説明

ラクトフェリン組成物

【課題】90℃以上の高温加熱処理及び120℃以上のレトルト殺菌処理においても広いpH範囲で高い耐熱性を有するラクトフェリン組成物を提供する。また、LF類を失活させずに様々な飲食品や飼料、医薬に通常用いられる原材料等を混合してなるラクトフェリン組成物を提供する。
【解決手段】ラクトフェリン類とグリセリン脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、レシチンの少なくとも1種の安定剤を含有させたラクトフェリン組成物にすると、ラクトフェリン類の耐熱性が格段に向上する。本発明においては、ラクトフェリン類を失活させることなく、ラクトフェリン組成物および当該組成物からなる飲食品や飼料、医薬を90℃以上で加熱処理することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトフェリン類と安定剤を含有させることで、高い耐熱性を有するラクトフェリン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリン(以下LFという)は、鉄吸収促進作用、抗炎症作用、過酸化脂質生成抑制作用、免疫系の制御作用等様々な生理機能を有していることが報告されている。また、これらの生理機能を有効に利用するためにLFを含む様々な飲食品や飼料、医薬が開発されている。しかし、LFは中性域において加熱に対して不安定であり、62.5℃、30分の加熱によりほぼ失活し、70℃、15分の加熱により完全に失活することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このことから、LFを酸性領域において加熱処理する方法が一般的に行われている。この方法を用いれば天然のLF は、加熱処理しても抗菌活性や鉄結合性等が殆ど変化しないことが報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、イオン強度が低い状態でLF を加熱した場合に、その生理活性を維持することも知られている。しかし、実際には、イオン強度が低い状態でLF が利用されることは少ないため、イオン強度とpHを最適化して加熱安定性を付与する方法(例えば、特許文献2参照)や、LF に鉄を十分結合吸着させることで耐熱性を付与する方法(例えば、特許文献3参照)が開発された。
【0003】
しかし、これらの方法でも、90℃を超える殺菌、特にレトルト殺菌処理に対して、ラクトフェリン類(以下LF類という)の熱安定性は低く、下記に示す欠点を有していた。
(1)加熱耐性が十分でないため、90℃以上の加熱殺菌ではLF類が凝集・沈殿しやすい。
(2)特に、中性域(pH7程度)以上の環境下で加熱殺菌するとLF類は失活しやすい。
従ってLF類含有液を加熱処理する場合(特に90℃以上)には、LF類が失活する可能性があり、レトルト殺菌処理等の超高温加熱処理を採用できないのが実状であり、LF類を失活させずに飲食品や飼料、医薬に配合する場合には制限があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2688098号公報
【特許文献2】特開平4−8269号公報
【特許文献3】特開平6−239900号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ジェー・イー・フォードら(Ford, J. E. et al)、「ザ・ジャーナル・オブ・ペディアトリクス( The Journal of Pediatrics)、90巻、1号、 29−35ページ、 1977年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はLF類の持つ上記のような欠点を解決するべく、さらにLF類の熱安定化について鋭意検討を重ねた結果、LF類と大豆多糖類やキサンタンガム等の安定剤を含有させたラクトフェリン組成物(以下LF組成物という)にすると、LF類の耐熱性が格段に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は酸性から中性、アルカリ性の広いpH範囲で、90℃以上の高温加熱処理及び120℃以上のレトルト殺菌処理においても高い耐熱性を有するLF組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、LF類を失活させずに、飲食品や飼料、医薬に通常用いられる原材料等を混合してなるLF組成物や、様々な飲食品や飼料、医薬へ配合するためのLF組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はLF類と安定剤を含有する高い耐熱性を有するLF組成物に関する。本発明においては、LF類を失活させることなく、LF組成物を90℃以上で加熱することが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のLF組成物は、酸性域から中性、アルカリ性域の幅広い範囲で加熱安定性が高く、飲食品、飼料及び医薬の製造に通常使用される高温加熱処理やレトルト殺菌処理が可能であり、粉末状であっても乾熱殺菌も可能である。従って、本発明のLF組成物からなるLF類を含有する液状、ゲル状、粉末状、顆粒状等様々な形態の飲食品や飼料、医薬を調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のLF組成物には、ウシ、山羊、羊、ヒト等の哺乳類の初乳、移行乳、常乳、末期乳、または、これらの乳の処理物である脱脂乳、乳清等からイオン交換クロマトグラフィー等により分離されたままのラクトフェリン、ラクトフェリンを塩酸、クエン酸等により脱鉄したアポラクトフェリン、ラクトフェリンを鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン等の金属で飽和した金属飽和ラクトフェリン(特許第2884045号公報、特許第3223958号公報)等を用いる。また、これらのLF類 の2つ以上を任意の割合で配合した混合物であってもよく、その他の物質との混合物であることを妨げない。
