説明

モータユニットおよび光学機器

【課題】モータの振動を低減する。
【解決手段】モータユニットであって、駆動力を発生するモータと、モータを固定して支持するとともに、モータからの駆動力により駆動される駆動部材を保持する固定部材と、制振材料により形成され、モータと固定部材との間に介在して、モータと固定部材との間で振動を低減する第一制振部材と固定部材を支持する本体部と、制振材料により形成され、固定部材と本体部との間に介在して、固定部材と本体部との間で振動を低減する第二制振部材とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットおよび光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
リードスクリュー、先端軸受、固定フレーム、スラストバネ等を制振材料により形成したモータユニットがある(特許文献1参照)。
[特許文献1] 特開2007−306755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
制振部材により形成した部品は高価で、結果的に製品コストが上昇する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第一態様として、駆動力を発生するモータと、モータを固定して支持するとともに、モータからの駆動力により駆動される駆動部材を保持する固定部材と、制振材料により形成され、モータと固定部材との間に介在して、モータと固定部材との間で振動を低減する第一制振部材と固定部材を支持する本体部と、制振材料により形成され、固定部材と本体部との間に介在して、固定部材と本体部との間で振動を低減する第二制振部材とを備えるモータユニットが提供される。
【0005】
本発明の第二態様として、上記モータユニットと、モータユニットを備え、本体部としての鏡筒に対してモータの駆動力により駆動される光学部品を含む光学系を備えた光学機器が提供される。
【0006】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一眼レフカメラ100の模式的断面図である。
【図2】モータモジュール400回りの斜視図である。
【図3】レンズ鏡筒200の部分的な分解斜視図である。
【図4】モータモジュール400単独の斜視図である。
【図5】モータモジュール400単独の側面図である。
【図6】組み込まれたモータモジュール400の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、一眼レフカメラ100の模式的断面図である。一眼レフカメラ100は、レンズ鏡筒200およびカメラボディ300を備える。レンズ鏡筒200は、光学機器の一例である。
【0010】
なお、記載を簡潔にする目的で、これからの説明においては、カメラボディ300に装着したレンズ鏡筒200に対して物体側を「前」または「先」と記載する。また、レンズ鏡筒200に対して物体から遠い側を「後」または「背面」と記載する。
【0011】
レンズ鏡筒200は、固定筒201と、固定筒201の内部に形成された光学系とを有する。固定筒201は、レンズ側マウント部202を後端に有し、カメラボディ300前面のボディ側マウント部360に結合される。
【0012】
レンズ側マウント部202およびボディ側マウント部360の結合は、予め定められた操作により解除できる。よって、カメラボディ300には、同じ規格のレンズ側マウント部202を有する他のレンズ鏡筒200を交換して装着できる。
【0013】
固定筒201の内部においては、物体側から順に光軸Xに沿って配された第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230、第四レンズ群240および第五レンズ群250が光学系を形成する。第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230、第四レンズ群240および第五レンズ群250は、それぞれ、個別のレンズ保持枠212、222、232、242、252に保持される。
【0014】
固定筒201の外周には、物体側から順にズーム操作環208、前カバー204、合焦操作環205および後カバー203が順次配される。前カバー204および後カバー203は、固定筒201に対して固定される。ズーム操作環208および合焦操作環205は、光学系の光軸Xを回転中心として、固定筒201に対してそれぞれ個別に回転できる。
