モールス受信装置
【課題】 受信状態が変化した場合にも安定な復調を継続することのできるモールス受信装置を提供する。
【解決手段】 無線モールス信号を受信して検波出力を出力する受信検波手段11と、検波出力を復調出力として復調する復調手段12と、復調出力をモールス信号に復号する復号手段13と、復号信号を出力する出力手段14とを備え、復調手段12が、検波出力と閾値との比較結果を復調出力として出力する比較手段121と、検波出力および復調出力に基づいて閾値を変更する閾値変更手段122とを含む。
【解決手段】 無線モールス信号を受信して検波出力を出力する受信検波手段11と、検波出力を復調出力として復調する復調手段12と、復調出力をモールス信号に復号する復号手段13と、復号信号を出力する出力手段14とを備え、復調手段12が、検波出力と閾値との比較結果を復調出力として出力する比較手段121と、検波出力および復調出力に基づいて閾値を変更する閾値変更手段122とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモールス受信装置に係り、特に、受信状態が変化しても安定にモールス符号を受信することの可能なモールス受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モールス符号による通信はマルコーニの時代から使用されている古い技術であるが、簡単なインフラストラクチャで通信が可能であることから、非常時の通信手段としての有用性は失われていない。
【0003】
モールス通信は、短点(トン)と長点(ツー)とを組み合わせた符号を使用した通信であって、送信する文字に対応して短波帯域の搬送波をオン・オフする一種の振幅変調ということができる。
【0004】
従って、モールス受信装置では、受信信号のレベルが所定の閾値より高であるか低であるかによりモールス符号を復調していた。
【0005】
しかし、短波通信では地表に沿って伝播した波と電離層で反射された波との間の干渉に起因するフェージングが発生するので、受信信号レベルには変動が発生する。
【0006】
従って、固定の閾値で復調すると、フェージングにより受信レベルが変動した場合に誤復調が発生するおそれがある。
【0007】
そこで、受信レベルの変動に応じて閾値を変更する無線装置が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
上記提案に係る無線装置にあっては、搬送波がない状態の受信レベル、即ちノイズレベルに所定のノイズマージンを加算して閾値を変更することにより、受信レベルの変動に起因する誤復調を防止している。
【特許文献1】特開平9−46247号公報([0009]、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、搬送波が送信されているときのフェージングに起因する受信レベルの変動は10デシベル程度にも達するので、上記提案に係る無線装置のように搬送波が送信されていないときのノイズレベルだけに基づいて閾値を決定した場合には、搬送波有りの状態を搬送波無しの状態と判定してしまうことを回避できないという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、受信状態が変化した場合にも安定な復調を継続することのできるモールス受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のモールス受信装置は、無線モールス信号を受信して検波出力を出力する受信検波手段と、前記検波出力を復調出力として復調する復調手段と、前記復調出力をモールス信号に復号する復号手段と、前記復号信号を出力する出力手段とを備えるモールス受信装置であって、前記復調手段が、前記検波出力と閾値との比較結果を前記復調出力として出力する比較手段と、前記検波出力および前記復調出力に基づいて前記閾値を変更する閾値変更手段とを含む構成を有している。
【0012】
この構成により、復調信号に応じて閾値が変更されることとなる。
【0013】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前記閾値を{傾き×(目標閾値−閾値)+閾値}により算出する閾値算出手段を含む構成を有していてもよい。
【0014】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記目標閾値の値を変更する第1の目標閾値変更手段を含む構成を有していてもよい。
【0015】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記傾きを変更する第1の傾き変更手段を含む構成を有していてもよい。
【0016】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前記検波出力をスペクトラム分析するスペクトラム分析手段と、前記スペクトラム分析結果に基づいて受信状態を判定する受信状態判定手段と、前記受信状態に応じて、前記目標閾値の値を変更する第2の目標閾値変更手段を含む構成を有している。
【0017】
この構成により、受信状態に応じても閾値が変更されることとなる。
【0018】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記傾きを変更する第2の傾き変更手段を含む構成を有していてもよい。
【0019】
本発明のモールス受信装置は、前記受信検波手段が、前記検波出力の所定時間長の移動時間平均値を前記検波出力とする移動時間平均処理手段を含む構成を有している。
【0020】
この構成により、より正確な復調出力を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るモールス受信装置は、検波出力および復調信号に基づいて閾値を変更することにより、受信状態が変化した場合にも安定な復調を継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係るモールス受信装置の実施形態の構成および動作を説明する。
【0023】
本発明に係るモールス受信装置は、図1に示すように、無線信号を受信して検波出力を出力する受信検波手段11と、検波出力を復調出力として復調する復調手段12と、復調出力をモールス信号に復号する復号手段13と、復号信号を出力する出力手段14とを備える。
【0024】
