドキシム、セフチブテン、セフジニル、セフジトレン、セフトリアキソン、セホペラゾン、セフブペラゾン、セフジニルであり;
・第四世代のセファロスポリンは、例えば、セフェピム、セフピロムである。
【0020】
本発明の関して、セファロスポリン系統に属する抗生物質は、セフミノックスまたはセフジニルが好ましい。
本発明のために、アミノグリコシド系統に属する抗生物質は、抗生物質のアミカシン、ゲンタマイシン、イセパマイシン、カナマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシン及びトブラマイシンから選択されることが好ましい。
本発明の関して、アミノグリコシド系統に属する抗生物質は、アミカシンまたはカナマイシンであることが好ましい。
【0021】
「生物学試料」なる用語は、気管支、気管又は肺吸引試料または胸膜液試料、気管支肺胞洗浄、喀痰、血液または肺生検、関節滑液または囲心腔液からの臨床試料;体液又は任意の種類の食物に由来する食物試料を意味することを目的とする。従って、この試料は液体であっても固体であってもよく、非限定的に、血液、血漿、尿または糞便由来の臨床試料、または鼻から、会陰部から、のどから、皮膚から、損傷から、または脳脊髄液から得られた試料、または食物試料を挙げることができる。
【0022】
「試料」なる用語は、従って、標本自体(ぬぐい液、大便、食物など)及び前記試料から生じた微生物のコロニー(例えば、ゲル化された培養培地に分離後、または前記標本を接種した濃縮ブロス)の両方を意味することを目的とする。
【0023】
これに関して、本発明は、発色性基質、セファロスポリン系統に属する第1抗生物質及びアミノグリコシド系統に属する第2抗生物質を含む、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を検出および/または同定するための反応培地に関する。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記第1抗生物質は、セフミノクスまたはセフジニルである。好ましくは、セフミノクス濃度は、10から35mg/lであり、好ましくは12から28mg/lである。好ましくは、セフジニル濃度は、0.1から1mg/lであり、好ましくは0.2から0.6mg/lである。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記第2抗生物質は、カナマイシンまたはアミカシンである。
好ましくは、カナマイシン濃度は、0.2から1.5mg/lであり、好ましくは0.5から1.25mg/lである。好ましくは、アミカシン濃度は0.5から5mg/lであり、好ましくは1から2mg/lである。
本発明の好ましい一実施形態によれば、2つの抗生物質の組合せは、セフミノクスとカナマイシンを含む。
別の本発明の好ましい実施例によれば、2つの抗生物質の組合せは、セフミノクスとアミカシンを含む。
別の本発明の好ましい実施例によれば、2つの抗生物質の組合せは、セフジニルとカナマイシンを含む。
別の本発明の好ましい実施例によれば、2つの抗生物質の組合せは、セフジニルとアミカシンを含む。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記発色性基質は、オシダーゼ、エステラーゼまたはペプチダーゼ活性の検出を可能にする。
【0025】
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記オシダーゼ活性は、α−グルコシダーゼ活性である。
適切なα−グルコシダーゼ活性のための前記基質はインドキシル−α−グルコシドであることが好ましい。使用する基質は5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−グルコシド(X−α−グルコシド)または5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−メチル−α−グルコシド(グリーンA−α−グルコシド)であることが望ましい。好ましくは、この基質は、0.01から0.2g/l、好ましくは0.03から0.15g/lの濃度で培地に存在する。実際には、この基質濃度において、より良好な呈色コントラストが得られる。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記エステラーゼ活性はホスファターゼ活性である。使用する基質は6−クロル−3−インドキシル・ホスフェート(ピンク−ホスフェート)であることが望ましい。好ましくは、この基質は、0.05から0.5g/lの濃度、好ましくは0.1から0.4g/lの濃度で培地に存在する。実際には、この基質濃度において、より良好な呈色コントラストが得られる。
本発明のある特定の実施態様によれば、前記反応培地も第2酵素基質を含む。前記第2基質はα−グルコシダーゼ基質であることが望ましい。好ましくは、前記第1基質はα−グルコシダーゼ基質、好ましくは、X−α−グルコシド(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−グルコシド)であり、前記第2基質はα−グルコシダーゼ基質、好ましくグリーンA−α−グルコシド(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−メチル−α−グルコシド)である。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態によれば、更に培地は、黄色ブドウ球菌細菌の増殖を助ける少なくとも一つのインヒビター、例えば塩化リチウム(LiCl)、アジ化ナトリウム(NaN)、コリスチン、アンホテリシン、アズトレオナム、ポリミキシン、塩化ナトリウム(NaCl)及びデスフェリオキサミンを含む。
本発明の好ましい一実施形態によれば、更に培地は、黄色ブドウ球菌細菌の増殖を助ける4つのインヒビターを含んでなるインヒビター混合物を含み、前記インヒビターはLiCl、ビブリオ菌増殖阻害化合物O/129、アズトレオナムとアンホテリシンである。
本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を分離して同定するために、上記の反応培地のインビトロ使用にも関する。
本発明は、生物試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を検出および/または同定する方法であって、
a)上記の反応培地上にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を含む可能性がある生物試料を接種をすること;
b)インキュベートすること;
c)コロニーをMRSAコロニーと同定することを含む方法にも関する。
【0027】
インキュベーションは、30℃から42℃の温度で実施することが好ましい。MRSAは、着色しているか又は蛍光性のコロニーを得ることを可能にする1または2のα−グルコシダーゼ活性またはホスファターゼ活性により検出されることが好ましい。ブドウ球菌の他の種は、無色に見えるか又は黄色ブドウ球菌とは異なる色または蛍光を有する。
工程a)が、選択培地又は非選択培地における前濃縮の工程の後にあってもよい。
【0028】
本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を検出および/または同定するための反応培地であって、酵素又は代謝活性のための基質、セフジニル又はセフミノクスから選択される第1抗生物質、アミノグリコシド系統に属する第2抗生物質を含む培地にも関する。
