説明

レーザー加工装置

【課題】レーザー光線のスポット形状を円形と楕円形に迅速に変更することができるレーザー加工装置の提供。
【解決手段】レーザー光線を集光する集光器は、シリンドリカルレンズからなる第1のレンズ81aと、第1のレンズのレーザー光線照射方向下流側に配設された第2のレンズ81bと、第1のレンズ81aと第2のレンズ81bとの間隔を調整する間隔調整機構10とを含み、間隔調整機構10は、支持基板11と、支持基板11に設けられ第2のレンズ81bを保持する第1の支持テーブル12と、第1の支持テーブル12の上方に支持基板11に沿って上下方向に移動可能に配設され第1のレンズ81aを保持する第2の支持テーブル13と、第1の支持テーブル81aと第2の支持テーブル81bとを第1の間隔と第2の間隔に作動せしめるエアーピストンユニット16とからなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光線のスポット形状を円形と楕円形に迅速に変更することができるレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD等の光デバイス製造工程においては、光デバイスウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にCCD等の光デバイスを形成する。そして、光デバイスウエーハをストリートに沿って切断することによりデバイスが形成された領域を分割して個々の光デバイスウエーハを製造している。
【0003】
このような光デバイスウエーハのストリートに沿った切断は、一般に切削装置によって行われている。しかるに、光デバイスウエーハを切削装置によって切削すると、切削屑が光デバイスの表面に付着して品質が低下するという問題がある。
【0004】
一方、近年半導体ウエーハやガラス板等の被加工物に形成された加工ラインに沿ってパルスレーザー光線を照射することにより、被加工物を所定の加工ラインに沿って分割する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平10−305421号公報
【0005】
また、レーザー加工による加工特性を良好にするためにレーザー光線のスポット形状を楕円形に形成してレーザー加工を施すレーザー加工方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献2】特開2006−51517号公報
【0006】
そこで本出願人は、レーザー光線のスポット形状を円形や長軸と短軸の比が異なる楕円形に変更することができるレーザー加工装置を特願2005−331118号として提案した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、円形のスポット形状で加工する工程と楕円形のスポット形状で加工する工程を交互に実施する場合には、レーザー光線のスポット形状を円形と楕円形に迅速に変更することが望ましい。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、レーザー光線のスポット形状を円形と楕円形に迅速に変更することができるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器とを具備し、
該集光器は、シリンドリカルレンズからなる第1のレンズと、該第1のレンズのレーザー光線照射方向下流側に配設された第2のレンズと、該第1のレンズと該第2のレンズとの間隔を調整する間隔調整機構とを含み、
該間隔調整機構は、支持基板と、該支持基板に設けられ該第2のレンズを保持する第1の支持テーブルと、該第1の支持テーブルの上方に該支持基板に沿って上下方向に移動可能に配設され該第1のレンズを保持する第2の支持テーブルと、該第1の支持テーブルと該第2の支持テーブルとを第1の間隔と第2の間隔に作動せしめるエアーピストンユニットとからなっている、
ことを特徴とするレーザー加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるレーザー加工装置においては、レーザー光線のスポット形状を円形と楕円形にするために集光器の第1のレンズと第2のレンズの間隔を第1の間隔と第2の間隔に切換える手段としてエアーピストンユニットが用いられているので、その作動が迅速でその切換により加工効率を低下させることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0012】
図1には、本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記矢印Xで示す方向(X軸方向)と直角な矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0013】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0014】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿って矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動せしめられる。
【0015】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この加工送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。
【0016】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0017】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し送り量を検出するため割り出し送り量検出手段384を備えている。割り出し送り量検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。この割り出し送り量検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示に実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。
【0018】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上に矢印Yで示す方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面に矢印Zで示す方向(Z軸方向)に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ねじロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿って矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動せしめられる。
【0019】
図示の実施形態のおけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動可能に支持される。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動させるための移動手段53を具備している。移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザビーム照射手段52を案内レール423、423に沿って矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0021】
図示のレーザー光線照射手段52は、上記ユニットホルダ51に固定され実質上水平に延出する円筒形状のケーシング521を具備している。また、レーザー光線照射手段52は、図2に示すようにケーシング521内に配設されたパルスレーザー光線発振手段522および伝送光学系523と、ケーシング521の先端に配設されパルスレーザー光線発振手段522によって発振されたパルスレーザー光線を上記チャックテーブル36に保持された被加工物に照射する加工ヘッド6を具備している。上記パルスレーザー光線発振手段522は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器522aと、これに付設された繰り返し周波数設定手段522bとから構成されている。伝送光学系523は、ビームスプリッタの如き適宜の光学要素を含んでいる。
【0022】
上記加工ヘッド6は、図3に示すように方向変換ミラー61と、集光器7とからなっている。方向変換ミラー61は、上記パルスレーザー光線発振手段522によって発振され伝送光学系523を介して照射されたパルスレーザー光線を集光器7に向けて方向変換する。集光器7は、図示の実施形態においては第1のシリンドリカルレンズ81aを備えた第1のシリンドリカルレンズユニット8aと、該第1のシリンドリカルレンズユニット8aのレーザー光線照射方向下流側に配設され上記第1のシリンドリカルレンズ81aと集光方向が直交する方向に位置付けられた第2のシリンドリカルレンズ81bを備えた第2のシリンドリカルレンズユニット8bと、第1のシリンドリカルレンズユニット8aと第2のシリンドリカルレンズユニット8bとの間隔を調整するための後述する間隔調整機構とを具備している。上記方向変換ミラー61と第1のシリンドリカルレンズユニット8aと第2のシリンドリカルレンズユニット8bおよび後述する間隔調整機構は、図4に示すように上記ケーシング521の先端に装着された加工ヘッドハウジング60内に配設されている。
【0023】
上記第1のシリンドリカルレンズユニット8aについて、図5乃至図7を参照して説明する。図5には第1のシリンドリカルレンズユニット8aの斜視図が示されており、図6には図5に示す第1のシリンドリカルレンズユニット8aの分解斜視図が示されている。
図5および図6に示す第1のシリンドリカルレンズユニット8aは、第1のレンズとしての第1のシリンドリカルレンズ81aと、該第1のシリンドリカルレンズ81aを保持するレンズ保持部材82と、該レンズ保持部材82を保持する枠体83とを具備している。
【0024】
第1のシリンドリカルレンズ81aは、図7に示すように断面が半円形状に形成された凸レンズからなっている。この第1のシリンドリカルレンズ81aは、図示の実施形態においては焦点距離(f1)が80mmに設定されている。第1のシリンドリカルレンズ81aを保持するレンズ保持部材82は、図示の実施形態においては合成樹脂によって円形に形成されている。このレンズ保持部材82は、レンズ保持部821と、該レンズ保持部821の下面中心部から突出して形成された回動軸部822とからなっている。レンズ保持部821にはレンズ嵌合穴821aが設けられており、このレンズ嵌合穴821aに第1のシリンドリカルレンズ81aが嵌合して保持される。回動軸部822には、レンズ保持部921に設けられたレンズ嵌合穴821aと連通するレーザー光線挿通穴822aが軸方向に貫通して形成されている。
【0025】
上記レンズ保持部材82を保持する枠体83は、図6に示すように矩形状に形成されており、その上面には上記レンズ保持部材82のレンズ保持部821が配置される凹部831が形成されている。また、凹部831の底壁831aには、上記レンズ保持部材82の回動軸部822を回動可能に嵌合する軸穴831bが設けられている。このように構成された枠体83の凹部831に上記レンズ保持部材82のレンズ保持部821を配置し、軸穴831bに回動軸部822を嵌合することにより、レンズ保持部821は第1のシリンドリカルレンズ81aを通るレーザー光線の光軸を中心として回動可能に装着される。
【0026】
図示に実施形態における第1のシリンドリカルレンズユニット8aは、上記レンズ保持部材82を回動軸部822を中心として回動せしめるレンズ回動手段84を具備している。レンズ回動手段84は、図示の実施形態においてはパルスモータ841と無端ベルト842とからなっている。パルスモータ841は上記枠体83の下面に装着され、その駆動軸841aが凹部831内に突出して配設される。駆動軸841aにはプーリー843が装着され、このプーリー843と上記レンズ保持部材82のレンズ保持部821の外周に無端ベルト842が掛け回される。従って、パルスモータ841を正転または逆転駆動することにより、プーリー843および無端ベルト842を介してレンズ保持部材82が回動軸部822を中心として一方向または他方向に回動せしめられる。このレンズ回動手段84は、後述するように第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bおよび間隔調整機構10とからなる集光スポット変更手段によって形成される楕円形の集光スポットを光軸を中心として回動する集光スポット回動手段として機能する。
【0027】
次に、第2のシリンドリカルレンズユニット8bについて、図8を参照して説明する。なお、図8に示す第2のシリンドリカルレンズユニット8bは、第2のレンズとしての第2のシリンドリカルレンズ81bの焦点距離および第2のシリンドリカルレンズ81bが上記第1のシリンドリカルレンズ81aと集光方向が直交する方向に位置付けられている以外は、第1のシリンドリカルレンズユニット8aと実質的に同一の構成であるので、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。この第2のシリンドリカルレンズユニット8bの第2のシリンドリカルレンズ81bの焦点距離(f2)は、図示の実施形態においては40mmに設定されている。
【0028】
以上のように構成された第1のシリンドリカルレンズユニット8aおよび第2のシリンドリカルレンズユニット8bは、図9に示す間隔調整機構10にセットされる。以下、間隔調整機構10について説明する。
図10に示す間隔調整機構10は、支持基板11と、該支持基板11の下端に設けられた第1の支持テーブル12と、該第1の支持テーブル12の上方に支持基板11の前面に沿って上下方向に移動可能に配設された第2の支持テーブル13とを具備している。
【0029】
支持基板11は、前面中央部に上下方向に形成された案内溝111を備えている。第1の支持テーブル12は、支持基板11の前面に対して直角に突出して形成されている。この第1の支持テーブル12には、中央部にレーザー光線が通過する穴121が形成されているとともに、上記第2のシリンドリカルレンズユニット8bのレンズ回動手段84を構成するパルスモータ841が挿通する穴122が設けられている。また、第1の支持テーブル12の両側端には支持基板11の前面に対して直角に延びる位置決めレール123、124が形成されている。この位置決めレール123、124の間隔は、上記第2のシリンドリカルレンズユニット8bを構成する第2の枠体84の幅方向寸法に対応した寸法に設定されている。
【0030】
上記第2の支持テーブル13は、支持部14と、該支持部14の下端に設けられたテーブル部15とからなっている。支持部14は、後面に上記支持基板11に形成された案内溝111に嵌合する被案内レール141が形成されている。この被案内レール141が案内溝111に嵌合することにより、第2の支持テーブル13は支持基板11に案内溝111に沿って上下方向に移動可能に支持される。上記テーブル部15は、支持部14の前面に対して直角に突出して形成されている。このテーブル部15には、中央部にレーザー光線が通過する穴151が形成されているとともに、上記第1のシリンドリカルレンズユニット8aのレンズ回動手段84を構成するパルスモータ841が挿通する穴152が設けられている。また、テーブル部15の両側端には支持基板11の前面に対して直角に延びる位置決めレール153、154が形成されている。この位置決めレール153、154の間隔は、上記第1のシリンドリカルレンズユニット8aを構成する枠体83の幅方向寸法に対応した寸法に設定されている。
【0031】
図示の実施形態における間隔調整機構10は、第2の支持テーブル13を支持基板11の案内溝111に沿って下方向に移動せしめるエアーピストンユニット16を具備している。エアーピストンユニット16は、支持基板11の側面に固定されたエアーシリンダー161と、該エアーシリンダー161に摺動可能に配設されたピストン(図示せず)に取付けられたピストンロッド162、およびエアーシリンダー161にエアーを供給するエアー供給手段とを具備しており、ピストンロッド162が第2の支持テーブル13の支持部14の上端に固定された移動板142に連結されている。このように構成されたエアーピストンユニット16は、第2の支持テーブル13のテーブル部15と第1の支持テーブル12との間隔を後述する第1の間隔と第2の間隔に選択的に作動せしめる。
【0032】
以上のように構成された間隔調整機構10の第1の支持テーブル12には、図11に示すように上記第2のシリンドリカルレンズユニット8bがセットされる。即ち、第2のシリンドリカルレンズユニット8bの枠体83を第1の支持テーブル12における位置決めレール123、124の間に載置する。なお、第1の支持テーブル12上の所定位置に載置された第2のシリンドリカルレンズユニット8bは、図示しない適宜の固定手段によって第1の支持テーブル12に固定される。このようにして第1の支持テーブル12上に配置された第2のシリンドリカルレンズユニット8bの第2のシリンドリカルレンズ81bは、集光方向が図10においてYで示す方向にセットされる。
【0033】
また、間隔調整機構10の第2の支持テーブル13のテーブル部15に上記第1のシリンドリカルレンズユニット8aがセットされる。即ち、第1のシリンドリカルレンズユニット8aの枠体83を第2の支持テーブル13を構成するテーブル部15における位置決めレール153、154の間に載置する。なお、第2の支持テーブル13のテーブル部15上の所定位置に載置された第1のシリンドリカルレンズユニット8aは、図示しない適宜の固定手段によって第2の支持テーブル13のテーブル部15に固定される。このようにして第2の支持テーブル13のテーブル部15上に配置された第1のシリンドリカルレンズユニット8aの第1のシリンドリカルレンズ81aは、集光方向が図10においてXで示す方向にセットされる。
【0034】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の前端部には、上記レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段17が配設されている。この撮像手段17は、撮像素子(CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を制御手段20に送る。
【0035】
制御手段20は、コンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)201と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)202と、後述する被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)203と、カウンター204と、入力インターフェース205および出力インターフェース206とを備えている。制御手段20の入力インターフェース205には、上記加工送り量検出手段374、割り出し送り量検出手段384および撮像手段17等からの検出信号が入力される。そして、制御手段20の出力インターフェース206からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52、第1のシリンドリカルレンズユニット8aのレンズ回動手段94を構成するパルスモータ841、第2のシリンドリカルレンズユニット8bのレンズ回動手段84を構成するパルスモータ841、間隔調整機構10を構成するエアーピストンユニット16等に制御信号を出力する。なお、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)203は、後述する被加工物に形成された加工ラインの設計値のデータを記憶する第1の記憶領域203aや、後述する検出値のデータを記憶する第2の記憶領域203bおよび他の記憶領域を備えている。
【0036】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上述したレーザー光線照射手段52によって照射されるレーザー光線の集光スポット形状について、図11および図12を参照して説明する。
図11の(a)および11の(b)に示すように第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bの間隔(d)を40mm(第1の間隔)に設定すると、図示の実施形態においては第1のシリンドリカルレンズ81aの焦点距離(f1)が80mmに設定されているので、第1のシリンドリカルレンズ81aによって集光されるレーザー光線Lの集光点P1は図11の(a)に示すように第2のシリンドリカルレンズユニット8bの下方40mmの位置となる。一方、図示の実施形態においては第2のシリンドリカルレンズ81bの焦点距離(f2)が40mmに設定されているので、第2のシリンドリカルレンズ81bによって集光されるレーザー光線Lの集光点P2は図11の(b)に示すように第2のシリンドリカルレンズユニット8bの下方40mmの位置となる。このように、集光点P1と集光点P2は一致する。この結果、第1のシリンドリカルレンズ81aに入射された断面が円形のレーザー光線Lは、第1のシリンドリカルレンズ81aによって矢印X方向が集光され、更に第2のシリンドリカルレンズ81bによって矢印Y方向が集光されるので、集光点P1、P2において図11の(c)に拡大して示すように断面が円形の集光スポットS1が形成される。従って、集光点P1、P2の位置に被加工物をセットすることにより、断面が円形の集光スポットS1によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0037】
次に、図12の(a)および12の(b)に示すように第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bの間隔(d)を30mm(第2の間隔)に設定すると、第1のシリンドリカルレンズ81aの焦点距離(f1)は80mmに設定されているので、第1のシリンドリカルレンズ81aによって集光されるレーザー光線Lの集光点P1は図12の(a)に示すように第2のシリンドリカルレンズユニット8bの下方50mmの位置となる。一方、第2のシリンドリカルレンズ81bの焦点距離(f2)は40mmに設定されているので、第2のシリンドリカルレンズ81bによって集光されるレーザー光線Lの集光点P2は図12の(b)に示すように第2のシリンドリカルレンズユニット8bの下方40mmの位置となる。従って、集光点P2の位置においては第1のシリンドリカルレンズ81aに集光されるレーザー光線LのX方向は図12の(a)に示すように集光点P1に達していないため、集光点P2の位置における集光スポットS2は図12の(c)に拡大して示すように断面が楕円形となる。楕円形の集光スポットS2の長軸D1と短軸D2との比は、第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を変更することによって調整することができる。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が楕円形の集光スポットS2によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0038】
以上のように、第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bおよび第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を調整する間隔調整機構10は、集光スポットの形状を楕円形スポットと円形スポットに変更する集光スポット変更手段として機能する。そして、第1のシリンドリカルレンズユニット8aのレンズ保持部材82を回動軸部822を中心として回動せしめるレンズ回動手段84および第2のシリンドリカルレンズユニット8bのレンズ保持部材82を回動軸部822を中心として回動せしめるレンズ回動手段84は、後述するように集光スポット変更手段によって形成される楕円形の集光スポットを光軸を中心として回動する集光スポット回動手段として機能する。
【0039】
次に、図11に示すように断面が円形の集光スポットS1と図12に示すように断面が楕円形の集光スポットS2を用いて、被加工物にレーザー加工溝を形成する加工方法について説明する。
図13には、被加工物としてのウエーハ100が環状のフレームFに装着された保護テープTの表面に貼着された状態が示されている。ウエーハ100の表面には矩形状の複数のデバイス101が形成されている。各デバイス101は、それぞれ4個の直線部102aと所定の半径rを有する4個の曲線部(アール部)102bとからなる加工ライン102によって区画されている。このようにウエーハ100の表面に形成された各加工ライン102は、各直線部102aと各曲線部(アール部)102bとの交点a1〜a8のXY座標値のデータ(設計値)が上記制御手段20のランダムアクセスメモリ(RAM)203の第1に記憶領域203aに格納されている。
【0040】
図13に示すように、環状のフレームFに保護テープTを介して支持された被加工物Wは、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープT側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより被加工物Wは、保護テープTを介してチャックテーブル36上に吸引保持される。また、環状のフレームFは、クランプ362によって固定される。このように被加工物Wを吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段17の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段17の直下に位置付けられると、チャックテーブル36上の被加工物Wは、図13に示す座標位置に位置付けられた状態となる。
【0041】
次に、撮像手段17および制御手段20によって加工開始位置として例えばa1位置を検出する。そして、チャックテーブル36を移動してa1位置をレーザー光線照射手段52の集光器7の直下(加工位置)に位置付ける。次に、制御手段20は、現在位置a1からa2までは直線部102aであるので、間隔調整機構10のエアーピストンユニット16を作動して第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を図12に示す第2の間隔とし集光スポットの形状を図14に示すように楕円形の集光スポットS2にするとともに、第1のシリンドリカルレンズユニット8aのレンズ回動手段84および第2のシリンドリカルレンズユニット8bのレンズ回動手段84を同期して作動し楕円形の集光スポットS2の長軸D1をX軸方向に向け現在位置a1からa2まで直線部102aに沿って位置付ける。そして、制御手段20は、レーザー光線照射手段52を制御して集光器7からウエーハ100に対して吸収性を有する波長のパルスレーザー光線を照射するとともに、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を移動し、ウエーハ100を位置a1から位置a2まで移動する。
【0042】
上述したようにウエーハ100を位置a1から位置a2まで移動したら、制御手段20は位置a2から位置a3までは曲線部(アール部)102bであるので、間隔調整機構10のエアーピストンユニット16を作動して第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を図11に示す第1の間隔とし集光スポットの形状を図14に示すように円形の集光スポットS1にする。このように第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を第2の間隔から第1の間隔への移動はエアーピストンユニット16によって行われるので、その作動が迅速でその切換により加工効率を低下させることはない。そして、制御手段20は、加工送り手段37および第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を移動し、ウエーハ100を位置a2から位置a3まで移動する。
【0043】
上述したようにウエーハ100を位置a2から位置a3まで移動したら、制御手段20は間隔調整機構10のエアーピストンユニット16を作動して第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を図12に示す第2の間隔とし集光スポットの形状を図14に示すように楕円形の集光スポットS2とするとともに、第2のシリンドリカルレンズユニット8bのレンズ回動手段84および第2のシリンドリカルレンズユニット8bのレンズ回動手段84を同期して90度回動し楕円形の集光スポットS2の長軸D1をY軸方向に向け位置a3からa4まで直線部102aに沿って位置付ける。なお、第1のシリンドリカルレンズユニット8aのレンズ回動手段84および第2のシリンドリカルレンズユニット8bのレンズ回動手段84を同期して90度回動する作動は、上記位置a2から位置a3までの曲線部(アール部)102bを加工している間に実施することができ、位置a3に達したら間隔調整機構10のエアーピストンユニット16を作動して第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を図12に示す第2の間隔とし集光スポットの形状を図14に示すように楕円形の集光スポットS2にするだけでよい。このように第1のシリンドリカルレンズユニット8aのレンズ回動手段84および第2のシリンドリカルレンズユニット8bのレンズ回動手段84を同期して90度回動する作動を上記位置a2から位置a3までの曲線部(アール部)102bを加工している間に実施することにより、位置a3からの加工に円滑に移行することができる。また、第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を第1の間隔から第2の間隔への移動はエアーピストンユニット16によって行われるので、その作動が迅速でその切換により加工効率を低下させることはない。そして、制御手段20は、第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を移動し、ウエーハ100を位置a3から位置a4までの直線部102aを移動する。このようにして、ウエーハ100を位置a3から位置a4まで移動したら、制御手段20は第1のシリンドリカルレンズ81aと第2のシリンドリカルレンズ81bとの間隔(d)を図11に示す状態として円形の集光スポットS1にするとともに、加工送り手段37および第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を移動し、ウエーハ100を位置a4から位置a5までの曲線部(アール部)102bを移動する。
【0044】
以後、位置a5から位置a6までは上述した直線部の加工を、位置a6から位置a7までは上述した曲線部の加工を、位置a7から位置a8までは上述した直線部の加工を実施する。この結果、ウエーハ100にはデバイス101を区画する加工ライン102に沿ってレーザー加工溝が形成される。そして、上述した加工をウエーハ100に形成された全てのデバイス101を区画する加工ライン102に沿って実施することにより、ウエーハ100は個々のデバイス101に分割される。
【0045】
なお、上記レーザー加工における加工条件は、例えば下記のように設定されている。
レーザー光線の光源 :YVO4レーザーまたはYAGレーザー
波長 :355nm
繰り返し周波数 :50〜100kHz
平均出力 :4W
加工送り速度 :50〜300mm/秒
円形スポット径 :φ10μm
楕円形スポット径 :長軸(D1)100μm、短軸(D2)10μm
【0046】
以上のように、図示の実施形態においては、加工ライン102の直線部102aについては集光スポットの形状を楕円形の集光スポットS2とし、楕円形の集光スポットS2の長軸D1を直線部102aに沿って位置付けてレーザー加工するので、短軸(D2)に対応した幅を有するレーザー加工溝を形成することができる。また、加工ライン102の曲線部(アール部)102bについては、集光スポットの形状を円形の集光スポットS1でレーザー加工するので、加工領域からはみ出しことなく円形スポット径に対応した幅を有するレーザー加工溝を加工ライン102の曲線部(アール部)102bに沿って正確に形成することができる。
【0047】
次に、集光器7の他の実施形態について、図15乃至図17を参照して説明する。
図15乃至図17に示す集光器7は、上記図1乃至図12に示す集光器7における第1のシリンドリカルレンズユニット8aおよび第2のシリンドリカルレンズユニット8bに相当する第1のシリンドリカルレンズユニット9aおよび第2のレンズユニット9b以外は上記図1乃至図12に示す集光器7を構成する各部材と実質的に同様の構成であるため、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
【0048】
図15乃至図17に示す集光器7における第1のシリンドリカルレンズユニット9aは、第1のレンズとしてのシリンドリカルレンズ91aと、該シリンドリカルレンズ91aを保持するレンズ保持部材92aと、該レンズ保持部材92aを保持する枠体93aとを具備している。シリンドリカルレンズ91aは、図16および図17に示すように断面が半円形状に形成された凸レンズからなっている。このシリンドリカルレンズ91aは、図示の実施形態においては焦点距離が40mmに設定されている。なお、図15乃至図17に示す集光器7における第1のシリンドリカルレンズユニット9aは、シリンドリカルレンズ91を保持するレンズ保持部材92を回動するための回動手段を備えていない。このように構成された第1のシリンドリカルレンズユニット9aは、第2の支持テーブル13のテーブル部15上の所定位置に載置される。このとき、第1のシリンドリカルレンズ81aは、集光方向が図15においてXで示す方向にセットされる。
【0049】
図15乃至図17に示す集光器7における第2のレンズユニット9bは、第2のレンズとしての集光レンズ91bと、該集光レンズ91bを保持するレンズハウジング92bとからなっており、レンズハウジング92bが第1の支持テーブル12の下面に装着される。なお、集光レンズ91bは、図示の実施形態においては焦点距離が40mmに設定されている。
【0050】
図15乃至図17に示す集光器7は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
上述したレーザー光線照射手段52によって照射されるレーザー光線の集光スポット形状について、図16および図17を参照して説明する。
先ず、図16の(a)および16の(b)に示すように間隔調整機構10のエアーピストンユニット16を作動してシリンドリカルレンズ91aと集光レンズ92bの間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91aの焦点距離(f2)と同一の40mm(第1の間隔)に設定した場合について説明する。この場合、レーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91aによってY方向は集光されず、集光レンズ92bのみによってY方向に集光される。即ち、図16の(a)に示すようにシリンドリカルレンズ91aを通過したレーザー光線Lは、集光レンズ92bの焦点距離(f1)である40mm下方の集光点(P1)で集光される。
【0051】
一方、レーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91aによってX方向が集光される。即ち、シリンドリカルレンズ91aの焦点距離(f1)が40mmに設定されているので、図16の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91aによってレーザー光線L がX方向に集光される集光点P2は集光レンズ92bの中心位置となる。このようにして集光レンズ92bの中心位置で集光されたレーザー光線Lは、集光レンズ92bの下面に向けて広がり、集光レンズ92bの下面から上記集光点P1で再度集光される。集光された状態で集光レンズ92bを通過する。このように、シリンドリカルレンズ91aと集光レンズ92bの間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91aの焦点距離(f1)と同一にすると、シリンドリカルレンズ91aに入射された断面が円形のレーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91aによって矢印X方向が集光され、集光レンズ92bによって矢印Y方向が集光されるので、集光点P1において図16の(c)に拡大して示すように断面が円形の集光スポットS1が形成される。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が円形の集光スポットS1によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0052】
次に、間隔調整機構10のエアーピストンユニット16を作動して図17の(a)および17の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91aと集光レンズ92bの間隔(d1)をシリンドリカルレンズ91の焦点距離(f1)の半分の20mm(第2の間隔)に設定した場合について説明する。この場合もレーザー光線Lは、シリンドリカルレンズ91aによってY方向は集光されず、集光レンズ92bのみによってY方向に集光される。即ち、図17の(a)に示すようにシリンドリカルレンズ91aを通過したレーザー光線Lは、集光レンズ92bの焦点距離(f1)である40mm下方の集光点(P1)で集光される。
【0053】
一方、シリンドリカルレンズ91aの焦点距離(f2)が40mmに設定されているので、図17の(b)に示すようにシリンドリカルレンズ91aによってX方向に集光されるレーザー光線Lは集光される途中で集光レンズ92bに入光し、集光レンズ92bによって更に集光され集光点P3で集光された後被加工物に達するまで矢印Xで示す方向に広げられる。この結果、集光点P1の位置においては、図17の(c)に拡大して示すように断面が楕円形の集光スポットS2が形成される。この楕円形の集光スポットS2は、長軸D1が矢印Xで示す方向に向けて形成される。なお、楕円形の集光スポットS2の長軸D1と短軸D2との比は、集光レンズ92bとシリンドリカルレンズ91aとの間隔(d1)を変更することによって調整することができる。従って、集光点P1の位置に被加工物をセットすることにより、断面が楕円形の集光スポットS2によって被加工物にレーザー加工を施すことができる。
【0054】
以上のように、図15乃至図17に示す集光器7もシリンドリカルレンズ91aと集光レンズ92bの間隔(d1)の変更、即ち第1の間隔から第2の間隔への変更および第2の間隔から第1の間隔への変更は、間隔調整機構10のエアーピストンユニット16を作動することによって行われるので、その作動が迅速でその切換により加工効率を低下させることはない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に従って構成されたレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成ブロック図。
【図3】図2に示すレーザー光線照射手段を構成する集光器を備えた加工ヘッドの説明図。
【図4】図3に示す加工ヘッドの斜視図。
【図5】図3に示す加工ヘッドの集光器を構成する第1のシリンドリカルレンズユニットの斜視図。
【図6】図5に示す第1のシリンドリカルレンズユニットの構成部材を分解して示す斜視図。
【図7】図5に示す第1のシリンドリカルレンズユニットを構成する第1のシリンドリカルレンズを保持したレンズ保持部材の断面図。
【図8】図3に示す加工ヘッドの集光器を構成する第2のシリンドリカルレンズユニットの斜視図。
【図9】図1に示すレーザー加工装置に装備され第1のシリンドリカルレンズユニットと第2のシリンドリカルレンズユニットとの間隔を調整する間隔調整機構の斜視図。
【図10】図9に示す間隔調整機構に第1のシリンドリカルレンズユニットと第2のシリンドリカルレンズユニットをセットした状態を示す斜視図。
【図11】第1のシリンドリカルレンズと第2のシリンドリカルレンズによって断面が円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図12】第1のシリンドリカルレンズと第2のシリンドリカルレンズによって断面が楕円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図13】図1に示すレーザー加工装置によってレーザー加工される被加工物としてのウエーハが環状のフレームに装着された保護テープの表面に貼着された状態を示す斜視図。
【図14】図13に示す被加工物としてのウエーハに形成された直線部と曲線部とを有する加工ラインに沿って本発明によるレーザー加工方法を実施している状態を示す説明図。
【図15】図2に示すレーザー光線照射手段を構成する集光器の他の実施形態を示す斜視図。
【図16】図15に示す集光器のシリンドリカルレンズと集光レンズによって断面が円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【図17】図16に示す集光器のシリンドリカルレンズと集光レンズによって断面が楕円形の集光スポットを形成する状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0056】
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
374:加工送り量検出手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
42:可動支持基台
43:第2の割り出し送り手段
433:割り出し送り量検出手段
5:レーザー光線照射ユニット
51:ユニットホルダ
52:レーザー光線加工手段
6:加工ヘッド
61:方向変換ミラー
7:集光器
8a:第1のシリンドリカルレンズユニット
81a:第1のシリンドリカルレンズ
8b:第2のシリンドリカルレンズユニッ
81b:第2のシリンドリカルレンズ
82:レンズ保持部材
83:枠体
84:レンズ回動手段
9a:第1のシリンドリカルレンズユニット
91a:シリンドリカルレンズ
93a:レンズ保持部材
93a:枠体
9b:第2のレンズユニット
91b:集光レンズ
10:間隔調整機構
11:支持基板
12:第1の支持テーブル
13:第2の支持テーブル
16:エアーピストンユニット
17:撮像手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物にレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段を加工送り方向(X軸方向)に相対的に移動せしめる加工送り手段と、を具備するレーザー加工装置において、
該レーザー光線照射手段は、レーザー光線を発振するレーザー光線発振手段と、該レーザー光線発振手段によって発振されたレーザー光線を集光する集光器とを具備し、
該集光器は、シリンドリカルレンズからなる第1のレンズと、該第1のレンズのレーザー光線照射方向下流側に配設された第2のレンズと、該第1のレンズと該第2のレンズとの間隔を調整する間隔調整機構とを含み、
該間隔調整機構は、支持基板と、該支持基板に設けられ該第2のレンズを保持する第1の支持テーブルと、該第1の支持テーブルの上方に該支持基板に沿って上下方向に移動可能に配設され該第1のレンズを保持する第2の支持テーブルと、該第1の支持テーブルと該第2の支持テーブルとを第1の間隔と第2の間隔に作動せしめるエアーピストンユニットとからなっている、
ことを特徴とするレーザー加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−105064(P2008−105064A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290960(P2006−290960)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】