説明

レンズアクチュエータ

【課題】
現在、携帯電話等に搭載されている撮像機能について、薄型化の点に於いて有利な伸縮部材を駆動源とするレンズアクチュエータが用いられている。しかしながら、これらのレンズアクチュエータはその構造上、薄型化に際してレンズ径が縮小するという課題を有している。
【解決手段】
環状配置した梃子部を連結する連結梃子型のレンズアクチュエータ構造とした上で、光軸方向の変位に変換する梃子部を同じく光軸方向に重ねて配置することで、薄型化とレンズ径の拡大とを両立する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズホルダの光軸を囲むようにして、駆動源である圧電素子と、該圧電素子の変位を拡大する第1梃子部と、該梃子部によって拡大された変位を前記レンズホルダの光軸方向に沿った変位に変換する第2梃子部とを配置し、前記レンズホルダの光軸に沿った移動を行うレンズアクチュエータに関する。
【0002】
現在、携帯電話等に搭載されている撮影ユニットには、撮像素子とレンズアクチュエータからなる構成のものが広く用いられている。この様なレンズアクチュエータはその用途上、低消費電力と即応性の両方を要求される。この様な要求に対して、圧電素子に代表される、単体で伸縮方向への変位発生が可能なデバイスを駆動源として用いる事によって前記要求を満たしたレンズアクチュエータがある。前記レンズアクチュエータは、該伸縮方向の変位を拡大することで消費電力の削減と即応性とを両立させており、例えば特開2008−034077(以下特許文献1として記載)及び特開2009−258300(以下特許文献2として記載)として出願後、公開された構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−034077
【特許文献2】特開2009−258300
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した利点を有している一方で近年、携帯電話の薄型化及び小型化が進み、特許文献1及び2に記載のアクチュエータに対して、アクチュエータの搭載面積に対するレンズ径の拡大が要求されている。この要求に対して、特許文献1記載レンズアクチュエータはその構造上、厚みを薄くすることによって駆動源となる圧電素子の幅を縮小する為、圧電素子の厚み増加等によって駆動力の低下を補う必要があった。また、特許文献2に記載の構造では変位拡大機構を交差させている為に搭載できるレンズ径が縮小されてしまうという課題を有している。加えて、特許文献2に記載の構造は前記変位拡大機構の交差部分同士が干渉を起こす危険性がある。
【0005】
上記課題を解決する為に本願記載のレンズアクチュエータは、薄型化に際してもレンズ径を縮小することなく、安定して動作させることが可能なレンズアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的のために本発明に於ける第1の態様では、圧電素子が発生する変位を、該圧電素子両端を力点とする一組の第1梃子部によって拡大し、各第1梃子部の作用点を用いて一組の第2梃子部を動かすことで、第2梃子部の作用点に取り付けられたレンズホルダを駆動する連結梃子型のレンズアクチュエータ構造を用いている。また、本態様では前記一組の第2梃子部について、前記圧電素子の伸縮方向と直交するレンズ駆動方向に重ねて配置することを特徴としている。
【0007】
また、本発明第2の態様では、前記第2梃子部について、板材を用いた構造を用いている。より具体的には、板材の曲げ加工によって前記一組の第2梃子部を構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この様な構造を用いた事で本発明記載のレンズアクチュエータは、搭載するレンズ径を拡大することを可能としている。ここで、本願記載のレンズアクチュエータは特許文献2に記載のレンズアクチュエータと同様に、連結梃子型の駆動構造を用いている。この駆動構造は、駆動するレンズの外周全体に各梃子部を配置することで梃子部分の長さを確保することができると言う利点を有している。更に、駆動源となる圧電素子も同様にレンズ外周に配置する為、駆動力及び拡大率を大きく設定しつつ、レンズ駆動部分がレンズの光軸を遮らない構造とすることが出来ると言う利点も有している。