好ましくは、セフミノクス濃度は10から35mg/lであり、好ましくは12から28mg/lである。好ましくは、セフジニル濃度は0.1から1mg/lであり、好ましくは0.2から0.6mg/lである。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記第2抗生物質はカナマイシンまたはアミカシンである。
好ましくは、カナマイシン濃度は0.2から1.5mg/lであり、好ましくは0.5から1.25mg/lである。好ましくは、アミカシン濃度は0.5から5mg/lであり、好ましくは1から2mg/lである。
本発明の好ましい実施形態によれば、2つの抗生物質の組合せはセフミノクスとカナマイシンを含む。
別の本発明の好ましい実施例によれば、2つの抗生物質の組合せはセフミノクスとアミカシンを含む。
別の本発明の好ましい実施例によれば、2つの抗生物質の組合せは、セフジニルとカナマイシンを含む。
別の本発明の好ましい実施例によれば、2つの抗生物質の組合せは、セフジニルとアミカシンを含む。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態によれば、酵素又は代謝活性のための前記基質は、オシダーゼ、エステラーゼまたはペプチダーゼ活性の検出を可能にする。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記オシダーゼ活性はα−グルコシダーゼ活性である。
α−グルコシダーゼ活性のための前記基質はインドキシル−α−グルコシドであることが好ましい。使用する基質は、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−グルコシド(X−α−グルコシド)または5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−メチル−α−グルコシド(グリーンA−α−グルコシド)であることが好ましい。好ましくは、この基質は0.01から0.2g/l、好ましくは0.03から0.15g/lの濃度で培地に存在する。実際には、この基質濃度において、より良好な呈色コントラストが得られる。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記エステラーゼ活性はホスファターゼ活性である。使用する基質は、6−クロロ−3−インドキシル・ホスフェート(ピンク-ホスフェート)であることが望ましい。好ましくは、この基質は、0.05から0.5g/l、好ましくは0.1から0.4g/lの濃度で培地に存在する。実際には、この基質濃度において、より良好な呈色コントラストが得られる。
【0030】
本発明のある特定の実施態様によれば、前記反応培地も第2酵素基質を含む。前記第2基質はα−グルコシダーゼ基質であることが好ましい。好ましくは、前記第1基質はα−グルコシダーゼ基質、好ましくは、X−α−グルコシド(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−α−グルコシド)であり、前記第2基質はα−グルコシダーゼ基質、好ましくグリーンA−α−グルコシド(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシル−N−メチル−α−グルコシド)である。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態によれば、更に培地は、黄色ブドウ球菌細菌の増殖を助ける少なくとも一つのインヒビター、例えば塩化リチウム(LiCl)、アジ化ナトリウム(NaN)、コリスチン、アンホテリシン、アズトレオナム、ポリミキシン、塩化ナトリウム(NaCl)及びデスフェリオキサミンを含む。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態によれば、更に培地は、黄色ブドウ球菌細菌の増殖を助ける4つのインヒビターを含んでなるインヒビター混合物を含み、前記インヒビターはLiCl、ビブリオ菌増殖阻害化合物O/129、アズトレオナムとアンホテリシンである。
本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を分離して同定するために、上記の反応培地のインビトロ使用にも関する。
【0033】
本発明は、更に生物試料中のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を検出および/または同定する方法であって、
a)上記の反応培地上に、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を含む可能性がある生物試料を接種をすること;
b)インキュベートすること;
c)コロニーをMRSAコロニーと同定することを含む方法に関する。
【0034】
インキュベーションは、30℃から42℃の温度で実施することが好ましい。
MRSAは、着色しているか又は蛍光性のコロニーを得ることを可能にする1または2のα−グルコシダーゼ活性またはホスファターゼ活性を介して検出されることが好ましい。ブドウ球菌の他の種は、無色に見えるか又は黄色ブドウ球菌とは異なる色または蛍光を有する。工程a)が、選択培地又は非選択培地における濃縮前の工程の後にあってもよい。
下記の実施例は、説明として提供されるものであって、事実上限定するものではない。本発明を、より明らかに理解することを可能にするものである。
【実施例】
【0035】
実施例1:セフミノクス−カナマイシン抗生物質の組合せとさまざまな発色性基質を含むMRSA培地
1.本発明の培地の調製
実験において試験される培地は、以下である:
培地T:chromID MRSA対照培地(ref.43 451)。
培地A:セホキシチンが、セフミノクス(Daewoo Chemical, A8060902;16mg/l)/カナマイシン(シグマ、ref.K4000;1mg/l)抗生物質の組合せ、ピンク・ホスフェートである発色性基質(Biosynth, ref.C 5100;0.25g/l)によって置換された培地T。
培地B:セホキシチンが、セフミノクス(16mg/l)/カナマイシン(0.75mg/l)抗生物質の組合せ、発色性基質X−α−グルコシド(Biosynth、B7230;0.045g/l)及びグリーンA−α−グルコシド(Inalco、ref.1758-0730)によって置換されている培地T。
培地C:セホキシチンが、セフミノクス(16mg/l)/カナマイシン(0.75mg/l)抗生物質の組合せ、発色性基質X−α−グルコシドである(Biosynth、B7230;0.045g/l)及びグリーンA−α−グルコシド(Inalco、ref.1758-0730、0.08g/l)によって置換されている培地T。
2.接種と培地の読み取り
黄色ブドウ球菌細菌のさまざまなメチシリン耐性株(MRSA)又はメチシリン感受性株(MSSA)、及びコアグラーゼ陰性ブドウ球菌菌株(CoNS)(全て出願人の収集に由来するものである)は生理食塩水に懸濁し、それから4クワトラント線条接種技術により培地に接種した。シャーレは37℃で24時間インキュベートされた。形成されたコロニーは、18時間と24時間のインキュベーション後に、視覚的に調べられた。
3.結果:
得られた結果は、表1に示す。

