説明

レンズ鏡筒およびデジタルカメラ

【課題】像振れ補正装置とシャッタユニットとを併せ持つレンズ鏡筒において、鏡筒の全長を最小限に短くする。
【解決手段】像振れ補正レンズ5を保持する2群レンズ室11は、固定枠14に光軸と直交する方向に移動可能に支持されている。像振れ補正レンズ5を駆動するためのコイルは、固定枠14に形成された膨出部14Aに固定されている。シャッタユニット6の本体6Aは、膨出部14Aと光軸と直交する方向に重なっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式像振れ補正が可能なレンズ鏡筒およびデジタルカメラに関し、レンズ鏡筒の小型化を図るものである。
【背景技術】
【0002】
光学式像振れ補正は、撮影レンズを構成する振れ補正レンズを光軸と交差する方向に駆動することで、受光面上の像の振れを軽減するものである。従来、この種の像振れ補正装置とシャッタユニットとを併せ持つレンズ鏡筒が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−258689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
像振れ補正装置は、振れ補正レンズの他に、これを駆動するための駆動機構が必要であり、またシャッタユニットは、セクタを有するシャッタ本体と、セクタ駆動用の駆動機構が必要となる。引用文献1のように、像振れ補正装置とシャッタユニットとを単純に光軸方向に並べて配置すると、沈胴状態における鏡筒の全長が長くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るレンズ鏡筒は、像振れを補正するために振れ補正レンズを駆動する像振れ駆動機構と、露光制御用のシャッタユニットとを備えたレンズ鏡筒であって、像振れ駆動機構の少なくとも一部が、シャッタユニットの少なくとも一部と光軸と直交する方向に重なるように像振れ補正機構およびシャッタユニットを配置したことを特徴とする。
シャッタユニットは、シャッタ本体とシャッタ駆動部とを有し、像振れ駆動機構の少なくとも一部を保持する保持部材の背面が、シャッタ本体の背面と略同一平面に位置するようにしてもよい。
シャッタユニットは、光軸方向に見たときに円の一部分を切欠いた形状とされ、その切欠き部分に像振れ駆動機構の少なくとも一部が配置されるようにしてもよい。
本発明に係るデジタルカメラは、請求項1〜3のいずれか1項記載のレンズ鏡筒と、撮像素子を含む撮像ユニットとを有することを特徴とするカメラ。
シャッタユニットは、シャッタ本体と、シャッタ本体の背面に固定されたシャッタ駆動部とを有し、シャッタ駆動部の少なくとも一部が、撮像ユニットの少なくとも一部と光軸と直交する方向に重なるよう撮像ユニットを配置してもよい。
撮像ユニットは、撮像素子の前面に配置される光学フィルタを有していてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、像振れ補正装置とシャッタユニットとを併せ持つレンズ鏡筒において、鏡筒の全長を最小限に短くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1〜図4により本発明の一実施の形態を説明する。
図1は本実施形態におけるデジタルカメラのレンズ鏡筒部と撮像部とを示す断面図、図2はその部分拡大図である。鏡筒部はズーミングが可能であり、図は沈胴状態を示している。1は固定筒、2は固定筒1に対して光軸方向に進退可能な駆動筒、3は駆動筒2に対して同方向に進退可能な駆動筒である。駆動筒3の内周面側には、第1群であるフォーカシングレンズ4が配置され、その後方に第2群である振れ補正レンズ5が配置される。ズーム機構の詳細は省略するが、カメラの電源オンに伴って図の沈胴状態から自動的に広角端位置まで繰り出され、更にズーム操作により望遠端位置まで繰り出し可能とされる。
【0008】
振れ補正レンズ5の後方にはシャッタユニット6が配置されている。シャッタユニット6は絞り兼用シャッタであり、シャッタのセクタ羽根と絞り機構を内蔵するシャッタ本体6Aと、セクタ羽根および絞りを駆動するアクチュエータ6Bとが一体化されて成る。なお、絞りは例えばNDフィルタなどから構成される。
【0009】
図3および図4から分かるように、シャッタ本体6Aは、駆動筒3の内周に合わせて略円形とされるが、下部分は略V字状に切欠かれている(その理由は後述する)。アクチュエータ6Bは、シャッタ本体6Aの背面上部に固定されている。6aは光軸を中心とするシャッタ開口であり、セクタ羽根でこの開口6aが開閉される。また6bは、アクチュエータ6Bにセクタ駆動信号および絞り駆動信号を伝達するためのフレキシブルプリント基板である。
【0010】
図1において、シャッタユニット6の更に後方には、撮像ユニット7が配置される。撮像ユニット7は、CCD等の撮像素子7Aと、その前方に配置される光学ローパスフィルタ7Bとを一体化した部組である。
【0011】
さらにレンズ鏡筒部は、光学式像振れ補正機能を備えている。光学式像振れ補正は、不図示の振れセンサでカメラの振れを検出し、その検出出力に基づいて振れ補正レンズ5を光軸と直交する方向にシフトさせることで、受光面上における像の振れを軽減するものである。振れ補正レンズ5は、2群レンズ室11に保持され、2群レンズ室11は、図3に示すように2箇所に設けた引張ばね12により、3箇所に設けたボール13を介して固定枠14に押圧支持される。固定枠14は、駆動筒3の内周面側に固定される。レンズ4,5の透過光束は、固定枠14の開口14aおよびシャッタ開口6aを通って撮像ユニット7に導かれることになる。なお、21は2群レンズ室11を押さえる押さえ板である。
【0012】
上記ボール13の転動により、2群レンズ室11は固定枠14に対して光軸と直交する方向にスムーズに移動可能であり、また引張ばね12の付勢力により、2群レンズ室11の光軸方向の不所望な動きが規制される。
【0013】
振れ補正レンズ5の駆動源は、一対のボイスコイルモータ(以下、VCM)で構成され、一対のVCMは、それぞれ駆動用マグネット15とコイル16とを有する。本実施形態では、いわゆるムービングマグネット型(MM型)のVCMを採用しており、一対の駆動用マグネット15は2群レンズ室11に保持される一方、一対のコイル16は固定枠14に保持される。
【0014】
コイル16の配置については後で詳述するが、コイル16に電流を流すことで、マグネット15を介して2群レンズ室11に光軸と直交する方向の電磁力が作用し、2群レンズ室11と一体に振れ補正レンズ5がその方向にシフトされる。一対のVCMを用いることで、振れ補正レンズ5を光軸と直交する2方向にシフトでき、結果として光軸と直交するあらゆる方向にレンズ5を駆動することが可能となる。
【0015】
また、2群レンズ室11には、振れ補正レンズ5の位置を検出するための一対の位置検出マグネット17が予め保持されるとともに、固定枠14には、一対のマグネット17に対応する位置に一対のホール素子18が保持される。これらのホール素子18の出力から振れ補正レンズ5の上記2方向の位置がそれぞれ得られ、振れ補正制御に用いられる。
【0016】
次に、コイル16およびシャッタユニット6の位置関係について説明する。
固定枠14の図示下部には、後方に膨出する膨出部14Aが形成され、この膨出部14Aの内部に上記一対のコイル16が配置される。膨出部14Aは、後方から見たときに略V字状をなし(図4参照)、下面は円弧面とされる。一対のコイル16は、互いに直交する2方向に2群レンズ室12をシフトするために、90度の開き角でV字状の膨出部14Aに対称に配置され、膨出部14Aの背面内側に当て付けられて固定される。
【0017】
そして、シャッタユニット6は、膨出部14Aの真上に配置される。上述したように、シャッタ本体6Aの下部は略V字状に切欠かれており、その切欠き部分が略V字状の膨出部14Aに嵌り込むようにシャッタユニット6が配置される。これにより、図4に示すように、シャッタユニット6と膨出部14Aとで1つの円が形成される格好となり、また図2から分かるように、シャッタ本体6Aの背面と、膨出部14Aの背面はほぼ同一平面状に位置する。
【0018】
上記の構成によれば、像振れ駆動機構を構成する一対のコイル16とシャッタ本体6とが光軸と直交する方向に重なって配置されることになり、両者が光軸方向に離れて配置されていた従来構造と比べて、鏡筒部の沈胴時における全長を短くするできる。また、一対のコイル16の配置状態に合わせて膨出部14Aを略V字状とし、それに嵌り込むようにシャッタ本体6Aの形状を定めたので、鏡筒内空間を無駄なく有効に利用できる。
【0019】
さらに、図1に示すようにシャッタユニット6の直ぐ後方には撮像ユニット7が配置されるが、シャッタ本体6Aから後方に突出するアクチュエータ6Bは、この撮像ユニット7を避けるようにシャッタ本体6の上部に設けられている。つまり、アクチュエータ6Bと撮像ユニット7とが、光軸と直交する方向に部分的に重なるように配置され、これにより鏡筒全長を更に短くすることができる。
【0020】
なお以上では、シャッタユニット6の下にコイル16を配置したが、これらの上下関係は逆でもよいし、また両者が横方向に並ぶ構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】一実施形態におけるデジタルカメラの鏡筒部および撮像部を示す断面図。
【図2】像振れ補正機構およびシャッタユニットを示す図1の部分拡大図。
【図3】鏡筒部の像振れ補正機構およびシャッタユニットを示す分解斜視図。
【図4】図2のIV−IV線から見た図。
【符号の説明】
【0022】
5 像振れ補正レンズ
6 シャッタユニット
6A シャッタ本体
6B アクチュエータ
7 撮像ユニット
7A 撮像素子
7B 光学ローパスフィルタ
11 2群レンズ室
14 固定枠
14A 膨出部
15 駆動用マグネット
16 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像振れを補正するために振れ補正レンズを駆動する像振れ駆動機構と、露光制御用のシャッタユニットとを備えたレンズ鏡筒において、
前記像振れ駆動機構の少なくとも一部が、前記シャッタユニットの少なくとも一部と光軸と直交する方向に重なるように像振れ補正機構およびシャッタユニットを配置したことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記シャッタユニットは、シャッタ本体とシャッタ駆動部とを有し、前記像振れ駆動機構の少なくとも一部を保持する保持部材の背面が、前記シャッタ本体の背面と略同一平面に位置するようにしたことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記シャッタユニットは、光軸方向に見たときに円の一部分を切欠いた形状とされ、その切欠き部分に前記像振れ駆動機構の少なくとも一部が配置されるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のレンズ鏡筒と、撮像素子を含む撮像ユニットとを有することを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項5】
前記シャッタユニットは、シャッタ本体と、シャッタ本体の背面に固定されたシャッタ駆動部とを有し、前記シャッタ駆動部の少なくとも一部が、前記撮像ユニットの少なくとも一部と光軸と直交する方向に重なるよう撮像ユニットを配置したことを特徴とする請求項4に記載のデジタルカメラ。
【請求項6】
撮像ユニットは、前記撮像素子の前面に配置される光学フィルタを更に有することを特徴とする請求項4または5に記載のデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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