説明

モータシャフトとピニオンギヤの固定構造、およびその構造を備えたギヤードモータ

【課題】 モータシャフトとピニオンギヤの固定強度が高く、かつ軸方向長さも短くなるようなモータシャフトとピニオンギヤの固定構造、およびその構造を備えたギヤードモータを提供する。
【解決手段】 ピニオンギヤをモータシャフトに備えたモータのモータシャフトとピニオンギヤの固定構造において、前記モータシャフト24の先端中心軸線上に軸方向の孔部28を形成し、かつ前記ピニオンギヤ40の中心に軸方向の軸部40aを突設し、該軸部40aを前記モータシャフト24の孔部28に圧入して前記モータシャフト24に前記ピニオンギヤ40を固定した構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータシャフトとピニオンギヤの固定構造、およびその構造を備えたギヤードモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータのモータシャフトとピニオンギヤの固定構造としては、たとえば実用新案登録2563569号(特許文献1参照)が知られている。
特許文献1には、小形モータのモータシャフト(回転軸)にピニオンギヤ(駆動歯車)の円形穴よりわずかに小さい円柱部を設けるとともに、ピニオンギヤには円形穴を設け、モータシャフトの円柱部をピニオンギヤの円形穴に挿入してモータシャフトとピニオンギヤとを固定する構造が開示されている。
【特許文献1】実用新案登録第2563569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている従来技術では、モータシャフト側に円柱部を、ピニオンギヤ側に円形穴を設け、両者を嵌め合わせてモータシャフトとピニオンギヤとを固定するようにしているため、ピニオンギヤに圧入による歪みが発生しやすいという問題がある。
このピニオンギヤの圧入による歪みの発生を小さくするため、特許文献1では、モータシャフトの円柱部にピニオンギヤの円柱穴より大きい筋目ローレット部を備える構造とし、ピニオンギヤをモータシャフトの円柱部に圧入したとき、筋目ローレット部がピニオンギヤのフランジ部の円形穴部のみで固定されるような構成としている。
しかしながら、この構成では、ピニオンギヤにフランジ部を設けることが必須であり、そのため軸方向の長さが長くなってしまうという問題がある。逆に、軸方向の長さを短くするためフランジ部の長さを短くすると、圧入部が小さくなってしまい、圧入強度が小さくなり、モータシャフトとピニオンギヤの固定強度が小さくなるという問題がある。
【0004】
本発明は、こうした従来の問題点を解決し、モータシャフトとピニオンギヤの固定強度が高く、かつ軸方向長さも短くなるようなモータシャフトとピニオンギヤの固定構造を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、モータシャフトとピニオンギヤとの嵌合によって、モータシャフトの外周部を膨張させることによって、モータの出力軸側の軸受けが軸方向に移動することを防止し、該軸受けの固定強度をより強くすることにある。
さらに本発明の他の目的は、前記固定構造を備えたギヤードモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、ピニオンギヤをモータシャフトに備えたモータのモータシャフトとピニオンギヤの固定構造において、前記モータシャフトの先端部中心軸線上に軸方向の孔部を形成し、かつ前記ピニオンギヤの中心に軸方向の軸部を突設し、該軸部を前記モータシャフトの孔部に圧入して前記モータシャフトに前記ピニオンギヤを固定したことにある。
また、本発明は、前記ピニオンギヤの軸部を前記モータのモータシャフトに形成した孔部に圧入することによって前記孔部の周壁を、外周側に拡張させ、該モータのモータシャフト先端部を回動可能に支持する軸受けの離脱を防ぐことにある。
さらに、本発明は、モータに歯車減速機を一体に組付け、モータシャフトの先端部を前記減速機のギヤケース内に導入し、モータシャフトの先端部に装着されたピニオンギヤを前記ギヤケース内の歯車機構に噛合させて減速するギヤードモータであって、モータケース内のモータシャフトの先端部中心軸線上に軸方向の孔部を形成し、中心に軸方向の軸部を突設したピニオンギヤを、前記軸部を前記モータシャフトの孔部に圧入して組付けるとともに、該ピニオンギヤを、前記減速機のギヤケース内に組み付けられた歯車機構に噛合させて、減速した回転を取り出すようにしたことにある。
