リン原子含有イオン液体
【課題】二酸化炭素(CO2)等の酸性ガスを選択的に分離・精製するための吸収剤の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム及びフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基によりジエステル置換されるホスフェートを含むイオン液体。
[式中、R1及びR3は、炭素数1〜20個の炭化水素基であり、そしてR2、R4及びR5は、水素原子又は炭素数1〜20個の炭化水素基である。]
【解決手段】下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム及びフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基によりジエステル置換されるホスフェートを含むイオン液体。
[式中、R1及びR3は、炭素数1〜20個の炭化水素基であり、そしてR2、R4及びR5は、水素原子又は炭素数1〜20個の炭化水素基である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)等の酸性ガスを物理的に吸収させるか,又は酸性ガスと水素(H2)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)、窒素(N2)等の非酸性ガスとが含まれる混合ガスから酸性ガスを物理的に吸収させることにより、酸性ガスを貯蔵・分離・精製するのに有用なイオン液体、そのイオン液体の使用方法及びそのイオン液体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が問題として取り上げられ、温室効果ガスの1つであるCO2の排出量削減の動きが活発になっている。特に火力発電所、セメントプラント、鉄鋼プラント、化学プラント等の排出ガス、又は産出直後の天然ガスにCO2が含まれるため、これらのガスからCO2を選択的に分離回収して、CO2を地中へ貯留する方法、若しくはCO2を固定化する方法等が検討されている。
【0003】
従来、排出ガス等からCO2を分離回収する方法として、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、吸着分離法、深冷分離法等が知られている。このうち、物理吸収法は、排出ガスをメタノール、又はポリエチレングリコールジメチルエーテル類等の吸収液と接触させて吸収させた後、減圧若しくは大気圧雰囲気下でCO2を放散させる方法であり、吸収液の再生エネルギーコストが低く抑えられる特徴を有する。しかしながら、メタノール及びポリエチレングリコールジメチルエーテル類等の吸収液は蒸気圧を有するため、吸収液の蒸発損失が起こる。この問題を回避するため、吸収液を冷却する設備が必要となる(例えば非特許文献1参照)。また、これらの吸収液と水とは相溶性があるため、排出ガス中に水分が存在すると吸収液に水分が溶解し、CO2の吸収能力が低下することが知られている。
【0004】
上記課題を解決する新たな物理吸収剤としてイオン液体が提案されている(例えば特許文献1〜4、並びに非特許文献1及び2を参照)。イオン液体は、蒸気圧がほぼゼロであるため、蒸発損失がほとんど無く、吸収液を冷却する設備が不要となること、難燃性を有すること、さらにCO2を吸収することが知られている。しかしながら、これまでに開発されてきたイオン液体は、CO2の吸収能力が未だ不十分であったため、CO2の吸収能力が高い新たなイオン液体の出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6579343号明細書
【特許文献2】特開2006−305544号公報
【特許文献3】特開2009−106909号公報
【特許文献4】特開2008−296211号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(財)地球環境産業技術研究機構編集「図解 CO2貯留テクノロジー」第3章CO2回収技術材料開発の動向 工業調査会(2006年)
【非特許文献2】「CO2の分離・回収と貯留・隔離技術」第6講イオン液体物理吸収法によるCO2の分離・回収技術 NTS(2009年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、CO2等の酸性ガスの吸収能力が高く、且つ水に溶解し難いイオン液体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはCO2等の酸性ガスの吸収能力が高いイオン液体を見出すため、イオン液体の分子構造について抜本的な見直しを行い鋭意検討した。その結果、カチオン部位及びアニオン部位を含むイオン液体であって、アニオン部位がリン原子を有するホスフェートであり、且つホスフェート中の2つの置換基がフッ素原子で置換された炭化水素基を有するイオン液体はCO2等の酸性ガスの吸収能力が高く、水に溶解し難いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 下記一般式(1):
【化1】
{式中、R1及びR3は、炭素数1〜20個の炭化水素基であり、そしてR2、R4及びR5は、水素原子又は炭素数1〜20個の炭化水素基である。}で表されるイミダゾリウム、及び
下記一般式(2):
【化2】
{式中、R’1及びR’2は、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるホスフェート
を含むイオン液体。
【0010】
[2] [1]に記載のイオン液体に、酸性ガス又は該酸性ガスと非酸性ガスとの混合ガスを接触させることにより、該酸性ガスを該イオン液体に吸収させる方法。
【0011】
[3] 前記酸性ガスは二酸化炭素である、[2]に記載の方法。
【0012】
[4] 以下の工程:
下記一般式(3):
【化3】
{式中、R’1及びR’2は、前記一般式(2)で規定された通りであり、そしてR’3は、水素原子又はフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるリン化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩及び酸化物から成る群から選択される無機塩基化合物とを接触させて、混合物を得る工程、及び
該混合物と下記一般式(4):
【化4】
{式中、R1〜R5は、前記一般式(1)で規定された通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}で表されるハロゲン化合物とを接触させる工程
を含む[1]に記載のイオン液体の製造方法。
【0013】
[5] 前記無機塩基化合物はアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩である、[4]に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のイオン液体に、二酸化炭素(CO2)等の酸性ガス、又は酸性ガスと水素(H2)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)、窒素(N2)等の非酸性ガスとの混合ガスを接触させると、前記イオン液体に前記酸性ガスを効率的に吸収させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に記述する。
本発明のイオン液体は、カチオン部位及びアニオン部位を含み、そして前記カチオン部位は下記一般式(1):
【化5】
{式中、R1及びR3は、炭素数1〜20個の炭化水素基であり、そしてR2、R4及びR5は、水素原子、又は炭素数1〜20個の炭化水素基である。}
で表されるイミダゾリウムであり、前記アニオン部位は下記一般式(2):
【化6】
{式中、R’1及びR’2は、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}
で表されるホスフェートである。
【0016】
<イミダゾリウム>
上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムのR1〜R5において、炭素数1〜20個の炭化水素基の「炭化水素基」とは、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族炭化水素基を表す。
【0017】
飽和炭化水素基の具体例としては:
−CH3
−CH2CH3
−(CH2)2CH3
−CH(CH3)2
−(CH2)3CH3
−CH2CH(CH3)2
−C(CH3)3
−(CH2)4CH3
−(CH2)5CH3
−(CH2)6CH3
−(CH2)7CH3
−(CH2)8CH3
−(CH2)9CH3
−(CH2)10CH3
−(CH2)11CH3
−(CH2)12CH3
−(CH2)13CH3
−(CH2)14CH3
−(CH2)15CH3
−(CH2)16CH3
−(CH2)17CH3
−(CH2)18CH3
−(CH2)19CH3
が挙げられる。好ましくは、飽和炭化水素基は、−CH3、−CH2CH3、又は−(CH2)3CH3である。
【0018】
不飽和炭化水素基の具体例としては:
−CH2CH=CH2
−(CH2)2CH=CH2
−(CH2)3CH=CH2
−(CH2)4CH=CH2
−(CH2)5CH=CH2
−(CH2)6CH=CH2
−(CH2)7CH=CH2
−(CH2)8CH=CH2
−(CH2)9CH=CH2
−(CH2)10CH=CH2
−(CH2)11CH=CH2
−(CH2)12CH=CH2
−(CH2)13CH=CH2
−(CH2)14CH=CH2
−(CH2)15CH=CH2
−(CH2)16CH=CH2
−(CH2)17CH=CH2
−(CH2)18CH=CH2
が挙げられる。
【0019】
芳香族炭化水素基の具体例としては:
【化7】
が挙げられる。
【0020】
<ホスフェート>
上記一般式(2)で表されるホスフェートのR’1及びR’2は、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。ここで、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基の「フッ素原子で置換された炭化水素基」とは:
・フッ素原子で置換された飽和炭化水素基(下記一般式(5))
−CmFaH2m+1−a (5)
{式中、mは、2〜20の整数であり、そしてaは、1〜40の整数である。}、又は
・フッ素原子で置換された芳香族炭化水素基
をいう。
【0021】
フッ素原子で置換された飽和炭化水素基の具体例としては:
−CH2CF3
−CH2CHF2
−CH2CH2F
−CHFCF3
−CHFCHF2
−CHFCH2F
−(CH2)2CF3
−CH2CF2CF3
−CH(CF3)2
−(CH2)3CF3
−(CH2)2(CF2)2F
−CH2(CF2)3F
【0022】
−CH2CH(CF3)2
−(CH2)4CF3
−(CH2)3(CF2)2F
−(CH2)2(CF2)3F
−CH2(CF2)4F
−(CH2)5CF3
−(CH2)4(CF2)2F
−(CH2)3(CF2)3F
−(CH2)2(CF2)4F
−CH2(CF2)5F
−(CH2)3(CF2)4F
−(CH2)2(CF2)5F
−CH2(CF2)6F
−(CH2)3(CF2)5F
−(CH2)2(CF2)6F
−CH2(CF2)7F
【0023】
−(CH2)3(CF2)6F
−(CH2)2(CF2)7F
−CH2(CF2)8F
−(CH2)3(CF2)7F
−(CH2)2(CF2)8F
−CH2(CF2)9F
−(CH2)3(CF2)8F
−(CH2)2(CF2)9F
【0024】
−CH2(CF2)10F
−(CH2)3(CF2)9F
−(CH2)2(CF2)10F
−CH2(CF2)11F
−(CH2)3(CF2)10F
−(CH2)2(CF2)11F
−CH2(CF2)12F
−(CH2)3(CF2)11F
−(CH2)2(CF2)12F
−CH2(CF2)13F
−(CH2)3(CF2)12F
−(CH2)2(CF2)13F
【0025】
−CH2(CF2)14F
−(CH2)3(CF2)13F
−(CH2)2(CF2)14F
−CH2(CF2)15F
−(CH2)3(CF2)14F
−(CH2)2(CF2)15F
−CH2(CF2)16F
−(CH2)3(CF2)15F
−(CH2)2(CF2)16F
−CH2(CF2)17F
−(CH2)3(CF2)16F
−(CH2)2(CF2)17F
−CH2(CF2)18F
−(CH2)3(CF2)17F
−(CH2)2(CF2)18F
−CH2(CF2)19F
が挙げられる。好ましくは、フッ素原子で置換された飽和炭化水素基は、−CH(CF3)2である。
【0026】
フッ素原子で置換された芳香族炭化水素基の具体例としては:
【化8】
が挙げられる。
【0027】
<イオン液体>
カチオン部位が上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムであり、且つアニオン部位が上記一般式(2)で表されるホスフェートであるイオン液体は、後述するように一般式(3)で表されるリン化合物を無機塩基化合物と接触・混合させた後、一般式(4)で表されるハロゲン化合物と接触・混合する操作により得られる。一般式(3)で表されるリン化合物及び一般式(4)で表されるハロゲン化合物の入手性、合成時のハンドリング等の理由から、上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムのR1〜R5としては、好ましくは、R1及びR3は炭素数1〜10個の炭化水素基であり、且つR2、R4及びR5は水素原子又は炭素数1〜10個の炭化水素基であり、より好ましくは、R1及びR3は炭素数1〜5個の炭化水素基であり、且つR2、R4及びR5は水素原子又は炭素数1〜5個の炭化水素基であり、特に好ましくは、R1及びR3は炭素数1〜4個の炭化水素基であり、且つR2、R4及びR5は水素原子である。
【0028】
一方、上記一般式(2)で表されるホスフェートのR’1及びR’2は、好ましくはフッ素原子で置換された炭素数2〜10個の炭化水素基であり、より好ましくはフッ素原子で置換された炭素数2〜6個の炭化水素基であり、特に好ましくはフッ素原子で置換された炭素数2〜4個の炭化水素基である。
【0029】
本発明のイオン液体に、酸性ガス(例えば、二酸化炭素など)、又は酸性ガスと非酸性ガスとの混合ガスを接触させることにより、酸性ガスを本発明のイオン液体に吸収させることができる。本発明者らは、二酸化炭素(CO2)の吸収能力が高いイオン液体を見出すため、様々な分子構造を有するイオン液体を合成した後、イオン液体の単位体積当たりのCO2吸収量を測定した。具体的には、合成したイオン液体を圧力容器に入れ40℃に昇温した後、所定圧(0.5〜2.0MPa)のCO2とイオン液体とを接触させ、2時間攪拌後、圧力変化を測定し、初期圧力と2時間攪拌後の圧力との差圧からイオン液体の単位体積(L)当たりのCO2吸収量(mol)を測定・評価した(実施例4を参照)。
【0030】
その結果、カチオン部位がイミダゾリウムであり、且つアニオン部位がフッ素原子で置換された炭化水素基を有するホスフェートであるイオン液体が、従来のアニオン部位にスルホニルイミドを有するイオン液体(例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(比較例1のイオン液体(C−1)を参照))、又はヘキサフルオロホスフェートを有するイオン液体(例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(比較例1のイオン液体(C−2)を参照))と比べて、CO2の吸収能力が高いことを見出した。
【0031】
本発明のイオン液体が、高いCO2吸収能力を有する理由として:
1) ホスフェートが嵩高いため、電荷が非局在化し、静電相互作用又はファンデルワールス力によりCO2を引き付ける力が強くなり、CO2の吸収能力が高くなった;及び
2) ホスフェートがフッ素原子で置換された炭化水素基を有するため、CO2とフッ素原子との静電相互作用が高くなり、CO2の吸収能力が高められた
などが考えられる。
【0032】
なお、比較例2及び比較例3に示したように、ホスフェートのR’1及びR’2がエチル基(比較例2のイオン液体(C−3)を参照)、あるいはブチル基(比較例3のイオン液体(C−4)を参照)等の炭化水素基である場合、イオン液体は水に均一に溶解した。
【0033】
一方、カチオン部位がイミダゾリウムであり、アニオン部位がフッ素原子で置換された炭化水素基を有するホスフェートから構成される本発明のイオン液体は、水に溶解し難いイオン液体であることが分かった。
【0034】
カチオン部位が上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムであり、且つアニオン部位が上記一般式(2)で表されるホスフェートである本発明のイオン液体は、以下の工程:
下記一般式(3):
【化9】
{式中、R’1及びR’2は、上記一般式(2)で規定された通りであり、そしてR’3は、水素原子、又はフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるリン化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩から成る群から選択される無機塩基化合物とを接触及び/又は混合させて、混合物を得る工程、及び
前記混合物と下記一般式(4):
【化10】
{式中、R1〜R5は、上記一般式(1)で規定された通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}で表されるハロゲン化合物と接触及び/又は混合させる工程
を含む製造方法により得られることができる。
【0035】
上記接触及び/又は混合工程は、各成分同士を反応させるか、各成分の水溶液若しくは溶液同士を混ぜ合わせるか、又は固体、粉末などの各成分同士を接触させることにより行なわれることができる。
【0036】
本発明のイオン液体の製造方法は、下記スキーム:
【化11】
{本スキーム中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の原子を表す。}
で表される。
【0037】
上記一般式(3)で表されるリン化合物のR’3は、水素原子、又はフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。ここで、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基の「フッ素原子で置換された炭化水素基」とは、上述した上記一般式(2)で表されるホスフェートのR’1及びR’2と同じである。
【0038】
上記一般式(3)で表されるリン化合物の製造方法は、特に制限されるものでないが、例えば、水酸基を有するフッ素原子含有化合物(RfOH)を五塩化リン(PCl5)若しくはオキシ塩化リン(POCl3)と反応させる方法(例えば、Journal of Fluorine Chemistry 106巻 153頁 (2000年)参照)、又は水酸基を有するフッ素原子含有化合物(RfOH)をブチルリチウムでリチウム塩(RfOLi)にした後、三塩化リン(PCl3)と反応させ、さらにN2O4で酸化させる方法(例えば、Inorganic Chemistry 25巻 3830頁(1986年)を参照)等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物において、Xはハロゲン原子であるが、該ハロゲン化合物の合成時の原材料の入手性、ハンドリング等の理由から、Xは、好ましくは塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくは塩素又は臭素であり、特に好ましくは臭素である。
【0040】
本発明のイオン液体の製造方法では、上記スキームで示したように、まず上記一般式(3)で表されるリン化合物とアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩及び酸化物から成る群から選択される少なくとも1種の無機塩基化合物とを接触及び/又は混合させる。
【0041】
本発明で使用する無機塩基化合物の具体例としては、
水酸化物:LiOH NaOH KOH
炭酸塩:Li2CO3 Na2CO3 K2CO3 Cs2CO3 CaCO3 BaCO3
炭酸水素塩:NaHCO3 KHCO3
酸化物:Li2O Na2O K2O CaO BaO
等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩であり、より好ましくはアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩であり、特に好ましくは水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)又は炭酸カリウム(K2CO3)である。
【0042】
無機塩基化合物の使用量は、通常、上記一般式(3)で表されるリン化合物1モルに対して、1モル〜3モルが好ましく、1モル〜2モルが特に好ましく、1モル〜1.5モルが最も好ましい。
【0043】
使用する溶媒は、反応物質に対して不活性な溶媒であればよく、本発明で使用される溶媒の例としては、水;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;N,N―ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。これらの溶媒は単独又は混合して使用できる。
【0044】
上記一般式(3)で表されるリン化合物と無機塩基化合物とを接触させるときの反応温度は、通常、−20℃〜100℃であるが、好ましくは−10℃〜80℃であり、より好ましくは0℃〜50℃であり、特に好ましくは、10℃〜30℃であるか、又は室温である。
【0045】
上記一般式(3)で表されるリン化合物と無機塩基化合物とを接触させるときの反応時間は、通常、0.01時間〜60時間であるが、好ましくは0.1時間〜48時間、より好ましくは0.2時間〜36時間、特に好ましくは0.5時間〜24時間である。
【0046】
次に、本発明のイオン液体の製造方法では、上記一般式(3)で表されるリン化合物と無機塩基化合物とを接触させた後、引き続き得られた混合物を上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物と接触させてよい。
【0047】
上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物の使用量は、上記一般式(3)で表されるリン化合物1モルに対して、0.90モル〜2モルが好ましく、0.95モル〜1.5モルがより好ましく、0.98モル〜1.2モルが特に好ましい。
【0048】
引き続き上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物と接触させるときの反応温度は、通常、−20℃〜100℃であるが、好ましくは−10℃〜80℃であり、より好ましくは0℃〜50℃であり、特に好ましくは、10℃〜30℃又は室温である。
【0049】
引き続き上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物と接触させるときの反応時間は、通常、0.01時間〜60時間であるが、好ましくは0.1時間〜48時間、より好ましくは0.2時間〜36時間、特に好ましくは0.5時間〜24時間である。
【0050】
反応終了後、例えば反応溶媒として水を使用する場合、水層とイオン液体層の2層に分離することがあるが、この場合、イオン液体層を分液すればよい。なお、目的物であるイオン液体を収率良く得るために、抽出溶媒としてジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等の有機溶媒を使用しても差し支えない。
【0051】
反応溶媒として有機溶媒を使用する場合、例えば、反応混合物中の溶媒を減圧留去後、残渣にジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等の有機溶媒と水を加えて有機層を分液する。一方、水層は該有機溶媒で抽出操作を2〜3回繰り返す。これらの有機層をまとめて有機溶媒を減圧留去すると、所望のイオン液体を得ることができる。
【0052】
なお、上記で得られたイオン液体は、従来既知の精製方法、例えば活性炭等の使用、又は水による洗浄等により、不純物を除去されるか、又は脱色されることができる。
【0053】
以上のように、本発明に係るイオン液体は、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)等の酸性ガス;又は該酸性ガスと水素(H2)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)、窒素(N2)等の非酸性ガスとの混合ガス;特に、二酸化炭素(CO2)を吸収する能力に優れているので工業的に極めて有用である。
【実施例】
【0054】
以下実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1H NMR(400MHz)、 19F NMR(376MHz)による分子構造解析
測定装置:JNM−GSX400G型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(1H NMR)、
フレオン−11(CFCl3)(19F NMR)
MALDI−TOF/MSによる構造解析
測定装置:AXIMA CFR plus(島津製作所)
レーザー:窒素レーザー(337nm)
検出器形式:リニアモード
イオン検出:Positive−ion mode
Negative−ion mode
積算回数:500回
マトリックス:ジスラノール
【0055】
[実施例1] イオン液体(P−1)の合成
【化12】
PO[OCH(CF3)2]3(34.8g、100mmol)に水(100ml)とアセトニトリル200mlを加え室温で攪拌後、水酸化ナトリウム(6.0g、150mmol)の水溶液(100ml)を室温で滴下した。次に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ブロミド(21.9g、100mmol)のアセトニトリル溶液(200ml)を室温で加え1時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを加えてクロロホルム層を分液した後、さらに水層はクロロホルムで2回抽出操作を行った。分液したクロロホルム溶液を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した後、クロロホルムを減圧留去すると、淡黄色のイオン液体(P−1)(25.5g、収率48%)が得られた。なお、上記で得られたイオン液体(P−1)に水を加えて室温で撹拌した後、静置すると均一に溶解することなく、2層に分離した。
1H NMR: 0.96ppm(t、3H)、1.35ppm(m、2H)、1.85ppm(m、2H)、3.97ppm(s、3H)、4.19ppm(q、2H)、5.17ppm(m、2H)、7.26ppm(s、1H)、7.32ppm(s、1H)、9.85ppm(s、1H)
19F NMR: − 74.96ppm(d、12F)
MALDI−TOF/MS:
【化13】
139.0(Positive−ion mode)
【化14】
396.7(Negative−ion mode)
【0056】
[実施例2] イオン液体(P−1)の合成
PO(OH)[OCH(CF3)2]2(15.2g、38.2mmol)にアセトニトリル200mlを加え、均一に溶解させた。この溶液に、K2CO3(5.28g、38.2mmol)の水溶液(100ml)を室温で加え、30分攪拌させた。次に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ブロミド(8.37g、38.2mmol)のアセトニトリル溶液(200ml)を室温で加え1時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを加えて、クロロホルム層を分液した後、さらに水層はクロロホルムで2回抽出操作を行った。分液したクロロホルム抽出液を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した後、クロロホルムを減圧留去すると、淡黄色のイオン液体(P−1)(17.5g、収率85%)が得られた。
【0057】
[実施例3] イオン液体(P−2)の合成
【化15】
PO[OCH(CF3)2]3(21.9g、62.9mmol)に水(100ml)とアセトニトリル200mlを加え、均一に溶解させた。攪拌した後、水酸化ナトリウム(5.7g、143mmol)を水100mlに溶解させた水酸化ナトリウム水溶液を室温で滴下した。次に、1,3−ジエチルイミダゾリウム ブロミド(12.9g、62.9mmol)のアセトニトリル溶液(200ml)を室温で加え、1時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを加え、クロロホルム層を分液した後、さらに水層はクロロホルムで2回抽出操作を行った。分液したクロロホルム溶液を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した後、クロロホルムを減圧留去すると、無色のイオン液体(P−2)(12.0g、収率37%)が得られた。
1H NMR: 1.56ppm(t、6H)、4.29ppm(q、4H)、5.19ppm(m、2H)、7.31ppm(s、2H)、10.05ppm(s、1H)、
19F NMR: − 76.94ppm(s、12F)
MALDI−TOF/MS:
【化16】
124.9(Positive−ion mode)
【化17】
397.0(Negative−ion mode)
【0058】
[実施例4]
実施例1〜3で得られたイオン液体(P−1)〜(P−2)を各々の圧力容器に入れ、40℃に昇温後、所定圧(0.5〜2.0MPa)のCO2を導入し、2時間撹拌後、圧力変化を測定し、初期圧力と2時間撹拌後の圧力との差圧からイオン液体の単位体積(L)当たりのCO2吸収量(mol)を測定した。表1に1.25MPaにおけるCO2の吸収量(mol)を示した。
【0059】
【表1】
【0060】
[比較例1]
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルホンイミド(C−1)(関東化学株式会社製)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(C−2)(関東化学株式会社製)を各々の圧力容器に入れ、実施例4と同様の方法でイオン液体の単位体積(L)当たりのCO2吸収量(mol)を測定した。表2に1.25MPaにおけるCO2の吸収量を示した。
【化18】
【0061】
【表2】
【0062】
本発明のイオン液体(P−1)〜(P−2)は、既存のイオン液体(C−1)〜(C−2)と比べて、CO2の吸収量が高いことが分かった。
【0063】
[比較例2]
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ジエチルホスフェート(C−3)(関東化学株式会社製)に水を加えて撹拌後、静置したが均一に溶解したままであった。
【化19】
【0064】
[比較例3]
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ジブチルホスフェート(C−4)(シグマアルドリッチ社製)に水を加えて撹拌後、静置したが均一に溶解したままであった。
【化20】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のイオン液体は、CO2等の酸性ガスの吸収能力が高いため、酸性ガスを吸収するか、又は酸性ガスと非酸性ガスとの混合ガスから酸性ガスを選択的に分離・精製するための吸収剤として利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)等の酸性ガスを物理的に吸収させるか,又は酸性ガスと水素(H2)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)、窒素(N2)等の非酸性ガスとが含まれる混合ガスから酸性ガスを物理的に吸収させることにより、酸性ガスを貯蔵・分離・精製するのに有用なイオン液体、そのイオン液体の使用方法及びそのイオン液体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化が問題として取り上げられ、温室効果ガスの1つであるCO2の排出量削減の動きが活発になっている。特に火力発電所、セメントプラント、鉄鋼プラント、化学プラント等の排出ガス、又は産出直後の天然ガスにCO2が含まれるため、これらのガスからCO2を選択的に分離回収して、CO2を地中へ貯留する方法、若しくはCO2を固定化する方法等が検討されている。
【0003】
従来、排出ガス等からCO2を分離回収する方法として、化学吸収法、物理吸収法、膜分離法、吸着分離法、深冷分離法等が知られている。このうち、物理吸収法は、排出ガスをメタノール、又はポリエチレングリコールジメチルエーテル類等の吸収液と接触させて吸収させた後、減圧若しくは大気圧雰囲気下でCO2を放散させる方法であり、吸収液の再生エネルギーコストが低く抑えられる特徴を有する。しかしながら、メタノール及びポリエチレングリコールジメチルエーテル類等の吸収液は蒸気圧を有するため、吸収液の蒸発損失が起こる。この問題を回避するため、吸収液を冷却する設備が必要となる(例えば非特許文献1参照)。また、これらの吸収液と水とは相溶性があるため、排出ガス中に水分が存在すると吸収液に水分が溶解し、CO2の吸収能力が低下することが知られている。
【0004】
上記課題を解決する新たな物理吸収剤としてイオン液体が提案されている(例えば特許文献1〜4、並びに非特許文献1及び2を参照)。イオン液体は、蒸気圧がほぼゼロであるため、蒸発損失がほとんど無く、吸収液を冷却する設備が不要となること、難燃性を有すること、さらにCO2を吸収することが知られている。しかしながら、これまでに開発されてきたイオン液体は、CO2の吸収能力が未だ不十分であったため、CO2の吸収能力が高い新たなイオン液体の出現が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6579343号明細書
【特許文献2】特開2006−305544号公報
【特許文献3】特開2009−106909号公報
【特許文献4】特開2008−296211号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(財)地球環境産業技術研究機構編集「図解 CO2貯留テクノロジー」第3章CO2回収技術材料開発の動向 工業調査会(2006年)
【非特許文献2】「CO2の分離・回収と貯留・隔離技術」第6講イオン液体物理吸収法によるCO2の分離・回収技術 NTS(2009年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記問題点に鑑み、CO2等の酸性ガスの吸収能力が高く、且つ水に溶解し難いイオン液体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはCO2等の酸性ガスの吸収能力が高いイオン液体を見出すため、イオン液体の分子構造について抜本的な見直しを行い鋭意検討した。その結果、カチオン部位及びアニオン部位を含むイオン液体であって、アニオン部位がリン原子を有するホスフェートであり、且つホスフェート中の2つの置換基がフッ素原子で置換された炭化水素基を有するイオン液体はCO2等の酸性ガスの吸収能力が高く、水に溶解し難いことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 下記一般式(1):
【化1】
{式中、R1及びR3は、炭素数1〜20個の炭化水素基であり、そしてR2、R4及びR5は、水素原子又は炭素数1〜20個の炭化水素基である。}で表されるイミダゾリウム、及び
下記一般式(2):
【化2】
{式中、R’1及びR’2は、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるホスフェート
を含むイオン液体。
【0010】
[2] [1]に記載のイオン液体に、酸性ガス又は該酸性ガスと非酸性ガスとの混合ガスを接触させることにより、該酸性ガスを該イオン液体に吸収させる方法。
【0011】
[3] 前記酸性ガスは二酸化炭素である、[2]に記載の方法。
【0012】
[4] 以下の工程:
下記一般式(3):
【化3】
{式中、R’1及びR’2は、前記一般式(2)で規定された通りであり、そしてR’3は、水素原子又はフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるリン化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩及び酸化物から成る群から選択される無機塩基化合物とを接触させて、混合物を得る工程、及び
該混合物と下記一般式(4):
【化4】
{式中、R1〜R5は、前記一般式(1)で規定された通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}で表されるハロゲン化合物とを接触させる工程
を含む[1]に記載のイオン液体の製造方法。
【0013】
[5] 前記無機塩基化合物はアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩である、[4]に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明のイオン液体に、二酸化炭素(CO2)等の酸性ガス、又は酸性ガスと水素(H2)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)、窒素(N2)等の非酸性ガスとの混合ガスを接触させると、前記イオン液体に前記酸性ガスを効率的に吸収させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に記述する。
本発明のイオン液体は、カチオン部位及びアニオン部位を含み、そして前記カチオン部位は下記一般式(1):
【化5】
{式中、R1及びR3は、炭素数1〜20個の炭化水素基であり、そしてR2、R4及びR5は、水素原子、又は炭素数1〜20個の炭化水素基である。}
で表されるイミダゾリウムであり、前記アニオン部位は下記一般式(2):
【化6】
{式中、R’1及びR’2は、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}
で表されるホスフェートである。
【0016】
<イミダゾリウム>
上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムのR1〜R5において、炭素数1〜20個の炭化水素基の「炭化水素基」とは、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族炭化水素基を表す。
【0017】
飽和炭化水素基の具体例としては:
−CH3
−CH2CH3
−(CH2)2CH3
−CH(CH3)2
−(CH2)3CH3
−CH2CH(CH3)2
−C(CH3)3
−(CH2)4CH3
−(CH2)5CH3
−(CH2)6CH3
−(CH2)7CH3
−(CH2)8CH3
−(CH2)9CH3
−(CH2)10CH3
−(CH2)11CH3
−(CH2)12CH3
−(CH2)13CH3
−(CH2)14CH3
−(CH2)15CH3
−(CH2)16CH3
−(CH2)17CH3
−(CH2)18CH3
−(CH2)19CH3
が挙げられる。好ましくは、飽和炭化水素基は、−CH3、−CH2CH3、又は−(CH2)3CH3である。
【0018】
不飽和炭化水素基の具体例としては:
−CH2CH=CH2
−(CH2)2CH=CH2
−(CH2)3CH=CH2
−(CH2)4CH=CH2
−(CH2)5CH=CH2
−(CH2)6CH=CH2
−(CH2)7CH=CH2
−(CH2)8CH=CH2
−(CH2)9CH=CH2
−(CH2)10CH=CH2
−(CH2)11CH=CH2
−(CH2)12CH=CH2
−(CH2)13CH=CH2
−(CH2)14CH=CH2
−(CH2)15CH=CH2
−(CH2)16CH=CH2
−(CH2)17CH=CH2
−(CH2)18CH=CH2
が挙げられる。
【0019】
芳香族炭化水素基の具体例としては:
【化7】
が挙げられる。
【0020】
<ホスフェート>
上記一般式(2)で表されるホスフェートのR’1及びR’2は、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。ここで、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基の「フッ素原子で置換された炭化水素基」とは:
・フッ素原子で置換された飽和炭化水素基(下記一般式(5))
−CmFaH2m+1−a (5)
{式中、mは、2〜20の整数であり、そしてaは、1〜40の整数である。}、又は
・フッ素原子で置換された芳香族炭化水素基
をいう。
【0021】
フッ素原子で置換された飽和炭化水素基の具体例としては:
−CH2CF3
−CH2CHF2
−CH2CH2F
−CHFCF3
−CHFCHF2
−CHFCH2F
−(CH2)2CF3
−CH2CF2CF3
−CH(CF3)2
−(CH2)3CF3
−(CH2)2(CF2)2F
−CH2(CF2)3F
【0022】
−CH2CH(CF3)2
−(CH2)4CF3
−(CH2)3(CF2)2F
−(CH2)2(CF2)3F
−CH2(CF2)4F
−(CH2)5CF3
−(CH2)4(CF2)2F
−(CH2)3(CF2)3F
−(CH2)2(CF2)4F
−CH2(CF2)5F
−(CH2)3(CF2)4F
−(CH2)2(CF2)5F
−CH2(CF2)6F
−(CH2)3(CF2)5F
−(CH2)2(CF2)6F
−CH2(CF2)7F
【0023】
−(CH2)3(CF2)6F
−(CH2)2(CF2)7F
−CH2(CF2)8F
−(CH2)3(CF2)7F
−(CH2)2(CF2)8F
−CH2(CF2)9F
−(CH2)3(CF2)8F
−(CH2)2(CF2)9F
【0024】
−CH2(CF2)10F
−(CH2)3(CF2)9F
−(CH2)2(CF2)10F
−CH2(CF2)11F
−(CH2)3(CF2)10F
−(CH2)2(CF2)11F
−CH2(CF2)12F
−(CH2)3(CF2)11F
−(CH2)2(CF2)12F
−CH2(CF2)13F
−(CH2)3(CF2)12F
−(CH2)2(CF2)13F
【0025】
−CH2(CF2)14F
−(CH2)3(CF2)13F
−(CH2)2(CF2)14F
−CH2(CF2)15F
−(CH2)3(CF2)14F
−(CH2)2(CF2)15F
−CH2(CF2)16F
−(CH2)3(CF2)15F
−(CH2)2(CF2)16F
−CH2(CF2)17F
−(CH2)3(CF2)16F
−(CH2)2(CF2)17F
−CH2(CF2)18F
−(CH2)3(CF2)17F
−(CH2)2(CF2)18F
−CH2(CF2)19F
が挙げられる。好ましくは、フッ素原子で置換された飽和炭化水素基は、−CH(CF3)2である。
【0026】
フッ素原子で置換された芳香族炭化水素基の具体例としては:
【化8】
が挙げられる。
【0027】
<イオン液体>
カチオン部位が上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムであり、且つアニオン部位が上記一般式(2)で表されるホスフェートであるイオン液体は、後述するように一般式(3)で表されるリン化合物を無機塩基化合物と接触・混合させた後、一般式(4)で表されるハロゲン化合物と接触・混合する操作により得られる。一般式(3)で表されるリン化合物及び一般式(4)で表されるハロゲン化合物の入手性、合成時のハンドリング等の理由から、上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムのR1〜R5としては、好ましくは、R1及びR3は炭素数1〜10個の炭化水素基であり、且つR2、R4及びR5は水素原子又は炭素数1〜10個の炭化水素基であり、より好ましくは、R1及びR3は炭素数1〜5個の炭化水素基であり、且つR2、R4及びR5は水素原子又は炭素数1〜5個の炭化水素基であり、特に好ましくは、R1及びR3は炭素数1〜4個の炭化水素基であり、且つR2、R4及びR5は水素原子である。
【0028】
一方、上記一般式(2)で表されるホスフェートのR’1及びR’2は、好ましくはフッ素原子で置換された炭素数2〜10個の炭化水素基であり、より好ましくはフッ素原子で置換された炭素数2〜6個の炭化水素基であり、特に好ましくはフッ素原子で置換された炭素数2〜4個の炭化水素基である。
【0029】
本発明のイオン液体に、酸性ガス(例えば、二酸化炭素など)、又は酸性ガスと非酸性ガスとの混合ガスを接触させることにより、酸性ガスを本発明のイオン液体に吸収させることができる。本発明者らは、二酸化炭素(CO2)の吸収能力が高いイオン液体を見出すため、様々な分子構造を有するイオン液体を合成した後、イオン液体の単位体積当たりのCO2吸収量を測定した。具体的には、合成したイオン液体を圧力容器に入れ40℃に昇温した後、所定圧(0.5〜2.0MPa)のCO2とイオン液体とを接触させ、2時間攪拌後、圧力変化を測定し、初期圧力と2時間攪拌後の圧力との差圧からイオン液体の単位体積(L)当たりのCO2吸収量(mol)を測定・評価した(実施例4を参照)。
【0030】
その結果、カチオン部位がイミダゾリウムであり、且つアニオン部位がフッ素原子で置換された炭化水素基を有するホスフェートであるイオン液体が、従来のアニオン部位にスルホニルイミドを有するイオン液体(例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルホニルイミド(比較例1のイオン液体(C−1)を参照))、又はヘキサフルオロホスフェートを有するイオン液体(例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(比較例1のイオン液体(C−2)を参照))と比べて、CO2の吸収能力が高いことを見出した。
【0031】
本発明のイオン液体が、高いCO2吸収能力を有する理由として:
1) ホスフェートが嵩高いため、電荷が非局在化し、静電相互作用又はファンデルワールス力によりCO2を引き付ける力が強くなり、CO2の吸収能力が高くなった;及び
2) ホスフェートがフッ素原子で置換された炭化水素基を有するため、CO2とフッ素原子との静電相互作用が高くなり、CO2の吸収能力が高められた
などが考えられる。
【0032】
なお、比較例2及び比較例3に示したように、ホスフェートのR’1及びR’2がエチル基(比較例2のイオン液体(C−3)を参照)、あるいはブチル基(比較例3のイオン液体(C−4)を参照)等の炭化水素基である場合、イオン液体は水に均一に溶解した。
【0033】
一方、カチオン部位がイミダゾリウムであり、アニオン部位がフッ素原子で置換された炭化水素基を有するホスフェートから構成される本発明のイオン液体は、水に溶解し難いイオン液体であることが分かった。
【0034】
カチオン部位が上記一般式(1)で表されるイミダゾリウムであり、且つアニオン部位が上記一般式(2)で表されるホスフェートである本発明のイオン液体は、以下の工程:
下記一般式(3):
【化9】
{式中、R’1及びR’2は、上記一般式(2)で規定された通りであり、そしてR’3は、水素原子、又はフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるリン化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩から成る群から選択される無機塩基化合物とを接触及び/又は混合させて、混合物を得る工程、及び
前記混合物と下記一般式(4):
【化10】
{式中、R1〜R5は、上記一般式(1)で規定された通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}で表されるハロゲン化合物と接触及び/又は混合させる工程
を含む製造方法により得られることができる。
【0035】
上記接触及び/又は混合工程は、各成分同士を反応させるか、各成分の水溶液若しくは溶液同士を混ぜ合わせるか、又は固体、粉末などの各成分同士を接触させることにより行なわれることができる。
【0036】
本発明のイオン液体の製造方法は、下記スキーム:
【化11】
{本スキーム中、Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の原子を表す。}
で表される。
【0037】
上記一般式(3)で表されるリン化合物のR’3は、水素原子、又はフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。ここで、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基の「フッ素原子で置換された炭化水素基」とは、上述した上記一般式(2)で表されるホスフェートのR’1及びR’2と同じである。
【0038】
上記一般式(3)で表されるリン化合物の製造方法は、特に制限されるものでないが、例えば、水酸基を有するフッ素原子含有化合物(RfOH)を五塩化リン(PCl5)若しくはオキシ塩化リン(POCl3)と反応させる方法(例えば、Journal of Fluorine Chemistry 106巻 153頁 (2000年)参照)、又は水酸基を有するフッ素原子含有化合物(RfOH)をブチルリチウムでリチウム塩(RfOLi)にした後、三塩化リン(PCl3)と反応させ、さらにN2O4で酸化させる方法(例えば、Inorganic Chemistry 25巻 3830頁(1986年)を参照)等が挙げられる。
【0039】
上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物において、Xはハロゲン原子であるが、該ハロゲン化合物の合成時の原材料の入手性、ハンドリング等の理由から、Xは、好ましくは塩素、臭素又はヨウ素であり、より好ましくは塩素又は臭素であり、特に好ましくは臭素である。
【0040】
本発明のイオン液体の製造方法では、上記スキームで示したように、まず上記一般式(3)で表されるリン化合物とアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩及び酸化物から成る群から選択される少なくとも1種の無機塩基化合物とを接触及び/又は混合させる。
【0041】
本発明で使用する無機塩基化合物の具体例としては、
水酸化物:LiOH NaOH KOH
炭酸塩:Li2CO3 Na2CO3 K2CO3 Cs2CO3 CaCO3 BaCO3
炭酸水素塩:NaHCO3 KHCO3
酸化物:Li2O Na2O K2O CaO BaO
等が挙げられるが、好ましくはアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩又は炭酸水素塩であり、より好ましくはアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩であり、特に好ましくは水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)又は炭酸カリウム(K2CO3)である。
【0042】
無機塩基化合物の使用量は、通常、上記一般式(3)で表されるリン化合物1モルに対して、1モル〜3モルが好ましく、1モル〜2モルが特に好ましく、1モル〜1.5モルが最も好ましい。
【0043】
使用する溶媒は、反応物質に対して不活性な溶媒であればよく、本発明で使用される溶媒の例としては、水;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒;N,N―ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。これらの溶媒は単独又は混合して使用できる。
【0044】
上記一般式(3)で表されるリン化合物と無機塩基化合物とを接触させるときの反応温度は、通常、−20℃〜100℃であるが、好ましくは−10℃〜80℃であり、より好ましくは0℃〜50℃であり、特に好ましくは、10℃〜30℃であるか、又は室温である。
【0045】
上記一般式(3)で表されるリン化合物と無機塩基化合物とを接触させるときの反応時間は、通常、0.01時間〜60時間であるが、好ましくは0.1時間〜48時間、より好ましくは0.2時間〜36時間、特に好ましくは0.5時間〜24時間である。
【0046】
次に、本発明のイオン液体の製造方法では、上記一般式(3)で表されるリン化合物と無機塩基化合物とを接触させた後、引き続き得られた混合物を上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物と接触させてよい。
【0047】
上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物の使用量は、上記一般式(3)で表されるリン化合物1モルに対して、0.90モル〜2モルが好ましく、0.95モル〜1.5モルがより好ましく、0.98モル〜1.2モルが特に好ましい。
【0048】
引き続き上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物と接触させるときの反応温度は、通常、−20℃〜100℃であるが、好ましくは−10℃〜80℃であり、より好ましくは0℃〜50℃であり、特に好ましくは、10℃〜30℃又は室温である。
【0049】
引き続き上記一般式(4)で表されるハロゲン化合物と接触させるときの反応時間は、通常、0.01時間〜60時間であるが、好ましくは0.1時間〜48時間、より好ましくは0.2時間〜36時間、特に好ましくは0.5時間〜24時間である。
【0050】
反応終了後、例えば反応溶媒として水を使用する場合、水層とイオン液体層の2層に分離することがあるが、この場合、イオン液体層を分液すればよい。なお、目的物であるイオン液体を収率良く得るために、抽出溶媒としてジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等の有機溶媒を使用しても差し支えない。
【0051】
反応溶媒として有機溶媒を使用する場合、例えば、反応混合物中の溶媒を減圧留去後、残渣にジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル等の有機溶媒と水を加えて有機層を分液する。一方、水層は該有機溶媒で抽出操作を2〜3回繰り返す。これらの有機層をまとめて有機溶媒を減圧留去すると、所望のイオン液体を得ることができる。
【0052】
なお、上記で得られたイオン液体は、従来既知の精製方法、例えば活性炭等の使用、又は水による洗浄等により、不純物を除去されるか、又は脱色されることができる。
【0053】
以上のように、本発明に係るイオン液体は、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)等の酸性ガス;又は該酸性ガスと水素(H2)、メタン(CH4)、一酸化炭素(CO)、酸素(O2)、窒素(N2)等の非酸性ガスとの混合ガス;特に、二酸化炭素(CO2)を吸収する能力に優れているので工業的に極めて有用である。
【実施例】
【0054】
以下実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1H NMR(400MHz)、 19F NMR(376MHz)による分子構造解析
測定装置:JNM−GSX400G型核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)
溶媒:重クロロホルム
基準物質:テトラメチルシラン(1H NMR)、
フレオン−11(CFCl3)(19F NMR)
MALDI−TOF/MSによる構造解析
測定装置:AXIMA CFR plus(島津製作所)
レーザー:窒素レーザー(337nm)
検出器形式:リニアモード
イオン検出:Positive−ion mode
Negative−ion mode
積算回数:500回
マトリックス:ジスラノール
【0055】
[実施例1] イオン液体(P−1)の合成
【化12】
PO[OCH(CF3)2]3(34.8g、100mmol)に水(100ml)とアセトニトリル200mlを加え室温で攪拌後、水酸化ナトリウム(6.0g、150mmol)の水溶液(100ml)を室温で滴下した。次に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ブロミド(21.9g、100mmol)のアセトニトリル溶液(200ml)を室温で加え1時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを加えてクロロホルム層を分液した後、さらに水層はクロロホルムで2回抽出操作を行った。分液したクロロホルム溶液を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した後、クロロホルムを減圧留去すると、淡黄色のイオン液体(P−1)(25.5g、収率48%)が得られた。なお、上記で得られたイオン液体(P−1)に水を加えて室温で撹拌した後、静置すると均一に溶解することなく、2層に分離した。
1H NMR: 0.96ppm(t、3H)、1.35ppm(m、2H)、1.85ppm(m、2H)、3.97ppm(s、3H)、4.19ppm(q、2H)、5.17ppm(m、2H)、7.26ppm(s、1H)、7.32ppm(s、1H)、9.85ppm(s、1H)
19F NMR: − 74.96ppm(d、12F)
MALDI−TOF/MS:
【化13】
139.0(Positive−ion mode)
【化14】
396.7(Negative−ion mode)
【0056】
[実施例2] イオン液体(P−1)の合成
PO(OH)[OCH(CF3)2]2(15.2g、38.2mmol)にアセトニトリル200mlを加え、均一に溶解させた。この溶液に、K2CO3(5.28g、38.2mmol)の水溶液(100ml)を室温で加え、30分攪拌させた。次に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ブロミド(8.37g、38.2mmol)のアセトニトリル溶液(200ml)を室温で加え1時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを加えて、クロロホルム層を分液した後、さらに水層はクロロホルムで2回抽出操作を行った。分液したクロロホルム抽出液を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した後、クロロホルムを減圧留去すると、淡黄色のイオン液体(P−1)(17.5g、収率85%)が得られた。
【0057】
[実施例3] イオン液体(P−2)の合成
【化15】
PO[OCH(CF3)2]3(21.9g、62.9mmol)に水(100ml)とアセトニトリル200mlを加え、均一に溶解させた。攪拌した後、水酸化ナトリウム(5.7g、143mmol)を水100mlに溶解させた水酸化ナトリウム水溶液を室温で滴下した。次に、1,3−ジエチルイミダゾリウム ブロミド(12.9g、62.9mmol)のアセトニトリル溶液(200ml)を室温で加え、1時間撹拌した。反応混合物から溶媒を減圧留去した後、クロロホルムを加え、クロロホルム層を分液した後、さらに水層はクロロホルムで2回抽出操作を行った。分液したクロロホルム溶液を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥した後、クロロホルムを減圧留去すると、無色のイオン液体(P−2)(12.0g、収率37%)が得られた。
1H NMR: 1.56ppm(t、6H)、4.29ppm(q、4H)、5.19ppm(m、2H)、7.31ppm(s、2H)、10.05ppm(s、1H)、
19F NMR: − 76.94ppm(s、12F)
MALDI−TOF/MS:
【化16】
124.9(Positive−ion mode)
【化17】
397.0(Negative−ion mode)
【0058】
[実施例4]
実施例1〜3で得られたイオン液体(P−1)〜(P−2)を各々の圧力容器に入れ、40℃に昇温後、所定圧(0.5〜2.0MPa)のCO2を導入し、2時間撹拌後、圧力変化を測定し、初期圧力と2時間撹拌後の圧力との差圧からイオン液体の単位体積(L)当たりのCO2吸収量(mol)を測定した。表1に1.25MPaにおけるCO2の吸収量(mol)を示した。
【0059】
【表1】
【0060】
[比較例1]
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ビストリフルオロメタンスルホンイミド(C−1)(関東化学株式会社製)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート(C−2)(関東化学株式会社製)を各々の圧力容器に入れ、実施例4と同様の方法でイオン液体の単位体積(L)当たりのCO2吸収量(mol)を測定した。表2に1.25MPaにおけるCO2の吸収量を示した。
【化18】
【0061】
【表2】
【0062】
本発明のイオン液体(P−1)〜(P−2)は、既存のイオン液体(C−1)〜(C−2)と比べて、CO2の吸収量が高いことが分かった。
【0063】
[比較例2]
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ジエチルホスフェート(C−3)(関東化学株式会社製)に水を加えて撹拌後、静置したが均一に溶解したままであった。
【化19】
【0064】
[比較例3]
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ジブチルホスフェート(C−4)(シグマアルドリッチ社製)に水を加えて撹拌後、静置したが均一に溶解したままであった。
【化20】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明のイオン液体は、CO2等の酸性ガスの吸収能力が高いため、酸性ガスを吸収するか、又は酸性ガスと非酸性ガスとの混合ガスから酸性ガスを選択的に分離・精製するための吸収剤として利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
{式中、R1及びR3は、炭素数1〜20個の炭化水素基であり、そしてR2、R4及びR5は、水素原子又は炭素数1〜20個の炭化水素基である。}で表されるイミダゾリウム、及び
下記一般式(2):
【化2】
{式中、R’1及びR’2は、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるホスフェート
を含むイオン液体。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン液体に、酸性ガス又は該酸性ガスと非酸性ガスとの混合ガスを接触させることにより、該酸性ガスを該イオン液体に吸収させる方法。
【請求項3】
前記酸性ガスは二酸化炭素である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
以下の工程:
下記一般式(3):
【化3】
{式中、R’1及びR’2は、前記一般式(2)で規定された通りであり、そしてR’3は、水素原子又はフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるリン化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩及び酸化物から成る群から選択される無機塩基化合物とを接触させて、混合物を得る工程、及び
該混合物と下記一般式(4):
【化4】
{式中、R1〜R5は、前記一般式(1)で規定された通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}で表されるハロゲン化合物とを接触させる工程
を含む請求項1に記載のイオン液体の製造方法。
【請求項5】
前記無機塩基化合物はアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
{式中、R1及びR3は、炭素数1〜20個の炭化水素基であり、そしてR2、R4及びR5は、水素原子又は炭素数1〜20個の炭化水素基である。}で表されるイミダゾリウム、及び
下記一般式(2):
【化2】
{式中、R’1及びR’2は、フッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるホスフェート
を含むイオン液体。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン液体に、酸性ガス又は該酸性ガスと非酸性ガスとの混合ガスを接触させることにより、該酸性ガスを該イオン液体に吸収させる方法。
【請求項3】
前記酸性ガスは二酸化炭素である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
以下の工程:
下記一般式(3):
【化3】
{式中、R’1及びR’2は、前記一般式(2)で規定された通りであり、そしてR’3は、水素原子又はフッ素原子で置換された炭素数2〜20個の炭化水素基である。}で表されるリン化合物と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩及び酸化物から成る群から選択される無機塩基化合物とを接触させて、混合物を得る工程、及び
該混合物と下記一般式(4):
【化4】
{式中、R1〜R5は、前記一般式(1)で規定された通りであり、そしてXは、ハロゲン原子である。}で表されるハロゲン化合物とを接触させる工程
を含む請求項1に記載のイオン液体の製造方法。
【請求項5】
前記無機塩基化合物はアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩である、請求項4に記載の方法。
【公開番号】特開2012−219018(P2012−219018A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82860(P2011−82860)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
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