説明

ユニットケース、ユニットケース用導体、およびユニットケース製造方法

【課題】充填した樹脂の収縮が生じた際の電機器の変位を吸収して電気機器の破損や接続不良の発生を抑止でき、かつ、その製造を容易とすることができるユニットケースを提供すること。
【解決手段】電気機器EEを収容する収容空間11を備えたケース本体1と電気機器EEに電気的に接続されるブスバー4と、を備え、ブスバー4は、ケース本体1の底壁13に埋め込まれたインサート部42と、底壁13から収容空間11に向けて突出された接続端子部41と、を備えているユニットケースであって、記接続端子部41に、底壁13から突出された突出部41aに片持ち支持され、電気機器EEを弾性的に支持する支持部41bを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板やセンサなどの電気機器を収容し、この電気機器に接続されるユニットケース用導体が埋め込まれたユニットケース、このユニットケースに用いられるユニットケース用導体、およびユニットケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器を収容するコネクタ部付きの樹脂製のユニットケースが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来のコネクタつきユニットケースは、電気機器を収納するユニットケース部と、このユニットケース部に一体に連続して形成された接続部を介して一体に連続して形成されたコネクタ部と、を備えている。そして、ユニットケース内部に導体が埋め込まれ、かつ、ユニットケース部とコネクタ部との底部から導体と一体の接続端子部が立設された構造となっている。
【0004】
さらに、ユニットケース部は、設置時には、Oリングを介して蓋により閉じられて気密状態となるように形成されている。同様に、コネクタ部も、相手方のコネクタと接続された際には、気密となるように形成されている。
【0005】
また、気密性を確保するにあたり、上記のように蓋とOリングなどを用いる他に、ケースの内部に電気機器を取り付けた後に、樹脂などの液密性を有した樹脂を充填することも行われている。
【特許文献1】特開平9−213427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように液密性を有した樹脂を充填する技術の場合、樹脂が環境温度の変化により膨張や収縮することがある。そして、このように樹脂の膨張や収縮が生じた場合、樹脂から電気機器に荷重が入力されることがあり、これが繰り返されることで、電気機器が破損したり、電気機器と接続端子部との接続が不安定になったりするおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、充填した気密性確保用の樹脂の収縮が生じた際の電気機器の変位を吸収して電気機器の破損や接続不良の発生を抑止できるユニットケース、このユニットケースに用いるユニットケース用導体、およびユニットケース製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため請求項1に記載の発明は、電気機器を収容する収容空間を囲む周壁ならびにこの周壁の一端に連続して形成された底壁を備えたケース本体と、前記電気機器に電気的に接続されるユニットケース用導体と、を備え、このユニット用導体は、前記ケース本体内部に埋め込まれたインサート部と、前記ケース本体の底壁から収容空間に向けて突出された接続端子部と、を備えているユニットケースであって、前記接続端子部には、前記底壁から突出された突出部に片持ち支持され、前記電気機器を弾性的に支持する支持部が設けられていることを特徴とするユニットケースとした。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のユニットケースにおいて、前記支持部は、前記突出部の底壁から離間した位置で折曲されて、底壁に離間した位置で底壁に沿って配置されていることを特徴とするユニットケースとした。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のユニットケースにおいて、前記インサート部には、前記支持部に離間して少なくとも支持部の全長に亘って底壁の表面に沿って配置され、かつ、前記支持部よりも幅広の隙間確保用部材が設けられていることを特徴とするユニットケースとした。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のユニットケースにおいて、前記隙間確保用部材が、前記インサート部と一体に形成されていることを特徴とするユニットケースとした。
【0012】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載のユニットケースに用いられるユニットケース用導体であって、前記インサート部に、前記支持部から離間した位置で支持部に対向して前記隙間確保用部材が設けられていることを特徴とするユニットケース用導体とした。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、前記ケース本体の外周を成形する成形凹部を有した雌型と、前記ケース本体の内周を形成する外形を有するとともに、前記突出部を含む接続端子部が挿入される端子挿入空間が形成された雌型と、のいずれか一方で請求項5に記載されたユニットケース用導体を保持させる導体保持工程と、前記雄型と雌型とを型締めする型締め工程と、この型締めした両型の間に形成された成型空間に樹脂を充填する樹脂充填工程と、を実行して請求項1〜4のいずれか1項に記載のユニットケースを製造するユニットケース製造方法であって、前記導体保持工程において、前記ユニットケース用導体を、型締め工程の際に前記隙間確保用部材が端子挿入空間を塞ぐ位置に配置することを特徴とするユニットケース製造方法とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜4のいずれか1項に記載された本発明のユニットケースは、収容空間を形成するケース本体の底壁から、接続端子部が突出されている。そして、この接続端子部には、電気機器を弾性的に支持する支持部が設けられている。
【0015】
そこで、本発明のユニットケースにあっては、電気機器をケース本体の収容空間に収容する際に、接続端子部の支持部により弾性支持した状態で収容させる。
【0016】
その後、ケース本体の収容空間に液密性を有した樹脂を充填し、電気機器の防水および防錆を図る。
【0017】
この液密性を有した樹脂を充填した状態で、樹脂が膨張や収縮を行い電気機器に荷重が作用した際には、その荷重が接続端子部の支持部に入力される。この接続端子部の支持部は、底壁から突出した突出部に片持ちで弾性支持されているため、電気機器から入力される荷重で支持部が弾性変形し、これにより、荷重を分散する。
【0018】
したがって、本発明のユニットケースにあっては、液密性確保用の樹脂の膨張や収縮により電気機器に入力される荷重を分散させて、この荷重を原因とする電気機器の破損や接続不良の発生を抑止できるという効果が得られる。
【0019】
さらに、請求項2に記載のユニットケースでは、支持部をユニットケース用導体に一体に形成し、突出部から折り曲げることで形成しているため、1本のユニットケース用導体から形成することができ、安価に製造することができる。
【0020】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のユニットケースにおいて、上述のように支持部が弾性変形して荷重を分散させるには、支持部を底壁から離間させる必要がある。
【0021】
そこで、本発明の請求項6に記載のユニットケース製造方法では、以下の工程で製造することで、支持部と底壁とを離間させる。
【0022】
この製造方法を順を追って説明すると、まず、雌型と雄型との一方でユニットケース用導体を保持させる導体保持工程を実行する。このユニットケース用導体は、請求項5に記載されたユニットケース用導体であり、この導体保持工程において、ユニットケース用導体を、型締め工程の際に隙間確保用部材が、雌型に形成された端子挿入空間を塞ぐ位置に配置する。
【0023】
次に、雄型と雌型とを型締めする型締め工程を実行する。この型締め時には、ユニットケース用導体の接続端子部は、突出部を含んで雌型の端子挿入空間内に挿入されて配置され、かつ、隙間確保用部材が、端子挿入空間を塞ぐ。
【0024】
次に、型締めした雌型と雄型との間に形成された成型空間に樹脂を充填する樹脂充填工程を実行する。
【0025】
このように成形空間に樹脂が充填された際に、接続端子部が挿入された端子挿入空間は、ユニット用導体の隙間確保用部材で塞がれているため、樹脂が端子挿入空間へ進入するのが抑止される。したがって、樹脂が端子挿入空間内に配置された接続端子部の支持部に達しないようにして、支持部を、底壁から離間させることができる。
【0026】
そして、樹脂がある程度硬化したら、型開きを行い、樹脂製品であるユニットケースを取り出し、本発明のユニットケースの製造を終える。
【0027】
以上のように、本発明請求項6に記載のユニットケース用製造方法では、支持部と底壁との間の隙間を確保するのを、ユニットケース用導体を利用して行っているため、雄型と雌型との型締めおよび型開き方向に直交する方向に移動する他の型を追加設定する必要が無く、安価に製造可能とすることができるという効果が得られる。
【0028】
また、請求項3および請求項4に記載のユニットケース、ならびに請求項5に記載のユニットケース用導体は、ユニットケース用導体のインサート部に、上述のように型締め時に端子挿入空間内に樹脂が進入するのを抑止する隙間確保用部材を設けているため、上述のように安価にユニットケースを製造することを可能とすることができるという効果が得られる。
【0029】
加えて、請求項4に記載のユニットケースにあっては、隙間確保用部材を、ユニットケース用導体のインサート部と一体に形成しているため、両者を別体に形成した場合と比較して、部品点数を削減できるとともに、製造の手間を削減でき、より安価に製造することを可能とするという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この実施の形態のユニットケースは、電気機器(EE)を収容する収容空間(11)を囲む周壁(12)ならびにこの周壁(12)の一端に連続して形成された底壁(13)を備えたケース本体(1)と、前記電気機器(EE)に電気的に接続されるユニットケース用導体(4)と、を備え、このユニット用導体(4)は、前記ケース本体(1)内部に埋め込まれたインサート部(42)と、前記ケース本体(1)の底壁(13)から収容空間(11)に向けて突出された接続端子部(41)と、を備えているユニットケースであって、前記接続端子部(41)には、底壁(13)から突出された突出部(41a)に片持ち支持され、電気機器(EE)を弾性的に支持する支持部(41b)が設けられていることを特徴とする。
【実施例1】
【0031】
以下に、図1〜図7に基づいて、この発明の最良の実施の形態の実施例1のユニットケースAについて説明する。
【0032】
このユニットケースAは、例えば、車両に搭載される加速度センサなどの電気機器EEを収容するケースで、図2に示すように、ケース本体1と、このケース本体1に連続して一体に形成された板状の一対の取付ブラケット片2,2と、を備えている。なお、電気機器EEは、基板3を有し、この基板3に、図示を省略した電気回路やセンサなどが設けられている。
【0033】
取付ブラケット片2,2には、それぞれ、図外の車体への取り付けの際に、図外のボルトを挿通させる挿通穴2a,2aが開口されている。
【0034】
ケース本体1は、矩形の収容空間11を備えている。この収容空間11は、図示のように、四周を囲む4枚の側壁(周壁)12,12,12,12と、これら側壁12,12,12,12の図中下端に連続して形成された底壁13とにより形成され、図中上方が開口部14で開口されている。
【0035】
さらに、図1に示すように、ケース本体1の底壁13の裏面(収容空間11とは反対側の面)には、略四角筒状のコネクタ部15が形成されている。このコネクタ部15には、筒状の周壁15aで囲まれた接続用空間16が形成されている。
【0036】
また、ケース本体1の底壁13の収容空間11側の面である表面13aにおいて、図1の図中左側端部には、円柱状のボス部18が立設されている。このボス部18には、図示は省略するが、電気機器EEを固定するネジ19を締結する雌ネジを有した固定用ネジ穴が形成されている。
【0037】
電気機器EEは、ケース本体1の底壁13から収容空間11に向けて突出された2本の機器用接続端子部41,41に接続される(図2参照)。
【0038】
各機器用接続端子部41は、それぞれ、ケース本体1の底壁13に埋め込まれたユニットケース用導体としてのブスバー4に一体に設けられている。
【0039】
このブスバー4は、銅などの通電性を有した薄い金属板により形成されている。そして、ブスバー4は、底壁13に埋め込まれたインサート部42と、このインサート部42の一端から収容空間11に向けて突出された機器用接続端子部41と、インサート部42の他端から接続用空間16に向けて突出されたコネクタ用接続端子部43と、を備えている。
【0040】
さらに、詳細に説明すると、インサート部42は、図示のように、底壁13の表面13aに沿って直線状に埋め込まれている。
【0041】
機器用接続端子部41は、インサート部42の一端(図中左端)で略直角に折り曲げられて収容空間11に向けて突出された突出部41aと、この突出部41aの図中上端において底壁13から離間した位置で略直角に折り曲げられて、底壁13に離間した位置でインサート部42と略平行に配置された支持部41bと、この支持部41bの先端で、底壁13から離れる方向に略直角に折り曲げられて収容空間11に立ち上げられた接続部41cと、を備えている。
【0042】
また、機器用接続端子部41が上記のように形成されることにより、支持部41bとインサート部42との間には、略コの字状に折曲されたコの字折曲部44が形成される。
【0043】
さらに、インサート部42は、隙間確保用部材として、支持部41bと略平行に底壁13の表面13aに沿って配置され、かつ、支持部41bよりも幅広に形成されている。図3は、ブスバー4を、図1の矢印S方向から見た側面図であって、この図3に示すように、インサート部42は、その幅H2が、機器用接続端子部41およびコネクタ用接続端子部43の幅H1よりも広い幅、具体的には、5倍ほどの幅に形成されている。また、インサート部42は、機器用接続端子部41の支持部41bよりも、寸法L2だけ長く形成されている。
【0044】
次に、この実施例1のユニットケースAの製造工程を説明する。
ユニットケースAの製造には、図4および図5に示す、雌型としての固定型51と、雄型としての抜き型52とを用いるものであり、まず、両型51,52について説明する。
【0045】
固定型51には、成形凹部51aと、一対の支持用穴51b,51bと、が形成されている。
成形凹部51aは、ユニットケースAを形成するもので、ユニットケースAの外周を形成するもので、ユニットケースAの外形に沿う形状、すなわちケース本体1およびコネクタ部15の外形に沿う形状に形成されている。
【0046】
支持用穴51b,51bは、成形時にブスバー4を支持するもので、ブスバー4のコネクタ用接続端子部43を差し込み可能であるとともに、この差込状態で、インサート部42を予め設定された高さに保持可能な寸法に形成されている。なお、このインサート部42を保持する設定された高さについては、後述する。
【0047】
一方、抜き型52には、成形凹部52aと、一対の端子挿入空間52bと、が形成されている。また、抜き型52の図において、下面および側面がユニットケースAの内周を形成する成形面52fである。
【0048】
成形凹部52aは、ボス部18を形成するもので、ボス部18の外形に沿う形状に形成されている。
【0049】
端子挿入空間52bは、両型51,52の型締めの際に、機器用接続端子部41が挿入されるもので、機器用接続端子部41の幅H1よりも僅かに広い幅に形成された略直方体の大挿入部52cと、この大挿入部52cの一端に連続する小挿入部52dと、を備えている。
【0050】
大挿入部52cは、型締めの際に、機器用接続端子部41の突出部41aおよび支持部41bを挿入可能な寸法に形成されている。
【0051】
小挿入部52dは、型締めの際に、機器用接続端子部41の接続部41cを挿入可能な寸法に形成されている。
次に、ユニットケースAの製造工程について説明する。なお、この製造工程は、請求項6に記載のユニットケース製造方法の一実施例である。
【0052】
まず、導体保持工程を実行する。
この導体保持工程は、図4および図5に示すように、固定型51の支持用穴51b,51bのそれぞれに、ブスバー4のコネクタ用接続端子部43,43を差し込み、固定型51で、ブスバー4,4を保持する工程である。
【0053】
この保持状態で、ブスバー4の幅広のインサート部42は、固定型51から予め設定された寸法Lだけ離れて配置されている。この寸法Lは、後述の型締め時に、インサート部42が、抜き型52の図中下面の成形面52fに当接するとともに、端子挿入空間52bの開口52eを塞ぐことができる寸法に設定されている。
【0054】
次に、型締め工程を実行する。
この型締め工程は、抜き型52を図中下方の固定型51の成形凹部51aへ移動させて型締めを行う工程である。
【0055】
そして、この型締め状態では、図6および図7に示すように、ブスバー4の機器用接続端子部41が、抜き型52の端子挿入空間52bに挿入される。また、ブスバー4の幅広のインサート部42は、図7に示すように、幅方向で抜き型52の成形面52fに、H3の幅で当接し、かつ、長手方向で、成形面52fにL2の寸法(図6参照)で当接して端子挿入空間52bの開口52eを塞いだ状態となる。
【0056】
次に、樹脂充填工程を実行する。
この樹脂充填工程は、抜き型52と固定型51との間に形成された空間内に、樹脂Pを充填する。この樹脂Pの充填時に、抜き型52の端子挿入空間52bの開口52eは、ブスバー4の幅広のインサート部42により塞がれているため、樹脂Pが端子挿入空間52bへ進入するのが抑制される。また、この場合、インサート部42と成形面52fとの間に、樹脂Pが進入する可能性はあるが、開口52eの両側は幅H3の寸法で、長手方向はL2の寸法で、インサート部42と抜き型52の成形面52fとが当接されているため、両者間に進入した樹脂Pが、端子挿入空間52bまで達することはない。逆に、これらの幅H3の寸法およびL2の寸法は、樹脂Pが端子挿入空間52bに進入しない寸法を実験などにより求めて設定する。
【0057】
次に、型開き工程を実行する。
型開き工程は、抜き型52を固定型51から離し、両型51,52の間に形成された、図1および図2に示す実施例1のユニットケースAを取り出す工程である。
以上の工程を実行することで実施例1のユニットケースAの製造を終える。
【0058】
この実施例1のユニットケースAの製造後には、収容空間11に、電気機器EEを固定する。このとき、図1に示すように、基板3を機器用接続端子部41の支持部41bの上に配置し、かつ、接続部41cを基板3の図示を省略した電気的な接続部分に半田付け、あるいは接触により接続し、かつ、その状態で基板3をネジ19によりケース本体1の底壁13のボス部18に固定する。
【0059】
その後、収容空間11に、図示を省略した液密用の樹脂(例えば、ウレタンやシリコンやエポキシなど)を充填する。この充填の際には、基板3と底壁13との間に隙間が確保されているため、基板3の図中下面にも液密用の樹脂が充填される。このように、基板3の全周を覆って樹脂を充填することで、基板3の防水および防錆を図ることができる。
【0060】
このようにして電気機器EEを収容した実施例1のユニットケースAは、取付ブラケット片2,2の挿通穴2a,2aに図外のボルトを挿通し、図外の車体の所定位置に固定して使用する。この固定位置としては、例えば、自動車のエンジンルームや、ピラーの内部など、水が浸入する可能性がある場所が挙げられる。
【0061】
この車載した使用状態にあっては、雰囲気温度の変化により液密用の樹脂において、膨張や収縮といった変形が生じ、この樹脂の変形により、電気機器EEの基板3に荷重が作用することがある。
【0062】
ところが、本実施例1のユニットケースAでは、基板3を機器用接続端子部41の支持部41bで片持ち支持しており、この支持部41bが底壁13から寸法Lだけ離れて配置されている。このため、上述のように基板3に荷重が作用した場合、機器用接続端子部41が底壁13に近づく方向に変形したり、元の位置に復元したりする弾性変形を行い、基板3へ入力される荷重を分散することができる。
【0063】
よって、液密用の樹脂の膨張や収縮により基板3に荷重が作用することで、基板3が破損したり、機器用接続端子部41と基板3との接続状態に不具合が生じたりすることを抑止することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施例1のユニットケースAでは、電気機器EEを収容する収容空間11に液密用の樹脂が充填され、電気機器EEの防水および防錆が図られる。しかも、基板3は、ボス部18および機器用接続端子部41の支持部41bにより、底壁13の表面13aよりも高い位置で支持されるため、液密用の樹脂Pが、基板3の全周に充填され、上記防水および防錆効果を高めることができる。
【0065】
さらに、実施例1のユニットケースAでは、電気機器EEの基板3に接続する機器用接続端子部41を、略L字に折曲して片持ちの支持部41bを形成し、この支持部41bにより、基板3を弾性支持する構造とした。このため、上述のように樹脂を充填して防水および防錆を図る構造において、この樹脂が膨張および収縮して基板3に荷重が入力されたときには、この荷重を機器用接続端子部41の弾性変形により分散することができる。よって、この液密用の樹脂の膨張および収縮を原因とした基板3の破損や接続不良の発生を抑制することができる。
【0066】
そして、支持部41bは、1本のブスバー4を折曲することで形成しているため、このような片持ちの支持部41bとして、突出部41aや接続部41cと別体のものを用いるのに比べて安価に製造することができる。
【0067】
しかも、ブスバー4のインサート部42を、支持部41bに対向して配置し、かつ、支持部41bよりも幅広に形成し、これにより、実施例1のユニットケースAの製造時に、インサート部42が、ユニットケースAを形成する樹脂Pが端子挿入空間52bへ進入するのを抑止するようにした。
【0068】
このため、固定型51および抜き型52以外の型を使用することなく、支持部41bと底壁13の表面13aとの間に、寸法Lの隙間を確実に形成することができ、上記の機器用接続端子部41により基板3を弾性支持する効果を安価に達成することができる。
【0069】
すなわち、図8は本発明の他の実施例のユニットケースBを示している。また、ユニットケースBは、ユニットケース用導体としてのブスバー204を備えている。
【0070】
このブスバー204は、突出部241a,支持部241b,接続部241cを備えた機器用接続端子部241と、ケース本体201の底壁213に埋め込まれたインサート部242と、コネクタ用接続端子部243と、を備えている。
【0071】
このユニットケースBにあっても、実施例1と同様に、ブスバー204の支持部241bが、底壁213の表面213aから離間して配置され、実施例1のユニットケースAと同様に、図外の基板3を弾性支持して、基板3の破損や接続不良の発生を防止することができる。
【0072】
しかし、このユニットケースBでは、インサート部242が、支持部241bに対向して配置されていないため、固定型(図示省略)と抜き型252とのみにより成形した場合には、支持部241bと底壁213との間の空間SPに、樹脂が入り込み、基板3を弾性的に支持することができなくなる。
【0073】
そこで、支持部241bと底壁213との間に隙間を確保するためには、この空間SPに抜き差し可能なインサート型を、抜き型252の移動方向(図において上下方向)に対して直交方向(図において前後方向)に移動可能に設ける必要がある。
【0074】
この場合、実施例1で示したものよりも、型費用および製造時の作業工程の点で、不利となる。
【0075】
これに対して、実施例1のユニットケースAでは、上記のようなインサート型が不要であるため、上述した弾性支持による効果を安価に達成できる。
【0076】
しかも、実施例1のユニットケースAでは、上述の製造時における端子挿入空間52bへ進入抑止を、ブスバー4のインサート部42により行うようにしたため、このような進入防止用の隙間確保用部材としてブスバー4と別体の部材を用いるのに比べて、ユニットケースAおよびブスバー4を、安価に製造することができる。
【実施例2】
【0077】
次に、図9に基づき本発明の実施の形態の実施例2のブスバーCについて説明する。なお、この実施例2は、実施例1の変形例であるため、その相違点についてのみ説明し、実施例1と同様の構成および作用効果については説明を省略する。
【0078】
ブスバーCは、図8に示したブスバー204において、実施例1のユニットケースAと同様の樹脂進入抑止効果を得ることができる、隙間確保用部材200を設けた例である。この隙間確保用部材200は、樹脂や金属などの薄板材により形成され、ブスバー204に溶着や接着や図示を省略した締結手段などによりブスバー204に固定されている。また、その固定位置は、実施例1で述べたように、型締め時に、端子挿入空間52bの開口52eを塞ぐことができる高さとなっている。
【0079】
したがって、この実施例2のブスバーCを用いて、実施例1で示した製造工程で製造することにより、実施例1のユニットケースAと同様の効果を奏するユニットケースを提供することができる。
【実施例3】
【0080】
次に、図10に基づいてこの発明の実施の形態の実施例3のユニットケースDについて説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、実施例1と相違する部分を中心として説明する。
【0081】
ケース本体301は、収容空間311を有し、底壁313には、表面313aから一段高くなった段部313bが形成されている。この段部313bには、電気機器EEを固定するネジ319を締結するネジ穴(図示省略)が形成されている。
【0082】
ケース本体301の底壁313には、ユニットケース用導体304が設けられている。このユニットケース用導体304は、底壁313に埋め込まれたインサート部342と、このインサート部342に一体に連続して収容空間311に突出された機器用接続端子部341と、を備えている。
【0083】
機器用接続端子部341は、底壁313から突出された突出部341aと、この突出部341aの底壁313から離間した位置で折曲されて底壁313に沿って配置された支持部341bと、この支持部341bに連続し、電気機器EEに電気的に接続される接続部341cと、を備えている。本実施例2では、接続部341cと支持部341bとが、一直線上に配置されている。
【0084】
また、インサート部342には、支持部341bと離間し、底壁313の表面313aに沿って配置された隙間確保用部材300が設けられている。この隙間確保用部材300は、インサート部342とは別体の樹脂や金属などにより形成されている。
【0085】
この実施例2のユニットケースDにあっては、ユニットケース用導体304とは別体の隙間確保用部材300を用いているため、ユニットケース用導体304の形状の制約が少なく設計自由度が高い。
【0086】
また、この実施例2のユニットケースDにあっても、実施例1と同様に、収容空間11に液密用の樹脂が充填した場合に、この樹脂が膨張および収縮して基板3に荷重が入力されたときには、この荷重を機器用接続端子部41の弾性変形により分散することができる効果を得ること、および、この効果を安価に達成することができる。
【実施例4】
【0087】
次に、図11に基づいてこの発明の実施の形態の実施例4のユニットケース用導体Eについて説明する。
【0088】
ユニットケース用導体Eは、機器用接続端子部441とインサート部442とを備えている。
【0089】
機器用接続端子部441は、実施例1と同様の突出部441a、支持部441b、接続部441cを備えている。
【0090】
インサート部442は、図外のユニットケースの底壁に埋め込まれるもので、支持部441bと略平行かつ幅広の隙間確保部442aを備えている。また、インサート部442は、折り返し部442bにおいて、折り返され、支持部441bおよび隙間確保部442aと平行に延在されている。
【0091】
すなわち、このユニットケース用導体Eは、実施例1とは、コネクタ部の位置が異なる場合に使用する。
【実施例5】
【0092】
次に、図12に基づいてこの発明の実施の形態の実施例5のユニットケースFについて説明する。なお、前記実施例1と同一ないし均等な部分については、同一符号を付して説明を省略し、実施例1と相違する部分を中心として説明する。
【0093】
実施例1との相違点は、ブスバー504の形状にある。
ブスバー504は、実施例1と同様に、電気機器EEに接続される接続端子部541と、底壁13に埋め込まれたインサート部542と、図外のコネクタに接続されるコネクタ用接続端子部543と、を備えている。
【0094】
そして、接続端子部541は、底壁13から突出した突出部541aと、この突出部541aに一直線上に連続した接続部541cと、突出部541cから略直角に突出して延在されて突出部541cに片持ち状態となった支持部541bと、を備えている。
【0095】
さらに、インサート部542には、支持部541bと対向して、底壁13の表面13aに沿って配置された隙間確保用部材としての隙間確保部542aが一体に形成されている。なお、この隙間確保部542aは、実施例1と同様に、支持部541bよりも幅が広く、かつ、長さが長く形成され、型締め時には、実施例1のインサート部42と同様に、図外の端子挿入空間52bを塞いで、樹脂Pの進入を抑止できるように形成されている。
【0096】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0097】
例えば、実施例1〜4では、自動車に搭載されるユニットケースを例に挙げたが、他の車両、船舶、飛行機や、産業機器などにも使用することができる。
【0098】
また、実施例1では、コネクタ部を底壁13の裏面に有したものを示した。このような形状とすることで、コネクタ部を成形する部分の型開き方向が、ケース本体1の型開き方向と一致し、成形上有利であるが、このコネクタ部を設ける位置は、これに限定されず、側壁などに設けることもできる。
【0099】
また、ユニットケース用導体(ブスバー4,204)の形状は、実施例1〜4で示したものに限定されるものではなく、電気機器EEの形状やコネクタ部の位置に応じ、適宜最適の形状にするのが好ましい。
【0100】
また、実施例1では、収容空間11に収容する電気機器として基板3を有した電気機器EEを示したが、このような基板3を有した以外の電気機器を収容することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の最良の実施の形態の実施例1のユニットケースAを示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1のユニットケースAを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1のユニットケースに用いたユニットケース用導体としてのブスバー4を示す側面図であり、図1の矢印S方向から見た状態を示している。
【図4】本発明の実施の形態の実施例1のユニットケースAの製造方法を説明する断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の実施例1のユニットケースAの製造方法を説明する断面図であり、図4のS5−S5線で切った状態を示している。
【図6】本発明の実施の形態の実施例1のユニットケースAの製造方法を説明する断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の実施例1のユニットケースAの製造方法を説明する断面図であり、図6のS7−S7線で切った状態を示している。
【図8】本発明の実施の形態の他の例としてのユニットケースBを示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の実施例2のブスバーC(ユニットケース用導体)を示す正面図である。
【図10】本発明の実施の形態の実施例3のユニットケースDを示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態の実施例4のユニットケース用導体Eを示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図である。
【図12】本発明の実施の形態の実施例5のユニットケースFを示す図でる。
【符号の説明】
【0102】
1 ケース本体
4 ブスバー(ユニットケース用導体)
11 収容空間
12 側壁(周壁)
13 底壁
13a 表面
18 ボス部
41 機器用接続端子部
41a 突出部
41b 支持部
41c 接続部
42 インサート部(隙間確保要部材)
44 コの字折曲部
51 固定型(雌型)
51a 成形凹部
52 抜き型(雄型)
52b 端子挿入空間
52e 開口
200 隙間確保用部材
201 ケース本体
204 ブスバー(ユニットケース用導体)
213 底壁
213a表面
241 機器用接続端子部
241a突出部
241b支持部
241c接続部
242 インサート部
251 固定型(雌型)
252 抜き型(雄型)
300 隙間確保用部材
301 ケース本体
304 ユニットケース用導体
311 収容空間
313 底壁
313a表面
313b段部
341 機器用接続端子部
341a突出部
341b支持部
341c接続部
342 インサート部
441 機器用接続端子部
441a突出部
441b支持部
441c接続部
442 インサート部
442a隙間確保部(隙間確保用部材)
541 機器用接続端子部
541a突出部
541b支持部
541c接続部
542 インサート部
542a隙間確保部(隙間確保用部材)
A ユニットケース
B ユニットケース
C ブスバー(ユニットケース用導体)
D ユニットケース
E ユニットケース用導体
EE 電気機器
F ユニットケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収容する収容空間を囲む周壁ならびにこの周壁の一端に連続して形成された底壁を備えたケース本体と、
前記電気機器に電気的に接続されるユニットケース用導体と、
を備え、
このユニット用導体は、前記ケース本体内部に埋め込まれたインサート部と、前記ケース本体の底壁から収容空間に向けて突出された接続端子部と、を備えているユニットケースであって、
前記接続端子部には、前記底壁から突出された突出部に片持ち支持され、前記電気機器を弾性的に支持する支持部が設けられていることを特徴とするユニットケース。
【請求項2】
前記支持部は、前記ユニットケース用導体に一体に形成され、前記突出部の底壁から離間した位置で折曲されて、底壁に離間した位置で底壁に沿って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のユニットケース。
【請求項3】
前記インサート部には、前記支持部に離間して少なくとも支持部の全長に亘って底壁の表面に沿って配置され、かつ、前記支持部よりも幅広の隙間確保用部材が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のユニットケース。
【請求項4】
前記隙間確保用部材が、前記インサート部と一体に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のユニットケース。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載のユニットケースに用いられるユニットケース用導体であって、
前記インサート部に、前記支持部から離間した位置で支持部に対向して前記隙間確保用部材が設けられていることを特徴とするユニットケース用導体。
【請求項6】
前記ケース本体の外周を成形する成形凹部を有した雌型と、前記ケース本体の内周を形成する外形を有するとともに、前記突出部を含む接続端子部が挿入される端子挿入空間が形成された雌型と、のいずれか一方で請求項5に記載されたユニットケース用導体を保持させる導体保持工程と、
前記雄型と雌型とを型締めする型締め工程と、
この型締めした両型の間に形成された成型空間に樹脂を充填する樹脂充填工程と、
を実行して請求項1〜4のいずれか1項に記載のユニットケースを製造するユニットケース製造方法であって、
前記導体保持工程において、前記ユニットケース用導体を、型締め工程の際に前記隙間確保用部材が端子挿入空間を塞ぐ位置に配置することを特徴とするユニットケース製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−213884(P2007−213884A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30563(P2006−30563)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】