またさらに、前記モータシャフトと減速機の出力軸を同一軸線上に配置し、前記ピニオンギヤを太陽歯車とする遊星歯車機構を前記ギヤケース内に配設したことにある。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の本発明のモータシャフトとピニオンギヤの固定構造によれば、モータシャフトとピニオンギヤとを強固に固定できると共に、軸方向の寸法を短くできる。
また、請求項2に記載の本発明によれば、モータシャフトとピニオンギヤとの嵌合によって、モータシャフトの外周部を拡張させ、モータの出力軸側の軸受けの内輪部をより強固に固定させることができる。
さらに、請求項3に記載の本発明によれば、ギヤケースの軸方向の寸法を短縮させて減速機を組付けることができるので、ギヤードモータの小型化を図ることができる。
またさらに、請求項4に記載の本発明によれば、モータシャフトと減速機の出力軸を同一軸線上に配置して、出力を取り出せるので、他の機器に対するレイアウトが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明のモータシャフトとピニオンギヤの固定構造を有するギヤードモータを示す断面図、図2は図1の部分拡大断面図である。
【0008】
図1において、ギヤードモータ10は、モータ本体20と減速機30で構成されている。モータ20は、ハウジング21とフランジ22でモータケース23を構成し、減速機30は、後述する遊星歯車機構を内蔵したギヤケース31で構成されている。
【0009】
前記モータケース23内には、軸線上にモータシャフト24が回転自在に支持されており、モータシャフト24を支持する軸受け25,26が前記フランジ22とボス部27に設けられている。モータシャフト24は、回転子巻線が施されて回転子を構成し、図示しない固定子との間で回転磁界を発生して回転駆動されるものである。
【0010】
前記モータシャフト24の先端部24aは、前記ギヤケース31内に延出されており、このモータシャフト24の先端部中心軸線上には、軸方向の孔部28が形成されている。
【0011】
前記モータシャフト24の孔部28には、図2に示すようにモータシャフト24先端部24aの外径と略等しい外径のピニオンギヤ40が軸部41を介して装着されている。ピニオンギヤ40の軸部41は、ピニオンギヤ40の中心に軸方向に突出して設けられたもので、前記モータシャフト24の孔部28の内径より軸部41の外径が僅かに大きく形成されている。前記モータシャフト24の孔部28は、ピニオンギヤ40の軸部41を圧入することで、周囲の壁面29が僅かに拡張して、前記モータシャフト24の先端部24aを支持する軸受け25の内輪25a側内周面に密着するように形成されている。ピニオンギヤ40の外径は、モータシャフト24の外径よりも大きくても、小さくても良く、ピニオンギヤ40に設けられた歯数と、ピニオンギヤ40に噛み合うギヤの歯数とのギヤ比を考慮して設定されている。
【0012】
前記減速機30のギヤケース31には、ピニオンギヤ40の回転を減速して出力軸50に伝達する遊星歯車機構60が内蔵されている。この遊星歯車機構60は、ピニオンギヤ40を太陽歯車とし、このピニオンギヤ40に噛み合う遊星歯車61がギヤケース31内壁面に取付けられた外輪歯車62に噛み合いながら公転運動するとともに、遊星歯車61を支持する遊星キャリア63に対して自転運動するものである。外輪歯車62は、外輪歯車62の周縁に沿って軸方向に設けられたねじ孔62aに螺合するねじ64を介してギヤケース31に固定されている。また、前記遊星キャリア63は、出力軸50に設けられた円板51の周縁部に支持されており、遊星歯車61の公転運動を円板51を通して出力軸50に伝達し、出力軸50から回転を取り出すものである。出力軸50および円板51は、ギヤケース31内に装着された軸受け32,33を介してそれぞれ回転自在にギヤケース31に支持されており、ギヤケース31の外部に導出した出力軸50の先端部から減速した回転を取り出すようにしている。ピニオンギヤ40の歯数をaとし、外輪歯車62の歯数をcとすると、a+c/aの歯数比に減速された回転が取り出されることになる。
【0013】
前記ピニオンギヤ40、遊星歯車61、外輪歯車62は、ピニオンギヤ40を中心とする同心円状に配置され、遊星キャリア63に軸受け65を介して回転自在に支持された遊星歯車61が、ピニオンギヤ40の周囲を自転しながら公転運動するもので、ピニオンギヤ40と出力軸50が減速機30の中心線上に対向して配置されている。
【0014】
前記モータシャフトとピニオンギヤの固定構造によると、モータシャフト24の先端中心軸線上に、軸方向の孔部28を形成し、この孔部28にピニオンギヤ40の軸部41を圧入したので、モータシャフト24の先端部24aの軸方向長さを短縮することができる。また、ピニオンギヤ40の軸部41の圧入によってモータシャフト24の孔部28の周壁29を、外周側に拡張させているので、モータシャフト24の先端部24aを回動可能に支持する軸受け25のピニオンギヤ40側への離脱を防ぐことができる。したがって、モータに減速機を組み付けたギヤードモータにおいても、ギヤケース31の軸方向の寸法を短縮させて減速機30を組付けることができるので、ギヤードモータの小型化を図ることができる。モータシャフト24と減速機30の出力軸50を同一軸線上に配置して、出力を取り出せるので、他の機器に対するレイアウトが容易である。
【0015】
なお、本発明は、前記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、ピニオンギヤ40の軸部41には、先端にローレット加工を施しても良く、また、ピニオンギヤ40の材質とモータシャフト24の材質に異なる金属を用いてモータシャフト24の孔部28の周壁29を拡張させても良い。また、軸受け25と孔部28の位置関係は、図1のように軸受け25の端部と孔部8の先端をほぼ一致させても良く、あるいは図2のように、軸受け25の内輪25aと重なるように孔部28を深く形成しても良い。など、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜変更して実施しうることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のモータシャフトとピニオンギヤの固定構造を有するギヤードモータを示す図である。
【図2】図1の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 ギヤードモータ
20 モータ本体
21 ハウジング
22 フランジ
23 モータケース
24 モータシャフト
24a 先端部
25,26 軸受け
27 ボス部
28 孔部
29 壁面
30 減速機
31 ギヤケース
32,33 軸受け
40 ピニオンギヤ(太陽歯車)
41 軸部
50 出力軸
51 円板
60 遊星歯車機構
61 遊星歯車
62 外輪歯車
63 遊星キャリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンギヤをモータシャフトに備えたモータのモータシャフトとピニオンギヤの固定構造において、前記モータシャフトの先端部中心軸線上に軸方向の孔部を形成し、かつ前記ピニオンギヤの中心に軸方向の軸部を突設し、該軸部を前記モータシャフトの孔部に圧入して前記モータシャフトに前記ピニオンギヤを固定したことを特徴とするモータシャフトとピニオンギヤの固定構造。
【請求項2】
前記ピニオンギヤの軸部を前記モータのモータシャフトに形成した孔部に圧入することによって前記孔部の周壁を、外周側に拡張させ、該モータのモータシャフト先端部を回動可能に支持する軸受けの離脱を防ぐことを特徴とする請求項1に記載のモータシャフトとピニオンギヤの固定構造。
【請求項3】
モータに歯車減速機を一体に組付け、モータシャフトの先端部を前記減速機のギヤケース内に導入し、モータシャフトの先端部に装着されたピニオンギヤを前記ギヤケース内の歯車機構に噛合させて減速するギヤードモータであって、
モータケース内のモータシャフトの先端部中心軸線上に軸方向の孔部を形成し、中心に軸方向の軸部を突設したピニオンギヤを、前記軸部を前記モータシャフトの孔部に圧入して組付けるとともに、該ピニオンギヤを、前記減速機のギヤケース内に組み付けられた歯車機構に噛合させて、減速した回転を取り出すようにしたことを特徴とするギヤードモータ。
【請求項4】
前記モータシャフトと減速機の出力軸を同一軸線上に配置し、前記ピニオンギヤを太陽歯車とする遊星歯車機構を前記ギヤケース内に配設したことを特徴とする請求項3に記載のギヤードモータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−35263(P2010−35263A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191842(P2008−191842)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】