【0015】
レンズ鏡筒200において、第一レンズ群210を保持するレンズ保持枠212は、外筒214の先端に支持される。外筒214は、固定筒201に対して光軸Xと平行な方向に進退して、レンズ鏡筒200の全長を変化させつつ第一レンズ群210を光軸X方向に移動させる。
【0016】
外筒214の外側には、外筒214に対して進退するカバー筒216が、外筒214と同軸に配される。カバー筒216は、後端付近の外周面にカムピン211を有する。カムピン211はズーム操作環208の回転により駆動される。これにより、カバー筒216は、外筒214に連れ従って光軸X方向に進退する。
【0017】
よって、外筒214が前方に移動した場合に固定筒201と外筒214との間に形成される間隙はカバー筒216により覆われる。これにより、固定筒201と外筒214の間隙から塵芥等がレンズ鏡筒200の内部に進入することが防止される。
【0018】
レンズ鏡筒200において、第二レンズ群220を保持するレンズ保持枠222は、図示の断面には現れない一対のガイドバーに、光軸X方向に移動可能に支持される。ガイドバーは、光軸Xと平行に配置される。また、第二レンズ群220を保持するレンズ保持枠222は、外周面から外側に突出するカムピン221を有する。
【0019】
カムピン221の先端は、固定筒201の外側に配されたカム環260のカム溝に係合する。よって、カム環260が光軸Xを回転中心として回転した場合、第二レンズ群220は光軸X方向に移動する。これにより、レンズ保持枠222がガイドバーに沿って移動する場合、第二レンズ群220は、内筒前部233に対して光軸X方向に相対移動する。
【0020】
なお、上記一対のガイドバーは、内筒前部233および内筒後部253に対して固定されている。内筒前部233および内筒後部253が固定筒201に対して光軸X方向に相対移動する場合、第二レンズ群220は、内筒前部233と共に固定筒201に対して光軸X方向に移動する。
【0021】
レンズ鏡筒200において、第三レンズ群230を保持するレンズ保持枠232は、内筒後部253の前端付近に固定される。また、第五レンズ群250を保持するレンズ保持枠252は、同じ内筒後部253の後端付近に固定される。内筒後部253は、第二レンズ群220を案内するガイドバーとは別の一対のガイドバーを内側に保持する。
【0022】
更に、内筒後部253は、外周面に複数のカムピン231を有する。カムピン231は、固定筒201の内側に配されたカム筒270のカム溝と係合する。よって、カム筒270が駆動力を受けて光軸Xを回転中心として回転した場合には、カムピン231に駆動力が伝達され、内筒後部253は光軸Xと平行な方向に移動する。
【0023】
これにより、内筒後部253に支持された第三レンズ群230および第五レンズ群250も、内筒後部253と共に移動する。更に、内筒後部253と一体的に連結された内筒前部233も、内筒後部253と共に光軸X方向に移動する。このように、第三レンズ群230および第五レンズ群250は、内筒後部253により互いに連結されるので、第三レンズ群230および第五レンズ群250の間隔が変化することはない。
【0024】
ズーム操作環208は、固定筒201の内側まで延在する連動キー209を有する。連動キー209は、ズーム操作環208が回転した場合に、ズーム操作環208と共に回転して、回転駆動力をカム筒270に伝達する。よって、ズーム操作環208が回転した場合は、カム筒270も回転する。
【0025】
また、カム筒270は、固定筒201の内側に配され、カムピン231と係合するカム溝と、周面から径方向外側に突出したカムピン271とを有する。カムピン271の先端は、固定筒201に形成されたカム溝を貫通して、固定筒201の外側に配されたカム環260のカム溝に係合する。これにより、カム環260が光軸Xを回転中心として回転した場合、カム筒270自体も固定筒201に対して光軸X方向に進退する。
【0026】
レンズ鏡筒200において、第四レンズ群240を保持したレンズ保持枠242は、一対のガイドバーにより、光軸X方向に移動可能に支持される。よって、内筒後部253が光軸X方向に移動した場合は、第四レンズ群240も光軸X方向に移動する。また、レンズ保持枠242が駆動力を受けた場合、第四レンズ群240は、第三レンズ群230および第五レンズ群250に対して光軸X方向に相対的に移動する。
【0027】