これらの結果は、本発明の培地の優れた感受性を示す。特に、培地Aは、全てのMRSAを検出することを可能にする。
【0036】
実施例2−セフミノクス及びカナマイシンをさまざまな濃度で含むMRSA培地
1.本発明の培地の調製
実験において試験される培地は、以下である:
培地T:chromID MRSA 対照培地(ref.43 451)。
培地D:セホキシチンが、セフミノクス(実施例1で使用したものと同じ抗生物質)/カナマイシン(実施例1で使用したものと同じ抗生物質)の組合せ(様々な濃度で)、X−α−グルコシドである発色性基質(実施例1で使用したものと同じ基質;0.045g/l)とグリーンA−α−グルコシド(実施例1で使用したものと同じ基質;0.08g/l)により置換された培地T。

2.接種と培地の読取り
この工程は、実施例1のとおりに実施された。
得られた結果は、下記の表2に示される。

これらの結果は濃度16mg/lのセフミノクス及び濃度0.75mg/lのカナマイシンにより、優れた特異性と感受性を得ることが可能であることを示す。
【0037】
実施例3−セフミノクス−アミカシン抗生物質の組合せ及びさまざまな発色性基質を含むMRSA培地
1.本発明の培地の調製
実験において試験される培地は、以下である:
培地T:chromID MRSA 対照培地(ref.43 451)。
培地E:セホキシチンが、セフミノクス(実施例1で使用したものと同じ抗生物質;16mg/l)/アミカシン(シグマ、ref.2324; 2mg/l)抗生物質の組合せ、ピンク−ホスフェートである発色性基質(Biosynth、C-5100;0.25g/l)によって置換されている培地T。
培地F:セホキシチンが、セフミノクス(16mg/l)/アミカシン(2.5mg/l)抗生物質の組合せ、X−α−グルコシドである発色性基質(実施例1で使用したものと同じ基質;0.045 g/l)及びグリーンA−α−グルコシド(実施例1で使用したものと同じ基質;0.08g/l)によって置換されている培地T。
2.接種と培地の読み取り
この工程は、実施例3のとおりに実施された。
3.結果:
得られた結果は、下記の表3に示される。

