説明

レンズ付き印刷物

【課題】本発明は、立体視または可変視印刷画像もしくは図柄・模様に独自の変化を与える立体感や加飾効果に優れるレンズ付き印刷物を提供する。
【解決手段】透明フィルム基材の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部を有し、その反対面の透明フィルム基材面に、前記レンズピッチと一致するピッチの印刷画像を形成した立体視または可変視画像シートの印刷画像面側に、熱可塑性樹脂層を介して、紙基材またはフィルム基材を積層してなるレンズ付き印刷物であって、前記レンズ部のレンズ表面の少なくとも一部分に図柄・模様を印刷して形成し、前記立体視または可変視印刷画像の部分と前記レンズ表面に形成した図柄・模様の部分とを同時に見えるようにしたことを特徴とするレンズ付き印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体視または可変視印刷画像(印刷図柄・模様も含む)が見えるようにしたレンズ付き印刷物のレンズ表面に印刷形成した図柄・模様の部分と、立体視または可変視印刷画像の部分とを同時に見えるようにした、立体視または可変視画像もしくは図柄・模様に独自の変化を与える立体感や加飾効果に優れるレンズ付き印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1で提案されているように、印刷等により平面的に視覚表現された絵や図柄等の画像(「立体視用の画像」)をレンチキュラーレンズを用いて立体的に視認できるようにした立体印刷物はよく知られている。この立体印刷物は、左右の目で像を結ぶことができる立体視用の画像をレンチキュラーレンズの微細な凸レンズ列と同じ間隔(ピッチ)で線状に配列し、立体画像として認識することができるようにしたものである。
【0003】
また、レンチキュラーレンズに、2種類3種類以上の絵や図柄等をこのレンズの微細な凸レンズ列の間隔(ピッチ)に合わせて交互にまたは種類順に繰り返して短冊状に合成した画像(「可変視用の画像」)を配設し、見る角度によって2種類または数種類の異なる絵柄が見えるようにした可変印刷物もよく知られている。
【0004】
従来、上記の立体視または可変視印刷物は、平面の画像に遠近感や立体感を与えたり、動作変化を与える印刷物の技法として、あらかじめ複数の画像を縦方向または横方向に多数の線状帯に分け、これら異なる画像の線状帯を順次に並べて一枚に印刷し、その上に線状帯のピッチと方向に合わせたかまぼこ状の微細レンズの集合体からなるレンチキュラーシート等のレンズ作用により、複数の画像を重ね合わせ普通の視覚距離で結合して見せ、画面に立体感を出したり、画面を傾けることにより画像の変化を与える方法が取られている。画面を傾けて画像の変化を与える場合、画面にはめ込むかまたは分割して異なった2つの画像を一枚に印刷し、レンチキュラーシートを貼り付けても、傾きによるそれぞれの画像の変化は同一で、それぞれの画像に独自の変化を与えることは出来なかった。
【特許文献1】特許第3038329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、立体視または可変視印刷画像が見えるようにしたレンズ付き印刷物のレンズ表面に印刷形成した図柄・模様の部分と、立体視または可変視印刷画像の部分とを同時に見えるようにした、立体視または可変視画像もしくは図柄・模様に独自の変化を与える立体感や加飾効果に優れるレンズ付き印刷物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、即ち、
請求項1に係る発明は、
立体視または可変視用の印刷画像(印刷図柄・模様も含む)が見えるようにしたレンズ付き印刷物において、
透明フィルム基材の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部を有し、その反対面の透明フィルム基材面に、前記レンズピッチと一致するピッチの印刷画像を形成した立体視または可変視画像シートの印刷画像面側に、熱可塑性樹脂層を介して
、紙基材またはフィルム基材を積層してなるレンズ付き印刷物であって、
前記レンズ部のレンズ表面の少なくとも一部分に図柄・模様を印刷して形成し、前記立体視または可変視印刷画像の部分と前記レンズ表面に形成した図柄・模様の部分とを同時に見えるようにしたことを特徴とするレンズ付き印刷物である。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、
