説明

レーザ送信器の照準調整装置

【課題】照準距離や天候の影響を受けることなく、一人で照準調整を容易に行うことができるレーザ送信器の照準調整装置を提供する。
【解決手段】模擬銃にレーザ送信器11及び照準眼鏡15を取り付けると共に、レーザ送信器11に撮像装置16を平行に装着する。照準調整を行う際、撮像装置16により標的20の照準校正用十字線24を撮像してモニタ装置17に表示し、画面上の照準校正用十字線にフレームグラバの中心が一致するように模擬銃の方向を合わせる。この状態を維持して照準眼鏡15の眼鏡線32が標的20の照準用十字線23に合うように調整し、模擬銃の引金を操作してレーザ送信器11からレーザ光31を照射する。レーザ光31が標的20の受光器21に的中して発光器22が発光すれば、照準眼鏡15の眼鏡線32とレーザ送信器11から照射されるレーザ光31の光軸が平行となり、照準調整を終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非可視光を発射するレーザ送信器を有する射撃装置に取り付けられた照準眼鏡の照準方向を調整するための照準調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非可視光であるレーザ光を送信するレーザ送信器を有する射撃装置に照準眼鏡を装着し、該照準眼鏡によりレーザ送信器の照準方向を合わせてレーザ光を照射するようにした射撃訓練装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
レーザ光を用いた従来の射撃訓練装置は、図4に示すようにレーザ光線を照射する射撃装置1と目標物である標的5により構成される。上記射撃装置1は、レーザ光線を照射するレーザ送信器2、このレーザ送信器2の照準を合わせる照準眼鏡3、この照準眼鏡3の照準方向を調整するための可視レーザ光を使用した照準送信器4から構成される。
【0003】
上記レーザ送信器2は、模擬銃(図示せず)に取り付けられ、該模擬銃の引金が操作された際に非可視光であるレーザ光2aを標的5に向けて発射する。照準眼鏡3は、照準方向を調整するための調整機構(図示せず)を備えている。照準送信器4は、レーザ送信器2に対して物理的に平行となるように固定して設けられ、目に損傷を与えにくいアイセーフレーザを使用して可視レーザ光を発生する。
【0004】
一方、標的5には、中央部に受光器6と発光器7が設けられ、レーザ送信器2から照射されたレーザ光2aが受光器6に的中すると発光器7が発光するようになっている。また、標的5には、受光器6の近傍に照準眼鏡3により照準される照準用十字線8及び照準送信器4により照準される照準校正用十字線9が設けられる。すなわち、照準用十字線8及び照準校正用十字線9は、受光器6の近傍において照準眼鏡3及び照準送信器4に対応する位置関係となるように設けられる。
【0005】
上記のように構成された射撃訓練装置は、射撃訓練を実施する前に照準眼鏡3が正しく照準されているかどうかの確認及び調整を次のようにして行う。
(1)射撃装置1と標的5とを所定の射撃距離例えば20m〜50mに離隔する。
(2)照準送信器4から照射される可視レーザ光4aを標的5の照準校正用十字線9に合わせる。
(3)上記照準送信器4からの可視レーザ光4aを標的5の照準校正用十字線9に合わせた状態を維持したまま、照準眼鏡3の眼鏡線3aを標的5の照準用十字線8に合わせる。照準眼鏡3の眼鏡線3aが標的5の照準用十字線8に一致しない場合には、調整機構により照準眼鏡3の照準方向を調整する。
(4)上記のように照準送信器4の可視レーザ光4aを照準校正用十字線9に合わせると共に照準眼鏡3の眼鏡線3aを照準用十字線8に合わせた状態で射撃装置1の引金を操作してレーザ送信器2からレーザ光2aを標的5に向けて照射する。
(5)このときレーザ送信器2から照射されたレーザ光2aが標的5の受光器6に的中して発光器7が発光すれば、照準眼鏡3の眼鏡線3aとレーザ送信器2から照射されるレーザ光2aの光軸が平行となっており、照準調整を終了する。もし、レーザ送信器2から照射されたレーザ光2aが標的5の受光器6に的中せず、発光器7が発光しない場合には照準眼鏡3の照準方向を再調整し、同様の手順でレーザ送信器2からレーザ光2aを照射して発光器7の発光を確認する。
【0006】
以上で照準眼鏡3の照準調整を終了する。
【0007】
【特許文献1】特開2000−18892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにして射撃装置1における照準眼鏡3の照準調整を行うことができるが、照準調整用に使用している照準送信器4は、アイセーブレーザを使用しているので、レーザ光の出力パワーを余り大きくできず、また、標的5との距離が長くなるにつれてレーザ光が広がってぼやけてしまうので視認性が悪い。また、屋外で照準調整を実施する場合には、太陽光や陽炎の影響を受けると視認性が低下する。また、射撃装置1と標的5との距離が長くなった場合、レーザ光が広がることにより、照準校正用十字線9に対してのレーザ光の中心精度も落ちてしまう。
【0009】
更に、照準送信器4から標的5の照準校正用十字線9に照射した可視レーザ光4aを操作者が確認し難い場合は、標的5側に人を配置し、照準校正用十字線9に対する可視レーザ光4aの照準状態を確認して誘導する必要があり、このため照準調整を二人で実施することになり、効率が悪いという問題がある。
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、照準距離や天候の影響を受けることなく、一人で照準調整を容易に行うことができるレーザ送信器の照準調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、非可視光を発射するレーザ送信器を有する射撃装置に取り付けられた照準眼鏡の方向を調整するための照準調整装置であって、前記レーザ送信器から発射された非可視光を受光する受光器、該受光器近傍の所定位置に設けられた照準用十字線及び照準校正用十字線からなる標的と、前記標的の照準用十字線に照準を合わせる照準眼鏡と、前記レーザ送信器と平行に固定され、前記標的の照準校正用十字線を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された標的の照準校正用十字線を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、照準距離が長い場合であっても、また、屋外で照準調整を実施する場合であっても太陽光や陽炎等の影響を受けることなく、表示手段の画面上で標的の照準校正用十字線を確実に確認することができる。このため標的側に照準状態を確認するための人を配置する必要が無く、一人で照準眼鏡の照準調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明に係る照準調整装置をレーザ光を用いた射撃訓練装置に実施した場合の概略構成例を示すブロック図である。
図1において、11はレーザ送信器で、模擬銃(図示せず)に取り付けられ、制御部12の制御に基づいて非可視光であるレーザ光31を標的20に向けて発射する。このレーザ送信器11からレーザ光31を発射することにより、弾丸の発射を模擬して射撃訓練を行う。また、模擬銃には引金(図示せず)が取り付けられ、この引金に連動して照射用スイッチ13が動作するようになっている。制御部12は、引金が操作されて照射用スイッチ13がオンした際にレーザ送信器11を駆動制御し、例えば特定情報(移動情報を含む各種情報(時刻情報、状況情報等))が含まれるレーザ光31を発射させる。また、上記模擬銃には、照準眼鏡15が取り付けられる。照準眼鏡15は、本来、銃口から発射される弾丸の発射方向を目標物に照準するものであるが、本実施形態では、レーザ送信器11から照射されるレーザ光31を標的20に照準するための模擬銃に用いる。照準眼鏡15は、照準方向を調整するための調整機構(図示せず)を備えている。
【0014】
上記のようにレーザ送信器を有する模擬銃に照準眼鏡15が取り付けられ、照射用スイッチ13の操作によってレーザ光を発射するように構成された射撃訓練装置は、例えば特開2002−81897号公報に詳細に示されている。
また、レーザ送信器11には、例えばCCD(Charge Coupled Device)を用いたズーム可能な撮像装置16が装着される。撮像装置16は、レーザ送信器11に対して物理的に平行となるように固定して設けられ、詳細を後述する標的20の照準校正用十字線24を撮像してモニタ装置17へ出力する。モニタ装置17は、例えばPC(パーソナルコンピュータ)を用いて構成される。
【0015】
一方、標的20は、中央部に受光器21と発光器22が隣接して設けられ、レーザ送信器11から照射されたレーザ光31が受光器21に的中すると発光器22が発光するようになっている。また、標的20には、受光器21の近傍に照準眼鏡15により照準される照準用十字線23及び撮像装置16により撮像される照準校正用十字線24が設けられる。この場合、照準用十字線23及び照準校正用十字線24は、受光器21の近傍において照準眼鏡15及び撮像装置16に対応する位置関係となるように設けられる。すなわち、撮像装置16のカメラ線33によって照準校正用十字線24が撮像されている状態で、照準眼鏡15の眼鏡線32によって照準用十字線23が照準された際にカメラ線33に対して眼鏡線32が平行となり、且つレーザ送信器11から照射されるレーザ光31が受光器21に的中するように、受光器21、照準用十字線23、照準校正用十字線24の位置関係が設定される。
【0016】
図2は、モニタ装置17に表示される撮像装置16の撮像画像の表示例を示したものである。モニタ装置17の画面40には、撮像装置16のフレームグラバ41が表示されると共に撮像装置16により撮像された照準校正用十字線24’が表示される。フレームグラバ41は十字形状で、画面40上に固定した状態で表示される。撮像装置16により撮像された照準校正用十字線24’は、撮像装置16の方向調整に伴って画面40内を移動する。照準調整に際しては、モニタ装置17の画面40上において、照準校正用十字線24’にフレームグラバ41の中心が一致するように模擬銃の方向を合わせる。
【0017】
次に上記レーザ送信器11及び撮像装置16部分の具体的な構成例について図3を参照して説明する。図3はレーザ送信器11及び撮像装置16部分の構成を示す分解斜視図である。レーザ送信器11は図示しないが模擬銃上に装着されるもので、該レーザ送信器11及び模擬銃によって射撃装置を構成している。
【0018】
上記レーザ送信器11は、筐体111の内部にレーザ光を発生するレーザダイオードモジュール(図示せず)が設けられ、筐体111の先端側に光学レンズ112が設けられる。この光学レンズ112は、上記レーザダイオードモジュールで発生したレーザ光を収束し、外部の標的に向けて照射する。
【0019】
上記レーザ送信器11の筐体111の両側下部には、銃に設けられた取付基台(図示せず)に取り付けるための例えば4つの取付基部113を備え、この取付基部113にそれぞれ取付穴(ネジ穴)114が設けられている。
また、レーザ送信器11の筐体111には、例えば一方の側面の下部に撮像装置16を取り付けるための2つの取付基台115a、115bが設けられる。この取付基台115a、115bには、それぞれガイドピン116a、116bが側方に突出して設けられると共に、ガイドピン116a、116bに隣接してネジ穴117a、117bが設けられる。
【0020】
一方、撮像装置16は、平面状の取付基板160にネジ161a〜161dにより固定されている。上記取付基板160には、上記ガイドピン116a、116bに対向する位置にガイドピン挿入穴162a、162bが設けられている。撮像装置16は、レーザ送信器11の筐体111に取り付ける際に取付基台115a、115bに設けられているガイドピン116a、116bを取付基板160のガイドピン挿入穴162a、162bに挿入して位置決めを行い、その後、取付基台115a、115bに設けたネジ穴117a、117bに取付ネジ163a、163bを螺着して固定する。これにより撮像装置16は、レーザ送信器11に対して物理的に平行となるように固定して設けられる。また、撮像装置16は、前端側に集光用レンズ164を備えている。
【0021】
上記のように構成された射撃訓練装置は、射撃訓練を実施する前に照準眼鏡15が正しく照準されているかどうかの確認及び調整を次のようにして行う。
(1)射撃装置と標的20とを所定の射撃距離例えば20m〜50mに離隔する。
(2)操作者は、撮像装置16により標的20の照準校正用十字線24を撮像してモニタ装置17の画面40上に表示し、図2に示すように照準校正用十字線24’にフレームグラバ41の中心が一致するように模擬銃の方向を合わせる。
(3)上記照準校正用十字線24’にフレームグラバ41の中心を一致させた状態を維持したまま、照準眼鏡15の眼鏡線32を標的20の照準用十字線23に合わせる。照準眼鏡15の眼鏡線32が標的20の照準用十字線23に一致しない場合には、調整機構により照準眼鏡15の照準方向を調整する。
(4)上記のようにモニタ装置17の画面40上において、照準校正用十字線24’にフレームグラバ41の中心を合わせると共に照準眼鏡15の眼鏡線32を照準用十字線23に合わせた状態で模擬銃の引金を操作し、レーザ送信器11からレーザ光31を標的20に向けて照射する。
(5)このときレーザ送信器11から照射されたレーザ光31が標的20の受光器21に的中して発光器22が発光すれば、照準眼鏡15の眼鏡線32とレーザ送信器11から照射されるレーザ光31の光軸が平行となっており、照準調整を終了する。この場合、レーザ送信器11から照射されるレーザ光31の光軸は、撮像装置16のカメラ線33と平行になるように予め設定されている。もし、レーザ送信器11から照射されたレーザ光31が標的20の受光器21に的中せず、発光器22が発光しない場合には照準眼鏡15の照準方向を調整機構により再調整し、上記手順でレーザ送信器11から再度レーザ光31を受光器21に照射して発光器22の発光を確認する。
【0022】
以上で照準眼鏡15の照準調整を終了する。
上記のように照準校正用の撮像装置16をレーザ送信器11に取り付けて標的20の照準校正用十字線24を撮像してモニタ装置17の画面40上に表示することにより、照準距離が長い場合であっても、また、屋外で照準調整を実施する場合であっても太陽光や陽炎等の影響を受けることなく、モニタ装置17の画面40上で標的20の照準校正用十字線24を確実に確認することができる。このため標的20側に照準状態を確認するための人を配置する必要が無く、一人で照準眼鏡15の照準調整を容易に行うことができる。
【0023】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る照準調整装置をレーザ光による射撃訓練装置に実施した場合の概略構成図である。
【図2】同実施形態において、撮像装置により撮像された画像のモニタ表示例を示す図である。
【図3】同実施形態におけるレーザ送信器及び撮像装置部分の具体的な構成例を示す分解斜視図である。
【図4】従来の射撃訓練装置における照準調整方法を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0025】
11…レーザ送信器、12…制御部、13…照射用スイッチ、15…照準眼鏡、16…撮像装置、17…モニタ装置、20…標的、21…受光器、22…発光器、23…照準用十字線、24…照準校正用十字線、24’…画面上に表示された照準校正用十字線、31…レーザ光、32…眼鏡線、33…カメラ線、40…モニタ装置の画面、41…フレームグラバ、111…筐体、112…光学レンズ、113…取付基部、114…取付穴、115a.115b…取付基台、116a、116b…ガイドピン、117a、117b…ネジ穴、160…取付基板、161a〜161d…ネジ、162a、162b…ガイドピン挿入穴、163a、163b…取付ネジ、164…集光用レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非可視光を発射するレーザ送信器を有する射撃装置に取り付けられた照準眼鏡の方向を調整するための照準調整装置であって、
前記レーザ送信器から発射された非可視光を受光する受光器、該受光器近傍の所定位置に設けられた照準用十字線及び照準校正用十字線からなる標的と、
前記標的の照準用十字線に照準を合わせる照準眼鏡と、
前記レーザ送信器と平行に固定され、前記標的の照準校正用十字線を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された標的の照準校正用十字線を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とするレーザ送信器の照準調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−117090(P2010−117090A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291318(P2008−291318)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】