説明

レンズ研磨皿作製装置及び方法

【課題】同時に複数のレンズ研磨皿を成形することができるレンズ研磨皿作製装置及び方法を提供する。
【解決手段】レンズ研磨皿作製装置は、球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製装置において、球面状の研磨面成形面11を有する型部材10と、球面状の一部に対応する曲面形状の研磨シート貼付面であって、各々が研磨シート15a〜15cを介して研磨面成形面11に当接する研磨シート貼付面を有する複数の研磨台皿12a〜12cと、該複数の研磨台皿12a〜12cを研磨面成形面11に向けて押圧する押圧機構20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ等の研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズ等の研磨に用いられるレンズ研磨皿は、例えば、接着剤を塗布した研磨用の台皿を、研磨シートを載置した型皿に向け押圧して研磨シートを圧縮した状態で、加熱炉等を用いて加熱して、塗布した接着剤を乾燥及び硬化させることにより作製される。例えば特許文献1には、型皿上に載置された研磨シートを、台皿に嵌合された押圧部材の移動量に対応した押圧力にて圧縮するレンズ研磨皿の成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−252855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のレンズ研磨皿作成装置においては、1組の成形治具によって1個のレンズ研磨皿しか成形することができなかった。そのため、一度に複数のレンズ研磨皿を作るためには、複数の成形治具を用意すると共に、乾燥炉の数や成形用のスペースを増やす必要があり、コストが上昇してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、乾燥炉の数や成形用のスペースを増やすことなく、同時に複数のレンズ研磨皿を成形することができるレンズ研磨皿作製装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るレンズ研磨皿作製装置は、球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製装置において、球面状の研磨面成形面を有する型部材と、前記球面状の一部に対応する曲面形状の研磨シート貼付面であって、各々が研磨シートを介して前記研磨面成形面に当接する研磨シート貼付面を有する複数の研磨台皿と、前記複数の研磨台皿を前記研磨面成形面に向けて押圧する押圧機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
上記レンズ研磨皿作製装置は、互いに対向して配置される2つの前記研磨台皿を少なくとも1組有し、前記2つの研磨台皿における研磨シート貼付面の曲率中心を結ぶ直線が、前記研磨面成形面の球心を通ることを特徴とする。
【0008】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記押圧機構は、前記型部材の周囲に配置される枠体と、前記枠体に設けられて前記型部材を支持する支持部材と、前記枠体に設けられ、前記複数の研磨台皿を前記型部材に向けてそれぞれ押圧する複数の押部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記押圧機構は、互いに交差して前記型部材の周囲に配置される複数の枠体と、前記複数の枠体の一部に設けられて前記型部材を支持する支持部材と、前記複数の枠体に設けられ、前記複数の研磨台皿を前記型部材に向けてそれぞれ押圧する複数の押部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記複数の押部材の内の少なくとも1つは、前記型部材を挟んで、前記支持部材と対向する位置に設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記レンズ研磨皿作製装置において、前記枠体の外周断面及び内周断面は、互いに相似な多角形状をなし、前記支持部材は、前記枠体の前記多角形状の1つの辺に対応する内周面上に固設され、前記複数の押部材は、前記内周面とは異なる辺に対応する外周面から内周面に渡ってそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るレンズ研磨皿作製方法は、球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製方法において、球面状の研磨面成形面を有する型部材の前記研磨面成形面の一部の領域に第1の研磨シートを載置し、前記球面状の一部に対応する曲面形状の研磨シート貼付面を有する第1の研磨台皿を、前記研磨シート貼付面が前記第1の研磨シートに向くように、接着剤を介して