説明

リクライニング機構付き椅子、レッグレスト装置およびこれを備えた椅子

【課題】背もたれの傾斜角度の変更に要する着座者の負担を軽減する椅子を提供する。
【解決手段】リクライニング可能な背もたれ12と、背もたれ12を倒す指示と起こす指示とを受ける操作スイッチ40と、倒す指示を受けた場合および起こす指示を受けた場合に、背もたれ12に起こす方向の力を加えるロック機構付きガススプリング20と、倒す指示を受けた場合は背もたれ12に倒す方向の力を加え、起こす指示を受けた場合は背もたれ12に起こす方向の力を与える復動式のエアシリンダ30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両を始め、航空機、バス、船などの乗り物で旅客用として使用されるリクライニング機構付き椅子、レッグレスト装置およびこれを備えた椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の旅客機用や列車用の椅子は、シートロックと呼ばれるロック機構付きのガススプリングを使用して、フリーストップのリクライニング機構やレッグレスト機構などを実現している。
【0003】
また、リクライニングに連動して座の後端が沈み込む椅子や、簡易ベッドとなるほど大きく背もたれの傾斜する椅子では、アップライト姿勢に戻すときに着座者の体重に抗する大きな反発力が必要となる。そこで、背もたれを起こすときはガススプリングに加えてエアシリンダを作用させて反発力を増強するようにしたリクライニング機構付き椅子がある(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−329102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガススプリングなどで背もたれを起こす方向へ付勢する椅子では、背もたれを倒す場合は、着座者が体重をかけるなどして背もたれを強く押す必要があり、不便だった。上げ降ろし可能なレッグレストについても同様の問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、背もたれの傾斜角度の変更やレッグレストの上げ降ろしに要する着座者の負担を軽減することのできる椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0008】
[1]リクライニング可能な背もたれと、
前記背もたれを倒す第1指示を受ける第1操作スイッチと、
前記背もたれを起こす第2指示を受ける第2操作スイッチと、
前記背もたれの傾斜角度を保持すると共に、前記第1操作スイッチで前記第1指示を受けた場合および前記第2操作スイッチで前記第2指示を受けた場合に前記保持を解除するロック機構と、
前記第1操作スイッチで前記第1指示を受けた場合は前記背もたれに倒す方向の力を加え、前記第2操作スイッチで前記第2指示を受けた場合は前記背もたれに起こす方向の力を加えるようにされたエアシリンダと、
を有する
ことを特徴とするリクライニング機構付き椅子。
【0009】
上記発明では、背もたれのロック機構と復動式のエアシリンダを備えており、背もたれを倒すスイッチ操作(第1指示)を受けたときはロックを解除すると共にエアシリンダにより背もたれに倒す方向の力を加え、背もたれを起こすスイッチ操作(第2指示)を受けたときはロックを解除すると共にエアシリンダにより背もたれに起こす方向の力を加える。このように、復動式のエアシリンダを採用し、このエアシリンダを背もたれを倒す場合と起こす場合の双方で動力源として使用したので、背もたれの傾斜角度の変更に係る着座者の負担が、背もたれを倒す場合と起こす場合の双方において軽減される。また、エアシリンダはピストンを進退させる往復運動を行うので、背もたれの傾斜角度を変更するためのリンク機能に適合しやすく、モータの回転を直線運動に変換して使用する場合に比べて、ギアその他の構造が簡略となりコスト面、重量面で優れている。
【0010】
[2]前記ロック機構による保持が解除されているときは前記背もたれに起こす方向の力を加える付勢部材をさらに有する
ことを特徴とする[1]に記載のリクライニング機構付き椅子。
【0011】
上記発明では、背もたれを起こす第2指示を受けた場合は、背もたれにエアシリンダによる起こす方向の力と付勢部材(たとえば、ガススプリング)による起こす方向の力の双方が加わる。エアシリンダの力と付勢部材の力の双方が背もたれを起こす方向に作用するので、大きくリクライニングした姿勢からでも背もたれを起こすことが容易になる。一方、背もたれを倒す第1指示を受けた場合は、エアシリンダによる倒す方向の力と付勢部材による起こす方向の力の差分が背もたれに作用する。エアシリンダによる倒す方向の力が付勢部材による起こす方向の力より大きければ、背もたれは自動的にリクライニング姿勢に変位する。
【0012】
[3]上げ降ろし可能なレッグレストと、
前記レッグレストを降ろす第1指示を受ける第1操作スイッチと、
前記レッグレストを上げる第2指示を受ける第2操作スイッチと、
上げ降ろし不能に前記レッグレストを保持すると共に、前記第1操作スイッチで前記第1指示を受けた場合および前記第2操作スイッチで前記第2指示を受けた場合に前記保持を解除するロック機構と、
前記第1操作スイッチで前記第1指示を受けた場合は前記レッグレストに降ろす方向の力を加え、前記第2操作スイッチで前記第2指示を受けた場合は前記レッグレストに上げる方向の力を加えるようにされたエアシリンダと、
を有する
ことを特徴とするレッグレスト装置。
【0013】
上記発明では、レッグレストの位置を保持するロック機構と復動式のエアシリンダを備えており、レッグレストを降ろすスイッチ操作(第1指示)を受けたときはロックを解除すると共にエアシリンダによりレッグレストに降ろす方向の力を加え、レッグレストを上げるスイッチ操作(第2指示)を受けたときはロックを解除すると共にエアシリンダによりレッグレストに上げる方向の力を加える。このように、復動式のエアシリンダを採用し、これをレッグレストを降ろす場合と上げる場合の双方で動力源として使用したので、レッグレストの上げ降ろしに係る着座者の負担が、レッグレストを降ろす場合と上げる場合の双方において軽減される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係わるリクライニング機構付き椅子によれば、背もたれの傾斜角度の変更に要する着座者の操作負担を軽減することができる。
【0015】
また本発明に係るレッグレスト装置およびこれを備えた椅子では、レッグレストの上げ降ろしに要する着座者の操作負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の各種実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係わるリクライニング機構付き椅子10の主要部およびリクライニングの操作スイッチ40を示す側面図、図2はリクライニング機構付き椅子10の主要部の正面図、図3はリクライニング機構付き椅子10の主要部を座部11を取り除いて示す平面図、図4および図5はリクライニング機構付き椅子10のリクライニング機構の動作を模式的に示す説明図である。ここでは、リクライニング機構付き椅子10は鉄道車両の車内に設置される二人掛けの座席として構成されており、各図は一人分を省略して示してある。
【0018】
リクライニング機構付き椅子10は、人が着座する座部11と、座部11の後端に接して設けられた背もたれ12と、座部11および背もたれ12を支持するフレーム13とを備えた椅子本体と、車両の床面に設置されて椅子本体のフレーム13を二人掛け分の横幅の中央で床面と水平に旋回可能に支持する脚台部14とを備えている。椅子本体は、車両の進行方向を向く位置とこれに対して180度回転した位置のいずれかでロックされ、該ロックは操作ペダル15(図2参照)を踏み込むことで解除されるようになっている。
【0019】
背もたれ12のフレーム12aは、背もたれ12の下部の軸支部12bにおいて椅子本体のフレーム13に回動可能に支持されており、ほぼ直立なアップライト姿勢と後方へ傾斜したリクライニング姿勢に軸支部12bを回転中心に変位可能にされている。フレーム12aは背もたれ12のクッション部分の下端から突出して延びており、該突出したフレーム12aの先端部と椅子本体のフレーム13の所定箇所(座部11の前後方向のほぼ中央の下方における所定箇所)との間に、ロック機構付きのガススプリング20とエアシリンダ30とが並列に架け渡されている。
【0020】
詳細には、ロック機構および付勢部材としてのガススプリング20のシリンダ部21の後端がフレーム12aの先端部に係合ピン16aで回動可能に軸支され、該シリンダ部21に出入りするピストンロッド22の先端が係合ピン16bでフレーム13に軸支されている。またエアシリンダ30のシリンダ部31の後端が同じく係合ピン16bでフレーム13に軸支され(図3参照)、該シリンダ部31に出入りするピストンロッド32の先端がフレーム12aの先端部に係合ピン16cで回動可能に軸支されている。
【0021】
