説明

レジスト用樹脂含有溶液の製造方法及びレジスト用樹脂含有溶液

【課題】ディフェクト要因となる異物が低減されたレジスト用樹脂含有溶液の製造方法、及びディフェクトの発生を抑制できるレジスト用樹脂含有溶液を提供する。
【解決手段】本レジスト用樹脂含有溶液の製造方法は、レジスト用樹脂含有溶液を、親水性の濾材層に通液させた後、疎水性の濾材層に通液させる濾過工程を備えており、且つ親水性の濾材層と疎水性の濾材層とが近接していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト用樹脂含有溶液の製造方法及びレジスト用樹脂含有溶液に関する。更に詳しくは、本発明は、ディフェクト要因となる異物が低減されたレジスト用樹脂含有溶液の製造方法、及びディフェクトの発生を抑制できるレジスト用樹脂含有溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子の製造において、リソグラフィ技術の進歩により、急速に微細化が進行している。微細化するための方法としては、例えば、露光光の短波長化や、液浸露光法の利用が挙げられる。ところが、このような微細化方法において、従来のレジスト材料を使用した場合、形成されるレジストパターン表面に欠陥(ディフェクト)が生じやすいという問題がある。尚、「ディフェクト」とは、現像後のレジストパターンを上部から観察した際に検知される不具合全般のことをいう。
そして、近年では、更に高解像度のパターンニングが要求されるようになり、ディフェクトを無視することができなくなってきており、その改善が試みられている。このディフェクト要因には、レジスト樹脂を含有する溶液中に、樹脂の重合の際に副生するオリゴマーや低分子量のポリマー、目的とする重量平均分子量よりも高分子量のポリマー、精製工程等の際に装置、配管及びバルブ等から混入するゴミ、微粒子等といった固形状の異物が存在することが挙げられる。
このようなディフェクト要因を除去するための方法としては、レジスト樹脂を含有する溶液をミクロン単位の孔径を有するフィルターに通液させて濾過を行いながら容器に充填し製品化するという、1回通過方式の濾過方法が知られている。しかしながら、1回通過方式の濾過ではフィルターから充填までの部分の微粒子がレジスト材料に混入してしまうため、濾過初期時の濾過分は利用することができず、十分に端きりをする必要性があり、生産性に問題がある。
【0003】
また、ディフェクト要因を除去する方法としては、フィルターが設置された閉鎖系内において循環させ、レジスト組成物中の微粒子の量を低減する方法(特許文献1参照)、レジスト用粗樹脂を活性炭及びシリカゲルと接触させる方法(特許文献2参照)、ポリアミド系合成繊維製の膜を使用する方法(特許文献3参照)等が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−62667号公報
【特許文献2】特開2006−126818号公報
【特許文献3】特開2005−189789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、急速に微細化が進行している半導体素子や液晶表示素子の製造分野等においては、前述のような方法を用いた場合であっても、前記ディフェクト発生の抑制効果が十分であるとはいえないのが現状である。
【0006】
本発明は、前記実情に鑑みてなされたものであり、レジスト樹脂溶液中に含まれる樹脂の重合の際に副生するオリゴマーや低分子量のポリマー、目的とする重量平均分子量よりも高分子量のポリマー、及びその他のディフェクト要因となり得る異物を効果的に除去できディフェクトの発生を抑制できるレジスト用樹脂含有溶液の製造方法、及びディフェクトの発生を抑制できるレジスト用樹脂含有溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のとおりである。
[1]レジスト用樹脂含有溶液を、親水性の濾材層に通液させた後、疎水性の濾材層に通液させる濾過工程を備えており、且つ前記親水性の濾材層と前記疎水性の濾材層とが近接していることを特徴とするレジスト用樹脂含有溶液の製造方法。
[2]前記親水性の濾材層が、シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、ガラス、イオン交換樹脂膜、ポリアミド系合成繊維及びウレタンのうちから選ばれる少なくとも一種により構成されている前記[1]に記載のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法。
[3]前記疎水性の濾材層が、活性炭、テフロン(登録商標)、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちから選ばれる少なくとも一種により構成されている前記[1]又は[2]に記載のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法。
