説明

ロータリーバルブ

【課題】ロータリーバルブにおいて、部品、制御を複雑化することなく、また、アクチュエータの大型化、消費電力の増大を引き起こさないロータリーバルブを提供すること。
【解決手段】モータ4から回転バルブ3への回転駆動力の伝達手段5は、モータ4と伝達手段5との間のモータ4の回転駆動力の伝達を断続するブレーカ9と、回転バルブ3を反時計回り方向に90度毎に回転又は停止する回転制御手段12から構成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はロータリーバルブにおいて、一方向に所定角度毎に回転又は停止する回転制御を行なうロータリーバルブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のロータリバルブの回転制御機構としては、回転バルブを周方向に往復作動して使用するものがある。そのため、回転バルブを作動するアクチュエータも回転バルブに合わせて、往復作動するものが使用されている。しかしながら、アクチュエータを往復作動させるためには、アクチュエータを作動させる部品、制御は複雑化する。
【0003】
また、例えば実開平9−47626号公報に開示されるものがある。このロータリーバルブは、一方向に作動するアクチュエータを使用するものである。この場合は、戻り側をリターンスプリングで戻さねばならず、その駆動トルクはロータリーバルブの作動トルクとリターンスプリングを圧縮する圧縮力以上のトルクが必要とされるので、アクチュエータの大型化、消費電力の増大をひきおこす。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、ロータリーバルブにおいて、部品、制御を複雑化することなく、また、アクチュエータの大型化、消費電力の増大を引き起こさないロータリーバルブを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した技術的課題を解決するために講じた第1の技術的手段は請求項1に示すように、流体が流れる通路の途中に接続され、前記通路に開口する開口部が形成されるケーシングと、前記通路に連通する通路孔を有し、前記ケーシング内に回転可能に収容され駆動手段により回転され、前記通路を連通又は遮断する略円筒状の回転バルブと、前記駆動手段の駆動力を前記回転バルブに伝達する伝達手段とを備えるロータリーバルブにおいて、前記伝達手段は、前記駆動手段と前記伝達手段との間の前記駆動力の伝達を断続する断続手段と、前記回転バルブを前記一方向に所定角度毎に回転又は停止する回転制御手段から構成されていることである。
【0006】
この手段によれば、バルブを一方向に所定角度毎に回転停止することにより、部品、制御を複雑化することなくロータリーバルブの構造を簡単化できると共に、駆動力を低減できる。
【0007】
上記した技術的課題を解決するために講じた第2の技術的手段は請求項2に示すように、前記回転制御手段は、前記一方向への回転を規制する規制部と、前記一方向への回転を許容する許容部と、前記規制部及び前記許容部を連絡する連絡部とからなる制御溝が周方向に少なくとも1つ以上連続して形成される回転制御溝部が形成され前記回転バルブと一体で回転すると共に逆回転可能な回転体と、前記回転制御溝部に摺接する係止部材と、前記係止部材を前記規制部から前記連絡部を通して前記許容部に付勢する第1付勢部材と、前記回転体を他方向に回転する第2付勢部材とからなり、前記係止部材が前記規制部にある時は、前記断続手段が前記駆動手段の前記回転駆動力を遮断し、前記第1付勢部材が前記係止部材を前記規制部から前記連絡部を通して前記許容部に付勢すると共に、前記第2付勢部材が前記回転体を前記他方向に回転するように付勢することである。
【0008】
この手段によれば、回転制御手段の部品、制御を複雑化することなくロータリーバルブの構造を簡単化できる。
【0009】
上記した技術的課題を解決するために講じた第3の技術的手段は請求項3に示すように、前記第2付勢部材は、前記回転バルブの回転軸方向に互いに隣接して配設される前記回転バルブと前記回転体との間に配設され前記回転体を前記回転バルブに対して回転可能に付勢することである。
【0010】
この手段によれば、第2付勢部材をバルブと回転体との間に配設することができ、ロータリーバルブを小型化できる。
【0011】
上記した技術的課題を解決するために講じた第4の技術的手段は請求項4に示すように、前記回転バルブと前記回転体との間には、前記回転バルブ又は前記回転体の一方に凹部が形成され、前記回転バルブ又は前記回転体の他方に凸部が形成され、前記凹部には前記凸部及び前記第2付勢部材が収容されることである。
【0012】
この手段によれば、第2付勢部材をバルブに形成された凹部に収容することができ、ロータリーバルブを小型化できる。
【0013】
上記した技術的課題を解決するために講じた第5の技術的手段は請求項5に示すように、前記断続手段は、前記係止部が前記規制部にて規制される時に、前記駆動手段に発生する駆動力が所定値以上の時に前記駆動手段の前記回転駆動力の伝達を遮断することである。
【0014】
この手段によれば、断続手段の作動を正確に行なうことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図8を参照して説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、ロータリーバルブ1は、エンジン(図示無し)の冷却水(流体)が流れる冷却水通路18(通路)の途中に接続され、冷却水通路18に開口する開口部2a、2bが形成されるケーシング2と、冷却水通路18に連通する通路孔3aが形成され、ケーシング2内に回転可能に収容され、モータ4(駆動手段)により回転することにより冷却水通路を連通又は遮断し冷却水の流れを制御する略円筒状の回転バルブ3と、モータ4(駆動手段)の回転駆動力を回転バルブ3に伝達する伝達手段5とから構成される。
【0017】
伝達手段5は、図6に示すモータ4の駆動電流がロック検出しきい値以上の時、通電を遮断するブレーカ9(断続手段)と、モータ回転軸4aの先端部に固着される逆回転可能なネジ歯車6と、ネジ歯車6に係合する中間ギヤ7と、中間ギヤ7に係合すると共に回転バルブ3を反時計回り方向に90度毎に回転又は停止する回転ギヤ8(回転体)から構成される回転制御手段12と、から構成されている。これにより、回転バルブ3の回転又は停止を確実に行なうことができる。
【0018】
モータ4は、反時計回りの一方向に回転するため、従来技術では往復作動するため図8に示すようにTRが4個使われていたが、本発明では図7に示すようにTRを1個しか使わなくてもよく、部品点数の削減及び制御を簡単化している。
【0019】
図3及び図4に示すように、回転バルブ3は、上端面及び下端面の中央に回転バルブ3の回転を支持する凹部3bが形成され、周面には径方向に冷却水を流す断面が略四角形の通路穴3aが貫通するとともに、通路穴3aの直角方向には冷却水の流れを遮断する周壁3dが形成されている。また、バルブ3の上端面には、後述する凸部8bが移動可能な幅であって周方向に所定の角度をなす凹部3cが、径方向に対向して形成されている。
【0020】
回転ギヤ8は、中央に回転ギヤ8の回転を支持する軸8aが形成されている。軸8aは回転バルブ3の凹部3bに回転可能に支持されると共に図5に示すカバー16に形成される凹部(図示無し)に回転可能に支持されている。回転ギヤ8の下面には、凸部8bが周方向に所定の角度で対向して形成され、軸方向に互いに隣接して配設される回転バルブ3の凹部3cに挿入されている。また、凹部3cの反時計回り側端面と凸部8bの反時計回り側端面との間には第2スプリング15(第2付勢部材)が嵌挿されている。これにより、ロータリーバルブ1を小型化できる。また、これにより、回転バルブ3は、回転ギヤ8の回転駆動力が、凸部8b、第2スプリング15及び凹部3cを介して回転バルブ3に伝達される。また、第2スプリング15は、回転ギヤ8を回転バルブ3に対して時計回り方向に付勢している。なお、第2スプリング15の強さは回転バルブ3の作動トルクより小さく設定される。
【0021】
また、回転ギヤ8の上面には、回転ギヤ8を反時計回り方向に90度毎に回転すると共に停止する回転制御溝部11が形成されている。回転制御溝部11は、反時計回りの回転を規制する規制部11aと、反時計回りの回転を許容する許容溝11b(許容部)と、規制部11a及び許容溝11bを連絡する連絡溝11c(連絡部)とからなる制御溝11dが周方向に4つ連続して形成されている。また、回転制御溝部11は、回転制御手段12を構成する。
【0022】
回転制御手段12は、回転制御溝部11と、回転制御溝部11にに摺接する係止部材13と、係止部材13が規制部11aにある時、係止部材13を規制部11aから連絡溝11cを通して許容溝11bに付勢する第1スプリング14(第1付勢部材)と、回転ギヤ8を回転バルブ3に対して時計回り方向に付勢する第2スプリング15と、逆回転可能なネジ歯車6と、ネジ歯車6に係合する中間ギヤ7とから構成されている。係止部材13は略逆U字状形状を呈し、一端13aは回転制御溝部11に摺接し、他端13bはケーシング2の上方に回転可能に支持されている。第1スプリング14は、一端が係止部材13に固着され他端がケーシング2に固着され、係止部材13を規制部11aから連絡溝11cを通して許容溝11bに付勢している。
【0023】
以上のように構成した本実施のロータリーバルブ1の作用を説明する。エンジン(図示無し)が停止している時及び冷却水が所定の温度以下の時は、モータ4は非通電状態であり、回転バルブ3の通路穴3aは,ケーシング2の開口部2a、2bに連通する通路と直交するとともに、周壁3dが冷却水通路を遮断し冷却水は流れない。つまり、ロータリーバルブ1は操作初期状態にある。
【0024】
エンジン始動後冷却水が所定の温度を越えるとモータ4に通電されモータ回転軸4aが回転され、モータ回転軸4aの先端部に固着されるネジ歯車6及び中間ギヤ7を介して回転ギヤ8が反時計回り方向に回転する。回転ギヤ8が反時計回り方向に回転すると共に凸部8bにより第2スプリング15が圧縮される。第2スプリング15が圧縮され圧着状態になると、回転ギヤ8の反時計回り方向の回転が、凸部8b及び第2スプリング15を介して伝達され回転バルブ3を回転させる。
【0025】
一方、回転制御溝部11に摺接する係止部材13の一端13aは、モータ4が非通電状態即ち停止時は許容溝11bの反時計回り方向端部にありる。つまり、ロータリーバルブ1は操作初期状態にある。次に、モータ4に通電されると、回転ギヤ8が回転するのに伴い、係止部材13の一端13aは、許容溝11bに摺接し、規制部11aにて規制される。また、回転ギヤ8の回転が停止すると共に中間ギヤ7及びネジ歯車6を介してモータ4の回転が停止する。これにより、モータ4の駆動電流がロック検出しきい値以上となり、ブレーカ9が作動し通電を遮断する。これにより、ネジ歯車6及び中間ギヤ7を介して回転ギヤ8に伝達される反時計回り方向の回転駆動力が解除される。これにより、第2スプリング15により回転バルブ3に対して時計回り方向に付勢され回転する。このとき、回転ギヤ8の回転に伴い、中間ギヤ7及びネジ歯車6も回転する。これにより、係止部材13の一端13aは、規制部11aから連絡溝11cを摺接し、許容溝11bの反時計回り方向端部に移動し、ロータリーバルブ1を操作初期状態とする。
【0026】
なお、ネジ歯車6の替わりに逆回転できないウォームギヤなどを用いた場合は、ウォームギヤに係合する中間ギヤ7又は中間ギヤ7に係合する回転ギヤ8(回転体)のいずれかのものにワンウエイベアリングを採用しても良い。
【0027】
【発明の効果】
上記したように、請求項1の発明によれば、バルブを一方向に所定角度毎に回転停止することにより、部品、制御を複雑化することなくロータリーバルブの構造を簡単化できる。
【0028】
また、請求項2の発明によれば、この手段によれば、回転制御手段の部品、制御を複雑化することなくロータリーバルブの構造を簡単化できる。
【0029】
また、請求項3の発明によれば、第2付勢部材をバルブと回転体との間に配設することができ、ロータリーバルブを小型化できる。
【0030】
また、請求項4の発明によれば、第2付勢部材をバルブに形成された凹部に収容することができ、ロータリーバルブを小型化できる。
【0031】
また、請求項5の発明によれば、断続手段の作動を正確に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるロータリーバルブ1のカバーを除いた平面図である。
【図2】本発明の実施形態であるロータリーバルブ1の横断面図である。
【図3】本発明の実施形態である伝達手段5の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態である回転制御手段12の斜視図である。
【図5】本発明の実施形態であるロータリーバルブ1の平面図である。
【図6】本発明の実施形態である断続手段9の作動説明図である。
【図7】本発明の実施形態であるロータリーバルブ1の駆動回路図である。
【図8】従来技術のロータリーバルブの駆動回路図である。
【符号の説明】
1  ロータリーバルブ
2  ケーシング
3  回転バルブ
3a  通路孔
3b  凹部
4  モータ(駆動手段)
5  伝達手段
8  回転ギヤ(回転体)
8b  凸部
9  ブレーカ(断続手段)
11  回転制御溝部
11a  規制部
11b  許容部
11c  連絡部
11d  制御溝
12  回転制御手段
13  係止部材
14  第1スプリング(第1付勢部材)
15  第2スプリング(第2付勢部材)
18  冷却水通路(通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる通路の途中に接続され、前記通路に開口する開口部が形成されるケーシングと、
前記通路に連通する通路孔を有し、前記ケーシング内に回転可能に収容され駆動手段により回転され、前記通路を連通又は遮断する略円筒状の回転バルブと、前記駆動手段の駆動力を前記回転バルブに伝達する伝達手段とを備えるロータリーバルブにおいて、
前記伝達手段は、前記駆動手段と前記伝達手段との間の前記駆動力の伝達を断続する断続手段と、前記回転バルブを前記一方向に所定角度毎に回転又は停止する回転制御手段から構成されていることを特徴とするロータリーバルブ。
【請求項2】
前記回転制御手段は、前記一方向への回転を規制する規制部と、前記一方向への回転を許容する許容部と、前記規制部及び前記許容部を連絡する連絡部とからなる制御溝が周方向に少なくとも1つ以上連続して形成される回転制御溝部が形成され前記回転バルブと一体で回転すると共に逆回転可能な回転体と、前記回転制御溝部に摺接する係止部材と、前記係止部材を前記規制部から前記連絡部を通して前記許容部に付勢する第1付勢部材と、前記回転体を他方向に回転する第2付勢部材とからなり、前記係止部材が前記規制部にある時は、前記断続手段が前記駆動手段の前記回転駆動力を遮断し、前記第1付勢部材が前記係止部材を前記規制部から前記連絡部を通して前記許容部に付勢すると共に、前記第2付勢部材が前記回転体を前記他方向に回転するように付勢することを特徴とする請求項2に記載のロータリーバルブ。
【請求項3】
前記第2付勢部材は、前記回転バルブの回転軸方向に互いに隣接して配設される前記回転バルブと前記回転体との間に配設され前記回転体を前記回転バルブに対して回転可能に付勢することを特徴とする請求項3に記載のロータリーバルブ。
【請求項4】
前記回転バルブと前記回転体との間には、前記回転バルブ又は前記回転体の一方に凹部が形成され、前記回転バルブ又は前記回転体の他方に凸部が形成され、前記凹部には前記凸部及び前記第2付勢部材が収容されることを特徴とする請求項3に記載のロータリーバルブ。
【請求項5】
前記断続手段は、前記係止部が前記規制部にて規制される時に、前記駆動手段に発生する駆動力が所定値以上の時に前記駆動手段の前記回転駆動力の伝達を遮断することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のロータリーバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2004−28128(P2004−28128A)
【公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−181262(P2002−181262)
【出願日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】