なお、レンズ鏡筒200において、第四レンズ群240は手振れ補正レンズを含む。手振れ補正レンズは、光軸Xに対して交差する方向に変位して、光学系の光軸Xのぶれを補償する。
【0028】
また、レンズ鏡筒200は、固定筒201に対して固定されたモータモジュール400を有する。モータモジュール400は、固定筒201を本体部としてモータユニット199を形成する。モータユニット199は、レンズ鏡筒200がオートフォーカス動作をする場合に、合焦に関わる光学部材を駆動する。
【0029】
上記のようなレンズ鏡筒200において、ズーム操作環208を回転させた場合、第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230、第四レンズ群240および第五レンズ群250が光軸X方向に移動して、レンズ鏡筒200の光学系が変倍する。また、合焦操作環205を回転させた場合、若しくは、カメラボディ300の制御部322の指示によりモータモジュール400が動作した場合は、第一レンズ群210、第二レンズ群220、第三レンズ群230、第四レンズ群240および第五レンズ群250の一部、例えば第四レンズ群240が光軸X方向に移動して、レンズ鏡筒200の光学系の焦点位置を変化させる。
【0030】
カメラボディ300は、レンズ側マウント部202に結合されるボディ側マウント部360の後方にミラーユニット370を備える。ミラーユニット370には、レンズ鏡筒200を通じて像光が入射する。
【0031】
ミラーユニット370は、メインミラー371およびサブミラー374を有する。メインミラー371は、メインミラー回動軸373により軸支されたメインミラー保持枠372に支持される。
【0032】
サブミラー374は、サブミラー回動軸376によりメインミラー保持枠372から軸支されたサブミラー保持枠375に支持される。よって、サブミラー保持枠375は、メインミラー保持枠372に対して回動する。また、メインミラー保持枠372が回動した場合、サブミラー保持枠375もメインミラー保持枠372と共に変位する。
【0033】
メインミラー保持枠372の前端が降下した場合、メインミラー371は、レンズ鏡筒200から入射した入射光束を斜めに横切る観察位置に停止する。メインミラー保持枠372が上昇した場合、メインミラー371は略水平になり、入射光束を避けた撮影位置に停止する。
【0034】
カメラボディ300において、ミラーユニット370の上方にはフォーカシングスクリーン352が、ミラーユニット370の下方には合焦光学系380が、それぞれ配される。フォーカシングスクリーン352の更に上方にはペンタプリズム354が配され、ペンタプリズム354の後方にはファインダ光学系356が配される。ファインダ光学系356の後端は、ファインダ350としてカメラボディ300の背面に露出する。
【0035】
メインミラー371が観察位置にある場合、レンズ鏡筒200を通じて入射した入射光束の多くはメインミラー371に反射されてフォーカシングスクリーン352に導かれる。フォーカシングスクリーン352は、撮像素子330の撮像面と共役な位置に配されて、レンズ鏡筒200の光学系が形成した像を可視化する。フォーカシングスクリーン352に形成された像は、ペンタプリズム354およびファインダ光学系356を通じてファインダ350から観察される。
【0036】
ペンタプリズム354を通してファインダ350から観察される像は、正立正像として観察される。これにより、一眼レフカメラ100のユーザは、一眼レフカメラ100による撮影範囲を決定できる。
【0037】
また、フォーカシングスクリーン352に入射した入射光束の一部は、ファインダ光学系356の近傍に配された測光センサ390に入射する。測光センサ390は、受光した光束から被写体輝度を検出して制御部322に参照させる。これにより、制御部322は、撮影する場合の露出条件を算出する。
【0038】
更に、メインミラー371は、入射光束の一部を透過するハーフミラー領域を有する。よって、観察位置にあるメインミラー371に入射した入射光束の一部は、ハーフミラー領域を透過してサブミラー374に入射する。サブミラー374は、ハーフミラー領域から入射した入射光束の一部を、合焦光学系380に向かって反射する。
【0039】
合焦光学系380は、入射した入射光束の一部を焦点検出センサ382に導く。これにより、制御部322は、レンズ鏡筒200の光学系を合焦させる場合に移動するレンズの目標位置を決定する。
【0040】
