説明

リング形状のフライス工具キャリアを固定するためのデバイス

本発明は、リング形状フライス削り工具キャリア(10)を、ねじを切られた連結部(15)という手段によって、機械レシーバ(11)に取り付けるためのデバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に内面フライスの場合において、リング形状のフライス工具キャリアを機械レシーバに固定するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
内側カッタ、好ましくはスローアウェイチップを有するリング形状のフライスディスクは長年公知であり、また、クランクシャフトのフライス加工におけるその使用についても長年公知である。独国特許出願公開第26 34 030 A1号明細書に記載されているフライスディスクは、2つの環状のリングの半片からなり、それらは互いに着脱可能に連結され、2つの突合せ継手において、それぞれが段付き凹部内に配置された連結リンクを有し、少なくとも1つの環状のリングの半片はその凹部内にセンタリング用の部品を受容し、その部品に、ねじを介して、連結リンクの割り当てられた円すい形の凹部内に係合する円すい部品が連結される。
【0003】
独国特許発明第34 38 978 C1号明細書は、フライスドラムの受容フランジに押圧されている内面フライスのブレードキャリアを介して、それぞれに他方の部位の合わせ面と支承接触の状態にできるロック要素という手段によって、内面フライスのブレードキャリアをクランクシャフトフライス盤のフライスドラムの受容フランジに固定するためのデバイスについて記載している。そのウェッジ表面が合わせ面であるウェッジが、ブレードキャリアまたはフライスドラムに固定される。フライスドラム上またはブレードキャリア上にロック要素として配置されているのがそれらと共に機能するウェッジであり、ブレードキャリアの軸に対して半径方向に変位可能である。偏心部とウェッジとを組み合わせると自動ロックするような様式で、変位可能なウェッジの変位駆動部として、いずれの場合においても偏心部が設けられている。
【0004】
さらに、独国特許出願公開第10 2007 013 153 A1号明細書には外面フライス加工のための工具について記載されており、その工具はその外周部上に複数の切削インサートまたは切削インサートが装着されたカセットを有し、それらはリング形状または部分的にリング形状の、セグメント形状の固定されたキャリア上に配置され、このキャリアは機械のスピンドルに直接的に、またはアダプタを介して間接的に着脱可能に固定される。ねじ、クランプウェッジまたは差込連結体もまた固定手段およびまたクランプ手段の役割も果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の固定手段はどれも比較的複雑であるため、それにより工具製作が複雑かつ高額になり、工具取り換え時のフライスの取り扱いが困難になる。
【0006】
工具の取り換えを手動でより簡単に実施でき、結果的に簡単に組み立てられるという利点がある、リング形状の内面フライスに直接埋め込まれた工具を使用することは原則的に可能である。しかしながら不都合なことに、生産技術の理由から、この場合には工具キャリアに収容できる工具はほとんどない。セグメント形状のキャリアを使用するという解決法には、万一、個々の工具が使用不能になった場合、例えば、インサートが破損した場合に、該当するセグメントを取り除き、新しい切削インサートを有する別のセグメントに取り替えられるという利点がある。しかし、高い柔軟性と相反し、各場合において、各セグメントに対して設けられた多数のクランプ手段ならびに締め付け手段、締め付けねじ等を取り外し、その後それらを再チャック時に再び取り付ける必要があるため、すべてのセグメントの工具取り換えが比較的複雑であることが不利である。これにより、工具交換の時間が長くなり、機械の中断時間により製造コストが増加することとなる。
【0007】
工具の構成によっては、トルクの伝達に必要なキーと溝との連結もまた、特に工具の幅が狭い場合には、工具キャリアを弱くする原因となり、工具破損のリスクも高くなる。
【0008】
製造が簡単で、かつ、短い工具取り換え時間を達成するため、操作が簡単、およびそれによって工具取り換えを手動で迅速に実施できる、初めに言及されたタイプの固定デバイスを作製するという目的がそこから生じる。
【0009】
この目的は請求項1に記載のデバイスによって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、リング形状のフライス工具キャリア、特に、内面フライスリングと機械レシーバとの間に、ねじが切られた連結部が設けられる。
【0011】
従来技術において必要とされる追加の固定要素の取り外しおよびねじの締め付けがないため、ねじが切られた連結部は簡単かつ迅速に扱うことができる。特に、組み込み部品をほとんど必要としないため生産技術についても利点が生じる。最終的には、キャリアボデーをリングとして具現化するため、重量の低減が達成され、それにより、工具取り換えにおいて搭載クレーンを不要にできる。
【0012】
本発明をさらに発展させたものが従属請求項によって得られる。
【0013】
したがって、内面フライスの場合において、リング形状のフライス工具キャリアは雄ねじを有して設けられ、かつ、機械レシーバはそれに応じて具現化される雌ねじを有して設けられる。雄ねじは「簡単に合わせること」すなわち容易な組立が可能となるように多条ねじとして製作されることが好ましい。
【0014】
本発明をさらに発展させたものによれば、締め付けられた状態にあるとき、フライス工具キャリアは機械レシーバに対して軸の位置を決定する停止面を有する。特に、この停止面はリング形状の端面として具現化され、それに隣接するのは、短いテーパ形のセンタリングペグであることが好ましい。センタリングペグによって、リング形状のフライス工具キャリアを機械レシーバ上または機械レシーバ内に導入することが容易になる。センタリング後、フライス工具キャリアは、上述の端面停止面によって達成される、フライス工具キャリアが工作機械に対して正確に軸方向に固定される位置にねじ込まれる。加えて、原則的に従来技術より公知であるが、フライス工具キャリアは、例えば、ねじまたはクランプウェッジという手段によって、機械レシーバに対してさらに回転方向にロックされうる。これらの付属品はフライス工具キャリアがねじ止めされた後に取り付けられる。
【0015】
フライス工具ボデーの取り扱いを容易にするため、本発明をさらに発展させたものによれば、フライス工具ボデーには、機械と逆を向く側に、棒形状のグリップ要素のピンまたはねじを受容するための少なくとも2つの穴開けされためくら穴またはねじ立てされた穴が設けられる。グリップ要素は、据え付けられた状態にあるとき、好ましくはリング形状のフライス工具ボデーを直径上にまたぎ、フライス工具ボデーを取り付けるおよび取り外すための回転用付属品として使用されうる。この回転用付属品とリング形状のフライス工具キャリアとの間の連結が、例えばねじによって固定できる限り、回転用付属品は搬送のための運搬補助具としても使用できる。
