説明

ロータリーカッタ装置及び印刷装置

【課題】被切断物を安定的に切断する。
【解決手段】筐体612と、回転軸心Oのまわりに所定の回転方向に沿って回転可能となるように筐体612に支持され、第1刃先部621bを含む回転刃621を設けた回転体620と、筐体612に支持され、第2刃先部631bを含む固定刃631を設けた保持体630と、を有し、第1刃先部621bが回転方向の一方側から第2刃先部631bに接触し互いに擦り合わせることにより、第2刃先部631bの端部近傍を通る導入経路に位置するラベル用テープ3Aの切断を実行するロータリーカッタ装置610であって、回転軸650が、ラベル用テープ3Aが導入経路において切断位置から回転体620の内側へ搬送されてきたとき、当該ラベル用テープ3Aに対し回転方向の一方側から接触して回転方向の他方側へガイドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被切断物を切断するロータリーカッタ装置及びこれを用いた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送される被切断物に対し、搬送を停止させることなく切断を行える、ロータリーカッタ装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術のロータリーカッタ装置では、円筒形の胴部の外周に螺旋状の刃物が設けられ、その刃物の各部を順次被切断物に切り込ませることで、被切断物に対し直線的に切断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭60−1997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、被切断物が前記導入経路において切断位置から前記回転体の内側へ搬送されてきたとき、当該被切断物をガイドする手段が特に設けられていない。この結果、導入された被切断物が誤って回転刃に向かって進入し、回転刃の刃先に衝突したり干渉するおそれがある。そのような場合、安定的に被切断物の切断を行うのが困難となる。
【0005】
本発明の目的は、被切断物を安定的に切断できるロータリーカッタ装置及び印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、筐体と、回転軸心のまわりに所定の回転方向に沿って回転可能となるように前記筐体に支持され、第1刃先部を含む回転刃を設けた回転体と、前記筐体に支持され、第2刃先部を含む固定刃を設けた保持体と、を有し、前記第1刃先部が前記回転方向の一方側から前記第2刃先部に接触し互いに擦り合わせることにより、前記第2刃先部の端部近傍を通る導入経路に位置する被切断物の切断を実行するロータリーカッタ装置であって、前記被切断物が前記導入経路において切断位置から前記回転体の内側へ搬送されてきたとき、当該被切断物に対し前記回転方向の前記一方側から接触して前記回転方向の他方側へガイドするための案内手段を有することを特徴とする。
【0007】
本願発明のロータリーカッタ装置は、回転刃を備えた回転体と、固定刃を備えた保持体とを有する。回転体が所定の回転方向に沿って回転することにより、回転刃の第1刃先部が上記回転方向に沿って一方側から第2刃先部に近接し、さらには第2刃先部と互いに擦り合わせる。これにより、第2刃先部の端部近傍を通る導入経路へと搬送されて導入された被切断物を、第1刃先部と第2刃先部との協働によって切断することができる。
【0008】
そして、本願発明においては、案内手段が設けられている。上記のように、回転刃の第1刃先部は回転方向に沿って一方側から他方側へ向かうように回転し、当該一方側から第2刃先部へ接触する。これに対応して、案内手段は、導入経路へ搬送されてきた被切断物に対し上記一方側から接触し、その反対側の他方側へとガイドする。すなわち、導入された被切断物が誤って回転刃の第1刃先部側に向かって進入し、第2刃先部に近接する前の第1刃先部に衝突したり干渉するのを防止することができる。この結果、第1刃先部と第2刃先部との擦り合わせ時に、安定的に被切断物の切断を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被切断物を安定的に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるロータリーカッタ装置を備えたラベル作成装置の概略構成を表す斜視図である。
【図2】図1に示したラベル作成装置の正面図である。
【図3】図1に示したラベル作成装置の側面図及び断面図である。
【図4】印字ラベルの外観の一例を表す上面図及び下面図である。
【図5】図4中V‐V′断面による横断面図である。
