説明

モータ

【課題】 モータ使用中の磁石の減磁を防止することである。
【解決手段】 ヨークとヨーク外周に装着した磁石8と有するロータRを備えたモータMにおいて、磁石8表面を断熱材10で覆い、モータMの駆動中に巻線11が発生する熱が磁石8に伝達されることが阻止され、これにより、磁石8の温度上昇を阻止して減磁してしまうことを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にモータに使用される磁石は、温度上昇に伴って磁束密度が減少する特性を有しており、特に、ネオジウム磁石等の希土類磁石にあっては、高温下において元の磁力まで回復できない不可逆減磁を生じることが知られている。
【0003】
そして、上述のように磁石の温度上昇による減磁は、モータの出力トルクの低下という性能劣化に繋がるため、上記減磁を防止する提案がなされるに至っている。
【0004】
この提案では、ヨーク外周に装着された磁石の外周に磁石保持環を設けるとともに、この磁石保持環と磁石との間に断熱材を介装したもの(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)が知られている。
【0005】
そして、これら提案はモータの製造方法に関するものであり、ロータ高速回転時の磁石の径方向および周方向へ動きを上記磁石保持環で規制してトルクむら等を防止するため、どうしても磁石保持環を焼き嵌める必要があり、この焼き嵌め時に高温となった磁石保持環の熱が磁石に伝達されて減磁してしまうことを防止する技術である。
【特許文献1】特開平8−275470号公報(段落番号0017,図1)
【特許文献2】特開平6−165419号公報(段落番号0013,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した提案にあっては、モータ駆動中の巻線が発する熱による熱減磁(可逆減磁を含む)への対処がなされておらず、特に継続駆動中や高回転域では、巻線の熱が磁石に伝達され、トルクの減少や場合によっては不可逆減磁を生じてモータの性能が劣化してしまう恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は上記不具合を解消するために創案されたものであって、その目的とするところは、モータ駆動中の磁石の減磁を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、ヨークとヨーク外周に装着した磁石と有するロータを備えたモータにおいて、少なくともステータに対向する磁石表面を断熱材で覆うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
各請求項の発明によれば、巻線の発熱によって、フレーム内の温度が上昇することとなるが、磁石の外周表面は上記断熱材で覆われているので、磁石への熱の伝達が阻止されることとなる。
【0010】
したがって、モータの長時間駆動や高回転駆動によっても、巻線の熱が磁石に伝達されにくいので磁石が高温となることが防止され、これにより磁石が減磁してしまうことが防止される。
【0011】
すると、モータの駆動中において磁石の減磁が防止されるので、モータの性能が劣化することはなく、長時間駆動を行っても安定的なトルクの発生が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図に基づき説明する。図1は、本発明の一実施の形態におけるモータの縦断面図である。図2は、他実施の形態におけるモータの縦断面図である。
【0013】
図1に示すように、一実施の形態におけるモータMは、ロータRと、ステータSと、フレームFとを備え、いわゆるブラシレスモータとして構成されている。
【0014】
以下、各部につき詳細に説明すると、ロータRは、ヨークたるシャフト1と、シャフト1の外周に装着された磁石たる永久磁石8と、永久磁石8の表面を覆う断熱材10とで構成されている。
【0015】
シャフト1は、円筒状の大径部2と、大径部2の両端から延設される円筒状の小径部3,4と、小径部3の先端から延設される円筒状のセンサ軸5と、上記センサ軸5の先端から延設される中空な雄螺子部7とで構成されており、その大径部2の外周には複数の永久磁石8が装着され、さらに、この小径部3の大径部2近傍から永久磁石8の表面さらには他方の小径部4の大径部2の近傍にかけて、すなわち、永久磁石8のヨークたるシャフトに接していない部位全体にかけて断熱材10で覆われている。
【0016】
なお、断熱材10としては、熱伝導率が小さい材質、たとえば、フェノール系樹脂等を用いることができ、また、永久磁石8を覆う手法としては、具体的にたとえば、単に断熱材10を、小径部3の大径部2近傍から永久磁石8の表面さらには小径部4の大径部2の近傍にかけてフィットする形状に形成し、すなわち、断熱材10を磁石カバーとして永久磁石8の外周側に装着したり、断熱材10を断熱塗料として上記永久磁石8の表面に塗布することで永久磁石8を覆うとしたりしてもよく、他の手法を用いて覆ってもよい。
【0017】
ちなみに、永久磁石8は、複数のブロック化された磁石で構成されてヨークたるシャフト1の外周に接着されるものであってもよいし、環状に形成されて分割着磁されるものであってもよい。
【0018】
他方、ステータSは、巻線11とステータコア12とで構成されており、一端が閉塞されている円筒状に形成されたフレームFの内周に固着されている。
【0019】
そして、フレームFの開口部には、軸芯部にボールベアリング16の外輪が嵌挿された蓋体Cが嵌合されており、この蓋体Cの端部にはフランジ25が延設され、当該フランジ25を、上記フレームFの開口端から延設されるフランジ22に対面させて、これらフランジ25にフランジ22を螺着、接着等により連結してフレームFと蓋体Cとが連結される。
【0020】
また、フレームF内には、ボールベアリング15の外輪が固定されており、このボールベアリング15とボールベアリング16は、その内輪で上記シャフト1の上下の小径部3,4を回転自在に軸支している。
【0021】
なお、シャフト1は上述のように各部が筒状に形成されていることからその内部は中空とされており、フレームFの閉塞端に設けた孔28を介してシャフト1内部の気体の通過が許容されている。
【0022】
また、シャフト1のセンサ軸5の外周には、環状であって所定の分割磁極パターンを有するセンシング用磁石20が雄螺子部7に螺着されるナットNによって固定され、このセンシング用磁石20の外周側にホール素子やMR素子等を備えた磁気センサ21が、上記センシング用磁石21に対向するようにフレームF内に設けられている。
【0023】
つづいて、作用について説明する。上述のように、ブラシレスモータとして構成されたモータMは、巻線11が励磁されると、シャフト1が回転することとなる。
【0024】
そして、このモータMが駆動されつづけると巻線11の発熱によって、フレームF内の温度が上昇することとなるが、永久磁石8の外周表面は上記断熱材10で覆われているので、永久磁石8への熱の伝達が阻止されることとなる。
【0025】
したがって、モータMの長時間駆動や高回転駆動によっても、巻線11の熱が永久磁石8に伝達されにくいので磁石が高温となることが防止され、これにより永久磁石8が減磁してしまうことが防止される。
【0026】
すると、モータMの駆動中において永久磁石8の減磁が防止されるので、モータMの性能が劣化することはなく、長時間駆動を行っても安定的なトルクの発生が可能となる。
【0027】
さらに、シャフト1が中空とされているからシャフト1の冷却も可能となっており、巻線11の熱がフレームF、ボールベアリング15,16を介してシャフト1に伝達されることによる、あるいは、フレームF内の気体温度上昇によるシャフト1の温度上昇を妨ぐことができる。
【0028】
したがって、シャフト1から永久磁石8への熱伝達による減磁をも防止することができ、これにより減磁防止効果を高めることができる。
【0029】
なお、ロータRの表面全体を断熱材で覆うこと、ボールベアリング15,16のボールが樹脂材で形成すること、もしくは、ボールベアリング15,16のボールに樹脂材を被覆することにより、巻線11からシャフト1に熱が伝達されることを阻止するとすれば、上記と同様に減磁防止効果を高めることが可能である。
【0030】
また、永久磁石8が特にブロック化されてヨークたるシャフト1の外周に接着等される場合であって、断熱材10を磁石カバーとして永久磁石8の外周側に装着する場合には、ブロック化された磁石が飛散してしまうことをも防止して、磁石飛散によるモータがロックされてしまう事態が回避される。
【0031】
つづいて、他の実施の形態におけるモータについて説明する。この他の実施の形態におけるモータは、図2に示すように、一実施の形態のモータMのボールベアリング15とフレームFとの間およびフレームFと蓋体Cとの間に、それぞれ、断熱材で形成される断熱部30,31を介装したものである。
【0032】
そして、断熱部30は、ボールベアリング15の外輪とフレームFとの間に介装可能なように断面略L字の環状のフェノール系樹脂で形成され、他方、断熱部31は、一端に鍔を備えた筒状のフェノール系樹脂で形成されている。
【0033】
すなわち、上記各断熱部30,31により巻線11が装着されるフレームFからロータR側に熱が伝達されることを阻止することができる。
【0034】
したがって、巻線11の熱がフレームF、ボールベアリング15,16を介してシャフト1に伝達されることが阻止されるから、シャフト1から永久磁石8への熱伝達による減磁をも防止することができ、これにより減磁防止効果を高めることができる
なお、図示したところでは、上記位置に断熱部30,31を設けているが、フレームFからロータRへの熱伝達を阻止できればよいので、フレームFとロータRとの間の適当な位置に断熱部を設けるとしてもよく、具体的にたとえば、シャフトを熱伝導率が低い樹脂材で形成し、もしくは、シャフト表面への断熱塗料の塗布、シャフト全体を断熱材で覆うとした後に、このシャフトの外周に磁性体で形成されるヨークを装着するとしてもよい。
【0035】
そして、シャフトを特に熱伝導率が低い樹脂材料で形成、もしくはシャフトを断熱材で覆う場合には、センシング用磁石20が装着されるセンサ軸自体がモータの駆動に使用される永久磁石8から磁気的に絶縁されているので、磁気センサ21は、上記永久磁石8の発生している磁界の影響を受けずにすみ、正確なロータRの回転位置を検出することができる。
【0036】
また、この場合、センサ軸が磁化されることがないので、永久磁石8の磁界ノイズをより一層低減することが可能となる。
【0037】
したがって、この場合、センシング用磁石20と永久磁石8とを近づけて配置することも可能となるので、モータを従来に比較して小形化することも可能となるメリットがある。
【0038】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態におけるモータの縦断面図である。
【図2】他実施の形態におけるモータの縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 シャフト
2 大径部
3,4 小径部
5 センサ軸
7 雄螺子部
8 永久磁石
10 断熱材
11 巻線
12 ステータコア
15,16 ボールベアリング
20 センシング用磁石
21 磁気センサ
22,25 フランジ
28 孔
30,31 断熱部
C 蓋体
F フレーム
M モータ
N ナット
R ロータ
S ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨークとヨーク外周に装着した磁石と有するロータを備えたモータにおいて、少なくともステータに対向する磁石表面を断熱材で覆うことを特徴とするモータ。
【請求項2】
ロータ表面を断熱材で覆うことを特徴とする請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
ロータが中空に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
ロータをフレームに対し回転自在に軸支するボールベアリングを備え、該ボールベアリングのボールが断熱材で形成されるかボールに断熱材が被覆されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
電機子巻線を備えたステータとロータとの間にステータからロータへの熱伝達を防止する断熱部を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
ロータのシャフトが断熱材で形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のモータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−42506(P2006−42506A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219547(P2004−219547)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】