前記第1の研磨シート上に載置し、第1の押部材を用いて前記第1の研磨シートが所望の厚さになるように前記第1の研磨台皿を前記型部材に向けて押圧する工程と、前記研磨面成形面の前記第1の研磨シートが載置された領域とは異なる領域に第2の研磨シートを載置し、前記第1の研磨台皿とは異なる第2の研磨台皿であって、前記球面状の一部に対応する曲面形状の研磨シート貼付面を有する第2の研磨台皿を、前記研磨シート貼付面が前記第2の研磨シートに向くように、接着剤を介して前記第2の研磨シート上に載置し、前記第1の押部材とは異なる第2の押部材を用いて前記第2の研磨シートが所望の厚さになるように前記第2の研磨台皿を前記型部材に向けて押圧する工程と、前記第1及び第2の押部材によって前記第1及び第2の研磨台皿を前記型部材に向けそれぞれ押圧した状態で、前記型部材、前記第1及び第2の研磨台皿、並びに前記第1及び第2の押部材を乾燥炉に配置し、前記接着剤を硬化させる工程と、前記型部材から、前記第1の研磨シートが貼付された前記第1の研磨台皿と、前記第2の研磨シートが貼付された前記第2の研磨台皿とを離型する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、球面状の研磨面成形面を有する型部材に対し、複数の研磨シートを介して複数の研磨台皿を当接し、押圧機構によりこれらの研磨台皿を研磨面成形面に向けて押圧するので、乾燥炉の数や成形用のスペースを増やすことなく、同時に複数のレンズ研磨皿を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製装置を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1のA−A線における一部断面図である。
【図3】図3は、図1に示す研磨台皿を示す斜視図である。
【図4】図4は、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、図1に示す研磨シートの平面形状を示す模式図である。
【図6A】図6Aは、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を説明する模式図である。
【図6B】図6Bは、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を説明する模式図である。
【図6C】図6Cは、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を説明する模式図である。
【図6D】図6Dは、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を説明する模式図である。
【図6E】図6Eは、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を説明する模式図である。
【図7】図7は、変形例1−1に係るレンズ研磨皿作製装置を示す模式図である。
【図8】図8は、変形例1−2に係るレンズ研磨皿作製装置を示す模式図である。
【図9】図9は、変形例1−3に係るレンズ研磨皿作製装置を示す模式図である。
【図10】図10は、実施の形態2に係るレンズ研磨皿作製装置を示す模式図である。
【図11】図11は、図10のB−B線における一部断面図である。
【図12】図12は、変形例2−1に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す斜視図である。
【図13】図13は、変形例2−2に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す斜視図である。
【図14】図14は、図13のC−C線における一部断面図である。
【図15】図15は、実施の形態3に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
【図16】図16は、変形例3に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
【図17】図17は、実施の形態4に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
【図18】図18は、実施の形態5に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、これら実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。図面は模式的なものであり、各部の寸法の関係や比率は、現実と異なることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製装置を示す斜視図である。また、図2は、図1のA−A線における一部断面斜視図である。図1及び図2に示すように、レンズ研磨皿作製装置1は、球面状の研磨面成形面11を有する型部材10と、研磨シート15a〜15cをそれぞれ介して研磨面成形面11に当接する研磨台皿12a〜12cと、これらの研磨台皿12a〜12cを研磨面成形面11に向けて押圧する押圧機構20とを備える。押圧機構20は、型部材10の周囲に配置される枠体21と、枠体21の内側に設けられ、型部材10を枠体21に対して支持する支持部材としての台座22と、枠体21の一部を貫通して設けられ、ボール(剛球)24a〜24cを介して研磨台皿12a〜12cを型部材10に向けてそれぞれ押圧する押部材23a〜23cとを備える。
【0017】
型部材10は、レンズ研磨皿の研磨面を成形する部材である。型部材10の表面である研磨面成形面11は、研磨対象であるレンズ部材の最終仕上げ面(凸の球面)と同一の曲率の球面形状を有している。このような型部材10は、鉄やステンレス等の金属又は合金によって形成されている。
【0018】
図3は、研磨台皿12a〜12cを拡大して示す斜視図である。なお、研磨台皿12a〜12cは互いに同一の形状を有している。
研磨台皿12a〜12cは、型部材10の研磨面成形面11である球面状の一部に対応する凹の曲面を有している。この曲面が、研磨シート15aが貼付される研磨シート貼付面13a〜13cであり、研磨シート15a〜15cを介して研磨面成形面11に当接する面である。このような研磨台皿12a〜12cは、例えば真鍮、ステンレス等の合金により形成されている。
【0019】
研磨台皿12a〜12cの研磨シート貼付面13a〜13cとは反対側の底面には、テーパー状のくぼみ14a〜14cが設けられている。このくぼみ14a〜14cは、押部材23a〜23cによって研磨台皿12a〜12cを押圧する際にボール24a〜24cを配置するために設けられている。各くぼみ14a〜14cの形状は、それぞれの中心軸が研磨シート貼付面13a〜13cの中心軸と一致するように形成されている。
【0020】
レンズ研磨皿作製装置1において、研磨台皿12aは、その研磨シート貼付面13aの曲率中心が台座22の中心軸を通るように研磨面成形面11上に配置される。また、研磨台皿12b、12cは、研磨シート貼付面13b、13cの曲率中心を結ぶ直線(図2では符号Xで示される)が型部材10の球心を通り、且つ、型部材10を挟んで互いに対向するように研磨面成形面11上に配置される。
【0021】
枠体21の内周断面及び外周断面は、互いに相似な多角形状(図2においては四角形状)をなしている。台座22は、この枠体21の1つの辺(図2においては図の下側)に対応する内周面21dの略中央に固設されている。台座22の上面には、テーパー状のくぼみ22aが設けられており、このくぼみ22a上に型部材10が載置される。くぼみ22aの形状は、型部材10を載置した際に、型部材10の中心軸と台座22の中心軸とが一致するように形成されている。以下、台座22及び型部材10の中心軸をY軸とする。
【0022】
押部材23aは、台座22が設けられた内周面21dと対向する辺に対応する内周面21aの略中央に、自身の中心軸がY軸と一致するように、外周側から貫通して設けられている。また、互いに対向する押部材23b、23cは、四角形状の残りの辺(図の側面側)の内周面21b、21cの略中央に、外周側から貫通して設けられている。これらの押部材23b、23cは、それぞれの中心軸が互いに一致すると共に、Y軸と直交し、且つ、台座22に型部材10を載置した際の型部材10の中心軸と一致するように配置されている。以下、押部材23b、23cの中心軸をX軸とする。
【0023】
各押部材23a〜23cは、螺合により、枠体21に対して位置調節可能に取り付けられている。また、各押部材23a〜23cにはマイクロメータヘッド等の測定機構25a〜25cが設けられている。これにより、各押部材23a〜23cの枠体21に対する相対的な位置、即ち、押部材23a〜23cを型部材10に向けて押圧した際の押し込み量の測定が可能となっている。
【0024】
次に、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法について、図4〜図6Eを参照しながら説明する。図4は、実施の形態1に係るレンズ研磨皿作製方法を示すフローチャートである。また、図5は、研磨台皿12a〜12cへの貼付前の状態の研磨シート15a〜15cを示す平面図である。図6A〜図6Eは、レンズ研磨皿作製方法の各工程を示す模式図である。
【0025】
まず、工程S11において、台座22と同軸(Y軸)上の研磨面成形面11内の領域に研磨シート15a及び研磨台皿12aを載置し、押部材23aをセットする(図6A参照)。
ここで、研磨シート15a〜15cは、発泡ポリウレタンや発泡ポリエステル等の多孔質材料に研磨剤を含浸させた部材その他研磨作用を有する部材からなるシート状の研磨部材である。図5に示すように、研磨シート15a〜15cは、円形状の外周側から中心に向け複数の切り込み152を入れて周縁部151を複数の花弁状に分割した花冠形状となるよう、予めカットして用いられる。
【0026】
