説明

モータ

【課題】磁気飽和の発生を抑制して高出力化に寄与できるモータを提供する。
【解決手段】ロータ11は、第1爪状磁極21b及び第2爪状磁極をそれぞれ有する第1及び第2コア部材21,22からなるロータコアRと、第1及び第2コア部材21,22の軸方向の間に配置され、軸方向に磁化されることで、第1爪状磁極21bを第1の磁極として機能させ、第2爪状磁極を第2の磁極として機能させる環状磁石23とを備える。そして、ロータコアRの軸方向長さHrは、ステータ6の電機子コア7の軸方向長さHsよりも大きく設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂永久磁石のランデル型ロータを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のモータのロータは、例えば特許文献1に示すように、ロータコアを構成する第1コア部材と第2コア部材との間に界磁磁石が配置されて構成されている。第1及び第2コア部材はそれぞれ、周方向に複数の第1爪状磁極及び第2爪状磁極を備え、その第1及び第2爪状磁極は周方向に交互となるように設けられている。そして、界磁磁石は軸方向に磁化され、これにより、第1爪状磁極を第1の磁極として機能させ、第2爪状磁極を第2の磁極として機能させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−43749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したようなモータでは、ロータコア内で磁気飽和が生じると、モータトルクに寄与する有効磁束が低減されてしまい、その結果、モータ出力が低下するという問題が懸念され、この点においてなお、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、磁気飽和の発生を抑制して高出力化に寄与できるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、略円盤状の第1コアベースの外周部に、等間隔に複数の第1爪状磁極が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成された第1コア部材と、略円盤状の第2コアベースの外周部に、等間隔に複数の第2爪状磁極が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成され、前記各第2爪状磁極がそれぞれ対応する前記第1コア部材の各第1爪状磁極間に配置された第2コア部材とからなるロータコアと、前記第1コアベースと第2コアベースとの軸方向の間に配置され、前記軸方向に磁化されることで、前記第1爪状磁極を第1の磁極として機能させ、前記第2爪状磁極を第2の磁極として機能させる界磁磁石とを備えたロータと、巻線が巻装された環状のステータコアが前記ロータの外周側に配置されたステータとから構成されたモータであって、前記ロータコアの軸方向長さは、前記ステータコアの軸方向長さよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、ロータコアの軸方向長さがステータコアの軸方向長さよりも大きく設定されるため、第1及び第2コア部材の軸方向の厚みを厚くすることが可能となる。そして、第1及び第2コア部材の軸方向の厚みを厚くすることで、磁気通路に余裕が生まれて磁気飽和の発生を抑制することができ、その結果、モータの高出力化に寄与できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記第1及び第2爪状磁極の背面には、補助磁石がそれぞれ配置され、前記第1爪状磁極は、軸方向において前記第2コアベースにおける前記界磁磁石とは反対側の端面まで延出され、前記第2爪状磁極は、軸方向において前記第1コアベースにおける前記界磁磁石とは反対側の端面まで延出されていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、各爪状磁極の背面に配置される補助磁石を、各爪状磁極よりも軸方向にはみ出さない状態でロータコアの軸方向端面まで延ばして構成することが可能となるため、補助磁石の軸方向長さを十分に確保することが可能となり、その結果、モータの高出力化により一層寄与できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のモータにおいて、前記ロータは、前記ロータコアと前記界磁磁石の組が軸方向に複数積層された構成を有し、軸方向に並ぶ複数の前記第1及び第2コアベースのうち、軸方向の両端に配置されたコアベースの軸方向厚みは、軸方向の内側に配置されたコアベースの軸方向厚みよりも厚くなるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
この発明では、ロータは、ロータコアと界磁磁石の組が軸方向に複数積層された所謂タンデム構造を有する。そして、そのタンデム構造のロータにおいて、軸方向に並ぶ複数の第1及び第2コアベースのうち、軸方向の両端のコアベースの軸方向厚みが内側に配置されたコアベースの軸方向厚みよりも厚くなるように設定される。軸方向の両端のコアベースは、軸方向の外側端面が外部と面しているため、その外側端面から磁束の漏れが生じやすいが、本発明では、軸方向の両端のコアベースの軸方向厚みを厚くすることで、そのコアベースでの磁気飽和が抑えられ、その結果、そのコアベースの外側端面からの漏れ磁束の発生を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
従って、上記記載の発明によれば、磁気飽和の発生を抑制してモータの高出力化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態のモータの断面図。
【図2】(a)実施形態のロータを第1コア部材側から見た斜視図、(b)同ロータを第2コア部材側から見た斜視図。
【図3】実施形態のロータの断面図。
【図4】ロータ、電機子コア及び筒状ハウジングの底部の寸法構成を説明するための模式図。
【図5】ロータコアと筒状ハウジングとのギャップ幅G2と、ロータコアと電機子コアとの径方向のギャップ幅G1との比G2/G1と鎖交磁束量との関係を示すグラフ。
【図6】別例におけるロータの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、モータ1のモータケース2は、有底筒状に形成された金属製の筒状ハウジング3と、該筒状ハウジング3のフロント側(図1中、左側)の開口部を閉塞する樹脂製のフロントエンドプレート4とを有している。筒状ハウジング3のリア側(図1中、右側)の端部には、回路基板等の電源回路を収容した回路収容ボックス5が取り付けられている。筒状ハウジング3の内周面にはステータ6が固定されている。ステータ6は、径方向内側に延びる複数のティースを有する円環状の電機子コア7(ステータコア)と、電機子コア7のティースに巻装されたセグメントコンダクタ巻線8(SC巻線)とを有する。
【0015】
モータ1のロータ11は回転軸12を有し、ステータ6の内側に配置されている。回転軸12は非磁性体の金属シャフトであって、筒状ハウジング3のリア側の底部3aの中央に形成された軸受収容部3bに収容された軸受13と、フロントエンドプレート4に支持された軸受14とにより回転可能に支持されている。尚、軸受収容部3bは、筒状ハウジング3の内側に開口する凹状をなしている。
【0016】
ロータ11は、図2(a)(b)及び図3に示すように、第1コア部材21及び第2コア部材22からなるロータコアRと、界磁磁石としての環状磁石23(図3参照)と、第1及び第2背面補助磁石24,25と、第1及び第2極間磁石26,27とを備える。尚、各磁石23,24,25,26,27は永久磁石よりなり、図2(a)(b)及び図3中の実線で示す矢印は各磁石23,24,25,26,27の磁化方向(S極からN極向き)を示している。
【0017】
図2(a)に示すように、ロータコアRの第1コア部材21は、略円盤状の第1コアベース21aの外周部に、等間隔に複数(本実施形態では7つ)の第1爪状磁極21bが形成されている。第1爪状磁極21bは、径方向から見て矩形状に形成されている。第1爪状磁極21bは、第1コアベース21aに対して径方向外側に突出された突出部21cと、突出部21cから軸方向に延出形成された爪部21dとを有する。第1爪状磁極21bの周方向端面21e,21fは径方向に延びる(軸方向から見て径方向に対して傾斜していない)平坦面とされ、突出部21cは軸直交方向断面が扇形状とされている。尚、突出部21cの周方向断面は、矩形状に形成されている。突出部21cの径方向外側の端部部分には、爪部21dが周方向の幅を一定として軸方向に形成されている。各第1爪状磁極21bの周方向の幅(角度)、即ち前記周方向端面21e,21f間の幅(角度)は、周方向に隣り合う第1爪状磁極21b同士の隙間の角度より小さく設定されている。