【0010】
本発明のLF組成物を構成する安定剤に特に制限はないが、次の性質を有する成分を主成分とする安定剤がより望ましい。
(1)大豆多糖類等のように分子量が大きく、被膜性のある安定剤。
(2)キサンタンガム等のようにグルコース主鎖にマンノースとグルクロン酸が結合しているような、直鎖に対して側鎖の割合が大きい安定剤。
(3)ショ糖のヒドロキシル基に脂肪酸が反応してできるショ糖脂肪酸エステル等のように疎水基と親水基を持ち、多分子層吸着性を有する安定剤。
これらの性質を有する安定剤は、加熱時のLF類の凝集・沈澱による失活を防ぎ、LF類の耐熱性を高める。
一方、本発明のLF組成物に好ましくない安定剤としては次の性質を有するものがあげられる。
(1)ジェランガムのように直鎖状の構造をなす安定剤又はグアガムのように直鎖に対して側鎖の割合が大きくない安定剤。
これらの安定剤を使用すると加熱時のLF類の耐熱性はそれほど向上しない。しかし、これらの安定剤を一部含む物はその限りでは無い。
【0011】
したがって、本発明でLF類と混合してLF組成物を構成する安定剤としては、大豆多糖類、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギナン、タマリンドガム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、レシチン、ペクチン、カルボキシメチルセルロースが好ましく、これらの安定剤の少なくとも1種をLF類と混合してLF組成物を構成する。ここでいう安定剤とはLF類の加熱安定性を高めるために使用される。また、これらの安定剤の中には乳化剤としての機能等、その他様々な機能を有している場合もあるが、全く問題なく使用できる。
【0012】
また、本発明のLF組成物中のLF類と安定剤の含有量比に関しては、特に制限はないが、安定剤をLF類に対して0.5〜100(重量/重量)、好ましくは1〜40(重量/重量)含有していることが好ましい。
【0013】
本発明のLF類と安定剤を混合してなるLF組成物を調製する方法に特に制限はないが、例えば、溶液中で調製するには、LF類と安定剤を脱イオン水にそれぞれ懸濁あるいは溶解し、撹拌混合した後、飲食品や飼料、医薬の形態に調製して使用する。撹拌混合の条件としては、LF類と安定剤が十分に混合されればよく、必要に応じて40〜80℃程度に加熱しながら、ウルトラディスパーサー等を使用して撹拌混合することも可能である。また、このLF組成物の溶液は、飲食品、飼料及び医薬に使用しやすいように、必要に応じて、UF膜等で濃縮したり、凍結乾燥等により乾燥して使用することができる。
【0014】
本発明のLF組成物は、酸性域から、中性、アルカリ性域の幅広い範囲で加熱安定性が高く、飲食品、飼料及び医薬の製造に通常使用される高温加熱処理やレトルト殺菌処理が可能であり、粉末状であっても乾熱殺菌も可能である。従って、本発明のLF組成物からなる、LF類を含有する液状、ゲル状、粉末状、顆粒状等様々な形態の飲食品や飼料、医薬を調製することができる。
【0015】
本発明のLF組成物においては、塩酸やリン酸等の無機酸およびクエン酸や酢酸等の有機酸、あるいは苛性ソーダや重曹等のアルカリ剤を使用し、pHを調整する。また、LF組成物を取り巻く環境が当該LF組成物の加熱安定性を維持するpHであれば、特にpHを調整することなく高温加熱処理やレトルト殺菌処理が可能であるが、LF組成物からなる飲食品や飼料、医薬が求められる品質に応じて、加熱殺菌条件とpHを選択することができる。
【0016】
本発明のLF組成物からなる飲食品や飼料、医薬とは、このLF類と安定剤のみを含むLF組成物からなる飲食品、飼料及び、医薬や、LF類と安定剤の他に糖類や脂質、フレーバー等、他の飲食品、飼料及び医薬に通常含まれる原材料等を含有するLF組成物からなる飲食品、飼料及び医薬である。
【0017】
LF類の熱安定性は低く、90℃を超える殺菌、特にレトルト殺菌処理をするとLF類は凝集・沈殿し、また、中性域(pH7程度)以上の環境下で加熱殺菌するとLF類は失活しやすいという従来の欠点を、本発明のLF組成物を使用することにより解消することができるという予測出来ない程の格別の効果があった。
以下に、実施例及び試験例を示して本発明を詳細に説明するが、これらは単に本発明の実施態様を例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0018】
[試験例1]
鉄飽和ラクトフェリンを20mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤として大豆多糖類0.4重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、50℃、8000rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。比較として安定剤を含まない鉄飽和ラクトフェリンのみの溶液を上記と同様の方法で、pHを調整して110℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0019】
この試験の結果を表1に示した。表1から分かるようにLF組成物を含有する溶液は、pH 2〜9において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性及びアルカリ性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH 2〜9では、120℃で10分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。一方、鉄飽和ラクトフェリンのみを含む溶液は、pH 2〜9においてLF類のバンドを全く確認することができなかった。
【0020】
【表1】

【0021】
[試験例2]
LFを16mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてキサンタンガムを0.08%(重量%)を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、50℃、9500rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0022】
この試験の結果を表2に示した。表2から分かるようにLF組成物を含有する溶液は、pH 2〜9において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性及びアルカリ性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH 2〜9では、130℃で10分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。


【0023】
【表2】

【0024】
[試験例3]
塩酸で脱鉄したアポラクトフェリンを10mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてショ糖脂肪酸エステル0.2重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、8000rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0025】
この試験の結果を表3に示した。表3から分かるようにLF組成物を含有する溶液は、pH 2〜9において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性及びアルカリ性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH 2〜9では、120℃で8分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。


【0026】
【表3】

【0027】
[試験例4]
塩酸で脱鉄したアポラクトフェリンを12mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてローカストビーンガム0.15重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、8000rpmで4分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH 1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0028】
この試験の結果、LF組成物を含有する溶液は、pH3〜8において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性及びアルカリ性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH3〜8では、120℃で7分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。
【0029】
[試験例5]
鉄飽和ラクトフェリンを18mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてカラギナン0.15重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、8000rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0030】
この試験の結果、LF組成物を含有する溶液は、pH4〜8において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性及びアルカリ性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH4〜8では、120℃で6分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。
【0031】
[試験例6]
LFを20mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてタマリンドガム0.15重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、8000rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0032】
この試験の結果、LF組成物を含有する溶液は、pH4〜7において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH4〜7では、120℃で5分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。
【0033】
[試験例7]
塩酸で脱鉄したアポラクトフェリンを10mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてグリセリン脂肪酸エステル0.15重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、8000rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いて〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0034】
この試験の結果、LF組成物を含有する溶液は、pH3〜7において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH3〜7では、120℃で6分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。
【0035】
[試験例8]
鉄飽和ラクトフェリンを10mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてカゼインナトリウム 0.15重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、9500rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH 1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0036】
この試験の結果、LF組成物を含有する溶液は、pH5〜9において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性及びアルカリ性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH5〜9では、120℃で5分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。
【0037】
[試験例9]
LFを16mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてレシチン0.25重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、8000rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いて〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0038】
この試験の結果、LF組成物を含有する溶液は、pH3〜8において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性及びアルカリ性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH3〜8では、120℃で6分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。
【0039】
[試験例10]
鉄飽和ラクトフェリンを15mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてペクチン0.6重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、8000rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH 1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0040】
この試験の結果、LF組成物を含有する溶液は、pH3〜5において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH3〜5では、120℃で7分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。
【0041】
[試験例11]
LFを10mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液)。安定剤としてカルボキシメチルセルロース0.15重量%を脱イオン水に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、8000rpmで3分間撹拌混合してLF組成物を調製した。次いで、このLF組成物を乳酸または水酸化ナトリウム溶液を用いてpH 1〜10の10試料に調整した。これをアンプル管に2mlずつ分注し、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃にて4分間加熱した。
加熱処理後の各試料の凝集・沈殿状態を目視により判定し、その後、以下に示したポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により、LF類のバンドパターンの解析を行った。SDS−PAGEによる解析は、これにより加熱処理後のLF類の分解を確認するためである。
SDS−PAGE:各試料15μlをサンプルバッファー15μl(0.5M Tris−HCl(pH6.8) 1.25ml、グリセロール1.0ml、10%SDS 2.0ml、2−メルカプトエタノール0.5ml、0.1%BPB 0.25ml)にて希釈し、100℃で5分間加熱した。その後各試料を15μlずつ14%ポリアクリルアミドゲル(TEFCO SDS−PAGE mini)にて電気泳動した。分子量マーカーとしてはKaleidoscope Prestained Standardsを用いた。
【0042】
この試験の結果、LF組成物を含有する溶液は、pH3〜7において目視による凝集・沈殿を生じず、また、SDS−PAGEによりLF類のバンドを確認することができた。従って、このLF組成物は、酸性側で安定なだけでなく、中性側でも加熱安定性が極めて高いことが分かった。さらに、加熱時間を延長して、LF類が確認できるかを検査したところ、pH3〜7では、120℃で6分間加熱しても凝集・沈殿せず、また、LF類のバンドが確認できた。この試験結果からみて、このLF組成物は、レトルト殺菌処理することが十分に可能であることが明らかとなった。
【0043】
[試験例12]
試験例1で調製した試料を用いて、その抗原性を競合ELISA法により測定した。未加熱のLF組成物の抗体との反応性に対する加熱処理したLF組成物の抗体との反応性を百分率(%)で算出した。
【0044】
その結果を表4に示した。表4から、未加熱のLF組成物の抗体との反応性に対する加熱処理したLF組成物の抗体との反応性は、130℃までであれば50%以上を維持していることが判明した。従って、本発明におけるLF組成物はpH2〜9の範囲であれば、130℃という超高温加熱処理に対して安定である。


