説明

リチウムイオンキャパシタ

【課題】負極容量に見合った大きな容量の正極を用いることにより各LICセルの高容量化を図り、少ない積層数であっても高容量のLICを提供し、溶接回数を低減して生産性の向上を図ることができる技術を提供する。
【解決手段】正極集電体に炭素系材料を主体とする正極活物質合剤を担持させた正極と、負極集電体にリチウムイオンを吸蔵脱離できる材料を主体とする負極活物質合剤を担持させた負極とを備え、電解質としてリチウム塩を用い、正極と負極とがセパレーターを挟んで複数積層され、正極および負極が、それぞれセル内で電気的に結合されているリチウムイオンキャパシタであって、正極の厚みが、0.3mm以上であるリチウムイオンキャパシタ。正極における集電体が、アルミニウムを50wt%以上含む三次元構造の金属多孔体であるリチウムイオンキャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高容量であって、電極の積層数が少なく、少ない溶接回数で製造可能なリチウムイオンキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題がクローズアップされる中、太陽光発電や、風力発電等によるクリーンエネルギーの蓄電システム、コンピュータ等のバックアップ電源、ハイブリッド車や電気自動車等の電源として、蓄電デバイスの開発が盛んに行われており、近年、リチウムイオンキャパシタ(LIC)が、リチウムイオン二次電池(LIB)の利点と電気二重層キャパシタ(EDLC)の利点とを組み合わせた大容量の蓄電デバイスとして注目されている。
【0003】
即ち、LIBは、アルミニウム(Al)箔上にコバルト酸リチウム(LiCoO)等の正極活物質を担持させた正極、銅(Cu)箔上にリチウムイオン(Li)を吸蔵脱離できる黒鉛粉末等の負極活物質を担持させた負極、およびLiPF等のリチウム塩と、エチレンカーボネート(EC)やジエチルカーボネート(DEC)等の有機溶媒とからなる非水電解液を用いてセルが構成されており、2.5〜4.2Vの電圧を得ることができ、高いエネルギー密度を有している。しかし、高電流密度での動作は難しく、出力密度は高いとは言えない。
【0004】
一方、EDLCは、図3に示すように、アルミニウム(Al)箔23上に活性炭24を担持させた正極21と負極22、および(CNBF等とプロピレンカーボネート(PC)等の有機溶媒からなる電解液を用いてセルが構成されており、電解液中のイオンが活性炭24の表面に物理吸着あるいは脱離することにより、充放電が行われる。このため、EDLCは、高い出力密度を有し、サイクル性能も10万サイクル以上と優れており、小型バックアップ電源や瞬低保障装置、太陽光発電の蓄電デバイス等として用いられている。しかし、電圧は0〜3V、容量はmF〜数100F(ファラッド)であり、高容量とは言えない。
【0005】
これに対して、LICは、図4に示すように、Al箔33上に活性炭35を担持させた正極31(EDLCの正極と同様)、Cu箔34上に黒鉛粉末36等を担持させてLiを吸蔵(プレドープ)させた負極32(LIBの負極と同様)、LiPF等のリチウム塩およびエチレンカーボネート(EC)やジエチルカーボネート(DEC)等の有機溶媒からなる非水電解液を用いて構成されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
このため、LICは、LIBと同様に約4Vと高い電圧を得ることができる。そして、容量は電圧の2乗に比例するため、100F〜数1000Fと高い容量を得ることができる。また、EDLCと同様に高い出力密度を得ることができ、サイクル性能も10万サイクル程度と優れており、瞬低保障装置、太陽光発電の蓄電デバイス等として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−143702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のLICの正極容量(単位面積当りの容量)は、負極容量(単位面積当りの容量)に比べ約1/10と圧倒的に小さいため、LICとしての容量は正極容量に規制され、より高容量のLICを得るためには、小さな容量のLICセルを積層、即ち、図5に示すように、正極41、負極42およびセパレーター43を多く積層する必要があった。この結果、正極41と負極42のそれぞれについて、多くの正極タブ44と正極タブリード46とを接合、また同様に、多くの負極タブ45と負極タブリード47とを接合しなければならず、溶接回数が多くなり、生産性の向上を図る上で問題となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、負極容量に見合った大きな容量の正極を用いることにより各LICセルの高容量化を図り、少ない積層数であっても高容量のLICを提供し、溶接回数を低減して生産性の向上を図ることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明者は、上記課題の解決を検討するにあたって、従来のLICの正極容量が負極容量に比べ約1/10と圧倒的に小さく、LICの容量を規制していることに鑑み、まず、正極の厚みを増やすことを考え、正負極容量のバランスを充分に改善することができる正極の厚みについて種々の実験と検討を行った。その結果、0.3mm以上の厚みの正極の場合、正負極容量のバランスを1:1にまで改善でき、電極の積層数を低減させて溶接回数を低減させることができるため、加工コストの低減を図れ、生産性の向上を図ることができることを確認した。
【0011】
即ち、本発明に係るリチウムイオンキャパシタは、
正極集電体に炭素系材料を主体とする正極活物質合剤を担持させた正極と、負極集電体にリチウムイオンを吸蔵脱離できる材料を主体とする負極活物質合剤を担持させた負極とを備え、電解質としてリチウム塩を用い、前記正極と負極とがセパレーターを挟んで複数積層され、前記正極および負極が、それぞれセル内で電気的に結合されているリチウムイオンキャパシタであって、
前記正極の厚みが、0.3mm以上であることを特徴とする。
【0012】
(2)このような厚みが0.3mm以上の正極には、従来のAl箔に替えてアルミニウムを50wt%以上含んだ三次元構造の金属多孔体を集電体として用いることが好ましい。
【0013】
即ち、従来は、正極活物質である活性炭にアセチレンブラック等の導電助剤およびポリテトラフルオロエチレン等のバインダーを混合した後、N−メチル−2−ピロリドン等の溶媒を添加して作製された正極活物質合剤ペーストをAl箔に塗布することにより、正極が作製されていた。
【0014】
図6は従来のLICの正極の構成を説明する図であり、(a)は正極の斜視図、(b)は正極の断面の部分拡大模式図である。図6において、51は集電体(Al箔)、52は正極活物質合剤層である。そして、正極活物質合剤層52は、活物質52a、バインダー52b、導電助剤52cから構成されている。
【0015】
図6(a)に示すように、従来の正極は、厚みが20μm程度の集電体51の両面にそれぞれ100μm程度の正極活物質合剤層52を活物質層として形成させている。
【0016】
正極活物質合剤層52は、前記したように、正極活物質合剤ペーストを集電体51に塗布することにより形成されているため、正極容量の向上を意図して正極活物質合剤ペーストを厚く塗布して厚い正極活物質合剤層52を形成させた場合、集電体51から離れた部分では活物質52aが脱落する恐れがある。
【0017】
この活物質52aの脱落を防止するためには、バインダー52bを増量して活物質52aを充分に結着させる必要がある。しかし、バインダー52bは絶縁体であるため、増量すると電気抵抗が高くなり集電性が低下する。そこで、導電助剤52cも増量する必要がある。
【0018】
しかし、バインダー52bおよび導電助剤52cを増量すると、結果的に活物質52aの充填密度が低下するため、従来の正極においては、活物質層の厚みを増しても充分に容量を向上させることが難しかった。
【0019】
これに対して、アルミニウムを50wt%以上含んだ三次元構造の金属多孔体を集電体として使用した場合には、活物質層の厚みを増しても活物質が脱落する恐れがなく、また、バインダーや導電助剤を増量することなく活物質の充填密度を充分に確保して、容量を向上させることができる。
【0020】
これを図1を用いて説明する。図1は本発明に係るLICの正極の構成を説明する図であり、(a)は正極の斜視図、(b)は正極の断面の部分拡大模式図である。図1において、61は集電体となる骨格(Al骨格)、62は正極活物質合剤層である。そして、正極活物質合剤層62は、活物質62a、バインダー62b、導電助剤62cから構成されている。
【0021】
三次元構造の金属多孔体は棒状もしくは繊維状の金属が相互につながり合ってネットワークを形成している。このため、三次元構造の金属多孔体を集電体として用いた場合、図1(a)に示すように、金属多孔体の骨格61を集電体として、この骨格61により形成された多くの空孔に正極活物質合剤層62を担持させることができ、mmオーダーでの厚い正極を作製することができる。
【0022】
具体的には、正極活物質合剤層62においては、図1(b)に示すように、三次元構造の骨格61の部分に形成された空孔内に正極活物質ペーストを充填することにより、骨格61に活物質62aが包み込まれて担持されるため、厚い正極であっても活物質62aが脱落する恐れがない。また、電気抵抗が低い。また、アルミニウムは導電性が高く耐電圧性に優れるため、集電性に優れている。このため、従来のように、バインダー62bや導電助剤62cを増量する必要がなく、活物質62aの充填密度を高めることができる。この結果、正極容量を向上させた厚い正極を容易に得ることができる。
【0023】
即ち、前記のリチウムイオンキャパシタは、
前記正極における集電体が、アルミニウムを50wt%以上含む三次元構造の金属多孔体であることを特徴とする。
【0024】
(3)次に、比表面積が1000m/g以上の活性炭は、電解質イオンを吸着できるサイトが多く高容量であるため、正極活物質としてより好ましく、このような活性炭を前記正極の正極活物質として用いることにより、正極容量を一層大きくすることができ、より高容量のLICを提供することができる。
【0025】
即ち、前記のリチウムイオンキャパシタは、
前記炭素系材料が、比表面積1000m/g以上の活性炭であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、負極容量に見合った大きな容量の正極を用いることにより各LICセルの高容量化を図り、少ない積層数であっても高容量のLICを提供し、溶接回数を低減して生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るLICの正極の構成を説明する図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるLICの構成を説明する図である。
【図3】EDLCの構成を説明する図である。
【図4】LICの構成を説明する図である。
【図5】従来のLICの構成を説明する図である。
【図6】従来のLICの正極の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
【0029】
1.LICの構成
はじめに、LICの構成について説明する。図2は、本実施の形態におけるLICの構成を説明する図であり、1はLIC、11は正極、12は負極、13はセパレーターである。そして、14は正極タブ、15は負極タブ、16は正極タブリード、17は負極タブリードである。なお、正極11に示された六角形は金属多孔体の骨格部分である。
【0030】
LIC1は、正極11と負極12とがセパレーター13を挟んで複数積層され、複数の正極11と負極12は、それぞれ超音波溶接等により正極タブ14と負極タブ15に接合されている。そして、正極タブ14と負極タブ15は、それぞれ正極タブリード16と負極タブリード17に接合されている。また、電解液にはリチウム塩を含む非水電解液が用いられる。
【0031】
2.正極
(1)概要
正極11は、三次元構造の金属多孔体を集電体として、炭素系材料を主体とする正極活物質合剤が金属多孔体の空孔に充填されて担持されている。そして、正極11の厚みは、負極容量に見合う容量を確保するために、0.3mm以上に設定されている。なお、前記の「炭素系材料を主体とする」とは、正極活物質として機能する炭素系材料を50wt%超含有していることを示す。また、正極活物質合剤は、正極活物質に加えて、必要に応じて適宜、導電助剤、バインダー等が添加されて構成される。
【0032】
正極活物質合剤を正極集電体に充填する方法としては、例えば、溶媒を用いてペースト状にされた正極活物質合剤を圧入する圧入法等、公知の方法が用いられる。その他、例えば、正極活物質合剤ペースト中に集電体を浸漬し、必要に応じて減圧する方法、正極活物質合剤ペーストを集電体の一方面からポンプ等で加圧しながら吹き付けて充填する方法などを用いてもよい。
【0033】
充填されたペースト状の正極活物質合剤は、乾燥処理を施すことにより、溶媒が除去されて正極活物質合剤層が形成される。必要に応じて、充填後、ローラープレス機等により加圧することにより、所定の圧縮率に圧縮成形されることも好ましい。圧縮成形することにより、正極活物質合剤をより高密度に充填することができ、また正極を所望の厚みに調整することができる。
【0034】
(2)正極集電体
正極集電体としては、集電性の観点よりAlを50wt%以上含む三次元構造の金属多孔体が好ましい。Al以外の含有成分としては、耐電解性の観点より、チタン、白金、金、ステンレス、ニッケルクロム合金等が挙げられる。
【0035】
また、前記金属多孔体における目付量は多孔体構造を維持し、なおかつ電気抵抗が低い観点から80〜1000g/mであることが好ましく、気孔率は、充填密度の確保、および機械強度の観点から80〜98%であることが好ましい。なお、「目付量」とは金属多孔体製造時の厚み1mm当たりの重量を示し、「気孔率」とは集電体の見かけの体積に対して気孔が占める割合を示す。
【0036】
上記のような金属多孔体は、内部に導電性が高く耐電圧性に優れたAl骨格が連続して存在するため、集電機能に優れている。そして、多孔体中の空隙に活物質が包まれる構造であるため、バインダーや導電助剤等の含有比率を少なくすることができ、活物質の充填密度を高くすることができる。その結果、内部抵抗を小さくすることができると共に、高容量化が可能になる。
【0037】
このような金属多孔体は、発泡樹脂または不織布の表面に金属被覆層を形成したのち、基材である発泡樹脂や不織布を除去することにより得ることができ、例えば、以下に示す方法により作製される。
【0038】
まず、連通気孔を有する発泡樹脂を準備し、その表面にAl層を形成してAl被覆発泡樹脂を得る。
【0039】
発泡樹脂としては、多孔性のものであれば特に限定されず、発泡ウレタン、発泡スチレン等を使用することができ、気孔率40〜98%で、セル径50〜1000μmの連通気孔を持つものが好ましく用いられる。これらの中でも、気孔率が高く(80〜98%)、セル径の均一性が高く、また熱分解性にも優れた発泡ウレタンが特に好ましい。
【0040】
発泡樹脂の表面にAl層を形成する方法としては、蒸着、スパッタ、プラズマCVD等の気相法、アルミニウムペーストの塗布、溶融塩電解めっき法等任意の方法で行うことができる。
【0041】
これらの方法の内でも、溶融塩電解めっきが好ましい。溶融塩電解めっきは、例えば、AlCl−XCl(X:アルカリ金属)の2成分系あるいは多成分系の塩を使用し、溶融塩中に発泡樹脂を浸漬し、Al層に電位を印加して電解めっきを行う。この際、予め、Al等の蒸着やスパッタ、あるいはカーボン等を含有した導電性塗料の塗布等の方法を用いて、発泡樹脂1の表面に、導電化処理を施しておく。
【0042】
なお、Al層の形成に際しては、Ni、Fe、Cu、Si等の不純物が含まれないようにする。これらの不純物が含まれた正極を用いた場合、充電中にこれらの不純物が溶け出して負極に析出し、短絡が生じる原因となる。
【0043】
次に、Al被覆発泡樹脂を溶融塩に浸漬し、Al層に負電位を印加する。これにより、Al層の酸化を抑制することができる。この状態で発泡樹脂の分解温度以上で、Alの融点(660℃)以下の温度で加熱することにより、発泡樹脂が分解して、Al層のみが残りAl多孔体を得ることができる。加熱温度としては、500〜650℃が好ましい。
【0044】
溶融塩としては、Al層の電極電位が卑となるように、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の塩を使用することができる。具体的には、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化アルミニウム(AlCl)からなる群より選択される1種以上を含むことが好ましく、上記の2種以上を混合して融点を下げた共晶溶融塩がより好ましい。
【0045】
(3)正極活物質合剤
(a)炭素系材料
炭素系材料としては、比表面積が1000m/g以上の活性炭が好ましく、1100〜4000m/gであるとより好ましい。また、粒径は、20μm以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、LICの静電容量を大きくすることができ、また、内部抵抗を小さくすることできる。
【0046】
このような活性炭としては、電気二重層キャパシタ用に一般的に市販されているものを、同様に使用することができる。活性炭の原料としては、例えば、木材、ヤシ殻、パルプ廃液、石炭、石油重質油、又はそれらを熱分解した石炭・石油系ピッチのほか、フェノール樹脂等の樹脂等が挙げられる。
【0047】
なお、炭化後に賦活するのが一般的であり、賦活法は、ガス賦活法及び薬品賦活法が挙げられる。ガス賦活法は、高温下で水蒸気、炭酸ガス、酸素等と接触反応させることにより活性炭を得る方法である。薬品賦活法は、上記原料に公知の賦活薬品を含浸させ、不活性ガス雰囲気中で加熱することにより、賦活薬品の脱水及び酸化反応を生じさせて活性炭を得る方法である。賦活薬品としては、例えば、塩化亜鉛、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
(b)導電助剤
導電助剤の種類には特に制限はなく、公知又は市販のものが使用できる。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、酸化ルテニウム等が挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維等が好ましい。これにより、LICの導電性を向上させることができる。導電助剤の含量は限定的でないが、活性炭100質量部に対して0.1〜10質量部程度が好ましい。10質量部を超えると静電容量が低下するおそれがある。
【0049】
(c)バインダー
バインダーの種類には特に制限はなく、公知又は市販のものが使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0050】
バインダーの含有量についても特に制限はないが、活性炭100質量部に対して好ましくは0.5〜10質量部である。この範囲とすることにより、電気抵抗の増加及び静電容量の低下を抑制しながら、結着強度を向上させることができる。
【0051】
なお、ペースト状にするための溶媒は、バインダーの材質等に応じて適宜決定される。例えば、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、N−メチル−2−ピロリドンが溶媒に用いられ、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を用いる場合には、水が溶媒に用いられる。
【0052】
3.負極
(1)概要
負極12は、金属箔を負極集電体として、リチウムイオンを吸蔵脱離できる炭素材料等の負極活物質を主体とした負極活物質合剤のペーストを、ドクターブレード法等により金属箔上に塗布する方法が挙げられる。また、必要に応じて、乾燥後にローラープレス機等により加圧成形してもよい。負極の厚みは、一般的に、0.08mm程度にされる。
【0053】
負極活物質にリチウムイオンを吸蔵させるには、負極活物質層が形成された負極にLi箔を圧着させておき、製造後のセル(LIC)を60℃の恒温層中で24時間保温する等の方法が挙げられる。他にも、負極活物質とリチウム材料を混合してメカニカルアロイ法で混合する方法や、Li金属をセルに組み込んで、負極12とLi金属を短絡する方法が挙げられる。
【0054】
(2)負極集電体
負極集電体としては、電気抵抗の観点から、金属箔を用いることが好ましく、Al、銅、Ni、ステンレスのいずれかであることが好ましい。
【0055】
(3)負極活物質合剤
負極活物質合剤は、例えば、リチウムイオンを吸蔵脱離できる負極活物質を溶媒にまぜ、混合機で攪拌することによりペースト化される。必要に応じて導電助剤、バインダーを含んでもよい。
【0056】
(a)負極活物質
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵脱離できるものであれば特に限定されないが、容量密度の観点から、黒鉛系材料、易黒鉛化炭素材料等の炭素材料が好ましい。