これらの結果は、使用する基質にかかわりなく、本発明の抗生物質の組合せにより優れた感受性を得ることが可能であることを示す。
【0038】
実施例4−セフジニルとアミカシンを含むMRSA培地
1.本発明の培地の調製
実験において試験される培地は、以下である:
培地T:chromID MRSA 対照培地(ref.43 451)。
培地G:セホキシチンが、セフジニル(CDR0806007)/アミカシン(実施例3で使用されたものと同じ抗生物質)の様々な濃度の組合せ、ピンク−ホスフェートである発色性基質(それと同一の基質は、実施例3において使用した基質;0.25g/l)により置換されている、培地T。

培地H:セホキシチンが、様々な濃度のセフジニル/アミカシン組合せ、X−α−グルコシドである発色性基質(実施例1で使用したものと同じ基質;0.045g/l)及びグリーンA−α−グルコシド(実施例1で使用したものと同じ基質;0.08g/l)によって置換されている培地T。

2.接種と培地の読取り
この工程は、実施例1のとおりに実施された。
3.結果:得られた結果は、下記の表4に示される。

これらの結果は、使用する濃度にかかわりなく、本発明のセフジニル/アミカシン抗生物質の組合せにより、優れた感受性と特異性を得ることが可能であることを示す。
【0039】
実施例5−本発明のMRSA培地における臨床検査材料の分析
1.本発明の培地の調製
実験において試験される培地は、以下である:
培地T:chromID MRSA 対照培地(ref.43 451)。
バッチ1:0.08g/lのグリーンA−α−Glu+0.045g/lのX−α−Glu(16mg/lのセフミノクス+0.75mg/lのカナマイシン)。
バッチ2:0.08g/lのグリーンA−α−Glu+0.045g/lのX−α−Glu、0.3mg/lのセフジニル+ 2mg/lのアミカシン。
バッチ3:0.25g/lのピンク−ホスフェート、16mg/lのセフミノクス+2mg/lのアミカシン。
バッチ4:0.25g/lのピンク−ホスフェート、0.3mg/lのセフジニル+2mg/lのアミカシン。
使用する基質と抗生物質は、前の実施例において使用するものと同じものであった。
2.接種と培地の読み取り
2つの研究を、様々な臨床検査材料(鼻、のど、会陰部、傷)を使用して平行して行った。それらは、生理食塩水に懸濁し、それから培地上で分離したコロニーを得るために、4クワトラント線条接種技術により培地に接種した。シャーレは37℃で24時間インキュベートされた。形成されたコロニーは、18時間と24時間のインキュベーション後に、視覚的に調べられた。
3.結果:
得られた結果は、下記の表に示す。

これらの結果は、本発明の抗生物質の組合せが、18時間以降から優れた検出感度を呈したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を検出および/または同定するために反応培地であって、発色性基質、セファロスポリン系統に属する第1抗生物質、及びアミノグリコシド系統に属する第2抗生物質を含んでなる培地。
【請求項2】
前記第1抗生物質がセフミノクスまたはセフジニルである、請求項1に記載の反応培地。
【請求項3】
前記第2抗生物質がカナマイシンまたはアミカシンである、請求項1又は2に記載の反応培地。
【請求項4】
前記発色性基質がオシダーゼ、エステラーゼまたはペプチダーゼ活性の検出を可能にする、請求項1から3の何れか一項に記載の反応培地。
【請求項5】
前記オシダーゼ活性がα−グルコシダーゼ活性である、請求項4に記載の反応培地。
【請求項6】
前記エステラーゼ活性がホスファターゼ活性である、請求項5に記載の反応培地。
【請求項7】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を分離して同定するための請求項1から6の何れか一項に記載の反応培地のインビトロ使用。
【請求項8】
生物試料のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を検出および/または同定するための方法であって、
a)請求項1から6の何れか一項に記載の反応培地にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)細菌を含む可能性がある生物試料に接種すること;
b)インキュベーションすること;
c)コロニーをMRSAコロニーとして同定することを含む方法。

【公表番号】特表2013−501513(P2013−501513A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524266(P2012−524266)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051705
【国際公開番号】WO2011/018589
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(304043936)ビオメリュー (26)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
【Fターム(参考)】