[4]前記[1]乃至[3]のいずれかに記載のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法により得られることを特徴とするレジスト用樹脂含有溶液。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法によれば、親水性の濾材層に通液させた後、疎水性の濾材層に通液させる特定の濾過工程を備えているため、濾過前のレジスト用樹脂含有溶液に含まれるディフェクト要因である異物、特に目的とする重量平均分子量よりも高分子量のポリマーを効果的に捕集することができる。更には、ディフェクト要因の少ないレジスト用樹脂含有溶液を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0010】
本発明のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法は、レジスト用樹脂含有溶液を、親水性の濾材層に通液させた後、疎水性の濾材層に通液させる濾過工程を備えており、且つ前記親水性の濾材層と前記疎水性の濾材層とが近接していることを特徴とする。
【0011】
本発明のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法におけるレジスト用樹脂含有溶液(濾過前のレジスト用樹脂含有溶液)は、少なくともレジスト用樹脂及び溶剤を含むものであり、酸発生剤や酸拡散制御剤等の他の添加剤を更に含有していてもよい。具体的には、例えば、g線、i線等の紫外線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV等の(超)遠紫外線、電子線等の各種放射線による微細加工に適したレジストを形成可能なポジ型或いはネガ型のレジスト組成物や、多層レジストにおける上層膜や下層膜(反射防止膜等)を形成するための樹脂組成物等のフォトリソグラフィーに使用される樹脂組成物、これらの組成物に用いられるレジスト用樹脂を得るための粗レジスト用樹脂を含有する樹脂溶液等が挙げられる。
【0012】
前記レジスト用樹脂としては、例えば、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、ヒドロキシスチレン系樹脂、ノボラック系樹脂等が挙げられる。尚、このようなレジスト用樹脂は、例えば、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物(単量体)等の所定の重合性化合物を溶剤の存在下で重合させることにより得ることができる。
【0013】
また、前記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の濾過工程において用いられる前記親水性の濾材層(以下、「親水性濾材層」ともいう。)は、シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト(モレキュラーシーブス等)、ガラス、カチオン性若しくはアニオン性のイオン交換樹脂膜、ポリアミド系合成繊維(ナイロン6、ナイロン66等)及びウレタン等のうちから選ばれる少なくとも一種の濾材から構成されることが好ましい。これらの濾材が用いられる場合には、目的とする重量平均分子量よりも高分子量のポリマー異物を効果的に捕集することができる。更には、濾材に起因して発生する異物を抑制することができるため好ましい。
【0015】
また、前記濾過工程においては、前記親水性濾材層にレジスト用樹脂含有溶液を通液させることで、目的とする重量平均分子量よりも高分子量のポリマー異物を効果的に捕集される。更には、その他のディフェクト要因となり得る異物をも効果的に除去することができる。具体的には、例えば、シリカゲルを濾材とするシリカゲルカラムでは、目的とする重量平均分子量よりも高分子量のポリマー異物に加えて、金属異物や未反応モノマー異物を効果的に捕集することができる。また、カチオン性若しくはアニオン性のイオン交換樹脂膜を濾材として用いる場合には、高分子量のポリマー異物に加えて、金属イオン異物や金属成分を効果的に捕集することができる。
【0016】
前記濾過工程において用いられる前記疎水性の濾材層(以下、「疎水性濾材層」ともいう。)は、活性炭、テフロン(登録商標)、ポリエチレン及びポリプロピレン等のうちから選ばれる少なくとも一種の濾材から構成されることが好ましい。これらの濾材が用いられる場合には、前記親水性濾材層と同等以上の異物捕集効果が得られるため好ましい。
【0017】
前記親水性濾材と疎水性濾材との組み合わせては特に限定されないが、例えば、シリカゲルと活性炭との組み合わせ、ヒドロキシアパタイトと活性炭との組み合わせ、ポリアミド系合成繊維とポリエチレンとの組み合わせ、ポリアミド系合成繊維とポリプロピレンとの組み合わせ等が好ましく、特に、ポリアミド系合成繊維とポリエチレンとの組み合わせが好ましい。
【0018】
また、前記各濾材の形態は特に限定されず、シート状のフィルターを用いてもよいし、カラム等に充填して用いられる粉体状のものであってもよい。特に、1次側に親水性濾材が配され且つ2次側に疎水性濾材が配された積層フィルム等の一体型の濾材が好ましい。
【0019】
また、本発明における濾過工程では、前記親水性濾過層と前記疎水性濾過層とが近接しており、それらの間隔が短いため、飛躍的に高分子量のポリマー異物及びその他ディフェクト要因となり得る異物を効果的に除去することができる。
尚、本発明における「近接」の定義は、前記親水性濾材層と前記疎水性濾材層との間隔(距離)が1000mm以下とすることができ、特に0〜500mm、更には0〜200mmとすることができる。この間隔が1000mm以下である場合には、ディフェクト要因となり得る異物を十分除去することができる。
【0020】
前記濾過工程における線速度は、20〜130L/(hr・m)であることが好ましく、より好ましくは40〜110L/(hr・m)である。尚、本発明における「線速度」とは、濾材層の単位時間(hr)、単位面積(m)あたりの対象液通過量(L)をいう。
【0021】
また、本発明のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法が上述の特定の濾過工程を備えることにより、異物除去能力が飛躍的に向上する詳細なメカニズムは未だに明らかとなってはいないが、以下のように推測することができる。
親水性濾材層を構成する親水性濾材にレジスト用樹脂含有溶液が接する場合、目的のレジスト用樹脂は疎水性であるため、ポリマーの分子構造は糸まり状となる。そのため、図6に示すように、ディフェクト要因である目的とする重量平均分子量よりも高分子量のポリマー4(ポリマー異物)も、親水性濾材に接する際には糸まり状のポリマー41となり、親水性濾材に捕集されやすい分子構造をとる。これによって、大部分の高分子量のポリマー異物4は親水性濾材層5に捕集されると推測している(図6における捕集されたポリマー異物411参照)。但し、僅かに残った特定の高分子量のポリマー異物42(即ち、親水性濾過層を通過してしまったポリマー異物)は、致命的なディフェクト要因となり得る。この僅かに捕集されずに残った高分子量のポリマー異物42を捕集するためには、次工程でポリマーとの親和性に優れる疎水性濾過層6に接触させることが適している。
【0022】
しかしながら、一般的な設備では、親水性濾材層と備える濾過装置と、疎水性濾過層を備える濾過装置との間は配管で接続されており、各濾過装置間には、一定以上の間隔(距離)がある。そのため、濾過装置間の配管を流れる間に、溶液の流れの存在により、ポリマー異物の分子鎖は糸まり状から伸びた形状となり、立体的な分子構造としては濾過捕集しにくい構造となってしまい、疎水性濾過層においても捕集されずにポリマー異物が残ってしまっていると推測できる。即ち、図6に示すように、親水性濾過層5と、疎水性濾過層6との間の間隔L2が長くなるほど、ポリマー異物の分子鎖は糸まり状(ポリマー異物42参照)から、分子鎖が伸びた形状(ポリマー異物43参照)となり、疎水性濾過層6に捕集されにくくなっていると考えられる(疎水性濾材層6を通過したポリマー異物431参照)。
一方、本発明における濾過工程では、図5に示すように、親水性濾材層5と疎水性濾材層6とを近接させ、それらの間隔L1を短くすることにより、親水性濾過層5を通過してしまったポリマー異物42を、濾過捕集し易い糸まり状の分子構造となっている状態で疎水性濾過層6に接触させることができ、疎水性濾過層6でポリマー異物を捕集することができるため(疎水性濾過層6で捕集されたポリマー異物421参照)、異物除去能力が飛躍的に向上すると考えられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0024】
[1]レジスト用樹脂含有溶液の製造(実施例1〜3及び比較例1〜5)
<実施例1>
まず、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートとノルボルナンラクトンメタクリレートとの共重合体(レジスト用樹脂、Mw:13000)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液、及び酸発生剤(トリフェニルスルホニウム)を含有する粗レジスト用樹脂含有溶液を調製した。
次いで、溶液タンク、濾過カラム管、ポンプ及び流量計を備える循環濾過装置を組み立てた。尚、図1に示すように、濾過カラム管10(内径:47mm、高さ:110mm)内には、上流側に親水性濾材(シリカゲル、富士シリシア化学株式会社製、商品名「Super Micro Bead Silika Gel」、粒径:30μm)が充填されて形成された親水性濾材層21(厚み;50mm)、及び、下流側に疎水性濾材(活性炭、クラレケミカル社製、商品名「クラレコールPW」)が充填されて形成された疎水性濾材層31(厚み;50mm)を備える。
その後、前記溶液タンク内に、前記粗レジスト用樹脂含有溶液5Lを投入し、常圧下、温度:20℃、線速度:50L/(hr・m)の条件にて濾過を行い、実施例1のレジスト用樹脂含有溶液を製造した。
【0025】
<実施例2>
実施例1と同様にして、溶液タンク、濾過カラム管、ポンプ及び流量計を備える循環濾過装置を組み立てた。尚、図2に示すように、濾過カラム管10(内径:47mm、高さ:110mm)内には、上流側に親水性濾材(ポリアミド系合成繊維(ナイロン66)シート、キュノ株式会社製、商品名「エレクトロポア」、孔径:0.04μm、枚数:1枚)が配設されて形成された親水性濾材層22、及び、下流側に疎水性濾材(ポリエチレンシート、インテグリス社製、商品名「超高分子量ポリエチレンメンブレン」、孔径:0.02μm、枚数:1枚)が配設されて形成された疎水性濾材層32を備える。
次いで、実施例1と同様にして、前記粗レジスト用樹脂含有溶液を溶液タンクに投入して濾過を行い、実施例2のレジスト用樹脂含有溶液を製造した。
【0026】
<実施例3>
溶液タンク、第1濾過カラム管、第2濾過カラム管、ポンプ及び流量計を備える循環濾過装置を組み立てた。この際、各濾過カラム管は、図3に示すように、第1濾過カラム管11(内径:47mm、高さ:110mm)が上流側、第2濾過カラム管12(内径:47mm、高さ:110mm)が下流側となるように、2つのカラム管を直列に接続した。尚、各カラム管の間は配管(内径:4mm、長さ:100mm)(図示せず)で接続されている。また、第1濾過カラム管11内には、親水性濾材(ポリアミド系合成繊維(ナイロン66)シート、キュノ株式会社製、商品名「エレクトロポア」、孔径:0.04μm、枚数:1枚)が配設されており、親水性濾材層23が形成されている。更に、第2濾過カラム管12内には、疎水性濾材(ポリエチレンシート、インテグリス社製、商品名「超高分子量ポリエチレンメンブレン」、孔径:0.02μm、枚数:1枚)が配設されており、疎水性濾材層33が形成されている。
次いで、実施例1と同様にして、前記粗レジスト用樹脂含有溶液を溶液タンクに投入して濾過を行い、実施例3のレジスト用樹脂含有溶液を製造した。
【0027】
<比較例1>
実施例3と同様にして、溶液タンク、第1濾過カラム管、第2濾過カラム管、ポンプ及び流量計を備える循環濾過装置を組み立てた。この際、各濾過カラム管は、図4に示すように、第1濾過カラム管11(内径:47mm、高さ:110mm)が上流側、第2カラム管12(内径:47mm、高さ:110mm)が下流側となるように、2つのカラム管を直列に接続した。尚、各カラム管の間は配管(内径:4mm、長さ:1000mm)(図示せず)で接続されている。また、第1濾過カラム管11内には、親水性濾材(シリカゲル、富士シリシア化学株式会社製、商品名「Super Micro Bead Silika Gel」、粒径:30μmが充填されており、親水性濾材層24(厚み:50mm)が形成されている。更に、第2濾過カラム管12内には疎水性濾材(活性炭、クラレケミカル社製、商品名「クラレコールPW」)が充填されており、疎水性濾材層34(厚み:50mm)が形成されている。
次いで、実施例3と同様にして、前記粗レジスト用樹脂含有溶液を溶液タンクに投入して濾過を行い、比較例1のレジスト用樹脂含有溶液を製造した。
【0028】
<比較例2>
実施例3と同様にして、溶液タンク、第1濾過カラム管、第2濾過カラム管、ポンプ及び流量計を備える循環濾過装置を組み立て、各カラム管の間を、配管(内径:4mm、長さ:1000mm)で接続したこと以外は、実施例3と同様にして、前記粗レジスト用樹脂含有溶液の濾過を行い、比較例2のレジスト用樹脂含有溶液を製造した。
【0029】
<比較例3>
実施例2と同様にして、溶液タンク、濾過カラム管、ポンプ及び流量計を備える循環濾過装置を組み立て、カラム管10内の下流側に親水性濾材層22を形成し、且つカラム管10内の上流側に疎水性濾材層32を形成し、親水性濾材層22と疎水性濾材層32との形成位置を逆にしたこと以外は、実施例2と同様にして、前記粗レジスト用樹脂含有溶液の濾過を行い、比較例3のレジスト用樹脂含有溶液を製造した。
【0030】
<比較例4>
実施例2と同様にして、溶液タンク、濾過カラム管、ポンプ及び流量計を備える循環濾過装置を組み立て、前記カラム管10内の下流側における疎水性濾材層32を、上流側と同様の親水性濾材層22に変更し、親水性の濾材のみとしたこと以外は、実施例2と同様にして、前記粗レジスト用樹脂含有溶液の濾過を行い、比較例4のレジスト用樹脂含有溶液を製造した。
【0031】
<比較例5>
実施例2と同様にして、溶液タンク、濾過カラム管、ポンプ及び流量計を備える循環濾過装置を組み立て、前記カラム管10内の上流側における親水性濾材層22を、下流側と同様の疎水性濾材層32に変更し、疎水性の濾材のみとしたこと以外は、実施例2と同様にして、前記粗レジスト用樹脂含有溶液の濾過を行い、比較例5のレジスト用樹脂含有溶液を製造した。
【0032】
[2]レジスト用樹脂含有溶液の評価
以下の方法により、実施例及び比較例の各レジスト用樹脂含有溶液の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0033】
(1)ディフェクト
8インチシリコンウエハー表面に150nmの乾燥膜厚が得られるように、各レジスト用樹脂含有溶液をスピンコーターにより塗布した後、100℃で90秒間PBを行い、レジスト被膜を形成した。次いで、レジスト被膜に、ArF露光装置(ニコン社製、型番「S306C」)を用い、線幅110nmのラインパターンが220nmのピッチで全面に形成されたフォトマスクを介して、ライン線幅110nmでピッチ220nmのライン・アンド・スペースパターンが形成されるようにArFエキシマレーザーを露光した。
その後、100℃で90秒間PEBを行った後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて、23℃で60秒間現像し、水洗し、乾燥して、現像欠陥検査用の基板を得た。尚、この際、レジスト用樹脂含有溶液の塗布、PB、PEB及び現像は、東京エレクトロン(株)製、型番「ACT8」を用いて、インラインで実施した。
次いで、前記現像欠陥検査用の基板について、欠陥検査装置(ケー・エル・エー・テンコール社製、型番「KLA2351」)を用いて、現像欠陥を評価した。尚、現像欠陥数の算出は、欠陥検査装置のピクセルサイズを0.16um、閾値を13に設定し、アレイモードで測定して、比較イメージとピクセル単位の重ね合わせによって生じる差異から抽出される現像欠陥を検出して評価した。この評価基準は以下の通りである。
「○」;パターン欠陥数がシリコンウェハー1枚当たり30個以下の場合
「×」;パターン欠陥数がシリコンウェハー1枚当たり30個を超える場合
【0034】
(2)放射線透過率
各レジスト用樹脂含有溶液を石英ガラス上にスピンコートにより塗布し、130℃に保持したホットプレート上で90秒間PBを行って、膜厚0.34μmのレジスト被膜を形成した。その後、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製、型番「VUV−VASE」を用いて、レジスト被膜の波長193nmにおける吸光度を測定し、放射線透過率を算出して、遠紫外線領域における透明性の尺度とした。即ち、この透明性が低いほど、異物含有量が多いといえる。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、本実施例の各レジスト用樹脂含有溶液を用いた場合にはディフェクトの発生を十分に抑制できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】濾過カラムの構成を説明する模式図である。
【図2】濾過カラムの構成を説明する模式図である。
【図3】濾過カラムの構成を説明する模式図である。
【図4】濾過カラムの構成を説明する模式図である。
【図5】濾過工程における推定メカニズムを説明する模式図である。
【図6】濾過工程における推定メカニズムを説明する模式図である。
【符号の説明】
【0038】
10;カラム管、11;第1濾過カラム管、12;第2濾過カラム管、21,22,23,24;親水性濾材層、31,32,33,34;疎水性濾材層、4、41;ポリマー異物、411;親水性濾材層に捕集されたポリマー異物、42、43;親水性濾材層を通過したポリマー異物、421;疎水性濾材層に捕集されたポリマー異物、431;疎水性濾材層を通過したポリマー異物、5;親水性濾材層、6;疎水性濾材層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト用樹脂含有溶液を、親水性の濾材層に通液させた後、疎水性の濾材層に通液させる濾過工程を備えており、且つ前記親水性の濾材層と前記疎水性の濾材層とが近接していることを特徴とするレジスト用樹脂含有溶液の製造方法。
【請求項2】
前記親水性の濾材層が、シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、ゼオライト、ガラス、イオン交換樹脂膜、ポリアミド系合成繊維及びウレタンのうちから選ばれる少なくとも一種により構成されている請求項1に記載のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法。
【請求項3】
前記疎水性の濾材層が、活性炭、テフロン(登録商標)、ポリエチレン及びポリプロピレンのうちから選ばれる少なくとも一種により構成されている請求項1又は2に記載のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のレジスト用樹脂含有溶液の製造方法により得られることを特徴とするレジスト用樹脂含有溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−282331(P2009−282331A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134761(P2008−134761)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】