説明

リサイクル材を使用した靴中敷の製造方法

【課題】 環境保全の観念に符合するとともに、生産コストの低廉な靴中敷の製造方法を提供する。
【解決手段】 靴類を回収し微小な顆粒状に粉砕してなり、かつ原料全体に対する重量比が15〜35%の靴類回収材と、木材を回収し5mmφ以下の顆粒状、もしくはチップ状に粉砕してなり、かつ原料全体に対する重量比が5〜65%の木材回収材と、天然ゴム及び/もしくは合成ゴムに添加剤、充填材を添加してなり、かつ原料全体に対する重量比が5〜75%の基本ゴム材料と、原料全体に対する重量比が1〜2%の発泡剤と、を原料として撹拌、混合し、均一に撹拌、混合した該原料を圧延して板状にし、靴中敷製造用の板材とし、該板材を適宜な大きさに裁断して金型に投入して加圧して成型し、さらに該金型を加熱し、かつ継続して加圧し成型された形状を安定させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴中敷の製造方法に関し、特に、廃棄された靴などを回収して原料とし、靴中敷を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然の資源は、再生が容易でない。再生可能な資源の範囲にも限りがある。そこで、自然環境の破壊をこれ以上加速させないことを前提とした各種資源のリサイクルが重視されている。リサイクルによって、資源、資材の消耗と浪費を直接減少させることができる。
【0003】
本発明者は、廃棄された靴によるリサイクル材を数年前に開発し、台湾に特許を出願した。出願番号は96140643号である。該特許願に開示する技術は、廃棄された靴を回収し、靴底などの材料として再利用するものである。係る技術によれば、廃棄された靴をリサイクルの資源とし、循環して使用することが可能となるため、新たに資源の消耗、浪費させることがない。
【0004】
靴底は、消耗が激しい部分であって、通常ゴムを用いる。だが、靴底以外に、靴の中敷は大量の材料を消耗させる部分である。このため。業界では別途研究開発の方向と見ている。
【0005】
目下の靴の中敷は、足の裏が直接接触することから、健康面を考慮することが研究開発を進める上での傾向となっている。通常、中敷の材料は軟性と弾性を具え、かつ足の裏が接触したとき好ましい感覚が得られるように布を表面に用いるか、もしくは皮革を用いる。その他、新しい材料も選択肢に入れられている。
【0006】
しかしながら、これら材料を選択することは、環境保全という観念を出発点にすれば、その精神に明らかに悖るものといえる。そこで、環境保全の観念から、靴の中敷の材料としてリサイクル材を選択し、如何にして、中敷としての使い心地の良さを達成するとともに、環境汚染を効率よく低減させて自然環境に有益なものにするか、という課題が、目下の研究開発における重要な改善の方向として取り上げられている。よって、先行技術である前記の靴を回収して靴底の材料として再利用する技術を靴の中敷に応用し、環境保全を確実に推進することは、積極的に研究開発する価値を十分に具えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】台湾特許出願第96140643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、環境保全の観念に符合するとともに、生産コストの低廉な靴中敷の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者は木材を回収し5mmφ以下の顆粒状、もしくはチップ状に粉砕してなり、かつ原料全体に対する重量比が5〜65%の木材回収材と、天然ゴム及び/もしくは合成ゴムに添加剤、充填材を添加してなり、かつ原料全体に対する重量比が5〜75%の基本ゴム材料と、原料全体に対する重量比が1〜2%の発泡剤と、を原料として撹拌、混合し、均一に撹拌、混合した該原料を圧延して板状にし、靴中敷製造用の板材とし、該板材を適宜な大きさに裁断して金型に投入して加圧して成型し、さらに該金型を加熱し、かつ継続して加圧し成型された形状を安定させる工程を含む靴中敷の製造方法によって課題を解決できる点に着眼し、係る知見に基づいて本発明を完成させた。
【0010】
以下、この発明について具体的に説明する。
請求項1に記載する靴中敷の製造方法は、靴類を回収し微小な顆粒状に粉砕してなり、かつ原料全体に対する重量比が15〜35%の靴類回収材と、
木材を回収し5mmφ以下の顆粒状、もしくはチップ状に粉砕してなり、かつ原料全体に対する重量比が5〜65%の木材回収材と、
天然ゴム及び/もしくは合成ゴムに添加剤、充填材を添加してなり、かつ原料全体に対する重量比が5〜75%の基本ゴム材料と、
原料全体に対する重量比が1〜2%の発泡剤と、を原料として撹拌、混合し、
均一に撹拌、混合した該原料を圧延して板状にし、靴中敷製造用の板材とし、
該板材を適宜な大きさに裁断して金型に投入して加圧して成型し、さらに該金型を加熱し、かつ継続して加圧し成型された形状を安定させる工程を含む。
【0011】
請求項2に記載する靴中敷の製造方法は、請求項1における原料の撹拌、混合の工程において、竹酢とエッセンスオイルとを混合してなり、かつ原料全体に対する重量比が1〜2%の芳香剤を添加する。
【0012】
前記芳香剤を添加することによって、靴中敷に消臭、抗菌などの効果が得られる。
【0013】
請求項3に記載する靴中敷の製造方法は、請求項1における該添加剤が、架橋剤か、促進剤か、活性剤か、劣化防止剤か、加工助剤か、もしくはゴム軟化オイルを含む。
【0014】
請求項5に記載する靴中敷の製造方法は、請求項1における靴中敷製造用の板材の厚さが1〜50mmの間である。
【0015】
前記、靴中敷製造用の板材を所定の厚さにした場合、巻き取って収納しやすくなる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の製造方法によれば、靴中敷の製造は環境保全の観念に符合するとともに、生産コストを低減させることができるとともに、靴中敷に消臭、抗菌などの効果を付与させることができるという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による靴の中敷用リサイクル材の製造方法を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明による靴の中敷用リサイクル材の製造方法は、回収した靴を再利用するとともに、同様に回収した木材を他の一種の主要な材料とする。回収した靴を再利用することによって材料を軽量化することができ、回収した木材を用いることによって木材の芳香性を利用することができ、消臭、抗菌作用を具える靴の中敷用リサイクル材が得られる。かかる靴の中敷用リサイクル材の製造方法について、その特徴を説明するために、具体的な実施例を挙げ、図面を参照にして以下に詳述する。
【0019】
図1に開示するように、この発明においては、11のステップにおいて廃棄された靴類を回収してゴム質材料を得る。即ち、古くなり、破れたり、壊れたり、汚れたスニーカー、革靴、作業靴、運動靴などの靴類を、室内用、屋外用を問わず回収する。
【0020】
12のステップにおいて、回収した靴類は、金具などの金属部の有無を検査して、取り除く。即ち、金属材とゴム材とを確実に分離させる。このステップは、磁性で金属を吸着する処理装置で簡単に行なうことができる。
【0021】
次いで、13のステップにおいて、回収した靴類を粉砕機に投入して加圧、粉砕処理を行い、約5mmφ以下の微小な顆粒、もしくは粉末状にする。粉砕後の形状は限定しない。
【0022】
次いで、14のステップにおいて脱臭処理を行い、15のステップにおいて乾燥処理を行なう。即ち、加圧、粉砕加工を行なった顆粒、もしくは粉末状の材料をトンネル状の搬送装置内に投入し、120℃近くの高熱蒸気で高温脱臭加工を行い、回収材の洗浄と無臭化を達成する。さらに、熱風で乾燥させ、10のステップで収集して靴類回収材とする。
【0023】
別途、20のステップにおいて木材を回収する。即ち、解体した家屋の木材、廃棄した家具、板材、木靴などの廃棄された木質の材料であれば如何なるものでもよい。
【0024】
次いで、21のステップにおいて、回収した木材を適宜に粉砕、もしくは研いだり擦ったりして、約5mmφ以下の微小な顆粒、粉末状もしくはチップ状にして木材回収材とする。
【0025】
また、30のステップにおいて、天然ゴム及び/もしくは合成ゴムに添加剤、充填剤を混合して基本ゴム材料を得る。
【0026】
次いで、31のステップにおいて、該靴類回収材と、該木材回収材と、該基本ゴム材料とを混合装置に投入し、撹拌して均一に混合する。該靴類回収材は中敷原料全体に対する重量比を5〜60%とし、該木材回収材は中敷原料全体に対する重量比を15〜35%とし、該基本ゴム材料は中敷原料全体に対する重量比を5〜75%とする。
【0027】
また、22のステップにおいて、竹酢とエッセンスオイルを混合して、芳香と抗菌、防臭効果を有する芳香剤を得て、31のステップの撹拌、混合の過程において添加する。該芳香剤は、中敷原料全体に対する重量比201〜2%とする。
【0028】
さらに、23のステップでは、31のステップの撹拌、混合の過程において発泡剤を添加する。該発泡剤は、中敷原料全体に対する重量比を1〜2%とする。
【0029】
上述するそれぞれの材料の混合比は、生産する中敷の必要に応じて適宜に調整する。
【0030】
また、31のステップにおける撹拌、混合の過程において、中敷原料全体に対する重量比が5〜10%の添加剤を添加する。該添加剤は、架橋剤、促進剤、活性剤、劣化防止剤、加工助剤、もしくはゴム軟化オイルを含む。
【0031】
次に、撹拌した原料を平面ローラ装置で圧延して板状にし、中敷製造用の板材とする。該板材の厚さは1〜50mmとする。得られた板材は、収納に便利なように巻き取って、後続の成型の工程に供する。
【0032】
次に、33のステップにおいて、該板材を適宜な大きさに裁断して金型に投入し、ダイとパンチで加圧する。この工程においては、例えば特殊な凹凸を有する円弧状の面などを具える靴中敷の完全な外面形状を形成する。
【0033】
次に、34のステップにおいて、金型を加熱し、継続して加圧し成型された形状を安定させる。この場合、原料に添加した添加剤(硫黄)による熟成補助効果、及び促進剤による熟成促進作用によって、原料の金型内における流動率が大幅に高くなり、効率よく金型内に充満し、完全な靴中敷の成型を達成することができる。加熱の温度条件は100℃〜160℃の間とし、加熱する時間は4〜15分間とする。
【0034】
成型した靴中敷を金型から取り出して、簡易な端面の仕上げなどを施して表面の仕上げを行なう。得られた靴中敷は適宜な弾性を有し、かつ消臭、抗菌効果を有する。上述するように、この発明の製造方法による靴中敷の製造方法は、環境保全の観念に適った靴中敷を提供することができる。
【0035】
この発明による靴中敷の製造方法は、かつ発明者が開発して台湾に特許出願した先行技術である靴を回収して靴底などの材料として再利用する方法に改良を加えたものである。即ち、この発明においては、図1に開示するように、20のステップで木材を回収し、木材回収材として原料に混合する。さらに適量の発泡剤を添加する。このため、中敷が適宜な軟性と弾性を具えるとともに、重量が軽減して使い心地が向上する。また、木材はフィトンチッドによる特有の芳香を有し、さらに抗菌、消臭の作用を得るために、竹酢と、エッセンスオイルなどの香料を混合して添加する。
【0036】
本発明者は、実施例として中敷原料全体に対する重量比が26%の靴類回収材と、同重量比が25%の木材回収材と、同重量比が45%の基本ゴム材料に、同重量比が1.5%の竹酢と、及び適量の添加剤とを混合し、上述する圧縮、金型における加熱、加圧などの工程を経て靴中敷を製造した。該靴中敷を台湾の財団法人である「財團法人鞋類▲及▼運動休▲閑▼科技研發中心(財団法人・靴類及びスポーツ、レジャーテクノロジー研究開発センター」に送付し、製品の検査を請求した。同センターでは2009年8月5日に製品のサンプルを受け取り、検査を始め、同月13日付け検査報告・文書番号(98))9808008C−A02を発行した。該検査報告によれば、病原菌等の発生、もしくは付着は見られなかった。また、重金属や、欧州化学品庁による高懸念物資の残留も見られなかった。したがって、本発明の製造方法は、環境保全の観念に適うとともに、使い心地のよい靴中敷を提供することができる。
【0037】
以上はこの発明の好ましい実施の形態であって、この発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなし得る修正、もしくは変更であって、この発明の精神の下においてなされ、この発明に対して均等の効果を有するものは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴類を回収し微小な顆粒状に粉砕してなり、かつ原料全体に対する重量比が15〜35%の靴類回収材と、
木材を回収し5mmφ以下の顆粒状、もしくはチップ状に粉砕してなり、かつ原料全体に対する重量比が5〜65%の木材回収材と、
天然ゴム及び/もしくは合成ゴムに添加剤、充填材を添加してなり、かつ原料全体に対する重量比が5〜75%の基本ゴム材料と、
原料全体に対する重量比が1〜2%の発泡剤と、を原料として撹拌、混合し、
均一に撹拌、混合した該原料を圧延して板状にし、靴中敷製造用の板材とし、
該板材を適宜な大きさに裁断して金型に投入して加圧して成型し、さらに該金型を加熱し、かつ継続して加圧し成型された形状を安定させる工程を含むことを特徴とする靴中敷の製造方法。
【請求項2】
前記原料の撹拌、混合の工程において、竹酢とエッセンスオイルとを混合してなり、かつ原料全体に対する重量比が1〜2%の芳香剤を添加することを特徴とする請求項1に記載の靴中敷の製造方法。
【請求項3】
前記該添加剤が、架橋剤か、促進剤か、活性剤か、劣化防止剤か、加工助剤か、もしくはゴム軟化オイルを含むことを特徴とする請求項1に記載の靴中敷の製造方法。
【請求項4】
靴中敷製造用の板材の厚さが1〜50mmの間であることを特徴とする請求項1に記載の靴中敷の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−78558(P2011−78558A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233122(P2009−233122)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(509279815)
【Fターム(参考)】