説明

モータ用ブラシ保持装置

【課題】高さ寸法の縮小を図ることができるモータ用ブラシ保持装置を提供する。
【解決手段】ブラシホルダ12を、基板部12aと該基板部の表面から突出した一対の側壁部12b,12bとにより形成して、一対の側壁部の高さを該側壁部の間に挿入されるブラシ13の高さに等しくすると共に、ブラシホルダ12の基板部をブラシ保持プレート11に設けた切り欠き溝内に嵌合させた状態でブラシ保持プレート11に結合して、ブラシ保持プレートの基板部の表面とブラシ保持プレートの表面とを同一の平面上に位置させる。またブラシホルダ12の側壁部の先端に形成した突条部12b2をブラシ13のコーナ部に設けた溝部13a2に当接させることによりブラシ13の抜け止めを図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ付き直流モータに用いるブラシ保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
整流子と該整流子に接触するブラシとを備えた直流モータは、整流子に接触するブラシを保持したブラシ保持装置を固定子側に備えている。図6(A)は一例として、特許文献1に示されたブラシ保持装置1を示したもので、このブラシ保持装置は、モータのロータに取り付けられた整流子を貫通させるための開口部201を有するブラシ保持プレート2と、ブラシ保持プレート2に固定されたブラシホルダ3とを備えている。ブラシ保持プレート2は、その開口部201の中心軸線を整流子の中心軸線(ロータの中心軸線)と一致した状態で配置される。ブラシホルダ3は、断面が矩形状を呈する中空部301を有していて、中空部301の長手方向の一端側の開口部301aがブラシ保持プレート2の開口部の中心軸線側に開口させられている。図示してないが、ブラシホルダ3の側壁部には、中空部301内に挿入されたブラシに接続されているピグテール(可撓性導体)を外部に導出するためのスリットと、ブラシを整流子側に付勢するバネをブラシホルダ3内に挿入するためのスリットとを設ける必要がある。
【0003】
ブラシホルダ3に保持されるブラシ4は、図6(B)に示したように、ほぼ角柱状に形成されて、図6(C)に示されたようにブラシホルダ3の中空部内にスライド自在に挿入されて保持される。ブラシホルダ3内に挿入されたブラシ4は、ブラシホルダ3内に挿入されたバネにより整流子側に付勢されて、整流子に所定の圧力で接触させられる。
【0004】
特許文献1にはまた、図7に示すように、ブラシ保持プレート2の表面から起立させた1対の側壁部501,501によりブラシホルダ5を形成して、ブラシホルダ5の側壁部501,501の間にブラシ6を保持させたブラシ保持装置1′が示されている。このブラシ保持装置においては、ブラシホルダ5を構成する側壁部501,501の対向面に溝部5a,5aを形成するとともに、ブラシ6の側面に突条部6a,6aを突設して、ブラシ6の突条部6a,6aをブラシホルダの側壁部501,501の溝部5a,5aに嵌合させることにより、ブラシ6をブラシホルダ5に保持させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−3169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のブラシ保持装置においては、図6に示したように、ブラシホルダ3が天井部302を有していたため、この天井部302の厚さtだけブラシ保持装置の高さが高くなり、このことが、モータの軸線方向寸法の縮小を図る上で障害になっていた。ブラシ保持装置の高さを低くするために、ブラシの高さを低くすることが考えられるが、ブラシの高さを低くするとブラシの剛性が低下するため好ましくない。
【0007】