そして、受信検波手段11は、短波を受信するアンテナ111と、受信すべき周波数の信号を選択する同調手段112と、短波を検波する検波手段113とを含む。
【0025】
復調手段12は、検波出力と閾値との比較結果を復調出力として出力する比較手段121と、検波出力および復調出力に基づいて閾値を変更する閾値変更手段122とを含む。
【0026】
復号手段13は復調出力に基づいてモールス信号を復元するように構成されており、出力手段14はモールス信号を音、文字等として出力するように構成されている。
【0027】
図2は、本発明に係るモールス受信装置1のハードウエア構成図であって、アンテナ111、同調手段112および出力手段14以外の部分はマイクロコンピュータ2内にソフトウエア的に構成される。
【0028】
マイクロコンピュータ2は、同調手段112の出力をディジタル信号に変換するA/D変換器201と、検波プログラム、復調プログラムおよび復号プログラムを実行するCPU202と、これらプログラムを記憶するメモリ203と、これらプログラムを保守する保守ツール(表示装置、キーボード、ポインティングデバイス等で構成される)204と、保守ツール204が接続される保守インターフェイス(I/F)205と、出力手段14が接続される出力インターフェイス206とを含む。
【0029】
なお、短波受信機の出力の帯域幅は、3.2kHzであるため、A/D変換器201のサンプリング周波数は、6.4kHzであればナイキストの定理を満足するが、実機のサンプリング周波数は実現の容易な16kHzであり、十分にナイキストの定理を満足している。
【0030】
なお、モールス信号の供給源は、受信検波手段11に限らず、録音されたモールス信号を再生するアナログ録音装置、ディジタル録音装置であってもよい。
【0031】
次に、図3の機能ブロック図を参照しつつ、本発明に係るモールス受信機の第1の実施形態の復調手段12の構成を説明する。
【0032】
即ち、第1の実施形態の復調手段12は、検波出力Sと閾値Tとを比較して復調出力Lを出力する比較手段121と、前回処理における比較手段121の比較結果に応じて閾値を変更する閾値変更手段122とを含む。
【0033】
そして、閾値変更手段122は、比較手段121から出力される復調出力Lに応じて目標閾値を変更する第1の目標閾値変更手段21と、現在の閾値と目標閾値に応じて新たな閾値を算出する閾値算出手段22とを含む。
【0034】
さらに、第1の目標閾値変更手段21は、検波出力Sにアタック時目標閾値を乗算するアタック時目標閾値係数器211と、検波出力Sにリリース時目標閾値を乗算するリリース時目標閾値係数器212と、比較手段121から出力される復調出力Lに応じてアタック時目標閾値係数器211の出力、またはリリース時目標閾値係数器212の出力の一方を閾値算出手段22に選択的に出力する目標閾値選択器213とを含む。
【0035】
第1の実施形態の復調手段12は、マイクロコンピュータ2中にソフトウエア的に実現されるが、図4のフローチャートを参照して復調手段12の動作を説明する。
【0036】
CPU202は、まず初期化処理として閾値T、目標閾値TTの初期値等を設定(ステップS41)し、次にA/D変換器201を介して検波手段113の検波出力Sを読み込む(ステップS42)。
【0037】
なお、検波手段113は、同調手段112の出力をA/D変換器201を介して読み込み、搬送波を除去した検波出力を出力する。
【0038】
次に、CPU202は、検波出力Sが閾値Tより大きいか否かを判定(ステップS43)する。
【0039】
CPU202は、検波出力Sが閾値Tより大きいと判定したときは、復調出力Lを高レベル“1”(アタック状態)に設定(ステップS44)し、検波出力Sが閾値T以下であると判定したときは、復調出力Lを低レベル“0”(リリース状態)に設定(ステップS46)する。
【0040】
なお、ステップS43、ステップS44およびステップS46が、比較手段121の動作に相当する。
【0041】
CPU202は、検波出力Sが閾値Tより大きいと判定したときは、目標閾値TTを検波出力Sとアタック時目標閾値係数KA(例えば0.6)の乗算値に設定(ステップS35)する。なお、アタック時目標閾値係数KAは“1”未満の値であり、閾値Tが搬送波有り時の受信レベルより大きくなることを防止している。
【0042】
CPU202は、検波出力Sが閾値T以下であると判定したときは、目標閾値TTを検波出力Sとリリース時目標閾値係数KR(例えば3)の乗算値に設定(ステップS37)する。なお、リリース時目標閾値係数KRは“1”以上の値であり、閾値Tが搬送波無し時の受信レベルより小さくなることを防止している。
【0043】
なお、ステップS43、ステップS45、およびステップS47の処理が、第1の目標閾値変更手段21の動作に相当する。
【0044】
CPU202は、復調出力Lを復号手段13に出力(ステップS48)した後に、次式に基づいて閾値Tを変更(ステップS49)して、ステップS42に戻る。
【0045】
T ← C×(TT−T)+T
ただし、Cは閾値Tを変更する際の傾きであり、予め設定された固定値である。
【0046】
上式により閾値Tを変更することにより、閾値Tの連続性を維持することができることとなる。なお、ステップS49の処理が、閾値算出手段22の動作に相当する。
【0047】
そして、復号手段13は復調出力Lをモールス信号に復号して、モールス信号を出力I/F206を介して出力手段14に出力する。
【0048】
図5および図6は、第1の実施形態による復調結果を示すグラフであって、横軸は時間を、縦軸は上からモールス符号、搬送波のオンオフ、検波出力S、閾値が固定値であるときの復調出力、および、第1の実施形態により閾値を変更したときの復調出力である。
【0049】
図5によれば、閾値が固定値であると、検波出力Sの出力レベルが低下した場合には復調出力に誤りが発生するが、第1の実施の形態に基づいて閾値を変更すれば、閾値は検波出力Sのレベル変動に応じて変更されるので、正確な復調が可能となることが判る。
【0050】
図6は、語間あるいは文章間のように搬送波無しの状態が長時間継続した場合を示している。
【0051】
即ち、通常の同調手段112にあっては、搬送波無しの状態が継続するとAGC(自動利得調整回路)が動作し、ノイズレベルが次第に上昇することとなる。従って、閾値が固定値であれば、ノイズレベルが固定値である閾値以上となって、復調出力Lが“1”に反転してしまうことは回避できない。
【0052】
