説明

レンズ駆動装置

【課題】ホール素子が、コイルに流した電流により発生する磁界に起因した悪影響を受けるのを回避すること。
【解決手段】AFユニットは、レンズホルダと、フォーカスコイルと、このフォーカスコイルと対向する第1の面を持つ複数の永久磁石片から成る永久磁石と、永久磁石を保持するマグネットホルダと、レンズホルダを光軸方向に変位可能に支持する第1及び第2の板バネと、を備える。手振れ補正部は、第2の板バネに近接して配置されたベースと、ベースに対してAFユニットを揺動可能に支持する支持部材と、複数の永久磁石片の第1の面に垂直な第2の面にそれぞれ対向して配置された複数の手振れ補正用コイル部から成る手振れ補正用コイルと、複数のホール素子とを有する。各ホール素子は、手振れ補正用コイル部の複数のコイル部分の分離した場所に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレンズ駆動装置に関し、特に、携帯電話用の小型カメラで静止画像の撮影時に生じた手振れ(振動)を補正して像ブレのない画像を撮影できるようにしたレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静止画像の撮影時に手振れ(振動)があったとしても、結像面上での像ブレを防いで鮮明な撮影ができるようにしたレンズ駆動装置が、従来から種々提案されている。
【0003】
手振れ補正方式として、センサーシフト方式やレンズシフト方式等の「光学式」や、ソフトウェアによる画像処理で手振れを補正する「ソフトウェア補正方式」が知られている。携帯電話に導入されている手振れ補正方式は、主にソフトウェア補正方式を採用している。
【0004】
ソフトウェア補正方式は、例えば、特開平11−64905号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に開示された手振れ補正方法では、検出手段の検出結果からノイズ成分を除去し、このノイズ成分を除去した検出信号から撮像装置の手振れによる画像のぶれの補正に必要な特定情報を算出することによって、撮像装置が静止して手振れのない状態では、撮像画像も静止するようにしている。
【0005】
しかしながら、この特許文献1に開示された「ソフトウェア補正方式」の手振れ補正方法では、後述する「光学式」と比較すると、画質が劣化するという問題がある。また、ソフトウェア補正方式の手振れ補正方法では、撮像時間もソフトウェアの処理が含まれるため、長くかかるという欠点がある。
【0006】
そのため、近年高画素化に伴い、手振れ補正方式として「光学式」の要求が増加している。「光学式」の手振れ補正方式として、「センサーシフト方式」、「レンズシフト方式」、および「光学ユニットチルト方式」が知られている。
【0007】
センサーシフト方式は、例えば、特開2004−274242号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献2に開示されたデジタルカメラは、アクチュエータによって規準位置(センター)を中心に撮像素子(CCD)が移動可能な構成になっている。アクチュエータは、振動センサで検出された手振れに応じてCCDを移動させ手振れ補正を行う。CCDはCCD移動部内に配置される。CCDは、このCCD移動部によりZ軸に直交するXY平面内にて移動することが可能である。CCD移動部は主として、ハウジングに固設されるベース板と、ベース板に対してX軸方向に移動する第1スライダと、第1スライダに対してY軸方向に移動する第2スライダとの3つの部材から構成される。
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示されているような「センサーシフト方式」では、CCD移動部(可動機構)が大きくなってしまう。そのため、センサーシフト方式の手振れ補正装置を、携帯電話用の小型カメラへ採用することは、サイズ(外形、高さ)の面で困難である。
【0009】
次に、レンズシフト方式について説明する。
【0010】
例えば、特開2009−145771号公報(特許文献3)は、補正レンズを駆動する振れ補正ユニットを含む像振れ補正装置を開示している。振れ補正ユニットは、固定部材であるベース板と、補正レンズを移動可能に保持する可動鏡筒と、ベース板と可動鏡筒に挟持された3つの球と、可動鏡筒をベース板に対して弾性支持する複数の弾性体と、ベース板に固定された2つのコイルと、可動鏡筒に固定された2つの磁石とを備える。
【0011】
また、特開2006−65352号公報(特許文献4)は、複数のレンズ群から成る撮影光学系(結像光学系)中の特定の1つのレンズ群(以下、「補正レンズ」と呼ぶ)を、光軸に対して垂直面内で互いに直交する2方向に移動制御することにより像ぶれを補正する「像ぶれ補正装置」を開示している。特許文献4に開示された像ぶれ補正装置では、補正レンズが、ピッチング移動枠およびヨーイング移動枠を介して、固定枠に対して上下方向(ピッチ方向)および左右方向(ヨー方向)に移動自在に支持されている。
【0012】
特開2008−26634号公報(特許文献5)は、結像光学系の光軸に交わる方向に移動することによって、結像光学系によって形成される像のぶれを補正する補正光学部材を含む「手ぶれ補正ユニット」を開示している。特許文献5に開示された補正光学部材では、補正レンズを保持するレンズ保持枠が、ピッチスライダーおよびヨースライダーを介して、収容筒に対してピッチ方向およびヨー方向に移動自在に支持されている。
【0013】
特開2006−215095号公報(特許文献6)は、小さな駆動力で補正レンズを移動させることができ、迅速、且つ高精度の像ぶれ補正を行なうことのできる「像ぶれ補正装置」を開示している。特許文献6に開示された像ぶれ補正装置は、補正レンズを保持する保持枠と、この保持枠を第1の方向(ピッチ方向)にスライド自在に支持する第1のスライダーと、保持枠を第2の方向(ヨー方向)にスライド自在に支持する第2のスライダーと、第1のスライダーを第1の方向に駆動する第1のコイルモータと、第2のスライダーを第2の方向に駆動する第2のコイルモータとを備えている。
【0014】
特開2008−15159号公報(特許文献7)は、光軸に直交する方向に移動可能に設けられたブレ補正光学系を備えたレンズ鏡筒を開示している。特許文献7に開示されたブレ補正光学系において、VR本体ユニット内に配置された可動VRユニットは、補正レンズ(第3レンズ群)を保持し、光軸に直交するXY平面内で移動可能に設けられている。
【0015】
特開2007−212876号公報(特許文献8)は、移動枠に保持された補正レンズを、レンズ系の光軸に対して互いに直交する第1および第2の方向に移動可能とし、駆動手段により補正レンズの光軸をレンズ系の光軸と一致させるように制御することにより像ぶれを補正可能とした「像ぶれ補正装置」を開示している。
【0016】
特開2007−17957号公報(特許文献9)は、レンズ系により形成される像のぶれを補正するための補正レンズを、レンズ系の光軸と直交する方向であると共に互いに直交する第1の方向及び第2の方向へレンズ駆動部の作動により駆動させて、像ぶれを補正するようにした「像ぶれ補正装置」を開示している。特許文献9に開示された像ぶれ補正装置において、レンズ駆動部は、補正レンズの光軸と直交する方向の一側に配置して設けられている。
【0017】
特開2007−17874号公報(特許文献10)は、移動枠に保持された補正レンズを、レンズ系の光軸と直交する方向であると共に互いに直交する第1の方向及び第2の方向に移動可能とし、補正レンズの光軸をレンズ系の光軸と一致させるように制御することにより像ぶれを補正可能とした「像ぶれ補正装置」を開示している。この特許文献10に開示された像ぶれ補正装置は、相対的に移動可能とされたコイルとマグネットを有する駆動手段を備える。コイル及びマグネットの一方が移動枠に固定され、他方が移動枠を移動可能に支持する支持枠に固定されている。また、この特許文献10に開示された像ぶれ補正装置は、補正レンズの第1の方向に関する位置情報を、マグネットの磁力を検出することにより検出する第1のホール素子と、補正レンズの第2の方向に関する位置情報を、マグネットの磁力を検出することにより検出する第2のホール素子とを備える。
【0018】
上述した特許文献3〜10に開示された「レンズシフト方式」の像ぶれ補正装置(手振れ補正装置)は、いずれも、補正レンズを光軸と垂直な平面内で移動調整する構造を有している。しかしながら、このような構造の像ぶれ補正装置(手振れ補正装置)は、構造が複雑で、小型化に不向きであるという問題がある。すなわち、上記センサーシフト方式の手振れ補正装置と同様に、レンズシフト方式の手振れ補正装置を、携帯電話用の小型カメラへ採用することは、サイズ(外形、高さ)の面で困難である。
【0019】
上述した問題を解決するために、レンズと撮像素子(イメージセンサ)とを保持するレンズモジュール(カメラモジュール)それ自体を揺動させることにより、手振れ(像ぶれ)を補正するようにした、手振れ補正装置(像振れ補正装置)が提案されている。そのような方式を、ここでは「光学ユニットチルト方式」と呼ぶことにする。
【0020】
以下、「光学ユニットチルト方式」について説明する。
【0021】
例えば、特開2007−41455号公報(特許文献11)は、レンズと撮像素子とを保持するレンズモジュールと、このレンズモジュールを回動軸により回動可能に支持する枠構造と、回動軸の被駆動部(ロータ)に駆動力を与えることでレンズモジュールを枠構造に対して回動させる駆動手段(アクチュエータ)と、駆動手段(アクチュエータ)を回動軸の被駆動部(ロータ)に付勢する付勢手段(板バネ)とを備えた「光学装置の像振れ補正装置」を開示している。枠構造は、内枠と外枠とから成る。駆動手段(アクチュエータ)は、回動軸の被駆動部(ロータ)に対して光軸と直角方向から当接するように配置されている。駆動手段(アクチュエータ)は、圧電素子と回動軸側の作用部とからなる。作用部は、圧電素子の縦振動および屈曲振動により回動軸を駆動する。
【0022】
しかしながら、特許文献11に開示された「光学ユニットチルト方式」の像振れ補正装置では、レンズモジュールを内枠と外枠とから成る枠構造で覆う必要がある。その結果、像振れ補正装置が大型になってしまう問題がある。
【0023】
また、特開2007−93953号公報(特許文献12)は、撮影レンズ及びイメージセンサを一体化したカメラモジュールを筐体の内部に収容するとともに、カメラモジュールを撮影光軸と直交し、かつ互いに直角に交差する第一軸と第二軸とを中心に揺動自在に筐体に軸着し、手振れセンサで検出された筐体の振れに応じてカメラモジュール全体の姿勢を筐体内部で制御して、静止画像撮影時の手振れを補正するようにした「カメラの手振れ補正装置」を開示している。特許文献12に開示されたカメラの手振れ補正装置は、カメラモジュールが固定された内枠をその外側から第一軸を中心に揺動自在に支持する中枠と、筐体に固定され、中枠をその外側から第二軸を中心に揺動自在に支持する外枠と、中枠に組み込まれ、手振れセンサ(ピッチ方向の手振れを検出する第1のセンサモジュール)からの手振れ信号に応じて内枠を第一軸の回りに揺動させる第一駆動手段と、外枠に組み込まれ、手振れセンサ(ヨー方向の手振れを検出する第2のセンサモジュール)からの手振れ信号に応じて中枠を第二軸の回りに揺動させる第二駆動手段とを備える。第一駆動手段は、第1のステッピングモータと、その回転を減速する第1の減速ギヤトレインと、最終段のギヤと一体に回転して内枠に設けられた第1のカムフォロアを介して内枠を揺動させる第1のカムとから成る。第二駆動手段は、第2のステッピングモータと、その回転を減速する第2の減速ギヤトレインと、最終段のギヤと一体に回転して中枠に設けられた第2のカムフォロアを介して中枠を揺動させる第2のカムとから成る。
【0024】
しかしながら、特許文献12に開示された「光学ユニットチルト方式」の手振れ補正装置でも、カメラモジュールを内枠、中枠、および外枠で覆う必要がある。その結果、手振れ補正装置が大型になってしまう。さらに、「光学ユニットチルト方式」では、回転軸が存在するため、穴‐軸間の摩擦が発生して、ヒステリシスが生じるという問題もある。
【0025】
さらに、特開2009−288770号公報(特許文献13)は、撮影ユニットに対する揺れ補正用の撮影ユニット駆動機構の構成を改良して揺れを確実に補正することのできるようにした撮影用光学装置を開示している。特許文献13に開示された撮影用光学装置では、固定カバーの内側に、撮影ユニット(可動モジュール)と、この撮影ユニットを変位させて揺れ補正を行うための揺れ補正機構とが構成されている。撮影ユニットは、レンズを光軸の方向に沿って移動させるためのものである。撮影ユニットは、レンズおよび固定しぼりを内側に保持した移動体と、この移動体を光軸方向に沿って移動させるレンズ駆動機構と、レンズ駆動機構および移動体が搭載された支持体とを有する。レンズ駆動機構は、レンズ駆動用コイルと、レンズ駆動用マグネットと、ヨークとを備えている。撮影ユニットは、4本のサスペンションワイヤによって固定体に支持されている。光軸を間に挟む両側2箇所には、2つが対になった揺れ補正用の第1撮影ユニット駆動機構および第2撮影ユニット駆動機構がそれぞれ設けられている。これら撮影ユニット駆動機構では、可動体側に撮影ユニット駆動用マグネットが保持され、固定体側に撮影ユニット駆動用コイルが保持されている。
【0026】
しかしながら、特許文献13に開示された「光学ユニットチルト方式」の撮影用光学装置では、レンズ駆動用マグネットの他に、撮影ユニット駆動用マグネットをも必要となる。その結果、撮影用光学装置が大型になってしまう問題がある。
【0027】
また、特開2011−107470号公報(特許文献14)は、レンズを光軸方向へ駆動するとともに揺れを補正することが可能なレンズ駆動装置を開示している。この特許文献14に開示されたレンズ駆動装置は、レンズを保持し光軸方向(Z方向)へ移動可能な第1保持体と、第1保持体をZ方向へ移動可能に保持する第2保持体と、第2保持体をZ方向に略直交する方向へ移動可能に保持する固定体と、Z方向へ第1保持体を駆動するための第1駆動機構と、X方向へ第2保持体を駆動するための第2駆動機構と、Y方向へ第2保持体を駆動するための第3駆動機構とを備えている。第1保持体は、弾性材料で形成される第1支持部材によってZ方向へ移動可能に第2保持体に支持されている。第2保持体は、弾性材料で形成される第2支持部材によってZ方向に略直交する方向へ移動可能に固定体に支持されている。第1駆動機構は、第1駆動用コイルと第1駆動用磁石とを備え、第2駆動機構は、第2駆動用コイルと第2駆動用磁石とを備え、第3駆動機構は、第3駆動用コイルと第3駆動用磁石とを備える。
【0028】
この特許文献14に開示されたレンズ駆動装置では、駆動機構として第1乃至第3駆動機構の3種類の駆動機構が必要となり、第1乃至第3駆動機構の各々がそれぞれ別々のコイルと磁石とから構成されているので、部品点数が増加するという問題がある。
【0029】
特開2011−113009号公報(特許文献15)は、その基本的な構成が上記特許文献14に開示されたレンズ駆動装置と同様であって、第2支持部材として複数本のワイヤを使用し、ワイヤの座屈を防止するための座屈防止部材を備えたレンズ駆動装置を開示している。ワイヤは、直線状に形成され、第2保持体は、ワイヤによってZ方向に略直交する方向へ移動可能に支持されている。座屈防止部材は、弾性部材で形成され、ワイヤの座屈荷重よりも小さな力でZ方向に弾性変形する。より具体的には、座屈防止部材は、第1支持部材の板バネに形成されたワイヤ固定部から構成されている。第2の保持体等の可動部分に下方向の力がかかったときに、ワイヤ固定部が下方向に弾性変形するようになっている。
【0030】
この特許文献15に開示されたレンズ駆動装置でも、上記特許文献14に開示されたレンズ駆動装置と同様に、部品点数が増加するという問題がある。また、特許文献15に開示されたレンズ駆動装置は、ワイヤに圧縮する方向の力がかかって、ワイヤが座屈するのを防止しているに過ぎない。換言すれば、特許文献15に開示されたレンズ駆動装置では、ワイヤに伸張する方向の力がかかって、ワイヤが破断する虞がある場合については何ら考慮していない。
【0031】
そこで、本発明者ら(本出願人)は、オートフォーカス(AF)用レンズ駆動装置用の永久磁石を、手振れ補正装置用の永久磁石としても兼用することにより、小型で、且つ低背化を図ることができる、手振れ補正装置を提案している(特開2011−65140号公報(特許文献16)参照)。
【0032】
特許文献16に開示された手振れ補正装置は、AF用レンズ駆動装置に収容されたレンズバレルそのものを移動させることにより手振れを補正しているので、「バレルシフト方式」の手振れ補正装置と呼ばれる。また、この「バレルシフト方式」の手振れ補正装置は、永久磁石が移動(可動)する「ムービングマグネット方式」と、コイルが移動(可動)する「ムービングコイル方式」とに分けられる。
【0033】
特許文献16は、その第2の実施の形態において、「ムービングマグネット方式」の手振れ補正装置として、光軸方向に上下に離間して配置された、4片の第1の永久磁石片と4片の第2の永久磁石片とから成る永久磁石を備え、上側の4片の第1の永久磁石片と下側の4片の第2の永久磁石片との間に、手振れ補正用コイルを配置したものを開示している。すなわち、この第2の実施の形態は、合計8片の永久磁石片から成る永久磁石を含む、「ムービングマグネット方式」の手振れ補正装置である。
【0034】
特許文献16に開示された手振れ補正装置において、オートフォーカス用レンズ駆動装置の底面部でベースが離間して配置されており、このベースの外周部で、複数本のサスペンションワイヤの一端が固定されている。複数本のサスペンションワイヤの他端は、オートフォーカス用レンズ駆動装置に堅く固定されている。
【0035】
また、特開2011−85666号公報(特許文献17)も、AF制御用マグネットとブレ補正制御用マグネットを兼用したレンズ駆動装置を開示している。特許文献17に開示されたレンズ駆動装置は、レンズの外周に配置された第1コイル(AF用コイル)を備えるレンズホルダと、第1コイルに対向する第1面を持つマグネットを固定するマグネット保持部材と、レンズホルダとマグネット保持部材とを連結するように、しかもレンズホルダをマグネットに対して光軸方向へ移動可能に支持するスプリングと、マグネットの第1面に垂直な第2面に対向して第2コイル(ブレ補正用コイル)が固定されるベース部材とを有する。レンズホルダと、マグネットと、マグネット保持部材と、スプリングとを有するレンズ保持ユニットを、ベース部材に対し光軸と垂直な方向に相対移動可能に保持してある。
【0036】
特許文献17に開示されたレンズ駆動装置では、第6実施形態として、巻き回されている1つのブレ補正用コイルの隙間に位置検出センサを配置したものを開示している。位置検出センサとしては、ホール素子が使用される。また、固定部の4隅に設けたサスペンションワイヤでレンズ保持ユニットを保持している。すなわち、サスペンションワイヤの一端は固定部の4隅に固定され、サスペンションワイヤの他端はレンズ保持ユニットに堅く固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開平11−64905号公報
【特許文献2】特開2004−274242号公報
【特許文献3】特開2009−145771号公報
【特許文献4】特開2006−65352号公報
【特許文献5】特開2008−26634号公報
【特許文献6】特開2006−215095号公報
【特許文献7】特開2008−15159号公報
【特許文献8】特開2007−212876号公報
【特許文献9】特開2007−17957号公報
【特許文献10】特開2007−17874号公報
【特許文献11】特開2007−41455号公報
【特許文献12】特開2007−93953号公報
【特許文献13】特開2009−288770号公報(図1〜図5)
【特許文献14】特開2011−107470号公報
【特許文献15】特開2011−113009号公報(段落0085〜0088、図11)
【特許文献16】特開2011−65140号公報(段落0091〜0149、図5〜図11)
【特許文献17】特開2011−85666号公報(段落0027、段落0050〜0056、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
特許文献16に開示された手振れ補正装置では、永久磁石が8片の永久磁石片から成るので、部品点数が多くなるという問題がある。また、手振れ補正用コイルが、上側の4片の第1の永久磁石片と下側の4片の第2の永久磁石片との間に配置されるので、組み立てに手間がかかるという問題もある。
【0039】
特許文献17に開示されたレンズ駆動装置では、位置検出センサをブレ補正用コイル(第2コイル)の隙間に配置している。そして、上述したように、位置検出センサとしてはホール素子が使用される。ホール素子をブレ補正用コイル(第2コイル)の隙間(すなわち、ループ部の中)に配置した場合、ホール素子がブレ補正用コイル(第2コイル)に流した電流によって発生する磁界に起因した悪影響を受けるという問題がある。すなわち、後で図5乃至図10を参照して詳細に説明するように、レンズ駆動装置(アクチュエータ)の一次共振以上において、マグネット(永久磁石)の動きが第2コイル(ブレ補正用コイル)に流れる電流の位相と180度ずれるため、逆位相となる。その結果、ホール素子の出力に共振が発生してしまうという問題がある。
【0040】
したがって、本発明の解決課題は、位置検出センサであるホール素子が、コイルに流した電流により発生する磁界に起因した悪影響を受けるのを回避することができる、レンズ駆動装置を提供することにある。
【0041】
本発明の他の目的は、説明が進むにつれて明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明によれば、レンズバレル(12)を光軸(O)に沿って移動させるオートフォーカス用レンズ駆動部(20;20A)と、このオートフォーカス用レンズ駆動部を、光軸(O)に直交し、かつ互いに直交する第1の方向(X)及び第2の方向(Y)に移動させることにより、手振れを補正するようにした手振れ補正部とを有するレンズ駆動装置(10;10A)であって、
オートフォーカス用レンズ駆動部(20:20A)は、
レンズバレル(12)を保持するための筒状部(240)を有するレンズホルダ(24)と、
このレンズホルダ(24)に、筒状部(240)の周囲に位置するように固定されたフォーカスコイル(26)と、
各々が、フォーカスコイル(26)と対向する第1の面を持ち、光軸(O)に対してフォーカスコイル(26)の半径方向外側に、第1の方向(X)及び第2の方向(Y)に対向して配置された複数の永久磁石片(282f、282b、282l、282r)から成る、永久磁石(28)と、
レンズホルダ(24)の外周に配置されて、永久磁石(28)を保持するマグネットホルダ(30)と、
マグネットホルダ(30)の光軸(O)方向の第1及び第2の端(30a,30b)にそれぞれ取り付けられ、レンズホルダ(24)を径方向に位置決めした状態で光軸(O)方向に変位可能に支持する、第1及び第2の板バネ(32,34)と、
を備え、
手振れ補正部は、
第2の板バネ(34)に近接した位置で、オートフォーカス用レンズ駆動部(20;20A)から光軸(O)方向に離間して配置されたベース(14)と、
このベース(24)に対してオートフォーカス用レンズ駆動部(20;20A)を第1の方向(X)及び第2の方向(Y)に揺動可能に支持する支持部材(16)と、
複数の永久磁石片(282f、282b、282l、282r)の第1の面に垂直な第2の面にそれぞれ対向して、ベース(14)上に配置された複数の手振れ補正用コイル部(18f、18b、18l、18r)から成る手振れ補正コイル(18)であって、複数の手振れ補正用コイル部のうち、第1の方向(X)及び第2の方向(Y)に配置された特定の手振れ補正用コイル部(18f,18l)の各々は、対向する永久磁石片(282f,282l)の長手方向で分離するように、複数のコイル部分(18fl,18fr;18lf,18lb)に分割されている、手振れ補正用コイル(18)と、
分割された複数のコイル部分を持つ特定の手振れ補正用コイル部(18f,18l)の、複数のコイル部分(18fl,18fr;18lf,18lb)の分離した場所で、ベース(14)上に配置された複数のホール素子(50f,50l)と、
を有するレンズ駆動装置(10;10A)が得られる。
【0043】
上記本発明によるレンズ駆動装置(10;10A)において、上記永久磁石(28)は4片の永久磁石片(282f、282b、282l、282r)から成り、上記手振れ補正用コイル(18)は4つの手振れ補正用コイル部(18f、18b、18l、18r)から成り、上記複数のホール素子は2つのホール素子(50f,50l)から成ってよい。この場合、4つの手振れ補正用コイル部のうち、第1の方向(X)及び第2の方向(Y)に配置された特定の2つの手振れ補正用コイル部(18f,18l)の各々は、対向する永久磁石片(282f,282l)の長手方向の中央で分離するように、2つのコイル部分(18fl,18ft;18lf,18lb)に分割され、2つのホール素子(50f、50l)は、分割された2つのコイル部分を持つ特定の2つの手振れ補正用コイル部(18f、18l)の、2つのコイル部分(18fl,18ft;18lf,18lb)の分離した場所で、ベース(14)上に配置される。また、上記支持部材は、例えば、ベース(24)の外周部で一端が固定された複数本のサスペンションワイヤ(16)から成ってよい。この場合、複数本のサスペンションワイヤ(16)は、光軸(O)に沿って延在し、オートフォーカス用レンズ駆動装置(20;20A)を、第1の方向(X)及び第2の方向(Y)に揺動可能に支持する。複数本のサスペンションワイヤ(16)の他端は、第1の板バネ(32)に固定されてよい。
【0044】
また、上記本発明によるレンズ駆動装置(10)において、上記レンズホルダ(24)は、筒状部(240)の外壁から突設した突起部(241,242)を有し、突起部にフォーカスコイル(26)を構成した線材の末端部(261,262)が絡げられており、上記第1の板バネ(32)は、線材の末端部を絡げた突起部近傍に配置するように突設した端子部(322−1,322−2)を有し、端子部と突起部に絡げられた線材の末端部とが電気的に接続されて、サスペンションワイヤ(16)から第1の板バネ(32)を介してフォーカスコイル(26)に給電することが好ましい。
【0045】
尚、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例に過ぎず、これらに限定されないのは勿論である。
【発明の効果】
【0046】
本発明では、ホール素子を手振れ補正用コイル部の複数のコイル部分の分離した場所に配置したので、ホール素子が、手振れ補正用コイルに流した電流により発生する磁界に起因した悪影響を受けるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示したレンズ駆動装置の部分縦断面図である。
【図3】図1に示したレンズ駆動装置を示す分解斜視図である。
【図4】図1に示したレンズ駆動装置に使用される、コイル基板とそれに形成される手振れ補正用コイルを示す斜視図である。
【図5】関連の磁気回路とホール素子との間の関係を示す斜視図である。
【図6】関連の磁気回路とホール素子との間の関係を示す縦断面図である。
【図7】AFユニットを前後方向Xに変位した場合の、関連の磁気回路とホール素子との間の関係を示す縦断面図である。
【図8】関連の磁気回路における、前側ホール素子の周波数特性を示す図である。
【図9】図8の領域I、領域II、および領域IIIにおける、前側永久磁石片により発生する磁界Bの磁束密度a、前側手振れ補正用コイルに流される第1のIS電流IIS1により発生する磁界BI1の磁束密度b、および前側ホール素子で検出されるトータルでの磁束密度(a+b)の大きさと位相関係を示す図である。
【図10】図9の関係を表にした図である。
【図11】図1に示したレンズ駆動装置に使用される磁気回路とホール素子との間の関係を示す斜視図である。
【図12】図11に示した磁気回路とホール素子との間の関係を示す縦断面図である。
【図13】AFユニットを前後方向Xに変位した場合の、図11に示した磁気回路とホール素子との間の関係を示す縦断面図である。
【図14】図13の線XIV―XIVでの断面図である。
【図15】図11に示した磁気回路における、前側ホール素子の周波数特性を示す図である。
【図16】図15の領域I、領域II、および領域IIIにおける、前側永久磁石片により発生する磁界Bの磁束密度a、前側手振れ補正用コイル部に流される第1のIS電流IIS1により発生する磁界BI1の磁束密度b、および前側ホール素子で検出されるトータルでの磁束密度(a+b)の大きさと位相関係を示す図である。
【図17】図16の関係を表にした図である。
【図18】図11に示した磁気回路における、永久磁石の1片の永久磁石片と、その周囲に配置されるフォーカスコイルおよび手振れ補正用コイル部との配置関係を示した断面図である。
【図19】図1に示したレンズ駆動装置に使用される、サスペンションワイヤの他端を上側板バネに固定する部分を拡大して示す部分斜視図である。
【図20】図19に示した固定する部分の部分断面図である。
【図21】図1に示したレンズ駆動装置に使用される、コイル基板とフレキシブルプリント基板(FPC)とを組み合せたものを、裏面側から見た斜視図である。
【図22】図1に示したレンズ駆動装置において、シールドカバーを省いた状態を示す平面図である。
【図23】図22において、フォーカスコイルを構成する線材の末端部の絡げ部分を拡大して示す部分拡大斜視図である。
【図24】本発明の第2の実施の形態に係るレンズ駆動装置の縦断面図である。
【図25】図24に示したレンズ駆動装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0049】
図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置10について説明する。図1はレンズ駆動装置10の外観斜視図である。図2はレンズ駆動装置10の部分縦断面図である。図3はレンズ駆動装置10を示す分解斜視図である。
【0050】
ここでは、図1乃至図3に示されるように、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。図1乃至図3に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸方向は前後方向(奥行方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向)である。そして、図1乃至図3に示す例においては、上下方向Zがレンズの光軸O方向である。尚、本第2の実施の形態において、X軸方向(前後方向)は第1の方向とも呼ばれ、Y軸方向(左右方向)は第2の方向とも呼ばれる。
【0051】
但し、実際の使用状況においては、光軸O方向、すなわち、Z軸方向が前後方向となる。換言すれば、Z軸の上方向が前方向となり、Z軸の下方向が後方向となる。
【0052】
図示のレンズ駆動装置10は、後述するオートフォーカス用レンズ駆動部20と、携帯電話用の小型カメラで静止画像の撮影時にこのオートフォーカス用レンズ駆動部20に生じた手振れ(振動)を補正する手振れ補正部(後述する)とを含み、像ブレのない画像を撮影できるようにした装置である。レンズ駆動装置10の手振れ補正部は、オートフォーカス用レンズ駆動部20を、光軸Oに直交し、かつ互いに直交する第1の方向(前後方向)X及び第2の方向(左右方向)に移動させることにより、手振れを補正する。
【0053】
オートフォーカス用レンズ駆動部20は、レンズバレル(図示せず)を光軸Oに沿って移動させるためのものである。オートフォーカス用レンズ駆動部20の底部から半径方向外側へ離間して、ベース14が配置されている。このベース14の下部(後部)には、図示はしないが、撮像基板上に配置された撮像素子が搭載される。この撮像素子は、レンズバレルにより結像された被写体像を撮像して電気信号に変換する。撮像素子は、例えば、CCD(charge coupled device)型イメージセンサ、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサ等により構成される。したがって、オートフォーカス用レンズ駆動装置20と、撮像基板と、撮像素子との組み合わせによって、カメラモジュールが構成される。
【0054】
ベース14は、外形が四角形で内部に円形開口14aをもつリング形状をしている。
【0055】
レンズ駆動装置10の手振れ補正部は、ベース14の四隅部で一端が固定された4本のサスペンションワイヤ16と、後述するオートフォーカス用レンズ駆動部20の永久磁石28と後述するように対向して配置された手振れ補正用コイル18とを有する。
【0056】
4本のサスペンションワイヤ16は、光軸Oに沿って延在し、オートフォーカス用レンズ駆動部20全体を、第1の方向(前後方向)X及び第2の方向(左右方向)Yに揺動可能に支持する。4本のサスペンションワイヤ16の他端は、上記オートフォーカス用レンズ駆動部20の上端部に後述するように固定される。
【0057】
このように、4本のサスペンションワイヤ16は、ベース14に対してオートフォーカス用レンズ駆動部20を、第1の方向X及び第2の方向Yに揺動可能に支持する支持部材として働く。
【0058】
レンズ駆動装置10の手振れ補正部は、後述するように、永久磁石28と対向して離間して配置された1枚の四角リング形状のコイル基板40を備える。このコイル基板40は、後述するフレキシブルプリント基板(FPC)44を間に挟んで、ベース14上に取り付けられる。このコイル基板40に上記手振れ補正用コイル18が形成されている。
【0059】
次に、図3を参照して、オートフォーカス用レンズ駆動部20について説明する。尚、オートフォーカス用レンズ駆動部20は、AFユニットとも呼ばれる。
【0060】
オートフォーカス用レンズ駆動部20は、レンズバレルを保持するための筒状部240を有するレンズホルダ24と、このレンズホルダ24に筒状部240の周囲に位置するように固定されたフォーカスコイル26と、フォーカスコイル26と対向してフォーカスコイル26の外側に配置された永久磁石28を保持するマグネットホルダ30と、マグネットホルダ30の光軸O方向の第1及び第2の端30a、30bにそれぞれ取り付けられた、第1及び第2の板バネ32、34とを備える。
【0061】
第1及び第2の板バネ32、34は、レンズホルダ24を径方向に位置決めした状態で光軸O方向に変位可能に支持する。図示の例では、第1の板バネ32は上側板バネと呼ばれ、第2の板バネ34は下側板バネと呼ばれる。
【0062】
また、前述したように、実際の使用状況においては、Z軸方向(光軸O方向)の上方向が前方向、Z軸方向(光軸O方向)の下方向が後方向となる。したがって、上側板バネ32は前側スプリングとも呼ばれ、下側板バネ34は後側スプリングとも呼ばれる。
【0063】
マグネットホルダ30は略八角筒状をしている。すなわち、マグネットホルダ30は、八角筒形状の外筒部302と、この外筒部302の上端(前端、第1の端)30aに設けられた四角形の上側リング状端部304と、外筒部302の下端(後端、第2の端)30bに設けられた八角形の下側リング状端部306を有する。上側リング状端部304は、四隅で、各隅で2つずつ、上方へ突出する8つの上側突起304aを持つ。下側リング状端部306は、四隅で下方へ突出する4つの下側突起306aを持つ。
【0064】
フォーカスコイル26は、八角筒状のマグネットホルダ30の形状に合わせた、八角筒状をしている。永久磁石28は、マグネットホルダ30の八角筒形状の外筒部302に、第1の方向(前後方向)Xおよび第2の方向(左右方向)Yで互いに離間して配置された、4片の矩形状の永久磁石片282から成る。これら4片の永久磁石片282は、フォーカスコイル26と間隔を置いて配置される。図示の実施の形態では、各永久磁石片282は、内周端側がN極に着磁され、外周端側がS極に着磁されている。
【0065】
上側板バネ(前側スプリング)32はレンズホルダ24における光軸O方向上側(前側)に配置され、下側板バネ(後側スプリング)34はレンズホルダ24における光軸O方向下側(後側)に配置される。
【0066】
上側板バネ(前側スプリング)32は、レンズホルダ24の上端部に後述のように取り付けられる上側内周側端部322と、マグネットホルダ30の上側リング状端部304に後述のように取り付けられる上側外周側端部324とを有する。上側内周側端部322と上側外周側端部324との間には、複数本の上側腕部326が設けられている。すなわち、複数本の腕部326は、上側内周側端部322と上側外周側端部324とを繋いでいる。
【0067】
レンズホルダ24の筒状部240は、その上端に、四隅で上方へ突出する4つの上側突起240aを持つ。上側内周側端部322は、これら4つの上側突起240aがそれぞれ圧入(装入)される4つの上側穴322aを持つ。すなわち、レンズホルダ24の筒状部240の4つの上側突起240aは、それぞれ、上側板バネ32の上側内周側端部322の4つの上側穴322aに圧入(装入)される。
【0068】
一方、上側外周側端部324は、マグネットホルダ30の8つの上側突起304aがそれぞれ装入される8つの上側穴324aを持つ。すなわち、マグネットホルダ30の8つの上側突起304aは、それぞれ、上側外周側端部324の8つの上側穴324aに装入される。
【0069】
上側板バネ(前側スプリング)32は、上側外周側端部324の四隅で半径方向外側へ延出する4つの弧状の延出部328を更に有する。これら4つの弧状の延出部328は、それぞれ、上記4本のサスペンションワイヤ16の他端が挿入(嵌入)される4つのワイヤ固定用穴328aを持つ。尚、各弧状の延出部328の詳しい構造については、後で図19を参照して、更に詳細に説明する。
【0070】
下側板バネ(後側スプリング)34は、レンズホルダ24の下端部に後述のように取り付けられる下側内周側端部342と、マグネットホルダ30の下側リング状端部306に後述するように取り付けられる下側外周側端部344とを有する。下側内周側端部342と下側外周側端部344との間には、複数本の下側腕部346が設けられている。すなわち、複数本の下側腕部346は、下側内周側端部342と下側外周側端部344とを繋いでいる。
【0071】
下側板バネ34の下部には、実質的に同一の外形を持つスペーサ36が配置される。詳述すると、スペーサ36は、下側板バネ34の下側外周側端部344と実質的に同一の形状を持つ外リング部364と、下側板バネ34の下側内周側端部342および下側腕部346とを覆うような形状を持つ内リング部362とを有する。
【0072】
レンズホルダ24の筒状部240は、その下端に、四隅で下方へ突出する4つの下側突起(図示せず)を持つ。下側内周側端部342は、これら4つの下側突起がそれぞれ圧入(装入)される4つの下側穴342aを持つ。すなわち、レンズホルダ24の筒状部240の4つの下側突起は、それぞれ、下側板バネ34の下側内周側端部342の4つの下側穴342aに圧入(装入)される。
【0073】
一方、下側板バネ34の下側外周側端部344は、マグネットホルダ30の4つの下側突起306aがそれぞれ装入される4つの下側穴344aを持つ。スペーサ36の外リング部364も、それら4つの下側穴344aと対応する位置に、マグネットホルダ30の4つの下側突起306aがそれぞれ圧力される4つの下側穴364aを持つ。すなわち、マグネットホルダ30の4つの下側突起306aは、それぞれ、下側板バネ34の下側外周側端部344の4つの下側穴344aを介して、スペーサ36の外リング部364の4つの下側穴364aに圧入される。
【0074】
上側板バネ32と下側板バネ34とから成る弾性部材は、レンズホルダ24を光軸O方向にのみ移動可能に案内する案内手段として働く。上側板バネ32および下側板バネ34の各々は、ベリリウム銅、リン青銅等から成る。
【0075】
レンズホルダ24の筒状部240の内周壁には雌ネジ(図示せず)が切られている。一方、レンズバレルの外周壁には、上記雌ネジに螺合される雄ネジが切られている。従って、レンズバレルをレンズホルダ24に装着するには、レンズバレルをレンズホルダ24の筒状部240に対して光軸O周りに回転して光軸O方向に沿って螺合することにより、レンズバレルをレンズホルダ24内に収容し、接着剤などによって互いに接合する。
【0076】
後述するように、フォーカスコイル26にオートフォーカス(AF)電流を流すことで、永久磁石28の磁界とフォーカスコイル26に流れるAF電流による磁界との相互作用によって、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向に位置調整することが可能である。
【0077】
上述したように、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20は、
レンズホルダ24、フォーカスコイル26、永久磁石28、マグネットホルダ30、上側板バネ32、下側板バネ34、およびスペーサ36から構成される。
【0078】
次に、図3を参照して、レンズ駆動装置10の手振れ補正部について更に詳細に説明する。
【0079】
レンズ駆動装置10の手振れ補正部は、前述したように、ベース14の四隅部で一端が固定された4本のサスペンションワイヤ16と、上記オートフォーカスレンズ用駆動部20の永久磁石28と対向して配置された手振れ補正用コイル18とを有する。
【0080】
4本のサスペンションワイヤ16は、光軸Oに沿って延在し、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を、第1の方向(前後方向)X及び第2の方向(左右方向)Yに揺動可能に支持する。4本のサスペンションワイヤ16の他端は、上記オートフォーカス用レンズ駆動部20の上端部に固定されている。
【0081】
詳述すると、前述したように、上側板バネ32の4つの弧状の延出部328は、それぞれ、4本のサスペンションワイヤ16の他端が挿入(嵌入)される4つのワイヤ固定用穴328aを持つ(図3参照)。これら4つのワイヤ固定用穴328aに、4本のサスペンションワイヤ16の他端を挿入(嵌入)し、接着剤やはんだ等で固定する。
【0082】
尚、図示の例では、各弧上の延出部328はL字状をしているが、これに限定されないのは勿論である。
【0083】
4本のサスペンションワイヤ16のうちの2本は、フォーカスコイル26に給電するためにも使用される。
【0084】
上述したように、永久磁石28は、第1の方向(前後方向)X及び第2の方向(左右方向)Yで互いに対向して配置された、4片の永久磁石片282から成る。
【0085】
レンズ駆動装置10の手振れ補正部は、4片の永久磁石片282とベース14との間に挿入されて、離間して配置された1枚のリング状コイル基板40を備える。コイル基板40は、その四隅に、4本のサスペンションワイヤ16を挿通するための貫通穴40aを持つ。この1枚のコイル基板40に上記手振れ補正用コイル18が形成されている。
【0086】
ここでは、4片の永久磁石片282において、光軸Oに対して、それぞれ、前側、後側、左側、及び右側に配置された永久磁石片を、それぞれ、前側永久磁石片282f、後側永久磁石片282b、左側永久磁石片282l、および右側永久磁石片282rと呼ぶことにする。
【0087】
図4をも参照して、コイル基板40には、手振れ補正用コイル18として、4つの手振れ補正用コイル部18f、18b、18lおよび18rが形成されている。
【0088】
第1の方向(前後方向)Xで互いに対向して配置された2つの手振れ補正用コイル部18fおよび18bは、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20を第1の方向(前後方向)Xに移動(揺動)させるためのものである。このような2つの手振れ補正用コイル部18fおよび18bは、第1方向アクチュエータと呼ばれる。尚、ここでは、光軸Oに関して前側にある手振れ補正用コイル部18fを「前側手振れ補正用コイル部」と呼び、光軸Oに関して後側にある手振れ補正用コイル部18bを「後側手振れ補正用コイル部」と呼ぶことにする。
【0089】
一方、第2の方向(左右方向)Yで互いに対向して配置された2つの手振れ補正用コイル部18lおよび18rは、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20を第2の方向(左右方向)Yに移動(揺動)させるためのものである。このような2つの手振れ補正用コイル部18lおよび18rは、第2方向アクチュエータと呼ばれる。尚、ここでは、光軸Oに関して左側にある手振れ補正用コイル部18lを「左側手振れ補正用コイル部」と呼び、光軸Oに関して右側にある手振れ補正用コイル部18rを「右側手振れ補正用コイル部」と呼ぶことにする。
【0090】
図4に示されるように、図示の手振れ補正用コイル18において、前側手振れ補正用コイル部18fおよび左側手振れ補正用コイル部18lは、それぞれ、対向する前側永久磁石片282fおよび左側永久磁石片282lの長手方向の中央で分離するように、2つのコイル部分に分割されている。すなわち、前側手振れ補正用コイル部18fは、左寄りコイル部分18flと右寄りコイル部分18frとから構成されている。同様に、左側手振れ補正用コイル部18lは、前寄りコイル部分18lfと後寄りコイル部分18lbとから構成されている。
【0091】
換言すれば、前側手振れ補正用コイル部18fおよび左側手振れ補正用コイル部18lの各々は、2つのループ部分から構成されているのに対して、後側手振れ補正用コイル部18bおよび右側手振れ補正用コイル部18rの各々は、1つのループ部分から構成されている。
【0092】
このように、4つの手振れ補正用コイル部18f、18b、18lおよび18rのうち、第1の方向X及び第2の方向に配置された特定の2つの手振れ補正コイル部18fおよび18lの各々は、対向する永久磁石片282fおよび282lの長手方向の中央で分離するように、2つのコイル部分18fl、18frおよび18lf、18lbに分割されている。
【0093】
このように構成された4つの手振れ補正用コイル部18f、18b、18l、および18rは、永久磁石28と協働して、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体をX軸方向(第1の方向)およびY軸方向(第2の方向)に駆動するためのものである。また、手振れ補正用コイル部18f、18b、18l、および18rと永久磁石28との組合せは、ボイスコイルモータ(VCM)として働く。
【0094】
このように、図示のレンズ駆動装置10の手振れ補正部は、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20に収容されたレンズバレルそのものを、第1の方向(前後方向)X及び第2の方向(左右方向)Yに移動させることにより、手振れを補正する。したがって、レンズ駆動装置10の手振れ補正部は、「バレルシフト方式」の手振れ補正部と呼ばれる。
【0095】
レンズ駆動装置10は、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20を覆うシールドカバー42を更に備える。シールドカバー42は、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の外周側面を覆う四角筒部422と、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の上面を覆う上側端部424とを有する。上側端部424は光軸Oと同心の円形開口424aを持つ。
【0096】
図示のレンズ駆動装置10の手振れ補正部は、ベース14に対するオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出するための位置検出手段50を更に備えている。図示の位置検出手段50は、ベース14上に取り付けられた2つのホール素子50f、50lから成る磁気式位置検出手段から構成されている。これら2つのホール素子50f、50lは、後述するように、4片の永久磁石片282の中の2片とそれぞれ離間して対向配置されている。図2に示されるように、各ホール素子50f、50lは、永久磁石片282におけるN極からS極への方向を横切るように配置されている。
【0097】
図示の例において、一方のホール素子50fは、光軸Oに対して第1の方向(前後方向)Xの前側に配置されているので、前側ホール素子と呼ばれる。他方のホール素子50lは、光軸Oに対して第2の方向(左右方向)Yの左側に配置されているので、左側ホール素子と呼ばれる。
【0098】
前側ホール素子50fは、分割された2つのコイル部分18fl、18frを持つ前側手振れ補正用コイル部18fの、2つのコイル部分18fl、18frの分離した場所で、ベース14上に配置されている。同様に、左側ホール素子50lは、分割された2つのコイル部分18lf、18lbを持つ左側手振れ補正用コイル部18lの、2つのコイル部分18lf、18lbの分離した場所で、ベース14上に配置されている。
【0099】
このように、2つのホール素子50fおよび50lは、分割された2つのコイル部分18fl、18frおよび18lf、18lbを持つ特定の2つの手振れ補正用コイル部18fおよび18lの、2つのコイル部分18fl、18frおよび18lf、18lbの分離した場所で、ベース14上に配置されている。
【0100】
前側ホール素子50fは、それと対向する前側永久磁石片282fの磁力を検出することにより、第1の方向(前後方向)Xの移動(揺動)に伴う第1の位置を検出する。左側ホール素子50lは、それと対向する左側永久磁石片282lの磁力を検出することにより、第2の方向(左右方向)Yの移動(揺動)に伴う第2の位置を検出する。
【0101】
図5乃至図7を参照して、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置10の理解を容易にするために、関連のレンズ駆動装置に使用される関連の磁気回路とホール素子との間の関係について説明する。図示の関連の磁気回路とホール素子との間の関係は、前述した特許文献17に開示されたものとの同様の構成(関係)を有する。図5は関連の磁気回路とホール素子との間の関係を示す斜視図であり、図6は関連の磁気回路とホール素子との間の関係を示す縦断面図であり、図7はAFユニット20を前後方向Xに変位した場合の、関連の磁気回路とホール素子との間の関係を示す縦断面図である。
【0102】
関連の磁気回路と、本実施の形態に係るレンズ駆動装置10に使用される磁気回路との間の相違点は、関連の磁気回路では、手振れ補正用コイル18’を構成する4つの手振れ補正用コイル部18f’、18b’、18l’および18r’に、2つのループ部分に分割したものがないことである。すなわち、従来の磁気回路では、4つの手振れ補正用コイル部18f’、18b’、18l’および18r’の各々が、1つのループ部分のみから構成されていることである。
【0103】
前述したように、4片の永久磁石片282f、282b、282l、および282rは内側をN極に、外側をS極に着磁してある。図5に示す矢印Bは、これら永久磁石片によって発生される磁束の方向を示している。
【0104】
次に、図5を参照して、関連の磁気回路を使用して、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向に位置調整する場合の動作について説明する。
【0105】
例えば、フォーカスコイル26に、反時計回りにAF電流を流すとする。この場合、フレミングの左手規則に従って、フォーカスコイル26には、上方向の電磁力が作用する。その結果、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向の上方へ移動させることができる。
【0106】
逆に、フォーカスコイル26に時計回りにAF電流を流すことにより、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向の下方へ移動させることができる。
【0107】
次に、図5乃至図7を参照して、従来の磁気回路を使用して、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を、第1の方向(前後方向)Xまたは第2の方向(左右方向)Yに移動させる場合の動作について説明する。
【0108】
最初に、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を、第1の方向(前後方向)Xの後側に移動させる場合の動作について説明する。この場合、図5に示されるように、前側手振れ補正用コイル部18f’には、矢印IIS1で示されるような、反時計回りに第1の手振れ補正(IS)電流を流し、後側手振れ補正用コイル部18b’には、矢印IIS2で示されるような、時計回りに第2の手振れ補正(IS)電流を流す。
【0109】
この場合、フレミングの左手規則に従って、前側手振れ補正用コイル部18f’には前方向の電磁力が作用し、後側手振れ補正用コイル部18b’にも前方向の電磁力が作用する。しかしながら、これら手振れ補正用コイル部18f’および18b’は、ベース14に固定されているので、その反作用として、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体には、図6の矢印FIS1およびFIS2で示されるような、後方向の電磁力が作用する。その結果、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を後方向へ移動させることができる。
【0110】
逆に、前側手振れ補正用コイル部18f’に時計回りに第1のIS電流を流し、後側手振れ補正用コイル部18b’に反時計回りに第2のIS電流を流すことにより、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を前方向へ移動させることができる。
【0111】
一方、左側手振れ補正用コイル部18l’に反時計回りに第3のIS電流を流し、右側手振れ補正用コイル部18r’に時計回りに第4のIS電流を流すことにより、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を右方向へ移動させることができる。
【0112】
また、左側手振れ補正用コイル部18l’に時計回りに第3のIS電流を流し、右側手振れ補正用コイル部18r’に反時計回りに第4のIS電流を流すことにより、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を左方向へ移動させることができる。
【0113】
このようにして、カメラの手振れを補正することができる。
【0114】
次に、図5乃至図7に加えて、図8乃至図10をも参照して、従来の磁気回路を使用した従来のレンズ駆動装置における問題点について、詳細に説明する。
【0115】
前述したように、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を後方向へ移動させるために、図5に示されるように、前側手振れ補正用コイル部18f’に、矢印IIS1で示されるような、反時計回りに第1のIS電流を流し、後側手振れ補正用コイル部18b’に、矢印IIS2で示されるような、時計回りに第2のIS)電流を流した場合を例に挙げて説明する。
【0116】
この場合、図7に示されるように、前側手振れ補正用コイル部18f’に流される第1のIS電流IIS1により発生する磁界BI1と、移動した前側永久磁石片282fにより発生する磁界Bとが同位相になっていることが分かる。磁界Bの磁束密度をaで表わし、磁界BI1の磁束密度をbで表わすとする。したがって、前側ホール素子50fは、磁界Bの磁束密度aと磁界BI1の磁束密度bとの、トータルの磁束密度(a+b)を検出することになる。
【0117】
ここで、前側ホール素子50fによってオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出するためには、磁界Bの磁束密度aとトータルでの磁束密度(a+b)とが同位相になっていることが必要であることに注意されたい。
【0118】
図8は、関連の磁気回路における、前側ホール素子50fの周波数特性を示す図である。図8において、横軸は周波数(Frequency)(Hz)を表わし、左側縦軸はゲイン(Gain)(dB)を表わし、右側縦軸は位相(Phase)(deg)を表わす。また、図8において、実線はゲイン特性を示し、一点鎖線は位相特性を示す。
【0119】
図8にから分かるように、前側ホール素子50fの周波数特性は、領域Iと、領域IIと、領域IIIとに分けられる。領域Iは、アクチュエータの一次共振以下の帯域で、周波数が低い領域である。領域IIは、アクチュエータの一次共振以上の帯域で、周波数が中間の領域である。領域IIIは、アクチュエータの一次共振以上の帯域で、周波数が高い領域である。
【0120】
図9は、領域I、領域II、および領域IIIにおける、前側永久磁石片282fにより発生する磁界Bの磁束密度a、前側手振れ補正用コイル18f’に流される第1のIS電流IIS1により発生する磁界BI1の磁束密度b、および前側ホール素子50fで検出されるトータルでの磁束密度(a+b)の大きさと位相関係を示す図である。図10は、図9の関係を表にした図である。
【0121】
図9および図10から次のことが分かる。
【0122】
領域Iである一次共振以下の帯域では、磁界Bの磁束密度aの大きさ|a|は、磁界BI1の磁束密度bの大きさ|b|より大きく(|a|>|b|)、磁界Bの磁束密度a、磁界BI1の磁束密度b、およびトータルでの磁束密度(a+b)が同位相となっている。したがって、領域Iにおいては、前側ホール素子50fによってオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出することができる。
【0123】
一方、アクチュエータの一次共振以上では、前側永久磁石片282fの動きが、前側手振れ補正用コイル18f’に流される第1のIS電流IIS1の位相と180°ずれる為、逆位相となる。
【0124】
領域IIである一次共振以上の帯域では、磁界Bの磁束密度aの大きさ|a|は、磁界BI1の磁束密度bの大きさ|b|より大きい(|a|>|b|)ので、磁界Bの磁束密度aとトータルでの磁束密度(a+b)とが同位相となっている。したがって、領域IIにおいては、前側ホール素子50fによってオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出することができる。
【0125】
しかしながら、領域IIIである一次共振以上の帯域では、磁界Bの磁束密度aの大きさ|a|が、磁界BI1の磁束密度bの大きさ|b|よりも小さく(|a|<|b|)なってしまう。その為、磁界Bの磁束密度aとトータルでの磁束密度(a+b)とが逆位相となる。その結果、領域IIIにおいては、前側ホール素子50fによってオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出することができなくなる。すなわち、ホール素子の出力は共振点をもつ。
【0126】
したがって、コイルの1つのループ部分の間(中)にホール素子を配置すると、一次共振以上の領域IIIにおいて、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出することができないことが分かる。換言すれば、ホース素子50f、50lは、それぞれ、手振れ補正用コイル18f’、18l’に流した電流によって発生する磁界に起因する悪影響を受けることになる。
【0127】
次に、図11乃至図14を参照して、本発明の実施の形態に係るレンズ駆動装置10に使用される本実施の形態に係る磁気回路とホール素子との間の関係について説明する。図11は本実施の形態に係る磁気回路とホール素子との間の関係を示す斜視図であり、図12は本実施の形態に係る磁気回路とホール素子との間の関係を示す縦断面図であり、図13はAFユニット20を前後方向Xに変位した場合の、本実施の形態に係る磁気回路とホール素子との間の関係を示す縦断面図であり、図14は、図13の線XIV―XIVでの断面図である。
【0128】
前述したように、4片の永久磁石片282f、282b、282l、および282rは内側をN極に、外側をS極に着磁してある。図11に示す矢印Bは、これら永久磁石片によって発生される磁束の方向を示している。
【0129】
次に、図11を参照して、本実施の形態に係る磁気回路を使用して、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向に位置調整する場合の動作について説明する。
【0130】
例えば、フォーカスコイル26に、反時計回りにAF電流を流すとする。この場合、フレミングの左手規則に従って、フォーカスコイル26には、上方向の電磁力が作用する。その結果、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向の上方へ移動させることができる。
【0131】
逆に、フォーカスコイル26に時計回りにAF電流を流すことにより、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向の下方へ移動させることができる。
【0132】
次に、図11乃至図14を参照して、本実施の形態に係る磁気回路を使用して、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を、第1の方向(前後方向)Xまたは第2の方向(左右方向)Yに移動させる場合の動作について説明する。
【0133】
最初に、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を、第1の方向(前後方向)Xの後側に移動させる場合の動作について説明する。この場合、図11に示されるように、前側手振れ補正用コイル部18fの2つのコイル部分18fl、18frの各々には、矢印IIS1で示されるような、反時計回りに第1の手振れ補正(IS)電流を流し、後側手振れ補正用コイル部18bには、矢印IIS2で示されるような、時計回りに第2の手振れ補正(IS)電流を流す。
【0134】
この場合、フレミングの左手規則に従って、前側手振れ補正用コイル部18fには前方向の電磁力が作用し、後側手振れ補正用コイル部18bにも前方向の電磁力が作用する。しかしながら、これら手振れ補正用コイル部18fおよび18bは、ベース14に固定されているので、その反作用として、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体には、図12の矢印FIS1およびFIS2で示されるような、後方向の電磁力が作用する。その結果、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を後方向へ移動させることができる。
【0135】
逆に、前側手振れ補正用コイル部18fの2つのコイル部分18fl、18frの各々に時計回りに第1のIS電流を流し、後側手振れ補正用コイル部18bに反時計回りに第2のIS電流を流すことにより、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を前方向へ移動させることができる。
【0136】
一方、左側手振れ補正用コイル部18lの2つのコイル部分18lf、18lbの各々に反時計回りに第3のIS電流を流し、右側手振れ補正用コイル部18rに時計回りに第4のIS電流を流すことにより、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を右方向へ移動させることができる。
【0137】
また、左側手振れ補正用コイル部18lの2つのコイル部分18lf、18lbの各々に時計回りに第3のIS電流を流し、右側手振れ補正用コイル部18rに反時計回りに第4のIS電流を流すことにより、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を左方向へ移動させることができる。
【0138】
このようにして、カメラの手振れを補正することができる。
【0139】
次に、図11乃至図14に加えて、図15乃至図17をも参照して、本実施の形態に係る磁気回路を使用したレンズ駆動装置10における利点について、詳細に説明する。
【0140】
前述したように、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を後方向へ移動させるために、図11に示されるように、前側手振れ補正用コイル部18fの2つのコイル部分18fl、18frの各々に、矢印IIS1で示されるような、反時計回りに第1のIS電流を流し、後側手振れ補正用コイル部18bに、矢印IIS2で示されるような、時計回りに第2のIS電流を流した場合を例に挙げて説明する。
【0141】
この場合、図13および図14に示されるように、前側手振れ補正用コイル部18fに流される第1のIS電流IIS1により発生する磁界BI1と、移動した前側永久磁石片282fにより発生する磁界Bとが逆位相になっていることが分かる。磁界Bの磁束密度をaで表わし、磁界BI1の磁束密度をbで表わすとする。したがって、前側ホール素子50fは、磁界Bの磁束密度aと磁界BI1の磁束密度bとの、トータルの磁束密度(a+b)を検出することになる。
【0142】
前述したように、前側ホール素子50fによってオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出するためには、磁界Bの磁束密度aとトータルでの磁束密度(a+b)とが同位相になっていることが必要であることに注意されたい。
【0143】
図15は、本実施の形態に係る磁気回路における、前側ホール素子50fの周波数特性を示す図である。図15において、横軸は周波数(Frequency)(Hz)を表わし、左側縦軸はゲイン(Gain)(dB)を表わし、右側縦軸は位相(Phase)(deg)を表わす。また、図15において、実線はゲイン特性を示し、一点鎖線は位相特性を示す。
【0144】
図15から分かるように、前側ホール素子50fの周波数特性は、周波数の低い方から順に、領域Iと、領域IIと、領域IIIとに分けられる。領域Iは、アクチュエータの一次共振以下の帯域で、周波数が低い領域である。領域IIは、アクチュエータの一次共振以上の帯域で、周波数が中間の領域である。領域IIIは、アクチュエータの一次共振以上の帯域で、周波数が高い領域である。
【0145】
図16は、領域I、領域II、および領域IIIにおける、前側永久磁石片282fにより発生する磁界Bの磁束密度a、前側手振れ補正用コイル部18fに流される第1のIS電流IIS1により発生する磁界BI1の磁束密度b、および前側ホール素子50fで検出されるトータルでの磁束密度(a+b)の大きさと位相関係を示す図である。図17は、図16の関係を表にした図である。
【0146】
図16および図17から次のことが分かる。
【0147】
領域Iである一次共振以下の帯域では、磁界Bの磁束密度aの大きさ|a|は、磁界BI1の磁束密度bの大きさ|b|より大きく(|a|>|b|)、磁界Bの磁束密度aと磁界BI1の磁束密度bとは逆位相となっているが、磁界Bの磁束密度aとトータルでの磁束密度(a+b)とが同位相となっている。したがって、領域Iにおいては、前側ホール素子50fによってオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出することができる。
【0148】
一方、アクチュエータの一次共振以上では、前側永久磁石片282fの動きが、前側手振れ補正用コイル部18fに流される第1のIS電流IIS1と同位相となる。
【0149】
領域IIである一次共振以上の帯域では、磁界Bの磁束密度aの大きさ|a|は、磁界BI1の磁束密度bの大きさ|b|より大きい(|a|>|b|)ので、磁界Bの磁束密度aとトータルでの磁束密度(a+b)とが同位相となっている。したがって、領域IIにおいては、前側ホール素子50fによってオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出することができる。
【0150】
一方、領域IIIである一次共振以上の帯域では、磁界Bの磁束密度aの大きさ|a|が、磁界BI1の磁束密度bの大きさ|b|よりも小さく(|a|<|b|)なる。しかしながら、磁界Bの磁束密度aとトータルでの磁束密度(a+b)とが同位相であるので、磁界Bの磁束密度aとトータルでの磁束密度(a+b)とも同位相となる。その結果、領域IIIにおいても、前側ホール素子50fによってオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出することができる。すなわち、ホール素子の出力に共振は発生しない。
【0151】
したがって、コイルの2つのループ部分の間にホール素子を配置することによって、全ての周波数範囲において、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の位置を検出することができることが分かる。換言すれば、ホール素子50f、50lは、それぞれ、手振れ補正用コイル部18f、18lに流した電流によって発生する磁界に起因する悪影響を受けるのを避けることができる。
【0152】
図18は、磁気回路における、永久磁石28の1片の永久磁石片282と、その周囲に配置されるフォーカスコイル26および手振れ補正用コイル部18との配置関係を示した断面図である。
【0153】
永久磁石片282の高さに対して、フォーカスコイル26の高さが低くなっている。これにより、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向に位置調整する場合のストロークを大きくすることができる。
【0154】
また、永久磁石片282の半径方向のエッジが、手振れ補正用コイル部18の半径方向のコイル断面幅に入るように、永久磁石片282と手振れ補正用コイル部18とが配置されている。これにより、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を光軸Oに対して直交する方向へ移動させる駆動力の感度を高めることができる。
【0155】
ところで、このような構成のレンズ駆動装置10では、落下衝撃等によって、4本のサスペンションワイヤ16に伸張する方向の力がかかって、4本のサスペンションワイヤ16が破断する虞があるが、本実施の形態に係るレンズ駆動装置10では、後述するような、4本のサスペンションワイヤ16の破断を防止する破断防止部材を備えている。
【0156】
図19および図20を参照して、本実施の形態に係る破断防止部材について詳細に説明する。図19は、サスペンションワイヤ16の他端を上側板バネ32に固定する部分を拡大して示す部分斜視図であり、図20は、その固定する部分の部分断面図である。
【0157】
前述したように、上側板バネ32は、上側外周側端部324の四隅で半径方向外側へ延出する4つの弧状の延出部328(図19では、1つの弧状の延出部328のみを図示している)を有する。これら4つの弧状の延出部328は、その先端部に、それぞれ、上記4本のサスペンションワイヤ16の他端が挿入(嵌入)される4つのワイヤ固定用穴328a(図3参照)を持つ。これら4つのワイヤ固定用穴328aに4本のサスペンションワイヤ16の他端を挿入して、はんだ60付け又は接着剤(図示せず)により固定している。
【0158】
したがって、4つの弧状の延出部328は、4本のサスペンションワイヤ16の他端を固定するワイヤ固定部として働く。
【0159】
このような構成のレンズ駆動装置10では、落下衝撃等により、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20にベース14から離れる方向の力が加わっても、4本のサスペンションワイヤ16Aの他端が上側板バネ32の4つの弧状の延出部328に固定された状態で、その4つの弧状の延出部328が弾性変形しつつオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20が上昇することになる。
【0160】
その結果、4本のサスペンションワイヤ16が破断するのを防止することができる。したがって、4つの弧状の延出部328は、4本のサスペンションワイヤ16の破断を防止する破断防止部材として働く。
【0161】
一方、図19に示されるように、マグネットホルダ30は、上側リング状端部304の四隅で上方へ突出する4つの上側ストッパ308(図19では、1つの上側ストッパ308のみ図示する)を有する。各上側ストッパ308は、上側板バネ32の上側外周側端部324と各弧状の延出部328との間に形成された開口32aから突出している。
【0162】
換言すれば、4つの上側ストッパ308は、マグネットホルダ30からシールドカバー42の内壁面へ向けて突出している。
【0163】
これら4つの上側ストッパ308により、図2に示されるように、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20の上方向への移動が規制される。換言すれば、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20が上方向へ移動する際に、4つの弧状の延出部328が弾性変形するが、当該4つの弧状の延出部328が折れ曲がる前および4本のサスペンションワイヤ16に破断する力がかかる前に、マグネットホルダ30の4つの上側ストッパ308がシールドカバー42の上側端部424の内壁面と当接する。
【0164】
すなわち、4つの上側ストッパ308は、4本のサスペンションワイヤ16の破断防止を補助する破断防止補助部材として働く。
【0165】
なお、図2に示されるように、ベース14とオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20との間には、クリアランス(隙間)がほとんどない。したがって、たとえ落下衝撃等により、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20にベース14へ近づく方向の力が加わっても、直ちにオートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20がベース14の上面に当接するので、4本のサスペンションワイヤ16が座屈することはない。
【0166】
図2乃至図4に加えて図21をも参照して、ベース14とコイル基板40との間に配置されるフレキシブルプリント基板(FPC)44とその搭載方法について説明する。図21は、コイル基板40とフレキシブルプリント基板(FPC)44とを組み合せたものを、裏面側から見た斜視図である。
【0167】
図3に示されるように、ベース14は、その円形開口14a近傍の半径方向外側の対角線上に、上方へ突出する4つの位置決め突起142を持つ。一方、図4に示されるように、コイル基板40は、これら4つの位置決め突起142がそれぞれ装入される4つの位置決め穴部40bを持つ。図21に示されるように、フレキシブルプリント基板(FPC)44も、これら4つの位置決め穴部40bと対応する位置に、4つの位置決め穴部44aを持つ。したがって、ベース14の4つの位置決め突起142は、それぞれ、フレキシブルプリント基板(FPC)44の4つの位置決め穴部44aを介して、コイル基板40の4つの位置決め穴部40bに装入される。
【0168】
図21に示されるように、フレキシブルプリント基板(FPC)44の裏面には、2つのホール素子50f、50lが搭載されている。一方、図2に示されるように、ベース14には、これら2つのホール素子50f、50lが嵌入される穴14bが形成されている。
【0169】
また、図4に示されるように、コイル基板40には、その中央部にある円形開口40cに沿って、4つの手振れ補正用コイル部18f、18b、18l、および18rへ電流を供給するための6つのランド18aが形成されている。一方、図21に示されるように、フレキシブルプリント基板(FPC)44には、これら6つのランド18aとそれぞれ対応する位置に6つの切欠き部44bが形成されている。したがって、これら6つの切欠き部44bに半田ペーストを載せ、半田リフローすることによって、フレキシブルプリント基板(FPC)44の内部配線(図示せず)とコイル基板40の6つのランド18aとを電気的に接続することができる。
【0170】
尚、図21に示されるように、フレキシブルプリント基板(FPC)44の裏面には制御部46が搭載されている。制御部46は、フォーカスコイル16に流す電流を制御したり、2つのホール素子50f、50lで検出された位置検出信号に基づいて、図示しない2つの方向ジャイロに基づいて検出された揺れを相殺するように、4つの手振れ補正用コイル部18f、18b、18l、および18rへ流す電流を制御する。
【0171】
図22及び図23を参照して、フォーカスコイル26への給電方法について説明する。図22は、シールドカバー42を省いた状態のレンズ駆動装置10の平面図である。図23は、図22における、フォーカスコイル26を構成した線材の末端部の絡げ部分を拡大して示す部分拡大斜視図である。
【0172】
図22に示されるように、レンズホルダ24は、その上端で左右方向Yに互いに離れる方向(半径方向外側)に突設した第1及び第2の突起部241及び242を持つ。図示の例では、第1の突起部241は、右側へ突出しているので、右側突起部と呼ばれ、第2の突起部242は、左側へ突出しているので、左側突起部と呼ばれる。
【0173】
一方、フォーカスコイル26を構成した線材は、第1及び第2の末端部261及び262を持つ。図23に示されるように、フォーカスコイル26の線材の第1の末端部261は、レンズホルダ24の第1の突起部(右側突出部)241に絡げられている。同様に、フォーカスコイル26の線材の第2の末端部262は、レンズホルダ24の第2の突起部(左側突起部)242に絡げられている。したがって、第1及び第2の末端部261及び262は、それぞれ、第1及び第2の絡げ部分とも呼ばれる。
【0174】
一方、図22に示されるように、第1の板バネ(上側板バネ)32は、互いに電気的に絶縁された第1及び第2の板バネ片32−1及び32−2から構成されている。第1及び第2の板バネ片32−1及び32−2は、レンズの光軸Oを中心に回転対称の形状をしている。第1の板バネ片32−1は、マグネットホルダ30の第1の端(上端)上で、実質的に後側および右側に配置されており、第2の板バネ片32−2は、マグネットホルダ30の第1の端(上端)上で、実質的に前側および左側に配置されている。
【0175】
第1の板バネ片32−1の右側にある上側内周側端部322は、レンズホルダ24の第1の突起部(右側突出部)241と対応する位置で、右方(半径方向外側)へ突設した第1のU字状端子部322−1を持つ。同様に、第2の板バネ片32−2の左側にある上側内周側端部322は、レンズホルダ24の第2の突起部(左側突出部)242と対応する位置で、左方(半径方向外側)へ突設した第2のU字状端子部322−2を持つ。第1のU字状端子部322−1は右側U字状端子部とも呼ばれ、第2のU字状端子部322−2は左側U字状端子部と呼ばれる。
【0176】
第1のU字状端子部(右側U字状端子部)322−1は、レンズホルダ24の第1の突起部(右側突出部)241で、フォーカスコイル26の第1の末端部(第1の絡げ部分)261とはんだ(図示せず)で電気的に接続される。同様に、第2のU字状端子部(左側U字状端子部)322−2は、レンズホルダ24の第2の突起部(左側突出部)242で、フォーカスコイル26の第2の末端部(第2の絡げ部分)262とはんだ(図示せず)で電気的に接続される。
【0177】
また、前述したように、4本のサスペンションワイヤ16の内、2本のサスペンションワイヤ16(図22の例では、右奥と左前)の他端は、ワイヤ固定用穴328aを通して、はんだ60で弧状の延出部328に固定される。残りの2本のサスペンションワイヤ16(図22の例では、左奥と右前)の他端は、ワイヤ固定穴328aを通して、接着剤62で弧状の延出部328に固定される。
【0178】
したがって、右奥の1本のサスペンションワイヤ16は、第1の板バネ(上側板バネ)32の第1の板バネ片32−1及び第1のU字状端子部(右側U字状端子部)322−1を介して、フォーカスコイル26の第1の末端部(第1の絡げ部分)261と電気的に接続される。同様に、左前の1本のサスペンションワイヤ16は、第1の板バネ(上側板バネ)32の第2の板バネ片32−2及び第2のU字状端子部(左側U字状端子部)322−2を介して、フォーカスコイル26の第2の末端部(第2の絡げ部分)262と電気的に接続される。
【0179】
このようにして、サスペンションワイヤ16から第1の板バネ32を介してフォーカスコイル26への給電が行われる。
【0180】
次に、レンズ駆動装置10の組み立て方法について説明する。
【0181】
先ず、レンズホルダ24、フォーカスコイル26、永久磁石28、マグネットホルダ30、上側板バネ32、下側板バネ34、およびスペーサ36を組み合せることによって、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20を製造する。
【0182】
一方、図21に示されるような、上述した半田リフローによって、コイル基板40とフレキシブルプリント基板(FPC)44との組み立て体を作製する。その組み立て体を、4本のサスペンションワイヤ16の一端が固定されたベース14上に搭載する。
【0183】
そして、上記オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20を、上記組み立て体を介してベース14上に搭載し、4本のサスペンションワイヤ16の他端をワイヤ固定用穴328aを通して、はんだ60や接着剤62で弧状の延出部328に固定する。
【0184】
また、第1の板バネ(上側板バネ)32の第1及び第2のU字状端子部322−1及び322−2を、はんだで、それぞれ、フォーカスコイル26の第1及び第2の末端部261及び262に接続する。
【0185】
最後に、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20を覆うようにシールドカバー42を被せて、シールドカバー42の下端をベース14に固定する。
【0186】
このように、レンズ駆動装置10を容易に組み立てることが可能である。
【0187】
尚、このようにして組み立てられたレンズ駆動装置10の寸法は、11mm×11mm×4.2mmである。
【0188】
上述したような、本発明の第1の実施の形態によるレンズ駆動装置10では、次に述べるような効果を奏する。
【0189】
第1に、2つのホール素子50fおよび50lを、特定の2つの手振れ補正用コイル部18fおよび18lの、2つのコイル部分18fl、18frおよび18lf、18lbの分離した場所で、ベース14上に配置したので、2つのホール素子50fおよび50lが、特定の2つの手振れ補正用コイル部18fおよび18lに流した電流によって発生する磁界に起因する悪影響を避けることができる。
【0190】
第2に、破断防止部材328を備えているので、4本のサスペンションワイヤ16が破断するのを防止することができ、レンズ駆動装置10の耐衝撃性を高めることが可能になる。
【0191】
第3に、コイル基板40に形成された複数のランド18aと対応する位置に、フレキシブルプリント基板(FPC)44に切欠き部44bを形成したので、半田リフローにより、フレキシブルプリント基板(FPC)44の内部配線とコイル基板40の複数のランド18aとを電気的に接続することができる。
【0192】
第4に、永久磁石片282の高さに対してフォーカスコイル26の高さを低くしたので、レンズホルダ24(レンズバレル)を光軸O方向に位置調整する場合のストロークを大きくすることができる。
【0193】
第5に、永久磁石片282の半径方向のエッジが手振れ補正用コイル部18の半径方向のコイル断面幅に入るように、永久磁石片282と手振れ補正用コイル部18とを配置したので、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20全体を光軸Oに対して直交する方向へ移動させる駆動力の感度を高めることができる。
【0194】
図24および図25を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るレンズ駆動装置10Aについて説明する。図24はレンズ駆動装置10Aの縦断面図である。図25はレンズ駆動装置10Aを示す分解斜視図である。
【0195】
ここでは、図24及び図25に示されるように、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。図24及び図25に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸方向は前後方向(奥行方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向)である。そして、図24及び図25に示す例においては、上下方向Zがレンズの光軸O方向である。尚、本第2の実施の形態において、X軸方向(前後方向)は第1の方向とも呼ばれ、Y軸方向(左右方向)は第2の方向とも呼ばれる。
【0196】
但し、実際の使用状況においては、光軸O方向、すなわち、Z軸方向が前後方向となる。換言すれば、Z軸の上方向が前方向となり、Z軸の下方向が後方向となる。
【0197】
図示のレンズ駆動装置10Aは、オートフォーカス用レンズ駆動部20Aと、携帯電話用の小型カメラで静止画像の撮影時に、オートフォーカス用レンズ駆動部20Aに生じた手振れ(振動)を補正する手振れ補正部とを含み、像ブレのない画像を撮影できるようにした装置である。
【0198】
図示のレンズ駆動装置10Aは、上述した第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置10とは、実質的に、上下が逆になった構造をしている。したがって、「上側」を「下側」に読み替え、「下側」を「上側」に読み替えればよい。説明の簡略化のために、第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置10と同様の機能を有するものには同一の参照符号を付し、以下では相違点についてのみ説明する。
【0199】
レンズバレル12は、釣鐘形状をしている。シールドカバー42の代わりに、四角筒状のシールド壁422Aと第2のベース(カバー)424Aとが用いられている。また、オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)20Aでは、スペーサ36Aが第1の板バネである下側板バネ32に取り付けられている。
【0200】
それ以外の構造は、上述した第1の実施の形態に係るレンズ駆動装置10と同様である。
【0201】
したがって、本発明の第2の実施の形態によるレンズ駆動装置10Aでも、上述した第1の実施の形態によるレンズ駆動装置10と同様の効果を奏する。
【0202】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。例えば、上述した実施の形態では、ベースに対してオートフォーカス用レンズ駆動部を揺動可能に支持する支持部材として、ベースの外周部で一端が固定された複数本のサスペンションワイヤを用いているが、支持部材はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0203】
10,10A レンズ駆動装置
12 レンズバレル
14 ベース
14a 円形開口
14b 穴
142 位置決め突起
16 サスペンションワイヤ
18 手振れ補正用コイル
18a ランド
18f 前側手振れ補正用コイル部
18fl 左寄りコイル部分
18fr 右寄りコイル部分
18b 後側手振れ補正用コイル部
18l 左側手振れ補正用コイル部
18lf 前寄りコイル部分
18lb 後寄りコイル部分
18r 右側手振れ補正用コイル部
20、20A オートフォーカス用レンズ駆動部(AFユニット)
24 レンズホルダ
240 筒状部
240a 上側突起
241 第1の突起部(右側突起部)
242 第2の突起部(左側突起部)
26 フォーカスコイル
261 第1の末端部(第1の絡げ部分)
262 第2の末端部(第2の絡げ部分)
28 永久磁石
282 永久磁石片
282f 前側永久磁石片
282b 後側永久磁石片
282l 左側永久磁石片
282r 右側永久磁石片
30 マグネットホルダ
30a 第1の端
30b 第2の端
302 外筒部
304 上側リング状端部
304a 上側突起
306 下側リング状端部
306a 下側突起
308 ストッパ(破断防止補助部材)
32 第1の板バネ(上側板バネ)
32−1 第1の板バネ片
32−2 第2の板バネ片
32a 開口
322 上側内周側端部
322−1 第1のU字状端子部(右側U字状端子部)
322−2 第2のU字状端子部(左側U字状端子部)
322a 上側穴
324 上側外周側端部
324a 上側穴
326 上側腕部
328 弧状の延出部(破断防止部材、ワイヤ固定部)
328a ワイヤ固定用穴
34 第2の板バネ(下側板バネ)
342 下側内周側端部
342a 下側穴
344 下側外周側端部
344a 下側穴
346 下側腕部
36、36A スペーサ
362 内リング部
364 外リング部
364a 下側穴
40 コイル基板
40a 貫通穴
40b 位置決め穴部
40c 円形開口
42 シールドカバー
422 四角筒部
422A シールド壁
424 上側端部
424A 第2のベース(カバー)
424a 円形開口
44 フレキシブルプリント基板(FPC)
44a 位置決め穴部
44b 切欠き部
46 制御部
50 位置検出手段(ホール素子)
50f 前側ホール素子
50l 左側ホール素子
60 はんだ
62 接着剤
O 光軸
X 第1の方向(前後方向)
Y 第2の方向(左右方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズバレルを光軸に沿って移動させるオートフォーカス用レンズ駆動部と、該オートフォーカス用レンズ駆動部を、前記光軸に直交し、かつ互いに直交する第1の方向及び第2の方向に移動させることにより、手振れを補正するようにした手振れ補正部とを有するレンズ駆動装置であって、
前記オートフォーカス用レンズ駆動部は、
前記レンズバレルを保持するための筒状部を有するレンズホルダと、
該レンズホルダに、前記筒状部の周囲に位置するように固定されたフォーカスコイルと、
各々が、該フォーカスコイルと対向する第1の面を持ち、前記光軸に対して該フォーカスコイルの半径方向外側に、前記第1の方向及び前記第2の方向に対向して配置された複数の永久磁石片から成る、永久磁石と、
前記レンズホルダの外周に配置されて、前記永久磁石を保持するマグネットホルダと、
前記マグネットホルダの前記光軸方向の第1及び第2の端にそれぞれ取り付けられ、前記レンズホルダを径方向に位置決めした状態で前記光軸方向に変位可能に支持する、第1及び第2の板バネと、
を備え、
前記手振れ補正部は、
前記第2の板バネに近接した位置で、前記オートフォーカス用レンズ駆動部から前記光軸方向に離間して配置されたベースと、
該ベースに対して前記オートフォーカス用レンズ駆動部を前記第1の方向及び前記第2の方向に揺動可能に支持する支持部材と、
前記複数の永久磁石片の第1の面に垂直な第2の面にそれぞれ対向して、前記ベース上に配置された複数の手振れ補正用コイル部から成る手振れ補正用コイルであって、該複数の手振れ補正用コイル部のうち、前記第1の方向及び前記第2の方向に配置された特定の手振れ補正用コイル部の各々は、対向する永久磁石片の長手方向で分離するように、複数のコイル部分に分割されている、前記手振れ補正用コイルと、
前記分割された複数のコイル部分を持つ前記特定の手振れ補正用コイル部の、前記複数のコイル部分の分離した場所で、前記ベース上に配置された複数のホール素子と、
を有するレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記永久磁石は、4片の永久磁石片から成り、
前記手振れ補正用コイルは、4つの手振れ補正用コイル部から成り、該4つの手振れ補正用コイル部のうち、前記第1の方向及び前記第2の方向に配置された特定の2つの手振れ補正用コイル部の各々は、対向する永久磁石片の長手方向の中央で分離するように、2つのコイル部分に分割されており、
前記複数のホール素子は、2つのホール素子から成り、該2つのホール素子は、前記分割された2つのコイル部分を持つ前記特定の2つの手振れ補正用コイル部の、前記2つのコイル部分の分離した場所で、前記ベース上に配置されている、
請求項1に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記支持部材が、前記ベースの外周部で一端が固定された複数本のサスペンションワイヤから成り、該複数本のサスペンションワイヤは、前記光軸に沿って延在し、前記オートフォーカス用レンズ駆動部を、前記第1の方向及び前記第2の方向に揺動可能に支持する、請求項1又は2に記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記複数本のサスペンションワイヤの他端は、前記第1の板バネに固定されている、請求項3に記載のレンズ駆動装置。
【請求項5】
前記レンズホルダは、前記筒状部の外壁から突設した突起部を有し、
前記突起部に前記フォーカスコイルを構成した線材の末端部が絡げられており、
前記第1の板バネは、前記線材の末端部を絡げた前記突起部近傍に配置するように突設した端子部を有し、
前記端子部と前記突起部に絡げられた前記線材の末端部とが電気的に接続されて、前記サスペンションワイヤから前記第1の板バネを介して前記フォーカスコイルに給電することを特徴とする、請求項4に記載のレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−24938(P2013−24938A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157035(P2011−157035)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】