ガススプリング20は、背もたれ12に起きる方向(リクライニング姿勢からアップライト姿勢に復帰する方向)の力(反力)を加える。すなわち、シリンダ部21からピストンロッド22が進出する力を発生し、これにより背もたれ12のフレーム12aの先端が座部11の後端から離れる方向へ押されることで背もたれ12はアップライト姿勢に向けて付勢される。またガススプリング20はそのロック機構により任意の伸縮状態でピストンロッド22を固定することができ、このロック機構により背もたれ12は任意の傾斜角度に固定されるようになっている。
【0022】
図3に示すように、エアシリンダ30は、シリンダ部31のピストンロッド32側の端部にある第1エア注入口33から空気が注入されると、ピストンロッド32がシリンダ部31の中へ入る(エアシリンダ30の全長が縮む)方向の力を発生する縮退動作を行う。シリンダ部32の他端部にある第2エア注入口34から空気が注入されると、ピストンロッド32がシリンダ部31から進出する方向の力を発生する伸張動作を行う。
【0023】
エアシリンダ30に注入される空気は、鉄道車両がドアの開閉やブレーキ圧を得るために有している図4、図5のコンプレッサCPから各種配管チューブを通じて供給される。第1エア注入口33へ分岐して向かう配管チューブの途中には第1エア注入口33をコンプレッサCPからの配管に接続して連通させるか、第1エア注入口33を大気へ開放するかを切り替える第1メカニカルバルブ35が介挿されている。また第2エア注入口34へ分岐して向かう配管チューブの途中には第2エア注入口34をコンプレッサCPからの配管に接続して連通させるか、第2エア注入口34を大気へ開放するかを切り替える第2メカニカルバルブ36が介挿されている。
【0024】
図1に示すように、リクライニング機構付き椅子10は背もたれ12の傾斜角度を変化させる際に操作される操作スイッチ40を、たとえば図示省略の肘掛部などに備えている。操作スイッチ40は、背もたれ12を倒す第1指示の操作を受ける第1操作スイッチと背もたれを起こす第2指示の操作を受ける第2操作スイッチとしての機能を兼ね備えている。
【0025】
詳細には、操作スイッチ40は枠体41と、該枠体41に軸支されて所定角度範囲で回動する回動部材42を備えている。回動部材42は、一端部が約120度の扇型に形成され、他端部が三股に分かれた板状を成しており、該一端部と他端部の略中央を回転中心43として枠体41に軸支されている。扇型部分の弧の中央には突起した操作つまみ44が設けてある。
【0026】
回動部材42の他端部の三股に分かれたうちの中央部は、丁度、操作つまみ44と回転中心43とを結ぶ直線上に位置しており、該箇所にガススプリング20のロック機構の解除釦と連結された第3ケーブル53の端部が接続されている。三股に分かれたうちの一方側には第1メカニカルバルブ35の操作釦と連結された第1ケーブル51の端部が接続されており、他方側には第2メカニカルバルブ36の操作釦に連結された第2ケーブル52の端部がそれぞれ接続されている。
【0027】
操作スイッチ40の操作つまみ44を中央位置から第1方向Bに押すと背もたれ12を倒す第1指示となり、背もたれ12が倒れてリクライニングする。その反対の第2方向Aに操作つまみ44を押すと背もたれ12を起こす第2指示となり、背もたれ12が起きるようになっている。
【0028】
次に、リクライニング機構付き椅子10の背もたれ12の傾斜角度を変える際の動作について説明する。
【0029】
操作スイッチ40の操作つまみ44が中央位置にあるときは、第1メカニカルバルブ35、第2メカニカルバルブ36がともに閉鎖(あるいは大気に開放)し、コンプレッサCPからの空気はエアシリンダ30に注入されない。また、ガススプリング20はロックされた状態にある。
【0030】
図4に示すように、操作つまみ44を中央位置から第1方向Bに押すと、第1ケーブル51および第3ケーブル53は操作つまみ44側へ引かれ、第2ケーブル52は操作つまみ44側から第2メカニカルバルブ36側へ向かう(押すまたは緩む)ように変位する。第3ケーブル53が引かれることでガススプリング20のロックは解除され、ガススプリング20は背もたれ12に起こす方向の力を加える(但し、着座者が後倒体勢を取った時)。
【0031】
また第1ケーブル51が引かれることで第1メカニカルバルブ35がコンプレッサCP側に開き、エアシリンダ30の第1エア注入口33にコンプレッサCPから空気が注入される。さらに第2ケーブル52が押す(緩む)向きに変位することで第2メカニカルバルブ36は第2エア注入口34を大気に開放する。これにより、エアシリンダ30はピストンロッド32がシリンダ部31に入る(縮む)方向の縮退動作を行い、背もたれ12に対して倒す方向の力を加える。
