説明

リールシート及び釣竿

【課題】釣人が違和感なく把持することができ、且つリールの着脱が容易なリールシートの提供。
【解決手段】このリールシート20は、シート本体24と、固定フード21と、矢印30の方向に沿ってスライドする可動フード22と、可動フード22のスライドを規制するロック機構25とを備える。可動フード22は、操作レバー42を有する。操作レバー42は、フード本体40に滑らかに連続するレバー本体55及び延設部60を有する。延設部60は、リールの脚27側へ延び、当該脚27に滑らかに連続するように湾曲形成されている。延設部60は、一対の摘み部63を有する。摘み部63は、釣人が指で容易に把持することができるように半円形に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣用リールの脚を固定するリールシートの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
魚釣りでは、釣用リール(以下、単に「リール」と称される。)が使用されることがある。リールは、長尺の釣糸をスプールに巻き取って保持することができると共に、釣人の必要に応じて釣糸を放出することができる。リールは、一般に釣竿に装着され、上記スプールが設けられた駆動系本体及び釣竿に取り付けられる脚部を備えている。釣竿は、一般にリールを固定するリールシートを備えており、リールシートが上記脚部を保持するようになっている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
図9は、従来のリールシートの構造を示す斜視図である。同図が示すように、リールシート101は、シート本体102並びに固定フード103及び可動フード104を備えている。シート本体102は、リールの脚部105が載置される載置面106を備えている。可動フード104は、固定フード103に対して矢印107の方向に沿ってスライドすることができるようになっている。上記脚部105が上記載置面106に載置された状態で可動フード104が固定フード103側にスライドすることによって、上記脚部105は、固定フード103及び可動フード104によって挟み込まれる。なお、可動フード104はロック機構108を備えており、釣人は、上記載置面106上の所望の位置で可動フード104を固定することができる。このロック機構108は、矢印109の方向に沿って起伏動作するロックレバー110を備えている。ロックレバー110が起立することによって可動フード104のロックが解除され、可動フード104は矢印107の方向に自由にスライドすることができる。可動フード104及び固定フード103が上記脚部105を挟持した状態でロックレバー110が倒伏されることにより(同図の状態)可動フード104が固定される。これにより、リールが釣竿に装着される。
【0004】
【特許文献1】特開2006−25687号公報
【特許文献2】実開昭64−28868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
可動フード104は、係合片113が形成されたフード本体111と、このフード本体111の先端に設けられた樹脂パッド112と、上記ロックレバー110とを備えている。他方、上記シート本体102はスライド溝114を備えている。同図が示すように、このスライド溝114に上記係合片113が嵌め込まれており、これにより、フード本体111が矢印107の方向にスライドする。樹脂パッド112は、リールの脚部105に当接し、当該脚部105を確実に固定する。ロックレバー110は、倒伏されることにより(同図が示す状態)、フード本体111及び樹脂パッド112の一部を覆うように配置される。
【0006】
このとき、ロックレバー110は、フード本体111から外側に張り出し、且つ樹脂パッド112との間に大きな段差部115を形成する。釣人は、実釣時にリールシート101をリールの脚部105と共に把持することから、指にロックレバー110の張出部分や上記段差部115が接触して違和感がある。特にターゲットとなる魚が大型の場合は、ヒットしたときに釣人はリールシート101を強く握る必要があり、指に痛みを感じる場合もあった。この問題を解決するために、可動フード104のフラッシュサーフェイス処理が効果的な手段である(特許文献2参照)。しかしながら、可動フード104にフラッシュサーフェイス処理が施されると、ロックレバー110の操作性が低下し、リールの着脱が困難になるという第2の問題が生じる。この第2の問題は、釣人にとって実用上深刻なものではないが、ロックレバー110は、より高い操作性が求められている。