これに対し、第1の実施形態では、AGCが動作してノイズレベルが上昇しても、目標閾値がノイズレベルの所定倍(例えば3倍)に設定されるので閾値がノイズに埋もれてしまうことはなく、ノイズによる復調出力の反転は抑制される。
【0053】
上記の第1の実施形態においては、閾値Tの変更時の傾きCを固定値としているが、目標閾値TTと同じく復調出力に応じて傾きを変更することとしてもよい。
【0054】
図7に示すブロック図を参照して、本発明に係るモールス受信機の第2の実施形態における復調手段12の構成を説明する。
【0055】
即ち、第2の実施形態では、第1の実施形態に対して、比較手段121が出力する復調出力Lに応じて閾値Tの変更時の傾きCを変更する第1の傾き変更手段23が追加される。
【0056】
第1の傾き変更手段23は、アタック時傾きを設定するアタック時傾き設定器231と、リリース時傾きを設定するリリース時傾き設定器232と、比較手段121から出力される復調出力Lに応じてアタック時傾き設定器231の出力、またはリリース時傾き設定器232の出力の一方を閾値算出手段22に選択的に出力する傾き選択器233とを含む。
【0057】
第2の実施形態の復調手段12はマイクロコンピュータ2中にソフトウエア的に実現されるが、図8のフローチャートを参照して復調手段12の動作を説明する。
【0058】
CPU202は、検波出力Sが閾値Tより大きいと判定したときは、目標閾値TTを検波出力Sとアタック時係数KAの乗算値に設定(ステップS45)した後に、傾きCをアタック時傾きCAに設定(ステップS81)する。なお、アタック時傾きCAは、検波出力Sのレベルの急激な変動に閾値Tを追従させるためにリリース時傾きよりも大きい値とする。
【0059】
一方、CPU202は、検波出力Sが閾値T以下であると判定したときは、目標閾値TTを検波出力Sとリリース時係数KRの乗算値に設定(ステップS47)し、傾きCをリリース時傾きCRに設定(ステップS82)する。なお、リリース時傾きCRは、受信状態が変化しても検波出力であるノイズレベルはそれほど大きく変化せず、むしろ直前の閾値を維持することが好ましいので、アタック時傾きCAよりも小さい値とする。
【0060】
なお、ステップS81およびステップS82の処理は、第1の傾き変更手段23の動作に相当する。
【0061】
上記以外の処理は、第1の実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0062】
図9および図10は、第2の実施形態による復調結果を示すグラフであって、横軸は時間を、縦軸は上からモールス符号、搬送波のオンオフ、検波出力S、第1の実施形態により閾値を変更したときの復調出力、および、第2の実施形態により閾値を変更したときの復調出力である。
【0063】
図9に示すように、第1の実施形態においては、検波出力Sのレベルが急激に低下した場合には、閾値の変更が検波出力Sのレベルの変化に追従できず、誤復調が発生することを回避できない。
【0064】
これに対し、第2の実施形態に基づいて、閾値変更時の傾きを復調出力が“1”であるか“0”であるかに応じて変更することにより、検波出力Sのレベルの急激な低下に閾値Tを追従させることができ、誤復調の発生を抑制できる。
【0065】
ただし、図10に示すようにアタック時傾きCAを大きくしすぎると、検波出力Sのレベルが急激に上昇した場合には搬送波がオンとなったときに閾値が大きくなりすぎ、その後の検波出力Sのレベルが元の状態に復帰したときに、搬送波オンの状態を検出できない場合が生じ得る。従って、アタック時傾きCAは種々の受信状態を想定して調整する必要がある。
【0066】
第1および第2の実施形態においては、検波手段113が出力する検波出力Sを閾値Tと直接比較しているが、検波出力Sにはノイズが重畳している場合が多いので、検波手段113が出力する検波出力Sの移動平均値を閾値Tと比較することによりノイズの影響を除去することも可能である。
【0067】
図11に示すフローチャートを参照しつつ、本発明に係るモールス受信機の第3の実施形態の復調手段12の動作を説明する。
【0068】
CPU202は、まず初期化処理として閾値Tの初期値等を設定(ステップS41)し、次にA/D変換器201を介して検波手段113の検波出力Sを読み込む(ステップS42)。
【0069】
次に、CPU202は、検波出力Sの移動時間平均値を算出(ステップS111)する。
【0070】
ステップS43以後の処理は、第2の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0071】
図12は、第3の実施形態による復調結果を示すグラフであって、検波出力レベルの変化に応じて閾値が追従していることが判る。
【0072】
上記の第1の実施形態から第3の実施形態では、復調出力Lの値が“1”であるか、“0”であるか、即ち、“搬送波有り(アタック時)”と認識したか“搬送波無し(リリース時)”と認識したかに応じて、目標閾値(および傾き)を変更しているが、目標閾値(および傾き)は固定値である。
【0073】
短波通信においては、受信環境等によって通信状態は変動する。そこで、受信状態に応じて目標閾値(および傾き)を変更することにより、モールス信号を一層確実に復調および復号できることとなる。
【0074】
図13は、本発明に係るモールス受信装置の第4の実施の形態のブロック線図であって、
閾値変更手段122は、検波手段113の検波出力Sをスペクトラム分析手段24と、スペクトラム分析結果に基づいて受信状態を判定する受信状態判定手段25と、受信状態および復調出力に応じて目標閾値を変更する第2の目標閾値変更手段26と、受信状態および復調出力に応じて傾きを変更する第2の傾き変更手段27と、目標閾値、傾き、および復調出力に基づいて閾値を算出する閾値算出手段22とを含む。
【0075】
図14に示すフローチャートを参照して、第4の実施形態の復調手段12の動作を説明する。
【0076】
即ち、第4の実施形態においては、第3の実施形態のフローチャートのステップS111とステップS43の間に目標閾値および傾き算出処理(ステップS140)が追加される。
【0077】
図15は、目標閾値および傾き算出処理の詳細フローチャートであって、CPU202は、検波手段113が出力する検波出力Sを読み込む(ステップS141)。
【0078】
次に、CPU202は、所定時間経過したか否かを判定(ステップS142)し、所定時間の間検波出力Sの読み込みを続ける。
【0079】
CPU202は、所定時間経過したと判定したときには、検波出力Sをスペクトル分析する(ステップS143)。
【0080】
図16(a)は、スペクトル分析結果のグラフであって、搬送波周波数にピークが発生し、それ以外のノイズ域では略一定のレベルとなる。
【0081】
なお、ステップS141からステップS143までの処理がスペクトラム分析手段24の動作に相当する。
【0082】
CPU202は、搬送波ピークからノイズレベルを減算してレベル差Hを算出(ステップS144)し、レベル差Hがどの範囲にあるかを判定する(ステップS145)。
【0083】
なお、ステップS144およびステップS145の処理が、受信状態判定手段25の動作に相当する。
【0084】
CPU202は、レベル差Hが予め定められた高閾値HHより大きいときは、アタック時目標閾値KAを良状態アタック時目標閾値KAGに、リリース時目標閾値KRを良状態リリース時目標閾値KRGに、アタック時傾きCAを良状態アタック時傾きCAGに、そして、リリース時傾きCRを良状態リリース時傾きCAGに設定(ステップS146)する。
【0085】
CPU202は、レベル差Hが予め定められた高閾値HH以下、かつ、低閾値HL以上であるときは、アタック時目標閾値KAを中状態アタック時目標閾値KAMに、リリース時目標閾値KRを中状態リリース時目標閾値KRMに、アタック時傾きCAを中状態アタック時傾きCAMに、そして、リリース時傾きCRを中状態リリース時傾きCAMに設定(ステップS147)する。
【0086】
そして、CPU202は、レベル差Hが予め定められた低閾値HL以下未満であるときは、アタック時目標閾値KAを悪状態アタック時目標閾値KABに、リリース時目標閾値KRを悪状態リリース時目標閾値KRBに、アタック時傾きCAを悪状態アタック時傾きCABに、そして、リリース時傾きCRを悪状態リリース時傾きCABに設定(ステップS148)する。
【0087】
なお、ステップS146からステップS148までの処理が、第2の目標閾値変更手段26および第2の傾き変更手段27の動作に相当する。
【0088】
図16(b)に具体的な設定値の一例を示すが、アタック時目標閾値およびアタック時傾きは受信状態が良くなるほど大きい値として、雑音耐力を増すとともに閾値の追従速度を大きくしている。
【0089】
一方、リリース時目標閾値は受信状態が良くなるほど小さい値とし、リリース時傾きは受信状態が良くなるほど大きい値として、雑音耐力を増すとともに閾値の追従速度を大きくしている。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明に係るモールス受信装置は、受信状態が変化した場合にも安定な復調を継続できるという効果を有し、短波受信装置等として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係るモールス受信装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明に係るモールス受信装置のハードウエア構成図である。
【図3】本発明に係るモールス受信装置の第1の実施形態の復調手段の機能ブロック図である。
【図4】本発明に係るモールス受信装置の第1の実施形態の復調ルーチンのフローチャートである。
【図5】第1の実施形態による復調結果を示す第1のグラフである。
【図6】第1の実施形態による復調結果を示す第2のグラフである。
【図7】本発明に係るモールス受信装置の第2の実施形態の復調手段の機能ブロック図である。
【図8】本発明に係るモールス受信装置の第2の実施形態の復調ルーチンのフローチャートである。
【図9】第2の実施形態による復調結果を示す第1のグラフである。
【図10】第2の実施形態による復調結果を示す第2のグラフである。
【図11】本発明に係るモールス受信装置の第3の実施形態の復調ルーチンのフローチャートである。
【図12】第3の実施形態による復調結果を示すグラフである。
【図13】本発明に係るモールス受信装置の第4の実施形態の復調手段の機能ブロック図である。
【図14】本発明に係るモールス受信装置の第4の実施形態の復調ルーチンのフローチャートである。
【図15】本発明に係るモールス受信装置の第4の実施形態の目標閾値および傾き算出ルーチンのフローチャートである。
【図16】本発明に係るモールス受信装置の第4の実施形態のスペクトラム分析結果を示す図および目標閾値および傾きの設定値を示す表である。
【符号の説明】
【0092】
11 受信検波手段
12 復調手段
13 復号手段
14 出力手段
111 アンテナ
112 同調手段
113 検波手段
121 比較手段
122 閾値変更手段
【技術分野】
【0001】
本発明はモールス受信装置に係り、特に、受信状態が変化しても安定にモールス符号を受信することの可能なモールス受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モールス符号による通信はマルコーニの時代から使用されている古い技術であるが、簡単なインフラストラクチャで通信が可能であることから、非常時の通信手段としての有用性は失われていない。
【0003】
モールス通信は、短点(トン)と長点(ツー)とを組み合わせた符号を使用した通信であって、送信する文字に対応して短波帯域の搬送波をオン・オフする一種の振幅変調ということができる。
【0004】
従って、モールス受信装置では、受信信号のレベルが所定の閾値より高であるか低であるかによりモールス符号を復調していた。
【0005】
しかし、短波通信では地表に沿って伝播した波と電離層で反射された波との間の干渉に起因するフェージングが発生するので、受信信号レベルには変動が発生する。
【0006】
従って、固定の閾値で復調すると、フェージングにより受信レベルが変動した場合に誤復調が発生するおそれがある。
【0007】
そこで、受信レベルの変動に応じて閾値を変更する無線装置が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
上記提案に係る無線装置にあっては、搬送波がない状態の受信レベル、即ちノイズレベルに所定のノイズマージンを加算して閾値を変更することにより、受信レベルの変動に起因する誤復調を防止している。
【特許文献1】特開平9−46247号公報([0009]、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、搬送波が送信されているときのフェージングに起因する受信レベルの変動は10デシベル程度にも達するので、上記提案に係る無線装置のように搬送波が送信されていないときのノイズレベルだけに基づいて閾値を決定した場合には、搬送波有りの状態を搬送波無しの状態と判定してしまうことを回避できないという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、受信状態が変化した場合にも安定な復調を継続することのできるモールス受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のモールス受信装置は、無線モールス信号を受信して検波出力を出力する受信検波手段と、前記検波出力を復調出力として復調する復調手段と、前記復調出力をモールス信号に復号する復号手段と、前記復号信号を出力する出力手段とを備えるモールス受信装置であって、前記復調手段が、前記検波出力と閾値との比較結果を前記復調出力として出力する比較手段と、前記検波出力および前記復調出力に基づいて前記閾値を変更する閾値変更手段とを含む構成を有している。
【0012】
この構成により、復調信号に応じて閾値が変更されることとなる。
【0013】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前記閾値を{傾き×(目標閾値−閾値)+閾値}により算出する閾値算出手段を含む構成を有していてもよい。
【0014】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記目標閾値の値を変更する第1の目標閾値変更手段を含む構成を有していてもよい。
【0015】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記傾きを変更する第1の傾き変更手段を含む構成を有していてもよい。
【0016】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前記検波出力をスペクトラム分析するスペクトラム分析手段と、前記スペクトラム分析結果に基づいて受信状態を判定する受信状態判定手段と、前記受信状態に応じて、前記目標閾値の値を変更する第2の目標閾値変更手段を含む構成を有している。
【0017】
この構成により、受信状態に応じても閾値が変更されることとなる。
【0018】
本発明のモールス受信装置は、前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記傾きを変更する第2の傾き変更手段を含む構成を有していてもよい。
【0019】
本発明のモールス受信装置は、前記受信検波手段が、前記検波出力の所定時間長の移動時間平均値を前記検波出力とする移動時間平均処理手段を含む構成を有している。
【0020】
この構成により、より正確な復調出力を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るモールス受信装置は、検波出力および復調信号に基づいて閾値を変更することにより、受信状態が変化した場合にも安定な復調を継続することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係るモールス受信装置の実施形態の構成および動作を説明する。
【0023】
本発明に係るモールス受信装置は、図1に示すように、無線信号を受信して検波出力を出力する受信検波手段11と、検波出力を復調出力として復調する復調手段12と、復調出力をモールス信号に復号する復号手段13と、復号信号を出力する出力手段14とを備える。
【0024】
そして、受信検波手段11は、短波を受信するアンテナ111と、受信すべき周波数の信号を選択する同調手段112と、短波を検波する検波手段113とを含む。
【0025】
復調手段12は、検波出力と閾値との比較結果を復調出力として出力する比較手段121と、検波出力および復調出力に基づいて閾値を変更する閾値変更手段122とを含む。
【0026】
復号手段13は復調出力に基づいてモールス信号を復元するように構成されており、出力手段14はモールス信号を音、文字等として出力するように構成されている。
【0027】
図2は、本発明に係るモールス受信装置1のハードウエア構成図であって、アンテナ111、同調手段112および出力手段14以外の部分はマイクロコンピュータ2内にソフトウエア的に構成される。
【0028】
マイクロコンピュータ2は、同調手段112の出力をディジタル信号に変換するA/D変換器201と、検波プログラム、復調プログラムおよび復号プログラムを実行するCPU202と、これらプログラムを記憶するメモリ203と、これらプログラムを保守する保守ツール(表示装置、キーボード、ポインティングデバイス等で構成される)204と、保守ツール204が接続される保守インターフェイス(I/F)205と、出力手段14が接続される出力インターフェイス206とを含む。
【0029】
なお、短波受信機の出力の帯域幅は、3.2kHzであるため、A/D変換器201のサンプリング周波数は、6.4kHzであればナイキストの定理を満足するが、実機のサンプリング周波数は実現の容易な16kHzであり、十分にナイキストの定理を満足している。
【0030】
なお、モールス信号の供給源は、受信検波手段11に限らず、録音されたモールス信号を再生するアナログ録音装置、ディジタル録音装置であってもよい。
【0031】
次に、図3の機能ブロック図を参照しつつ、本発明に係るモールス受信機の第1の実施形態の復調手段12の構成を説明する。
【0032】
即ち、第1の実施形態の復調手段12は、検波出力Sと閾値Tとを比較して復調出力Lを出力する比較手段121と、前回処理における比較手段121の比較結果に応じて閾値を変更する閾値変更手段122とを含む。
【0033】
そして、閾値変更手段122は、比較手段121から出力される復調出力Lに応じて目標閾値を変更する第1の目標閾値変更手段21と、現在の閾値と目標閾値に応じて新たな閾値を算出する閾値算出手段22とを含む。
【0034】
さらに、第1の目標閾値変更手段21は、検波出力Sにアタック時目標閾値を乗算するアタック時目標閾値係数器211と、検波出力Sにリリース時目標閾値を乗算するリリース時目標閾値係数器212と、比較手段121から出力される復調出力Lに応じてアタック時目標閾値係数器211の出力、またはリリース時目標閾値係数器212の出力の一方を閾値算出手段22に選択的に出力する目標閾値選択器213とを含む。
【0035】
第1の実施形態の復調手段12は、マイクロコンピュータ2中にソフトウエア的に実現されるが、図4のフローチャートを参照して復調手段12の動作を説明する。
【0036】
CPU202は、まず初期化処理として閾値T、目標閾値TTの初期値等を設定(ステップS41)し、次にA/D変換器201を介して検波手段113の検波出力Sを読み込む(ステップS42)。
【0037】
なお、検波手段113は、同調手段112の出力をA/D変換器201を介して読み込み、搬送波を除去した検波出力を出力する。
【0038】
次に、CPU202は、検波出力Sが閾値Tより大きいか否かを判定(ステップS43)する。
【0039】
CPU202は、検波出力Sが閾値Tより大きいと判定したときは、復調出力Lを高レベル“1”(アタック状態)に設定(ステップS44)し、検波出力Sが閾値T以下であると判定したときは、復調出力Lを低レベル“0”(リリース状態)に設定(ステップS46)する。
【0040】
なお、ステップS43、ステップS44およびステップS46が、比較手段121の動作に相当する。
【0041】
CPU202は、検波出力Sが閾値Tより大きいと判定したときは、目標閾値TTを検波出力Sとアタック時目標閾値係数KA(例えば0.6)の乗算値に設定(ステップS35)する。なお、アタック時目標閾値係数KAは“1”未満の値であり、閾値Tが搬送波有り時の受信レベルより大きくなることを防止している。
【0042】
CPU202は、検波出力Sが閾値T以下であると判定したときは、目標閾値TTを検波出力Sとリリース時目標閾値係数KR(例えば3)の乗算値に設定(ステップS37)する。なお、リリース時目標閾値係数KRは“1”以上の値であり、閾値Tが搬送波無し時の受信レベルより小さくなることを防止している。
【0043】
なお、ステップS43、ステップS45、およびステップS47の処理が、第1の目標閾値変更手段21の動作に相当する。
【0044】
CPU202は、復調出力Lを復号手段13に出力(ステップS48)した後に、次式に基づいて閾値Tを変更(ステップS49)して、ステップS42に戻る。
【0045】
T ← C×(TT−T)+T
ただし、Cは閾値Tを変更する際の傾きであり、予め設定された固定値である。
【0046】
上式により閾値Tを変更することにより、閾値Tの連続性を維持することができることとなる。なお、ステップS49の処理が、閾値算出手段22の動作に相当する。
【0047】
そして、復号手段13は復調出力Lをモールス信号に復号して、モールス信号を出力I/F206を介して出力手段14に出力する。
【0048】
図5および図6は、第1の実施形態による復調結果を示すグラフであって、横軸は時間を、縦軸は上からモールス符号、搬送波のオンオフ、検波出力S、閾値が固定値であるときの復調出力、および、第1の実施形態により閾値を変更したときの復調出力である。
【0049】
図5によれば、閾値が固定値であると、検波出力Sの出力レベルが低下した場合には復調出力に誤りが発生するが、第1の実施の形態に基づいて閾値を変更すれば、閾値は検波出力Sのレベル変動に応じて変更されるので、正確な復調が可能となることが判る。
【0050】
図6は、語間あるいは文章間のように搬送波無しの状態が長時間継続した場合を示している。
【0051】
即ち、通常の同調手段112にあっては、搬送波無しの状態が継続するとAGC(自動利得調整回路)が動作し、ノイズレベルが次第に上昇することとなる。従って、閾値が固定値であれば、ノイズレベルが固定値である閾値以上となって、復調出力Lが“1”に反転してしまうことは回避できない。
【0052】
これに対し、第1の実施形態では、AGCが動作してノイズレベルが上昇しても、目標閾値がノイズレベルの所定倍(例えば3倍)に設定されるので閾値がノイズに埋もれてしまうことはなく、ノイズによる復調出力の反転は抑制される。
【0053】
上記の第1の実施形態においては、閾値Tの変更時の傾きCを固定値としているが、目標閾値TTと同じく復調出力に応じて傾きを変更することとしてもよい。
【0054】
図7に示すブロック図を参照して、本発明に係るモールス受信機の第2の実施形態における復調手段12の構成を説明する。
【0055】
即ち、第2の実施形態では、第1の実施形態に対して、比較手段121が出力する復調出力Lに応じて閾値Tの変更時の傾きCを変更する第1の傾き変更手段23が追加される。
【0056】
第1の傾き変更手段23は、アタック時傾きを設定するアタック時傾き設定器231と、リリース時傾きを設定するリリース時傾き設定器232と、比較手段121から出力される復調出力Lに応じてアタック時傾き設定器231の出力、またはリリース時傾き設定器232の出力の一方を閾値算出手段22に選択的に出力する傾き選択器233とを含む。
【0057】
第2の実施形態の復調手段12はマイクロコンピュータ2中にソフトウエア的に実現されるが、図8のフローチャートを参照して復調手段12の動作を説明する。
【0058】
CPU202は、検波出力Sが閾値Tより大きいと判定したときは、目標閾値TTを検波出力Sとアタック時係数KAの乗算値に設定(ステップS45)した後に、傾きCをアタック時傾きCAに設定(ステップS81)する。なお、アタック時傾きCAは、検波出力Sのレベルの急激な変動に閾値Tを追従させるためにリリース時傾きよりも大きい値とする。
【0059】
一方、CPU202は、検波出力Sが閾値T以下であると判定したときは、目標閾値TTを検波出力Sとリリース時係数KRの乗算値に設定(ステップS47)し、傾きCをリリース時傾きCRに設定(ステップS82)する。なお、リリース時傾きCRは、受信状態が変化しても検波出力であるノイズレベルはそれほど大きく変化せず、むしろ直前の閾値を維持することが好ましいので、アタック時傾きCAよりも小さい値とする。
【0060】
なお、ステップS81およびステップS82の処理は、第1の傾き変更手段23の動作に相当する。
【0061】
上記以外の処理は、第1の実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0062】
図9および図10は、第2の実施形態による復調結果を示すグラフであって、横軸は時間を、縦軸は上からモールス符号、搬送波のオンオフ、検波出力S、第1の実施形態により閾値を変更したときの復調出力、および、第2の実施形態により閾値を変更したときの復調出力である。
【0063】
図9に示すように、第1の実施形態においては、検波出力Sのレベルが急激に低下した場合には、閾値の変更が検波出力Sのレベルの変化に追従できず、誤復調が発生することを回避できない。
【0064】
これに対し、第2の実施形態に基づいて、閾値変更時の傾きを復調出力が“1”であるか“0”であるかに応じて変更することにより、検波出力Sのレベルの急激な低下に閾値Tを追従させることができ、誤復調の発生を抑制できる。
【0065】
ただし、図10に示すようにアタック時傾きCAを大きくしすぎると、検波出力Sのレベルが急激に上昇した場合には搬送波がオンとなったときに閾値が大きくなりすぎ、その後の検波出力Sのレベルが元の状態に復帰したときに、搬送波オンの状態を検出できない場合が生じ得る。従って、アタック時傾きCAは種々の受信状態を想定して調整する必要がある。
【0066】
第1および第2の実施形態においては、検波手段113が出力する検波出力Sを閾値Tと直接比較しているが、検波出力Sにはノイズが重畳している場合が多いので、検波手段113が出力する検波出力Sの移動平均値を閾値Tと比較することによりノイズの影響を除去することも可能である。
【0067】
図11に示すフローチャートを参照しつつ、本発明に係るモールス受信機の第3の実施形態の復調手段12の動作を説明する。
【0068】
CPU202は、まず初期化処理として閾値Tの初期値等を設定(ステップS41)し、次にA/D変換器201を介して検波手段113の検波出力Sを読み込む(ステップS42)。
【0069】
次に、CPU202は、検波出力Sの移動時間平均値を算出(ステップS111)する。
【0070】
ステップS43以後の処理は、第2の実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0071】
図12は、第3の実施形態による復調結果を示すグラフであって、検波出力レベルの変化に応じて閾値が追従していることが判る。
【0072】
上記の第1の実施形態から第3の実施形態では、復調出力Lの値が“1”であるか、“0”であるか、即ち、“搬送波有り(アタック時)”と認識したか“搬送波無し(リリース時)”と認識したかに応じて、目標閾値(および傾き)を変更しているが、目標閾値(および傾き)は固定値である。
【0073】
短波通信においては、受信環境等によって通信状態は変動する。そこで、受信状態に応じて目標閾値(および傾き)を変更することにより、モールス信号を一層確実に復調および復号できることとなる。
【0074】
図13は、本発明に係るモールス受信装置の第4の実施の形態のブロック線図であって、
閾値変更手段122は、検波手段113の検波出力Sをスペクトラム分析手段24と、スペクトラム分析結果に基づいて受信状態を判定する受信状態判定手段25と、受信状態および復調出力に応じて目標閾値を変更する第2の目標閾値変更手段26と、受信状態および復調出力に応じて傾きを変更する第2の傾き変更手段27と、目標閾値、傾き、および復調出力に基づいて閾値を算出する閾値算出手段22とを含む。
【0075】
図14に示すフローチャートを参照して、第4の実施形態の復調手段12の動作を説明する。
【0076】
即ち、第4の実施形態においては、第3の実施形態のフローチャートのステップS111とステップS43の間に目標閾値および傾き算出処理(ステップS140)が追加される。
【0077】
図15は、目標閾値および傾き算出処理の詳細フローチャートであって、CPU202は、検波手段113が出力する検波出力Sを読み込む(ステップS141)。
【0078】
次に、CPU202は、所定時間経過したか否かを判定(ステップS142)し、所定時間の間検波出力Sの読み込みを続ける。
【0079】
CPU202は、所定時間経過したと判定したときには、検波出力Sをスペクトル分析する(ステップS143)。
【0080】
図16(a)は、スペクトル分析結果のグラフであって、搬送波周波数にピークが発生し、それ以外のノイズ域では略一定のレベルとなる。
【0081】
なお、ステップS141からステップS143までの処理がスペクトラム分析手段24の動作に相当する。
【0082】
CPU202は、搬送波ピークからノイズレベルを減算してレベル差Hを算出(ステップS144)し、レベル差Hがどの範囲にあるかを判定する(ステップS145)。
【0083】
なお、ステップS144およびステップS145の処理が、受信状態判定手段25の動作に相当する。
【0084】
CPU202は、レベル差Hが予め定められた高閾値HHより大きいときは、アタック時目標閾値KAを良状態アタック時目標閾値KAGに、リリース時目標閾値KRを良状態リリース時目標閾値KRGに、アタック時傾きCAを良状態アタック時傾きCAGに、そして、リリース時傾きCRを良状態リリース時傾きCAGに設定(ステップS146)する。
【0085】
CPU202は、レベル差Hが予め定められた高閾値HH以下、かつ、低閾値HL以上であるときは、アタック時目標閾値KAを中状態アタック時目標閾値KAMに、リリース時目標閾値KRを中状態リリース時目標閾値KRMに、アタック時傾きCAを中状態アタック時傾きCAMに、そして、リリース時傾きCRを中状態リリース時傾きCAMに設定(ステップS147)する。
【0086】
そして、CPU202は、レベル差Hが予め定められた低閾値HL以下未満であるときは、アタック時目標閾値KAを悪状態アタック時目標閾値KABに、リリース時目標閾値KRを悪状態リリース時目標閾値KRBに、アタック時傾きCAを悪状態アタック時傾きCABに、そして、リリース時傾きCRを悪状態リリース時傾きCABに設定(ステップS148)する。
【0087】
なお、ステップS146からステップS148までの処理が、第2の目標閾値変更手段26および第2の傾き変更手段27の動作に相当する。
【0088】
図16(b)に具体的な設定値の一例を示すが、アタック時目標閾値およびアタック時傾きは受信状態が良くなるほど大きい値として、雑音耐力を増すとともに閾値の追従速度を大きくしている。
【0089】
一方、リリース時目標閾値は受信状態が良くなるほど小さい値とし、リリース時傾きは受信状態が良くなるほど大きい値として、雑音耐力を増すとともに閾値の追従速度を大きくしている。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明に係るモールス受信装置は、受信状態が変化した場合にも安定な復調を継続できるという効果を有し、短波受信装置等として有効である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係るモールス受信装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明に係るモールス受信装置のハードウエア構成図である。