【0009】
この様な利点を有する従来の構造に対して本願記載の構造では、レンズを光軸方向に駆動する第2梃子部について、レンズ駆動方向に重ねた配置としている。この為、本願記載の構造は特許文献2に代表される従来の連結梃子型構造に対して、第2梃子部が必要としていたレンズ径方向の配置スペースを縮小することによる搭載レンズ径の拡大と共に、第2梃子部の長さを維持したことによって従来と同様の可動範囲でレンズ駆動を行うことを可能としている。
【0010】
また、第2梃子部を前記配置としたことで、本願記載のレンズアクチュエータでは第1梃子部同士及び第2梃子部同士の長さを各梃子部毎に揃えることができた。この為、レンズ駆動時に於いて同じ梃子部間に於ける長さの違いに起因したレンズ駆動時の傾きを解消し、レンズの駆動範囲全体で安定した焦点調節を行うことが可能となっている。加えて、長さを揃えたことで梃子としての剛性差もまた減少する為、レンズ駆動時のブレ及び振動を改善することができる。
【0011】
また、第2梃子部をレンズ駆動方向に重ねて配置したことで、第2梃子部駆動時に発生する、第2梃子部同士の接触及び干渉を防ぐことが可能となった。この為、落下等の衝撃を受けても駆動力を伝達する各梃子部に対して変形及び干渉による破損を生じにくい構造となり、全体的な耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明第2の態様を用いることで、本願記載のレンズアクチュエータは第2梃子部を用いたレンズホルダの駆動時、直交方向への変位拡大によって生じる捻れ応力を板材が有する弾性によって分散させることが可能となる。また、板材の曲げ加工によって第2梃子部を構成した為、本態様の第2梃子部はダンパとしても機能する構造になる。従って、本態様の構造では落下等の衝撃時に於いてレンズホルダを保護し、該衝撃時に於いて光学素子−レンズ間に生じるズレを抑制することができる。
【0013】
以上述べたように、本発明記載の構造を用いることで薄型化に際してもレンズ径を縮小することなく、安定して動作させることが可能なレンズアクチュエータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の最良の実施形態にて用いるレンズアクチュエータの斜視図
【図2】図1に示したレンズアクチュエータの分解斜視図
【図3】図1に示したレンズアクチュエータのレンズホルダを外した状態での斜視図
【図4】図2に示した第2梃子部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図1、図2、図3及び図4を用いて、本発明に於ける最良の実施形態を示す。
【0016】
図1に本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータの全体斜視図を、図2に分解斜視図を、図3にレンズホルダを外した状態での斜視図を、そして図4に第2梃子部の斜視図をそれぞれ示す。
【0017】
図1及び図2に示すように、本実施形例記載のレンズアクチュエータは駆動源となる圧電素子1の発生する伸縮方向Aの変位を、背面板3の両端部を支点、各第1梃子部4と圧電素子1とスペーサ2からなる駆動部の両端部を力点とする梃子によって拡大し、更に作用点となる第1梃子部端部の変位方向を、両第1梃子部4に取り付けた第2梃子部5によって光軸方向Cの変位に変換し、第2梃子部5に取り付けたレンズホルダ6を駆動する連結梃子型の駆動構造を用いている。
【0018】
図1から解るように、本実施例に於いて用いるレンズアクチュエータは第2梃子部5を光軸方向Cに重ねた構造となっている。この様な構造を用いたことで本実施例記載のレンズアクチュエータは、レンズホルダ6及び搭載するレンズ径を拡大することが可能になる。これに伴い、レンズアクチュエータとして使用する際の光量を増加させることができると共に、レンズアクチュエータと対になる撮像素子について、従来よりも大型の素子を使用することが可能となった。
【0019】
また、前記第2梃子部5を光軸方向に重ねた構造とすることで、本実施例記載のレンズアクチュエータではレンズ駆動時に於けるレンズホルダ6の安定性を向上させることができた。これは、本発明及び実施形態記載のレンズアクチュエータが、第2梃子部−第1梃子部間を直接繋いで接続部を構成した構造を用いていることによる効果である。即ち、両第1梃子部に於ける長さの違いがそのまま第2梃子部の変位量差となる特許文献2に記載の従来構造と比較して、本実施例記載の構造は力点となる圧電素子端部から作用点となる接続部までの平面距離が等しくなっている。この為、本実施形態では両第2梃子部に対して、両端から偏り無く梃子部変位方向Bの力を加えることができ、上述したレンズホルダ6の安定性を向上させることができた。
【0020】
また、光軸方向Cに両第2梃子部5を重ねて配置したことで、落下等の衝撃を受けた際に両第2梃子部6が互いに衝撃を吸収することが可能となった。これは、該配置に加えて、本実施形態に於いて用いた第2梃子部5が、板材の曲げ加工で構成されていることによる。即ち、光軸方向Cに重ねて配置した第2梃子部5に用いられている板材がバネとして機能することで第2梃子部全体がダンパとして働き、落下等によってレンズホルダに加わる衝撃を緩和すると共に第2梃子部5が受ける衝撃を第2梃子部内で分散することが可能となっている。また、板材によって第2梃子部5を構成したことで、第1梃子部4から伝達される変位を直交する光軸方向Cの変位に変換する際に発生する捻れ応力を各第2梃子部全体で吸収し、光軸方向Cに対して滑らかなレンズ駆動を行うことができた。
【0021】
加えて、図2、図3及び図4から解るように、本実施形態では第1梃子部4と背面板3とを別体に成形し、第2梃子部5を前記板材とした上で、第2梃子部5に補強用のブロック8を設けた構造を用いている。この為、前述した衝撃吸収効果を第2梃子部5の板材部分で維持しつつ、梃子部として機能する第1梃子部4及び第2梃子部5の一部について選択的に強度を向上させ、駆動時に於ける応力損失の低減と前記耐衝撃性の維持とを両立している。
【0022】
また、従来の特許文献2に代表される従来の構造では、弾性を有する板材によって構成した第2梃子部を平面方向に並べて配置していた為に、光軸方向Cと直交する平面方向の振動に際して第2梃子部同士が接触し、互いの動作を妨げる危険性があった。この様な課題に対して本実施形態では上述した光軸方向Cに重ねた第2梃子部の配置によって、両第2梃子部間での接触による破損及び動作不良を防ぐことが可能となっている。即ち、本実施形態記載の構造で前記平面方向の振動を受ける場合、第2梃子部5の重ねた方向と振動方向とが直交している為、互いの動作を妨げることなく駆動させることが可能となる。
【0023】
以上述べた様に本実施形態記載のレンズアクチュエータを用いることで、薄型化に際してもレンズ径を縮小することなく、安定して動作させることが可能なレンズアクチュエータを提供することができた。
【符号の説明】
【0024】
1 圧電素子
2 スペーサ
3 背面板
4 第1梃子部(梃子部)
5 第2梃子部(レンズ駆動部)
6 レンズホルダ
7 ベース部
8 補強用ブロック
A 圧電素子伸縮方向
B 梃子部変位方向
C 光軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子を有する駆動部と、
前記駆動部の伸縮方向両端をそれぞれ力点として表面に固定した板状の第1梃子部と、
前記各第1梃子部の片側端部同士を繋ぐ背面板によって支点を構成し、
前記各第1梃子部の作用点となる各他端部に生じる変位を、
前記駆動部の伸縮方向と直交する方向の変位に変える第2梃子部に連結した連結梃子型のレンズアクチュエータであって、
前記第2梃子部を、前記直交する方向に重ねて配置したレンズアクチュエータ。
【請求項2】
板材を用いて前記第2梃子部を構成した請求項1記載のレンズアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−93782(P2012−93782A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4532(P2012−4532)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2009−277512(P2009−277512)の分割
【原出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【出願人】(502254796)有限会社メカノトランスフォーマ (22)
【Fターム(参考)】