【0057】
(b)導電助剤
導電助剤としては、前記正極活物質の場合と同様に、公知又は市販のものが使用できる。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、天然黒鉛(鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、酸化ルテニウム等が挙げられる。
【0058】
(c)バインダー
バインダーも、前記正極活物質の場合と同様に、特に種類に制限はなく、公知又は市販のものが使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0059】
4.非水電解液
(1)概要
本発明に係るLICはリチウムを有するため、電解液としては、非水電解液を用いる必要がある。かかる非水電解液は、例えば、充放電に必要なリチウム塩を有機溶媒に溶かしたものを使用することができる。
【0060】
(2)リチウム塩
リチウム塩としては、溶媒への溶解性の観点から、例えば、LiClO、LiBF、LiPF等を好ましく用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、いずれか2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
(3)溶媒
上記リチウム塩を溶かす溶媒としては、イオン伝導度の観点から、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートから選ばれるいずれか1種以上を好ましく用いることができる。
【0062】
5.セパレーター
セパレーター13としては、公知又は市販のものを使用できる。例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンレテフタラート、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、ガラス繊維等からなる絶縁性膜が好ましい。セパレーターの平均孔径は特に限定されず、通常0.01〜5μm程度であり、平均厚みは通常10〜100μm程度である。
【0063】
6.LICの組立
上記の正極11、負極12の間にセパレーター13を配置して、複数積層した後、例えば超音波溶接を用いて各正極11と正極タブ14を、各負極12と負極タブ15を溶接し、さらに正極タブ14と正極タブリード16を、負極タブ15と負極タブリード17とを溶接する。その後、リチウム塩を含む非水電解液を含浸し、さらに、負極にリチウムイオンを化学的あるいは電気化学的手法で吸蔵させる(プレドープ)ことにより、本発明に係るLICの組立が行われる。
【0064】
このとき、前記したように、正極の厚みを0.3mm以上と厚くして、負極容量に見合う容量を確保しているため、正負極の容量のバランスを1:1程度まで改善することができ、セルを高容量化することができ、電極の積層数を少なくしても、充分な高容量を確保することができる。そして、電極の積層数が低減されるため、溶接回数を低減して生産性の向上を図ることができる
【0065】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以上の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 LIC
11、21、31、41 正極
12、22、32、42 負極
13、43 セパレーター
14、44 正極タブ
15、45 負極タブ
16、46 正極タブリード
17、47 負極タブリード
23、33 Al箔
24、35 活性炭
34 Cu箔
36 黒鉛粉末
51 集電体
52、62 正極活物質合剤層
52a、62a 活物質
52b、62b バインダー
52c、62c 導電助剤
61 骨格

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体に炭素系材料を主体とする正極活物質合剤を担持させた正極と、負極集電体にリチウムイオンを吸蔵脱離できる材料を主体とする負極活物質合剤を担持させた負極とを備え、電解質としてリチウム塩を用い、前記正極と負極とがセパレーターを挟んで複数積層され、前記正極および負極が、それぞれセル内で電気的に結合されているリチウムイオンキャパシタであって、
前記正極の厚みが、0.3mm以上であることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。
【請求項2】
前記正極における集電体が、アルミニウムを50wt%以上含む三次元構造の金属多孔体であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオンキャパシタ。
【請求項3】
前記炭素系材料が、比表面積1000m/g以上の活性炭であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のリチウムイオンキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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