説明

ルーバー前面を備えた入口ダクト

【課題】流体と固体粒子の接触に用いられる反応器において、触媒床を保持するメッシュ(スクリーン)の腐蝕の問題を解決する。
【解決手段】反応器内に固体粒状物質の床を維持する放射状の反応器内に流体を導く装置。この装置は、反応器内に流体を導くダクト(10)を備え、固体粒子を保持しながら流体を流出させるスクリーンのない面(12)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は概ね流体と固体材料の接触に関する。具体的には、本発明は、流体−固体接触において放射状に流れる流体の導管設計に関して、流体と固体粒子の接触に用いられる反応器の内部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]流体と固体を接触させるために、放射状に流す反応器(radial flow reactors)が広範な処理に用いられている。固体は、流体が反応して生成物を生成させる触媒物質から通常構成される。その処理は、炭化水素の転化反応、ガス処理、吸着分離等を含む処理範囲にわたる。
【0003】
[0003]放射状に流す反応器は、反応器が環状構造をなすように、また、環状の分配及び収集装置(annular distribution and collection devices)が存在するように構成される。分配及び収集用装置は、ある種のスクリーン付き表面(screened surface)を組み込んでいる。スクリーン付き表面は、所定の位置に触媒床を保持するためや、反応器表面への圧力分布を補助して反応器床を通過する放射状の流れを容易にするためにある。スクリーンは、ワイヤもしくは他の材料からなるメッシュ又はパンチ板とすることができる。移動床に関して、スクリーンすなわちメッシュには、床を通る流体の流れを許容しながら、固体触媒粒子の損失を防止する障害物が設けられている。固体触媒粒子は、触媒上の流体の流れを許容するスクリーン付き囲い(screened-in enclosure)を通過しながら、頂部で添加され、装置を通過して底部で取り出される。好ましくはスクリーンは非反応性の材料から構成されるが、実際には、スクリーンはしばしば腐蝕によるある種の反応を受け、腐蝕したスクリーンすなわちメッシュに起因して経時的な問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]入口分配装置の1つのタイプとして、内部が帆立貝形状をなす反応器があり、特許文献1及び特許文献2に記載されている。帆立貝形状と設計は、放射状に流す反応器の入口に良好なガスの分配をもたらすが、固体の通過を阻止するためにスクリーンすなわちメッシュを使用する。帆立貝形状は、容器壁の曲率を配慮することなく容易に反応器に設置できるため、便利である。床内に触媒粒子を保持するために用いられるスクリーンすなわちメッシュは、粒子が通り抜けることができないほど開口が十分に小さい大きさとしている。オプチマイザー(OptiMiser:登録商標)として米国フィルタ社(United States Filter Corp.)から市販されている入口ダクトの設計は、即ち、PCT出願に係る特許文献3は、形状を改良したものであるが、触媒の通過を阻止する間隔が十分に狭いワイヤから構成されたスクリーンを今なお使用している。重大な問題は、所定の位置に触媒床を保持するために又は反応器床を通る反応物質の分配のために用いられるメッシュすなわちスクリーンの腐蝕である。腐蝕は、スクリーンすなわちメッシュに開口を詰まらせて、流体が流れないデッド容積を作り出すことがある。腐蝕は、また、大きな開口を作り出すことがあり、その際触媒粒子が流体と共に触媒床から流出し、この流失のため処理にコストが増大する。これは、受け入れがたい触媒の喪失を招き、追加の補充触媒を添加する必要があるためコストを増大させる。
【特許文献1】米国特許第6,224,838号明細書
【特許文献2】米国特許第5,366,704号明細書
【特許文献3】WO 01/66239 A2
【0005】
[0005]これらの制約を克服する反応器の設計は、修理に要する休止時間や、炭化水素処理のコストのかなりの部分を占める触媒の喪失を著しく節約することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]本発明は、スクリーンを用いずに、放射状反応器内に流体を流す新規な入口ダクトを提供するものである。本発明は、放射状反応器内に配置したとき、垂直に指向する入口流れダクトを含む。ダクトは、触媒床に向けられた前面、2つの側面、及び放射状反応器の外壁に向けられた後面を有する。前面は、そこに画定された開口を有するプレートと前面に取り付けられたルーバーとを含む。ルーバーは前縁及び後縁を有し、前縁は開口の上方位置の前面に設けられ、後縁は前面から離間して下方に延びている。
【0007】
[0007]一実施の形態において、本発明はスクリーンのない入口ダクトを使用する新規な放射状反応器を含み、スクリーンのない入口ダクトは反応器ハウジング外壁の内側周辺に円周状に配列される。
【0008】
[0008]本発明の他の目的、利点及び適用は、当業者ならば、添付の図面と以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[0012]触媒が環状領域を流下すると共に、環状領域が、スクリーン付き内側隔壁とスクリーン付き外側隔壁で画定され、粒状固体を保持する触媒床すなわち粒子保持容量を画定する、放射状に流す反応器には問題がある。典型的な放射状反応器では、通常ガスたる流体は、反応器を囲繞する環状領域内に流れ、隔壁及び触媒床を横断して、得られた流出物が抜き取られる中央パイプ内に流出する。触媒と反応して製品流体を生成する流体も通常ガスである。反応器はガスが通過するスクリーンに触媒を保持する。隔壁は触媒粒子の通過を阻止するに十分小さい穴を必要とするが、穴は詰まってガスが流れないデッドスペースを作り出しやすいだけでなく、隔壁は浸食や腐蝕を受けて触媒を溢れ出させる穴を作り出しやすい。
【0010】
[0013]入口の環状領域は、流体を反応器内に導く一連の流路を含む。流路は垂直に延びたダクトを備えており、各ダクトは、前面、2つの側面、及び後面を有する。図1に示すように、ダクトは断面が実質的に台形であり、ダクトが円筒状の反応器ハウジングに配列されると、図2に示すように、ダクトは、ダクトの後面が反応器ハウジング40に面すると共に、ダクトの前面が触媒床を保持する反応帯域に面するトロイド構造を形成する。ダクト10の前面12は、そこに画定された開口14を有するプレートから構成される。複数の開口14は間隔を置いて前面12上にあり、反応帯域の触媒に入口流体の均一な分配をもたらす。開口14は、開口14を通る触媒の流れを阻止するように、ルーバー16で覆われている。ルーバー16は、前面12に取り付けられた前縁18と、前面12から離間して触媒を含有する帯域内に延びる後縁20とを有する。本発明の趣旨として、前縁18及び後縁20なる用語は、反応器を通る固体粒子の流れに関するものである。前縁18は固体粒子の流れ方向に関して上流縁であり、後縁20は下流縁である。粒子は反応器を通って流れ、前面12に沿って流れる粒子は、最初に前縁18に接触し、ルーバー16に沿って流れ、後縁20に接触する。
【0011】
[0014]本発明の設計は、目詰まりあるいは触媒を入口ダクトの面に通過させるメッシュの崩壊等の、腐蝕に関連した汚染の傾向及び問題を低減する。開口14は、開口14を通る流体に自由な流れを与えるに十分に大きな大きさをしており、好ましくは反応器内の触媒粒子の大きさよりも実質的に大きい。開口14を有する前面12は、穿孔又は打抜き穴等の当業者には公知のあらゆる方法により加工されることができる。本発明は、また、入口ダクトの前面を横断する圧力降下を低減する。
【0012】
[0015]ルーバー16は、垂直方向から1°〜89°の角度で配置され、角度0°はルーバー16が前面12の表面に沿って平らな位置をとることを意味し、角度90°はルーバー16が前面12に対して直角に置かれることを意味する。しかし、角度が大きければ大きいほど、触媒の滞留を生み出す機会が大きくなり、角度が60°より大きくなると触媒の滞留問題が潜在的に存在する。ルーバー16を垂直方向から10°〜30°の角度に置くことが好ましい。角度は、本明細書で用いられるように、ルーバー16とダクトの前面12とがなす角度である。
【0013】
[0016]一実施の形態において、ルーバー16は、ルーバー16の前縁18と後縁20間の距離で長さが定義される。前面12の開口14は上縁及び下縁を有し、ダクト10が垂直方向に向いているとき、上縁は前面12の最も高い開口の地点にあり、下縁は前面12の最も低い開口の地点にある。本実施の形態におけるルーバー16は、少なくともルーバーが覆う開口の下縁の距離まで延びている。好ましい実施の形態において、ルーバー16の長さは、ルーバー16と前面12間の隙間の距離に等しい開口下縁の下方の距離まで、ルーバーの後縁20を延ばすことで足りる。
【0014】
[0017] 別の実施の形態において、ルーバー16は側縁を有し、更にルーバー16は伸長部26を含み、各伸長部26はルーバー16の一端及び前面12に取り付けられ、開口14を覆う構造と同様のオーニングを形成する。
【0015】
[0018]ダクト10の構造は断面が実質的に台形である。ダクト10が反応器ハウジング40の内側周囲に配列されると、側面22が反応器ハウジング40の中心から反応器ハウジングの壁部へ進む放射線上に並ぶであろう。一実施の形態において、前面12及び後面24は、前面12が開口14の表面を構成すると同時に、表面が実質的に平坦である。これは、開口14の作製後にルーバー16が前面12に取り付けられるダクト10にとって、便利な構造を提供する。ダクト10を組み立てる際、側面22に取り付ける前にルーバー16を前面12に取り付けることができるか、あるいは、前面12を側面22に取り付けた後にルーバー16を前面12に取り付けることができる。前面12の取付け前に、開放箱内に形成された1枚の金属板から側面22及び後面24を組み立てることができる。
【0016】
[0019]一実施の形態において、ダクト10は上述のように断面が実質的に台形をなすが、前面12及び後面24の曲率は、中心が反応器ハウジング40の中心にあり、かつ、半径が中心から各面の距離と等しい、円の曲率半径と等しい。これら2つの実施の形態の変更は、前面12又は後面24のいずれか一方が湾曲していることである。
【0017】
[0020]別の実施の形態において、ダクト10は断面が実質的に長方形である。反応器ハウジング40は、前面12が隣接する前面12の縁部に接しながら、隣接するダクト10間に小さな隙間を作り出している。断面が実質的に長方形をなすダクト10の組立てにより、ダクトは、より容易に組み立てられ、反応器ハウジング40内にダクトを組み込む空間が用意される。更に、ダクト10間に小さな隙間を有する反応器ハウジング40内にダクト10を設置することができ、ダクト10間の隙間に触媒の流入を阻止する隙間を覆う覆い板(図示せず)を取り付けることができる。覆い板の変更としては、被せフランジ部(図示せず)を用いてダクト10を組み立てることができる。フランジ部が反応器ハウジング40の内側に位置すると、フランジ部が隣接するダクト10の前面12の縁部を覆うように、ダクト10の一側のみにフランジ部を取り付けることになろう。被せフランジ部の使用は、反応器のどのような加熱・冷却サイクル中でも、ダクト10の熱膨張及び収縮用の空間をとらないで正確な合わせを必要とすることなく、反応器ハウジング40内にダクト10を合わせる余地を与える。
【0018】
[0021]他の実施の形態において、ダクト10は断面が実質的に台形をなし、ダクト10は前述の通りである。しかし、前面12の幅が後面24の幅よりも長いといったような台形状の断面である。この実施の形態では、隣接するダクト10間に空所を作り出し、隣接する前面12間のあらゆる隙間を覆う覆い板の使用、又は、あらゆる隙間を覆う各ダクト10と共に被せフランジ部の使用が必要である。覆い板又はフランジ部は、隣接するダクト10間の空所内への触媒粒子の移動を防止する。
【0019】
[0022]ダクト10に含まれ得る更なる特長としては支持棒が挙げられ、これはダクト10内にあるいはダクトに構造的剛性を与えるダクト10の外部に配置される。
【0020】
[0023]一実施の形態において、本発明は放射状に流す改良された装置を含む。装置は、吸着装置、反応器、又は放射状に流す必要のあるあらゆる操作ユニットとすることができる。装置は、垂直に指向し、流体入口及び流体出口を有する実質的に円筒状の容器を含む。装置の内側では、垂直に指向された中央パイプが、容器内に配置され、円筒容器の実質的に中心に位置する。中央パイプは流体入口又は流体出口とすることができ、中央パイプの壁体は流体が中央パイプの壁体を通過する開口又は穴を有する。装置は、円筒容器の周囲にかつ円筒容器の壁部の内側に沿って、円周方向に配列された複数の垂直のダクトを更に備えている。ダクトは横断面が実質的に台形又は直方形である。ダクトは、中央パイプに面する前面、円筒容器の壁部の内面に面し容器の壁部に接する後面、及び前面を後面に接続する2つの側面を有する。前面は、そこに画定された開口を更に有し、流体が前面を横断して流れることを可能にさせる。開口は、反応器を通って流れる触媒粒子がダクト前面の開口の通過を阻止するルーバーによって覆われている。
【0021】
[0024]ダクトは、固体粒子を保持する空間を画定するために中央パイプから離てられており、特定の実施の形態では固体粒子は触媒粒子である。
【0022】
[0025]装置は、垂直に配列されたダクト内に導かれるように装置内を流れる流体を用意している。流体は、ダクトを流下し、前面の開口を通った後、固体粒子の床すなわち触媒床を横断して、中央パイプに流れる。流体は、中央パイプの開口を通って流れ、装置から排出される。
【0023】
[0026]一実施の形態において、改良された入口流れ装置は、図3に示すように凹所を設けた前面を有する。装置は、前面12、2つの側面22、及び後面24を有する垂直に延びた入口ダクト10を備えている。前面12は、2つの側面22間に配置され、側面22の縁部28から陥凹している。前面12は前面12に画定された開口14を有し、ダクト10に流入する流体が、開口14を介して流出し、反応器容積を横断して流れる。前面12には、前面12から外側に広がる複数のルーバー16が取り付けられている。ルーバー16は、少なくとも1つの開口14の上方位置の前面12に設けられた前縁18と、前面12から離間して下方に延びる後縁20とを有する。ルーバー16は、前面12を横断して一方の側面22から他方の側面22に広がり、ルーバー16の縁部に沿って側面22に取り付けられている。ルーバー16は、垂直方向から1°〜89°の角度で、好ましくは垂直方向から10°〜30°の角度で前面12から離間して延びている。前面の陥凹した設計は、既存の交叉流反応器への装置の便利な挿入を可能にする。ここで、既存の反応器はスクリーンを有するものと考えられるが、スクリーンには、腐蝕又は浸食の問題があり、普通取り換える必要があろう。本発明の使用は、腐蝕したスクリーンの取換えの必要性を未然に防ぐものであり、より速やかに反応器を稼働状態に至らせることを可能にする。
【0024】
[0027]現在好ましいと実施の形態であると考えられるものについて本発明を説明したが、当然のことながら、本発明は、開示された実施の形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれる様々な修正や均等な装置に及ぶことを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ルーバー付きの入口ダクトの図面である。
【図2】反応器ハウジング内部に配列したルーバー付きの入口ダクトの図面である。
【図3】本発明の凹所を設けた実施例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を交叉流反応器に導く装置であって、
前面(12)、2つの側面(22)、及び後面(24)を有する、垂直に延びる入口ダクト(10)を備え、前面(12)が、開口(14)を有するプレート、及びダクト(10)から外側へ広がるルーバー(16)を含むルーバー付きの構造により構成され、ルーバー(16)が前縁(18)及び後縁(20)を有し、ルーバーの前縁(18)が少なくとも1つの開口(14)より上の位置でプレートに取付けられ、ルーバーの後縁(20)がプレートから離間し下方へ延びる、前記装置。
【請求項2】
放射状反応器に用いられる請求項1記載の装置であって、放射状反応器が反応容器(40)内に配置された内部反応帯域を有し、前面(12)及び後面(24)が湾曲した構造をなし、前面(12)の曲率半径が反応器の固体粒子帯域の半径と等しく、後面(24)の曲率半径が反応容器(40)の半径と等しい、前記装置。
【請求項3】
放射状反応器に用いられる請求項1記載の装置において、放射状反応器が反応容器(40)内に配置された内部反応帯域を有しており、前面(12)及び後面(24)が平坦な構造を有し、前面(12)の幅が反応器の固体粒子帯域の半径からなる円に対する弦を形成し、後面(24)の幅が反応容器(40)の半径からなる円に対する弦を形成する、前記装置。
【請求項4】
前記ルーバー(16)が垂直方向から1°〜89°の角度で配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記ルーバー(16)が垂直方向から10°〜30°の角度で配置されている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記開口(14)が上縁及び下縁を有し、ルーバー(16)が前縁(18)から後縁(20)までの長さを有し、ルーバー(16)の長さが、少なくともルーバー(16)で覆われる開口(14)の下縁までの距離、ルーバー(16)の後縁(20)を延ばすに十分長い、請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記開口(14)が側縁を有し、ルーバー(16)が側縁を有し、前記装置が一対の伸長部(26)を更に含み、各伸長部(26)がルーバー(16)の1つの縁及び前面(12)に取付けられる、請求項1記載の装置。
【請求項8】
剛性を付与するためにダクト(10)内に配置された支持棒を更に含む、請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記垂直の入口ダクト(10)がほぼ台形の横断面を有する請求項1記載の装置。
【請求項10】
垂直の入口ダクト(10)がほぼ長方形の横断面を有する請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−272750(P2008−272750A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−109753(P2008−109753)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】