カメラボディ300において、ミラーユニット370の後方には、シャッタユニット310、光学フィルタ332、撮像素子330、ボディ基板320および背面表示部340が順次配される。液晶表示板等により形成される背面表示部340は、カメラボディ300の背面に現れる。ボディ基板320には、制御部322、画像処理部324等の電子回路が実装される。
【0041】
上記のような一眼レフカメラ100においてレリーズボタンが半押しされると、焦点検出センサ382および測光センサ390が有効になり、被写体像を適切な撮影条件で撮影できる状態になる。次いで、レリーズボタンが全押しされると、メインミラー371およびサブミラー374が退避位置に移動して、シャッタユニット310が開く。これにより、レンズ鏡筒200から入射した入射光束は、光学フィルタ332を通過して、撮像素子330に撮影される。
【0042】
図2は、レンズ鏡筒200におけるモータモジュール400周辺の様子を、レンズ鏡筒200の下側やや後方から見上げた様子を、後カバー203および合焦操作環205を取り除いた状態で示す。図2において、図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0043】
レンズ鏡筒200から、後カバー203および合焦操作環205を取り外すと、固定筒201に対して固定されたモータモジュール400が現れる。モータモジュール400は、固定部材410、アクチュエータ420およびギヤユニット430を有する。
【0044】
モータモジュール400において、固定部材410は、図中上端にブラケット412を有する。一方、本体部となる固定筒201は、外周面から径方向に突出するリブ部207を有する。モータモジュール400は、ブラケット412に挿通されたビス452がリブ部207にねじ込まれることにより、固定筒201に対して固定される。アクチュエータ420およびギヤユニット430は、それぞれ固定部材410に支持される。
【0045】
アクチュエータ420は、例えば圧電材料を用いた超音波アクチュエータであり、駆動電力を供給された場合に回転駆動力を発生する。ギヤユニット430は、アクチュエータ420が発生した回転駆動力を、回転数およびトルクを変換しつつ、合焦操作環205等に噛み合う。
【0046】
図3は、レンズ鏡筒200の部分的な分解斜視図である。図1および図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0047】
レンズ鏡筒200においては、前カバー204、モータモジュール400および後カバー203が、固定筒201に対して固定される。前カバー204および後カバー203の間で、モータモジュール400の外側に装着される合焦操作環205は、これら固定筒201、前カバー204、モータモジュール400および後カバー203に対して、光軸Xを回転中心として回転可能に取り付けられる。
【0048】
モータモジュール400は、固定部材410、ギヤユニット430、カバー440を有する。カバー440は、固定部材410に対して固定され、アクチュエータ420の近傍に配されたギヤユニット430の一部を覆う。
【0049】
固定部材410は、図2に示したものを含めて一対のブラケット412を有する。更に、一対のブラケット412のそれぞれは、ビス452を挿通する挿通穴411を有する。モータモジュール400を固定筒201に対して固定する場合は、ブラケット412の挿通穴にそれぞれに挿通したビス452のねじ先を固定筒201のリブ部207に対してねじ込む。これにより、固定部材410は、リブ部207とビス452の座面に挟まれて固定される。
【0050】
また、レンズ鏡筒200において、合焦操作環205の内面には内歯車206が設けられる。内歯車206は、モータモジュール400のギヤユニット430と噛み合う。これにより、合焦操作環205は、モータモジュール400が発生する回転駆動力により回転する。また、合焦操作環205を外部から操作して回転させた場合は、内歯車206を通じて、回転駆動力がギヤユニット430に伝達される。
【0051】
図4は、モータモジュール400単独の斜視図である。図4は、モータモジュール400を、図3とは反対側から見た様子を示す。換言すれば、レンズ鏡筒200における径方向外側からモータモジュール400を見た様子を示す。図4において、図1から図3までと共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0052】
