説明

ラウロラクタムの製造法

【課題】少量の触媒で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位しラウロラクタムを製造し、多大なエネルギーのロスという上記課題を解決できるラウロラクタムの製造法を提供する事である。
【解決手段】発明者等は、五酸化リン−メタンスルホン酸混合物及び塩化亜鉛を用いることにより、触媒量でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位が容易に進行し、ラウロラクタムを製造できることを見出し、触媒量の低減及び多大なエネルギーのロスという上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位することによりラウロラクタムを製造する方法において、触媒量の五酸化リン−メタンスルホン酸混合物及び塩化亜鉛を用いることを特徴とするラウロラクタムの製造法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は12―ナイロンの原料として有用なラウロラクタムの製造法に関するものである。特にシクロドデカノンオキシムをベックマン転位し、ラウロラクタムを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の製造法に関連する技術としては、非特許文献1に五酸化リン−メタンスルホン酸混合物を用いてオキシム化合物からアミド化合物を製造する方法が知られている。五酸化リン−メタンスルホン酸混合物は、メタンスルホン酸のみの場合に比して高い収率でアミド化合物が得られるとされている。しかしながら、この方法では、五酸化リン−メタンスルホン酸をオキシム化合物に対して大過剰に用いなければならない。スルホン酸はラウロラクタムと塩を形成する為、目的とするフリーのラウロラクタムを得るためには、通常、水の添加によりスルホン酸を水に溶解する操作が必要とされる。水からのスルホン酸の回収は、容易ではなく、五酸化リン−メタンスルホン酸を大過剰使用することは、多量のスルホン酸の損失、或いは多大なエネルギーのロスにつながる。
【非特許文献1】J.Org.Chem.,38(23),4071(1973).
【非特許文献2】J.Org.Chem.,62(11),3552(1997).
【特許文献1】特公昭51−46109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
少量の触媒で、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位しラウロラクタムを製造し、多大なエネルギーのロスという上記課題を解決できるラウロラクタムの製造法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明者等は、五酸化リン−メタンスルホン酸混合物及び塩化亜鉛を用いることにより、触媒量でシクロドデカノンオキシムのベックマン転位が容易に進行し、ラウロラクタムを製造できることを見出し、触媒量の低減及び多大なエネルギーのロスという上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位することによりラウロラクタムを製造する方法において、触媒量の五酸化リン−メタンスルホン酸混合物及び塩化亜鉛を用いることを特徴とするラウロラクタムの製造法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、触媒量の低減及び多大なエネルギーのロスを生じる事無く、シクロドデカノンオキシムをベックマン転位してラウロラクタムを製造することができる、工業的に好適なラウロラクタムの製造法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本反応は、シクロドデカノンオキシムと、触媒量の五酸化リン−メタンスルホン酸混合物及び塩化亜鉛を溶媒中で加熱攪拌することにより行うことができる。
【0007】
シクロドデカノンオキシムは、例えば、特許文献1に記載されているように、シクロドデカノンと硫酸ヒドロキシルアミンを反応させることによって得られる。
五酸化リン−メタンスルホン酸混合物は、五酸化リンとメタンスルホン酸により、例えば非特許文献1、非特許文献2に記載の方法等により調製される。市販でも、例えばEaton‘s試薬等として購入できる。また、反応系に五酸化リンとメタンスルホン酸を別々に加え、その場で調整しても良い。
【0008】
溶媒としては、特に限定されず、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−ノナン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、シクロドデカン、ハイドロクメンなどの脂肪族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロドデカノン等のケトン化合物、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド、スルホン類、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、ブタン酸エチル等のエステル類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等のカルボン酸類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のリン酸アミド類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類を挙げることができる。好ましくは、トルエンやアセトニトリルである。
また、溶媒は、単独で用いることも出来るし、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、通常シクロドデカノンオキシムに対して、0.3〜100重量倍、好ましくは1〜50重量倍である。
【0009】
五酸化リン−メタンスルホン酸混合物の使用量は、シクロドデカノンオキシムに対して10重量%以下であり、好ましくは5重量%以下である。
五酸化リン−メタンスルホン酸混合物における五酸化リンとメタンスルホン酸の割合は特に限定されないが、好ましくは重量比(五酸化リン:メタンスルホン酸)で1:30〜1:1、特に好ましくは重量比1:10である。
塩化亜鉛は、触媒量、即ち、シクロドデカノンオキシムに対して10モル%以下であり、好ましくは5モル%以下で使用される。
【0010】
反応温度は、特に制限はないが、好ましくは25〜120℃である。
反応圧力は、特に制限されず、常圧又は加圧条件下で行うことができる。
反応時間は、前記濃度、温度等の反応条件によって変化するが、通常0.01〜24時間で行うことができる。好ましくは、0.05〜6時間である。
【0011】
反応後の処理としては、例えば、溶媒を留去回収した後、水を添加することにより、酸フリーのラウロラクタムを得ることができる。
反応装置は、特に制限はなく通常の攪拌装置を備えた反応器で実施することができる。
【0012】
本発明で得られたラウロラクタムは、蒸留・結晶化等により分離・精製することができる。
【実施例】
【0013】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0014】
[実施例1]
シクロドデカノンオキシム 1.0g(5mmol)、五酸化リン:メタンスルホン酸(重量比)が1:10の五酸化リン−メタンスルホン酸混合物0.027g(10重量%アセトニトリル溶液として添加)、及びシクロドデカノンオキシムに対し2モル%の塩化亜鉛をトルエン5gに添加し、油温95℃のオイルバス中で1時間加熱攪拌した。ガスクロマトクロマトグラフィーの内部標準法により定量したところ、ラウロラクタムの収率は91%であった。
【0015】
[実施例2]
シクロドデカノンオキシム 1.0g(5mmol)、五酸化リン:メタンスルホン酸(重量比)が1:10の五酸化リン−メタンスルホン酸混合物0.027g(10重量%アセトニトリル溶液として添加)、及びシクロドデカノンオキシムに対し2モル%の塩化亜鉛をトルエン5gに添加し、油温110℃のオイルバス中で1時間加熱攪拌した。ガスクロマトクロマトグラフィーの内部標準法により定量したところ、ラウロラクタムの収率はほぼ100%であった。
【0016】
[比較例1]
シクロドデカノンオキシム 1.0g(5mmol)、五酸化リン:メタンスルホン酸(重量比)が1:10の五酸化リン−メタンスルホン酸溶液0.027g(10重量%アセトニトリル溶液として添加)をトルエン5gに添加し、油温95℃のオイルバス中で1時間加熱攪拌した。ガスクロマトクロマトグラフィーの内部標準法により定量したところ、ラウロラクタムの収率は1%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロドデカノンオキシムをベックマン転位することによりラウロラクタムを製造する方法において、五酸化リン−メタンスルホン酸混合物及び塩化亜鉛を用いることを特徴とするラウロラクタムの製造法。
【請求項2】
五酸化リン−メタンスルホン酸混合物がシクロドデカノンオキシムに対して10重量%以下である請求項1記載のラウロラクタムの製造法。
【請求項3】
五酸化リン−メタンスルホン酸混合物における五酸化リンとメタンスルホン酸の割合が重量比(五酸化リン:メタンスルホン酸)で1:30〜1:1であることを特徴とする請求項1又は2記載のラウロラクタムの製造法。
【請求項4】
塩化亜鉛の量がシクロドデカノンオキシムに対して10モル%以下である請求項1、2又は3記載のラウロラクタムの製造法。

【公開番号】特開2009−173614(P2009−173614A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16746(P2008−16746)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】