【図6】ロータリーカッタ装置を正面側斜め上方から見た斜視図である。
【図7】ロータリーカッタ装置を背面側斜め上方から見た斜視図、及び、ロータリーカッタ装置を正面側斜め上方から見た斜視図である。
【図8】ロータリーカッタ装置の平面図及び背面図である。
【図9】水平な保持体に対して回転体の回転軸心を斜め配置した本発明の一実施形態の要部構成を表す背面図及び側面図、水平な回転体の回転軸心に対して保持体を斜め配置した変形例を表す背面図及び側面図である。
【図10】回転体と保持体との間へのラベル用テープの導入態様を表す、ロータリーカッタ装置の要部斜視図、及び、図10(a)中A方向から見た概念的側面図である。
【図11】回転体の第1切断刃の第1刃先部と保持体の第2切断刃の第2刃先部との擦り合わせによるラベル用テープの切断の推移を表す、説明図である。
【図12】回転体の回転の進行とともに実行されるラベル用テープのガイド挙動を表す概念的側面図である。
【図13】ラベル用テープのガイドのために別途ガイド部材を設けた変形例を表す、ロータリーカッタ装置の平面図、背面図、側面図である。
【図14】回転体の回転の進行とともに実行されるラベル用テープのガイド挙動の一例を表す概念的側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明のロータリーカッタ装置を、印刷装置としてのラベル作成装置に適用した場合の実施形態である。なお、以下の説明において、上下方向、前後方向、左右方向は、各図中に適宜示す矢印方向に対応している。
【0012】
図1に示すように、ラベル作成装置500は、ラベル作成装置本体1と、ロータリーカッタ装置610と、を備えている。
【0013】
<ラベル作成装置本体の構成>
まず、ラベル作成装置本体1の構成を、図1、図2、図3(a)、及び図3(b)を用いて説明する。ラベル作成装置本体1は、筐体2と、透明樹脂製の上カバー5と、筐体2の前側に配置される電源ボタン7等から構成されている。
【0014】
図3(b)に示すように、ラベル作成装置本体1に備えられたテープホルダ収納部4には、テープホルダ3が収納配置されている。またテープホルダ収納部4の上側を覆うように、前述の上カバー5が後側上端縁部に開閉自在に取り付けられている。
【0015】
テープホルダ3には、所定幅のラベル用テープ3A(被印刷物、被切断物)が回転可能に巻回されている。すなわち、上記ラベル用テープ3Aは、所定の外周径を有する巻芯3Bにロール状に巻回され、テープロールを構成している。上記巻芯3Bの内周側には、軸方向に配置されるように略筒状形状のホルダ軸部材40が設けられる。
【0016】
ラベル用テープ3Aは、この例では3層構造となっており(部分拡大図参照)、ロールの外側に巻かれる側(図3(b)中上側)よりその反対側(図3(b)中下側)へ向かって、剥離紙3a、粘着層3b、自己発色性を有する長尺状の感熱紙(いわゆる、サーマルペーパー)3cの順序で積層され構成されている。感熱紙3cの裏側(図3(b)中上側)に、上記粘着層3bによって上記剥離紙3aが接着されている。この剥離紙3aは、最終的に完成した印字ラベルTが所定の物品等に貼り付けられる際に、これを剥がすことで粘着層3bにより当該物品等に接着できるようにしたものである。
【0017】
また、上記ラベル用テープ3Aの上記テープロールからの繰り出し位置の搬送方向下流側には、所望の印字を行うサーマルヘッド31(印字手段)が設けられ、このサーマルヘッド31と対向する位置にはプラテンローラ26(搬送手段)が設けられている。プラテンローラ26は、巻芯3Bに巻回された上記ラベル用テープ3Aを繰り出し、搬出口Eに至る上記搬送経路を搬送する。
【0018】
サーマルヘッド31は、その上下動操作用のレバー(図示省略)を上方に回動させることによりサーマルヘッド31が下方に移動されて上記プラテンローラ26から離間した状態となり、レバーを下方に回動させることにより上方に移動されてラベル用テープ3Aをプラテンローラ26に押圧付勢して印字可能な状態になる。そして、プラテンローラ26をパルスモータ(あるいはステッピングモータ)等により回転駆動しつつ、サーマルヘッド31を駆動制御することによって、ラベル用テープ3Aを搬送しながらラベル用テープ3Aに備えられた印字領域(図示せず)に対して所望の印字が行われる。そして、印字済みのラベル用テープ3Aは、搬出口Eから排出されてから後述するロータリーカッタ装置610により所望の長さに切断され、これによって印字ラベルT(後述する図4参照)が生成される。なお、図1、図3(a)、及び図3(b)中の破線が、搬送されるラベル用テープ3Aの搬送経路を示している。
【0019】
なお、ラベル作成装置本体1の前方側(搬出口Eから搬送方向下流側)には、ガイド用載置台700が設置されている。このガイド用載置台700からさらに搬送方向下流側に、上記ロータリーカッタ装置610が配置されている。ガイド用載置台700は、搬出口Eから排出されてきた印字済のラベル用テープ3Aを、ロータリーカッタ装置610の第1平刃621(後述)と第2平刃631(後述)との間に導く。
【0020】
ロータリーカッタ装置610によりラベル用テープ3Aの切断が完了し形成された印字ラベルTを、図4(a)、図4(b)、及び図5に示す。図示のように、印字ラベルTは、前述の3層構造となっており、表面側(図5中上側)よりその反対側(図5中下側)へ向かって、感熱紙3c、粘着層3b、剥離紙3aの順で積層している。そして、前述のように感熱紙3cの表面に印字R(この例では「AA−AA」の文字)が印刷されている。
【0021】
<ロータリーカッタ装置の概略構成>
次に、本実施形態の要部である上記ロータリーカッタ装置について、図6〜図10により説明する。図6、図7、図8、図9、及び図10に示すように、ロータリーカッタ装置610は、筐体612と、回転体620と、保持体630と、を備えている。そして、ロータリーカッタ装置610は、上記サーマルヘッド31により印字形成された状態のラベル用テープ3Aに対し、上記第1平刃621と、第2平刃631との協働によって直線的な切断を行う。筐体612は、一方側(この例では右側)に第1壁面613を有し、他方側(この例では左側)に第2壁面614を有している。また、筐体612は、第1壁面613と第2壁面614との間を接続する接続部611を備える。
【0022】
なお、上記図1及び図2に示したように、ロータリーカッタ装置610は、筐体612の第1壁面613及び第2壁面614の面方向が鉛直方向からやや左側に傾斜した姿勢で配置されるが、説明の便宜及び図示の見やすさのために、図7(a)、図7(b)、図8(a)、図8(b)、図10(a)、図10(b)においては、筐体612を鉛直方向に戻した姿勢で図示を行っている。
【0023】
<回転体の構成>
回転体620は、一方側の第1ブラケット622と、他方側の第2ブラケット623と、第1ブラケット622と第2ブラケット623との間を接続するようにかつ回転軸心Oまわりに回転可能に筐体612に設けられた回転軸650と、回転軸650に設けられ、回転刃としての第1平刃621を取り付けた平刃取付部624と、を備えている。なお、回転軸650及び平刃取付部524が各請求項記載の回転側支持部を構成している。
【0024】
第1平刃621は、略板状の第1基部621aと、この基部621aの縁部に直線状に延びる第1刃先部621b(図10参照)とを備える。このとき、第1刃先部621bは、図7(a)、図8(b)等に示すように、上記回転軸心Oと平行となるように、上記平刃取付部624及び回転軸650によって支持されている。回転体620が回転すると、第1刃先部621bは回転軸心Oを中心とした円筒形の回転軌跡(第1回転軌跡。図示省略)を描く。
【0025】
<保持体の構成>
保持体30は、固定刃としての第2平刃631を備えた板状の保持部632を有している。また、保持部632は左右両端部に延出部634,634を備えており、この延出部634,634を介し、揺動支持機構635(揺動支持手段。図7(b)参照)によって筐体612に対し揺動可能に支持されている。
【0026】
揺動支持機構635は、図7(a)及び図7(b)に示すように、筐体612の接続部611に立設された左右一対のヒンジアーム641,641と、これらヒンジアーム641,641に回動可能に挿通され、上記保持部632の上記延出部634が両端に固定された支持軸636と、支持軸636のまわりに配置された、鶴巻状のコイルバネ637と、を備えている。保持部632は、延出部634,634に固定された支持軸636がヒンジアーム641に回動可能に支持されることで、保持部632は、筐体612に対し前後に揺動可能となる。このとき、図7(a)に示すように、コイルバネ637の一端(後端)が上記接続部611に固定される一方、コイルバネ637の他端(上端)は上記保持部632の後部に当接しており、この結果コイルバネ637は、保持部632を前方(言い換えれば回転体620へ向かう方向)へ向かって付勢する。この結果、保持部632は、回転体620全体の回転軌跡(第2回転軌跡。図示せず)に対して遠近可能となるように、筐体612に対し揺動可能に支持されることとなる。なお、延出部634を備えた保持部632と、ヒンジアーム641と、支持軸636と、コイルバネ637とが、各請求項記載の固定側保持部を構成する。
【0027】
第2平刃631は、略板状の第2基部631aと、この第2基部631aの縁部において直線状に延びる第2刃先部631bとを備えている。第2平刃631は、第2基部631aが取り付けネジ633で固定されることにより保持部632に保持される。このとき、保持部632は上記のように揺動可能に配置されるが、どの揺動状態においても、第2平刃631の第2刃先部631bが回転軸心Oに対し非平行(ねじれの位置)となるように、保持部632は第2平刃631を保持している。詳細には、上記保持部632のどの揺動状態においても、第2平刃631の第2基部631aの面方向(すなわち第2平刃631の取付面方向)は、上記回転軸心Oと所定間隔を介し平行となる(図8(a)、図8(b)参照)。また、上記保持部632のどの揺動状態においても、第2平刃631は、正面から(言い換えれば第2基部631aの面方向と直交する側面方向から)見たときに、図8(b)に示すように、第2刃先部631bを含む直線と上記回転軸心Oとが、所定の角度αを持って配設される。回転軸心Oと第1刃先部621bとは常に平行であることから、第1刃先部621bと第2刃先部631bとが接触したときの傾斜角度(いわゆるシャー角)がこの角度αと一致する。特に、第2刃先部631bは、切断動作時にラベル用テープ3Aの搬送面内において直線状に延びるように、保持される。
【0028】
上記の結果として、上記回転体620が回転したときに第1刃先部621bの描く円筒形の第1回転軌跡が、第2刃先部631bに対して接触するように、上記第1平刃621は上記平刃取付部624に支持され、上記第2平刃631は上記保持部632に保持されることとなる。これにより、回転軸心Oを中心とする円筒形の上記第1回転軌跡の外縁線に対し、第2平刃631の第2刃先部631bが斜交するような位置関係となる。
【0029】
なお、本実施形態では、図9(a)に示すように、正面側から見て、ラベル用テープ3Aの搬送経路が(言い換えれば第2刃先部631bが)水平となり、かつ回転体620の回転軸心Oが上記水平方向に対して傾斜するように、回転体620及び保持体630を配置したが、これに限られない。すなわち、図9(b)に示すように、正面側から見て、回転体620の回転軸心Oが水平となり、かつラベル用テープ3Aの搬送経路が(言い換えれば第2刃先部631bが)上記水平方向に対して傾斜するように、回転体620及び保持体630を配置してもよい。
【0030】
<駆動力の伝達>
一方、筐体612の第2壁面614側の下方には、回転体620の駆動手段として機能するモータ638が設けられている。これに対応して、第2壁面614の外面には、第2壁面614を貫通したモータ638の駆動軸651(図7(b)参照)と第2壁面614を貫通した回転体620の回転軸650との間を作動連結可能な、ギア列からなる駆動伝達機構639が設けられている。モータ638は、第1平刃621の第1刃先部621bが上方から上記第2平刃631の第2刃先部631bに近接してゆく方向に、駆動伝達機構639を介して回転体620を回転する(図10(b)参照)。これにより、回転体620と保持体630との間に挿入されたラベル用テープ3Aが、(搬送停止することなく)走行状態で切断される。
【0031】
<切断動作>
上記ロータリーカッタ装置610の動作を図11により説明する。前述したように、本実施形態では、上記回転体620が回転したときに第1刃先部621bの描く、回転軸心Oを中心とする円筒形の回転軌跡(第1回転軌跡)の外縁線に対し、第2平刃631の第2刃先部631bが斜交する位置関係となる。この結果、当該回転軌跡を回転してくる第1刃先部621bは、その直線形状のうちの一端部(この例では左端部)がまっ先に第2刃先部631bへ近接した後、回転の進行に伴い、第2刃先部631bへ近接する部位が左端部から右方へ向かって徐々に直線的に移行していく。図11(a)〜図11(e)は、このときの挙動を順次表している。
【0032】
すなわち、図11(a)は、上記第1刃先部621の左端部に近いR1−R1断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。なお、説明の便宜のために、この状態となる回転体620の姿勢(回転角度)を回転位相「0°」とする。
【0033】
その後、回転体620の回転が進行した図11(b)では、上記第1刃先部621のR1−R1断面よりやや右側にずれたR2−R2断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。このときの回転体620の上記回転位相は例えば「4°」である。
【0034】
その後、さらに回転体620の回転が進行した図11(c)では、上記第1刃先部621のR2−R2断面よりやや右側にずれた、左右方向中央部のMID−MID断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。このときの回転体620の上記回転位相は例えば「8°」である。
【0035】
その後、さらに回転体620の回転が進行した図11(d)では、上記第1刃先部621のMID−MID断面よりやや右側にずれたL2−L2断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。このときの回転体620の上記回転位相は例えば「12°」である。
【0036】
その後、さらに回転体620の回転が進行した図11(e)では、上記第1刃先部621のL2−L2断面よりやや右側にずれた、右端部近くのL1−L1断面で表される部分が、第2刃先部631bへ接触し摺り合わされている状態である(白矢印参照)。このときの回転体620の上記回転位相は例えば「16°」である。
【0037】
以上のようにして順次移行する第1刃先部621bと第2刃先部631bとの接触部位にラベル用テープ3Aを導入することにより、上記左端部においてラベル用テープ3Aへの切り込みを開始した後、徐々に上記右方へと直線的にラベル用テープ3Aを切り進めることができる。そしてこのとき、前述の角度αがシャー角として機能するので、比較的小さいせん断力で円滑に切断を行うことができる。
【0038】
すなわち、上記構成のロータリーカッタ装置610を用いることで、円筒形の胴部の外周に設けた螺旋状の刃物の各部を順次被切断物に切り込ませ直線的に切断を行う通常のロータリーカッタと同様の切断態様を、2つの平刃621,631を用いた構成により容易に実現することができる。これにより、上記螺旋状の刃物を用いる構造と異なり、構造を簡素化できるとともに製造工程を簡素化でき、さらに製造コストを低減することができる。このとき特に、回転体620の回転軌跡が第2刃先部631bに対し接触する部位にラベル用テープ3Aを導入するので、小さいせん断力で確実に円滑な切断を行うことができる。
【0039】
ここで、上記したように第1刃先部621bのうち第2刃先部631bへ接触する部位を左端部から右方へ向かって直線的に移行させる際、回転体620の第1平刃621の第1刃先部621bが回転軸心Oと平行となっていることから、回転と共に第1刃先部621bと第2刃先部631bとの距離が若干変動する。すなわち、回転体620全体は上記第1回転軌跡よりも若干大きな第2回転軌跡を有する。そこで本実施形態では特に、揺動支持機構635を設けて保持部632を揺動可能に支持する。これにより上記距離の変動を吸収し、上記左端部から右端部への移行の間において第1刃先部621bと第2刃先部631bとを密着させ、摺り合わせることができる。これにより、さらに円滑に切断を行うことができる。
【0040】
<ラベル用テープ導入時のガイド>
次に、本実施形態の要部である、ラベル用テープ3A導入時のガイドについて、図12を用いて説明する。上記したように、本実施形態では、回転体620が所定の回転方向に沿って回転することにより、第1平刃621の第1刃先部621bが上記回転方向に沿って一方側から(この例では上方から)第2刃先部631bに近接し、さらには第2刃先部631bと接触して互いに擦り合わせる。これにより、第2刃先部631bの端部近傍を通る搬送経路へと搬送されて導入されたラベル用テープ3Aを、第1刃先部621bと第2刃先部631bとの協働によって切断する。
【0041】
そして、本実施形態では、ラベル用テープ3Aが搬送経路を搬送され、上記切断位置からさらに回転体620の内側へ搬送されたとき、回転体620の回転軸部材としての回転軸650が、当該ラベル用テープ3Aに対し回転方向の上記一方側(この例では上側)から接触して回転方向の他方側(この例では下側)へとラベル用テープ3Aをガイドする(案内手段として機能する)。
【0042】
すなわち、本実施形態では、図12に示すように、回転軸650の外周面(この例では特に下面)が第2平刃631の第2刃先部631bとほぼ同じ高さ位置となるように、当該回転軸650の外径の大きさが設定されている。また、回転軸650は、第1刃先部621bの回転軌跡(2点鎖線参照)の内側に配置されている。図12(a)〜図12(f)では、この回転軸650によるラベル用テープ3Aのガイド挙動を、前述の回転角度に沿って順を追って示している(なお、前述の回転位相「0°」を基準にした回転位相の値を示す)。
【0043】
まず、図12(a)は、回転体620の上記回転位相が「0°」の状態であり、後述のようにして既に正しくガイドされ安定した切断準備完了状態にあるラベル用テープ3Aを挟むように、第1刃先部621bが上側から第2刃先部631bに接触し互いに擦り合わせる。これによりラベル用テープ3Aの切断が開始される。このようにして回転位相「0°」で切断を開始した後、前述したように回転位相「16°」程度までの間、第1刃先部621bと第2刃先部631bとの擦り合わせが実行され、ラベル用テープ3Aに対し直線的な切断が実行される。なお、上記の例では、回転位相「0°」が各請求項記載の第1回転位置に相当し、回転位相「16°」が第2回転位置に相当している。
【0044】
図12(b)は、上記の状態から回転体620の回転がさらに少し進んだ回転位相「60°」の状態である。上記の切断後、当該切断位置よりも搬送方向前方のラベル用テープ3Aは、第1刃先部621bの背面によって押されてさらに前方へ搬送されるとともに、当該切断位置よりも後方にあるラベル用テープ3Aも前方へ搬送され、第1刃先部621bの回転軌跡の内側に導入されている。そして当該ラベル用テープ3Aの先端は、上記回転軌跡の内側において、回転軸650に向かって略水平に突出している。
【0045】
図12(c)は、回転体620の回転がさらに少し進んだ回転位相「120°」の状態である。上記の突出した状態から進んだラベル用テープ3Aの先端は回転軸650に到達して接触した後、当該回転軸650によってそれより上方へと行かないように(この例ではほぼ水平か幾分下方へと)ガイドを開始されている。すなわち、本実施形態では、ラベル用テープ3Aのガイドが行われるのは、上記第1回転位置から第2回転位置までの回転範囲以外の回転位置である。
【0046】
図12(d)は、回転体620の回転がさらに少し進んだ回転位相「180°」の状態である。上記の状態からラベル用テープ3Aはさらに回転軸650にガイドされつつ、前方へと搬送されている。
【0047】
図12(e)は、回転体620の回転がさらに少し進んだ回転位相「270°」の状態である。上記の状態からラベル用テープ3Aはさらに回転軸650にガイドされつつ前方へ進み、ラベル用テープ3Aの先端部は、回転体620の回転軌跡の外へと出た状態である。これにより、ラベル用テープ3Aは、第2刃先部631bに下面が略接触すると共に上面が回転軸650の下部に略接触し、搬送経路において安定的に保持された、切断準備完了状態となる。なお、この状態の後、さらに回転体620の回転が進むと、上記図12(a)に示した切断開始状態となり、同様の手順が繰り返される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態においては、回転軸650がラベル用テープ3Aをガイドすることにより、導入されたラベル用テープ3Aが誤って回転体620の第1刃先部621b側に向かって進入し、第2刃先部631bに近接する前の第1刃先部621bに衝突したり干渉するのを防止することができる。この結果、第1刃先部621bと第2刃先部631bとの擦り合わせ時に、安定的にラベル用テープ3Aの切断を行うことができる(図12(a)参照)。
【0049】
また、本実施形態では特に、回転体620の回転軸650を流用してガイドを行うことで、新たな部材を追加することなく、被切断物をガイドすることができる。
【0050】
なお、上記のように回転軸650を流用してガイドを行うのに限られず、案内手段として、回転軸650とは別の部材を新たに設けてもよい。そのような変形例を図13及び図14により説明する。
【0051】
図13に示すように、この変形例では、回転体620の第1平刃621の裏面(回転方向他方側)に、刃先部621bと反対側すなわち回転軸心O側に向けて突出するように、横断面略への字型のガイド部材900が設けられている。ガイド部材900は、上記同様、ラベル用テープ3Aが搬送経路を搬送され、上記切断位置からさらに回転体620の内側へ搬送されたとき、当該ラベル用テープ3Aに対し回転方向の上記一方側(この例では上側)から接触して回転方向の他方側(この例では下側)へとラベル用テープ3Aをガイドする。またガイド部材900は、第1刃先部621bの回転軌跡(2点鎖線参照)の内側に配置されている。なお、本変形例では、当該ガイド部材900を設置するために、回転軸650の軸方向(つまり左右方向)中央部分は除かれている。
【0052】
図14(a)〜図14(e)では、上記図12(a)〜図12(e)と同様、ガイド部材900によるラベル用テープ3Aのガイド挙動を、前述の回転角度に沿って順を追って示している。まず、図14(a)は、回転体620の上記回転位相が「0°」の状態であり、上記同様、第1刃先部621bが上側から第2刃先部631bに接触し互いに擦り合わせ、ラベル用テープ3Aの切断が開始される。
【0053】
図14(b)は、上記の状態から回転体620の回転がさらに少し進んだ回転位相「60°」の状態である。上記の切断後、当該切断位置よりも搬送方向前方のラベル用テープ3Aは、第1刃先部621bの背面によって押されてさらに前方へ搬送されるとともに、当該切断位置よりも後方にあるラベル用テープ3Aも前方へ搬送され、第1刃先部621bの回転軌跡の内側に導入されている。そして当該ラベル用テープ3Aの先端は、上記回転軌跡の内側において、ガイド部材900に向かって略水平に突出している。
【0054】
図14(c)は、回転体620の回転がさらに少し進んだ回転位相「120°」の状態である。上記の突出した状態から進んだラベル用テープ3Aの先端はガイド部材900に到達して接触した後、当該ガイド部材900によってそれより上方へと行かないように(この例では幾分下方へと)ガイドを開始されている。
【0055】
図14(d)は、回転体620の回転がさらに少し進んだ回転位相「180°」の状態である。上記の状態からラベル用テープ3Aはさらにガイド部材900にガイドされつつ、前方へと搬送されている。
【0056】
図14(e)は、回転体620の回転がさらに少し進んだ回転位相「270°」の状態である。上記の状態からラベル用テープ3Aはさらにガイド部材900にガイドされつつ前方へ進み、ラベル用テープ3Aの先端部は、回転体620の回転軌跡の外へと出た状態である。これにより、ラベル用テープ3Aは、第2刃先部631bに下面が略接触すると共に上面がガイド部材900の下方に位置し、搬送経路において安定的に保持された、切断準備完了状態となる。なお、この状態の後、さらに回転体620の回転が進むと、上記図14(a)に示した切断開始状態となり、同様の手順が繰り返される。
【0057】
本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。特に、回転体620にガイド部材900を設けてガイドを行うことで、ラベル用テープ3Aに対し、回転運動を利用した効果的なガイドを行うことができる。例えば、ガイドを開始する回転位置やガイドを終了する回転位置等を自在に設定し、きめ細かくガイド態様を調整することも可能である。
【0058】
なお、以上においては、第2平刃631の第2基部631aの面方向を回転軸心Oと所定間隔を介し平行とするとともに、第2基部631aの面方向と直交する側面方向から見たとき第2刃先部631bを含む直線と上記回転軸心Oとが所定の角度αを持って配設されたロータリーカッタ装置610に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、回転体が、回転軸心と交わる平面上において回転軸心から離間した位置に配置され、一方側の端部による回転軌跡の径方向寸法が他方側の端部による回転軌跡の径方向寸法よりも大きくなるように回転軸心に対して傾斜して配置された、平刃取付部と、上記平刃取付部の他方側に対応した第1平刃の他方側の端部が、平刃取付部の一方側に対応した第1平刃の一方側の端部よりも、周方向において大きく突出するように設けられることで、第1平刃の一方側の端部と他方側の端部とが同一径の回転軌跡となるように、当該第1平刃を平刃取付部に対して支持する平刃支持部と、を有し、保持体が、上記回転軸心と所定間隔を介し略平行となるように第2平刃を保持可能な保持部を備えるような、ロータリーカッタ装置に適用してもよい。
【0059】
上記構成のロータリーカッタ装置においても、第1平刃の一方側の端部と、第1平刃の他方側の端部とが、互いに同一径の回転軌跡となる結果、回転体の第1平刃は一方側から他方側までの全域にわたって回転軸心から概ね同一距離を保って回転する。したがって、回転軸心から当該同一となる所定距離だけ離れた位置に被切断物を導入することで、第1平刃の一方側から他方側までの全域によって被切断物に対しほぼ直線的な切断を行うことができる。そして、このようなロータリーカッタ装置において、上記ガイド部材900その他の案内手段を設けることにより、上記同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、以上のような平刃を用いたロータリーカッタ装置にも限られず、円筒形の胴部の外周に設けた螺旋状の刃物の各部を順次被切断物に切り込ませ直線的に切断を行う通常のロータリーカッタにおいて、上記ガイド部材900その他の案内手段を設けてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0061】
なお、以上においては、ラベル用テープ3Aに対し印字を行って切断し印字ラベルTを作成したが、これに限られない。すなわち、被切断物(被印刷物)としての被印字テープに印字を行った後に基材テープと貼り合わせ、その貼り合わせたテープを切断して印字ラベルTを作成する方式(いわゆるラミネートタイプ)に本発明を適用してもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0062】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0063】
なお、その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 ラベル作成装置本体
3A ラベル用テープ(被印刷物、被切断物)
500 ラベル作成装置(印刷装置)
610 ロータリーカッタ装置
612 筐体
620 回転体
621 第1平刃(回転刃)
621b 第1刃先部
650 回転軸
624 平刃取付部
630 保持体
631 第2平刃(固定刃)
631b 第2刃先部
632 保持部
635 揺動支持機構(揺動支持手段)
650 回転軸(案内手段)
900 ガイド部材(案内手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
回転軸心のまわりに所定の回転方向に沿って回転可能となるように前記筐体に支持され、第1刃先部を含む回転刃を設けた回転体と、
前記筐体に支持され、第2刃先部を含む固定刃を設けた保持体と、
を有し、
前記第1刃先部が前記回転方向の一方側から前記第2刃先部に接触し互いに擦り合わせることにより、前記第2刃先部の端部近傍を通る導入経路に位置する被切断物の切断を実行するロータリーカッタ装置であって、
前記被切断物が前記導入経路において切断位置から前記回転体の内側へ搬送されてきたとき、当該被切断物に対し前記回転方向の前記一方側から接触して前記回転方向の他方側へガイドするための案内手段を有する
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項2】
請求項1記載のロータリーカッタ装置において、
前記回転刃の第1刃先部は、
前記回転体の回転に従い、前記回転方向における第1回転位置から、さらに回転が進んだ第2回転位置までの回転範囲において、前記第2刃先部との擦り合わせによる前記切断を実行し、
前記案内手段は、
前記第1刃先部の回転軌跡の内側に配置されており、かつ、前記擦り合わせによる切断が行われない前記回転体が前記回転範囲以外の回転位置にあるときに前記被切断物に接触してガイドを行う
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のロータリーカッタ装置において、
前記回転刃は、直線状の前記第1刃先部を備えた第1平刃であり、
前記固定刃は、直線状の前記第2刃先部を備えた第2平刃であり、
前記回転体は、
前記回転軸心のまわりに回転可能となるように前記筐体に設けられ、前記第1刃先部が前記回転軸心と平行となるように前記第1平刃を支持する回転側支持部
を備えており、
前記保持体は、
前記第2平刃の取付面方向が前記回転軸心と所定間隔を介し平行となるように、かつ、前記第2平刃の取付面方向と直交する方向から見たとき、前記第2刃先を含む直線と前記回転軸心とが所定の角度を持って配設されるように、前記第2平刃を保持可能な固定側保持部
を備える
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項4】
請求項3記載のロータリーカッタ装置において、
前記案内手段は、
前記回転体に備えられ、前記回転軸心に位置する回転軸部材である
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項5】
請求項3記載のロータリーカッタ装置において、
前記案内手段は、
前記回転体の前記回転刃に、前記第1刃先部と反対側に突出するように設けられたガイド部材である
ことを特徴とするロータリーカッタ装置。
【請求項6】
被印刷物を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段により搬送される前記被印刷物に対し、所望の印字を行う印字手段と、
前記搬送経路に設けられたロータリーカッタと、
を有する印刷装置であって、
前記ロータリーカッタは、
筐体と、
回転軸心のまわりに所定の回転方向に回転可能となるように前記筐体に支持され、第1刃先部を含む回転刃を設けた回転体と、
前記筐体に支持され、第2刃先部を含む固定刃を設けた保持体と、
前記被印刷物が前記搬送経路において切断位置から前記回転体の内側へ搬送されてきたとき、当該被印刷物に対し前記回転方向の一方側から接触して前記回転方向の他方側へガイドするための案内手段と、
を有し、
前記第1刃先部が前記回転方向の前記一方側から前記第2刃先部に接触し互いに擦り合わせることにより、前記第2刃先部の端部近傍を通る前記搬送経路に位置する前記被印刷物の切断を実行する
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−18108(P2013−18108A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155886(P2011−155886)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】