【0007】
本発明はかかる背景のもとになされたものであって、その目的は、リールの着脱が容易であり、しかも、釣人が違和感なく把持することができるリールシート及びこれを備えた釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的が達成されるため、本発明に係るリールシートは、以下の構成を備える。
【0009】
(1) 請求項1に係る発明の構成及び作用効果
【0010】
請求項1に係るリールシートは、固定フードと、可動フードとを備える。可動フードは、起伏操作される操作レバーを有する。操作レバーが起立されることによって可動フードが固定フードに対して移動可能となり、操作レバーが倒伏されることによって可動フードが固定フードに対して移動不能となる。上記操作レバーは、レバー本体及び延設部を有する。レバー本体は、倒伏されたときに可動フードの上面を覆い且つ可動フードの側面に滑らかに連続するように形成される。延設部は、このレバー本体の先端部に設けられ、固定フード側へ延びている。この延設部は、固定フード及び可動フードによって挟持固定された釣用リールの脚に滑らかに連続するように形成されている。この延設部の先端に上記側面に沿って延びる摘み部が形成されている。
【0011】
この構成では、釣用リールは、次の要領でリールシートに固定される。
【0012】
釣用リールの脚がリールシートに載置され、当該脚の一方側が固定フードに収容される。操作レバーが起立されると、可動フードが固定フードに対して移動可能となる。可動フードが固定フード側へスライドされ、上記脚の他方側が可動フードに収容される。この状態で、釣用リールの脚は、固定フード及び可動フードによって挟み込まれる。そして、操作レバーが倒伏されると、可動フードが固定フードに対して移動不能となり、釣用リールの脚が可動フード及び固定フードによって挟持固定される。
【0013】
操作レバーが倒伏されると、レバー本体が可動フードの上面を覆う。しかも、レバー本体は可動フードの側面に滑らかに連続し、両者間に段差が形成されることがない。さらに、レバー本体に設けられた延設部は、上記釣用リールの脚に滑らかに連続する。したがって、操作レバーの外縁は、可動フードの外縁及び上記釣用リールの脚(少なくとも当該脚の他方側)との間に大きな隙間や段差等を形成することなく滑らかに連続することになる。また、上記延設部に摘み部が設けられているから、釣人は、この摘み部を摘むことによって容易に操作レバーを倒伏させ、起立させることができる。しかも、この摘み部は、操作レバーの先端部に設けられているから、釣人にとって操作レバーの起伏動作が容易である。加えて、この摘み部は、可動フードの側面に沿って延びているから、摘み部が設けられることによって操作レバーの外縁と可動フードの外縁との間に段差や突起が形成されることもない。
【0014】
このように、操作レバーの外縁と可動フードの外縁及び釣用リールの脚との間に段差や突起が形成されることがないので、釣人は、釣用リールが装着されたリールシートを違和感なく把持することができる。その結果、実釣において釣竿を長時間にわたって快適に操作することができ、仮に大型の魚が掛かった場合であっても、手や指に痛みを感じることもない。しかも、操作レバーに摘み部が設けられているから、操作レバーを簡単に操作して可動フードをスライドさせることができる。その結果、釣人は、釣用リールの着脱を容易に行うことができる。
【0015】
(2) 請求項2に係る発明の構成及び作用
【0016】
請求項2に係るリールシートでは、上記摘み部は、レバー本体の両側に対称に配置されている。
【0017】
この構成によれば、釣人は、二本の指(例えば親指と人差し指)で摘み部を把持することができる。したがって、釣人は、きわめて容易に摘み部を摘んで操作レバーを操作することができるという利点がある。
【0018】
(3) 請求項3に係る発明の構成及び作用
【0019】
請求項3に係るリールシートでは、上記摘み部は、上記載置面側に凸となる半円形に形成されている。
【0020】
この構成では、摘み部は釣人にとって非常に把持し易いものであり、しかも簡単に且つ安価に構成されるという利点がある。
【0021】
(4) 請求項4に係る発明の構成及び作用
【0022】
請求項4に係るリールシートでは、上記摘み部は、可動フードとの間に指が掛かる隙間が形成されるように切欠部を備えている。
【0023】
この構成では、釣人が摘み部を摘んだときに、指が摘み部と可動フードとの間に形成された隙間に食い込むようにして引っ掛かる。したがって、釣人は、操作レバーの起立操作を一層容易に行うことができる。
【0024】
(5) 請求項5に係る発明の構成及び作用
【0025】
請求項5に係るリールシートでは、釣用リールの脚が載置される載置面が設けられており、操作レバーが倒伏された状態で、上記載置面に対する上記摘み部の下縁の高さは、上記載置面に対する上記可動フードの下縁の高さと同一に設定されている。
【0026】
この構成では、釣用リールは載置面に確実に安定的に載置されるので、固定フード及び可動フードによって一層確実に固定される。また、操作レバーが倒伏されたときは、上記摘み部の下縁と可動フードの下縁とが同じ高さとなるので、操作レバーと可動フードとがより滑らかに連続する。したがって、釣人は、より一層リールシート及び釣用リールを握り易くなる。
【0027】
(6) 請求項6に係る発明の構成
【0028】
請求項6に係る釣竿は、上記リールシートが釣竿本体に設けられることによって構成され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0030】
<1.全体構成と特徴点>
【0031】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿の正面図である。
【0032】
この釣竿10は、いわゆるインナーガイドタイプの振出式釣竿である。釣竿10は、釣竿本体11及びグリップ12を備えている。グリップ12は、釣人が釣竿10を把持する部分である。
【0033】
釣竿本体11は、5つの筒状部材13〜17から構成されている。各筒状部材13〜17は、それぞれ「節」と称され、釣竿本体11の先端側から順に第1番節13、第2番節14と称される。第4番節16は、特に「元上節」と称され、第5番節17は、特に「元節」と称される。各節13〜17は、既知の要領で構成される。例えば、カーボン繊維強化樹脂シート(プリプレグ)が所定形状に裁断され、これがマンドレルの周囲に巻回される。プリプレグが所定温度にて焼成され、マンドレルが引き抜かれることによって、円筒状の節13〜17が形成される。この釣竿10では、第4番節16(すなわち元上節16)が第5番節17(すなわち元節17)に対して伸縮するズーム機構を搭載している。もっともこのズーム機構は任意的なものであって、当該機構は省略される場合もある。
【0034】
第1番節13は第2番節14の内部に引き出し自在に収容されている。また、第1番節13の先端には、釣糸が導き出されるトップガイド18が設けられている。第1番節13はテーパ状に形成されており、先端部の外径よりも後端部の外径の方が大きくなるように形成されている。そして、第1番節13の後端径は、第2番節14の先端径よりも大きく設定されており、第1番節13が第2番節14から引き出された際に、第1番節13の後端部分が第2番節14の先端部分と嵌合して両者が固定されるようになっている。なお、第2番節14と第3番節15との関係及び第3番節15と元上節16との関係も同様である。
【0035】
第2番節14ないし元節17の先端部にリングR1〜R4が装着されている。このリングR1〜R4は、第2番節14ないし元節17の先端部の剛性を向上させ、隣り合う節の嵌合を確実なものとする。また、第4番節16の先端部分に図示しない釣糸導入孔が設けられており、この釣糸導入孔に釣糸を導くための導入ガイド19が取り付けれている。なお、上記トップガイド18及び導入ガイド19は、既知の構成であるので、その詳しい説明は省略される。
【0036】
元節17は、リールシート20を備えている。リールシート20は、釣用リール(図示せず)を着脱自在に保持するためのものであり、本実施形態では、リールシート20は、元節17と一体的に形成されている。同図が示すように、本実施形態では、リールシート20は、上記グリップ12を兼ねており、実釣において釣人がリールシート20を把持して釣竿10及びリールを操作する。本実施形態の特徴とするところは、このリールシート20の構造である。すなわち、このリールシート20は、後に詳述されるように、釣人が違和感なく握ることができるような外形形状に形成されており、しかも、リールの着脱操作を容易に行うことができるようになっている。
【0037】
なお、本実施形態では、釣竿10はインナーガイドタイプであるが、上記リールシート20は、いわゆるアウターガイドロッドにも適用され得る。
【0038】