【図3】本発明に係るモールス受信装置の第1の実施形態の復調手段の機能ブロック図である。
【図4】本発明に係るモールス受信装置の第1の実施形態の復調ルーチンのフローチャートである。
【図5】第1の実施形態による復調結果を示す第1のグラフである。
【図6】第1の実施形態による復調結果を示す第2のグラフである。
【図7】本発明に係るモールス受信装置の第2の実施形態の復調手段の機能ブロック図である。
【図8】本発明に係るモールス受信装置の第2の実施形態の復調ルーチンのフローチャートである。
【図9】第2の実施形態による復調結果を示す第1のグラフである。
【図10】第2の実施形態による復調結果を示す第2のグラフである。
【図11】本発明に係るモールス受信装置の第3の実施形態の復調ルーチンのフローチャートである。
【図12】第3の実施形態による復調結果を示すグラフである。
【図13】本発明に係るモールス受信装置の第4の実施形態の復調手段の機能ブロック図である。
【図14】本発明に係るモールス受信装置の第4の実施形態の復調ルーチンのフローチャートである。
【図15】本発明に係るモールス受信装置の第4の実施形態の目標閾値および傾き算出ルーチンのフローチャートである。
【図16】本発明に係るモールス受信装置の第4の実施形態のスペクトラム分析結果を示す図および目標閾値および傾きの設定値を示す表である。
【符号の説明】
【0092】
11 受信検波手段
12 復調手段
13 復号手段
14 出力手段
111 アンテナ
112 同調手段
113 検波手段
121 比較手段
122 閾値変更手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線モールス信号を受信して検波出力を出力する受信検波手段と、前記検波出力を復調出力として復調する復調手段と、前記復調出力をモールス信号に復号する復号手段と、前記復号信号を出力する出力手段とを備えるモールス受信装置であって、
前記復調手段が、前記検波出力と閾値との比較結果を前記復調出力として出力する比較手段と、前記検波出力および前記復調出力に基づいて前記閾値を変更する閾値変更手段とを含むモールス受信装置。
【請求項2】
前記閾値変更手段が、前記閾値を{傾き×(目標閾値−閾値)+閾値}により算出する閾値算出手段を含む請求項1に記載のモールス受信装置。
【請求項3】
前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記目標閾値を変更する第1の目標閾値変更手段を含む請求項2に記載のモールス受信装置。
【請求項4】
前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記傾きを変更する第1の傾き変更手段を含む請求項3に記載のモールス受信装置。
【請求項5】
前記閾値変更手段が、前記検波出力をスペクトラム分析するスペクトラム分析手段と、
前記スペクトラム分析結果に基づいて受信状態を判定する受信状態判定手段と、
前記受信状態に応じて、前記目標閾値の値を変更する第2の目標閾値変更手段を含む請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のモールス受信装置。
【請求項6】
前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記傾きを変更する第2の傾き変更手段を含む請求項5に記載のモールス受信装置。
【請求項7】
前記受信検波手段が、前記検波出力の所定時間長の移動時間平均値を前記検波出力とする移動時間平均処理手段を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモールス受信装置。
【請求項1】
無線モールス信号を受信して検波出力を出力する受信検波手段と、前記検波出力を復調出力として復調する復調手段と、前記復調出力をモールス信号に復号する復号手段と、前記復号信号を出力する出力手段とを備えるモールス受信装置であって、
前記復調手段が、前記検波出力と閾値との比較結果を前記復調出力として出力する比較手段と、前記検波出力および前記復調出力に基づいて前記閾値を変更する閾値変更手段とを含むモールス受信装置。
【請求項2】
前記閾値変更手段が、前記閾値を{傾き×(目標閾値−閾値)+閾値}により算出する閾値算出手段を含む請求項1に記載のモールス受信装置。
【請求項3】
前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記目標閾値を変更する第1の目標閾値変更手段を含む請求項2に記載のモールス受信装置。
【請求項4】
前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記傾きを変更する第1の傾き変更手段を含む請求項3に記載のモールス受信装置。
【請求項5】
前記閾値変更手段が、前記検波出力をスペクトラム分析するスペクトラム分析手段と、
前記スペクトラム分析結果に基づいて受信状態を判定する受信状態判定手段と、
前記受信状態に応じて、前記目標閾値の値を変更する第2の目標閾値変更手段を含む請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のモールス受信装置。
【請求項6】
前記閾値変更手段が、前回処理における前記比較手段の比較結果に応じて、前記傾きを変更する第2の傾き変更手段を含む請求項5に記載のモールス受信装置。
【請求項7】
前記受信検波手段が、前記検波出力の所定時間長の移動時間平均値を前記検波出力とする移動時間平均処理手段を含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のモールス受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−101335(P2006−101335A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286752(P2004−286752)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]