図7に示したブラシ保持装置のように、ブラシホルダ5の天井部を省略すれば、ブラシ保持装置の高さを低くすることが可能である。しかしながら、図7に示したブラシ保持装置では、ブラシホルダ5の中空部内にブラシ6を保持することを可能にするために、ブラシ6の側面の中間部に突条部6aを形成するとともに、ブラシホルダの側壁の内面の中間部に溝部5aを形成する必要があるため、ブラシホルダの側壁部501、501にピグテール導出用のスリットと、ブラシを付勢するためのバネを挿入するためのスリットとを形成することが困難である。特にブラシの高さが低く、ブラシホルダの側壁部の高さが低い場合、ブラシホルダの側壁部501,501にスリットを形成することは殆ど不可能である。またブラシは成形型を用いて製造される焼結品であるため、その側面の中間部に突条部6aを形成することは容易ではない。
【0008】
本発明の目的は、ブラシの側面の中間部に突条部を形成することなく、またブラシホルダの側壁部の内面に溝部を形成することなく、天井部を有しないブラシホルダ内にブラシを保持させることができるようにして、モータの軸線方向寸法の縮小を図ることができるようにしたモータ用ブラシ保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、整流子を貫通させるための開口部を有して該開口部の中心軸線を整流子の中心軸線に一致させた状態で配置されるブラシ保持プレートと、該ブラシ保持プレートに固定されたブラシホルダとを備えたブラシ保持装置を対象とする。本発明が対象とするブラシ保持装置においては、ブラシホルダが、ブラシ保持プレートの開口部の放射方向に長手方向を向けた中空部を有して該中空部の長手方向の一端がブラシ保持プレートの開口部の中心軸線側に開口させられる。また整流子に接触させられるブラシは、その長手方向をブラシホルダの中空部の長手方向に向け、高さ方向をブラシ保持プレートの開口部の軸線方向に向けた状態でブラシホルダの中空部内に挿入されて保持される。
【0010】
本願の請求項1に記載された発明に係わるブラシ保持装置で用いるブラシホルダは、ブラシ保持プレートの表面に対して直角な方向に起立した高さが等しい互いに平行な一対の側壁部を有して、該一対の側壁部の間に前記中空部が形成されている。ブラシホルダの一対の側壁部は、両側壁部の間に形成された中空部内に挿入されたブラシの高さ寸法に等しい高さ寸法を有して、一対の側壁部の先端面がブラシの高さ方向の端面と同一の平面上に配置されるように形成されている。またブラシホルダの一対の側壁部の先端には、該一対の側壁部の対向方向に突出して該一対の側壁部の長手方向に沿って互いに平行に伸びる一対の突条部が形成され、ブラシホルダの中空部内に挿入されたブラシのコーナ部の内、少なくともブラシホルダの各側壁部の先端側に配置された各コーナ部には、該ブラシの長手方向に伸びる溝部が形成されている。ブラシホルダの各側壁部の先端の突条部は、ブラシの対応するコーナ部の溝部に嵌合する形状に形成されていて、各側壁部の先端の突条部とブラシの対応する溝部との嵌合により、ブラシのブラシホルダからの抜け止めが図られている。
【0011】
本願の請求項2に記載された発明に係わるブラシ保持装置においては、ブラシホルダの一対の側壁部の先端部に、該一対の側壁部の対向方向に突出した一対の突条部が形成され、ブラシホルダの中空部内に挿入されたブラシのコーナ部の内、少なくともブラシホルダの各側壁部の先端側に配置された各コーナ部に面取り部が形成されている。またブラシホルダの各側壁部の先端の突条部には、ブラシの対応する面取り部に当接する傾斜面が形成され、各側壁部の先端の突条部の傾斜面とブラシの対応する面取り部との当接により、ブラシのブラシホルダからの抜け止めが図られている。その他の構成は請求項1に記載されたブラシ保持装置と同様である。
【0012】
本願の請求項3に記載された発明は、請求項1または2に記載された発明に適用されるもので、本発明においては、ブラシホルダが、ブラシ保持プレートに設けられた切り欠き溝に嵌合されて該ブラシ保持プレートに結合された基板部を有して、該基板部に前記一対の側壁部が一体に形成され、ブラシホルダの基板部の表面とブラシ保持プレートの表面とが同一平面上に配置されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ブラシホルダを、ブラシ保持プレートの表面に対して直角な方向に起立した一対の側壁部により形成して、一対の側壁部の高さを該側壁部の間に挿入されたブラシの高さに等しくしたので、ブラシホルダの天井部を省略してブラシ保持装置の高さを低くすることができる。
【0014】
本発明によれば、ブラシの側面の中間部に突条部を形成するのではなく、ブラシホルダの側壁部の先端に形成した突条部をブラシのコーナ部に設けた溝部または面取り部に当接させることによりブラシの抜け止めを図るので、ブラシホルダの側壁部にピグテール導出用のスリットとブラシを付勢するバネを挿入するためのスリットを設けることが容易であり、ブラシ保持装置の機能を何等損なうことなく、その高さ寸法を縮小してモータの小型化を図ることができる。
【0015】
また本発明によれば、ブラシの高さを低くすることなくブラシ保持装置の高さ寸法を縮小することができるため、ブラシの剛性を低下させることなくモータの小型化を図ることができる。
【0016】
ブラシを製造する際にそのコーナ部に溝部または面取り部を形成することは、ブラシの側面に突条部を形成することに比べてはるかに容易であるため、本発明によれば、ブラシの生産性を低下させることなく、ブラシ保持装置の高さ寸法の縮小を図ってモータの小型化を図ることができる。
【0017】
請求項3に記載された発明によれば、ブラシホルダに基板部を設けて、該基板部をブラシ保持プレートに設けられた切り欠き溝内に嵌合させることによりブラシホルダをブラシ保持プレートに結合する構造にしたので、種々のブラシに適応したブラシホルダの基板部の寸法を規格化しておくことにより、種々のブラシに対してブラシ保持プレートを共用することができ、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)は本発明の一実施形態に係わるブラシ保持装置の斜視図、(B)は同ブラシ保持装置のブラシ保持プレートに設けられた切り欠き溝を示した要部拡大斜視図である。
【図2】(A)及び(B)はそれぞれ同実施形態で用いるブラシホルダ及びブラシの斜視図である。(C)はブラシホルダにブラシを保持させた状態を示した斜視図である。
【図3】(A)及び(B)はそれぞれ本発明の他の実施形態で用いるブラシホルダ及びブラシの斜視図である。(C)は同ブラシホルダにブラシを保持させた状態を示した斜視図である。
【図4】図1のブラシホルダをモータのロータと組み合わせた状態を示した側面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】(A)及び(B)はそれぞれ従来のブラシホルダ及びブラシの斜視図である。(C)は(A)のブラシホルダにブラシを保持させた状態を示した斜視図である。
【図7】従来の他のブラシ保持装置の一部を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(A)は、本発明の一実施形態を示した斜視図で、図示のブラシ保持装置10は、ブラシ保持プレート11と、ブラシ保持プレート11に固定された一対のブラシホルダ12,12と、一対のブラシホルダ12,12にそれぞれ保持されたブラシ13,13とからなっている。
【0020】
ブラシ保持プレート11は、絶縁樹脂の成形品からなっていて、モータのロータに取り付けられた整流子(図1には図示せず。)を貫通させるための開口部11aを有している。ブラシ保持プレート11の外周部の180°離れた対称位置には、一対の起立壁部11b,11bが形成され、起立壁部11bと11bとの間の部分には舌片状の突出部11cが形成されている。ブラシ保持プレート11は、その開口部11aの中心軸線を図示しない整流子の中心軸線と一致させた状態で配置される。ブラシ保持プレート11には、開口部11aの放射方向に伸びる一対のコの字形の切り欠き溝11dが、該ブラシ保持プレートを厚み方向に貫通した状態で形成されている。図1(B)に示されているように、各切り欠き溝11dは、開口部11aの内周面11a1に開口部を有するように形成されていて、各切り欠き溝11dの幅方向に相対する内面には、各切り欠き溝の長手方向に伸びる溝部11d1が形成されている。各切り欠き溝11dは、ブラシホルダ12をブラシ保持プレート11に結合するために用いられる。
【0021】
ブラシ保持プレート11には、絶縁樹脂の成型品からなるブラシホルダ12が結合される。図2(A)に示されているように、各ブラシホルダ12は、長方形状の基板部12aと、該基板部の表面12a1から起立した互いに平行な一対の側壁部12b,12bとを一体に有している。側壁部12b,12bは、基板部の表面12a1からの高さhが等しくなるように形成されていて、これら一対の側壁部12b,12bの間に同図(B)に示されたブラシ13を挿入するための中空部12cが形成されている。
【0022】
図2(B)に示されているように、ブラシ13は、中心軸線の周囲に4つのコーナ部を有するほぼ角柱状の形状に形成されている。ブラシ13は、その長手方向をブラシホルダ12の中空部12cの長手方向に向け、高さ方向をブラシ保持プレートの開口部11aの軸線方向に向けた状態で、ブラシホルダ12の中空部12c内に挿入される。
【0023】
図2(A)に示されているように、ブラシホルダ12の一対の側壁部12b,12bの先端部(基板部12aと反対側の端部)には、両側壁部の対向方向の内側(中空部12c側)に突出した状態で側壁部12b,12bの長手方向に平行に伸びる帯状の突条部12b2,12b2が形成されている。
【0024】
本実施形態では、ブラシ13がほほ正四角柱状を呈するように形成されていて、ブラシ13の4つのコーナ部には、断面がL字形の形状を有してブラシ13の長手方向に連続して伸びる溝部13a2が形成されている。ブラシホルダ12の各側壁部12bの先端に形成された突条部12b2は、ブラシ13の各コーナ部の溝部13a2に嵌合し得る形状を有していて、図2(C)に示すように、ブラシ13をブラシホルダ12の側壁部12b,12bの間に挿入した際に、ブラシ13の4つのコーナ部のうち、ブラシホルダの側壁部12b,12bの先端側に位置するコーナ部に形成された溝部13a2,13a2に、ブラシホルダの側壁部12b、12bの先端の突条部12b2,12b2が嵌合されるようになっている。このように、ブラシ13をブラシホルダの側壁部12b,12bの間の中空部内に挿入した状態で、ブラシホルダの突条部12b2,12b2がブラシの溝部13a2,13a2に嵌合することにより、ブラシ13のブラシホルダからの抜け止めが図られる。
【0025】
ブラシホルダ12の一対の側壁部12b,12bの高さhは、両側壁部の間に形成された中空部12c内に挿入されたブラシ13の高さhに等しく設定されている。従って、図2(C)に示すように、ブラシ13をブラシホルダの側壁部12b,12bの間の中空部内に挿入した状態では、ブラシホルダ12の一対の側壁部12b,12bの先端面12b1,12b1と、ブラシ13の高さ方向の端面13b1とが同一の平面上に配置される。
【0026】
ブラシホルダ12は、その中空部12cの長手方向をブラシ保持プレート11の開口部11aの放射方向に向けた状態で配置されて、その基板部12aが、ブラシ保持プレート11に設けられた切り欠き溝11d内に嵌合されることによりブラシ保持プレート11に結合される。
【0027】
図示の例では、ブラシホルダの基板部12aの幅方向の両側面に、基板部12aの長手方向に伸びる突条部12a2,12a2が形成され、基板部12aがブラシ保持プレートに設けられた切り欠き溝11d内に嵌合された際に、突条部12a2,12a2が切り欠き溝11dの内面の溝部11d1,11d1に嵌合して、基板部12aがブラシ保持プレートの厚み方向に位置決めされるようになっている。ブラシホルダの基板部12aの厚みは、ブラシ保持プレート11の厚みに等しく設定されていて、ブラシホルダ12をブラシ保持プレート11に結合した状態で、ブラシホルダ12の基板部12aの表面12a1とブラシ保持プレート11の表面11e(図1A参照)とが同の一平面上に配置されるようになっている。
【0028】
図1に示されているように、各ブラシホルダ12の側壁部12b,12bには、ブラシホルダの長手方向に伸びるスリット12d,12dが形成され、ブラシ13の側面に一端が接続されたピグテール14が一方の側壁部12bに設けられたスリット12dを通して外部に導出されている。ピグテール14の他端は、ブラシ保持プレート11に取り付けられた端子金具15に接続されている。またブラシ保持プレート11に設けられたバネ保持部11fに後端部側が固定された板バネ16の先端部が、ブラシホルダの他方の側壁部12bに設けられたスリット12dを通してブラシホルダ12内に挿入され、ブラシホルダ12内に挿入された板バネ16の先端がブラシ13の後端部に当接されて、ブラシ13が整流子側に付勢されている。
【0029】
図4及び図5に示したように、ブラシ13を保持したブラシホルダ12が結合されたブラシ保持プレート11は、直流モータのフレーム20に固定される。フレーム20にはベアリング21が保持されていて、このベアリング21によりモータの回転軸22が回転自在に支持されている。回転軸22には電機子鉄心23に電機子コイル24を巻回したロータ25と整流子26とが取り付けられている。整流子26はブラシ保持プレート11に設けられた開口部11aを貫通した状態で配置され、ブラシホルダ12に保持されたブラシ13が整流子26に接触させられている。ロータ25は図示しないモータケース内に挿入され、該モータケースの内周に固定されたステータの磁極部がロータ25の磁極部に対向させられる。図4において、27及び28は、回転軸22の一端及び他端を図示しないモータケースの端部壁に支持するためのベアリングである。
【0030】
上記のように、本発明においては、ブラシホルダ12を、基板部12aと該基板部の表面から突出した一対の側壁部12b,12bとにより形成して、一対の側壁部12b,12bの高さを該側壁部の間に挿入されるブラシ23の高さに等しくすると共に、ブラシホルダの基板部12aをブラシ保持プレート11に設けた切り欠き溝11d内に嵌合させた状態でブラシ保持プレート11に結合して、ブラシホルダ12の基板部12aの表面とブラシ保持プレート11の表面とを同一の平面上に位置させたので、ブラシホルダ12の天井部を省略してブラシ保持装置10の高さを低くすることができる。
【0031】
上記の実施形態のように、ブラシ13の側面の中間部に突条部を形成するのではなく、ブラシホルダ12の側壁部12b,12bの先端に形成した突条部をブラシのコーナ部に設けた溝部または面取り部に当接させることによりブラシの抜け止めを図る構造にすると、ブラシホルダ12の側壁部にピグテール導出用のスリットとブラシを付勢するバネを挿入するためのスリットとを設けることが容易であり、ブラシ保持装置の機能を何等損なうことなく、その高さ寸法を縮小してモータの小型化を図ることができる。
【0032】
また上記のように構成すると、ブラシ13の高さを低くすることなくブラシ保持装置10の高さ寸法を縮小することができるため、ブラシの剛性を低下させることなくモータの小型化を図ることができる。
【0033】
ブラシ13を成形型を用いて焼結する際にそのコーナ部に溝部または面取り部を形成することは、ブラシの側面に突条部を形成することに比べてはるかに容易である。従って、本発明によれば、ブラシの生産性を低下させることなく、ブラシ保持装置の高さ寸法の縮小を図ってモータの小型化を図ることができる。
【0034】
上記の実施形態では、ブラシ13の各コーナ部に溝部13a2を形成して、ブラシホルダ12の各側壁部12bの先端に形成した突条部12b2を、各側壁部12bの先端に隣接するブラシ13のコーナ部の溝部13a2に嵌合させるように構成したが、本発明はこのように構成する場合に限定されない。
【0035】
例えば、図3(B)に示したように、ブラシ13の各コーナ部に面取り部13cを形成するとともに、図3(A)に示すように、ブラシホルダの各側壁部12bの先端部に形成した突条部12b2にブラシ13の各コーナ部の面取り部13cに当接する傾斜面12b3を形成して、図3(C)に示すように、ブラシ13をブラシホルダ12の中空部内に挿入した際に、ブラシホルダ12の各側壁部12bの先端の突条部12b2の傾斜面12b3をブラシの対応する面取り部13cに当接させることにより、ブラシ13のブラシホルダ12からの抜け止めを図る構造にしてもよい。
【0036】
上記の実施形態のように、ブラシ13をほぼ正四角柱状に形成して、ブラシ13の4つのコーナ部のすべてに溝部13a2または面取り部13cを形成して、ブラシホルダ12の側壁部12b,12bの先端に設けた突条部12b2,12b2をブラシの溝部13a2,13a2に嵌合させるか、または突条部12b2,12b2に設けた傾斜面12b3,12b3をブラシの面取り部13c,13cに当接させる構造にすると、ブラシホルダ12の中空部内にブラシ13を挿入する際に、ブラシの向きを気にする必要がなくなるので、モータの組立を容易にすることができる。しかしながら、本発明はこのようにブラシを構成する場合に限定されるものではなく、ブラシ13の4つのコーナ部のうち、ブラシホルダ12の側壁部12b,12bの先端側に配置されることになる2つのコーナ部のみに溝部13a2または面取り部13cを形成するようにしてもよい。この場合ブラシ13は正四角柱状でなくてもよい。即ち本発明において用いるブラシ13は、少なくともブラシホルダ12の各側壁部の先端側に配置される各コーナ部にブラシの長手方向に伸びる溝部または面取り部を有するものであればよい。
【0037】
上記の実施形態では、ブラシ保持プレート11に設ける開口部11aが孔からなっているが、開口部11aはモータのロータに取り付けられた整流子を貫通させ得るように形成されていいればよく、周方向に閉じた孔である必要はない。即ち開口部11aは切り欠き状に形成されていてもよい。開口部11aは、どのような形状に形成される場合でも、ロータの中心軸線に一致する中心軸線を有する。
【0038】
上記の実施形態のように、ブラシホルダ12を、基板部12aと、該基板部の表面に対して直角な方向に起立した一対の側壁部12b,12bとを一体に有する構造にして、ブラシホルダの基板部12aをブラシ保持プレートに設けられた切り欠き溝に嵌合させることにより、ブラシホルダ12をブラシ保持プレート11に結合する構造にしておくと、種々の寸法、形状を有するブラシに適応したブラシホルダの基板部の寸法を規格化しておくことにより、種々の寸法、形状を有するブラシに対してブラシ保持プレート11を共用することができ、コストの低減を図ることができる。
【0039】
しかしながら本発明においては、ブラシホルダが、ブラシ保持プレートの表面に対して直角な方向に起立した一対の側壁部12b,12bを有していればよく、上記の実施形態のようにブラシホルダを構成する場合に限定されない。ブラシホルダを構成する一対の側壁部12b、12bは、ブラシ保持プレート11に一体に形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 ブラシ保持装置
11 ブラシ保持プレート
11a 開口部
11d 切り欠き溝
12 ブラシホルダ
12a 基板部
12b 側壁部
12c 中空部
12b1 側壁部の先端面
12b2 突条部
12b3 傾斜面
13 ブラシ
13a2 ブラシのコーナ部の溝部
13c ブラシのコーナ部の面取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整流子を貫通させるための開口部を有して該開口部の中心軸線を前記整流子の中心軸線に一致させた状態で配置されるブラシ保持プレートと、該ブラシ保持プレートに固定されたブラシホルダとを備え、前記ブラシホルダは、前記ブラシ保持プレートの開口部の放射方向に長手方向を向けた中空部を有して該中空部の長手方向の一端が前記ブラシ保持プレートの開口部の中心軸線側に開口させられ、前記整流子に接触させられるブラシが、その長手方向を前記ブラシホルダの中空部の長手方向に向け、高さ方向を前記ブラシ保持プレートの前記開口部の軸線方向に向けた状態で前記ブラシホルダの中空部内に挿入されて保持されているモータ用ブラシ保持装置において、
前記ブラシホルダは、前記ブラシ保持プレートの表面に対して直角な方向に起立した高さが等しい互いに平行な一対の側壁部を有して、該一対の側壁部の間に前記中空部が形成され、
前記ブラシホルダの一対の側壁部は、両側壁部の間に形成された中空部内に挿入されたブラシの高さ寸法に等しい高さ寸法を有して、前記一対の側壁部の先端面が前記ブラシの高さ方向の端面と同一の平面上に配置されるように形成され、
前記ブラシホルダの一対の側壁部の先端には、該一対の側壁部の対向方向に突出して該一対の側壁部の長手方向に沿って互いに平行に伸びる一対の突条部が形成され、
前記ブラシホルダの中空部内に挿入されたブラシのコーナ部の内、少なくとも前記ブラシホルダの各側壁部の先端側に配置された各コーナ部には、該ブラシの長手方向に伸びる溝部が形成され、
前記ブラシホルダの各側壁部の先端の突条部は、前記ブラシの対応するコーナ部の溝部に嵌合する形状に形成されて、各側壁部の先端の突条部と前記ブラシの対応する溝部との嵌合により、前記ブラシの前記ブラシホルダからの抜け止めが図られていること、
を特徴とするモータ用ブラシ保持装置。
【請求項2】
整流子を貫通させるための開口部を有して該開口部の中心軸線を前記整流子の中心軸線に一致させた状態で配置されるブラシ保持プレートと、該ブラシ保持プレートに固定されたブラシホルダとを備え、前記ブラシホルダは、前記ブラシ保持プレートの開口部の放射方向に長手方向を向けた中空部を有して該中空部の長手方向の一端が前記ブラシ保持プレートの開口部の中心軸線側に開口させられ、前記整流子に接触させられるブラシが、その長手方向を前記ブラシホルダの中空部の長手方向に向け、高さ方向を前記ブラシ保持プレートの前記開口部の軸線方向に向けた状態で前記ブラシホルダの中空部内に挿入されて保持されているモータ用ブラシ保持装置において、
前記ブラシホルダは、前記ブラシ保持プレートの表面に対して直角な方向に起立した互いに平行な一対の側壁部を有して、該一対の側壁部の間に前記中空部が形成され、
前記ブラシホルダの一対の側壁部は、両側壁部の間に形成された中空部内に挿入されたブラシの高さ寸法に等しい高さ寸法を有して、前記一対の側壁部の先端面が前記ブラシの高さ方向の端面と同一の平面上に配置されるように形成され、
前記ブラシホルダの一対の側壁部の先端部には、該一対の側壁部の対向方向に突出した一対の突条部が形成され、
前記ブラシホルダの中空部内に挿入されたブラシのコーナ部の内、少なくとも前記ブラシホルダの各側壁部の先端側に配置された各コーナ部に面取り部が形成され、
前記ブラシホルダの各側壁部の先端の突条部には、前記ブラシの対応する面取り部に当接する傾斜面が形成されて、各側壁部の先端の突条部の傾斜面と前記ブラシの対応する面取り部との当接により、前記ブラシの前記ブラシホルダからの抜け止めが図られていること、
を特徴とするモータ用ブラシ保持装置。
【請求項3】
前記ブラシホルダは、前記ブラシ保持プレートに設けられた切り欠き溝に嵌合されて該ブラシ保持プレートに結合された基板部を有して、該基板部に前記一対の側壁部が一体に形成され、前記ブラシホルダの基板部の表面と前記ブラシ保持プレートの表面とが同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のモータ用ブラシ保持装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−50219(P2011−50219A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198613(P2009−198613)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】