研磨シート15aを型部材10上に載置する際には、研磨シート15aの一方の面に予め接着剤16を塗布し、接着剤16の塗布面とは反対側の面が型部材10の表面(研磨面成形面11)と当接するように配置する。なお、接着剤16としては、例えばエポキシ系の接着剤が用いられる。
【0027】
この研磨シート15aの上に、研磨シート貼付面13aに予め接着剤(例えばエポキシ系接着剤)16を塗布した研磨台皿12aを載置する。この際に、研磨台皿12a及び研磨シート15aの位置を調整し、研磨台皿12a及び研磨シート15aの中心軸を台座22の中心軸Yと一致させる。なお、接着剤16は、研磨シート15a又は研磨シート貼付面13aのいずれか一方に塗布するようにしても構わない。
【0028】
続いて、研磨台皿12aのくぼみ14aにボール24aを載置すると共に、押部材23aを型部材10の側に押し込み、その先端をボール24aに接触させる。そして、この状態での押部材23aの位置を測定機構25aによって測定し、記録しておく。この位置が、押部材23aの基準位置(研磨シート15aの圧縮量がゼロの状態での位置)となる。さらにこの位置から押部材23aを押し込み、ボール24aを介して研磨台皿12aを押圧することにより、研磨シート15aを所望の量だけ圧縮する。
【0029】
工程S12において、台座22の中心軸Yと直交する軸(X軸)上の研磨面成形面11内の領域に研磨シート15b及び研磨台皿12bを載置し、押部材23bをセットする(図6B参照)。
この際には、図6Aに示す状態から、枠体21を回転させると下側になる側(押部材23c側)の枠体21に枠台31を取り付けた上で、枠体21を自身に沿って90度回転させる。ここで、枠台31は、枠体21から突出している押部材23cの外側から枠体21を支持する部材である。これにより、枠体21を回転させた際にも、枠体21を安定的に保持しながら、押部材23b等のセットを行うことができる。
【0030】
このように、研磨シート15bが載置される領域を上方に向けた状態で、研磨シート15b、研磨台皿12b、及びボール24bを型部材10上に順次載置し、押部材23bによりボール24bを介して研磨台皿12bを押圧することにより、研磨シート15bを圧縮する。なお、詳細な手順については、工程S11において説明したものと同様である。
【0031】
工程S13において、セット済みの押部材23bとは反対側の研磨面成形面11内の領域に研磨シート15c及び研磨台皿12cを載置し、押部材23cをセットする(図6C参照)。
この際には、図6Bに示す状態から、枠台31を枠体21の対向する側に付け替えた上で、枠体21を180度回転させる。このように、研磨シート15cが載置される領域を上方に向けた状態で、研磨シート15c、研磨台皿12c、及びボール24cを型部材10上に順次載置し、押部材23cによりボール24cを介して研磨台皿12cを押圧することにより、研磨シート15cを圧縮する。なお、詳細な手順については、工程S11において説明したものと同様である。
【0032】
工程S14において、押部材23a〜23cがセットされたレンズ研磨皿作製装置1を加熱炉32内に入れ、所定温度で所定時間加熱する(図6D参照)。それにより、接着剤16を加熱乾燥して硬化させる。ここで、加熱炉内の温度は、研磨シート15a〜15cが融解したり、特性が変化しない範囲(例えば約200℃)に設定する。また、加熱時間については、型部材10及び研磨台皿12a〜12cが十分に加熱炉内の温度まで均一に昇温可能となる時間(例えば約40分間)を設定する。
【0033】
工程S15において、所定時間経過後、レンズ研磨皿作製装置1を加熱炉32内から取り出し、常温に冷めるまで放置する。この際、自然冷却の他、送風等を行って冷却を促進しても良い。
【0034】
工程S16において、押部材23a〜23cを順次緩め、研磨シート15a〜15cが接着された研磨台皿12a〜12cを型部材10から離型する。それにより、複数のレンズ研磨皿17が同時に完成する(図6E参照)。
【0035】
以上説明したように、実施の形態1によれば、各々に研磨シートが貼付された複数の研磨台皿を、1個の型部材を用いて同時に作製することができる。従って、治工具や乾燥のための加熱炉等の設備を複数設ける必要がなくなるので、製造コストを低減することが可能となる。また、リードタイムの短縮を図ることも可能となる。
【0036】
(変形例1−1)
次に、実施の形態1の変形例1−1について説明する。図7は、変形例1−1に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
図7に示すレンズ研磨皿作製装置1−1においては、台座22が設けられた内周面21dと対向する内周面21aにも台座22を固設し、型部材10をY軸の上下方向から台座22によって支持している。この場合、型部材10の位置が固定されるので、押部材23b、23cのセットや、研磨台皿12b、12cの押圧を安定して行うことができる。
【0037】
(変形例1−2)
次に、実施の形態1の変形例1−2について説明する。図8は、変形例1−2に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
図8に示すレンズ研磨皿作製装置1−2においては、台座22が設けられた内周面21dと直交する内周面21cにも台座22を固設し、型部材10をX軸及びY軸方向から支持している。このように、型部材10を支持する台座22の位置は内周面21dやその対向面(内周面21a)に限定されない。即ち、型部材10を互いに異なる方向から押圧する少なくとも2つの押部材(図8においては押部材23a、23b)を設ける面が確保されていれば、型部材10をどのような形態で支持しても良い。
【0038】
(変形例1−3)
次に、実施の形態1の変形例1−3について説明する。図9は、変形例1−3に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
図9に示すレンズ研磨皿作製装置1−3においては、図1に示す型部材10の代わりに、真球の一部を平面状に削った型部材40を用いている。型部材40は、互いに対向する平面部42a、42bにおいて、内周面21a、21dに固設された支持部材26によって支持されている。
このように、複数の研磨シート及び研磨台皿を載置可能な面積の研磨面成形面41が確保されていれば、型部材全体の形状は必ずしも完全な真球でなくても良い。
【0039】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。図10は、実施の形態2に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す斜視図である。また、図11は、図10に示すB−B線における一部断面図である。実施の形態2においては、X、Y、Zの3軸において同時にレンズ研磨皿を作製可能な構成としている。
【0040】
図10及び図11に示すように、レンズ研磨皿作製装置2は、枠体21に加え、枠体21と交差して型部材10の周囲に配置される枠体51、52を備える。枠体51、52は、枠体21をY軸に対して90度回転させた位置において、溶接や嵌合等の方法により枠体21に取り付けられている。
【0041】
枠体51、52の互いに対向する内周面51a、52aの略中央には、外周面側からそれぞれ貫通する押部材23d、23eが螺合により位置調整可能に取り付けられている。押部材23d、23eは、それぞれの中心軸が互いに一致すると共に、X軸及びY軸と直交し、且つ、台座22に型部材10を載置した際の型部材10の中心軸と一致するように設けられている。以下、押部材23d、23eの中心軸をZ軸とする。
【0042】
Z軸を通る研磨面成形面11内の領域には研磨シート15d、15eを介して研磨台皿12d、12eが当接し、この研磨台皿12d、12eを、ボール24d、24eを介して押部材23d、23eが押圧している。このように、枠体21と交差する枠体51、52を設けることにより、XZ平面において同時作製可能なレンズ研磨皿の数を更に増加させることができる。
【0043】
なお、研磨シート15d、15e及び研磨台皿12d、12eの載置の仕方、並びに押部材23d、23eのセットの仕方については、実施の形態1において説明したものと同様である。
また、実施の形態2においても、変形例1−1と同様に、押部材23aの代わりに台座22を設けても良い。
【0044】
(変形例2−1)
次に、実施の形態2の変形例2−1について説明する。図12は、変形例2−1に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す斜視図である。
図12に示すように、レンズ研磨皿作製装置2−1は、枠体21に加え、枠体21と交差して型部材10の周囲に配置される枠体53〜56を備える。枠体53、54は、枠体21をY軸に対して60度回転させた位置において、溶接や嵌合等の方法により枠体21に取り付けられている。また、枠体55、56は、枠体21をY軸に対して120度回転させた位置において、溶接や嵌合等の方法により枠体21に取り付けられている。枠体53、54の互いに対向する内周面53a、54a、及び、枠体55、56の互いに対向する内周面55a、56aには、外周面側から貫通する押部材23が螺合により設けられている。このような枠体53〜56及び押部材23を設けることにより、XZ平面内において計6個の研磨台皿を同時に作製することが可能となる。
なお、枠体21に追加して取り付ける枠体の数は、さらに増加させても良い。
【0045】
(変形例2−2)
次に、実施の形態2の変形例2−2について説明する。図13は、変形例2−2に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す斜視図である。また、図14は、図13に示すC−C線における一部断面図である。
【0046】
図13及び図14に示すように、レンズ研磨皿作製装置2−2は、枠体21に加え、枠体21と交差して型部材10の周囲に配置される枠体57、58を備える。枠体57、58は、枠体21をX軸に対して90度回転させた位置において、溶接や嵌合等の方法により枠体21に取り付けられている。
【0047】
枠体57、58の互いに対向する内周面57a、58aの略中央には、外周面側から貫通する押部材23d、23eが螺合により取り付けられている。押部材23d、23eは、それぞれの中心軸が互いに一致すると共に、X軸及びY軸と直交し、且つ、台座22に型部材10を載置した際の型部材10の中心軸と一致するように設けられている。
このように、枠体57、58の取り付け方向を変更しても、実施の形態2と同様に、Z軸を通る研磨面成形面11上の領域におけるレンズ研磨皿の作製が可能となる。
【0048】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図15は、実施の形態3に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。上記実施の形態1及び2においては、四角形状の枠体21を用いたが、枠体の形状は四角形に限定されない。
【0049】
図15に示すように、レンズ研磨皿作製装置3は、内周断面及び外周断面が互いに相似な八角形状をなす枠体61を備える。この八角形状の1つの辺に対応する内周面61aには台座22が固設されており、それ以外の辺に対応する各内周面には、外周面側から貫通する押部材23が螺合により設けられている。これらの押部材23は、互いに異なる方向から研磨台皿12及び研磨シート15を型部材10に向けて押圧することにより、レンズ研磨皿を作製する。
このような実施の形態3によれば、XY平面内において計7個のレンズ研磨皿を同時に作製することが可能となる。
【0050】
(変形例3)
次に、実施の形態3の変形例3について説明する。図16は、変形例3に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。上記実施の形態2においては、全体として四角形状をなす枠体51〜58を用いたが、枠体21に対して交差するように取り付けられる枠体の形状も四角形に限定されない。
【0051】
図16に示すように、レンズ研磨皿作製装置3’は、図1に示す枠体21と交差するように枠体21に取り付けられ、型部材10の周囲に配置される枠体62、63を備える。枠体62、63の内周断面及び外周断面は、全体として互いに相似な六角形状をなしている。また、枠体62、63の互いに対向する各内周面には、外周面側から貫通する押部材23が螺合により設けられている。これらの押部材23は、互いに異なる方向から研磨台皿12及び研磨シート15を型部材10に向けて押圧することにより、レンズ研磨皿を作製する。
【0052】
このような変形例3によれば、XZ平面内において計6個のレンズ研磨皿を同時に作製することが可能となる。なお、枠体62、63は、図15に示すような多角形の枠体61に取り付けても良い。
【0053】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図17は、実施の形態4に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
上記実施の形態1〜3においては、台座22の設置面と対向する面を除き、枠体21、51〜58、61〜63の互いに対向する内周面に押部材23、23b〜23eを設け、型部材10の球心を通る軸の両側から互いに押圧するようにした。しかしながら、型部材10に印加される押圧力を釣り合う状態にすることができれば、押部材23を設ける位置はこれに限定されない。
【0054】
例えば、図17に示すレンズ研磨皿作製装置4においては、内周断面及び外周断面が互いに相似な六角形状をなす枠体64に対し、六角形状の1つおきの辺に対応する壁面に押部材23を設けている。このように、互いに隣接する押部材23同士のなす角度が均等になるように(図17においては120度ずつ)押部材23を配置する場合、各押部材23の押圧力を均一にしつつ、型部材10に印加される全押圧力を釣り合う状態にすることができる。
【0055】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図18は、実施の形態5に係るレンズ研磨皿作製装置の構成を示す一部断面図である。
上記実施の形態1〜3においては、型部材10に当接する複数の研磨台皿12の径を全て同一とした。しかしながら、研磨シート貼付面の曲率が同一であれば(即ち、各研磨台皿の研磨シート貼付面が型部材10の研磨面成形面11に対応していれば)、研磨台皿の径を互いに異ならせても良い。
【0056】
例えば、図18に示すレンズ研磨皿作製装置5においては、型部材10を挟んで台座22とは反対側の研磨面成形面11内の領域に研磨シート15fを載置し、その上に、研磨台皿12b、12cよりも径が大きい研磨台皿12fを載置して、これを押部材23aによって押圧している。このような実施の形態5によれば、複数のサイズのレンズ研磨皿を同時に作製することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1、1−1、1−2、1−3、2、2−1、2−2、3、3’、4、5 レンズ研磨皿作製装置
10、40 型部材
11、41 研磨面成形面
12、12a〜12e 研磨台皿
13a〜13c 研磨シート貼付面
14a〜14c くぼみ
15、15a〜15e 研磨シート
16 接着剤
17 レンズ研磨皿
20 押圧機構
21、51〜58、61〜64 枠体
21a〜21d、51a〜58a 内周面
22 台座(支持部材)
22a くぼみ
23、23a〜23e 押部材
24a〜24e ボール
25a〜25c 測定機構
26 支持部材
31 枠台
32 加熱炉
42a、42b 平面部
151 周縁部
152 切り込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製装置において、
球面状の研磨面成形面を有する型部材と、
前記球面状の一部に対応する曲面形状の研磨シート貼付面であって、各々が研磨シートを介して前記研磨面成形面に当接する研磨シート貼付面を有する複数の研磨台皿と、
前記複数の研磨台皿を前記研磨面成形面に向けて押圧する押圧機構と、
を備えることを特徴とするレンズ研磨皿作製装置。
【請求項2】
互いに対向して配置される2つの前記研磨台皿を少なくとも1組有し、
前記2つの研磨台皿における研磨シート貼付面の曲率中心を結ぶ直線が、前記研磨面成形面の球心を通ることを特徴とする請求項1に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項3】
前記押圧機構は、
前記型部材の周囲に配置される枠体と、
前記枠体に設けられて前記型部材を支持する支持部材と、
前記枠体に設けられ、前記複数の研磨台皿を前記型部材に向けてそれぞれ押圧する複数の押部材と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項4】
前記押圧機構は、
互いに交差して前記型部材の周囲に配置される複数の枠体と、
前記複数の枠体の一部に設けられて前記型部材を支持する支持部材と、
前記複数の枠体に設けられ、前記複数の研磨台皿を前記型部材に向けてそれぞれ押圧する複数の押部材と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項5】
前記複数の押部材の内の少なくとも1つは、前記型部材を挟んで、前記支持部材と対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項6】
前記枠体の外周断面及び内周断面は、互いに相似な多角形状をなし、
前記支持部材は、前記枠体の前記多角形状の1つの辺に対応する内周面上に固設され、
前記複数の押部材は、前記内周面とは異なる辺に対応する外周面から内周面に渡ってそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のレンズ研磨皿作製装置。
【請求項7】
球面レンズの研磨に用いられるレンズ研磨皿を作製するレンズ研磨皿作製方法において、
球面状の研磨面成形面を有する型部材の前記研磨面成形面の一部の領域に第1の研磨シートを載置し、前記球面状の一部に対応する曲面形状の研磨シート貼付面を有する第1の研磨台皿を、前記研磨シート貼付面が前記第1の研磨シートに向くように、接着剤を介して前記第1の研磨シート上に載置し、第1の押部材を用いて前記第1の研磨シートが所望の厚さになるように前記第1の研磨台皿を前記型部材に向けて押圧する工程と、
前記研磨面成形面の前記第1の研磨シートが載置された領域とは異なる領域に第2の研磨シートを載置し、前記第1の研磨台皿とは異なる第2の研磨台皿であって、前記球面状の一部に対応する曲面形状の研磨シート貼付面を有する第2の研磨台皿を、前記研磨シート貼付面が前記第2の研磨シートに向くように、接着剤を介して前記第2の研磨シート上に載置し、前記第1の押部材とは異なる第2の押部材を用いて前記第2の研磨シートが所望の厚さになるように前記第2の研磨台皿を前記型部材に向けて押圧する工程と、
前記第1及び第2の押部材によって前記第1及び第2の研磨台皿を前記型部材に向けそれぞれ押圧した状態で、前記型部材、前記第1及び第2の研磨台皿、並びに前記第1及び第2の押部材を乾燥炉に配置し、前記接着剤を硬化させる工程と、
前記型部材から、前記第1の研磨シートが貼付された前記第1の研磨台皿と、前記第2の研磨シートが貼付された前記第2の研磨台皿とを離型する工程と、
を含むことを特徴とするレンズ研磨皿作製方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図6E】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate