説明

レンズモジュールの製造方法

【課題】レンズユニットを光軸方向に移動させる際にレンズが光軸方向に対してこじれないようにする。
【解決手段】光軸方向D1、D3に移動可能なレンズユニット102を少なくとも1つ備えるレンズモジュール103の製造方法であって、基板に複数のレンズ152が形成されたレンズ基板150を形成するレンズ基板形成工程S11と、レンズ基板に形成された複数のレンズの各レンズの周縁部153の光軸方向での厚さを付加する厚み付加工程S12を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズモジュールの製造方法、レンズモジュール、カメラモジュール、及び電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、カメラモジュールは、携帯電話機、携帯型コンピュータ等の携帯型の電子機器等への搭載が進んでおり、いわゆるウェハレベルのカメラモジュールが提案されている。
【0003】
このようなウェハレベルのカメラモジュールとして、ウェハレベル・チップサイズ・パッケージ構造の固体撮像素子チップと、固体撮像素子チップの周囲を覆う筒状の外枠体によって構成されたカメラモジュールが特許文献1に開示されている。当該カメラモジュールは、外枠体の一端に固体撮像素子チップにおける受光面に集光される複数のレンズを保持するレンズバレルが螺着固定され、他端に固体撮像素子チップの面一の端面が嵌合されている。そして、レンズの光軸が固体撮像素子チップの受光面の中心に垂直固定されるようにして、固体撮像素子チップをレンズバレルに取付ける際の光軸ずれを最小限に抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−166939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、携帯電話等の電子機器に用いられるカメラモジュールは、電子機器の小型化に伴って、さらなる小型化、及びズームやオートフォーカス等の機能の具備等の高性能化も要請されている。例えば、レンズユニット内の群内偏芯のみならず、複数のレンズユニットを含むカメラモジュールにおけるレンズユニット間の群間偏芯が生じないように、カメラモジュールの高精度化がカメラモジュールの小型化と共に要求される。また、カメラモジュールの小型化、高性能化に加えて、その製造工程を含むコストや手間の低減が求められている。
【0006】
本発明に係る幾つかの態様によれば、精度の高いレンズモジュール及びカメラモジュールを効率よく製造できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、光軸方向に移動可能なレンズユニットを少なくとも1つ備えるレンズモジュールの製造方法であって、基板に複数のレンズが形成されたレンズ基板を形成するレンズ基板形成工程と、前記レンズ基板に形成された各レンズの周縁部に対して前記光軸方向に厚みを付加する厚み付加工程と、を含むレンズモジュールの製造方法に関係する。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、レンズ基板が薄くなっても、レンズユニットの光軸方向の厚みを確保できる。このため、レンズユニットを光軸方向に移動させる際にレンズユニットがこじれることがなく、レンズユニット間の群間偏芯の発生を抑制できる。
【0009】
このとき、請求項2に記載の発明では、前記厚み付加工程では、前記レンズと当接する部分に開口部を形成したスペーサと前記レンズ基板とを積層してもよい。
【0010】
このようにすれば、レンズユニットの光軸方向の厚みを確保できるので、レンズユニットを光軸方向に移動した際に、レンズユニットががたついたり、レンズがこじれることを防止できる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、前記レンズモジュールは、少なくとも1つのスペーサを介して積層された複数の前記レンズ基板を、前記レンズごとに切り分けることによって前記レンズユニットを形成してもよい。
【0012】
このようにしても、レンズユニットの光軸方向の厚みを確保することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明では、前記レンズ基板と前記スペーサとを接着して互いに固定する工程を含むようにしてもよい。
【0014】
また、請求項5に記載の発明では、前記レンズ基板と前記スペーサとを接着しないことによって、前記レンズ基板と前記スペーサとの光軸方向の間隔を可変としてもよい。
【0015】
また、請求項6に記載の発明では、前記レンズモジュールは、第1のレンズ基板と第2のレンズ基板とを含み、前記第1のレンズ基板と前記第2のレンズ基板とを接着しないことによって、前記第1のレンズ基板と前記第2のレンズ基板との光軸方向の間隔を可変としてもよい。
【0016】
また、請求項7に記載の発明では、前記レンズモジュールは、第1のスペーサと第2のスペーサとを含み、前記第1のスペーサと前記第2のスペーサとを接着しないことによって、前記第1のスペーサと前記第2のスペーサとの光軸方向の間隔を可変としてもよい。
【0017】
請求項4〜7に記載の発明によれば、光軸方向に移動可能な複数のレンズユニットを含むレンズモジュールを、より効率よく容易に製造することができる。
【0018】
また、請求項8に記載の発明では、前記スペーサが絞り機能を備えるように形成してもよい。
【0019】
このようにすれば、レンズモジュールに絞り機能を容易に持たせることができる。
【0020】
また、請求項9に記載の発明では、前記厚み付加工程では、前記各レンズの前記周縁部の前記光軸方向に厚みを付加するスリーブ部を前記各レンズの周縁部に形成してもよい。
【0021】
このようにしても、レンズユニットの光軸方向の厚みを確保することができる。
【0022】
また、請求項10に記載の発明では、前記厚みが付加された前記各レンズの周縁部を前記光軸方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、前記貫通孔に軸部を挿通する軸部挿通工程と、を含むようにしてもよい。
【0023】
このようにすれば、光軸方向に移動可能なレンズユニットを効率よく製造することができる。
【0024】
また、請求項11に記載の発明では、前記貫通孔形成工程では、前記各レンズの前記周縁部を前記光軸方向に貫通する少なくとも2つの貫通孔を形成し、前記少なくとも2つの貫通孔のうちの1つを長穴形状に形成してもよい。
【0025】
このようにすれば、レンズ基板を積層させて光学素子に切り分けてレンズモジュールを製造する際に、誤って光学素子を逆方向に設置するのを未然に防げるようになる。
【0026】
また、請求項12に記載の発明では、前記軸部挿通工程の後に、前記レンズ基板に形成された前記複数のレンズの各々に切り分ける切断工程と、前記切断工程後に前記レンズユニットを光軸方向に移動させて前記レンズモジュールを組み立てる組立工程と、を含むようにしてもよい。
【0027】
このようにすれば、精度のよい複数のレンズユニットを効率よく製造することができるようになる。
【0028】
また、請求項13に記載の発明は、光軸方向に移動可能なレンズユニットを少なくとも1つ備えるレンズモジュールであって、前記レンズユニットは、基板に複数のレンズが形成されたレンズ基板から前記複数のレンズの各レンズを切り分けることで形成された光学素子と、前記光学素子の前記各レンズの周縁部の前記光軸方向に厚みを付加するために設けられたスペーサ又はスリーブ部と、を含むレンズモジュールに関係する。
【0029】
請求項13に記載の発明によれば、レンズユニットの光軸方向の厚みを確保できるので、レンズユニットを光軸方向に移動させる際に、レンズが光軸方向に対してぶれにくくなるので、レンズユニットのレンズが光軸方向に対して偏芯するのを抑制することができる。
【0030】
このとき、請求項14に記載の発明では、前記周縁部及び前記スペーサ又はスリーブ部を前記光軸方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔と、前記貫通孔を挿通する軸部と、を含むようにしてもよい。
【0031】
このようにすれば、レンズユニットを軸部に沿って光軸方向に移動させる際に、レンズユニットと軸部が嵌合する部分を光軸方向に大きく確保することができるので、レンズユニットの光軸方向に移動させる際の光軸方向に対する偏芯を抑制できる。
【0032】
また、請求項15に記載の発明は、上記に記載のレンズモジュールと、前記レンズモジュールにて結像された光を電気信号に変換する撮像素子と、を含むカメラモジュールに関係する。
【0033】
また、請求項16に記載の発明は、上記に記載のカメラモジュールを含む電子機器に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1(A)は第1の実施形態のカメラモジュールの第1構成例の平面図、図1(B)は図1(A)におけるA−A断面図。
【図2】図2(A)は第1の実施形態のカメラモジュールの第2構成例の平面図、図2(B)は図2(A)におけるB−B断面図。
【図3】本実施形態に係るレンズモジュールの製造方法を示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態のレンズモジュールの製造方法におけるレンズ基板形成工程の概略的な説明図。
【図5】同実施形態のレンズモジュールの製造方法における厚み付加工程の概略的な説明図。
【図6】本実施形態に係るレンズモジュールの製造方法の厚み付加工程を示すフローチャート。
【図7】同実施形態のレンズモジュールの製造方法における軸部挿通工程の概略的な説明図。
【図8】同実施形態のレンズモジュールの製造方法における切断工程の概略的な説明図。
【図9】同実施形態のレンズモジュールの製造方法における組立工程の概略的な説明図。
【図10】同実施形態のレンズモジュールの製造方法における他の態様の切断工程の概略的な説明図。
【図11】同実施形態のレンズモジュールに含まれる絞り機能を備えたスペーサの断面図。
【図12】光学素子の一実施形態の平面図。
【図13】図13(A)、図13(B)は、第2の実施形態のレンズモジュールの製造方法の概略的な説明図。
【図14】本実施形態のカメラモジュールを含む電子機器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0036】
1.第1の実施形態
1.1.構成
図1(A)、図1(B)に本発明の第1の実施形態のレンズモジュールを含むカメラモジュールの第1の構成例を示す。図1(A)は、本実施形態のカメラモジュールの第1の構成例の平面図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A断面図である。
【0037】
第1の構成例のカメラモジュール100は、図1(B)に示すように、レンズユニット102、アクチュエーター104、撮像素子108、IRカットフィルタ110、及び撮像レンズ112を含む。第1の構成例では、カメラモジュール100は、1つのレンズユニット102がアクチュエーター104によって光軸方向D1、D3に移動可能な構成となっているレンズモジュール103にて結像された光を撮像素子108で電気信号に変換する。
【0038】
撮像素子108は、例えばCCDであり、受光した光に応じた信号を出力する。撮像素子108は、図1(B)に示すように、回路基板106に設けられ、撮像素子108とレンズユニット102の間には、赤外線をカットするためのIRカットフィルタ110が設けられている。
【0039】
本実施形態では、レンズモジュール103に含まれるレンズユニット102は、レンズ116が形成された光学素子114にスペーサ118が光軸方向D1に接着して設けられている。すなわち、光学素子114のレンズ116の周縁部115の光軸方向D1、D3に厚さを持たせるように、スペーサ118が光軸方向D1に接着されている。
【0040】
このように光学素子114にスペーサ118を接着することによって、カメラモジュール100の小型化に伴って光学素子114が薄くなっても、スペーサ118によって光軸方向D1、D3に、レンズユニット102に厚みを持たせることができる。このため、レンズユニット102を光軸方向D1、D3に移動させるアクチュエーター104がレンズユニット102を支持する部分を、より大きく確保できるようになる。これにより、レンズユニット102をがたつかせることなく、またレンズユニット102のレンズ116をこじらせることなく、より安定した状態でアクチュエーター104によりレンズユニット102を支持できるようになる。このようにアクチュエーター104がレンズユニット102を安定して支持することによって、レンズユニット102がアクチュエーター104によって光軸方向D1、D3に移動する際に、レンズユニット102が撮像レンズ112の光軸方向に対してぶれることを抑制するので、光軸方向D1、D3に対する偏芯の発生を防止できる。
【0041】
図2(A)、図2(B)に本発明の第1の実施形態のレンズモジュールを含むカメラモジュールの第2の構成例を示す。図2(A)は、本実施形態のカメラモジュールの第2の構成例の平面図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B断面図である。
【0042】
第2の構成例のカメラモジュール120は、図2(B)に示すように、第1のレンズユニット122、第2のレンズユニット124、シャフト126(軸部)、撮像素子108、及びIRカットフィルタ110を含む。第2の構成例では、カメラモジュール120は、2つのレンズユニット122、124がシャフト126に対して摺動自在に嵌合されている。そして、当該シャフト126を介して光軸方向D1、D3に移動可能な構成となっているレンズモジュール123にて結像された光を、撮像素子108で電気信号に変換する。
【0043】
本実施形態では、第1のレンズユニット122では、先端側レンズ130が形成された先端側光学素子128と後端側レンズ134が形成された後端側光学素子132との間に、スペーサ136が光軸方向D1、D3に接着して設けられている。すなわち、光学素子128、132のレンズ130、134の周縁部129、133の光軸方向D1,D3での厚さを持たせるように、スペーサ136が光軸方向D1、D3に接着されている。そして、第1のレンズユニット122は、当該スペーサ136をスリーブ部としてシャフト126に摺動自在に嵌合されている。
【0044】
また、同様にして、第2のレンズユニット124では、先端側レンズ140が形成された先端側光学素子138と後端側レンズ144が形成された後端側光学素子142との間に、スペーサ146が光軸方向D1、D3に接着して設けられている。すなわち、光学素子138、142のレンズ140、144の周縁部139、143の光軸方向D1,D3での厚さを、例えば、少なくとも光学素子138、142に形成されたレンズ140、144よりも厚くなるように、スペーサ146が光軸方向D1、D3に接着されている。そして、第2のレンズユニット124は、当該スペーサ146をスリーブ部としてシャフト126に摺動自在に嵌合されている。
【0045】
このように光学素子128、132、138、142にスペーサ136、146を接着することによって、カメラモジュール120の小型化に伴って光学素子128、132、138、142が薄くなっても、レンズユニット122、124をスペーサ136、146によって光軸方向D1、D3に厚みを持たせることができる。このため、シャフト126がレンズユニット122、124と嵌合する部分を、光軸方向D1、D3に大きく確保することができる。従って、レンズユニット122、124がシャフト126を介して光軸方向D1、D3に移動する際に、レンズユニット122、124が光軸方向D1、D3に対してぶれずに、光軸方向D1、D3に対する偏芯の発生を抑制できる。
【0046】
1.2.製造方法
図3は、本実施形態に係るレンズモジュールの製造方法を示すフローチャートである。本実施形態では、レンズモジュールの製造方法は、主にウェハレベルのカメラモジュールに含まれるレンズモジュールの製造に使用され、図3に示すように、レンズ基板形成工程S11、厚み付加工程S12、軸部挿通工程S13、切断工程S14、及び組立工程S15を含む。
【0047】
図4は、レンズ基板形成工程S11の概略的な説明図を示す。レンズ基板形成工程S11では、図4に示すように、ガラスや透明な樹脂等からなる光学ウェハである基板150の上に複数(例えば数千個)のレンズ152を形成する。本実施形態では、レンズ基板150は、例えば半導体製造で一般的なリソグラフィ技術、エッチング技術等を使用して形成する。なお、レンズ基板形成工程S11にレンズ基板150に形成された各レンズ152の周縁部153に前記光軸方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を形成する貫通孔形成工程を含むこととしてもよい。すなわち、厚み付加工程S12の前に各レンズ152の周縁部153を光軸方向D1、D3に貫通する少なくとも1つの貫通孔154、156を、エッチング技術等により形成することとしてもよい。
【0048】
図5は、厚み付加工程S12の概略的な説明図を示す。厚み付加工程S12では、レンズ基板形成工程S11でレンズ基板150に形成された各レンズ152の周縁部153の光軸方向D1での厚さが光軸方向D1、D3方向に厚くなるように、周縁部153に厚みを付加する。本実施形態では、図5に示すように、レンズ基板150と略同一の大きさであり、レンズ基板150上に所定の厚さを有し、かつレンズ152と当接する部分に開口部182を形成したスペーサ(切断前)180を載置することによって、レンズ152の周縁部153に厚みを付加する。
【0049】
このように本実施形態では、レンズユニットの光軸方向D1、D3に厚みを持たせるために、図5に示すように、厚み付加工程S12で、レンズ基板150、160と、切断前のスペーサ170、180、190とを積層させる。なお、光軸方向D1、D3に厚さが確保されていれば、積層されるスペーサの枚数は、何枚でもよい。
【0050】
厚み付加工程S12において、レンズ基板150のレンズ152とレンズ基板160のレンズ162との間隔を一定に固定する場合は、レンズ基板150とスペーサ180との間、及びスペーサ180とレンズ基板160との間に接着剤等を塗布して接着する。これに対して、双方のレンズ152、162を光軸方向D1、D3に接離自在にする場合には、レンズ基板150とスペーサ180、又はスペーサ180とレンズ基板160との間を非接着にして、そのまま積層する。以下、厚み付加工程S12でレンズ基板とスペーサとを積層する動作の詳細について、図6に示すフローチャートを用いながら説明する。
【0051】
厚み付加工程S12で、少なくとも1つのスペーサを介して第1〜第Nのレンズ基板を積層する際は、図6に示すように、まず第iのレンズ基板に対して第i+1のレンズ基板が光軸方向に移動させるか否かを判断する(S61)。第iのレンズ基板に対して第i+1のレンズ基板を固定する場合には、第iのレンズ基板とスペーサとの間に接着剤を塗布してから(S62)、第iのレンズ基板の上にスペーサを積層する(S63)。その後、第iのレンズ基板の上に積層したスペーサと第i+1のレンズ基板との間に接着剤を塗布し(S64)、その上に第i+1のレンズ基板を積層して(S65)、第iのレンズ基板とスペーサとの間、及びスペーサと第i+1のレンズ基板との間を接着する。
【0052】
これに対して、第iのレンズ基板に対して第i+1のレンズ基板を固定せず、光軸方向に移動させる場合には、図6に示すように、第iのレンズ基板とスペーサとの間の接着剤の塗布を省略して非接着にし、そのまま第iのレンズ基板の上にスペーサを積層する(S63)。
【0053】
また、本実施形態では、スペーサ170、180、190のうち、開口部172、182,192の周縁部には、光軸方向D1、D3に貫通するシート側貫通孔194、196が、レンズ基板150、160に形成された複数のレンズ152、162の各レンズの周縁部153、163に形成された貫通孔154、156と重なる位置に形成されている。このように貫通孔194、196を形成することによって、厚み付加形成工程S12で、レンズ基板150、160及びスペーサ170、180、190を積層する際に、レンズ基板150、160の貫通孔154、156と、スペーサ170、180、190のシート側貫通孔194、196とを位置合わせに利用することができる。すなわち、レンズ基板150、160の貫通孔154、156と、スペーサ170、180、190のシート側貫通孔194、196が光軸方向に貫通する配置となるように、位置決めを行うことができる。このため、レンズ基板150、160とスペーサ170、180、190を積層させてレンズユニットを製造する際の位置ずれを未然に防止して、レンズモジュールを製造する際の精度が向上する。また、後述の軸部となるシャフトSH1、SH2に対して円滑にレンズユニットが移動可能とするために、貫通孔154、156、194、196の表面を、摺動性を有する材質でコーティングすることが好ましい。
【0054】
なお、本実施形態では、厚み付加工程S12でレンズ基板150,160にスペーサ170、180、190を積層する前に貫通孔154、156、194、196が形成されているが、当該貫通孔154、156、194、196は、厚み付加工程S12の後、又は厚み付加工程S12の間に行うこととしてもよい。すなわち、例えば、レンズ基板150、160及びスペーサ170、180、190の端部に位置決め用のマーキングをエッチング技術等により別途形成しておけば、レンズ基板150、160及びスペーサ170、180、190を積層してから、貫通孔154、156、194、196を形成してもよい。このように、レンズ基板150、160及びスペーサ170、180、190を積層してから貫通孔154、156、194、196を形成する方が貫通孔154、156、194、196の位置が各レンズ基板150、160及びスペーサ170、180、190の間で互いにずれることがなくなって、位置精度を確保することができるので望ましい。
【0055】
図7は、軸部挿通工程S13の概略的な説明図を示す。厚み付加工程S12が完了すると、図7に示すように、ステンレス等の金属や硬質の樹脂等からなる軸部であるシャフトSH1、SH2を、貫通孔194、196に摺動させるようにして挿通させる(軸部挿通工程S13)。
【0056】
図8は、切断工程S14の概略的な説明図を示し、図9は、組立工程S15の概略的な説明図を示す。軸部挿通工程S13が完了すると、図8に示すように、ダイシングによってレンズユニット111ごとに切り離す(切断工程S14)。そして、図9に示すように、レンズモジュール101の所望の光学性能を実現するために、各レンズユニット111a、111b、111cを光軸方向D1、D3に移動させ、レンズユニット111a、111b、111c間の距離を所望の大きさに設定して、レンズモジュールを組み立てる(組立工程S15)。このとき、厚み付加工程S12で、上述のようにレンズユニット111a、111b、111c間を非接着にしておけば、レンズユニット111a、111b、111c間の光軸方向の距離を調整できる。また、図9の実施形態では、各レンズユニット111a、111b、111c内に含まれる光学素子及びスペーサは、厚み付加工程S12で互いに接着されて積層されている。
【0057】
このように、本実施形態では、レンズユニットを構成する各レンズの厚さが薄くても、スペーサとレンズ基板とを積層させることで、レンズ群の厚みを確保することができる。従って、レンズユニットを光軸方向に移動させる際にレンズユニットがこじれることがなく、各レンズユニット間の群間偏芯の発生を抑制することができる。そして、ズームやオートフォーカス等の機能を備えるために、光軸方向に移動可能な複数のレンズユニット111a、111b、111cを含むレンズモジュール101を容易に効率よく複数まとめて製造することができる。
【0058】
また、本実施形態では、積層したレンズ基板150、160及びスペーサ170、180、190をダイシングによって切り分けて形成される光学素子及びスペーサが、ダイシングの際に互いにバラバラにならないようにするために、軸部挿通工程S13の完了後に切断工程S14を実行したが、切断工程S14を実行してから軸部挿通工程S13を実行してもよい。
【0059】
また、図7、図8は、レンズユニットをシャフトによって光軸方向に移動させる構成例だが、これに対して、前述した本実施形態の第1の構成例のように、アクチュエーターによってレンズユニットを光軸方向に移動可能としてもよい。図10は、第1の構成例のレンズモジュールの製造方法の切断工程S14の概略的な説明図を示す。この場合では、厚み付加工程S12が完了したら、軸部挿通工程S13を省略して切断工程S14を実行して、図10に示すようなレンズユニット111dを形成する。
【0060】
図11に絞り機能を備えたスペーサの断面図を示す。本実施形態では、図11に示すように、レンズ基板150、160と、絞り機能をもたせたスペーサ175とを積層することもできる。
【0061】
すなわち、厚み付加工程S12において、絞りを設置したい位置に絞り機能付きスペーサ175を積層する。絞り機能付きスペーサ175の開口部176は、レンズ基板160に形成されたレンズ162に当接し、その内側斜面176aは、入射した光を拡散させるために、ギザギザ形状となっている。
【0062】
このようにレンズモジュールを構成するスペーサに絞り機能をもたせることによって、所望の位置に絞りを設置したレンズモジュールを容易に製造することができる。なお、絞り機能を確保する構成は、図11に限定されない。
【0063】
ここで、スペーサ170、180、190、及び絞り機能付きスペーサ175の材質は、ダイシングができる材質であって、遮光黒色で、ある程度の強度があり、かつ摺動性が良いか、シャフトコートが出来る材質であることが好ましい。また、レンズユニットの光軸方向D1、D3の移動を円滑にするために、スペーサ170、180、190の貫通孔の表面を、摺動性を有する材質でコーティングしてもよい。
【0064】
また、図10に示すようなレンズユニット111dにおいて、仮に光学素子150e、160eの周縁部に貫通するシャフトが1つの場合、シャフトに対して光学素子150e、160eが回転してしまうおそれがある。このため、光学素子150e、160eに、レンズ152の周縁部を光軸方向に貫通する少なくとも2つの貫通孔194、196を形成し、それぞれにシャフトSH1、SH2を挿通させることが好ましい。すなわち、一方の貫通孔を光学素子150e、160eの回転防止用の穴とする。
【0065】
図12は、レンズモジュールに含まれる光学素子の一実施形態の平面図を示す。光学素子150eに2つの貫通孔を形成する際に、図12に示すように、製造時の部品精度に誤差が生じる場合に備えて、当該誤差の影響を吸収するために、2つの貫通孔のうち一方を長穴形状の貫通孔157とし、他方をシャフトSH1、SH2の一方と嵌合する丸穴形状の貫通孔154として形成してもよい。
【0066】
また、光学素子150eがシャフトSH1、SH2に対してがたつくことなく安定して摺動しながら移動するために、貫通孔154、157は、互いの距離を確保することが望ましいので、図12に示すように、レンズ152を介して互いに反対側に位置することが好ましい。このとき、貫通孔154、157がレンズ基板150の中心Oに対して対称となる位置に形成されると、バラバラに分解したレンズモジュールを修復する場合に、光学素子150eが誤って逆の向きに組み付けられて、レンズモジュールのレンズ性能が悪化するおそれがある。このため、図12では、バラバラになったレンズモジュールを修復する場合に、光学素子150eを誤って逆の向きにして組み立てないようにするために、貫通孔154、157は、レンズ基板150の中心Oに対して非対称となる位置に形成されている。
【0067】
2.第2の実施形態
図13(A)、(B)は、第2の実施形態のレンズモジュールの製造方法の概略的な説明図である。本実施形態では、レンズ基板260に形成された各レンズ262の周縁部263の光軸方向D1、D3に付加する厚みとして、当該周縁部263に凸形状のスリーブ部268を形成する。すなわち、各レンズ262の周縁部263に厚みを付加するために、第1の実施形態におけるスペーサの代わりに、レンズ262の周縁部263に凸状のスリーブ部268を形成する。また、本実施形態では、スリーブ部268にシャフトを挿通させてレンズユニットを光軸方向に移動可能にするために、スリーブ部268を光軸方向D1、D3に貫通するように、貫通孔264、266が形成されている。
【0068】
このように本実施形態では、レンズユニットを構成する各レンズが薄くても、スリーブ部268の厚みを確保することができるため、レンズユニットを光軸方向に移動させる際にレンズユニットがこじれることがなく、各レンズユニット間の群間偏芯の発生を抑制することができる。また、第1の実施形態に比べて部品点数を少なくすることができるため、組立精度がよくなる他、生産コストの低減も見込まれる。
【0069】
3.電子機器
図14は、本実施形態のカメラモジュールが搭載された電子機器の一例である携帯電話機の斜視図である。本実施形態のカメラモジュール16は、携帯電話機10の操作部や表示画面が設けられる表面12の裏側となる背面14に設けられている。なお、カメラモジュール16が設けられる位置は、携帯電話機10の背面側に限定されず、他の位置に設置しても良い。また、本実施形態のカメラモジュールを搭載する電子機器は、携帯電話機に限定されず、例えば携帯型コンピュータ等の携帯型電子機器やその他の電子機器等にも適用可能である。
【0070】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0071】
例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、レンズモジュール、カメラモジュール、及び電子機器の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 電子機器(携帯電話機)16、100、120 カメラモジュール、
102、122、124 レンズユニット、
101、103、123 レンズモジュール、104 アクチュエーター、
106 回路基板、108 撮像素子、110 IRカットフィルタ、
114、128、132、138、142 光学素子、150、160 レンズ基板、
115、129、133、139、143、153、163 周縁部、
116、130、134、140、144、152、162 レンズ、
118、136、146 スペーサ、154、156、194、196 貫通孔、
170、180、190 スペーサ(切断前)、SH1、SH2 シャフト(軸部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸方向に移動可能なレンズユニットを少なくとも1つ備えるレンズモジュールの製造方法であって、
基板に複数のレンズが形成されたレンズ基板を形成するレンズ基板形成工程と、
前記レンズ基板に形成された各レンズの周縁部に対して前記光軸方向に厚みを付加する厚み付加工程と、
を含むことを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記厚み付加工程では、
前記レンズと当接する部分に開口部を形成したスペーサと前記レンズ基板とを積層することを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記レンズモジュールは、少なくとも1つのスペーサを介して積層された複数の前記レンズ基板を、前記レンズごとに切り分けることによって前記レンズユニットを形成することを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記レンズ基板と前記スペーサとを接着して互いに固定する工程を含むことを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項5】
請求項3において、
前記レンズ基板と前記スペーサとを接着しないことによって、前記レンズ基板と前記スペーサとの前記光軸方向の間隔を可変としたことを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項6】
請求項3において、
前記レンズモジュールは、第1のレンズ基板と第2のレンズ基板とを含み、
前記第1のレンズ基板と前記第2のレンズ基板とを接着しないことによって、前記第1のレンズ基板と前記第2のレンズ基板との前記光軸方向の間隔を可変としたことを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項7】
請求項3において、
前記レンズモジュールは、第1のスペーサと第2のスペーサとを含み、
前記第1のスペーサと前記第2のスペーサとを接着しないことによって、前記第1のスペーサと前記第2のスペーサとの前記光軸方向の間隔を可変としたことを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項8】
請求項2において、
前記スペーサが絞り機能を備えることを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項9】
請求項1において、
前記厚み付加工程では、
前記各レンズの周縁部の前記光軸方向に厚みを付加するスリーブ部を前記各レンズの周縁部に形成することを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、
前記厚みが付加された前記各レンズの前記周縁部を前記光軸方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記貫通孔に軸部を挿通する軸部挿通工程と、
を含むことを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記貫通孔形成工程では、
前記各レンズの前記周縁部を前記光軸方向に貫通する少なくとも2つの貫通孔を形成し、
前記少なくとも2つの貫通孔のうちの一方を長穴形状に形成することを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11において、
前記軸部挿通工程の後に、
前記レンズ基板に形成された前記複数のレンズの各々に切り分ける切断工程と、
前記切断工程後に前記レンズユニットを光軸方向に移動させて前記レンズモジュールを組み立てる組立工程と、
を含むことを特徴とするレンズモジュールの製造方法。
【請求項13】
光軸方向に移動可能なレンズユニットを少なくとも1つ備えるレンズモジュールであって、
前記レンズユニットは、
基板に複数のレンズが形成されたレンズ基板から前記複数のレンズの各レンズを切り分けることで形成された光学素子と、
前記光学素子の前記各レンズの周縁部の前記光軸方向に厚みを付加するために設けられたスペーサ又はスリーブ部と、
を含むことを特徴とするレンズモジュール。
【請求項14】
請求項13において、
前記周縁部及び前記スペーサ又は前記スリーブ部を前記光軸方向に貫通する少なくとも1つの貫通孔と、
前記貫通孔を挿通する軸部と、
を含むことを特徴とするレンズモジュール。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のレンズモジュールと、
前記レンズモジュールにて結像された光を電気信号に変換する撮像素子と、
を含むことを特徴とするカメラモジュール。
【請求項16】
請求項15に記載のカメラモジュールを含むことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−61681(P2013−61681A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−278351(P2012−278351)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2009−30711(P2009−30711)の分割
【原出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】