モータモジュール400において、アクチュエータ420は、固定部材410の反対側から挿通されたビス462により固定部材410の図中上端近傍に固定される。即ち、ビス462は、固定部材410を貫通して挿通され、アクチュエータ420の一部にねじ先をねじ込まれる。よって、ビス462の座面とアクチュエータ420との間に固定部材410の一部を挟むことにより、アクチュエータ420は固定部材410に対して固定される。
【0053】
なお、アクチュエータ420の固定部材410に対する固定は、アクチュエータ420にビス462を挿通する穴を設け、ビス462のねじ先を固定部材にねじ込む構造とすることもできる。しかしながら、固定部材410に対してアクチュエータ420と反対側からビス462をねじ込む構造とした場合は、アクチュエータ420の周囲にビス462のスペースを用意しなくてもよい。よって、アクチュエータ420回りを小型化できる。
【0054】
ギヤユニット430は、光学系駆動歯車432と操作環駆動歯車434とを含む。操作環駆動歯車434は、内歯車206に合焦操作環205の内側から噛み合って、合焦操作環205が外部から回された場合に、合焦操作環205の回転をギヤユニット430に伝達する。
【0055】
光学系駆動歯車432は、アクチュエータ420が回転駆動力を発生した場合も、合焦操作環205が外部から操作されて回転した場合も、カム環260等を回転させる。こうして伝達された駆動力により、レンズ鏡筒200の光軸系において合焦に関わる光学部品が光軸X方向に移動する。
【0056】
図5は、図4に示したモータモジュール400単独の側面図である。図4と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0057】
モータモジュール400において、ビス462の座面と固定部材410との間には、制振ワッシャ464が挟まれる。また、固定部材410とアクチュエータ420との間にも制振ワッシャ466が挟まれる。
【0058】
制振ワッシャ464、466の各々は、貫通穴を有する環状の部材であり、貫通穴にビス462を挿通される。これにより、制振ワッシャ464、466の各々は、脱落することなくビス462および固定部材410の間、並びに、アクチュエータ420および固定部材410の間に介在する。制振ワッシャ464、466は制振材料により形成される。
【0059】
制振ワッシャ464、466を形成する制振材料としては、複合型、強磁性型、転位型あるいは双晶型の制振合金があげられる。これら制振合金は、双晶変形等による内部損失または内部摩擦により、特に周波数の高い振動を効率よく吸収する。
【0060】
よって、動作するアクチュエータ420が生じた振動は、アクチュエータ420および固定部材410の間に挟まれた制振ワッシャ466により吸収されて、固定部材410への振動の伝播が抑制される。また、動作するアクチュエータ420からビス462に伝達された振動は、ビス462および固定部材410の間に挟まれた制振ワッシャ464により吸収されて、固定部材410への振動の伝播が抑制される。
【0061】
制振合金は、エラストマ等と異なり剛性が高いので、アクチュエータ420の支持に制振合金を介在させても支持剛性が低下しない。よって、アクチュエータ420とギヤユニット430との軸間距離の変動は少なく、噛み合いのガタを大きくすることもない。
【0062】
なお、複合型制振合金としては、Zn−Al合金、片状黒鉛鋳鉄を例示できる。強磁性型の制振合金としては、高純度鉄、高純度ニッケルを例示できる。転位型の制振合金としては、Mg合金、Mg−Zn合金を例示できる。双晶型の制振合金としては、Mn−Cu合金、Cu−Al−Ni合金、Ti−Ni合金、Fe−Mn−Si合金、Fe−Ni−Co−Ti合金、Fe−Ni−C合金、Fe−Cr−Ni−Mn−Si−Co合金、Fe−Al合金を例示できる。
【0063】
また、制振ワッシャ464、466の外形形状は円形には限らない。例えば、制振ワッシャ464、466の一部は、アクチュエータ420において固定部材410に対向する面の形状に倣った形状を有していてもよい。同様に、制振ワッシャ464、466の一部は、アクチュエータ420と固定部材410との間隙を充填する形状を有していてもよい。
【0064】
一方、モータモジュール400において、固定部材410およびカバー440は、いずれも、それ自体が振動を発生することがない。よって、カバー440は、固定部材410に対して、ワッシャを用いることなく、ビス442で直接に締結してもよい。
【0065】