前記立体視または可変視画像シートのレンズ部が、凸状シリンドリカルレンズを並設してなるレンチキュラーレンズまたは単位凸状レンズを2次元配列してなるマイクロレンズアレイからなることを特徴とする請求項1記載のレンズ付き印刷物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、立体視または可変視印刷画像が見えるようにしたレンズ付き印刷物のレンズ表面に印刷形成した図柄・模様の部分と、立体視または可変視印刷画像の部分とを同時に見えるようにしたことで、従来の立体視または可変視印刷物では得られない、画像もしくは図柄・模様に独自の変化を与える立体感や加飾効果に優れるレンズ付き印刷物を提供できる。本発明のレンズ付き印刷物は観る者の注目を集め易く、パッケージ、カード、ポスター、景品等に使用して宣伝や差別効果の高いものとなる。また、絵本や雑誌等に用いても利用価値の高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態の一例について図面を参照して説明する。図1は、本発明のレンズ付き印刷物の一例を一部拡大して示す断面図およびそのレンズ付き印刷物平面図である。図2は、本発明のレンズ付き印刷物の他の例を一部拡大して示す断面図およびそのレンズ付き印刷物平面図である。図3は、本発明のレンズ付き印刷物の別の例を一部拡大して示す断面図およびそのレンズ付き印刷物平面図である。図4は、本発明のレンズ付き印刷物のさらに別の例を一部拡大して示す断面図およびそのレンズ付き印刷物平面図である。図5は、本発明のレンズ付き印刷物のさらに別の例を一部拡大して示す断面図およびそのレンズ付き印刷物平面図である。図6は、図4および図5で示す本発明のレンズ付き印刷物におけるドット形状パターンが視覚される状態を説明する説明図である。図7は、本発明のレンズ付き印刷物におけるレンズ表面に印刷される一例としての図柄・模様印刷層を示す断面図である。図8は、本発明のレンズ付き印刷物に用いられるレンチキュラーレンズの一例を示す斜視図である。図9は、本発明のレンズ付き印刷物に用いられるマイクロレンズアレイの一例を示す斜視図である。
【0010】
本発明のレンズ付き印刷物は、立体視または可変視用の印刷画像(印刷図柄・模様も含む)が見えるようにしたレンズ付き印刷物において、透明フィルム基材の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部を有し、その反対面の透明フィルム基材面に、上記レンズピッチと上記印刷画像ピッチと一致するピッチの印刷画像を形成した立体視または可変視画像シートの印刷画像面側に、熱可塑性樹脂層を介して、紙基材またはフィルム基材を積層してなるレンズ付き印刷物であって、上記レンズ部のレンズ表面の少なくとも一部分に図柄・模様を印刷して形成し、上記立体視または可変視印刷画像の部分と上記レンズ表面に形成した図柄・模様の部分とを同時に見えるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明のレンズ付き印刷物の一例として、図1(a)で示すように、透明フィルム基材(12)の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部としてレンチキュラーレンズ(11)を有し、その反対面の透明フィルム基材(12)面に、上記レンズピッチと上記印刷画像ピッチとが一致するピッチの印刷画像(13)を形成した立体視または可変視画像シート(14)の印刷画像(13)面側に、熱可塑性樹脂層(15)を介して、紙基材またはフィルム基材(16)を積層してなるレンズ付き印刷物であって、
上記レンチキュラーレンズ(11)表面の少なくとも一部分に、レンズ面を覆うように図柄・模様(17)を印刷して形成し、図1(b)で示すように、上記の立体視または可変視印刷画像(18)の部分と上記レンズ表面に形成した図柄・模様(17)の部分とを同時に見えるようにしたことを特徴とするレンズ付き印刷物(10)である。
【0012】
本発明のレンズ付き印刷物(10)のレンチキュラーレンズを覆うようにレンズ表面に柄・模様印刷層(17)が形成されているので隠蔽性のインキを用いて形成した場合は、勿論、図柄・模様印刷層(17)の部分の立体視または可変視用の印刷画像(18)が隠蔽され、図柄・模様印刷層(17)の部分の立体視または可変視用の印刷画像(18)は目視不可能であるが、図柄・模様印刷層(17)の部分を除く領域の立体視または可変視用の印刷画像(18)の部分が見える。また、本発明においてはレンズ表面に形成される図柄・模様印刷層(17)を有色の透明インキまたは半透明インキを用いて形成することもできるが、レンチキュラーレンズの表面を覆うように柄・模様印刷層(17)が形成されているために、レンズ作用が失われてこの図柄・模様印刷層(17)の部分の立体視または可変視用の印刷画像(18)が目視不可能になり、図柄・模様印刷層(17)の部分を除く領域の立体視または可変視用の印刷画像(18)の部分が見える。
【0013】
また、本発明のレンズ付き印刷物の他の例として、図2(a)で示すように、透明フィルム基材(22)の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部としてレンチキュラーレンズ(21)を有し、その反対面の透明フィルム基材(22)面に、上記レンズピッチと上記印刷画像ピッチとが一致するように、印刷画像(23)を形成した立体視または可変視画像シート(24)の印刷画像(23)面側に、熱可塑性樹脂層(25)を介して、紙基材またはフィルム基材(26)を積層してなるレンズ付き印刷物であって、上記レンチキュラーレンズ(21)表面の少なくとも一部分に、レンズ有効部のレンズ頂部を露出するようにレンズの谷部を埋めるように図柄・模様(27)を印刷して形成し、図2(b)で示すように、上記の立体視または可変視印刷画像(28)の部分と上記レンズ表面に形成した図柄・模様(27)の部分とを同時に見えるようにしたことを特徴とするレンズ付き印刷物(20)である。
【0014】
上記のレンズ付き印刷物(20)は、レンズ有効部のレンズ頂部を露出するようにレンズの谷部を埋めるように図柄・模様(27)を印刷してあることから、隠蔽性のインキを用いて形成した場合であっても、図柄・模様(27)層の部分の立体視または可変視印刷画像(28)が図柄・模様(27)層を介して見ることができるので、レンズ付き印刷物全面のレンズ表面に図柄・模様(27)層を施すこともできる。
【0015】
また、本発明のレンズ付き印刷物の別の例として、図3(a)で示すように、透明フィルム基材(32)の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部としてレンチキュラーレンズ(31)を有し、その反対面の透明フィルム基材(32)面に、上記レンズピッチと上記印刷画像ピッチと一致するピッチの印刷画像(33)を形成した立体視または可変視画像シート(34)の印刷画像(33)面側に、熱可塑性樹脂層(35)を介して、紙基材またはフィルム基材(36)を積層してなるレンズ付き印刷物であって、上記レンチキュラーレンズ(31)表面の少なくとも一部分に、レンズ面を覆うよう図柄・模様(37)と、レンズ有効部のレンズ頂部を露出するようにレンズの谷部を埋める図柄・模様(39)とを印刷して形成し、図3(b)で示すように、図柄・模様(37)の部分とレンズ表面に形成した図柄・模様(39)の部分とを同時に見えるようにしたことを特徴とするレンズ付き印刷物(30)である。
【0016】
上記のレンズ付き印刷物(30)は、レンズ部にレンズ面を覆うようにした図柄・模様(37)(この印刷層領域では立体視または可変視画像(38)は視認できない。)とレンズ有効部のレンズ頂部を露出するようにレンズの谷部を埋めるようにした図柄・模様(
39)(この印刷層領域では立体視または可変視画像(38)が印刷層を透過して視認できる。)とを混在させたレンズ付き印刷物である。
【0017】
上記の本発明のレンズ付き印刷物(10,20,30)において用いる立体視または可変視画像シート(14,24,34)は、図8で示すような、凸状シリンドリカルレンズ(71)を並設してなるレンチキュラーレンズ(70)を用いて、透明フィルム基材(12,22,32)の片面に印刷等により平面的に視覚表現された絵や図柄等の画像(13,23,33)(「立体視用の画像」)を透明フィルム基材(12,22,32)のもう一方の面に設けたレンチキュラーレンズ(11,21,31)により立体的に視認できるようにし、左右の目で像を結ぶことができる立体視用の画像をレンチキュラーレンズ(11,21,31)の微細な凸レンズ列と同じ間隔(ピッチ)で線状に配列し、立体画像として認識することができるようにした立体視画像シート(14,24,34)である。
【0018】
また、上記のレンチキュラーレンズに、2種類または3種類以上の絵や図柄等の画像をこのレンズの微細な凸レンズ列の間隔(ピッチ)に合わせて交互にまたは種類順に繰り返して短冊状に合成した画像(「可変視用の画像」)を配設し、見る角度によって2種類または数種類の異なる絵や図柄等の画像が見えるようにした可変視画像シート(14,24,34)であってもよい。
【0019】
また、本発明のレンズ付き印刷物の別の例として、図4(a)で示すように、マイクロレンズアレイのレンズ表面の少なくとも一部に図柄・模様を印刷して形成したレンズ付き印刷物(40)である。透明フィルム基材(42)の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部としてマイクロレンズアレイ(41)を有し、その反対面の透明フィルム基材(42)面に、上記のレンズピッチと一致する印刷画像(43)としてドット形状パターンを印刷して形成した立体視または可変視画像シート(44)の印刷画像(43)面側に、熱可塑性樹脂層(45)を介して、紙基材またはフィルム基材(46)を積層してなるレンズ付き印刷物であって、上記マイクロレンズアレイ(41)レンズ表面の少なくとも一部分に、レンズ面を覆うように図柄・模様(47)を印刷して形成し、図4(b)で示すように、ドット形状パターン(43)からなる立体視または可変視印刷画像(48)の部分と上記マイクロレンズ表面に形成した図柄・模様(47)の部分とを同時に見えるようにしたことを特徴とするレンズ付き印刷物(40)である。
【0020】
本発明のレンズ付き印刷物(40)のマイクロレンズアレイ(41)のレンズを覆うようにレンズ表面に柄・模様印刷層(47)が形成されているので隠蔽性のインキを用いて形成した場合は、勿論、図柄・模様印刷層(47)の部分の立体視または可変視用の印刷画像(48)が隠蔽され、図柄・模様印刷層(47)の部分の立体視または可変視用の印刷画像(48)は目視不可能であるが、図柄・模様印刷層(47)の部分を除く領域の立体視または可変視用の印刷画像(48)の部分が見える。また、本発明においてはレンズ表面に形成される図柄・模様印刷層(47)を有色の透明インキまたは半透明インキを用いて形成することもできるが、マイクロレンズアレイ(41)のレンズの表面を覆うように柄・模様印刷層(47)が形成されているために、レンズ作用が失われてこの図柄・模様印刷層(47)の部分の立体視または可変視用の印刷画像(48)が目視不可能になり、図柄・模様印刷層(47)の部分を除く領域の立体視または可変視用の印刷画像(18)の部分が見える。
【0021】
また、本発明のレンズ付き印刷物のさらに別の例として、図5(a)で示すように、マイクロレンズアレイのレンズ表面の少なくとも一部に図柄・模様を印刷して形成したレンズ付き印刷物(50)である。透明フィルム基材(52)の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部としてマイクロレンズアレイ(51)を有し、その反対面の透明フィルム基材(52)面に、上記レンズピッチと印刷画像ピッチとが一致する
ように、印刷画像(53)としてドット形状パターンを印刷して形成した立体視または可変視画像シート(54)の印刷画像(53)面側に、熱可塑性樹脂層(55)を介して、紙基材またはフィルム基材(56)を積層してなるレンズ付き印刷物であって、上記マイクロレンズアレイ(51)レンズ表面の少なくとも一部分に、レンズ有効部のレンズ頂部を露出するようにレンズの谷部を埋めるように図柄・模様(57)を印刷して形成し、図5(b)で示すように、ドット形状パターン(53)からなる立体視または可変視印刷画像(58)の部分と上記マイクロレンズ表面に形成した図柄・模様(57)の部分とを同時に見え、かつ、図柄・模様(57)を透過して立体視または可変視印刷画像(58)も見えるレンズ付き印刷物(50)である。
【0022】
上記のレンズ付き印刷物(40,50)において用いられる立体視または可変視画像シート(44,54)としては、図9で示すような、単位凸状レンズ(81)を2次元配列してなるマイクロレンズ(80)を用いて、図6で示すように、マイクロレンズの微細な単位凸レンズ(41,51)の間隔(ピッチ)に合わせてドット形状パターンからなる印刷画像(43,53)を印刷して配設し、このマイクロレンズ(41,51)と印刷画像(43,53)との相互作用、即ち、空間周波数の変調によって、両方の目で見て、右目で認識する像と左目で認識する像の差を処理する両眼視差による立体視だけでなく、視点を移動させると手前にある(視覚的深度の浅い)対象画像ほど見え方が大きく変化し、逆に、奥にある(視覚的深度の深い)ものはそれほど大きな変化を見せない。この見え方の違いから対象画像の位置関係を認識してドット形状パターンからなる立体視画像シート(44)である。
【0023】
そして、図4および図5で示す本発明のレンズ付き印刷物(40,50)のドット形状パターンは、視覚的深度を有するように立体的に視認される。
【0024】
本発明のレンズ付き印刷物におけるレンズ表面に図柄・模様を形成する印刷は、オフセット、グラビア、フレキソ、インクジェットなどの一般公知の印刷方法によって印刷できる。
【0025】
そして、図1、図3および図4で例示したレンズ付き印刷物の場合のように、レンズ面を覆うように図柄・模様印刷層を形成したり、またレンズ有効部のレンズ頂部を露出するようにレンズの谷部を埋めるように図柄・模様を印刷する以外に、図7で示すように、図柄・模様印刷層をレンズ面形状に沿うように、印刷時のインキ粘度や乾燥速度などを制御することで、図柄・模様印刷層(67)を形成したレンズ付き印刷物(60)を得ることもできる。
【0026】
本発明におけるレンズ部のレンズ厚さは10〜18μm、レンズ直径は33〜160μm、レンズピッチは30〜200μmの範囲が望ましい。
【0027】
本発明において立体視または可変視画像シート(14,24,34,44)のレンズ(11,21,31,41)部は、紫外線硬化型樹脂を用いて成形するのが好ましい。また、印刷画像(13,23,33,43)は、紫外線硬化型インキを用いて形成するのが好ましい。また、隠蔽性のインキや青、赤、黄等の有色の透明インキや半透明インキ等を用いて印刷形成することができる。
【0028】
上記のレンズ部を形成する紫外線硬化型樹脂および印刷画像を形成する紫外線硬化型インキを構成する紫外線硬化型樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系紫外線硬化型樹脂などが挙げられる。
【0029】
また、本発明において使用される透明フィルム基材(12,22,32,42)としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル等の透明なプラスチック製のフィルムまたはシート等が使用できる。
【0030】
本発明における立体視または可変視用の印刷画像の印刷方法としては、特に限定されず、オフセット印刷、グラビア印刷など各種印刷方法を用いることができる。
【0031】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂層(15,25,35,45)の熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチエン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンもしくはポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、その他などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等のが挙げられる。熱可塑性樹脂層の厚さとしては、10〜100μmの範囲が好ましい。
【0032】
また、本発明で用いられる紙基材もしくはフィルム基材(16,26,36,46)における、紙基材としては特に限定されず通常の抄紙して得られる紙が使用され、坪量が30g/m2以上のものが好ましい。さらに、合成紙なども使用することもできる。また、フィルム基材においても特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル等の透明なプラスチック製のフィルムまたはシート等が使用できる。厚さとしては、12μm以上が好ましい。
【0033】
次に、図1で示すレンズ付き印刷物(10)を例示して、本発明のレンズ付き印刷物の製造方法の一例について説明する。まず、立体視または可変視画像シート(14)を作製する作成する。この立体視または可変視画像シート(14)は、透明フィルム基材(12)の片面に、初めに、所定のピッチで立体視または可変視印刷画像(13)を印刷形成した後、印刷画像(13)の反対面の透明フィルム基材(12)面に、レンズ形成用紫外線硬化型透明インキを印刷により上記印刷画像(13)のピッチに合わせて微細な凸条群を並設し、この各凸状インキ列をその表面張力と重力の作用により凸レンズ状列に変形させたあと、UV照射等の硬化手段により硬化させてレンチキュラーレンズからなるレンズ部を形成して作製することができる。
【0034】
上記で得られた立体視または可変視画像シート(14)を、一般公知のラミネート機を用いて、熱可塑性樹脂層(15)を介して、紙基材またはフィルム基材(16)を積層して本発明のレンズ付き印刷物(10)を作製することができる。
【0035】
上記のレンズ付き印刷物(10)以外のレンズ付き印刷物(20,30,40,50,60)も同様の手法によって製造できる。
【0036】
上記で得られる本発明のレンズ付き印刷物は、立体視または可変視印刷画像が見えるようにしたレンズ付き印刷物のレンズ表面に図柄・模様を印刷して形成し、立体視または可変視印刷画像の部分とレンズ表面に形成した図柄・模様の部分とを同時に見えるようにしたことで、従来の立体視または可変視印刷物では得られない、立体視または可変視画像もしくは図柄・模様に独自の変化を与える立体感や加飾効果に優れるレンズ付き印刷物を提供できる。本発明のレンズ付き印刷物は観る者の注目を集め易く、パッケージ、カード、ポスター、景品等に使用して宣伝や差別効果の高いものとなる。また、絵本や雑誌等に用いても利用価値の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のレンズ付き印刷物の一例を示すもので、(a)は、そのレンズ付き印刷物の一部拡大して示す断面図である。(b)は、そのレンズ付き印刷物平面図である。
【図2】本発明のレンズ付き印刷物の他の例を示すもので、(a)は、そのレンズ付き印刷物の一部拡大して示す断面図である。(b)は、そのレンズ付き印刷物平面図である。
【図3】本発明のレンズ付き印刷物の別の例を示すもので、(a)は、そのレンズ付き印刷物の一部拡大して示す断面図である。(b)は、そのレンズ付き印刷物平面図である。
【図4】本発明のレンズ付き印刷物のさらに別の例を示すもので、(a)は、そのレンズ付き印刷物の一部拡大して示す断面図である。(b)は、そのレンズ付き印刷物平面図である。
【図5】本発明のレンズ付き印刷物のさらに別の例を示すもので、(a)は、そのレンズ付き印刷物の一部拡大して示す断面図である。(b)は、そのレンズ付き印刷物平面図である。
【図6】図4および図5で示す、本発明のレンズ付き印刷物におけるドット形状パターンが視覚される状態を説明する説明図である。
【図7】本発明のレンズ付き印刷物におけるレンズ表面に印刷される一例としての図柄・模様印刷層を示す断面図である。
【図8】本発明のレンズ付き印刷物に用いられるレンチキュラーレンズの一例を示す斜視図である。
【図9】本発明のレンズ付き印刷物に用いられるマイクロレンズアレイの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10、20、30、40、50、60・・・レンズ付き印刷物
14、24、34、44、54、64・・・立体視または可変視画像シート
11、21、31、41、51、61・・・レンズ部
12、22、32、42、52、62・・・透明フィルム基材層
13、23、33、43、53、63・・・立体視または可変視印刷画像
15、25、35、45、55、65・・・熱可塑性樹脂層
16、26、36、46、56、66・・・紙基材またはフィルム基材
17、27、37、47、57、67・・・レンズ面に形成された図柄・模様印刷層
70・・・レンチキュラーレンズ
17、27、37、39・・・図柄・模様印刷層
18、28、38,48、58・・・立体または可変画像
71・・・凸状シリンドリカルレンズ
80・・・マイクロレンズアレイ
81・・・凸状単位レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体視または可変視用の印刷画像(印刷図柄・模様も含む)が見えるようにしたレンズ付き印刷物において、
透明フィルム基材の片面に微細な所定のピッチで配列したレンズ群からなるレンズ部を有し、その反対面の透明フィルム基材面に、前記レンズピッチと一致するピッチの印刷画像を形成した立体視または可変視画像シートの印刷画像面側に、熱可塑性樹脂層を介して、紙基材またはフィルム基材を積層してなるレンズ付き印刷物であって、
前記レンズ部のレンズ表面の少なくとも一部分に図柄・模様を印刷して形成し、前記立体視または可変視印刷画像の部分と前記レンズ表面に形成した図柄・模様の部分とを同時に見えるようにしたことを特徴とするレンズ付き印刷物。
【請求項2】
前記立体視または可変視画像シートのレンズ部が、凸状シリンドリカルレンズを並設してなるレンチキュラーレンズまたは単位凸状レンズを2次元配列してなるマイクロレンズアレイからなることを特徴とする請求項1記載のレンズ付き印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−129038(P2008−129038A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310018(P2006−310018)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】