【0018】
第2コア部材22は、図2(b)に示すように、第1コア部材21と同形状であって、略円盤状の第2コアベース22aの外周部に、等間隔に複数(本実施形態では7つ)の第2爪状磁極22bが形成されている。第2爪状磁極22bの突出部22cは、軸直交方向断面が扇形状とされ、径方向外側の端部部分には爪部22dが軸方向に形成されている。そして、第2コア部材22は、各第2爪状磁極22bの爪部22dがそれぞれ対応する各第1爪状磁極21bの爪部21d間に配置されるようにして、第1コアベース21aと第2コアベース22aとの軸方向の間に環状磁石23(図3参照)が配置(挟持)されるようにして第1コア部材21に対して組み付けられる。
【0019】
図3に示すように、環状磁石23は、その外径が第1及び第2コアベース21a,22aの外径と同じに設定され、第1爪状磁極21bを第1の磁極(本実施形態ではN極)として機能させ、第2爪状磁極22bを第2の磁極(本実施形態ではS極)として機能させるように、軸方向に磁化されている。即ち、本実施形態のロータ11は、環状磁石23を有する所謂ランデル型構造のロータである。尚、環状磁石23としては、例えばネオジム磁石を用いることができる。また、環状磁石23の軸方向厚みは、第1及び第2コアベース21a,22aの各軸方向厚みよりも小さく設定されている。
【0020】
各第1爪状磁極21bの背面21g(径方向内側の面)と第2コアベース22aの外周面22hとの間には、第1背面補助磁石24が配置されている。第1背面補助磁石24は、その軸直交方向断面が扇形状とされ、第1爪状磁極21bの背面21gに当接する側が第1爪状磁極21bと同極のN極に、第2コアベース22aの外周面22hに当接する側が同第2コアベース22aと同極のS極となるように径方向に磁化されている。
【0021】
また、各第2爪状磁極22bの背面22gには、第1爪状磁極21bと同様に、第2背面補助磁石25が配置されている。前記第1背面補助磁石24及び第2背面補助磁石25としては、例えばフェライト磁石を用いることができる。第2背面補助磁石25は、その軸直交方向断面が扇形状とされ、背面22gに当接する側がS極に、第1コアベース21aの外周面21hに当接する側がN極となるように径方向に磁化されている。
【0022】
第1背面補助磁石24と第2背面補助磁石25とは、環状磁石23が配置されるロータ11の軸方向位置で互いに軸方向に重なるように、言い換えると、ロータコアRの軸方向端面(第1及び第2端面Ra,Rb)から環状磁石23が配置される軸方向位置に達するまで配置されるように軸方向の長さが設定されている。
【0023】
図2(a)(b)に示すように、第1爪状磁極21bと第2爪状磁極22bとの周方向の間には、第1及び第2極間磁石26,27が配置されている。詳述すると、第1極間磁石26は、第1爪状磁極21bの一方の周方向端面21eと前記第1背面補助磁石24の周方向端面とで形成される平坦面と、第2爪状磁極22bの他方の周方向端面22fと前記第2背面補助磁石25の周方向端面とで形成される平坦面との間に嵌合され固定されている。
【0024】
また、第2極間磁石27は、第1極間磁石26と同形状であって、第1爪状磁極21bの他方の周方向端面21fと第1背面補助磁石24の周方向端面とで形成される平坦面と、第2爪状磁極22bの一方の周方向端面22eと第2背面補助磁石25の周方向端面とで形成される平坦面との間に嵌合固定されている。第1及び第2極間磁石26,27は、第1及び第2爪状磁極21b,22bのそれぞれと同極性が対向するように(第1爪状磁極21b側がN極で、第2爪状磁極22b側がS極となるように)周方向に磁化されている。
【0025】
ここで、本実施形態のモータ1における寸法構成について図4に従って説明する。
ロータコアRの軸方向長さHrは、電機子コア7の軸方向長さHsよりも大きく設定されている。尚、ロータコアRの軸方向長さHrは、第1コアベース21aにおける環状磁石23とは反対側の軸方向端面(ロータコアRの第1端面Ra)から、第2コアベース22aにおける環状磁石23とは反対側の軸方向端面(ロータコアRの第2端面Rb)までの軸方向長さである。このように、ロータコアRの軸方向長さHrが電機子コア7の軸方向長さHsよりも大きく設定されていることで、第1及び第2コア部材21,22(主に、第1及び第2コアベース21a,22a)の軸方向の厚みを厚くすることが可能となっている。尚、本実施形態では、ロータコアRの軸方向の中心線と、電機子コア7の軸方向の中心線は一致(図4において中心線Lとして図示)するように構成されている。即ち、ロータコアRは、電機子コア7に対して軸方向両側に同じ寸法(オーバーラップ幅G3)だけ幅広となっている。このオーバーラップ幅G3は、ロータコアRの軸方向両端のそれぞれにおける電機子コア7に対する軸方向の突出量であって、本実施形態ではロータコアRの軸方向長さHrと電機子コア7の軸方向長さHsの差の半分の寸法である。
【0026】
また、ロータコアRにおいて、第1爪状磁極21bの先端部は、軸方向においてロータコアRの第1端面Raまで延出され、第2爪状磁極22bの先端部は、軸方向においてロータコアRの第2端面Rbまで延出されている。つまり、各爪状磁極21b,22bの軸方向長さ(各爪状磁極21b,22bにおける電機子コア7の内周面と平行な外周面の軸方向長さ)は、ロータコアRの軸方向長さHrと等しくなるように設定されている。そして、第1及び第2爪状磁極21b,22bの内側に配置された第1及び第2背面補助磁石24,25は、軸方向外側端部がそれぞれ第1及び第2爪状磁極21b,22bの先端部と軸方向に一致する位置まで延びている。つまり、第1背面補助磁石24の軸方向外側端面とロータコアRの第2端面Rbとが面一であり、また、第2背面補助磁石25の軸方向外側端面とロータコアRの第1端面Raとが面一となっている。このように、第1及び第2背面補助磁石24,25が第1及び第2爪状磁極21b,22bよりも軸方向外側にはみ出さない状態でロータコアRの軸方向端面(第1及び第2端面Ra,Rb)まで延ばして構成されることで、各背面補助磁石24,25の軸方向長さを十分に確保することが可能となっている。もちろん、環状磁石23を軸方向に厚くすることも可能となり、環状磁石23を厚くすることで高出力化させることが可能となる。
【0027】
次に、本実施形態の作用について説明する。
上記のように構成されたモータ1では、回路収容ボックス5内の電源回路を介してセグメントコンダクタ巻線8に駆動電流が供給されると、ステータ6でロータ11を回転させるための磁界が発生され、ロータ11が回転駆動される。
【0028】
本実施形態のロータ11では、ロータコアRの軸方向長さHrが電機子コア7の軸方向長さHsよりも大きく設定されていることで、第1及び第2コア部材21,22(主に、第1及び第2コアベース21a,22a)の軸方向の厚みを厚くすることが可能となっている。そして、第1及び第2コア部材21,22の軸方向の厚みを厚くすることで、磁気通路に余裕が生まれて磁気飽和の発生を抑制することができ、その結果、環状磁石23の軸方向長さを大きくせずともモータ1の高出力化に寄与できるようになっている。
【0029】
また、ロータ11の第1及び第2背面補助磁石24,25は、第1及び第2爪状磁極21b,22bよりも軸方向外側にはみ出さない状態でロータコアRの軸方向端面(第1及び第2端面Ra,Rb)まで延在されている。このため、各背面補助磁石24,25の軸方向長さを十分に確保することが可能となっており、その結果、モータ1の高出力化により一層寄与できるようになっている。
【0030】
また、本実施形態のロータ11は、永久磁石をロータコア外周面に配置したタイプのロータではなく、ロータコアRの内部に環状磁石23を有するランデル型のタイプである。永久磁石をロータコア外周面に配置したロータでは、その軸方向長さを電機子コア7の軸方向長さよりも大きくした場合に、永久磁石がステータコアよりも軸方向にはみ出してしまうと、永久磁石の磁束を有効的に利用できない虞がある。本実施形態のように、ランデル型のロータ11においてロータコアRの軸方向長さHrを電機子コア7の軸方向長さHsよりも大きくした構成では、電機子コア7との対向部位が磁石ではなくコア(第1及び第2爪状磁極21b,22b)であるため、第1及び第2爪状磁極21b,22bが電機子コア7よりも軸方向にはみ出した部位から空気中への強制的な磁束放出が生じにくく、その結果、モータトルクに寄与する有効磁束の低下が生じにくくなっている。従って、ランデル型のロータ11においてロータコアRの軸方向長さHrを電機子コア7の軸方向長さHsよりも大きくすることで、モータ出力をより効果的に向上させることが可能となっている。
【0031】
次に、ロータコアRと電機子コア7との径方向のギャップ幅G1(ロータコアRの外周面と電機子コア7の内周面との径方向間隔)と、ロータコアRと筒状ハウジング3との軸方向のギャップ幅G2とがモータ出力に与える影響について説明する。尚、ギャップ幅G2は、ロータコアRの第1端面Raと筒状ハウジング3の底部3aとの軸方向の間隔である。尚、本実施形態では、筒状ハウジング3の底部3aにおいてロータコアR側に最も延出されている軸受収容部3bとロータコアRの第1端面Raとの間隔をギャップ幅G2としている。
【0032】
筒状ハウジング3は金属製であるため、ギャップ幅G2が小さいと筒状ハウジング3の影響で生じるロータコアRの第1端面Raからの漏れ磁束が懸念される。ここで、ギャップ幅G2とギャップ幅G1との比G2/G1と鎖交磁束量(モータトルクに寄与する有効磁束量)との関係を図5に示す。同図では、ギャップ幅G1に対してギャップ幅G2を十分に大きくしたとき(G2/G1が8のとき)の鎖交磁束量を基準(即ち、100%)としている。同図に示すように、G2/G1が8から小さくなるにつれて、鎖交磁束量は減少する。詳しくは、G2/G1がおよそ5.8で鎖交磁束量が99%となり、G2/G1がおよそ4.0で鎖交磁束量が98%となり、G2/G1がおよそ1.9で鎖交磁束量が95%となる。
【0033】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ロータ11は、第1及び第2爪状磁極21b,22bをそれぞれ有する第1及び第2コア部材21,22からなるロータコアRと、第1及び第2コア部材21,22の軸方向の間に配置され、軸方向に磁化されることで、第1爪状磁極21bを第1の磁極として機能させ、第2爪状磁極22bを第2の磁極として機能させる環状磁石23とを備える。そして、ロータコアRの軸方向長さHrは、ステータ6の電機子コア7の軸方向長さHsよりも大きく設定される。これにより、第1及び第2コア部材21,22の軸方向の厚みを厚くすることが可能となる。そして、第1及び第2コア部材21,22の軸方向の厚みを厚くすることで、磁気通路に余裕が生まれて磁気飽和の発生を抑制することができ、その結果、モータ1の高出力化に寄与できる。
【0034】
(2)第1及び第2爪状磁極21b,22bの背面21g,22gには、第1及び第2背面補助磁石24,25がそれぞれ配置される。そして、第1爪状磁極21bは、軸方向において第2コアベース22aにおける環状磁石23とは反対側の端面(第2端面Rb)まで延出され、第2爪状磁極22bは、軸方向において第1コアベース21aにおける環状磁石23とは反対側の端面(第1端面Ra)まで延出される。これにより、第1及び第2背面補助磁石24,25を、第1及び第2爪状磁極21b,22bよりも軸方向にはみ出さない状態でロータコアRの軸方向端面(第1及び第2端面Ra,Rb)まで延ばして構成することが可能となる。このため、第1及び第2背面補助磁石24,25の軸方向長さを十分に確保することが可能となり、その結果、モータ1の高出力化により一層寄与できる。
【0035】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のロータ11から、第1及び第2背面補助磁石24,25を省略した構成、又は第1及び第2極間磁石26,27を省略した構成、又はその両方を省略した構成に変更してもよい。
【0036】
・上記実施形態のロータ11では、ロータコアRと各磁石23,24,25,26,27の組が1つで構成されたが、これに特に限定されるものではなく、その組が軸方向に複数積層された所謂タンデム構造のロータとしてもよい。例えば、図6に示すロータ31では、ロータコアRの各磁石23,24,25,26,27の組が2つで構成されている。つまり、ロータコアRの第1及び第2コア部材21,22はそれぞれ2つ設けられており、その2つの第2コア部材22が軸方向に互いに当接するとともに、第1コア部材21が軸方向の外側に配置されるように積層されている。また、第1及び第2爪状磁極21b,22bは、軸方向に並んだもの同士で同極となるように構成されている。尚、この図6に示す構成においても、ロータコアR全体の軸方向長さHr(図中上側の第1コア部材21の軸方向外側端面から下側の第1コア部材21の軸方向外側端面までの長さ)は、ステータ6の電機子コア7の軸方向長さHsよりも大きく設定されており、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
このようなタンデム構造のロータ31では、第1コア部材21の第1コアベース21a及び第2コア部材22の第2コアベース22aは軸方向に並んでいる。そして、図6に示す構成では、軸方向に並ぶ第1及び第2コアベース21a,22aのうち、軸方向の両端に配置された第1コアベース21aの軸方向厚みT1は、軸方向の内側に配置された第2コアベース22aの軸方向厚みT2よりも厚くなるように設定されている。第1コアベース21aは、軸方向の外側端面が外部と面しているため、その外側端面から磁束の漏れが生じやすいが、図6に示すような構成では、第1コアベース21aの軸方向厚みを厚くすることで、その第1コアベース21aでの磁気飽和が抑えられ、その結果、第1コアベース21aの外側端面からの漏れ磁束の発生を抑えることが可能となる。
【0038】
尚、図6に示す構成では、第1コアベース21aの軸方向厚みT1を第2コアベース22aの軸方向厚みT2よりも厚くなるように設定したが、反対に、第1コアベース21aの軸方向厚みT1を第2コアベース22aの軸方向厚みT2よりも薄くなるように設定してもよい。また、同構成では、ロータコアRと各磁石23,24,25,26,27の組を2つで構成したが、組の数はこれに限定されず、3つ以上で構成してもよい。また、同構成においても、第1及び第2背面補助磁石24,25を省略した構成、又は第1及び第2極間磁石26,27を省略した構成、又はその両方を省略した構成に変更してもよい。
【0039】
・上記実施形態では、第1及び第2爪状磁極21b,22bの形状及び個数は、構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、ステータ6のティースへの巻回方法について特に言及していないが、集中巻や分布巻を用いてもよい。
【0040】
・上記実施形態では特に言及していないが、第1及び第2コア部材21,22及び電機子コア7は、例えば磁性金属板材の積層や、磁性粉体の成形にて構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…モータ、6…ステータ、7…電機子コア(ステータコア)、8…セグメントコンダクタ巻線(巻線)、11…ロータ、21…第1コア部材、21a…第1コアベース、21b…第1爪状磁極、21g,22g…背面、22…第2コア部材、22a…第2コアベース、22b…第2爪状磁極、23…環状磁石(界磁磁石)、24…第1背面補助磁石(補助磁石)、25…第2背面補助磁石(補助磁石)、R…ロータコア、Hr…ロータコアの軸方向長さ、Hs…電機子コアの軸方向長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円盤状の第1コアベースの外周部に、等間隔に複数の第1爪状磁極が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成された第1コア部材と、略円盤状の第2コアベースの外周部に、等間隔に複数の第2爪状磁極が径方向外側に突出されるとともに軸方向に延出形成され、前記各第2爪状磁極がそれぞれ対応する前記第1コア部材の各第1爪状磁極間に配置された第2コア部材とからなるロータコアと、
前記第1コアベースと第2コアベースとの軸方向の間に配置され、前記軸方向に磁化されることで、前記第1爪状磁極を第1の磁極として機能させ、前記第2爪状磁極を第2の磁極として機能させる界磁磁石と
を備えたロータと、
巻線が巻装された環状のステータコアが前記ロータの外周側に配置されたステータと
から構成されたモータであって、
前記ロータコアの軸方向長さは、前記ステータコアの軸方向長さよりも大きく設定されていることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記第1及び第2爪状磁極の背面には、補助磁石がそれぞれ配置され、
前記第1爪状磁極は、軸方向において前記第2コアベースにおける前記界磁磁石とは反対側の端面まで延出され、
前記第2爪状磁極は、軸方向において前記第1コアベースにおける前記界磁磁石とは反対側の端面まで延出されていることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のモータにおいて、
前記ロータは、前記ロータコアと前記界磁磁石の組が軸方向に複数積層された構成を有し、
軸方向に並ぶ複数の前記第1及び第2コアベースのうち、軸方向の両端に配置されたコアベースの軸方向厚みは、軸方向の内側に配置されたコアベースの軸方向厚みよりも厚くなるように設定されていることを特徴とするモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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