【0032】
このように操作つまみ44を中央位置から第1方向Bに操作するとガススプリング20は背もたれ12に起こす方向の力を加えるが、これと同時にエアシリンダ30が背もたれ12に対して倒す方向の力を加えるので、力の弱い人でも簡単に背もたれ12をリクライニングさせることができる。特に、ガススプリング20による起こす方向の力よりもエアシリンダ30による倒す方向の力を大きく設定しておくことで、人が体重などで背もたれ12に直接に力を加えなくても背もたれ12が自動的にリクライニングする。
【0033】
適宜の角度にリクライニングさせた後などに、操作つまみ44を中央位置に戻すと、そのときの傾斜角度で背もたれ12はロックされる。
【0034】
図5に示すように、操作つまみ44を中央位置から第2方向Aに押すと、第2ケーブル52および第3ケーブル53は操作つまみ44側へ引かれ、第1ケーブル51は操作つまみ44側から第1メカニカルバルブ35側へ向かう(押すまたは緩む)ように変位する。第3ケーブル53が引かれることでガススプリング20のロックが解除され、ガススプリング20は背もたれ12に起こす方向の力を加える。
【0035】
また第2ケーブル52が引かれることで第2メカニカルバルブ36がコンプレッサCP側に開き、エアシリンダ30の第2エア注入口34にコンプレッサCPから空気が注入される。さらに第1ケーブル51が押す(緩む)向きに変位することで第1メカニカルバルブ35は第1エア注入口33を大気に開放する。これにより、エアシリンダ30はピストンロッド32がシリンダ部31から進出する伸張動作を行い、背もたれ12に対して起こす方向の力を加える。
【0036】
このように操作つまみ44を中央位置から第2方向Aに操作するとガススプリング20とエアシリンダ30は共に背もたれ12に起こす方向の力を加える。これにより、ガススプリング20のみの場合に比べて起こす方向の大きな力を得ることができ、リクライニングに連動して座の後端が沈み込む椅子や背もたれが大きく傾斜する椅子においても、着座者の体重に抗して背もたれ12を容易に起こすことができる。したがって、深くリクライニングした姿勢から着座者自身が起き上がろうとする必要がなくなり、あるいは少なくなり、着座者の負担を軽減することができる。
【0037】
また、エアシリンダ30はピストンを進退させる往復運動を行うので、背もたれ12の傾斜角度を変更するためのリンク機能に適合しやすく、モータの回転を直線運動に変換して使用する場合に比べて、ギアその他の構造が簡略となりコスト面、重量面で優れている。さらに、フル電動式のリクライニング機構の場合にはモータなどに障害が発生するとまったく背もたれ12の傾斜角度を変更できなくなるが、本実施の形態のリクライニング機構付き椅子10は、ガススプリング20とエアシリンダ30とを併用しているので、何らかの障害でコンプレッサCPからの空気が供給されなくなった場合でも、背もたれ12を起こす動作はガススプリング20で補助され、背もたれ12を倒した状態から起こせなくなるといった事態を防ぐことができる。
【0038】
このほか、ガススプリング20は経年変化によって反発力が徐々に低下するが、エアシリンダ30はコンプレッサCPからの空気圧で動作するので経年変化の影響を受けない。したがって、ガススプリング20の反発力が経年変化で弱った場合でもエアシリンダ30の作用により、背もたれ12を倒す動作および起こす動作を補助することができる。
【0039】
また、背もたれ12を起こす際に起こす方向の力をエアシリンダ30で加えるので、背もたれ12を起こすために必要なガススプリング20の力を小さくすることができ、それに伴ってエアシリンダ30による倒す方向の力も小さくて済む。すなわち、ガススプリング20が発生する力F1+エアシリンダ30が発生する起こす方向の力F2>背もたれを起こすに必要な力F3、エアシリンダ30が発生する倒す方向の力の大きさF4>ガススプリング20が発生する力F1の関係になればよい。エアシリンダ30により起こすときと倒すときとで逆向きの力を加えることで、ガススプリング20、エアシリンダ30ともに発生すべき力を小さくすることができ、小型化および必要エア圧の低減を図ることができる。
【0040】
なお、別途、背もたれのロック機構があれば、付勢部材としてのガススプリング20を取り去った構成にされてもよい。たとえば、シリンダとこのシリンダの内外に進退するピストンとを備えたメカニカルロックとエアシリンダ30とで背もたれ12の傾斜角度の調整機構を構成してもよい。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態であるレッグレスト付き椅子について説明する。
【0042】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係わるレッグレスト装置を備えたレッグレスト付き椅子10Bの主要部および操作スイッチ90を示す側面図、図7はレッグレスト付き椅子10Bの主要部を示す正面図、図8はレッグレスト付き椅子10Bの主要部を座部11を取り除いて示す平面図である。レッグレスト付き椅子10Bは、第1の実施の形態のリクライニング機構付き椅子10にさらにレッグレスト装置を付加したものであり、リクライニング機構付き椅子10と同一部分には同一の符号を付してそれらの説明は省略する。
【0043】
座部11の前端の下方には、上げ降ろし可能なレッグレスト61が取り付けられている。詳細には、レッグレスト61は、略長方形板状の足置き部(図中はその枠のみ表示)の幅方向の両縁に、該縁部に沿って外側へ突出する一対のへの字型の取付金具62が取り付けられており、その突出した取付金具62の先端が軸穴62aを介して椅子本体のフレーム13の前端上部に軸支されている。レッグレスト61は軸穴62aを中心にして略水平となった展開姿勢と略垂直な格納姿勢との間で回動する。
【0044】
図6に示すように、レッグレスト61の裏面には、ロック機構であるメカニカルロック70のピストンロッド72の先端が取り付けピン73を介して軸支され、該メカニカルロック70のシリンダ部71の後端は座部11の中央下方においてフレーム13に取り付けピン74を介して支持されている。さらに、レッグレスト61の裏面とフレーム13の前端下部との間に、エアシリンダ80が、そのピストンロッド82の先端をレッグレスト61の裏面の所定箇所に取り付けピン83(図8参照)で軸支し、シリンダ部81の後端をフレーム13の前端下部に取り付けピン84(図6参照)で軸支して、架け渡されている。
【0045】
メカニカルロック70は、動力を持たず、ロック時は現在のピストンロッド72の位置を保持する働きをし、ロック解除時はピストンロッド72は自在に進退可能になる。このメカニカルロック70によりレッグレスト61は任意の傾斜角度に固定されるようになっている。
【0046】
エアシリンダ80は、シリンダ部81のピストンロッド82側の端部の第1エア注入口85から空気が注入されると、ピストンロッド82がシリンダ部81の中へ入って収納される方向の力を発生する縮退動作を行う。シリンダ部81の他端部の第2エア注入口86から空気が注入されると、ピストンロッド82がシリンダ部81から進出する方向の力を発生する伸張動作を行う。
【0047】
エアシリンダ80に注入される空気は、第1の実施の形態と同様にコンプレッサCPから各種配管チューブを通じて供給され、第1エア注入口85へ分岐して向かう配管チューブの途中には、第1エア注入口85とコンプレッサCPとを連通させるか、第1エア注入口85を大気へ開放するかを切り替える第1メカニカルバルブ87が介挿されている(図7、図8参照)。また第2エア注入口86へ分岐して向かう配管チューブの途中には第2エア注入口86とコンプレッサCPとを連通させるか、第2エア注入口86を大気へ開放するかを切り替える第2メカニカルバルブ88が介挿されている。
【0048】
図6に示すように、レッグレスト付き椅子10Bは、レッグレスト61を上げ降ろしする際に操作される操作スイッチ90を、たとえば図示省略の肘掛部などに備えている。操作スイッチ90は、レッグレスト61を降ろす第1指示の操作を受ける第1操作スイッチとレッグレスト61を上げる第2指示の操作を受ける第2操作スイッチとしての機能を兼ね備えている。
【0049】
操作スイッチ90は第1の実施の形態の操作スイッチ40と同一構造であり、枠体91、回動部材92、操作つまみ94を備え、回動部材92の他端部の三股の中央部は、メカニカルロック70のロック機構の解除釦に連結された第3ケーブル98の端部が接続され、三股の一方側には第1メカニカルバルブ87の操作釦に連結された第1ケーブル96の端部が、三股の他方側には第2メカニカルバルブ88の操作釦に連結された第2ケーブル97の端部がそれぞれ接続されている。
【0050】
操作つまみ94を中央位置から第1方向Aに押すとレッグレスト61を降ろす第1指示となり、その反対の第2方向Bに操作つまみ94を押すとレッグレスト61を上げる第2指示となる。
【0051】
次に、レッグレスト付き椅子10Bのレッグレスト61を上げ降ろしする際の動作について説明する。
【0052】
操作スイッチ90の操作つまみ94が中央位置にあるときは、第1メカニカルバルブ87、第2メカニカルバルブ88ともに閉鎖し、コンプレッサCPからの空気はエアシリンダ70に注入されない。またメカニカルロック70はロックされた状態にある。
【0053】
操作つまみ94を中央位置から第1方向Aに押すと、第1ケーブル96および第3ケーブル98は操作つまみ94側へ引かれて、第2ケーブル97は操作つまみ94側から第2メカニカルバルブ88側へ押すように変位する。第3ケーブル98が引かれることでメカニカルロック70のロックが解除される。
【0054】
また第1ケーブル96が引かれることで第1メカニカルバルブ87がコンプレッサCP側に開き、エアシリンダ80の第1エア注入口85にコンプレッサCPから空気が注入される。さらに第2ケーブル97が押す向きに変位することで第2メカニカルバルブ88は第2エア注入口86を大気に開放する状態になる。これにより、エアシリンダ80はピストンロッド82がシリンダ部81に入る方向の縮退動作を行い、レッグレスト61に対して降ろす方向の力を加える。
【0055】
このように操作つまみ94を中央位置から第1方向Aに操作するとメカニカルロック70によるロックが解除され、これと同時にエアシリンダ80がレッグレスト61に対して降ろす方向の力を加えるので、レッグレスト61はエアシリンダ80に引かれて格納位置に向けて変位し、脚力の弱い人でも簡単にレッグレスト61を降ろして収納すことができる。
【0056】
適宜の角度にレッグレスト61を降ろした後に、操作つまみ94を中央位置に戻すと、そのときの位置でレッグレスト61はロックされる。
【0057】
操作つまみ94を中央位置から第2方向Bに押すと、第2ケーブル97および第3ケーブル98は操作つまみ94側へ引かれ、第1ケーブル96は操作つまみ94側から第1メカニカルバルブ87側へ押すように変位する。第3ケーブル98が引かれることでメカニカルロック70のロックが解除される。
【0058】
また第2ケーブル97が引かれることで第2メカニカルバルブ88がコンプレッサCP側に開き、エアシリンダ80の第2エア注入口86にコンプレッサCPから空気が注入される。さらに第1ケーブル96が押す向きに変位することで第1メカニカルバルブ87は第1エア注入口85を大気に開放する状態になる。これにより、エアシリンダ80はピストンロッド82がシリンダ部81から進出する伸張動作を行い、レッグレスト61に対して上げる方向の力を加える。
【0059】
このように操作つまみ94を中央位置から第2方向Bに操作するとメカニカルロック70によるロックが解除され、これと同時にエアシリンダ80はレッグレスト61に上げる方向の力を加える。これにより、人が直接レッグレスト61に対して上げる方向の力を加えなくても、レッグレスト61が自動的に持ち上がって展開姿勢に変位し、着座者の操作負担が軽減される。
【0060】
また、エアシリンダ80はピストンを進退させる往復運動を行うので、レッグレスト61の上げ下ろしするためのリンク機能に適合しやすく、モータの回転を直線運動に変換して使用する場合に比べて、ギアその他の構造が簡略となりコスト面、重量面で優れている。さらに、フル電動式の場合は、モータなどに障害が発生すると全くレッグレスト61を上げ降ろしできなくなるが、本実施の形態のレッグレスト付き椅子10Bは、何らかの障害でコンプレッサCPからの空気が供給されなくなったような場合でも、メカニカルロック70を解除すれば、手動で上げ降ろし可能になる。
【0061】
以上、本発明の各種実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0062】
たとえば、第2の実施の形態では、レッグレスト付き椅子10Bとしたが、レッグレスト装置を椅子と別体に設けて、たとえば、車両の先頭の椅子に対してはその前の壁内にレッグレスト装置を設けるようにされてもよい。
【0063】
また、実施の形態では第1指示と第2指示を出す操作を1つの操作スイッチで行えるようにしたが、第1指示用と第2指示用に個別の操作スイッチを設けてもよい。この場合、第1指示と第2指示とが同時に出されることを防止することを要する。
【0064】
第1の実施の形態では、付勢部材としてガススプリングを用いたが、これに限定されるものではなく、たとえば、油圧シリンダ、バネなどの弾性体を付勢部材としてもよい。また、第1、第2の実施の形態におけるエアシリンダへの空気の流量により、背もたれ12やレッグレスト61を変位する速度は調整される。たとえば、レッグレスト61をゆっくり格納姿勢に向けて引き込むように空気の流量が調整される。空気の流量は流量調整弁により調整される。
【0065】
このほか、実施の形態では、鉄道車両用の二人掛けの椅子として構成したが、航空機用の椅子や、劇場用の椅子などであってもよく、椅子の用途は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係わるリクライニング機構付き椅子の主要部および操作スイッチを示す側面図である。
【図2】図1に示すリクライニング機構付き椅子の主要部を示す正面図である。
【図3】図1に示すリクライニング機構付き椅子の主要部を座部を取り除いて示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係わるリクライニング機構付き椅子の背もたれを倒す際の動作を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係わるリクライニング機構付き椅子の背もたれを起こす際の動作を模式的に示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係わるレッグレスト付き椅子の主要部および操作スイッチを示す側面図である。
【図7】図6に示すレッグレスト付き椅子の主要部を示す正面図である。
【図8】図6に示すレッグレスト付き椅子主要部を座部を取り除いて示す平面図である。
【符号の説明】
【0067】
10…リクライニング機構付き椅子
10B…レッグレスト付き椅子
11…座部
12…背もたれ
12a…背もたれのフレーム
12b…軸支部
13…椅子本体のフレーム
14…脚台部
15…操作ペダル
16a、16b、16c…係合ピン
20…ガススプリング
21…シリンダ部
22…ピストンロッド
30…エアシリンダ
31…シリンダ部
32…ピストンロッド
33…第1エア注入口
34…第2エア注入口
35…第1メカニカルバルブ
36…第2メカニカルバルブ
40…操作スイッチ
41…枠体
42…回動部材
43…回転中心
44…操作つまみ
51…操作ワイヤー
51…第1ケーブル
52…第2ケーブル
53…第3ケーブル
61…レッグレスト
62…軸受部
62…取付金具
62a…軸穴
70…メカニカルロック
71…シリンダ部
72…ピストンロッド
73、74…取り付けピン
80…エアシリンダ
81…シリンダ部
82…ピストンロッド
83、84…取り付けピン
85…第1エア注入口
86…第2エア注入口
87…第1メカニカルバルブ
88…第2メカニカルバルブ
90…操作スイッチ
91…枠体
92…回動部材
94…操作つまみ
96…第1ケーブル
97…第2ケーブル
98…第3ケーブル
CP…コンプレッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リクライニング可能な背もたれと、
前記背もたれを倒す第1指示を受ける第1操作スイッチと、
前記背もたれを起こす第2指示を受ける第2操作スイッチと、
前記背もたれの傾斜角度を保持すると共に、前記第1操作スイッチで前記第1指示を受けた場合および前記第2操作スイッチで前記第2指示を受けた場合に前記保持を解除するロック機構と、
前記第1操作スイッチで前記第1指示を受けた場合は前記背もたれに倒す方向の力を加え、前記第2操作スイッチで前記第2指示を受けた場合は前記背もたれに起こす方向の力を加えるようにされたエアシリンダと、
を有する
ことを特徴とするリクライニング機構付き椅子。
【請求項2】
前記ロック機構による保持が解除されているときは前記背もたれに起こす方向の力を加える付勢部材をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載のリクライニング機構付き椅子。
【請求項3】
上げ降ろし可能なレッグレストと、
前記レッグレストを降ろす第1指示を受ける第1操作スイッチと、
前記レッグレストを上げる第2指示を受ける第2操作スイッチと、
上げ降ろし不能に前記レッグレストを保持すると共に、前記第1操作スイッチで前記第1指示を受けた場合および前記第2操作スイッチで前記第2指示を受けた場合に前記保持を解除するロック機構と、
前記第1操作スイッチで前記第1指示を受けた場合は前記レッグレストに降ろす方向の力を加え、前記第2操作スイッチで前記第2指示を受けた場合は前記レッグレストに上げる方向の力を加えるようにされたエアシリンダと、
を有する
ことを特徴とするレッグレスト装置。
【請求項4】
請求項3に記載のレッグレスト装置を備えた椅子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate