説明

モータ駆動制御装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、モータ駆動制御装置に係り、更に詳しくはパワーウインドウ装置の駆動用モータの制御用として好適なモータ駆動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、駆動源としてモータを使用し、ドアガラスを昇降させるパワーウインドウ装置が搭載された自動車等が広く普及している。このパワーウインドウ装置として、最近では、異物挟み込み防止機能を有するものが開発されている。
【0003】この種のパワーウインドウ装置では、ドアガラスを上昇させる際にドアガラスとドアフレームとの間に異物が挟み込まれると、負荷変動が生じ、これに起因するモータの過負荷状態をモータ電流の増加によって検出し、ドアガラスの上昇停止や反転等の措置が行われる。
【0004】特に、オートスイッチでは、アップ又はダウン側接点がオンされると、手を離してもモータの駆動は継続され、全閉又は全開までドアガラスは移動されるため、モータ電流を検出し上述のような措置を行うことは有効である。
【0005】なお、ドアガラス全閉時においてもモータは過負荷となり、モータの電流が増加するため、全閉近傍に全閉検出センサを設け、異物挟み込みと全閉とを区別している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、電源としてのバッテリの電圧変動や他の搭載機器の駆動・停止によりモータ駆動電圧が変動すると、この駆動電圧に応じてモータ電流が変動し、モータの過負荷を誤検出する恐れがある。通常、モータ電流は、駆動電圧に依存せずにモータにかかる負荷に応じて変動するが、急激な駆動電圧の変動が生じると、その変動によって一時的にモータ電流の変化が生じる。
【0007】例えば、駆動電圧が増加するとその増加量に応じて突入電流に似た電流増加が生じ、異常電流か否かを判断するしきい値を超え、これが原因となってモータの過負荷を誤検出することが考えられ、このためドアガラスの昇降中に異物の挟み込み等がないにも拘らずモータが停止してドアガラスが途中で停止する等の不都合が生じる恐れがあった。
【0008】モータ電流を微分処理してモータ電流の変化率に基づきモータ過負荷状態を検出する回路においては、特に電源電圧の変動に起因する上記誤検出が生じやすい傾向がある。
【0009】本発明は、上記事実を考慮してなされたもので、その目的は、モータ駆動電圧が変動した場合には、これに影響を受けることなくモータを駆動し続けると共に、モータに過負荷状態が生じた場合には、過電流が流れないようにモータを制御することのできるモータ駆動制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係るモータ駆動制御装置は、モータ電流に対応する電圧値と過負荷検出のためのしきい値とを比較してモータの過負荷状態を検出する比較手段と、モータ駆動電圧の変動を監視し当該モータ駆動電圧が所定幅以上変動した時に変動幅に応じた時間だけ禁止信号を出力するモータ駆動電圧監視手段と、前記禁止信号が出力されていない時は、前記比較手段の出力に基づいて過電流が流れないように前記モータを制御すると共に、前記禁止信号が出力されている間は前記モータを駆動し続ける制御手段と、を有する。
【0011】
【作用】上記構成によれば、モータに過負荷が作用していない通常運転時に、何らかの原因によりモータ駆動電圧が所定幅以上変動すると、モータ駆動電圧監視手段がその変動幅に応じた時間だけ禁止信号を出力する。このため、制御手段では、この禁止信号が出力されている間、モータを駆動し続ける。この場合において、禁止信号が出力されている間は比較手段がモータ電流に対応する電圧値と過負荷検出のためのしきい値との比較そのものを停止する結果、制御手段がモータを駆動し続けるようにしても良く、あるいは比較手段は比較を行なうが、制御手段がこの比較手段の出力を無視してモータを駆動し続けるようにしても良い。この場合において、禁止信号が出力される時間は、モータ駆動電圧の変動幅に応じて変化するので、変動幅が大きな時は長く、変動幅が小さい時は短くなる。一方、モータ駆動電圧が変動せずあるいは所定幅未満変動した時にモータに過負荷状態が発生すると、制御手段が、比較手段の出力に基づいて過電流が流れないようにモータを制御する。
【0012】従って、モータに過負荷状態が生じていない時にモータ駆動電圧の変動によりモータが停止することがなくなる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図1ないし図2に基づいて説明する。
【0014】図1には、本実施例に係るモータ駆動制御装置10の回路構成が示されている。
【0015】図1において、モータ12の一端はリレースイッチ14の一端に接続され、他端は抵抗R1を介してアースされている。リレースイッチ14の他端は電源線16に接続されており、このため、リレースイッチ14がオンされると、モータ12は駆動される。リレースイッチ14のオン、オフ動作は、リレーコイル18への励磁、非励磁を制御することによってなされる。
【0016】このリレーコイル18の両端は制御手段としての制御回路20に接続されている。制御回路20には、電源線16も接続されており、リレーコイル18を通電、非通電させることができる。
【0017】この制御回路20には、比較手段としての比較器22の出力端が接続されており、この制御回路20は、比較器22がハイレベル信号である過負荷検出信号を出力した場合には、前記リレーコイル18を非通電状態とし、比較器22がローレベル信号を出力した場合にはリレーコイル18を通電状態とするようになっている。
【0018】比較器22のプラス側入力端には、前記モータ12と抵抗R1との間から分岐された分岐線が接続されており、モータ電流が抵抗R1に流れるときの電圧V1が入力されるようになっている。
【0019】また、比較器22のマイナス側入力端には、制御回路20からの定電圧電源が抵抗R2を介して接続されると共に、抵抗R3を介してアースされている。これにより、このマイナス側入力端には、制御回路20からの定電圧電源の電圧が抵抗R2と抵抗R3とで分圧された電圧V2がしきい値(基準電圧)として入力されるようになっている。
【0020】以上が通常のモータ電流の検出回路を構成しており、一定のしきい値(電圧V2)とモータ電流に応じた電圧V1とが比較され、電圧V1が電圧V2を超えると、比較器22の出力端からハイレベルの信号が出力され、制御回路20ではリレーコイル18を非励磁として、モータ12の駆動を遮断(停止)するようになっている。
【0021】更に、本実施例では、モータ12の電源線16側に抵抗R4及び抵抗R5を介して(直列接続)アースされる分岐線24が接続され、抵抗R4と抵抗R5との間がコンデンサC1の一端に接続されている。このコンデンサC1の他端は抵抗R6を介してエミッタ接地のNPNトランジスタTr1のベースに接続されている。また、このトランジスタTr1のベース−エミッタ間には抵抗R7が接続されている。トランジスタTr1のコレクタは、制御回路20に接続されている。
【0022】即ち、本実施例では、これらの抵抗R4,R5,R6,R7,コンデンサC1,トランジスタTr1によって、モータ駆動電圧の変動を監視し当該モータ駆動電圧が所定幅以上増加した時に変動幅に応じた時間だけ制御回路20に禁止信号(ローレベル信号)を出力するモータ駆動電圧監視手段としての電圧変動検出回路26が構成されている。
【0023】次に、このようにして構成された本実施例の作用・効果を図2を参照しつつ説明する。
【0024】制御回路20によってリレーコイル18が励磁されると、リレースイッチ14がオンとされ、モータ12の駆動が開始される。図2の矢印Aの範囲で示される如く、通常のモータ電流に対応する電圧V1は一定とされているが、電源電圧に急激な変動(上昇)が生じると、モータ電流も突入電流に似た電流増加を生じる。このため、電圧V1が急激に上昇し、しきい値を超える(図2参照)。
【0025】しかし、本実施例では、この電源電圧の上昇により、モータ駆動電圧に比例する電圧V3が上昇し、コンデンサC1の両端に電位差が生じ、コンデンサの充電が開始され、コンデンサC1から抵抗R6を通ってトランジスタTr1にベース電流が流れ、トランジスタTr1がオンとなり、図2に示されるように、制御回路20に対しローレベル信号である禁止信号が一定時間(コンデンサの充電が終了するまでの一定時間)出力される。制御回路20では、この禁止信号が入力されている間は、比較器22の出力の如何に拘らずリレーコイル18を通電状態としてモータ12を駆動し続ける。即ち、電圧変動検出回路26から禁止信号が出力されている間は、比較器22の出力は無視される。
【0026】この場合において、禁止信号が出力される時間は、モータ駆動電圧の変動幅に応じて定まる。これはコンデンサC1の充電特性曲線の傾斜に相当する時定数はコンデンサC1の容量と抵抗R6の抵抗値との積で定まり、モータ駆動電圧の変動幅が大きくなると、時定数が一定であるから、その分コンデンサC1が満充電に到る時間は大きくなり、その反対にモータ駆動電圧の変動幅が小さければ、その分コンデンサC1が満充電に到る時間は小さくなるからである。
【0027】従って、コンデンサC1の充電時間に応じて定まるトランジスタTr1がオン状態を維持する時間,即ち禁止信号が出力される時間はモータ駆動電圧の変動幅に応じて変化し、変動幅が大きな時は長く、変動幅が小さい時は短くなる。変動幅が所定幅未満の時は、ベース電流が十分に流れずトランジスタTr1がオフ状態を維持するので禁止信号は出力されない。
【0028】この一方、モータ12の運転中にモータ駆動電圧の変動がない時(上記の所定幅未満の変動時を含む)にモータ12に過負荷が生じた場合には、禁止信号は出力されないので、モータ電流がしきい値に対応する電流値を越えた場合に比較器22の出力がハイとなり、制御回路20では、モータ12に過電流が流れないようにリレーコイル18を非通電状態(非励磁状態)とする。
【0029】なお、上記実施例における電圧変動検出回路26が駆動開始時から機能する構成にすることにより、駆動電源投入時(リレーの最初のオン時)のモータ突入電流をマスクすることもできる。
【0030】また、上記実施例では、モータ駆動電圧の増加時に禁止信号を出力する電圧変動検出回路が設けられた場合を例示したが、これに代えて又はこれと共に図3R>3(a),(b)に示されるような電圧変動検出回路を設けることにより、モータ駆動電圧の減少時に減少幅に応じた時間だけハイレベル信号である禁止信号を出力させることができる。
【0031】上記実施例のモータ駆動制御装置は、車両のパワーウインドウ装置に適用すると特に好適である。即ち、パワーウインドウ装置では、モータの駆動力によってドアガラスを上昇させている際、異物が挟み込まれると、モータに過負荷がかかり、モータ電流が増加する。ここで、しきい値を超えると、モータの駆動を停止或いは所定時間反転後停止させ、異物の破損等を防止する。このようなパワーウインドウ装置において、ドアガラスの昇降中に他の電装品(エアコンディショナ、ランプ等)が作動、作動停止されると、モータ駆動電圧が変動する。上記実施例のモータ駆動制御装置では、この変動幅に応じた時間だけ電圧変動検出回路26が禁止信号を出力し、この禁止信号が出力されている間は制御回路20がモータ12を駆動し続けるので、モータ駆動電圧の変動によってドアガラスが昇降途中で停止するといった不具合を解消することができる。
【0032】なお、上記実施例では、アナログ回路によりモータ駆動電圧の変動を監視する回路を構成する場合を例示したが、ソフト的にモータ駆動電圧の変動を監視し、変動幅に応じた時間だけ制御回路20が比較器22の出力を無視するようにしてもよい。
【0033】また、上記実施例では電圧変動検出回路26が禁止信号を出力する間、制御回路が比較器22の出力を無視して判定を中止する場合を例示したが、電圧変動検出回路26が禁止信号を出力する間比較器22が出力をローレベルに維持し続けるように構成しても良い。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、モータ駆動電圧が変動した場合には、これに影響を受けることなくモータを駆動し続けると共に、モータに過負荷状態が生じた場合には、過電流が流れないようにモータを制御することができるという従来にない優れた効果が有る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るモータ駆動制御装置の回路構成図である。
【図2】図1の実施例の作用説明のための線図である。
【図3】(a)は電圧変動検出回路の他の例を示す図であり、(b)は電圧変動検出回路のその他の例を示す図である。
【符号の説明】
10 モータ駆動制御装置
12 モータ
20 制御回路(制御手段)
22 比較器(比較手段)
26 電圧変動検出回路(モータ駆動電圧監視手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 モータ電流に対応する電圧値と過負荷検出のためのしきい値とを比較してモータの過負荷状態を検出する比較手段と、モータ駆動電圧の変動を監視し当該モータ駆動電圧が所定幅以上変動した時に変動幅に応じた時間だけ禁止信号を出力するモータ駆動電圧監視手段と、前記禁止信号が出力されていない時は、前記比較手段の出力に基づいて過電流が流れないように前記モータを制御すると共に、前記禁止信号が出力されている間は前記モータを駆動し続ける制御手段と、を有するモータ駆動制御装置。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【特許番号】特許第3377260号(P3377260)
【登録日】平成14年12月6日(2002.12.6)
【発行日】平成15年2月17日(2003.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−210577
【出願日】平成5年8月25日(1993.8.25)
【公開番号】特開平7−67386
【公開日】平成7年3月10日(1995.3.10)
【審査請求日】平成12年2月28日(2000.2.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【参考文献】
【文献】特開 平5−49290(JP,A)
【文献】特開 平2−70288(JP,A)
【文献】特開 平1−110245(JP,A)