【0016】
本発明をさらに具現化したものを図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の、機械レシーバ内のフライス工具キャリアの断面図である。
【図2】本発明の、機械レシーバ内のフライス工具キャリアの平面図である。
【図3】本発明の、フライス工具キャリアの断面図である。
【図4】本発明のフライス工具キャリアの平面図である。
【図5】図3のBで示す部分を拡大した詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下で説明される図1〜5にあるようなリング形状のフライス工具キャリアは原則的に従来技術より公知であり、従来技術との本質的な違いのみが考察される。
【0019】
図1および図2からわかるように、フライス工具キャリア10がねじが切られた連結部16という手段によって機械レシーバ11に連結される。説明を明確にするため、フライス工具キャリア10の内周部に配置される切削インサートは省略される。これらの切削インサートは、通常、カセットの一部ともなりうる各々のインサート座内に締め付けねじという手段によって固定される。使用される切削インサートはスローアウェイチップであり、磨耗後に交換される。フライス盤の中断時間を極力減らすため、フライス工具が磨耗した場合、フライス工具キャリア全体が取り外され、取り除かれ、取り替え用のフライス工具ボデーと交換され、その後、フライス盤はさらに使用されうる。取り除かれたフライス工具ボデー上の工具取り換え、すなわち切削インサートの取り換えは、フライス盤とは独立して実施されうる。
【0020】
特に、図5からわかるように、フライス工具キャリア10は軸受接触つばとして端面停止面12を有し、かつ、その周表面14が7°〜8°というテーパ角度を有する短いテーパ形のセンタリングペグ13を有する。ねじ山15は雄ねじとして具現化される。
【0021】
回転に対するさらなるロックまたはクランプウェッジが使用でき、その目的のため、独国特許出願公開第10 2007 013 153 A1号明細書の該当する記載、特に、図6〜8および関連の記載を参照する。
【0022】
フライス工具キャリア10をはずす、および、ねじ止めすることをより簡単にするために、図4に示すように、直径方向に対向するねじ立てされためくら穴を設けることができる。めくら穴は、対応する穴を有する細長いハンドルの両端部の固定位置としての役割を果たす。ハンドルの穴を通してねじが固定され、かつ、ねじ立てされた穴17および18にしっかりとねじ込まれる、この弓形のハンドルは回転用付属品としての役割を果たし、また、それはフライス工具キャリアに固定されるため、フライス工具キャリアを保管場所に、または保管場所から工作機械まで搬送するための運搬補助具としての役割も果たしうる。フライス工具キャリアが工具レシーバ内に取り付けられた後、この付属品はフライスが運転される前に取り除かれる。
【0023】
上述の実施形態は、特に、搭載クレーンまたは類似の付属品なく、「手動での」取り扱いが可能であるような、フライスキャリアボデーの重量が約15kgである小型の内面フライスに適している。しかしながら、基本的に、本発明によるねじが切られた連結部のデザインは、工具(切削インサート)がリング形状の工具キャリアの外側の周縁に配置される、いわゆる外面フライスの場合においても使用されうる。この場合におけるねじ山はリングの内側に雌ねじとして設けられ、そのねじ山は機械レシーバの雄ねじに対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に内面フライスカッターの場合に、リング形状のフライス工具キャリア(10)を機械レシーバ(11)に固定するためのデバイスであって、
前記フライス工具キャリアと前記機械レシーバとの間のねじが切られた連結部を特徴とするデバイス。
【請求項2】
内面フライスカッターの場合に、前記フライス工具キャリアは雄ねじ(15)を有し、かつ、前記機械レシーバはそれに応じて具現化される雌ねじを有することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記フライス工具キャリアの前記雄ねじは多条ねじとして具現化されることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記フライス工具キャリアは、締め付けられた状態にあるとき、前記機械レシーバに対して軸方向の位置を決定する停止面(12)を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記停止面はリング形状の端面として具現化され、それに隣接するのは、短いテーパ形のセンタリングペグ(13)であることを特徴とする、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記フライス工具キャリアは、ねじまたはクランプウェッジという手段によって、前記機械レシーバに対して回転方向にロックされることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記フライス工具キャリアは、少なくとも2つの穴開けされためくら穴またはねじ立てされた穴(17、18)を有し、前記めくら穴またはねじ立てされた穴は、機械と逆を向く側から接触可能であり、棒形状のグリップ要素のピンまたはねじを受容し、前記棒形状のグリップ要素は前記据え付けられている状態にあるとき、前記リング形状のフライス工具キャリアを直径上にまたぎ、前記フライス工具キャリアをねじ止めする、および、はずすための回転用付属品として使用できる、ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515658(P2012−515658A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546605(P2011−546605)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008340
【国際公開番号】WO2010/083858
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(399031078)ケンナメタル インコーポレイテッド (182)
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Inc.
【住所又は居所原語表記】1600 Technology Way Latrobe PA 15650−0231, USA
【Fターム(参考)】