また、図示の例では、カバー440に挿通したビス442のねじ先を固定部材410にねじ込む構造とした。しかしながら、ビス442を固定部材410に挿通して、カバー440にねじ込む構造としても差し支えない。
【0066】
図6は、モータユニット199の本体部である固定筒201にモータモジュール400を取り付けた状態を示す側面図である。図6は、図5と同じ方向からモータモジュール400を見た様子を示す。
【0067】
なお、図6においては、モータモジュール400と固定筒201とを見分けやすくする目的で、モータモジュール400にハッチングを施している。しかしながら、このハッチングは断面を意味するハッチングではない。また、図6において、図5と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0068】
モータユニット199において、固定部材410のブラケット412とビス452の座面との間に、制振ワッシャ454が挟まれる。また、ブラケット412と固定筒201のリブ部207との間にも制振ワッシャ456が挟まれる。
【0069】
制振ワッシャ454、456の各々は、貫通穴を有する環状の部材であり、貫通穴にビス452を挿通される。これにより、制振ワッシャ454、456の各々は、脱落することなく座面およびブラケット412の間、並びに、ブラケット412および固定部材410の間に介在する。制振ワッシャ454、456は制振材料により形成される。
【0070】
制振ワッシャ454、456を形成する制振材料は、制振ワッシャ464、466と同様に、複合型、強磁性型、転位型あるいは双晶型の制振合金等を用いることができる。ただし、固定筒201への固定に用いる制振ワッシャ454、456と、アクチュエータ420の固定に用いる制振ワッシャ464、466とは、異なる材料で形成されていてもよい。
【0071】
また、制振ワッシャ454、456の形状も、制振ワッシャ464、466と同様に、円形には限らない。例えば、制振ワッシャ454、456の一部は、固定部材410において固定筒201に対向する面の形状に倣った形状を有していてもよい。同様に、制振ワッシャ454、456の一部は、固定部材410と固定筒201との間隙を充填する形状を有してもよい。
【0072】
上記のような構造により、モータモジュール400において生じた振動は、制振ワッシャ454、456に吸収されることにより、固定筒201に殆ど伝播しない。固定筒201は広い表面積を有するので、アクチュエータ420またはギヤユニット430において生じた振動が固定筒201に伝播した場合、当該振動は周囲の空気を振動させて、雑音としてユーザに認知される。
【0073】
また、一眼レフカメラ100を用いて動画を撮影する場合は、同時に録音もする場合がある。モータモジュール400から固定筒201に振動が伝播した場合に雑音が生じると当該雑音も併せて録音される。
【0074】
この点、上記モータユニット199は、アクチュエータ420およびモータモジュール400の固定に制振ワッシャ454、456、464、466を用いたことにより、レンズ鏡筒200の内部構造物と固定筒201とが機械的に絶縁される。よって、モータモジュール400において生じた振動が遮断され、レンズ鏡筒200を静粛に運用できる。
【0075】
また、制振合金は、エラストマ等と異なり剛性が高い。よって、モータモジュール400の固定筒201に対する固定に制振ワッシャ454、456を介在させても支持剛性は低下しない。よって、上記構造により、ギヤユニット430と、被駆動系との軸間距離の変動は少ない。
【0076】
更に、上記の例では、ブラケット412に挿通したビス452のねじ先を固定筒201のリブ部207にねじ込む構造としたが、リブ部207に挿通したビス452のねじ先をブラケット412にねじ込む構造としてもよい。
【0077】
上記の通り、光学機器として一眼レフカメラ100のレンズ鏡筒200を例にあげて説明したが、レンズ鏡筒200とカメラボディ300とが一体のカメラにも上記の構造を適用できる。さらに、メインミラー371を備えていないミラーレスカメラのレンズ鏡筒200にも同様の構造を適用できる。また更に、レンズ等の光学部材を光軸X方向に移動させる機能を有する望遠鏡、測量器、顕微鏡等の他の光学機器においても、上記の構造を適用できる。
【0078】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲に限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0079】
100 一眼レフカメラ、199 モータユニット、200 レンズ鏡筒、201 固定筒、202 レンズ側マウント部、203 後カバー、204 前カバー、205 合焦操作環、206 内歯車、207 リブ部、208 ズーム操作環、209 連動キー、210 第一レンズ群、211、221、231、271 カムピン、212、222、232、242、252 レンズ保持枠、214 外筒、216 カバー筒、220 第二レンズ群、230 第三レンズ群、233 内筒前部、240 第四レンズ群、250 第五レンズ群、253 内筒後部、260 カム環、270 カム筒、300 カメラボディ、310 シャッタユニット、320 ボディ基板、322 制御部、324 画像処理部、330 撮像素子、332 光学フィルタ、340 背面表示部、350 ファインダ、352 フォーカシングスクリーン、354 ペンタプリズム、356 ファインダ光学系、360 ボディ側マウント部、370 ミラーユニット、371 メインミラー、372 メインミラー保持枠、373 メインミラー回動軸、374 サブミラー、375 サブミラー保持枠、376 サブミラー回動軸、380 合焦光学系、382 焦点検出センサ、390 測光センサ、400 モータモジュール、410 固定部材、411 挿通穴、412 ブラケット、420 アクチュエータ、430 ギヤユニット、432 光学系駆動歯車、434 操作環駆動歯車、440 カバー、442、452、462 ビス、454、456、464、466 制振ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を発生するモータと、
前記モータを固定して支持するとともに、前記モータからの駆動力により駆動される駆動部材を保持する固定部材と、
制振材料により形成され、前記モータと前記固定部材との間に介在して、前記モータと前記固定部材との間で振動を低減する第一制振部材と
前記固定部材を支持する本体部と、
制振材料により形成され、前記固定部材と前記本体部との間に介在して、前記固定部材と前記本体部との間で振動を低減する第二制振部材と
を備えるモータユニット。
【請求項2】
前記モータおよび前記固定部材のいずれか一方に挿通して他方にねじ込むことにより前記モータを前記固定部材に対して固定する第一ねじを更に備え、
前記第一制振部材は、前記第一ねじを挿通され、前記第一ねじと前記一方との間、および、前記一方と前記他方との間にそれぞれ挟まれる部分を含む請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記固定部材および前記本体部のいずれか一方に挿通して他方にねじ込むことにより前記固定部材を前記本体部に対して固定する第二ねじを更に備え、
前記第二制振部材は、前記第二ねじを挿通され、前記第二ねじと前記一方との間、および、前記一方と前記他方との間にそれぞれ挟まれる部分を含む請求項1または請求項2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記第一制振部材は、前記モータにおいて前記固定部材に対向する面と、前記固定部材において前記モータに対向する面との間を埋める形状を有する部分を含む請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記第二制振部材は、前記固定部材において前記本体部に対向する面と、前記本体部において前記固定部材に対向する面との間を埋める形状を有する部分を含む請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記第一ねじは、前記固定部材に対して前記モータと反対側から挿通され、前記モータに対してねじ込まれる請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のモータユニットを備え、前記本体部としての鏡筒に対して前記モータの駆動力により駆動される光学部品を含む光学系を備えた光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−105094(P2013−105094A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249907(P2011−249907)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】