<2.リールシートの構造>
【0039】
図2は、リールシート20の斜視図である。同図は、リールシート20にリール26が装着された状態を示している。
【0040】
リールシート20は、(1) 載置面23を有するシート本体24と、(2) 固定フード21と、(3) 矢印30の方向に沿ってスライド移動することによって固定フード21に対して近接し、離反する可動フード22と、(4) 可動フード22のスライドを規制するロック機構25とを備えている。以下、リールシート20の構造が詳細に説明される。
【0041】
(1) シート本体
【0042】
図3は、シート本体24の斜視図である。
【0043】
図2及び図3が示すように、シート本体24は、元節17と一体的に形成されており、前述のようにグリップ12を兼ねている。すなわち、シート本体24は、円筒状に形成されており、元節17の一部を構成している。もっとも、このシート本体24が独立した別部材として構成されていてもよい。たとえば、シート本体24が樹脂等により円筒状に形成され、これが元節17に外嵌されることによって元節17に取り付けられていてもよい。シート本体24の上面側に上記載置面23が形成されている。この載置面23は平面であり、リール26の脚27(図2参照)が載置されるようになっている。この載置面23は、シート本体24に形成された一対の平板部28、29により構成されている。各平板部28、29は、矢印30の方向に直交する方向に対向して配置されている。これら平板部28、29が設けられることにより、各平板部28、29とシート本体24の側面との間に一対の溝31が形成されている。各溝31は、上記矢印30の方向に延びており、後述されるように可動フード22のスライドを案内する。
【0044】
シート本体24は、スライド規制プレート37を備えている。このスライド規制プレート37は、たとえば樹脂プレートから構成され得る。本実施形態では、スライド規制プレート37は、薄肉細長の平板からなり、上記平板部28、29の間に挟み込まれた状態で配置されている。スライド規制プレート37は、複数のスライド規制片32を備えている。これらスライド規制片32は、上記矢印30の方向、すなわち可動フード22のスライド方向(以下、適宜「矢印30の方向」は「スライド方向30」と称される。)に並設されている。各スライド規制片32は、上記載置面32に直交する方向に凹凸する突起からなる。各スライド規制片32の高さは所定寸法(たとえば0.5mm)に設定されており、各スライド規制片32の上端は上記載置面32と同一平面状に位置している。また、各スライド規制片32は所定のピッチ(たとえば1mm)で並んでいる。本実施形態では、スライド規制プレート37にスライド規制片32が形成されているが、スライド規制プレート37が省略され、シート本体24にスライド規制片32が立設されていてもよい。なお、後述されるように、このスライド規制片32は、ロック機構25の一部を構成する。
【0045】
(2) 固定フード
【0046】
固定フード21は、シート本体24と一体的に形成されている。固定フード21は、上記載置面23の前方(すなわち、図1が示すように、上記スライド方向30の竿先側)に配置されている。固定フード21は既知の構造を有する。すなわち、固定フード21は、開口33を有する収容部34を備えており、ドーム状に形成されている。図2が示すように、リールの脚27の一方38は、開口33を通じて収容部34に挿入され保持されるようになっている。本実施形態では、収容部34に樹脂パッド35が取り付けられている。この樹脂パッド35によって開口33の周縁部が覆われている。上記脚27の一方38が収容部34に挿入された状態で、当該脚27が樹脂パッド35に当接する。これにより、脚27の一方38が強固に固定された場合であっても、脚27の一方38及び固定フード21が損傷することが防止される。本実施形態では、固定フード21がシート本体24と一体的に形成されているが、固定フード21が独立した部品として構成され、これがシート本体24に取り付けられていてもよいことは勿論である。
【0047】
なお、シート本体24は化粧板36を備えている。この化粧板36は上記載置面23の後端に取り付けられている。この化粧板36は、上記載置面23とシート本体24の外周面とを滑らかに連続する。これにより、リールシート20の外周面が滑らかになり、外観が向上している。また、化粧板36は、シート本体24に取り付けられることにより、上記溝31の後端(すなわち、上記スライド方向30の竿尻側の端部)を規定する。化粧板36が取り外されると、上記溝31の後端が露出し、この状態で可動フード22がシート本体24に嵌め込まれるようになっている。
【0048】
(3) 可動フード及び操作レバー
【0049】
図4は、リールシート20の要部拡大斜視図である。
【0050】
可動フード22は、後に詳述されるように、シート本体24の平板部28、29(図3及び図4参照)に嵌め合わされており、この平板部28、29に沿ってスライドすることができるようになっている。これにより、可動フード22は、矢印30の方向に沿ってスライドし、固定フード21に接近することができ、離反することができる。
【0051】
図5は、可動フード22の拡大斜視図である。また、図6は、可動フード22の分解斜視図である。
【0052】
図2、図4及び図5が示すように、可動フード22は、フード本体40と、上記スライド規制片32に係合する係止爪41(図5参照)とを備えている。また、可動フード22に操作レバー42が設けられている。この操作レバー42は、上記係止爪41を変位させるための部材である。なお、後述されるように、係止爪41、操作レバー42は、ロック機構25の一部を構成する。
【0053】
図5及び図6が示すように、フード本体40は、たとえば鋼板を折曲加工することにより構成されている。フード本体40は既知の構造を有する。すなわち、フード本体40は、断面形状がC字状を呈するようにドーム状に形成されており、内部に収容室43が設けられている。フード本体40の上面に開口47が設けられている。この開口47の周縁部48は、係止爪41を載置する取付座を構成している。フード本体40の下縁部は、L字状に折り曲げられ、係合片46を構成している。すなわち、この係合片46は、フード本体40の内側に突出しており、この係合片46がシート本体24に設けられた溝31(図4参照)に嵌め込まれている。これにより、フード本体40は、シート本体24に装着され、矢印30の方向にのみスライドすることができる。なお、フード本体40は前述の要領でシート本体24に着脱される。すなわち、図3が示すように、化粧板36が取り外された状態で上記溝31の後端が露出するので、その状態でフード本体40の係合片46が溝31に嵌め込まれる。フード本体40がシート本体24に装着された状態で化粧板36が取り付けられることにより、フード本体40はシート本体24から脱落することが防止される。
【0054】
図5及び図6が示すように、フード本体40の収容室43に連通するように開口44が設けられている。リールの脚27の他方39(図2及び図4参照)は、開口44を通じて収容室43に挿入され保持されるようになっている。具体的には、可動フード22が固定フード21側へスライドされ、これにより、上記脚27は、固定フード21及び可動フード22によって確実に挟持される。固定フード21と同様に、本実施形態では、収容室43に樹脂パッド45が取り付けられている。この樹脂パッド45によって開口44の周縁部が覆われている。上記脚27の他方39が収容室43に挿入された状態で、当該脚27が樹脂パッド45に当接する。これにより、脚27の他方39が強固に固定された場合であっても、脚27の他方39及びフード本体40が損傷することが防止される。
【0055】
図5及び図6が示すように、係止爪41は、ベース49と変位部50とを備えている。係止爪41は、既知の構造を有し、弾性材(典型的にはバネ鋼)により構成される。ベース49は、細長平板からなり、上記開口47の周縁部48に架け渡すように配置されている。変位部50も矩形平板からなる。変位部50は、図6が示すようにベース49と一体的に形成されており、後方(すなわち、上記スライド方向30の竿尻側)に延びている。図6が示すように、変位部50の端部は折り曲げられており、谷部51及び山部52が形成されている。
【0056】
換言すれば、変位部50は、ベース49に対して片持ち状に連続しており、上記開口47に対して進退する方向、すなわち上記載置面23(図3参照)に直交する方向(矢印53の方向)に弾性的に変位する。具体的には、変位部50は、第1姿勢と第2姿勢との間で変位する。この場合、第1姿勢とは、変位部50が上記載置面23の方向に弾性的に変位して山部52の先端54が上記スライド規制片32に当接係合した姿勢である。また、第2姿勢とは、図6が示す姿勢であって、第1姿勢における変位部50の弾性変形が復元され、変位部50が上記スライド規制片32から離反した姿勢である。なお、同図が示すように、本実施形態では、変位部50は、常時第2姿勢となるように形成されている。
【0057】
図7は、操作レバー42の斜視図である。
【0058】
同図が示すように、操作レバー42は、レバー本体55と、延設部60と、取付脚部56とを有する。操作レバー42は、たとえばステンレス鋼、真鍮その他の耐腐食性に優れた金属あるいは樹脂等からなり、レバー本体55、延設部60及び取付脚部56が一体的に形成されている。後に詳述されるが、操作レバー42は、図2、図4が示すように倒伏した姿勢(倒伏姿勢)と、図5が示すように起立した姿勢(起立姿勢)との間で自由に姿勢変化が可能となっている。
【0059】
取付脚部56は、ベース57と、ベース57の両側に突設された一対の支持軸58(回動中心軸)とを有する。ベース57は矩形状の平板であり、このベース57に支持軸58が一体的に形成されている。支持軸58はベース57に連続する平板からなり、三角形状を呈する。図5及び図6が示すように、取付脚部56は、フード本体40の開口47を通じてフード本体40の内側に挿入される。そして、ベース57が上記係合爪41の変位部50に対して上方から押圧するように当接し、一対の支持軸58が上記開口47の周縁部48にフード本体40の内側から当接する。このとき、ベース57が変位部50を押さえ付けるから、変位部50は第2姿勢側へ若干弾性的に変位する。したがって、支持軸58は、変位部50の弾性変形に起因した弾性力でフード本体40の内側に押し付けられ、その結果、支持軸58は、軸方向59(ベース57から突出する方向)を中心に回動自在な状態でフード本体40に支持される。つまり、操作レバー42は、軸方向59を中心にして起立姿勢(図5参照)と倒伏姿勢(図4参照)との間で自由に姿勢変化することができるようになっている。
【0060】
また、取付脚部56がフード本体40に挿入されると、ベース57の先端が係合爪41の谷部51に当接する。取付脚部56が支持軸58を中心に回動すれば、ベース57は係合爪41を下方へ(上記載置面23側へ)押圧するようになっている。ベース57が係合爪41を押圧することによる作用効果については後述される。
【0061】
図7が示すように、レバー本体55は、平板からなる。平板は若干湾曲されており、これにより、レバー本体55はドーム状に形成されている。レバー本体55の幅寸法61は、フード本体40の幅寸法に合致している。したがって、図2が示すように、操作レバー42が倒伏姿勢となったときは、レバー本体55がフード本体40から側方に突出することはなく、レバー本体55の側縁がフード本体40の側面と同一面上に配置され、レバー本体55の外面とフード本体40の外面とが滑らかに連続する。また、レバー本体55がドーム状に形成されているから、操作レバー42が倒伏姿勢となったときは、フード本体40の上面を覆う滑らかな曲面を構成する。
【0062】
図7が示すように、延設部60は、レバー本体55の先端に連続して形成されている。延設部60は、図5及び図6が示すように略C字状に形成されており、被覆部62及び一対の摘み部63を備えている。図2が示すように、被覆部62は、レバー本体55から固定フード21側へ延びている。図4が示すように、被覆部62は、レバー本体55に対して若干屈曲している。これにより、被覆部62は、リールの脚27の他方39に滑らかに近接するように延びている。しかも、被覆部62の先端部64は、上記脚27の他方39にさらに近接するように湾曲されている。これにより、被覆部62と上記脚27の他方39とが滑らかに連続され、両者間に急激な段差が形成されることはない。
【0063】
一対の摘み部63は、被覆部62の先端部の両側面に設けられている。本実施形態では、各摘み部63は、左右対称に配置されている。各摘み部63は被覆部62と一体的に形成されており、図2及び図4が示すように、被覆部62から下方に(シート本体24の載置面23側に)延びている。本実施形態では、摘み部63は、半円形に形成されており、釣人が指で摘み易い形状となっている。摘み部63の外面は、被覆部62の側面と略同一平面上に配置されている。したがって、図2が示すように、操作レバー42が倒伏姿勢となったときは、レバー本体55の外面、延設部60の外面及びフード本体40の外面が滑らかに連続し、これら相互の間に段差が形成されることはない。
【0064】
(4) ロック機構
【0065】
ロック機構25は、前述のように、可動フード22がスライド方向30へスライドすることを規制する。ロック機構25は、上記スライド規制片32(図2及び図3参照)と、上記係止爪41(図6参照)と、上記操作レバー42とを備えている。これらスライド規制片32、係止爪41及び操作レバー42の構造は前述の通りであるから、その説明は省略される。
【0066】
操作レバー42が起立姿勢となったときは(図5参照)、図6が示すように、ベース57の先端は軸方向59を中心に回動して上方へ変位する。すなわちベース57の先端は、載置面23(図3参照)から離れる方向に移動する。このため、係止爪41が第1姿勢から第2姿勢へと弾性的に変位し、変位部50がスライド規制片32から離反する。したがって、可動フード22は、スライド方向30に沿ってスライド自在(移動可能)となる。可動フード22がスライド方向30の後側にスライドした状態で、リールの脚27が載置面23上に載置される。そして、可動フード22がスライド方向30の前方へスライドされることにより、脚27は固定フード21及び可動フード22によって挟持される。この状態で操作レバー42が倒伏姿勢に変化される。操作レバー42が起立姿勢から倒伏姿勢へ変化すると(図4参照)、ベース57の先端は軸方向59を中心に回動して下方へ変位する(図6参照)。すなわち、ベース57の先端は、載置面23(図3参照)側へ移動し、ベース57に押された係止爪41が第2姿勢から第1姿勢へと変位する。これにより、変位部50がスライド規制片32に当接係合し、可動フード22のスライドが規制される。つまり、可動フード22が移動不能となり、リールがリールシート20に固定される。
【0067】
<3.リールシートの作用・効果>
【0068】
操作レバー42が倒伏姿勢に変化すると、図4が示すように、レバー本体55がフード本体40の上面を覆い、フード本体40の側面との間に段差を形成することなくフード本体40の側面と滑らかに連続する(図2参照)。しかも、レバー本体55に連続する延設部60はドーム形状に形成され且つ固定フード21側へ延びているから、リールの脚27の他方39に滑らかに連続する。したがって、釣人は、リールが装着されたリールシート20を違和感なく把持することができ、実釣において釣竿10を長時間にわたって快適に操作することができるし、仮に大型の魚が掛かった場合であっても、手や指に痛みを感じることはない。
【0069】
また、操作レバー42に摘み部63が設けられているから、操作レバー42とフード本体40とが滑らかに連続することによって釣人が指を掛ける部位が存在しなくても、釣人は、摘み部63を把持して操作レバー42を簡単に操作し、可動フード22をスライドさせることができる。しかも、この摘み部63は、操作レバー42の先端部に設けられているから、釣人は、操作レバー42をきわめて容易に操作することができる。その結果、釣人は、リールの着脱を容易に行うことができる。なお、摘み部63は載置面23側へ延びているから、摘み部63が設けられることによって操作レバーとフード本体40との間に段差や突起が形成されることはない。
【0070】
本実施形態では、摘み部63は、レバー本体55の両側に左右対称に配置されているから、釣人は、摘み部63を把持しやすく、きわめて容易に操作レバー42を操作することができるという利点がある。
【0071】
また、本実施形態では、摘み部63は、上記載置面23側に凸となる半円形に形成されているから、釣人にとって非常に把持し易いという利点があり、さらに、簡単且つ安価に構成されるという利点もある。
【0072】
<4.実施形態の変形例>
【0073】
次に、本実施形態の変形例について説明される。
【0074】
図8は、本実施形態の変形例に係るリールシートの要部拡大斜視図である。
【0075】
本変形例に係るリールシート65が上記実施形態に係るリールシート20と異なるところは、上記リールシート20では、操作レバー42の摘み部63が半円形に形成されていたのに対して、本変形例に係るリールシート65では、摘み部63に切欠部66が設けれている点、及び操作レバー42が倒伏姿勢にあるときは、上記載置面23に対する摘み部63の下縁67の高さは、上記載置面23に対するフード本体40の下縁68の高さと同一となるように設定されている点である。なお、リールシート65のその他の構成については上記実施形態に係るリールシート20と同様である。
【0076】
上記切欠部66は、左右の摘み部63に対称に形成されている。この切欠部66は、固定フード21側に凹むように滑らかに形成されている。これにより、釣人が摘み部63を指で摘んだときは、釣人の指は、フード本体40摘み部63との間に食い込む。したがって、釣人の指は、この切欠部66に引っ掛かる。したがって、釣人は、操作レバー42の起立操作を一層容易に行うことができるという利点がある。
【0077】
また、操作レバー42が倒伏された状態で、摘み部63の下縁67とフード本体40の下縁68とが同一レベルに配置されるから、摘み部63とフード本体40とがより一層滑らかに連続する。その結果、釣人は、リールシート65及びリール26をより一層握り易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、釣用リールを装着するリールシートに適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿の正面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るリールシートの斜視図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係るリールシートのシート本体の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るリールシートの要部拡大斜視図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係るリールシートの可動フードの拡大斜視図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に係るリールシートの可動フードの分解斜視図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係るリールシートの操作レバーの斜視図である。
【図8】図8は、本実施形態の変形例に係るリールシートの要部拡大斜視図である。
【図9】図9は、従来のリールシートの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
10・・・釣竿
11・・・釣竿本体
20・・・リールシート
21・・・固定フード
22・・・可動フード
23・・・載置面
24・・・シート本体
25・・・ロック機構
27・・・脚
28・・・平板部
29・・・平板部
30・・・スライド方向
31・・・溝
37・・・スライド規制プレート
40・・・フード本体
41・・・係止爪
42・・・操作レバー
46・・・係合片
55・・・レバー本体
58・・・支持軸
59・・・軸方向
60・・・延設部
63・・・摘み部
66・・・切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定フードと、
起伏操作される操作レバーを有し、操作レバーが起立されることによって固定フードに対して移動可能となり、倒伏されることによって固定フードに対して移動不能となる可動フードとを備えたリールシートにおいて、
上記操作レバーは、倒伏されたときに可動フードの上面を覆い且つ可動フードの側面に滑らかに連続するように形成されたレバー本体及び当該レバー本体の先端部に設けられ、固定フード側へ延びる延設部を有し、
当該延設部は、固定フード及び可動フードによって挟持固定された釣用リールの脚に滑らかに連続するように形成されており、当該延設部の先端に上記側面に沿って延びる摘み部が形成されているリールシート。
【請求項2】
上記摘み部は、レバー本体の両側に対称に配置されている請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
上記摘み部は、半円形に形成されている請求項1又は2に記載のリールシート。
【請求項4】
上記摘み部は、可動フードとの間に指が掛かる隙間が形成されるように切欠部を備えている請求項1ないし3のいずれかに記載のリールシート。
【請求項5】
釣用リールの脚が載置される載置面が設けられており、操作レバーが倒伏された状態で、上記載置面に対する上記摘み部の下縁の高さは、上記載置面に対する上記可動フードの下縁の高さと同一である請求項1ないし4のいずれかに記載のリールシート。
【請求項6】
細長筒状に形成された釣竿本体と、
釣竿本体に設けられた請求項1ないし5のいずれかに記載のリールシートとを備えた釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−268379(P2009−268379A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119968(P2008−119968)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】