説明

リールシート

【課題】脚押さえ体の周方向でのズレ動きを抑制することによって、可動フードのズレ動きを抑制して、品質の向上を図ることのできるリールシートを提供する。
【解決手段】可動フードDをシートベース2に取り付け、可動フードD内にリールの先端足部を保持する脚押さえ体8を設ける。脚押さえ体8に誘導突条8Bを形成し、シートベース2に誘導突条8Bを係入し可動フードDとともに移動する脚押さえ体8を竿軸線方向に沿って案内する第1ガイド溝4aを形成する。誘導突条8Bと第1ガイド溝4aとで、脚押さえ体8が円周方向にズレ動くのを抑制すべく構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動フードを備えているリールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
可動フードとしての遊動フード(公報内番号:4)は、シートベースとしての筒状本体(公報内番号:1)に外嵌される円筒状のフード本体部と、そのフード本体部の一部においてリール脚を保持するリール脚挿入用保持部とを一体で構成してある。
そして、リール脚挿入用保持部には、脚押さえ体としての柔軟部材からなるスペーサ(公報内番号:10)が装着されている。このスペーサの表面には、突起としての係止突起(公報内番号:8)が形成され、フード本体部に形成した凹溝(公報内番号:9)に嵌入させて、スペーサをフード本体部に装着している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登第2512661号公報(段落〔0009〕,図1,図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、スペーサは係止突起を介してフード本体部に装着されているが、フード本体部自体が型成形によって製作されたものであるために、シートベースにフード本体部が外嵌された状態で、フード本体部とシートベースとの間に間隙が形成されるために、フード本体部が周方向にガタツキ易い構成となっていた。
そうすると、スペーサでリール脚の先側足部を押さえ保持する構成を採っていても、遊動フードをナット部材としての緊締筒(公報内番号:5)を回転させて、竿軸線方向に沿ってスライド移動させる際に遊動フードがガタツキを生じ、釣り人の感触が不満足なものとなり、リールシートとしての品質の低下を招来していた。
しかも、フード本体部に装着されているスペーサも、そのスペーサに形成した係止突起をフード本体部に係入して装着されているだけであるので、スペーサ自体もフード本体部に対してガタツキ易い構成となっており、更に、改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、脚押さえ体の周方向でのガタツキを抑制することによって、可動フードのズレ動きを抑制して、品質の向上を図ることのできるリールシートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、竿体の竿軸線方向に沿ってスライド移動自在な可動フードをシートベースに取り付け、前記可動フード内にリールの先端足部を保持する脚押さえ体を設け、前記脚押さえ体が円周方向にズレ動くのを抑制する姿勢規制機構を設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用効果〕
姿勢規制機構を、シートベースと脚押さえ体とに亘って設けたので、脚押さえ体の周方向でのズレ動き(ガタツキ)が抑制され、この脚押さえ体を装着している可動フードも周方向へのズレ動きが抑制される。
このように、脚押さえ体のシートベースに対する周方向での姿勢が規制されて安定したものとなるので、リール脚の先側足部を保持する位置が、シートベースに形成されているリール載置面に対して位置ズレし難くなり、リール脚のセンタリング機能が向上する。
【0008】
〔構成〕
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記脚押さえ体に係合突部を形成し、前記シートベースに前記係合突部を係入する係合用ガイド凹部を形成し、前記係合突部と前記係合用ガイド凹部とで、前記可動フードとともに前記脚押さえ体を竿軸線方向に沿って案内するとともに前記脚押さえ体の周方向へのズレ動きを抑制するように、前記姿勢規制機構を構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用効果〕
リール脚を押さえ保持するものとして脚押さえ体を可動フード内に設け、この脚押さえ体にシートベースの係合用ガイド凹部に係合する係合突部を形成して姿勢規制機構を構成し、可動フードの周方向へのガタツキを抑制している。
このように、リール脚を押さえ保持するものとして導入された脚押さえ体を姿勢規制機構に兼用することによって、可動フード自体にガタツキを抑制する機構を設ける必要はなく、可動フード自体は製造方法等を変更する必要はない。
しかも、脚押さえ体を姿勢規制機構に兼用することによって専用の機構を採用する必要がなく、機器構成の簡素化を図ることができる。
【0010】
〔構成〕
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記シートベースにおけるリール脚載置面とは竿軸心を挟んで180°反対側に、竿軸線に平行な係合用凹部を形成するとともに、前記可動フードに前記係合用凹部に係合する係合部を設け、前記係合部と前記係合用凹部との係合状態によって、前記可動ガイドを竿軸線に沿ってスライド移動自在に構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
係合部と係合用凹部との係合状態によって、可動ガイドを竿軸線に平行な方向に移動させる構成としてあるが、係合部と係合用凹部との係合状態に、可動フードの周方向へのガタツキを抑制する機能までを付加する必要がないので、係合部と係合用凹部とに大きな機構の変更を加える必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】釣り竿を示す全体側面図である。
【図2】グリップ被覆体と可動フードをシートベースに取り付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図3】シートベースに可動フードを取り付ける前の状態を示す分解斜視図である。
【図4】シートベースに可動フード、グリップ被覆体を装着した状態を示す斜視図である。
【図5】グリップ被覆体と可動フードをシートベースに取り付ける前の状態を示す分解側面図である。
【図6】(a)シートベースに可動フード、グリップ被覆体を装着したリールシートを示す平面図、(b)シートベースに可動フード、グリップ被覆体を装着したリールシートを示す側面図である。
【図7】グリップ被覆体と可動フードをシートベースに取り付ける前の状態を示す分解縦断側面図である。
【図8】シートベースに可動フード、グリップ被覆体を装着したリールシートを示す縦断側面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線断面図である。
【図10】シートベースのリール脚の元側足部を載置する元側載置面とは180°反対側の表面に、可動フードとの干渉を回避する為の凹入部を形成した状態を示す縦断側面図である。
【図11】シートベースとして、ゴムグリップや可動フード、ナット部材等が異なる仕様となるものに、本願発明を適用した別実施構造を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔第1実施形態〕
本発明を釣り竿Aに適用する形態について説明する。
釣り竿Aは、図1〜4に示すように、握り部を備えた竿体としての元竿1に、スピンニングリール10を取り付ける筒状リールシートBを装着し、筒状リールシートBのシートベース2に可動フードDを取り付けて構成してある。
【0014】
シートベース2には、可動フードDと協働でスピニングリール10のリール脚10Aの先端において竿先側に屈曲形成されている先側足部10aを保持する固定フード3が一体形成されており、固定フード3の形成部位より竿元側に可動フードDを螺着する雄ねじ部4が設けてある。
図4,8,9に示すように、可動フードDには、リール脚10Aの先端において竿元側に屈曲形成されている元側足部(先端足部の一例)10aを保持するフード本体5と、フード本体5内に装着されている合成樹脂製の脚押さえ体8と、フード本体5を竿軸線X方向に螺進移動させるナット体7とが装備されている。
脚押さえ体8としては、合成樹脂以外にニトリルゴム等のゴムを材料として採用してもよい。
【0015】
シートベース2について説明する。
図5に示すように、シートベース2は、ポリエステル、ABS、PET等のエンジニアリング樹脂を使用した筒状体である。前記したように、竿先半部に外向きに盛り上がっている固定フード3を形成してあり、固定フード3のフード内部に入り込む状態で先側載置面2Aを形成してある。この先側載置面2Aでリール脚10Aの先端において竿先側に屈曲形成されている先側足部10aを載置支持すべく構成してある。
先側載置面2Aの竿元側に、位置決め用の環状鍔2Cが設けてあり、環状鍔2Cの更に竿元側に、可動フードD内に入り込む元側載置面2Bを形成してある。元側載置面2Bでリール脚10Aの先端において竿元側に屈曲形成されている元側足部10aを載置支持すべく構成してある。
【0016】
環状鍔2Cは、図2及び図5に示すように、元側載置面2Bの両横側方に幾分張り出した状態から略シートベース2の周面に沿って周回する状態で巡らされている。環状鍔2Cより竿先側には、環状鍔2Cから竿先側に向けて、後記するグリップ被覆体としてのゴムグリップ6の取付座2Dを形成してある。取付座2Dは、環状鍔2Cより一段凹入する面に形成してあり、図4及び図6に示すように、ゴムグリップ6をこの取付座2Dに装着した際に、ゴムグリップ6の外周面と環状鍔2Cの外周縁とを面一状態に設定して、高さを揃えるように形成してある。
【0017】
図2及び図5に示すように、固定フード3は、取付座2Dより一段突出する状態に外面3Aが形成してあり、固定フード3の外面3Aも、ゴムグリップ6を取付座2Dに装着した状態で、そのゴムグリップ6の外面と面一状態となるように構成してある。
取付座2Dにおける固定フード3の存在側とは反対側の面と固定フード3の横側方側の面には、シートベース2の軸線方向に沿った突条2aが形成してあり、この突条2aが取付座2Dに装着したゴムグリップ6の内周面に形成した後記する長溝6eに係合して、ゴムグリップ6の捲れ上がりを抑制する構成を採っている。
【0018】
先側載置面2Aと元側載置面2Bとの間にも、一段凹入する面としての繋ぎ部分2cが形成してあり、取付座2Dの他の部分と段差の無い状態に連なっており、先側載置面2Aと元側載置面2Bとの間の繋ぎ部分2cも取付座2Dの一部を形成する。後記するゴムグリップ6を取付座2Dに装着した状態で、ゴムグリップ6の外面と、先側載置面2A及び元側載置面2Bとが面一状態となるように構成してある。
【0019】
シートベース2におけるリール脚10Aの先側足部10aと元側足部10aを載置する部位について詳述する。図2及び図4〜図8に示すように、先側載置面(リール脚載置面の一例)2Aは断面形状としては前記したように、円弧状を呈する形状を採っているが、図6に示すように平面視では、竿元側に向う程、徐々に、左右方向での横幅を狭める形状を呈している。
一方、元側載置面2Bは略一定の広い横幅を呈し、竿元側端部において左右方向での横幅を狭める形状を呈している。図6に示すように、先側載置面2Aと元側載置面2Bとの間でゴムグリップ6の取付座2Dの一部を形成する繋ぎ部分2cにおいては、先側載置面2Aの竿元側端の横幅L1と元側載置面2Bの竿先側端の横幅L2とに連続的に繋がるような横幅を呈している。
【0020】
先側載置面2Aの両横側方には、皿状の左右の先側傾斜凹入面2eを形成してあり、この皿状の左右の先側傾斜凹入面2eは、竿軸芯方向に向けて僅かに凹入する形状に形成してあり、かつ、左右の先側傾斜凹入面2eにおける先側載置面2A(図2において上方側に位置する)側に位置する端部ほど左右の間隔を狭める上向きの傾斜状態に形成してある。元側載置面2Bの両横側方にも、同じように、上向きの元側傾斜凹入面2fを形成してあり、更に、取付座2Dにおいて繋ぎ部分2c以外の周面部分は、取付座2Dの一部を構成する円弧状面2gに形成してある。円弧状面2gは、取付座2Dの一部を構成する部分であるので、竿先側に位置する斜め上向き先側傾斜凹入面2eと竿元側に位置する斜め上向きの元側傾斜凹入面2fよりも、ゴムグリップ6の厚みに相当するだけの深さで凹入形成されている。
【0021】
次に、ゴムグリップ6について説明する。図2及び図4〜図8に示すように、ゴムグリップ6は、NBR等のゴムを材料とした筒状体であり、取付座2Dに装着した状態で固定フード3をゴムグリップ6より突出させるように、楕円状の抜き孔6Aが形成してある。
【0022】
ゴムグリップ6における抜き孔6Aより竿先側の部分6Cは、竿先側の開口部6bに近接する程小径化する緩円錐筒状に形成してある。一方、ゴムグリップ6の竿元側にも筒状の竿元側の部分6Dが形成してあり、竿元側の部分6Dには円弧状を呈する載置面部6cと、その載置面部6cの両横側方側に竿軸芯方向に向けて凹入する状態で、かつ、載置面部6c側に位置する端部ほど互いの左右間隔を狭めるように上向き傾斜状態にある皿状の左右の中間傾斜凹入面部6dが形成してある。
中間傾斜凹入面部6dによって、ゴムグリップ6を所定位置に装着した際に、シートベース2に形成された斜め上向き傾斜凹入面2eとゴムグリップ6の斜め上向き傾斜面6dとが段差無く繋がることとなっている。
【0023】
図5〜図8に示すように、抜き孔6Aの存在側とは180°反対側には、他の部分よりやや外方に膨出する膨出部6Bが設けてあり、この膨出部6Bに宛がわれる手指が滑り難いように、表面加工が施してある。つまり、表面の滑りを抑制するために、細かい凹凸を形成する梨地加工が施してある。
この膨出部6Bの内周面には、抜き孔6Aの存在側とは180°反対側及び左右の両側面の3箇所に、竿軸線X方向に沿った細幅の長溝6eが形成してある。ゴムグリップ6をシートベース2に装着した際に、シートベース2に突出形成した突条2aに細幅の長溝6eが外嵌係合して、ゴムグリップ6の位置決めを行うとともにゴムグリップ6の捲れ上がりを抑制する構成を採っている。
【0024】
以上のような構成になるゴムグリップ6を、図4に示すように、竿元側開口6aから取付座2Dに外嵌装着すると、ゴムグリップ6の外面が固定フード3の外面3Aと面一状態に、かつ、竿元側開口6aを囲む外縁が環状鍔2Cに当接し、ゴムグリップ6の外面が環状鍔2Cの外面と面一状態に連なる。
【0025】
図4及び図6に示すように、ゴムグリップ6を取付座2Dに装着した状態で、先側載置面2Aと、元側載置面2Bと、ゴムグリップ6における載置面部6cとを、竿軸線Xに沿った方向で連続する足部載置面に形成する。図6(a)に示すように、足部載置面の横幅を、竿軸線Xに沿った方向で中間に位置する部分の横幅ほど絞り込んで狭くなるように形成してある。
【0026】
先側載置面2A、元側載置面2Bの両横側方に位置する部分を円弧面に形成するのではなく、前記した先側傾斜凹入面2eとして皿状に僅かに凹入する上向きの傾斜面に形成してある。このことによって、その両側方に対応する部分の外径を小さくでき、かつ、足部載置面の竿軸線に沿った方向で中間に位置する部分の横幅ほど絞り込んで狭くなるように形成したので、シートベース2に取付られたリール脚10Aの先側足部10a、及び、元側足部10aをそのシートベース2とともに握り込む際に握り易い。
しかも、後記するように、ゴムグリップ6を円弧状面2gに装着した際に、ゴムグリップ6に形成した中間傾斜凹入面部6dが、竿先側に位置する斜め上向きの先側傾斜凹入面2eと段差なく連続する状態となる。これによって、手指や掌を圧迫することが少なく、仕掛けの打ち込みや魚の釣り上げ操作を行う場合に、手が痛くならず負担も少ない。
【0027】
可動フードDについて詳述する。図2〜図9に示すように、可動フードDは、前記したように、アルミニュウムやチタン等の軽量金属製のフード本体5と、そのフード本体5のリール脚挿入用保持部5aに内装されるゴム製または合成樹脂製の脚押さえ体8とを装備している。
脚押さえ体8は、リール本体5におけるリール脚挿入用保持部5aに内装されるように、略円弧状を呈するものであり、竿先側端に鍔部8bを突出させるとともに、上面の左右中央部に上向きに突出する突起8cを設け、この突起8cをフード本体5の天井部分に形成した抜き孔5d内に嵌合させて、脚押さえ体8の位置決めを行っている。
【0028】
フード本体5は、図9に示すように、断面形状として、シートベース2に外嵌する略4分の3円弧状を呈する部分とアーチ状を呈するリール脚挿入用保持部5aとを一体形成した縦長い楕円状を呈するものであり、成形型で一体形成される。
【0029】
次に、姿勢規制機構Cを設けて、脚押さえ体8の周方向へのガタ付きを抑制し、リール脚10Aの位置決め(センターリング)を良好にできる機構を構成することとした。ここでは、まず、フード本体5と脚押さえ体8との取り付け構造について説明し、その後、姿勢規制機構Cについて説明する。
つまり、図9に示すように、フード本体5における略4分の3円弧状を呈する部分とアーチ状を呈するリール脚挿入用保持部5aとの接続部位近傍には、上向き段差部5eが設けてある。
一方、脚押さえ体8には、左右の両下端部近傍の外面に下向き段差部8gが形成してある。脚押さえ体8をフード本体5のリール脚挿入用保持部5a内に挿入した際に、脚押さえ体8の下向き段差部8gがフード本体5の上向き段差部5eに上方から当接して、脚押さえ体8が装着支持される。
【0030】
姿勢規制機構Cについて説明する。図6及び図9に示すように、姿勢規制機構Cは、シートベース2に形成された係合用ガイド凹部としての第1ガイド溝4aと、脚押さえ体8の内周面に突設された係合突部としての誘導突条8Bとで構成される。第1ガイド溝4aは、雄ねじ部4から元側載置面2Bの後半部に亘る範囲で凹入形成された細溝である。一方、誘導突条8Bは、次のように形成される。
【0031】
脚押さえ体8は、竿先端に鍔部8bを形成し、その鍔部8bの竿元側に断面がアーチ状を呈する略一定の肉厚の本体部8Aを形成してある。本体部8Aの内周面には足保持部8aが形成されており、足保持部8aの奥側から竿元側端に向って足受止部8dが形成されている。足保持部8aは、元側足部10aの甲部分に当接作用して押し付け保持するアーチ状を呈している。一方、足受止部8dは、元側足部10aの元側端を受け止めるべく構成してある。つまり、足受止部8dの竿先側面に、竿軸芯に向かう縦向き面8fを形成し、その縦向き面8fで足保持部8aに挿入された元側足部10aの竿元側端を当接規制して、元側足部10aの竿軸線方向での位置決めをすべく構成してある。
【0032】
足受止部8dにおける竿軸芯方向に向う内向き面に、誘導突条8Bを突出形成してある。誘導突条8Bは、リールシート2に形成した第1ガイド溝4aに係合すべく第1ガイド溝4aの横幅よりやや細い横幅を備えている。第1ガイド溝4aに係合した状態で、可動フードDと一体で第1ガイド溝4aに沿って移動するものとなる。このような構成によって、脚押さえ体8の周方向へのガタツキを抑え、可動フードDの位置決めを行い得るので、可動フードDによるリール脚10Aの元側足部10aの位置決め(センタリング)を良好に行い得る。
【0033】
脚押さえ体8の左右両下端部における段差部8gの近傍に当接部8hを設け、この当接部8hを元側傾斜凹入面2fに当接させる構成としてある。
以上のような構成によって、脚押さえ体8は、誘導突条8Bを第1ガイド溝4aに係合させるとともに、左右の下端部の当接部8hをシートベース2の元側傾斜凹入面2fに当接させることによって3点支持状態を確立し、周方向へのガタツキを抑制する姿勢規制機構Cを構成する。
【0034】
図3及び図7〜図9に示すように、可動フードDのリール脚挿入用保持部5aとは180°反対側には、竿軸芯方向に向けて内向きに突出する係合部としての係合突起5nが設けてある。シートベース2の雄ねじ部4に係合用凹部としての第2ガイド溝4bが形成してある。この第2ガイド溝4bに係合突起5nを係合させることによって、可動フードDをナット体7の回転によって、シートベース2の軸線方向に沿ってスライド移動可能に構成してある。
【0035】
係合突起5nと第2ガイド溝4bとの係合状態は、第2ガイド溝4bの溝幅を係合突起5nの横幅よりも大きく採ってある。
前記した誘導突条8Bと第1ガイド溝4aとの関係に比べて係合突起5nが第2ガイド溝4bに係合した状態でも、多少、左右横方向に動き得る余裕を持った構成となっている。
このような構成を採っているのは、係合突起5nと第2ガイド溝4bとの係合状態を、誘導突条8Bと第2ガイド溝4bとの係合状態と同様に左右横方向への動きを抑制したものにすると、可動フードD自体の竿軸線X方向に沿った動きが円滑さを欠くものとなり、
操作がし辛くなるからである。
【0036】
フード本体5の竿元側半部の構成について説明する。
図2〜図6に示すように、可動フードDのフード本体5は、リール脚10Aを保持するリール脚挿入用保持部5aから竿元側に向けて外径が細くなる中間縮径部5jを形成してあり、中間縮径部5jより竿元側に中間縮径部5jの外径より大径の受止部5kを形成してある。
【0037】
以上のような構成により、リール脚10Aと筒状リールシートBとを共握りして釣り動作を行う場合に、手の掌がゴムグリップ6の膨出部6Bに掛って竿先側への移動が抑制される状態にあり、小指が可動フードDの中間縮径部5jに掛って受止部5kによって竿元側への移動が抑制されており、握りの状態が安定する構成となっている。
【0038】
図2〜図6に示すように、ゴムグリップ6を受け止める環状鍔2Cは、元側載置面2Bを除く全周面に亘って巡らされており、元側載置面2B存在側とは180°反対側に至る程、竿元側に偏位するように形成されている。このような構成によって、環状鍔2Cに当接して位置決めされるゴムグリップ6の竿元側端は、元側載置面2B存在側とは180°反対側において、竿元側に入り込んで位置することとなる。つまり、図5及び図6に示すように、環状鍔2Cの竿先端側において想定した基準線Yよりも、ゴムグリップ6の竿元側端は、竿元側に延出されている。
【0039】
しかも、可動フードDにおいても、図5及び図7に示すように、フード本体5の竿先側端5Cの開口縁の側面視形状は、リール脚挿入保持部5aを形成する上半部5fとシートベース2に外嵌される下半部5pとの中間位置に対応する部分が、最も竿先側に突出する形状に形成してある。下半部5pでは、環状鍔2Cに沿うように、リール脚挿入保持部5aの存在側とは180°反対側に至る程、フード本体5の竿先側端5Cの開口縁の側面視形状が竿元側に偏位する状態に形成されている。
【0040】
したがって、環状鍔2Cと可動フードDとが共にリール脚載置側とは180°反対側の面において竿元側に偏位した形状を呈するので、前記した基準線Yよりも竿元側において、ゴムグリップ6が竿元側に入り込んで露出する状態にある。
このような構成によって、リール脚10Aをシートベース2と共に握った手指における親指部分がゴムグリップ6に当てがわれることとなって、圧迫感を感じることが少ない。
【0041】
なお、図1及び図4に示すように、可動フードDは、環状鍔2Cに当接することによって、固定フード3の存在側への移動が規制されている。つまり、可動フードDのリール脚挿入用保持部5aに装着された脚押さえ体8の左右両側端が、環状鍔2Cの上端に当接するとともに、フード本体5の竿先側端5Cも環状鍔2Cに当接して、固定フード3側への移動が規制される。
このような構成によって、可動フードDの外周面と環状鍔2Cとゴムグリップ6の外周面とが略面一状態に連なることとなり、その部分を握る手に圧迫感を与えることが少ない。
【0042】
図3、図5及び図7に示すように、シートベース2における元側載置面2B存在側とは竿軸芯Xを挟んで反対側には、竿軸芯Xに向って凹入する凹入部2dを形成してある。
凹入部2dは、第2ガイド溝4bの竿先端と環状鍔2Cとの間において、円周方向での横幅が略30°位に亘る範囲に凹入形成されている。尚、凹入部2dとしては、可動フードDとの干渉を回避する範囲で、円周方向での横幅を30°〜90°に至る範囲で採っても良い。
【0043】
このような凹入部2dを設けた理由は次のようなものである。
つまり、リール脚10Aを保持すべく、可動フードDがナット体7とともに移動すると、脚押さえ体8がリール脚10Aの元側足部10aの甲部分に形成された傾斜面10bに乗り上る状態になるので、可動フードDは、リール脚10Aの元側足部10aによって持ち上げられたような状態となり、シートベース2に対して偏芯した状態となる。
【0044】
そうすると、可動フードDのフード本体5における固定フード3側に向う開口縁において、リール脚挿入用保持部5aとは反対側の端縁がシートベース2の外周面に食い込むような状態になる。
【0045】
シートベース2の表面には、ウレタン樹脂塗料やエポキシ樹脂塗料等の適宜塗料が選択されて、刷毛や吹き付けによって塗装されている。
そうすると、前記反対側の端縁がシートベース2の外周面に食い込むような状態になると、塗装面が剥がれる等の不具合が起こり得る。
そこで、前記したように凹入部2dを形成してあるので、可動フードDの反対側端縁がシートベース2の外周面に食い込むことが抑制されて、塗料が剥がれる等の不具合を抑制することができる。
【0046】
〔第1実施形態における別実施形態〕
係合突起5nと第2ガイド溝4bとの組み合わせ構成は、姿勢規制機構Cが係合突起5nと第2ガイド溝4bとの組み合わせが発揮する機能と同様の機能を発揮できるならば、省略してもよい。
【0047】
〔第2実施形態〕
第1実施形態の内、シートベース2に環状鍔2Cを形成していない実施形態のものを第2実施形態とする。したがって、環状鍔2Cの存在しない部分はシートベース2の他の外周面と面一状態となる。
【0048】
〔第3実施形態〕
第1実施形態の内、シートベース2にゴムグリップ6を装着していない実施形態のものを第3実施形態とする。従って、シートベース2に形成したゴムグリップ6を装着する為の取付座2Dはなく、シートベース2の外面は固定ガイド3の外面と面一状態で形成される。
【0049】
〔第4実施形態〕
第1実施形態の内、シートベース2に可動フードDとの干渉を回避する為の凹入部2dを設けない実施形態のものを第4実施形態とする。凹入部2dを形成しない部分は、シートベース2における外周面の他の部分と面一状態に形成する。
【0050】
〔第5実施形態〕
第1実施形態の内、シートベース2には先側傾斜凹入面2eと元側傾斜凹入面2fとを形成していない実施形態のものを第5実施形態とする。従って、シートベース2の先側載置面2Aと元側載置面2Bの両横側方には、傾斜面ではなく、円弧面を形成してもよい。
【0051】
〔第6実施形態〕
第1実施形態の内、ゴムグリップ6の膨出部6Bと可動フードDの中間縮径部5jと受止部5kとを形成していない実施形態のものを第6実施形態とする。したがって、ゴムグリップ6では、膨出部6Bを形成せずに外周面を一定の外径を呈するものに形成し、可動フードDにおいても中間縮径部5jと受止部5kに相当する部分を一定の外径を呈する部分に構成してもよい。
【0052】
〔第7実施形態〕
次に、シートベース2と可動フードD、ナット体7とが第1実施形態のものとは異なる仕様のものを記述する。図11に示すように、シートベース2を筒状でかつ外周面が滑らかに連続する曲面に形成し、竿先側に固定フード3を一体形成してある。シートベース2の竿元側部分には雄ねじ部4を刻設してあり、この雄ねじ部4にナット体7が螺合されており、このナット体7の竿先側に可動フードDが連結されている。
【0053】
可動フードDには、脚押さえ体8が内装してあり、脚押さえ体8の本体部8Aにリール脚10Aの元側足部10aを挿入して保持する脚保持部8aを形成し、脚保持部8aの竿元側に足受止部8dを立ち下げ(図面上で下向き)てある。足受止部8dの竿先側面は、足保持部8aの奥端から内向きに突出された縦向き面に形成されており、その縦向き面で足保持部8aに挿入された元側足部10aの竿元側端を当接規制して、元側足部10aの位置決めをすべく構成してある。
【0054】
足受止部8dの内向き面には誘導突条8Bが突出形成してあり、誘導突条8Bはシートフード2の元側足部10aを載置支持する元側載置面2Bから雄ねじ部4に掛けて設けてある第1ガイド溝4aに係合して、脚押さえ体8の周方向へのズレ動きを抑制すべく姿勢規制機構Cを構成する。
【0055】
可動フードDのフード本体5における脚押さえ体8を収納した部分とは、竿軸芯を挟んで180°反対側に内向き(図面上で上向き)の係合突起5nを設けてある。一方、シートベース2における係合突起5nに対向する面には、第2ガイド溝4bが形成してある。
この係合突起5nを第2ガイド溝4bに係合させて状態で、可動フードDをナット体7の螺進移動によって竿軸線X方向に沿ってスライド移動可能に構成してある。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明は、筒状リールシートBを装備する磯竿、船竿等に適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
2 シートベース
2A 先側載置面(リール脚載置面)
2B 元側載置面(リール脚載置面)
4a 第1ガイド溝(係合用ガイド凹部)
4b 第2ガイド溝(係合用凹部)
5 フード本体
5n 係合突起(係合部)
8 脚押さえ体
8B 誘導突条(係合突部)
10A リール脚
10a 元側足部(先端足部)
C 姿勢規制機構
D 可動フード
X 竿軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿体の竿軸線方向に沿ってスライド移動自在な可動フードをシートベースに取り付け、前記可動フード内にリールの先端足部を保持する脚押さえ体を設け、前記脚押さえ体が円周方向にズレ動くのを抑制する姿勢規制機構を設けてあるリールシート。
【請求項2】
前記脚押さえ体に係合突部を形成し、前記シートベースに前記係合突部を係入する係合用ガイド凹部を形成し、前記係合突部と前記係合用ガイド凹部とで、前記可動フードとともに前記脚押さえ体を竿軸線方向に沿って案内するとともに前記脚押さえ体の周方向へのズレ動きを抑制するように、前記姿勢規制機構を構成してある請求項1記載のリールシート。
【請求項3】
前記シートベースにおけるリール脚載置面とは竿軸心を挟んで180°反対側に、竿軸線に平行な係合用凹部を形成するとともに、前記可動フードに前記係合用凹部に係合する係合部を設け、前記係合部と前記係合用凹部との係合状態によって、前記可動ガイドを竿軸線に沿ってスライド移動自在に構成してある請求項1又は2記載のリールシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−10592(P2011−10592A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156966(P2009−156966)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】