【0045】
【表4】

【0046】
[試験例13]
試験例2と同様の方法で調製したLF組成物(LF8mg%、キサンタンガム0.04重量%)を含有する溶液をpH 2〜9に調整し、150mlずつレトルトパウチに充填し、密封した。対照としてLFのみを含む溶液をpH2〜9に調整したものを150mlずつレトルトパウチに充填し、密封した。これらの溶液を レトルト殺菌機(第1種圧力容器、TYPE: RCS−4CRTGN、日阪製作所製)により120℃、4分間加熱した。加熱後のそれぞれの試料を25℃で保存して、経時的に凝集・沈殿の有無を目視により観察し、また、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によりLF類のバンドパターンの解析を行った。
その結果、対照としたLFのみを含む溶液をpH2〜9に調整したものは、1日目で凝集・沈澱が確認できたが、LF組成物を含有する溶液をpH 2〜9に調整したものは、保存後1ヶ月経っても凝集・沈澱は認められなかった。また、SDS−PAGEにてLF類のバンドパターンを解析したところ、LF組成物を含む溶液をpH 2〜9に調整したものは保存開始時から保存後1ヶ月においてもLF類のバンドが確認でき、他の変化は認められなかった。この試験結果により、本発明によるLF組成物はレトルト殺菌処理の場合に大変有効であることが判明した。
【0047】
[試験例14]
試験例2と同様の方法で調製したLF組成物200g(LF8mg%、キサンタンガム0.04重量%)に還元脱脂粉乳溶液(脱脂粉乳3重量%)800gを混合し、LF組成物を含有する溶液(1)を調製した。対照としてLF溶液(LF8mg%溶液)200gに還元脱脂粉乳溶液(脱脂粉乳3重量%)800gを混合した溶液(2)、及び還元脱脂粉乳溶液(脱脂粉乳3重量%)1000gのみの溶液(3)を調製した。各溶液を150mlずつレトルトパウチに充填し、密封した。これらの溶液をレトルト殺菌機 (第1種圧力容器、TYPE: RCS−4CRTGN、日阪製作所製)により120℃、20分加熱した。その結果、溶液(1)、(3)においては凝集・沈殿は認められず、風味も良好であったが、(2)の溶液では凝集・沈殿が認められた。この試験結果により、本発明によるLF組成物はレトルト殺菌処理の場合に大変有効であることが判明した。
【0048】
[比較例1]
安定剤として大豆多糖類、キサンタンガム、ジェランガム及びグアガムを選択し、試験例1と同様の方法でLF組成物を調製した。なお、各安定剤は大豆多糖類0.4重量%、キサンタンガム0.04重量%、ジェランガム0.05重量%及びグアガム0.05重量%にて試験を行った。これらのLF組成物をpH6.5に調整し、120℃で4分間加熱した。加熱された各試料の凝集・沈澱状態を目視により判定し、また、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によりLF類のバンドパターンの解析を行った。
【0049】
試験結果を表5に示した。加熱前のLF組成物はいずれも凝集・沈殿せず、透明であり、LF類のバンドも確認できた。加熱後は大豆多糖類及びキサンタンガム含有LF組成物は透明であり、また、LF類のバンドも確認できたが、ジェランガム及びグアガム含有LF組成物は、いずれも半透明か、あるいは凝集・沈殿し、SDS−PAGEにてLF類のバンドも確認できなかった。


【0050】
【表5】

【実施例1】
【0051】
鉄飽和ラクトフェリンを20mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液、300g)。安定剤として大豆多糖類0.8重量%を脱イオン水に溶解した(B液、300g)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、50℃、9500rpmで3分間撹拌混合して本発明のLF組成物600gを調製した。
【実施例2】
【0052】
LFを16mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液、10kg)。安定剤としてキサンタンガムを0.16重量%で脱イオン水に溶解した(B液、10kg)。A液とB液を混合し、TKホモミクサー(MARK II 160型、特殊機化工業製)にて、3600rpmで30分間撹拌混合し、さらに分画分子量10kDaのUF膜にて濃縮して、本発明のLF組成物10kgを調製した。
【実施例3】
【0053】
塩酸で脱鉄したアポラクトフェリンを10mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液、1000kg)。安定剤としてショ糖脂肪酸エステル0.4重量%を脱イオン水に溶解した(B液、1000kg)。A液とB液を混合し、TKホモミクサー(MARK II 2500型、特殊機化工業製)にて、40℃、3600rpmで40分間撹拌混合し、さらに凍結乾燥して本発明のLF組成物3.9kgを調製した。
【実施例4】
【0054】
鉄飽和ラクトフェリンを20mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液、500g)。安定剤として大豆多糖類0.4重量%を脱イオン水に溶解した(B液、500g)。A液とB液を混合し、ウルトラディスパーサー(ULTRA−TURRAX T−25;IKAジャパン社製)にて、40℃、9500rpmで3分間撹拌混合した。その後、上記の溶液に、ソルビトール80g、酸味料4g、香料4g、ペクチン10g、乳清タンパク質濃縮物10g、乳酸カルシウム2g、水890gを添加して、撹拌混合し、本発明のLF組成物を調製した。200mlのチアパックに充填し、85℃、20分間殺菌後、密栓し、本発明のLF組成物からなるゲル状食品10袋を調製した。調製したゲル状食品は、すべて沈殿等は認められず、風味に異常は感じられなかった。
【実施例5】
【0055】
鉄飽和ラクトフェリンを100mg%濃度で脱イオン水に溶解した(A液、200g)。安定剤として大豆多糖類4重量%を脱イオン水に溶解した(B液、200g)。マルチトール100g、還元水飴20g、酸味料2g、香料2g、前記A液200g、前記B液200g、及び水476gを混合し、本発明のLF組成物を調製した。このLF組成物を50mlのガラス瓶に充填し、90℃、15分間殺菌後、密栓し、本発明LF組成物を含有する飲料20本を調製した。調製した飲料は、すべて沈殿は認められず、風味に異常は感じられなかった。
【実施例6】
【0056】
実施例2で調製したLF組成物0.2kg(ラクトフェリン8mg%、キサンタンガム0.08重量%)に大豆粕12kg、脱脂粉乳14kg、大豆油4kg、コーン油2kg、パーム油28kg、トウモロコシ澱粉15kg、小麦粉9kg、ふすま2kg、ビタミン混合物9kg、セルロース2.8kg、ミネラル混合物2kgを配合し、120℃、4分間殺菌して、イヌ飼育用飼料100kgを調製した。
【実施例7】
【0057】
実施例3で調製したLF組成物3kg(アポラクトフェリン5mg%、ショ糖脂肪酸エステル0.2重量%)に、カゼイン5kg、大豆タンパク質5kg、魚油1kg、シソ油3kg、デキストリン19kg、ミネラル混合物6kg、ビタミン混合物1.95kg、乳化剤2kg、安定剤4kg、香料0.05kgを配合し、200mlのレトルトパウチに充填し、レトルト殺菌機 (第1種圧力容器、TYPE: RCS−4CRTGN、日阪製作所製)で121℃、20分間殺菌して、経腸栄養剤50kgを調製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトフェリン類と、グリセリン脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、レシチンの少なくとも1種の安定化剤からなる加熱安定性のあるラクトフェリン組成物。
【請求項2】
飲食品や飼料、医薬に通常用いられる原材料等を混合してなる請求項1に記載の組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物を配合した飲食品、飼料及び医薬。
【請求項4】
ラクトフェリン類に、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、カゼインナトリウム、レシチンの少なくとも1種の安定化剤含有させ、90℃以上の温度で加熱することを特徴とするラクトフェリン類を含む組成物の加熱処理方法。

【公開番号】特開2010−180219(P2010−180219A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47608(P2010−47608)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【分割の表示】特願2003−153317(P2003−153317)の分割
【原出願日】平成15年5月29日(2003.5.29)
【出願人】(000006699)雪印乳業株式会社 (155)
【Fターム(参考)】