ローヤルゼリー中のMRJP3タンパク質の変化におけるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の新規用途
【課題】対照幼虫よりも少なくとも体重で100%大きいミツバチの幼虫を製造する方法を提供する。
【解決手段】若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることにより、これらの若い働きバチによって分泌されるロ−ヤルゼリ−中のMRJP3の68対64kDaタンパク質の比が変化するとともに、このロ−ヤルゼリ−をミツバチの幼虫に与えることにより、通常よりも大きなサイズのミツバチの幼虫、さなぎ、及び女王バチが製造される。
【解決手段】若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることにより、これらの若い働きバチによって分泌されるロ−ヤルゼリ−中のMRJP3の68対64kDaタンパク質の比が変化するとともに、このロ−ヤルゼリ−をミツバチの幼虫に与えることにより、通常よりも大きなサイズのミツバチの幼虫、さなぎ、及び女王バチが製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、若い働き(保育)バチにヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)またはHDAC阻害剤(複数を含む)を含む混合物もしくは処方を与えることでハチの幼虫、さなぎ、女王バチの成長を促進する方法に関する。特にHDACiを与えられた若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーは、68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を有するであろう。
【背景技術】
【0002】
ミツバチは近代農業においてもっとも有益な生物の一つであり、ローヤルゼリー、ハチミツ、プロポリス、花粉などの様々な製品を提供し、それらは人間に対する栄養源として供される(Hellner M等、2008年)。したがって、ミツバチの生育、発展、発達には多大な関心が寄せられている。
【0003】
ミツバチは母系社会であり、ミツバチのコロニーは女王バチによって導かれている。ミツバチのコロニーにおいて、働きバチと女王バチは受精卵から発生し、雄バチは未受精卵から発生する(Winston M.L.,1987年)。女王は巣の個室内で単独で産卵する。幼虫は3,4日で孵化する。幼虫はそれから若い働きバチによって育仔され、個室内でいくつかの段階を経て発達する。さなぎになると、働きバチによって個室は封鎖される。女王は16日で、働きバチは21日で、また雄バチは24日で個室から現れる。女王は体が大きく、また寿命は通常、働きバチの10〜15倍である。受精卵が働きバチに発達するか女王に発達するかはミツバチのコロニーによって調整されている。原則として一つのミツバチのコロニーには一匹の女王のみが存在する。そのうえ、女王バチは同一のコロニーにおいては他のハチとは異なる餌を与えられる。女王バチは生きている間中、ローヤルゼリーを与えられ、働きバチはその発達の初期においてのみローヤルゼリーを与えられる。数人の研究者は働きバチもその発達期に渡ってローヤルゼリーを与えられると信じている一方で、働きバチに与えられるローヤルゼリーは女王に与えられるものとはその化学成分が異なってかもしれない。いずれにしてもミツバチのコロニーを維持するにあたり、ローヤルゼリーは最も重要な物質となっている(Robinson G.E.等、1987年)。
【0004】
ローヤルゼリーは女王バチの幼虫と女王にとって最も重要な食糧であり栄養源である。それは、若い働きバチの下咽頭腺及び大顎腺より分泌され、ローヤルゼリーの成分は幼虫の異なる発展期において変化するであろう。一般的に、その様な変化はローヤルゼリーのタンパク質成分というよりもむしろ糖質に反映されていると考えられる(Peiren N.等、2005年)。
【0005】
ローヤルゼリーには人間の健康を向上しうる多くの物質を含んでおり、様々な薬理的な特性を有することが知られている(Takaki−Doi S.等、2009年;Mannoor M.K.等、2009年;及びGasic S.等、2007年)。したがって、ローヤルゼリーは人間の健康増進のための健康食に広く用いられている。近年、研究により、ローヤルゼリーは免疫調整を増進することができること(Vuecvic D.等、2007年)、抗菌機能を呈すこと(Boukraa L.,2008年)、脳神経を育成すること(Hashimoto M.等、2005年)、また抗ガン及び抗酸化活性を示すこと(Guo H.等、2008年)、が証明された。ローヤルゼリーは、乳白色の濃厚な液体で、約60〜70%の水、12〜15%のタンパク質、10〜12%の糖分、3〜5%の脂質、および微量成分とミネラルを含むことが知られている(Scarselli R.等、2005年)。タンパク質成分の中で、約89〜90%が水溶性タンパク質であり、残りが水不溶性タンパク質である。すなわち、ローヤルゼリーに含まれるほとんどのタンパク質は水溶性である。
【0006】
MRJP(ローヤルゼリー主要タンパク質)ファミリー(MRJP1〜9)は、これらの水溶性タンパク質のなかでも主成分である(Schmitzova J.等、1998年)。これらのMRJPタンパク質のアミノ酸配列は解析されているが、いまだその機能は不明である。
【0007】
MRJP1はミツバチの脳に見いだされ、ミツバチの挙動を司ると考えられている。それはローヤルゼリー中の水溶性タンパク質の44%を占め、MRJPファミリータンパク質の中でもっとも豊富なアイソフォームである(Malecova B.等、2003年)。今日、MRJP3には非常に高い関心が寄せられており、免疫調整機能を有すると考えられている(Kohno K.等、2004年)。また、MRJP3はローヤルゼリー中の総水溶性タンパク質の内、12%を占め、すべてのMRJPタンパク質のなかで、次にもっとも豊富なアイソフォームである(MRJP1〜9)。MRJP3はその抗アレルギー及び抗炎症活性から特異的なものである。60〜70kDaのタンパク質はMRJP3の変異体であり、高多形型MRJP遺伝子の産物である(Stefan Albert等、1999年)。
【0008】
MRJPは豊富な必須アミノ酸と他の栄養素となる化合物を提供する(Furusawa T等、2008年)。ローヤルゼリーは女王バチにとっての唯一の栄養源でありMRJPはローヤルゼリーにおける最も重要なタンパク質であるので、ローヤルゼリーを特異的な化合物で発展する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hellner M,Winter D, von Georgi R,Munstedt K.,アピセラピー:ドイツの養蜂家における使用と経験(Apitherapy:のusage and experience in german beekeepers.),Evid Based Complement Alternat Med.2008;5(4):475−9.
【非特許文献2】Winston M L.,ミツバチの生物学(The Biology of the Honeybee.),Harvard University Press:Cambridge,MA,1987.
【非特許文献3】Robinson G E.,ミツバチの神経生物学と挙動(In Neurobiology and Behavior of Honeybee);Menzel R,Mercer R,Eds.;Springer−Verlag:New Yorl,1987;pp266−279.
【非特許文献4】Peiren N,Vanrobaeys F,de Graaf DC,Devreese B,Van Beeumen J,Jacobs FJ.,プロテオミック手法により再考したミツバチ毒のタンパク質組成(The protein composition of honeybee venom reconsidered by a proteomic approach.),Biochim Biophys Acta.,2005;1752(1):1−5.
【非特許文献5】Takaki−Doi S,Hashimoto K,Yamamura M,Kamei C.,自然発症高血圧ラットにおけるローヤルゼリータンパク質加水分解物及びその断片の降圧活性(Antihypertensive activities of royal jelly protein hydrolysate and its fractions in spontaneously hypertensive rats.),Acta Med Okayama.,2009;63(1):57−64.
【非特許文献6】Mannoor MK,Shimabukuro I,Tsukamotoa M,Watanabe H,Yamaguchi K,Sato Y.,ミツバチのローヤルゼリーは、SLE自然発症NZB×NZW F1マウスにおける自己免疫を抑制する(Honeybee royal jelly inhibits autoimmunity in SLE−prone NZB x NZW F1 mice.),Lupus.,2009;18(1):44−52.
【非特許文献7】Gasic S,Vucevic D,Vasilijic S,Antunovic M,Chinou I,Colic M.,インビトロでのローヤルゼリー成分の免疫調整活性の評価(Evaluation of the immunomodulatory activities of royal jelly components in vitro.),Immunopharmacol Immunotoxicol.,2007;29(3−4):521−36.
【非特許文献8】Vucevic D,Melliou E,Vasilijic S,Gasic S,Ivanovski P,Chinou I,Colic M.,ローヤルゼリーから単離される脂肪酸はインビトロで樹状細胞性免疫応答を調整する(Fatty acids isolated from royal jelly modulate dendritic cell−mediated immune response in vitro.),Int Immunopharmacol.,2007;7(9):1211−20.
【非特許文献9】Boukraa L.,緑膿菌に対するローヤルゼリーとハチミツの付加活性(Additive activity of royal jelly and honey against Pseudomonas aeruginosa.),Altern Med Rev.,2008;13(4):330−3.
【非特許文献10】Hashimoto M,Kanda M,Ikeno K,Hayashi Y,Nakamura T,Ogawa Y,Fukumitsu H,Nomoto H,Furukawa S.,ローヤルゼリーの経口投与により、成熟マウス脳の海馬におけるグリア細胞系列派生神経栄養因子及び神経フィラメントのmRNA発現が促進される(Oral administration of royal jelly facilitates mRNA expression of glial cell line−derived neurotrophic factor and neurofilament H in the hippocampus of the adult mouse brain.),Biosci Biotechnol Biochem.,2005;69(4):800−5.
【非特許文献11】Guo H,Ekusa A,Iwai K,Yonekura M,Takahata Y,Morimatsu F.,ローヤルゼリータンパク質はインビトロ及びインビボで脂質過酸化を抑制する(Royal jelly peptides inhibit lipid peroxidation in vitro and in vivo.), J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo).,2008;54(3):191−5.
【非特許文献12】Scarselli R,Donadio E,Giuffrida MG,Fortunato D,Conti A,Balestreri E,Felicioli R,Pinzauti M,Sabatini AG,Felicioli A.,ローヤルゼリープロテオーメに向けて(Towards royal jelly proteome.), Proteomics.,2005;5(3):769−76.
【非特許文献13】Schmitzova J,Klaudiny J,Albert S,Schroder W,Schreckengost W,Hanes J,Judova J,Simuth J.,セイヨウミツバチの主たるローヤルゼリータンパク質ファミリー(A family of major royal jelly proteins of the honeybee Apis mellifera L.),Cell Mol Life Sci.,1998;54(9):1020−30.
【非特許文献14】Kohno K,Okamoto I,Sano O,Arai N,Iwaki K,Ikeda M,Kurimoto M.,ローヤルゼリーは活性マクロファージによる炎症性サイトカインの生成を抑制する(Royal jelly inhibits the production of proinflammatory cytokines by activated macrophages.),Biosci Biotechnol Biochem.,2004;68(1):138−45.
【非特許文献15】Malecova B,Ramser J,O‘Brien JK,Janitz M,Judova J,Lehrach H,Simuth J.,ミツバチ(セイヨウミツバチ)mrjp遺伝子ファミリー:幼虫の食事として最も豊富なタンパク質をコードする遺伝子、mrjpの推定プロモータとゲノム構造の計算分析(Honeybee (Apis mellifera L.) mrjp gene family: computational analysis of putative promoters and genomic structure of mrjp1, the gene coding for the most abundant protein of larval food.),Gene.,2003;303:165−75.
【非特許文献16】Furusawa T,Rakwal R,Nam HW,Shibato J,Agrawal GK,Kim YS,Ogawa Y,Yoshida Y,Kouzuma Y,Masuo Y,Yonekura M.,一次元及び二次元プロテオミックプラットフォームを用いた包括的なローヤルゼリー(RJ)プロテオミックスにより新規RJタンパク質と潜在的なホスホ/グリコプロテインを明らかにする(Comprehensive royal jelly (RJ) proteomics using one− and two−dimensional proteomics platforms reveals novel RJ proteins and potential phospho/glycoproteins.),J Proteome Res.,2008;7(8):3194−229.
【非特許文献17】Stefan Albert,Jaroslav Klaudiny,and Jozef Simuth.,ミツバチ(セイヨウミツバチ)のローヤルゼリーの高多形型タンパク質であるMRJP3の分子的特徴について(Molecular characterization of MRJP3, highly polymorphic protein of honeybee(Apis mellifera)royal jelly.),Insect Biochemistry and Molecular Biology,29(1999)427−434.
【非特許文献18】Julie C.Kiefer,,発達におけるエピジェネティクス(Epigenetics in Development.),Developmental Dynamics,236:1144−1156,2007.
【非特許文献19】Ahmad Miremadi,Mikkel Z.Oestergaard,Paul D.P.Pharoah,and Carlos Caldas,エピジェネティク遺伝子のガン遺伝学(Cancer genetics of epigenetic genes.),Human Molecular Genetics,2007,vol.16,Review Issue 1,R28−R49.
【非特許文献20】Janet S.Graham,Stanely B.Kaye,and Robert Brown.,充実性腫瘍におけるエピジェネティクス療法の展望と落とし穴(The promises and pitfalls of epigenetic therapies in solid tumors.),European Journal of Cancer,45(2009),1129−1136.
【非特許文献21】T. J. Walton,G.Li,R.Seth,S.E.McArdle,M.C.Bishop,and R.C.Rees,DNA脱メチル化及びヒストン脱アセチル化阻害の協働により、エストロゲン受容体βの再発現と前立腺ガン細胞系列におけるアポトーシスが誘導される(DNA demethylation and histone deacetylation inhibition co−operate to re−express estrogen receptor beta and induce apoptosis in prostate cancer cell−lines.),The Prostate,68:210−222(2008).
【非特許文献22】Oi Wah Stephanie Yap,Ganapathy Bhat,Liang Liu,and Trygve O. Tollefsbol,,卵巣上皮ガン細胞におけるエストロゲン受容体β遺伝子のエピジェネティク修飾(Epigenetic modifications of the estrogen receptor beta gene in epithelial ovarian cancer cells.),Anticancer Research,29:139−144(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、通常体よりも少なくとも体重で100%大きく、また通常体よりも数倍体重が大きいであろうミツバチの幼虫、少なくとも体重で50%大きく、また通常体よりも1から数倍体重で大きいさなぎ、また少なくとも体重で50%大きく、また通常体よりも1から数倍体重で大きい女王バチを製造する方法を提供する。
【0011】
本発明は、対照幼虫よりも少なくとも体重で100%大きいミツバチの幼虫を製造する方法を提供する。当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これらの若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることとを含み、一方、対照群のミツバチの幼虫にはHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与える。
【0012】
本発明は、対照さなぎよりも少なくとも体重で50%大きいさなぎを、または、対照女王バチよりも少なくとも体重で50%大きい女王バチを製造する方法を提供する。当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これら若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることと、当該ミツバチの幼虫から発達させたさなぎまたは女王バチを得ることとを含み、一方、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与えるミツバチの幼虫から対照さなぎまたは対照女王バチを発達させる。
【0013】
本発明はさらに、対照ローヤルゼリーに対し、68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むローヤルゼリーを提供する。
【0014】
本発明はさらに、働きバチのmrjp3遺伝子に対するエピジェネティクスを調整する方法であって、働きバチにHDAC阻害剤を与えることで、働きバチのmrjp3遺伝子の発現を調整することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は台湾グリーンプロポリス抽出物を与えられた若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌し、それが幼虫の急速成長を誘発することを示す図である。U−1とU−2:対照群;A−1とA−2:1.25g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;B−1とB−2:2.50g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;C−1とC−2:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【図2】図2はプロポリンCを与えられた若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌し、それが幼虫の急速成長を誘発することを証明する図である。U−2:対照群;50mg/kgのC1−2:プロポリンCで処理;C2−2:100mg/kgのプロポリンCで処理。
【図3】図3はプロポリンCを与えられた若い働きバチが分泌するローヤルゼリー中で確認された水溶性タンパク質成分を示す。試料は異なる時間点で採取された。U−1:対照群;T−1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理したポジティブ対照群;G1−1:150mg/kgのプロポリンGで処理;G2−1:300mg/kgのプロポリンGで処理;G3−1:600mg/kgのプロポリンGで処理。
【図4】図4はNBM−HD−1を与えられた若い働きバチが分泌するローヤルゼリー中で確認された水溶性タンパク質成分を示す。試料は異なる時間点で採取された。U−1:対照群;T−1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理したポジティブ対照群;H1−1:50mg/kgのNBM−HD−1で処理;H2−1:100mg/kgのNBM−HD−1で処理;H3−1:200mg/kgのNBM−HD−1で処理。
【図5】図5はNBM−HD−1で処理した群からの72時間後における幼虫から抽出した水溶性タンパク質の二次元ゲル電気泳動分析を示す。L−1:MRJP1;L−2:MRJP3;L−3:MRJP2;L−4:MRJP2;L−5:MRJP3;L−6:MRJP3;L−7:MRJP3;L−8:MRJP2。U1−1:対照群;H3−1:200mg/kgのNBM−HD−1で処理。
【図6】図6はSAHAを与えられた若い働きバチにより分泌されるローヤルゼリー中で確認された水溶性タンパク質成分を示す。試料は72時間の時点で採取された。U−1:対照群;T−1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理したポジティブ対照群;G−1:150mg/kgのプロポリンGで処理したポジティブ対照群;S1−1:5mg/kgのSAHAで処理;S2−1:15mg/kgのSAHAで処理。
【図7】台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはヒト神経膠腫Hs683細胞の増殖を抑制することができた。U1:対照群;A1:1.25g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;B1:2.50g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理:C1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【図8】台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはラット神経幹細胞の分化を誘発することができた。U1:対照群;A1:1.25g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;B1:2.50g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理:C1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;EFG:ポジティブ対照群。
【図9(a)】図9(a)は台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはラット神経幹細胞の分化を誘発することができた。U1:対照群;T:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【図9(b)】図9(b)は台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはラット神経幹細胞の分化を誘発することができた。U1:対照群;T:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【図9(c)】図9(c)は台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはラット神経幹細胞の分化を誘発することができた。U1:対照群;T:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられた働き(保育)バチがミツバチの幼虫の成長速度を早めることが可能であり、その結果、大きな幼虫、さなぎ、及び女王バチを得ることを発見する。結果として得られたミツバチの幼虫は通常体よりも少なくとも体重で100%大きく、また数倍体重が大きいであろう。またさなぎは通常体よりも少なくとも体重で50%大きく、また通常体よりも1から数倍体重で大きいであろう。また女王バチは通常体よりも少なくとも体重で50%大きく、また通常体よりも1から数倍体重で大きいであろう。
【0017】
本発明はさらに、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物がエピジェネティクスを経てローヤルゼリー中のMRJP3において68対64kDaタンパク質の比を変化しうることを見いだす。HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられた若い働きバチはエピジェネティクスを経て特異的なローヤルゼリーを生成し、ここで68対64kDaタンパク質の比が変化する。本発明は、特異的なローヤルゼリーがそれを与えられた女王バチの幼虫の成長を促進し、そして幼虫、それから得られたさなぎ並びに女王バチの体重が著しく増えることを見いだした。
【0018】
一局面において、本発明は対照幼虫よりも少なくとも体重で100%大きいミツバチの幼虫を製造する方法を提供する。当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これらの若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることとを含み、一方、対照群のミツバチの幼虫にはHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与える。本発明の実施態様によれば、ミツバチの幼虫は働きバチによってそれらが分泌するローヤルゼリーを与える、または人間によって働きバチから収集したローヤルゼリーを与えることができる。本発明の実施態様によれば、上記のローヤルゼリーを与えられた幼虫の72時間後の体重は、150%よりも増加する。好ましくは、体重は約2から5倍で増加する(すなわち、200%から500%)。さらに好ましくは、体重は約3から5倍で増加する(すなわち、300%から500%)。本発明によれば、上記のローヤルゼリーは、対照のローヤルゼリーに対して、68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含む。
【0019】
本発明によれば、本発明のミツバチの幼虫から発達したさなぎ及び女王バチが、それぞれ対照のさなぎ及び女王バチよりも体重が重くなる。したがって、本発明は、対照さなぎよりも少なくとも体重で50%大きいさなぎを、または、対照女王バチよりも少なくとも体重で50%大きい女王バチを製造する方法を提供する。当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これら若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることと、当該ミツバチの幼虫から発達させたさなぎまたは女王バチを得ることとを含み、一方、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与えるミツバチの幼虫から対照さなぎまたは対照女王バチを発達させる。本発明の実施態様によれば、ミツバチの幼虫は働きバチによってそれらが分泌するローヤルゼリーを与える、または人間によって働きバチから収集したローヤルゼリーを与えることができる。
【0020】
ある局面においては、本発明はローヤルゼリー中のMRJP3の68対64kDaタンパク質の比を変化させる方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることで、対照となるローヤルゼリーに対して、MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が変化したローヤルゼリーを製造する。
【0021】
他の局面においては、本発明は対照ローヤルゼリーに対して68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むローヤルゼリーを製造する方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、若い働きバチによって製造されたローヤルゼリーを収集することとを含む。
【0022】
他の局面において、本発明はさらに対照ローヤルゼリーに対して68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むローヤルゼリーを提供する。
【0023】
本発明によれば、MRJP3の68対64kDaタンパク質の比は、対照に対して約1.5〜12倍で、1.5〜5倍で、2〜6倍で、2〜10倍で、4〜12倍で、あるいは2〜4倍で増加しうる。より好ましくは、MRJP3の68対64kDaタンパク質の比は、対照に対して約2〜4倍で、あるいは4〜10倍で増加しうる。
【0024】
他のさらなる局面においては、本発明は働きバチのMRJP3遺伝子に対するエピジェネティクスを調整する方法であって、働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることで、働きバチのMRJP3遺伝子の発現を調整することを含む方法を提供する。本発明によれば、エピジェネティクスはDNAのメチル化またはHDACを阻害することであってもよい。DNAのメチル化は、DNA配列の変化なしで遺伝子発現における遺伝性の変化であるエピジェネティクス変化である。DNAのメチル化は、遺伝性遺伝子抑制を引き起こす共有結合修飾である。DNAのメチル化は二つの方法の内、一つにおいて抑制を引き起こす。第一は、メチル化はDNAの認識部位に結合する転写因子に直接影響しうる。第二は、メチル−CpG結合ドメインタンパク質(MBPs)は、ヒストン脱アセチル化酵素またはヒストンメチルトランスフェラーゼをかくまう抑制補体複合体を補充することによって抑制を補強しうる(Juile C.Kiefer、2007年)。HDAC阻害剤は若い働きバチにおいてMRJP3の68及び64kDaタンパク質の発現を変えるので、HDAC阻害剤がヒストンハイパーアセチレーションを調整し、若い働きバチにおける多形型mrjp3遺伝子接合及び翻訳に影響しうることを示唆する。
【0025】
本明細書の文脈において「アルキル」なる語は、直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖を意味する。アルキルは好ましくはC1−10アルキルである。好ましくはアルキルの炭素数は1〜8からなる群から選択される。より好ましいアルキルはC1−6アルキルまたはC1−4アルキルである。アルキル基の例としては、メチル(−CH3)、エチル(−CH2CH3)、プロピル(−CH2CH2CH3)、イソプロピル(−(CH3)2CH)及びブチル(−C4H9)が挙げられる。
【0026】
本明細書の文脈において「アルケニル」なる語は、直鎖及び分枝鎖の不飽和炭化水素基を意味する(不飽和結合は二重結合としてのみ存在する)。本発明においてはアルケニルは1以上の二重結合を含む。アルケニルはC2−16アルケニルであることが好ましい。より好ましくはアルケニルの炭素数は2〜12からなる群から選択される。アルケニル基の例としては、エテニル(−CH=CH2)、プロペニル(−CH=CHCH3または−CH2CH=CH2)、ブテニル(−CH2CH=CHCH3、−CH=CHCH2CH3または−CH2CH2CH=CH2)、−CH2CH=C(CH3)CH3、−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH=CH−CH3、及び−CH2−CH=C(CH3)−CH2−CH2−CH=C(CH3)−CH3が挙げられる。
【0027】
本明細書の文脈において「シクロアルキル」なる語は、脂環式環(飽和炭素環)を意味する。好ましくはシクロアルキルの炭素数は3〜8からなる群から選択される。更に好ましくは、シクロアルキルの炭素数は、5〜6からなる群から選択され、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0028】
本明細書において用語「不飽和炭素環式」とは、炭素原子と水素原子とからなる環状置換基を含み、環状部分は、例えばアリール、シクロアリールなどのような不飽和環である。用語「シクロアルケニル」は一つ以上の二重結合を有するシクロアルキルであるアルケニルを含む。例えば、シクロプロペニル(例えば、1−シクロプロペニル)、シクロブテニル(例えば、1−シクロブテニル)、シクロペンテニル(例えば、1−シクロペンテン−1−イル、2−シクロペンタン−1−イル、及び3−シクロペンテン−1−イル)、シクロヘキセニル(例えば、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン1−イル、及び3−シクロヘキセン−1−イル)、シクロヘプテニル(例えば、1−シクロヘプテニル)、シクロオクテニル(例えば、1−シクロオクテニル)等があげられる。特に好ましくは、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、及び3−シクロヘキセン−1−イル。用語「アリール」は単一または融合リングを含み、ここで、少なくとも一つのリングは芳香族であり、例えばフェニル、ナフチルおよびテトラヒドロナフタレニルである。
【0029】
本明細書においては、「5または6員の複素環」の句は、5または6原子の環状リングを称し、ここでリングの少なくとも一つの原子はヘテロ原子である。5または6員複素環は飽和または不飽和の芳香族あるいは非芳香族でありうる。好ましくは、ヘテロ原子はN,O,Sから選択される原子である。ヘテロ環の例としては、これには限定されないが、フリル(例えば、2−フリル、3−フリル)、チエニル(例えば、2−チエニル、3−チエニル)、ピロリル(例えば、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、イミダゾリル(例えば、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、ピラゾリル(例えば、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル)、トリアゾリル(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−4−イル)、テトラゾリル(例えば、1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、5−テトラゾリル)、オキサゾリル(例えば、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(例えば、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル)、チアゾリル(例えば、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例えば、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、ピリジル(例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、ピリミジニル(例えば、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル)、フラザニル(例えば3−フラザニル)、ピラジニル(例えば、2−ピラジニル)、オキサジアゾリル(例えば、1,3,4−オキサジアゾ−ル−2−イル)、1−ピロリニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、ピロリジン、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−イミダゾリニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、1−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノ、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル、ピペラジノ、2−ピペラジニル、2−モルホリニル、3−モルホリニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル、等である。
【0030】
本明細書の文脈において「ハロゲン」なる語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
【0031】
本明細書の文脈における「薬学的に許容される塩」なる語には、有機及び無機の酸及び塩基と形成される塩が含まれる。薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸、ならびに、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、琥珀酸、蓚酸、蟻酸、フマル酸、マレイン酸、オキザロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びイセチオン酸などの有機酸が挙げられる。薬学的に許容される塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、及び1級、2級、及び3級アミン塩などの有機塩基との塩が挙げられる。
【0032】
本明細書の文脈において「プロドラッグ」なる語は、血中で加水分解されることなどによって体内で薬理作用を有する活性型に変換される化合物を意味する。
【0033】
本明細書の文脈において「溶媒和物」なる語は、本発明の化合物と溶媒とからなる複合体であって、本発明の化合物と溶媒とが反応しているか、これらが沈殿または析出される複合体を意味する。
【0034】
本明細書の文脈において「立体異性体」なる語は、結合する原子は同じであるが原子の空間的配置が異なる異性体分子を指す。
【0035】
本明細書の文脈において「エナンチオマー」なる語は、左手と右手が「同じ」であるけれども反対であるように、互いに重ね合わせることのできない鏡像関係にある立体異性体を指す。
【0036】
本明細書においては、用語「働きバチ」はコロニーの女王バチの完全な生殖能力が欠けているあらゆる雌の真社会性ハチである。ほとんどの場合において、同様に女王に対して確固たる非生殖能力の増加に相互関係している。ハチの卵は働きバチが作成し形成したワックスハニーコムの個室内に一つずつ入っている。幼虫は初期においては働きバチによって製造されたローヤルゼリーを与えられている。例外はローヤルゼリーを単独で与えられる幼虫であり、これは女王バチに発達する。幼虫は個室内で繭を紡ぎ、さなぎになる前に数回脱皮をする。雄バチは未受精卵から孵り、雌(女王及び働きバチ)は受精卵から孵る。女王は実際に横たえつつある卵を受精するよう選択しうるものであり、通常は彼女が横たえつつある個室がどれであるかに依存している。若い働きバチは巣箱をきれいに保ち、幼虫を育成する。それらのローヤルゼリー生成腺が退化し始めると、それらは巣の個室の建築を開始する。それらは年を経るに従い、他のコロニー内の仕事を進める。ここでそのような仕事は、探索者から花の蜜と花粉を受け取ること、また巣箱を守ること等である。後に、また働きバチは彼女の第一のオリエンテーション飛行に立ち、最終的に巣箱を立ち去り、典型的には残りの寿命を食料探索者として過ごす。
【0037】
本明細書においては、用語「ローヤルゼリー」は幼虫の食物として使用されるハチミツの分泌物である。それは若い働きバチの頭部にある下咽頭腺から分泌され、(他の物質の中でも)コロニーの幼虫に与えるべく用いられる。
【0038】
本発明によれば、HDACは、コアヒストンタンパク質のアミノ酸末端近傍にあるリジンのε−アミノ基を選択的に脱アセチル化することにより転写に影響を及ぼす酵素である。HDAC阻害剤は、固体処理及び血液性悪性腫瘍の可能性のある抗ガン剤の面白い新しいクラスとして現れている。本発明は、意外なことにHDAC阻害剤が若い働きバチによって作られるローヤルゼリー中のMRJP3の68及び64kDaタンパク質の発現に影響することを発見した。HDAC阻害剤は、これに限定されないが、4つのクラスのHDAC阻害剤を含み、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、ベンズアミド、及び環状ペプチドであり、これらはMedicinal Research Reviews,Vol.26,No.4,pp.397−413,2006に報告されている;Journal of the National Cancer Institute,Vol.92,No.15,August 2,2000,pp.1210−1216に掲載されているヒドロキサム酸系ハイブリッド極性化合物(HPCs);米国特許第6,174,905号明細書、欧州特許公報第0847992号明細書、日本公開公報258863/96号明細書、及び日本特許出願番号第10138957号明細書にあるベンズアミド誘導体;WO01/38322にある化合物;ベンズアミドM344(Hum Genet,2006,120,pp.101−110);酪酸ナトリウム(Human Molecular Genetics,2004,Vol.13,No.11,pp.1183−1192);トリコスタチンA(Trichostatin A)(Molecular Cancer 2006,5:8;本文献は以下より入手可能:http://www.molecular−cancer.com/content/5/1/8);米国特許第7,169,801号明細書に開示されているZ−Q−L−MあるいはZ−L−Mの式を有する化合物;米国特許第6888027号明細書にあるPXD101を含むスルホンアミド化合物のファミリー;欧州特許第1301184号明細書にカバーされているバルプロ酸及びその誘導体;N,N'−ヘキサメチレン ビスアセトアミド(HMBA);米国特許第6,087,367号明細書及び再発行第38506号明細書に記載のHMBA関連化合物;米国特許第7,399,787号明細書に開示のHMBA関連化合物、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA);Blood,1 October 2003,Vol.102,No.7,pp.2615−2622に報告されたNVP−LAQ824(ヒドロキサム誘導体)及びNVP−LAQ824(4−アミノメチルシンナミックヒドロキサム酸誘導体);LBH589はアポトーシスを引き金として腫瘍細胞系列において成長阻害と退行を誘発し、またLBH589は抗ガン剤としてフェーズIの臨床試験が行われている(Blood 105(4):1768−76 February 15,2005);米国特許出願第11/855416号及び12/418373号明細書に記載の化合物;プロポリス、プロポリン及び米国特許出願公開第20080242648号明細書にある化合物であって、以下のものを含む、ピロキサミド、M−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキシアミド(CBHA)、トリコスタチンA(TSA),トリコスタチンC,サリチルヒドロキサム酸(SBHA),アゼライックビスヒドロキサム酸(ABHA),アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA),6−(3−クロロフェニルウレイド)カーポイックヒドロキサム酸(3C1−UCHA),オキサムフラチン,A−161906,スクリプタイド,PXD−101,ペプチドを含有する環状ヒロロキサム酸(CHAP),ITF−2357,MW2796,MW2996,トラポキシンA,FR901228(FK228またはデプシペプチド),FR225497,アピシジン,CHAP,HC−トキシン,WF27082,クラミドシン,酪酸ナトリウム,イソバレレート,4−フェニル酪酸塩(4−PBA),4−フェニル酪酸ナトリウム(PBS),アルギニンブチレート,プロピオン酸塩,ブチルアミド,イソブチルアミド,フェニルアセテート,3−ブロモプロピオネート,トリブチリン,バルプロ酸,バルプロネート,CI−994,MS−27−275の3′−アミノ誘導体,MGCD0103及びデプデシンである。本明細書で引用されたすべての文献はその内容を援用する。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、ここで使用されるHDAC阻害剤は以下の式(I)で表される化合物である:
【0040】
【化1】
【0041】
ここで、
R1及びR2はそれぞれ独立してOH,OC(=O)アルキル,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニル,N−アルキニル,O−C3−8シクロアルキル,S−C3−8シクロアルキル,N−C3−8シクロアルキル,O−不飽和5〜10員単環または二環式リング,S−不飽和5〜10員単環または二環式リング,N−不飽和5〜10員単環または二環式リング,アルキル,アルキレニル,アルキニル,C3−8シクロアルキル,N,O,及びSからなる群から選ばれる少なくとも一つのリングヘテロ原子を含む不飽和5〜10員単環または二環式リングまたは飽和もしくは不飽和5〜10員ヘテロ環状リング;またはR1及びR2は共同してジオキソランを形成しうる;
R3及びR4はそれぞれ独立してOH,OC(=O)アルキル,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニル,N−アルキニル,O−C3−8シクロアルキル,S−C3−8シクロアルキル,N−C3−8シクロアルキル,O−不飽和5〜10員単環または二環式リング,S−不飽和5〜10員単環または二環式リング,N−不飽和5〜10員単環または二環式リング,アルキル,アルキレニル,アルキニル,C3−8シクロアルキル,N,O,及びSからなる群から選ばれる少なくとも一つのリングヘテロ原子を含む不飽和5〜10員単環または二環式リングまたは飽和もしくは不飽和5〜10員ヘテロ環状リング;
R5はC4−16アルキルまたはC4−16アルケニルであって、ここでアルキルまたはアルケニルは未置換またはC1−6アルキル,OH,ハロゲン,CN,NO,N3,NH2,CHO,OR9,SR9,NR9,orCOOR9の1以上で置換されている;
R6はC2−12アルキルまたはC2−12アルケニルであって、ここでアルキルまたはアルケニルは未置換またはC1−6アルキル,OH,ハロゲン,CN,NO,N3,NH2,CHO,OR9,SR9,またはNR9の1以上で置換されている;またはR5及びR6の一つは、水素、ハロゲンまたはOHであり、その他方は未置換またはC1−6アルキル,OH,NH2,ハロゲン,CN,NOまたはN3の1以上で置換されているC4−16アルキルまたはC4−16アルキレン;
R7及びR8はそれぞれ独立して水素、ハロゲン,OH,NH2,COOH,CHO,CN,NO,未置換またはOH,NH2,COOH,ハロゲン,CN,NOもしくはCHOで置換されたC1−6アルキル,=O,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニルもしくはN−アルキニル,またはR7及びR8は共同して二重結合,C3−6シクロアルキル,もしくはN,O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を少なくとも含む5〜10員ヘテロ環状リング;
R9はフェニル,C(=O)R10,C(=O)OR10またはベンジル;及び
R10はOH,NHOH,NH2,C1−6アルキル,フェニルまたはベンジル;
及びこれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物である。
好ましくは、式(I)の化合物はこれらの中、R1及びR2はそれぞれ独立してOH,OC1−6アルキル,OC(=O)C1−6アルキル,O−フェニルもしくはO−ベンジルまたはR1及びR2共同してジオキサランを形成し;R3及びR4はそれぞれ独立してOH,OC1−6アルキル,OC(=O)C1−6アルキル,O−フェニルもしくはO−ベンジル;R5は,
【0042】
【化2】
,
【0043】
【化3】
,
【0044】
【化4】
,
【0045】
【化5】
,
【0046】
【化6】
,
【0047】
【化7】
,
【0048】
【化8】
,
【0049】
【化9】
,
【0050】
【化10】
,
【0051】
【化11】
,
【0052】
【化12】
【0053】
または
【化13】
;
【0054】
R6は,
【化14】
,
【0055】
【化15】
,
【0056】
【化16】
,
【0057】
【化17】
,
【0058】
【化18】
,
【0059】
【化19】
,
【0060】
【化20】
,
【0061】
【化21】
,
【0062】
【化22】
,
【0063】
【化23】
,
【0064】
【化24】
,
【0065】
【化25】
,
【0066】
【化26】
,
【0067】
もしくは
【化27】
。
【0068】
より好ましくは、式(I)の化合物は以下からなる群から選択される
【0069】
【化28】
NBM−HD−1
,
【0070】
【化29】
,
【0071】
【化30】
,
【0072】
【化31】
,
【0073】
【化32】
,
【0074】
【化33】
,
【0075】
【化34】
,
【0076】
【化35】
,
【0077】
【化36】
,
【0078】
【化37】
,
【0079】
【化38】
,
【0080】
【化39】
,
【0081】
【化40】
プロポリンG
【0082】
【化41】
,
【0083】
【化42】
,
【0084】
【化43】
,
【0085】
【化44】
,
【0086】
及び
【化45】
,
【0087】
【化46】
プロポリンA
【0088】
【化47】
プロポリンB
【0089】
【化48】
プロポリンC
【0090】
【化49】
プロポリンD
【0091】
【化50】
プロポリンE
【0092】
【化51】
プロポリンF
【0093】
【化52】
プロポリンG
【0094】
【化53】
プロポリンH
【0095】
【化54】
プロポリンI
【0096】
【化55】
プロポリンJ
【0097】
本発明の他の実施態様によれば、ここで使用されるHDAC阻害剤は以下の式(II)で表される化合物である:
【0098】
【化56】
【0099】
ここで、
R1は水素,アルキル,アルケニル,C5−6シクロアルキル,5員もしくは6員の不飽和炭素環または5員もしくは6員のヘテロ環;
XはC,O,NまたはS;
YはO,NHまたはO−C1−4アルキル;
nは0〜10の整数;
mは0〜5の整数;
R2及びR3は独立してC1−6アルキル;
R4はC5−6シクロアルキルまたは5員もしくは6員不飽和炭素環もしくはヘテロ環であって、ハロゲン,CF3,OR7またはNR7R8で置換されていてもよい、ここでR7及びR8は独立して水素またはC1−6アルキル;
R5はOH,NH2またはC5−6シクロアルキル,5員もしくは6員の不飽和炭素環もしくはヘテロ環であって、シクロアルキル、炭素環及びヘテロ環は任意でハロゲン,NH2,NO2,C1−6アルコキシ,C1−6アルキルチオ,OR7,NR7R8またはCF3で置換されていてもよい;及び
R6はH,ヒドロキシまたはC2−10アルケニルで置換されていてもよいC1−10アルキル,またはR1と共同して−C2H2−を形成する;
及びこれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物である。
【0100】
好ましくは、式(II)の化合物はこれらの中で、R1,R2及びR3は独立してC1−4アルキル;R4はフェニルまたはハロゲン置換フェニル,CF3,OC1−4アルキル,R5はOH,フェニルまたはNH2置換フェニル、及びR6は水素である。
【0101】
さらに好ましくは、式(II)の化合物は以下からなる群から選択される:
【0102】
【化57】
NBM−HB−OS01
【0103】
【化58】
NBM−C−BCA−OS01
【0104】
【化59】
NBM−C−BA−OS01
【0105】
【化60】
NBM−C−BMA−OS01
【0106】
【化61】
NBM−C−BX−OS01
【0107】
【化62】
NBM−C−BCX−OS01
【0108】
【化63】
NBM−C−BMX−OS01
【0109】
【化64】
NBM−C−BFX−OS01
【0110】
【化65】
NBM−C−BBX−OS01
【0111】
【化66】
NBM−T−BX−OS01
【0112】
【化67】
NBM−T−BA−OS01
【0113】
【化68】
NBM−T−BCA−OS01
【0114】
【化69】
NBM−T−BBA−OS01
【0115】
【化70】
NBM−T−BFA−OS01
【0116】
【化71】
NBM−T−BMA−OS01
【0117】
【化72】
NBM−T−BCX−OS01
【0118】
【化73】
NBM−T−L−BCX−OS01
【0119】
【化74】
NBM−T−BMX−OS01
【0120】
【化75】
NBM−T−K−BMX−OS01
【0121】
【化76】
NBM−T−L−BMX−OS01
【0122】
【化77】
NBM−T−BTX−OS01
【0123】
【化78】
NBM−T−L−BTX−OS01
【0124】
【化79】
NBM−T−BBX−OS01
【0125】
【化80】
NBM−T−L−BBX−OS01
【0126】
【化81】
NBM−T−BFX−OS01
【0127】
【化82】
NBM−C−BBX−OS01
【0128】
【化83】
NBM−C−BFX−OS01
【0129】
【化84】
NBM−T−TMX−OS01
【0130】
【化85】
NBM−T−BMX−L−OS01
【0131】
【化86】
NBM−I−BCX−OS01
【0132】
【化87】
NBM−T−I−BMX−OS01
【0133】
【化88】
NBM−T−L−I−BMX−OS01
【0134】
【化89】
NBM−T−I−BBX−OS01
【0135】
【化90】
NBM−T−L−I−BBX−OS01
【0136】
【化91】
NBM−T−I−BCX−OS01
【0137】
【化92】
NBM−T−L−I−BCX−OS01
【0138】
【化93】
NBM−T−I−MCX−OS01
【0139】
本発明の他の実施態様によれば、ここで用いられるHDAC阻害剤はSAHA,プロポリスまたはプロポリン(例えば、プロポリンA〜J)である。好ましくは、プロポリスは、台湾グリーンプロポリス、プロポリンA、プロポリンB、プロポリンC、プロポリンD、プロポリンE、プロポリンF、プロポリンG、プロポリンH、プロポリンI、プロポリンJ、SAHA、NBM−HD−1である。
【0140】
本発明は、意外なことにHDAC阻害剤を与えられた若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリー中のMRJP3の68kDaタンパク質対64kDaタンパク質の比がHDAC阻害剤によって変化しうることを発見した。変化はエピジェネティクス修飾によって誘発され、この事実はJanet S.Graham等,T.J.Walton等,Julie C.Kiefer,及びAhmad Miremadi等によって支持されている。上記ローヤルゼリーを与えられた幼虫は、通常体よりも体重が増加しまたサイズが大きくなり、その発達期間がより短くなる。当該幼虫が発達したさなぎ及び女王バチもまた、より増加した体重と大きなサイズとなる。そのような女王バチは高い産卵能を有するため、その分ミツバチの数とミツの製造能が高くなる。
【実施例】
【0141】
実施例1:台湾グリーンプロポリス抽出物とプロポリンC並びにGの調整
台湾グリーンプロポリス抽出物
50g台湾グリーンプロポリス(TP)を95%エチルアルコール(250mL×3)で抽出し、3時間、超音波処理を行い、21時間25℃で静置した。エタノール抽出物は濾過後、減圧下で乾燥して、茶色のゴム状物を得た(34.5g)。これは使用まで−20℃で保持した。
【0142】
プロポリンC
TP抽出物5gをセファデックスLH−20カラム(Amersham Pharmacia Biotech AB社製、Uppsala、Sweden)で分画した。溶出用溶媒としてメタノールを使用し、6画分が得られた。次いで行われるクロマトグラフィからの画分を含む全ての溶出液を、シリカゲルカラムで、溶出用グラジエント溶媒系としてn−ヘキサン及びEtOAcを用いてクロマトグラフにかけた。最も活性の高い画分4(n−ヘキサン:EtOAc=70:30)の精製を、逆相(RP)分離用高速液体クロマトグラフィ(HPLC)/UVでおこなった。プロポリンCに対する45.0分の保持時間の画分を回収した。用いた条件は以下の通りである:カラム:ルナ・フェノメネックス(C18、250mm×10mm);溶媒系:メタノール:水(7:3);流速:2.5mL/分;及び検出:UV280nm。化合物はプロポリンCと同定され、その純度はピーク面積よりHPLC/UVによって95%以上であると推定された。
【0143】
プロポリンG
TP抽出物5gをセファデックスLH−20カラム(Amersham Pharmacia Biotech AB社製、Uppsala、Sweden)で分画した。溶出用溶媒としてメタノールを使用し、6画分が得られた。次いで行われるクロマトグラフィからの画分を含む全ての溶出液を、シリカゲルカラムで、溶出用グラジエント溶媒系としてn−ヘキサン及びEtOAcを用いてクロマトグラフにかけた。最も活性の高い画分3(n−ヘキサン:EtOAc=70:30)の精製を、逆相(RP)分離用高速液体クロマトグラフィ(HPLC)/UVでおこなった。プロポリンGに対する25.0分の保持時間の画分を回収した。用いた条件は以下の通りである:カラム:ルナ・フェノメネックス(C18、250mm×10mm);溶媒系:メタノール:水(8.5:1.5);流速:3.5mL/分;及び検出:UV280nm。化合物はプロポリンGと同定され、その純度はピーク面積よりHPLC/UVによって95%以上であると推定された。
【0144】
実施例2:ローヤルゼリーと女王バチの幼虫の収集と分析
同一のMRJP3タンパク質の発現レベルの巣箱を選択して用いた。二つの巣箱を対照群と試験群として試験した。第1日目に、巣箱内に当初含まれているミツを振ることで取り除いた。そしてミツバチ(Apis mellifera)に二日にわたり二度、砂糖水を与えた(対照群には通常の砂糖水を、試験群には特別の砂糖水)。特別の砂糖水は、組成された砂糖粉末を水に10倍希釈した。3日目に、1.5日齢の幼虫(同一女王の子供である)を巣箱に移虫し、ミツバチは一度給餌された(対照群には通常の砂糖水を、試験群には特別の砂糖水)。24,48及び72時間後に、20匹の幼虫と、当該20匹の幼虫のいた個室のローヤルゼリーを定性分析、定量分析及びプロテオミック分析用に収集した。
【0145】
定性分析のために、ローヤルゼリーと殺菌水を1:10に重量比で混合して抽出した。水相中の特定量のタンパク質を取り除いてブラッドフォード色素結合法(Bio−Rad protein assay,Bio−Rad Laboratories,Inc.)によってタンパク質濃度を測定した。タンパク質試料の595nmにおける吸収をElisa Reader(Bio−TEK)によって測定した。10μgのタンパク質を12.5%SDS−PAGEゲルに載置し、60ボルトで30分間、さらに120ボルトで2時間処理し、異なる分子量のタンパク質を分離した。ゲルはクーマシーブルー(Commassie Brilliant Blue R,Sigma,B−0630)で15分間染色し、ゲルの背景が透明となるよう、脱染色バッファ(メタノール:酢酸:ddH2O、20:7:73の比率)で脱染色した。
【0146】
幼虫を1×PBSで洗浄して幼虫の身体から残余のローヤルゼリーを取り除き、その後すり潰した。すり潰した後、殺菌済み水を適量加え、タンパク質抽出を行った。水相中の特定量のタンパク質を取り除き、タンパク質濃度を上記方法により測定し、10μgのタンパク質を12.5%SDS−PAGEゲルに載置し、60ボルトで30分間、さらに120ボルトで2時間処理し、異なる分子量のタンパク質を分離した。ゲルはクーマシーブルー(Commassie Brilliant Blue R,Sigma,B−0630)で15分間染色し、ゲルの背景が透明となるよう、脱染色バッファ(メタノール:酢酸:ddH2O、20:7:73の比率)で脱染色した。
【0147】
定量分析のために、異なる時間点(24、48または72時間)における対照群あるいは試験群の異なる巣箱の女王バチのローヤルゼリーと幼虫を収集した。それらの体重を測定し、また幼虫は分析と比較のために写真撮影した。
【0148】
プロテオミック分析とタンパク質同定のために、女王バチのローヤルゼリーまたは幼虫の上澄からの懸濁液をロータリーエバポレータ(Speed Vac)で減圧乾燥し、再水和バッファに再溶解した。ブラッドフォード色素結合法によってタンパク質濃度を測定した。その後、女王バチの10μgのローヤルゼリーと100μgの幼虫を以下のステップにしたがって2次元電気泳動(2−DE)の試験を行った:試料をまずpH3〜10のストリップを用いて等電点電気泳動を用いて分離し、ついで平衡化し、それからソジウムドデシルサルフェート−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(積層ゲル:30%アクリルアミド(Bio−Rad)、Tris pH6.8、10%APS、ddH2O、1%SDS、TEMED;分離ゲル:30%アクリルアミド(Bio−Rad)、Tris pH8.8、10%APS、ddH2O、1%SDS、TEMED)によって分離した。ゲルを撮像し、イメージマスター2Dプラチナ6.0ソフトウェアで分析した。ゲル上の対象のスポットはゲル内トリプシン消化を受け、またマス分光計LC−ESI−Q−TOF MS/MSで分析した。得られたデータをマスコットソフトウェアによるタンパク質同定用データベースと比較した。
【0149】
実施例3:幼虫の成長誘導における台湾グリーンプロポリス抽出物の効果
10種のプロポリン、すなわちプロポリンAからJは台湾グリーンプロポリス抽出物に見いだされ、プロポリンC,D,F及びGが主立った種類である。ミツバチは砂糖1kgに対して台湾グリーンプロポリス抽出物を1.25,2.5及び5.0g含ませた砂糖水を3回与えられ、1.5日齢の幼虫を移虫後、24,48及び72時間後に女王バチの幼虫と働きバチによって作り出されたローヤルゼリーを収集した。表1及び図1に示されるように、台湾グリーンプロポリス抽出物を1.25から5.0g/kg与えることで著しく幼虫の成長が促進された。24から48時間の期間では、対照群の幼虫は、その体重は約1.59倍に増え、4.73mgから12.26mgに成長した。一方、高投与量の台湾グリーンプロポリス抽出物(5g/kg)で処理した群の幼虫は、その体重が約2.94倍に増え、6.78mgから26.72mgに成長した。48から72時間の期間では、対照群の幼虫は、その体重は約1.58倍に増え、12.26mgから31.70mgに成長した。一方、高投与量の台湾グリーンプロポリス抽出物(5g/kg)で処理した群の幼虫は、その体重が約3.03倍に増え、26.72mgから107.55mgに成長した。
【0150】
表1:台湾グリーンプロポリス抽出物を与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発した。
【表1】
【0151】
上記データは台湾グリーンプロポリス抽出物を含む砂糖をミツバチに与えることで、働きバチは特別なローヤルゼリーを製造し、さらに当該特別なローヤルゼリーを与えられた幼虫は急速成長がおきたことを示す。
【0152】
特別なローヤルゼリーをさらに分析して、通常のローヤルゼリーと量及び質の点での相違点を決定した。我々が得たデータによれば、(処置群から得られた)特別なローヤルゼリーの収量は(対照群から得られた)通常のローヤルゼリーのそれと著しい相違はなかった(表2参照)。若い働きバチは、幼虫の大きさと消費に応じて、幼虫にとって十分なローヤルゼリーを提供した。
【0153】
表2:台湾グリーンプロポリス抽出物は若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーの収量に著しくは影響を及ぼさなかった。
【表2】
【0154】
通常のローヤルゼリーと特別なローヤルゼリー中の水溶性タンパク質の量についても比較したが、大きな差異は認められなかった(表3参照)。上記結果により、台湾グリーンプロポリス抽出物のみが、MRJP3タンパク質の異なるアイソフォームの発現レベルの比に影響を及ぼすが、新たなタンパク質合成は誘発しない。すなわち、総タンパク質量は変化しない。
【0155】
表3:台湾グリーンプロポリス抽出物は若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリー中の水溶性タンパク質の量に著しくは影響を及ぼさなかった。
【表3】
【0156】
また、特別なローヤルゼリーを消費することで、女王バチの幼虫の急速成長が誘発されたのみならず、これら幼虫のタンパク質レベルも増加したことがわかった(表4参照)。タンパク質レベルは、これらの幼虫に認められた体重増加に比例して増加していたように見受けられた(表1参照)。
【0157】
表4:台湾グリーンプロポリス抽出物は幼虫のタンパク質レベルの増加をもたらした。
【表4】
【0158】
実施例4:プロポリンCの幼虫成長に対する影響
プロポリンCは台湾グリーンプロポリスの主要成分であり、総プロポリン中でも最も豊富な種でもある。上記の実験方法を行うことで、50から100mg/kgのプロポリンCで処理することで若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーのタンパク質成分に著しく変化があり、また上記ローヤルゼリーを与えられた幼虫の急速成長が誘発された(表5及び図2参照)。幼虫の成長を促進するためには、プロポリンCの投与量は300mg/kgに調整すべきであるように見受けられた。データによれば、48から72時間の期間には、対照群の幼虫は、その体重は約3.58倍に増え、13.45mgから61.60mgに成長した。一方、高投与量のプロポリンC(100mg/kg)で処理した群の幼虫は、その体重が約6.30倍に増え、13.48mgから98.48mgに成長した。
【0159】
表5:プロポリンCを与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発した。
【表5】
【0160】
実施例5:プロポリンD,F及びGのMRJP3タンパク質の発現及び幼虫の成長に対する影響
プロポリンD,F及びGもまた、台湾グリーンプロポリスの主要成分である。我々の研究において、ミツバチは砂糖1kgに対して150,300及び600mgのプロポリンGを含む砂糖水を3回与え、1.5日齢の幼虫を移虫後、24,48及び72時間後に女王バチの幼虫と働きバチによって作り出されたローヤルゼリーを収集した。図3に示すように、特別なローヤルゼリー中の水溶性タンパク質MRJP3(試験/処理群から)の発現は、著しく通常のローヤルゼリーのそれ(対照群から)とは異なっていた。72時間後に、対照群の68及び64kDaのMRJP3は2:8の比率であったのに対して、中投与量(300mg/kg)のプロポリンGで処理した群におけるそれは6.5:3.5であった。明らかに、68kDaのMRJP3タンパク質の発現は増加し、64kDaのMRJP3タンパク質は著しく減少した。
【0161】
プロポリンGを与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーが幼虫の成長に与える効果に関しては、24から48時間の期間では、対照群の幼虫は、その体重が約1.60倍に増え、5.23mgから13.57mgに成長した。高投与量の台湾グリーンプロポリス抽出物(5g/kg)で処理したポジティブ対照群の幼虫は、その体重が約4.47倍に増え、5.53mgから30.27mgに成長した。一方、300mg/kgのプロポリンGで処理した群の幼虫は、その体重が約5.05倍に増え、3.93mgから23.80mgに成長した。48から72時間の期間では、対照群の幼虫は、その体重が約1.22倍に増え、13.57mgから30.07mgに成長した。高投与量の台湾グリーンプロポリス抽出物(5g/kg)で処理したポジティブ対照群の幼虫は、その体重が約2.41倍に増え、30.27mgから103.30mgに成長した。一方、300mg/kgのプロポリンGで処理した群の幼虫は、その体重が約5.79倍に増え、23.80mgから161.73mgに成長した(表6参照)。
【0162】
表6:プロポリンGを与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発した
【表6】
【0163】
上記データは特別なローヤルゼリーがより滋養分のある組成をなしていること、またそれゆえ、幼虫の急速成長を誘発することができること、を意味している。
【0164】
プロポリンD及びFについても同様の効果となった結果が見られた。しかし、効果はあまり顕著ではなかった。
【0165】
実施例6:新規HDAC阻害剤NBM−HD−1のMRJP3タンパク質の発現及び幼虫の成長への影響
NBM−HD−1はプロポリンGの合成に由来し、新規なヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤として知られている。上記の実験方法を行うことで、50から200mg/kgのNBM−HD−1で処理を行うと、若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーのタンパク質成分の比率が著しく変化することが見いだされた。例えば、72時間において、対照群における68及び64kDaのMRJP3はその比が4:6であり、一方、高投与量(5g/kg)の台湾グリーンプロポリス抽出物で処理した群(すなわち、ポジティブ対照群)のこれらに対する比は7:3であった。一方、200mg/kgのNBM−HD−1で処理した群における68kDaと64kDaのMRJP3はその比が9:1であった(図4参照)。
【0166】
さらに、表7に示すように、NBM−HD−1での処理は幼虫の急速成長を誘発する。
【0167】
表7:NBM−HD−1を与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発する。
【表7】
【0168】
上記データは、異なるMRJP3タンパク質のアイソフォーム間のタンパク質比の変化は、幼虫の体重増加で示されたように、女王バチの幼虫の急速成長に帰着することを証明している。
【0169】
二次元ゲル電気泳動と高解像度質量分析法により異なる対照群と試験群とからの幼虫において発現した水溶性タンパク質を分析すると、NBM−HD−1で処理した群からの幼虫においてMRJP1,2及び3(特にMRJP3)のタンパク質レベルの増加が証明された(図5参照)。
【0170】
実施例7:HDAC阻害剤SAHAのMRJP3タンパク質の発現と幼虫成長への影響
SAHAは非常に効果的なHDAC阻害剤である。5から15mg/kgのSAHAで処理を行うと、若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーのタンパク質成分の比率が著しく変化した。例えば、72時間において対照群における68及び64kDaのMRJP3はその比が2:8であり、一方、高投与量(5g/kg)の台湾グリーンプロポリス抽出物と150mg/kgのプロポリンGで処理した群(すなわち、ポジティブ対照群)のこれらに対する比は、それぞれ5.5:4.5及び8:2であった。一方、15mg/kgのSAHAで処理した群における68kDaと64kDaのMRJP3はその比が4:6であった(図6参照)。
【0171】
表8:SAHAを与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発する。
【表8】
【0172】
実施例8:特別な女王バチの発達
実験を行い、台湾グリーンプロポリス抽出物を与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーを与えられた幼虫の発達及び変態について検討した。先に証明されたように、台湾グリーンプロポリス抽出物を用いた処理は、幼虫段階における幼虫の成長を著しく促進した。幼虫が発達するにしたがい、さなぎ段階において試験群(5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理)からの第4日目から第8日目におけるさなぎは、あきらかに対照群からのそれよりも大きいサイズであった(図9(a)参照)。幼虫とさなぎの体重を測定したところ、試験群からの(幼虫段階における)第3日目の幼虫は対照群のそれよりも100%の割合で重かった(図9(b)参照)。さなぎ段階において、第4日目と第8日目のさなぎの体重は、対照群で(さなぎ当たり)196.0mgから136.10mgに低下していた(約30%減少)。それに対して試験群においては(さなぎ当たり)271.30mgから244.53mgに低下していた(約9.8%減少)(図9(c)参照)。明らかに、台湾グリーンプロポリス抽出物で処理した試験群からのさなぎは、変態中にエネルギー消費が少なく済んでいる。また試験群からの第8日目のさなぎは対照群のそれと比較して約80%で重いことが分かった。これは上記のように、幼虫段階における対照群と試験群との間の体重差が100%有ることによる。
【0173】
実施例9:我々の特別なローヤルゼリーの生物学的機能
次に、台湾グリーンプロポリス抽出物を与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーの、抗ガン機能及び神経幹細胞分化における役割について調査した。
【0174】
抗ガン研究においては、財団法人食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute)(新竹市、台湾)から購入したHs683細胞(ヒト神経膠腫細胞)を、2mMグルタメート及び0.1mM NEAA、100mg/Lピルビン酸ナトリウム、10%FBS,並びに1%希釈ペニシリン及びストレプトマイシンとともに、RPMI1640(Gibco)中で培養し、95%空気、5%CO2の多湿環境で37℃に維持した。細胞(3×105/ディッシュ)を6ウェルディッシュ中で培養し、一晩インキュベートした後、血清飢餓培地に変更し、異なる濃度の水溶性ローヤルゼリータンパク質で処理し、4日培養した。ポジティブ対照として、5ng/mLのEGFを用いた。45μg/mLのローヤルゼリータンパク質で48時間処理することで、B1及びC1群においてHs683細胞の成長が著しく抑制された(図7参照)。
【0175】
分化についての研究においては、神経幹細胞をB27(Gibco)と共にNeural−basal培地(Gibco)中で培養し、95%空気、5%CO2の多湿環境で37℃に維持した。ニューロスフェアを10μg/mLの水溶性ローヤルゼリータンパク質で処理し、3日培養した。ポジティブ対照として、EGF(5ng/mL)を用いた。図8に示すように、10μg/mLのローヤルゼリータンパク質で72時間処理することで、B1及びC1群において、神経幹細胞のニューロン細胞、膠細胞、希突起膠細胞及びへの分化が明らかに誘発された。
【0176】
上記データにより、HDAC阻害剤は若い働きバチの下咽頭腺及び大顎腺におけるクロマチンリモデリングに影響しうること、それゆえ他のMRJPタンパク質の発現を変化させることなく、68及び64kDaのMRJP3タンパク質の発現を変化することを示している。68及び64kDaのMRJP3タンパク質の間の比の変化は、各体重増加幼虫において認められ、シフトは68kDaあるいは64kDaのMRJP3アイソフォームいずれでもあり得る。多形型MRJP3の選択的スプライシングはHDAC阻害剤によって影響を受ける可能性があり、そしてその結果として68kDa及び64kDaのアイソフォームの発現の変化に帰着する。それゆえ、二種のアイソフォームタンパク質の発現を調整することで、幼虫の成長を決定する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、若い働き(保育)バチにヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)またはHDAC阻害剤(複数を含む)を含む混合物もしくは処方を与えることでハチの幼虫、さなぎ、女王バチの成長を促進する方法に関する。特にHDACiを与えられた若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーは、68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を有するであろう。
【背景技術】
【0002】
ミツバチは近代農業においてもっとも有益な生物の一つであり、ローヤルゼリー、ハチミツ、プロポリス、花粉などの様々な製品を提供し、それらは人間に対する栄養源として供される(Hellner M等、2008年)。したがって、ミツバチの生育、発展、発達には多大な関心が寄せられている。
【0003】
ミツバチは母系社会であり、ミツバチのコロニーは女王バチによって導かれている。ミツバチのコロニーにおいて、働きバチと女王バチは受精卵から発生し、雄バチは未受精卵から発生する(Winston M.L.,1987年)。女王は巣の個室内で単独で産卵する。幼虫は3,4日で孵化する。幼虫はそれから若い働きバチによって育仔され、個室内でいくつかの段階を経て発達する。さなぎになると、働きバチによって個室は封鎖される。女王は16日で、働きバチは21日で、また雄バチは24日で個室から現れる。女王は体が大きく、また寿命は通常、働きバチの10〜15倍である。受精卵が働きバチに発達するか女王に発達するかはミツバチのコロニーによって調整されている。原則として一つのミツバチのコロニーには一匹の女王のみが存在する。そのうえ、女王バチは同一のコロニーにおいては他のハチとは異なる餌を与えられる。女王バチは生きている間中、ローヤルゼリーを与えられ、働きバチはその発達の初期においてのみローヤルゼリーを与えられる。数人の研究者は働きバチもその発達期に渡ってローヤルゼリーを与えられると信じている一方で、働きバチに与えられるローヤルゼリーは女王に与えられるものとはその化学成分が異なってかもしれない。いずれにしてもミツバチのコロニーを維持するにあたり、ローヤルゼリーは最も重要な物質となっている(Robinson G.E.等、1987年)。
【0004】
ローヤルゼリーは女王バチの幼虫と女王にとって最も重要な食糧であり栄養源である。それは、若い働きバチの下咽頭腺及び大顎腺より分泌され、ローヤルゼリーの成分は幼虫の異なる発展期において変化するであろう。一般的に、その様な変化はローヤルゼリーのタンパク質成分というよりもむしろ糖質に反映されていると考えられる(Peiren N.等、2005年)。
【0005】
ローヤルゼリーには人間の健康を向上しうる多くの物質を含んでおり、様々な薬理的な特性を有することが知られている(Takaki−Doi S.等、2009年;Mannoor M.K.等、2009年;及びGasic S.等、2007年)。したがって、ローヤルゼリーは人間の健康増進のための健康食に広く用いられている。近年、研究により、ローヤルゼリーは免疫調整を増進することができること(Vuecvic D.等、2007年)、抗菌機能を呈すこと(Boukraa L.,2008年)、脳神経を育成すること(Hashimoto M.等、2005年)、また抗ガン及び抗酸化活性を示すこと(Guo H.等、2008年)、が証明された。ローヤルゼリーは、乳白色の濃厚な液体で、約60〜70%の水、12〜15%のタンパク質、10〜12%の糖分、3〜5%の脂質、および微量成分とミネラルを含むことが知られている(Scarselli R.等、2005年)。タンパク質成分の中で、約89〜90%が水溶性タンパク質であり、残りが水不溶性タンパク質である。すなわち、ローヤルゼリーに含まれるほとんどのタンパク質は水溶性である。
【0006】
MRJP(ローヤルゼリー主要タンパク質)ファミリー(MRJP1〜9)は、これらの水溶性タンパク質のなかでも主成分である(Schmitzova J.等、1998年)。これらのMRJPタンパク質のアミノ酸配列は解析されているが、いまだその機能は不明である。
【0007】
MRJP1はミツバチの脳に見いだされ、ミツバチの挙動を司ると考えられている。それはローヤルゼリー中の水溶性タンパク質の44%を占め、MRJPファミリータンパク質の中でもっとも豊富なアイソフォームである(Malecova B.等、2003年)。今日、MRJP3には非常に高い関心が寄せられており、免疫調整機能を有すると考えられている(Kohno K.等、2004年)。また、MRJP3はローヤルゼリー中の総水溶性タンパク質の内、12%を占め、すべてのMRJPタンパク質のなかで、次にもっとも豊富なアイソフォームである(MRJP1〜9)。MRJP3はその抗アレルギー及び抗炎症活性から特異的なものである。60〜70kDaのタンパク質はMRJP3の変異体であり、高多形型MRJP遺伝子の産物である(Stefan Albert等、1999年)。
【0008】
MRJPは豊富な必須アミノ酸と他の栄養素となる化合物を提供する(Furusawa T等、2008年)。ローヤルゼリーは女王バチにとっての唯一の栄養源でありMRJPはローヤルゼリーにおける最も重要なタンパク質であるので、ローヤルゼリーを特異的な化合物で発展する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hellner M,Winter D, von Georgi R,Munstedt K.,アピセラピー:ドイツの養蜂家における使用と経験(Apitherapy:のusage and experience in german beekeepers.),Evid Based Complement Alternat Med.2008;5(4):475−9.
【非特許文献2】Winston M L.,ミツバチの生物学(The Biology of the Honeybee.),Harvard University Press:Cambridge,MA,1987.
【非特許文献3】Robinson G E.,ミツバチの神経生物学と挙動(In Neurobiology and Behavior of Honeybee);Menzel R,Mercer R,Eds.;Springer−Verlag:New Yorl,1987;pp266−279.
【非特許文献4】Peiren N,Vanrobaeys F,de Graaf DC,Devreese B,Van Beeumen J,Jacobs FJ.,プロテオミック手法により再考したミツバチ毒のタンパク質組成(The protein composition of honeybee venom reconsidered by a proteomic approach.),Biochim Biophys Acta.,2005;1752(1):1−5.
【非特許文献5】Takaki−Doi S,Hashimoto K,Yamamura M,Kamei C.,自然発症高血圧ラットにおけるローヤルゼリータンパク質加水分解物及びその断片の降圧活性(Antihypertensive activities of royal jelly protein hydrolysate and its fractions in spontaneously hypertensive rats.),Acta Med Okayama.,2009;63(1):57−64.
【非特許文献6】Mannoor MK,Shimabukuro I,Tsukamotoa M,Watanabe H,Yamaguchi K,Sato Y.,ミツバチのローヤルゼリーは、SLE自然発症NZB×NZW F1マウスにおける自己免疫を抑制する(Honeybee royal jelly inhibits autoimmunity in SLE−prone NZB x NZW F1 mice.),Lupus.,2009;18(1):44−52.
【非特許文献7】Gasic S,Vucevic D,Vasilijic S,Antunovic M,Chinou I,Colic M.,インビトロでのローヤルゼリー成分の免疫調整活性の評価(Evaluation of the immunomodulatory activities of royal jelly components in vitro.),Immunopharmacol Immunotoxicol.,2007;29(3−4):521−36.
【非特許文献8】Vucevic D,Melliou E,Vasilijic S,Gasic S,Ivanovski P,Chinou I,Colic M.,ローヤルゼリーから単離される脂肪酸はインビトロで樹状細胞性免疫応答を調整する(Fatty acids isolated from royal jelly modulate dendritic cell−mediated immune response in vitro.),Int Immunopharmacol.,2007;7(9):1211−20.
【非特許文献9】Boukraa L.,緑膿菌に対するローヤルゼリーとハチミツの付加活性(Additive activity of royal jelly and honey against Pseudomonas aeruginosa.),Altern Med Rev.,2008;13(4):330−3.
【非特許文献10】Hashimoto M,Kanda M,Ikeno K,Hayashi Y,Nakamura T,Ogawa Y,Fukumitsu H,Nomoto H,Furukawa S.,ローヤルゼリーの経口投与により、成熟マウス脳の海馬におけるグリア細胞系列派生神経栄養因子及び神経フィラメントのmRNA発現が促進される(Oral administration of royal jelly facilitates mRNA expression of glial cell line−derived neurotrophic factor and neurofilament H in the hippocampus of the adult mouse brain.),Biosci Biotechnol Biochem.,2005;69(4):800−5.
【非特許文献11】Guo H,Ekusa A,Iwai K,Yonekura M,Takahata Y,Morimatsu F.,ローヤルゼリータンパク質はインビトロ及びインビボで脂質過酸化を抑制する(Royal jelly peptides inhibit lipid peroxidation in vitro and in vivo.), J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo).,2008;54(3):191−5.
【非特許文献12】Scarselli R,Donadio E,Giuffrida MG,Fortunato D,Conti A,Balestreri E,Felicioli R,Pinzauti M,Sabatini AG,Felicioli A.,ローヤルゼリープロテオーメに向けて(Towards royal jelly proteome.), Proteomics.,2005;5(3):769−76.
【非特許文献13】Schmitzova J,Klaudiny J,Albert S,Schroder W,Schreckengost W,Hanes J,Judova J,Simuth J.,セイヨウミツバチの主たるローヤルゼリータンパク質ファミリー(A family of major royal jelly proteins of the honeybee Apis mellifera L.),Cell Mol Life Sci.,1998;54(9):1020−30.
【非特許文献14】Kohno K,Okamoto I,Sano O,Arai N,Iwaki K,Ikeda M,Kurimoto M.,ローヤルゼリーは活性マクロファージによる炎症性サイトカインの生成を抑制する(Royal jelly inhibits the production of proinflammatory cytokines by activated macrophages.),Biosci Biotechnol Biochem.,2004;68(1):138−45.
【非特許文献15】Malecova B,Ramser J,O‘Brien JK,Janitz M,Judova J,Lehrach H,Simuth J.,ミツバチ(セイヨウミツバチ)mrjp遺伝子ファミリー:幼虫の食事として最も豊富なタンパク質をコードする遺伝子、mrjpの推定プロモータとゲノム構造の計算分析(Honeybee (Apis mellifera L.) mrjp gene family: computational analysis of putative promoters and genomic structure of mrjp1, the gene coding for the most abundant protein of larval food.),Gene.,2003;303:165−75.
【非特許文献16】Furusawa T,Rakwal R,Nam HW,Shibato J,Agrawal GK,Kim YS,Ogawa Y,Yoshida Y,Kouzuma Y,Masuo Y,Yonekura M.,一次元及び二次元プロテオミックプラットフォームを用いた包括的なローヤルゼリー(RJ)プロテオミックスにより新規RJタンパク質と潜在的なホスホ/グリコプロテインを明らかにする(Comprehensive royal jelly (RJ) proteomics using one− and two−dimensional proteomics platforms reveals novel RJ proteins and potential phospho/glycoproteins.),J Proteome Res.,2008;7(8):3194−229.
【非特許文献17】Stefan Albert,Jaroslav Klaudiny,and Jozef Simuth.,ミツバチ(セイヨウミツバチ)のローヤルゼリーの高多形型タンパク質であるMRJP3の分子的特徴について(Molecular characterization of MRJP3, highly polymorphic protein of honeybee(Apis mellifera)royal jelly.),Insect Biochemistry and Molecular Biology,29(1999)427−434.
【非特許文献18】Julie C.Kiefer,,発達におけるエピジェネティクス(Epigenetics in Development.),Developmental Dynamics,236:1144−1156,2007.
【非特許文献19】Ahmad Miremadi,Mikkel Z.Oestergaard,Paul D.P.Pharoah,and Carlos Caldas,エピジェネティク遺伝子のガン遺伝学(Cancer genetics of epigenetic genes.),Human Molecular Genetics,2007,vol.16,Review Issue 1,R28−R49.
【非特許文献20】Janet S.Graham,Stanely B.Kaye,and Robert Brown.,充実性腫瘍におけるエピジェネティクス療法の展望と落とし穴(The promises and pitfalls of epigenetic therapies in solid tumors.),European Journal of Cancer,45(2009),1129−1136.
【非特許文献21】T. J. Walton,G.Li,R.Seth,S.E.McArdle,M.C.Bishop,and R.C.Rees,DNA脱メチル化及びヒストン脱アセチル化阻害の協働により、エストロゲン受容体βの再発現と前立腺ガン細胞系列におけるアポトーシスが誘導される(DNA demethylation and histone deacetylation inhibition co−operate to re−express estrogen receptor beta and induce apoptosis in prostate cancer cell−lines.),The Prostate,68:210−222(2008).
【非特許文献22】Oi Wah Stephanie Yap,Ganapathy Bhat,Liang Liu,and Trygve O. Tollefsbol,,卵巣上皮ガン細胞におけるエストロゲン受容体β遺伝子のエピジェネティク修飾(Epigenetic modifications of the estrogen receptor beta gene in epithelial ovarian cancer cells.),Anticancer Research,29:139−144(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、通常体よりも少なくとも体重で100%大きく、また通常体よりも数倍体重が大きいであろうミツバチの幼虫、少なくとも体重で50%大きく、また通常体よりも1から数倍体重で大きいさなぎ、また少なくとも体重で50%大きく、また通常体よりも1から数倍体重で大きい女王バチを製造する方法を提供する。
【0011】
本発明は、対照幼虫よりも少なくとも体重で100%大きいミツバチの幼虫を製造する方法を提供する。当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これらの若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることとを含み、一方、対照群のミツバチの幼虫にはHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与える。
【0012】
本発明は、対照さなぎよりも少なくとも体重で50%大きいさなぎを、または、対照女王バチよりも少なくとも体重で50%大きい女王バチを製造する方法を提供する。当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これら若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることと、当該ミツバチの幼虫から発達させたさなぎまたは女王バチを得ることとを含み、一方、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与えるミツバチの幼虫から対照さなぎまたは対照女王バチを発達させる。
【0013】
本発明はさらに、対照ローヤルゼリーに対し、68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むローヤルゼリーを提供する。
【0014】
本発明はさらに、働きバチのmrjp3遺伝子に対するエピジェネティクスを調整する方法であって、働きバチにHDAC阻害剤を与えることで、働きバチのmrjp3遺伝子の発現を調整することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は台湾グリーンプロポリス抽出物を与えられた若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌し、それが幼虫の急速成長を誘発することを示す図である。U−1とU−2:対照群;A−1とA−2:1.25g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;B−1とB−2:2.50g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;C−1とC−2:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【図2】図2はプロポリンCを与えられた若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌し、それが幼虫の急速成長を誘発することを証明する図である。U−2:対照群;50mg/kgのC1−2:プロポリンCで処理;C2−2:100mg/kgのプロポリンCで処理。
【図3】図3はプロポリンCを与えられた若い働きバチが分泌するローヤルゼリー中で確認された水溶性タンパク質成分を示す。試料は異なる時間点で採取された。U−1:対照群;T−1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理したポジティブ対照群;G1−1:150mg/kgのプロポリンGで処理;G2−1:300mg/kgのプロポリンGで処理;G3−1:600mg/kgのプロポリンGで処理。
【図4】図4はNBM−HD−1を与えられた若い働きバチが分泌するローヤルゼリー中で確認された水溶性タンパク質成分を示す。試料は異なる時間点で採取された。U−1:対照群;T−1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理したポジティブ対照群;H1−1:50mg/kgのNBM−HD−1で処理;H2−1:100mg/kgのNBM−HD−1で処理;H3−1:200mg/kgのNBM−HD−1で処理。
【図5】図5はNBM−HD−1で処理した群からの72時間後における幼虫から抽出した水溶性タンパク質の二次元ゲル電気泳動分析を示す。L−1:MRJP1;L−2:MRJP3;L−3:MRJP2;L−4:MRJP2;L−5:MRJP3;L−6:MRJP3;L−7:MRJP3;L−8:MRJP2。U1−1:対照群;H3−1:200mg/kgのNBM−HD−1で処理。
【図6】図6はSAHAを与えられた若い働きバチにより分泌されるローヤルゼリー中で確認された水溶性タンパク質成分を示す。試料は72時間の時点で採取された。U−1:対照群;T−1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理したポジティブ対照群;G−1:150mg/kgのプロポリンGで処理したポジティブ対照群;S1−1:5mg/kgのSAHAで処理;S2−1:15mg/kgのSAHAで処理。
【図7】台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはヒト神経膠腫Hs683細胞の増殖を抑制することができた。U1:対照群;A1:1.25g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;B1:2.50g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理:C1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【図8】台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはラット神経幹細胞の分化を誘発することができた。U1:対照群;A1:1.25g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;B1:2.50g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理:C1:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理;EFG:ポジティブ対照群。
【図9(a)】図9(a)は台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはラット神経幹細胞の分化を誘発することができた。U1:対照群;T:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【図9(b)】図9(b)は台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはラット神経幹細胞の分化を誘発することができた。U1:対照群;T:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【図9(c)】図9(c)は台湾グリーンプロポリス抽出物が若い働きバチが特別なローヤルゼリーを分泌することを誘発することを証明し、当該ローヤルゼリーはラット神経幹細胞の分化を誘発することができた。U1:対照群;T:5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられた働き(保育)バチがミツバチの幼虫の成長速度を早めることが可能であり、その結果、大きな幼虫、さなぎ、及び女王バチを得ることを発見する。結果として得られたミツバチの幼虫は通常体よりも少なくとも体重で100%大きく、また数倍体重が大きいであろう。またさなぎは通常体よりも少なくとも体重で50%大きく、また通常体よりも1から数倍体重で大きいであろう。また女王バチは通常体よりも少なくとも体重で50%大きく、また通常体よりも1から数倍体重で大きいであろう。
【0017】
本発明はさらに、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物がエピジェネティクスを経てローヤルゼリー中のMRJP3において68対64kDaタンパク質の比を変化しうることを見いだす。HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられた若い働きバチはエピジェネティクスを経て特異的なローヤルゼリーを生成し、ここで68対64kDaタンパク質の比が変化する。本発明は、特異的なローヤルゼリーがそれを与えられた女王バチの幼虫の成長を促進し、そして幼虫、それから得られたさなぎ並びに女王バチの体重が著しく増えることを見いだした。
【0018】
一局面において、本発明は対照幼虫よりも少なくとも体重で100%大きいミツバチの幼虫を製造する方法を提供する。当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これらの若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることとを含み、一方、対照群のミツバチの幼虫にはHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与える。本発明の実施態様によれば、ミツバチの幼虫は働きバチによってそれらが分泌するローヤルゼリーを与える、または人間によって働きバチから収集したローヤルゼリーを与えることができる。本発明の実施態様によれば、上記のローヤルゼリーを与えられた幼虫の72時間後の体重は、150%よりも増加する。好ましくは、体重は約2から5倍で増加する(すなわち、200%から500%)。さらに好ましくは、体重は約3から5倍で増加する(すなわち、300%から500%)。本発明によれば、上記のローヤルゼリーは、対照のローヤルゼリーに対して、68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含む。
【0019】
本発明によれば、本発明のミツバチの幼虫から発達したさなぎ及び女王バチが、それぞれ対照のさなぎ及び女王バチよりも体重が重くなる。したがって、本発明は、対照さなぎよりも少なくとも体重で50%大きいさなぎを、または、対照女王バチよりも少なくとも体重で50%大きい女王バチを製造する方法を提供する。当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これら若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることと、当該ミツバチの幼虫から発達させたさなぎまたは女王バチを得ることとを含み、一方、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与えるミツバチの幼虫から対照さなぎまたは対照女王バチを発達させる。本発明の実施態様によれば、ミツバチの幼虫は働きバチによってそれらが分泌するローヤルゼリーを与える、または人間によって働きバチから収集したローヤルゼリーを与えることができる。
【0020】
ある局面においては、本発明はローヤルゼリー中のMRJP3の68対64kDaタンパク質の比を変化させる方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることで、対照となるローヤルゼリーに対して、MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が変化したローヤルゼリーを製造する。
【0021】
他の局面においては、本発明は対照ローヤルゼリーに対して68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むローヤルゼリーを製造する方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、若い働きバチによって製造されたローヤルゼリーを収集することとを含む。
【0022】
他の局面において、本発明はさらに対照ローヤルゼリーに対して68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むローヤルゼリーを提供する。
【0023】
本発明によれば、MRJP3の68対64kDaタンパク質の比は、対照に対して約1.5〜12倍で、1.5〜5倍で、2〜6倍で、2〜10倍で、4〜12倍で、あるいは2〜4倍で増加しうる。より好ましくは、MRJP3の68対64kDaタンパク質の比は、対照に対して約2〜4倍で、あるいは4〜10倍で増加しうる。
【0024】
他のさらなる局面においては、本発明は働きバチのMRJP3遺伝子に対するエピジェネティクスを調整する方法であって、働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることで、働きバチのMRJP3遺伝子の発現を調整することを含む方法を提供する。本発明によれば、エピジェネティクスはDNAのメチル化またはHDACを阻害することであってもよい。DNAのメチル化は、DNA配列の変化なしで遺伝子発現における遺伝性の変化であるエピジェネティクス変化である。DNAのメチル化は、遺伝性遺伝子抑制を引き起こす共有結合修飾である。DNAのメチル化は二つの方法の内、一つにおいて抑制を引き起こす。第一は、メチル化はDNAの認識部位に結合する転写因子に直接影響しうる。第二は、メチル−CpG結合ドメインタンパク質(MBPs)は、ヒストン脱アセチル化酵素またはヒストンメチルトランスフェラーゼをかくまう抑制補体複合体を補充することによって抑制を補強しうる(Juile C.Kiefer、2007年)。HDAC阻害剤は若い働きバチにおいてMRJP3の68及び64kDaタンパク質の発現を変えるので、HDAC阻害剤がヒストンハイパーアセチレーションを調整し、若い働きバチにおける多形型mrjp3遺伝子接合及び翻訳に影響しうることを示唆する。
【0025】
本明細書の文脈において「アルキル」なる語は、直鎖または分枝鎖の炭化水素鎖を意味する。アルキルは好ましくはC1−10アルキルである。好ましくはアルキルの炭素数は1〜8からなる群から選択される。より好ましいアルキルはC1−6アルキルまたはC1−4アルキルである。アルキル基の例としては、メチル(−CH3)、エチル(−CH2CH3)、プロピル(−CH2CH2CH3)、イソプロピル(−(CH3)2CH)及びブチル(−C4H9)が挙げられる。
【0026】
本明細書の文脈において「アルケニル」なる語は、直鎖及び分枝鎖の不飽和炭化水素基を意味する(不飽和結合は二重結合としてのみ存在する)。本発明においてはアルケニルは1以上の二重結合を含む。アルケニルはC2−16アルケニルであることが好ましい。より好ましくはアルケニルの炭素数は2〜12からなる群から選択される。アルケニル基の例としては、エテニル(−CH=CH2)、プロペニル(−CH=CHCH3または−CH2CH=CH2)、ブテニル(−CH2CH=CHCH3、−CH=CHCH2CH3または−CH2CH2CH=CH2)、−CH2CH=C(CH3)CH3、−CH2−CH=CH−CH2−CH2−CH=CH−CH3、及び−CH2−CH=C(CH3)−CH2−CH2−CH=C(CH3)−CH3が挙げられる。
【0027】
本明細書の文脈において「シクロアルキル」なる語は、脂環式環(飽和炭素環)を意味する。好ましくはシクロアルキルの炭素数は3〜8からなる群から選択される。更に好ましくは、シクロアルキルの炭素数は、5〜6からなる群から選択され、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0028】
本明細書において用語「不飽和炭素環式」とは、炭素原子と水素原子とからなる環状置換基を含み、環状部分は、例えばアリール、シクロアリールなどのような不飽和環である。用語「シクロアルケニル」は一つ以上の二重結合を有するシクロアルキルであるアルケニルを含む。例えば、シクロプロペニル(例えば、1−シクロプロペニル)、シクロブテニル(例えば、1−シクロブテニル)、シクロペンテニル(例えば、1−シクロペンテン−1−イル、2−シクロペンタン−1−イル、及び3−シクロペンテン−1−イル)、シクロヘキセニル(例えば、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン1−イル、及び3−シクロヘキセン−1−イル)、シクロヘプテニル(例えば、1−シクロヘプテニル)、シクロオクテニル(例えば、1−シクロオクテニル)等があげられる。特に好ましくは、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、及び3−シクロヘキセン−1−イル。用語「アリール」は単一または融合リングを含み、ここで、少なくとも一つのリングは芳香族であり、例えばフェニル、ナフチルおよびテトラヒドロナフタレニルである。
【0029】
本明細書においては、「5または6員の複素環」の句は、5または6原子の環状リングを称し、ここでリングの少なくとも一つの原子はヘテロ原子である。5または6員複素環は飽和または不飽和の芳香族あるいは非芳香族でありうる。好ましくは、ヘテロ原子はN,O,Sから選択される原子である。ヘテロ環の例としては、これには限定されないが、フリル(例えば、2−フリル、3−フリル)、チエニル(例えば、2−チエニル、3−チエニル)、ピロリル(例えば、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、イミダゾリル(例えば、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、ピラゾリル(例えば、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル)、トリアゾリル(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル、1,2,4−トリアゾール−3−イル、1,2,4−トリアゾール−4−イル)、テトラゾリル(例えば、1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、5−テトラゾリル)、オキサゾリル(例えば、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソオキサゾリル(例えば、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル)、チアゾリル(例えば、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例えば、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、ピリジル(例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、ピリミジニル(例えば、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル)、フラザニル(例えば3−フラザニル)、ピラジニル(例えば、2−ピラジニル)、オキサジアゾリル(例えば、1,3,4−オキサジアゾ−ル−2−イル)、1−ピロリニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、ピロリジン、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−イミダゾリニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、1−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノ、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル、ピペラジノ、2−ピペラジニル、2−モルホリニル、3−モルホリニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル、等である。
【0030】
本明細書の文脈において「ハロゲン」なる語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を意味する。
【0031】
本明細書の文脈における「薬学的に許容される塩」なる語には、有機及び無機の酸及び塩基と形成される塩が含まれる。薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸、ならびに、クエン酸、酒石酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、琥珀酸、蓚酸、蟻酸、フマル酸、マレイン酸、オキザロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びイセチオン酸などの有機酸が挙げられる。薬学的に許容される塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、及び1級、2級、及び3級アミン塩などの有機塩基との塩が挙げられる。
【0032】
本明細書の文脈において「プロドラッグ」なる語は、血中で加水分解されることなどによって体内で薬理作用を有する活性型に変換される化合物を意味する。
【0033】
本明細書の文脈において「溶媒和物」なる語は、本発明の化合物と溶媒とからなる複合体であって、本発明の化合物と溶媒とが反応しているか、これらが沈殿または析出される複合体を意味する。
【0034】
本明細書の文脈において「立体異性体」なる語は、結合する原子は同じであるが原子の空間的配置が異なる異性体分子を指す。
【0035】
本明細書の文脈において「エナンチオマー」なる語は、左手と右手が「同じ」であるけれども反対であるように、互いに重ね合わせることのできない鏡像関係にある立体異性体を指す。
【0036】
本明細書においては、用語「働きバチ」はコロニーの女王バチの完全な生殖能力が欠けているあらゆる雌の真社会性ハチである。ほとんどの場合において、同様に女王に対して確固たる非生殖能力の増加に相互関係している。ハチの卵は働きバチが作成し形成したワックスハニーコムの個室内に一つずつ入っている。幼虫は初期においては働きバチによって製造されたローヤルゼリーを与えられている。例外はローヤルゼリーを単独で与えられる幼虫であり、これは女王バチに発達する。幼虫は個室内で繭を紡ぎ、さなぎになる前に数回脱皮をする。雄バチは未受精卵から孵り、雌(女王及び働きバチ)は受精卵から孵る。女王は実際に横たえつつある卵を受精するよう選択しうるものであり、通常は彼女が横たえつつある個室がどれであるかに依存している。若い働きバチは巣箱をきれいに保ち、幼虫を育成する。それらのローヤルゼリー生成腺が退化し始めると、それらは巣の個室の建築を開始する。それらは年を経るに従い、他のコロニー内の仕事を進める。ここでそのような仕事は、探索者から花の蜜と花粉を受け取ること、また巣箱を守ること等である。後に、また働きバチは彼女の第一のオリエンテーション飛行に立ち、最終的に巣箱を立ち去り、典型的には残りの寿命を食料探索者として過ごす。
【0037】
本明細書においては、用語「ローヤルゼリー」は幼虫の食物として使用されるハチミツの分泌物である。それは若い働きバチの頭部にある下咽頭腺から分泌され、(他の物質の中でも)コロニーの幼虫に与えるべく用いられる。
【0038】
本発明によれば、HDACは、コアヒストンタンパク質のアミノ酸末端近傍にあるリジンのε−アミノ基を選択的に脱アセチル化することにより転写に影響を及ぼす酵素である。HDAC阻害剤は、固体処理及び血液性悪性腫瘍の可能性のある抗ガン剤の面白い新しいクラスとして現れている。本発明は、意外なことにHDAC阻害剤が若い働きバチによって作られるローヤルゼリー中のMRJP3の68及び64kDaタンパク質の発現に影響することを発見した。HDAC阻害剤は、これに限定されないが、4つのクラスのHDAC阻害剤を含み、短鎖脂肪酸、ヒドロキサム酸、ベンズアミド、及び環状ペプチドであり、これらはMedicinal Research Reviews,Vol.26,No.4,pp.397−413,2006に報告されている;Journal of the National Cancer Institute,Vol.92,No.15,August 2,2000,pp.1210−1216に掲載されているヒドロキサム酸系ハイブリッド極性化合物(HPCs);米国特許第6,174,905号明細書、欧州特許公報第0847992号明細書、日本公開公報258863/96号明細書、及び日本特許出願番号第10138957号明細書にあるベンズアミド誘導体;WO01/38322にある化合物;ベンズアミドM344(Hum Genet,2006,120,pp.101−110);酪酸ナトリウム(Human Molecular Genetics,2004,Vol.13,No.11,pp.1183−1192);トリコスタチンA(Trichostatin A)(Molecular Cancer 2006,5:8;本文献は以下より入手可能:http://www.molecular−cancer.com/content/5/1/8);米国特許第7,169,801号明細書に開示されているZ−Q−L−MあるいはZ−L−Mの式を有する化合物;米国特許第6888027号明細書にあるPXD101を含むスルホンアミド化合物のファミリー;欧州特許第1301184号明細書にカバーされているバルプロ酸及びその誘導体;N,N'−ヘキサメチレン ビスアセトアミド(HMBA);米国特許第6,087,367号明細書及び再発行第38506号明細書に記載のHMBA関連化合物;米国特許第7,399,787号明細書に開示のHMBA関連化合物、例えばスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA);Blood,1 October 2003,Vol.102,No.7,pp.2615−2622に報告されたNVP−LAQ824(ヒドロキサム誘導体)及びNVP−LAQ824(4−アミノメチルシンナミックヒドロキサム酸誘導体);LBH589はアポトーシスを引き金として腫瘍細胞系列において成長阻害と退行を誘発し、またLBH589は抗ガン剤としてフェーズIの臨床試験が行われている(Blood 105(4):1768−76 February 15,2005);米国特許出願第11/855416号及び12/418373号明細書に記載の化合物;プロポリス、プロポリン及び米国特許出願公開第20080242648号明細書にある化合物であって、以下のものを含む、ピロキサミド、M−カルボキシ桂皮酸ビスヒドロキシアミド(CBHA)、トリコスタチンA(TSA),トリコスタチンC,サリチルヒドロキサム酸(SBHA),アゼライックビスヒドロキサム酸(ABHA),アゼライック−1−ヒドロキサメート−9−アニリド(AAHA),6−(3−クロロフェニルウレイド)カーポイックヒドロキサム酸(3C1−UCHA),オキサムフラチン,A−161906,スクリプタイド,PXD−101,ペプチドを含有する環状ヒロロキサム酸(CHAP),ITF−2357,MW2796,MW2996,トラポキシンA,FR901228(FK228またはデプシペプチド),FR225497,アピシジン,CHAP,HC−トキシン,WF27082,クラミドシン,酪酸ナトリウム,イソバレレート,4−フェニル酪酸塩(4−PBA),4−フェニル酪酸ナトリウム(PBS),アルギニンブチレート,プロピオン酸塩,ブチルアミド,イソブチルアミド,フェニルアセテート,3−ブロモプロピオネート,トリブチリン,バルプロ酸,バルプロネート,CI−994,MS−27−275の3′−アミノ誘導体,MGCD0103及びデプデシンである。本明細書で引用されたすべての文献はその内容を援用する。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、ここで使用されるHDAC阻害剤は以下の式(I)で表される化合物である:
【0040】
【化1】
【0041】
ここで、
R1及びR2はそれぞれ独立してOH,OC(=O)アルキル,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニル,N−アルキニル,O−C3−8シクロアルキル,S−C3−8シクロアルキル,N−C3−8シクロアルキル,O−不飽和5〜10員単環または二環式リング,S−不飽和5〜10員単環または二環式リング,N−不飽和5〜10員単環または二環式リング,アルキル,アルキレニル,アルキニル,C3−8シクロアルキル,N,O,及びSからなる群から選ばれる少なくとも一つのリングヘテロ原子を含む不飽和5〜10員単環または二環式リングまたは飽和もしくは不飽和5〜10員ヘテロ環状リング;またはR1及びR2は共同してジオキソランを形成しうる;
R3及びR4はそれぞれ独立してOH,OC(=O)アルキル,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニル,N−アルキニル,O−C3−8シクロアルキル,S−C3−8シクロアルキル,N−C3−8シクロアルキル,O−不飽和5〜10員単環または二環式リング,S−不飽和5〜10員単環または二環式リング,N−不飽和5〜10員単環または二環式リング,アルキル,アルキレニル,アルキニル,C3−8シクロアルキル,N,O,及びSからなる群から選ばれる少なくとも一つのリングヘテロ原子を含む不飽和5〜10員単環または二環式リングまたは飽和もしくは不飽和5〜10員ヘテロ環状リング;
R5はC4−16アルキルまたはC4−16アルケニルであって、ここでアルキルまたはアルケニルは未置換またはC1−6アルキル,OH,ハロゲン,CN,NO,N3,NH2,CHO,OR9,SR9,NR9,orCOOR9の1以上で置換されている;
R6はC2−12アルキルまたはC2−12アルケニルであって、ここでアルキルまたはアルケニルは未置換またはC1−6アルキル,OH,ハロゲン,CN,NO,N3,NH2,CHO,OR9,SR9,またはNR9の1以上で置換されている;またはR5及びR6の一つは、水素、ハロゲンまたはOHであり、その他方は未置換またはC1−6アルキル,OH,NH2,ハロゲン,CN,NOまたはN3の1以上で置換されているC4−16アルキルまたはC4−16アルキレン;
R7及びR8はそれぞれ独立して水素、ハロゲン,OH,NH2,COOH,CHO,CN,NO,未置換またはOH,NH2,COOH,ハロゲン,CN,NOもしくはCHOで置換されたC1−6アルキル,=O,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニルもしくはN−アルキニル,またはR7及びR8は共同して二重結合,C3−6シクロアルキル,もしくはN,O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を少なくとも含む5〜10員ヘテロ環状リング;
R9はフェニル,C(=O)R10,C(=O)OR10またはベンジル;及び
R10はOH,NHOH,NH2,C1−6アルキル,フェニルまたはベンジル;
及びこれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物である。
好ましくは、式(I)の化合物はこれらの中、R1及びR2はそれぞれ独立してOH,OC1−6アルキル,OC(=O)C1−6アルキル,O−フェニルもしくはO−ベンジルまたはR1及びR2共同してジオキサランを形成し;R3及びR4はそれぞれ独立してOH,OC1−6アルキル,OC(=O)C1−6アルキル,O−フェニルもしくはO−ベンジル;R5は,
【0042】
【化2】
,
【0043】
【化3】
,
【0044】
【化4】
,
【0045】
【化5】
,
【0046】
【化6】
,
【0047】
【化7】
,
【0048】
【化8】
,
【0049】
【化9】
,
【0050】
【化10】
,
【0051】
【化11】
,
【0052】
【化12】
【0053】
または
【化13】
;
【0054】
R6は,
【化14】
,
【0055】
【化15】
,
【0056】
【化16】
,
【0057】
【化17】
,
【0058】
【化18】
,
【0059】
【化19】
,
【0060】
【化20】
,
【0061】
【化21】
,
【0062】
【化22】
,
【0063】
【化23】
,
【0064】
【化24】
,
【0065】
【化25】
,
【0066】
【化26】
,
【0067】
もしくは
【化27】
。
【0068】
より好ましくは、式(I)の化合物は以下からなる群から選択される
【0069】
【化28】
NBM−HD−1
,
【0070】
【化29】
,
【0071】
【化30】
,
【0072】
【化31】
,
【0073】
【化32】
,
【0074】
【化33】
,
【0075】
【化34】
,
【0076】
【化35】
,
【0077】
【化36】
,
【0078】
【化37】
,
【0079】
【化38】
,
【0080】
【化39】
,
【0081】
【化40】
プロポリンG
【0082】
【化41】
,
【0083】
【化42】
,
【0084】
【化43】
,
【0085】
【化44】
,
【0086】
及び
【化45】
,
【0087】
【化46】
プロポリンA
【0088】
【化47】
プロポリンB
【0089】
【化48】
プロポリンC
【0090】
【化49】
プロポリンD
【0091】
【化50】
プロポリンE
【0092】
【化51】
プロポリンF
【0093】
【化52】
プロポリンG
【0094】
【化53】
プロポリンH
【0095】
【化54】
プロポリンI
【0096】
【化55】
プロポリンJ
【0097】
本発明の他の実施態様によれば、ここで使用されるHDAC阻害剤は以下の式(II)で表される化合物である:
【0098】
【化56】
【0099】
ここで、
R1は水素,アルキル,アルケニル,C5−6シクロアルキル,5員もしくは6員の不飽和炭素環または5員もしくは6員のヘテロ環;
XはC,O,NまたはS;
YはO,NHまたはO−C1−4アルキル;
nは0〜10の整数;
mは0〜5の整数;
R2及びR3は独立してC1−6アルキル;
R4はC5−6シクロアルキルまたは5員もしくは6員不飽和炭素環もしくはヘテロ環であって、ハロゲン,CF3,OR7またはNR7R8で置換されていてもよい、ここでR7及びR8は独立して水素またはC1−6アルキル;
R5はOH,NH2またはC5−6シクロアルキル,5員もしくは6員の不飽和炭素環もしくはヘテロ環であって、シクロアルキル、炭素環及びヘテロ環は任意でハロゲン,NH2,NO2,C1−6アルコキシ,C1−6アルキルチオ,OR7,NR7R8またはCF3で置換されていてもよい;及び
R6はH,ヒドロキシまたはC2−10アルケニルで置換されていてもよいC1−10アルキル,またはR1と共同して−C2H2−を形成する;
及びこれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物である。
【0100】
好ましくは、式(II)の化合物はこれらの中で、R1,R2及びR3は独立してC1−4アルキル;R4はフェニルまたはハロゲン置換フェニル,CF3,OC1−4アルキル,R5はOH,フェニルまたはNH2置換フェニル、及びR6は水素である。
【0101】
さらに好ましくは、式(II)の化合物は以下からなる群から選択される:
【0102】
【化57】
NBM−HB−OS01
【0103】
【化58】
NBM−C−BCA−OS01
【0104】
【化59】
NBM−C−BA−OS01
【0105】
【化60】
NBM−C−BMA−OS01
【0106】
【化61】
NBM−C−BX−OS01
【0107】
【化62】
NBM−C−BCX−OS01
【0108】
【化63】
NBM−C−BMX−OS01
【0109】
【化64】
NBM−C−BFX−OS01
【0110】
【化65】
NBM−C−BBX−OS01
【0111】
【化66】
NBM−T−BX−OS01
【0112】
【化67】
NBM−T−BA−OS01
【0113】
【化68】
NBM−T−BCA−OS01
【0114】
【化69】
NBM−T−BBA−OS01
【0115】
【化70】
NBM−T−BFA−OS01
【0116】
【化71】
NBM−T−BMA−OS01
【0117】
【化72】
NBM−T−BCX−OS01
【0118】
【化73】
NBM−T−L−BCX−OS01
【0119】
【化74】
NBM−T−BMX−OS01
【0120】
【化75】
NBM−T−K−BMX−OS01
【0121】
【化76】
NBM−T−L−BMX−OS01
【0122】
【化77】
NBM−T−BTX−OS01
【0123】
【化78】
NBM−T−L−BTX−OS01
【0124】
【化79】
NBM−T−BBX−OS01
【0125】
【化80】
NBM−T−L−BBX−OS01
【0126】
【化81】
NBM−T−BFX−OS01
【0127】
【化82】
NBM−C−BBX−OS01
【0128】
【化83】
NBM−C−BFX−OS01
【0129】
【化84】
NBM−T−TMX−OS01
【0130】
【化85】
NBM−T−BMX−L−OS01
【0131】
【化86】
NBM−I−BCX−OS01
【0132】
【化87】
NBM−T−I−BMX−OS01
【0133】
【化88】
NBM−T−L−I−BMX−OS01
【0134】
【化89】
NBM−T−I−BBX−OS01
【0135】
【化90】
NBM−T−L−I−BBX−OS01
【0136】
【化91】
NBM−T−I−BCX−OS01
【0137】
【化92】
NBM−T−L−I−BCX−OS01
【0138】
【化93】
NBM−T−I−MCX−OS01
【0139】
本発明の他の実施態様によれば、ここで用いられるHDAC阻害剤はSAHA,プロポリスまたはプロポリン(例えば、プロポリンA〜J)である。好ましくは、プロポリスは、台湾グリーンプロポリス、プロポリンA、プロポリンB、プロポリンC、プロポリンD、プロポリンE、プロポリンF、プロポリンG、プロポリンH、プロポリンI、プロポリンJ、SAHA、NBM−HD−1である。
【0140】
本発明は、意外なことにHDAC阻害剤を与えられた若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリー中のMRJP3の68kDaタンパク質対64kDaタンパク質の比がHDAC阻害剤によって変化しうることを発見した。変化はエピジェネティクス修飾によって誘発され、この事実はJanet S.Graham等,T.J.Walton等,Julie C.Kiefer,及びAhmad Miremadi等によって支持されている。上記ローヤルゼリーを与えられた幼虫は、通常体よりも体重が増加しまたサイズが大きくなり、その発達期間がより短くなる。当該幼虫が発達したさなぎ及び女王バチもまた、より増加した体重と大きなサイズとなる。そのような女王バチは高い産卵能を有するため、その分ミツバチの数とミツの製造能が高くなる。
【実施例】
【0141】
実施例1:台湾グリーンプロポリス抽出物とプロポリンC並びにGの調整
台湾グリーンプロポリス抽出物
50g台湾グリーンプロポリス(TP)を95%エチルアルコール(250mL×3)で抽出し、3時間、超音波処理を行い、21時間25℃で静置した。エタノール抽出物は濾過後、減圧下で乾燥して、茶色のゴム状物を得た(34.5g)。これは使用まで−20℃で保持した。
【0142】
プロポリンC
TP抽出物5gをセファデックスLH−20カラム(Amersham Pharmacia Biotech AB社製、Uppsala、Sweden)で分画した。溶出用溶媒としてメタノールを使用し、6画分が得られた。次いで行われるクロマトグラフィからの画分を含む全ての溶出液を、シリカゲルカラムで、溶出用グラジエント溶媒系としてn−ヘキサン及びEtOAcを用いてクロマトグラフにかけた。最も活性の高い画分4(n−ヘキサン:EtOAc=70:30)の精製を、逆相(RP)分離用高速液体クロマトグラフィ(HPLC)/UVでおこなった。プロポリンCに対する45.0分の保持時間の画分を回収した。用いた条件は以下の通りである:カラム:ルナ・フェノメネックス(C18、250mm×10mm);溶媒系:メタノール:水(7:3);流速:2.5mL/分;及び検出:UV280nm。化合物はプロポリンCと同定され、その純度はピーク面積よりHPLC/UVによって95%以上であると推定された。
【0143】
プロポリンG
TP抽出物5gをセファデックスLH−20カラム(Amersham Pharmacia Biotech AB社製、Uppsala、Sweden)で分画した。溶出用溶媒としてメタノールを使用し、6画分が得られた。次いで行われるクロマトグラフィからの画分を含む全ての溶出液を、シリカゲルカラムで、溶出用グラジエント溶媒系としてn−ヘキサン及びEtOAcを用いてクロマトグラフにかけた。最も活性の高い画分3(n−ヘキサン:EtOAc=70:30)の精製を、逆相(RP)分離用高速液体クロマトグラフィ(HPLC)/UVでおこなった。プロポリンGに対する25.0分の保持時間の画分を回収した。用いた条件は以下の通りである:カラム:ルナ・フェノメネックス(C18、250mm×10mm);溶媒系:メタノール:水(8.5:1.5);流速:3.5mL/分;及び検出:UV280nm。化合物はプロポリンGと同定され、その純度はピーク面積よりHPLC/UVによって95%以上であると推定された。
【0144】
実施例2:ローヤルゼリーと女王バチの幼虫の収集と分析
同一のMRJP3タンパク質の発現レベルの巣箱を選択して用いた。二つの巣箱を対照群と試験群として試験した。第1日目に、巣箱内に当初含まれているミツを振ることで取り除いた。そしてミツバチ(Apis mellifera)に二日にわたり二度、砂糖水を与えた(対照群には通常の砂糖水を、試験群には特別の砂糖水)。特別の砂糖水は、組成された砂糖粉末を水に10倍希釈した。3日目に、1.5日齢の幼虫(同一女王の子供である)を巣箱に移虫し、ミツバチは一度給餌された(対照群には通常の砂糖水を、試験群には特別の砂糖水)。24,48及び72時間後に、20匹の幼虫と、当該20匹の幼虫のいた個室のローヤルゼリーを定性分析、定量分析及びプロテオミック分析用に収集した。
【0145】
定性分析のために、ローヤルゼリーと殺菌水を1:10に重量比で混合して抽出した。水相中の特定量のタンパク質を取り除いてブラッドフォード色素結合法(Bio−Rad protein assay,Bio−Rad Laboratories,Inc.)によってタンパク質濃度を測定した。タンパク質試料の595nmにおける吸収をElisa Reader(Bio−TEK)によって測定した。10μgのタンパク質を12.5%SDS−PAGEゲルに載置し、60ボルトで30分間、さらに120ボルトで2時間処理し、異なる分子量のタンパク質を分離した。ゲルはクーマシーブルー(Commassie Brilliant Blue R,Sigma,B−0630)で15分間染色し、ゲルの背景が透明となるよう、脱染色バッファ(メタノール:酢酸:ddH2O、20:7:73の比率)で脱染色した。
【0146】
幼虫を1×PBSで洗浄して幼虫の身体から残余のローヤルゼリーを取り除き、その後すり潰した。すり潰した後、殺菌済み水を適量加え、タンパク質抽出を行った。水相中の特定量のタンパク質を取り除き、タンパク質濃度を上記方法により測定し、10μgのタンパク質を12.5%SDS−PAGEゲルに載置し、60ボルトで30分間、さらに120ボルトで2時間処理し、異なる分子量のタンパク質を分離した。ゲルはクーマシーブルー(Commassie Brilliant Blue R,Sigma,B−0630)で15分間染色し、ゲルの背景が透明となるよう、脱染色バッファ(メタノール:酢酸:ddH2O、20:7:73の比率)で脱染色した。
【0147】
定量分析のために、異なる時間点(24、48または72時間)における対照群あるいは試験群の異なる巣箱の女王バチのローヤルゼリーと幼虫を収集した。それらの体重を測定し、また幼虫は分析と比較のために写真撮影した。
【0148】
プロテオミック分析とタンパク質同定のために、女王バチのローヤルゼリーまたは幼虫の上澄からの懸濁液をロータリーエバポレータ(Speed Vac)で減圧乾燥し、再水和バッファに再溶解した。ブラッドフォード色素結合法によってタンパク質濃度を測定した。その後、女王バチの10μgのローヤルゼリーと100μgの幼虫を以下のステップにしたがって2次元電気泳動(2−DE)の試験を行った:試料をまずpH3〜10のストリップを用いて等電点電気泳動を用いて分離し、ついで平衡化し、それからソジウムドデシルサルフェート−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)(積層ゲル:30%アクリルアミド(Bio−Rad)、Tris pH6.8、10%APS、ddH2O、1%SDS、TEMED;分離ゲル:30%アクリルアミド(Bio−Rad)、Tris pH8.8、10%APS、ddH2O、1%SDS、TEMED)によって分離した。ゲルを撮像し、イメージマスター2Dプラチナ6.0ソフトウェアで分析した。ゲル上の対象のスポットはゲル内トリプシン消化を受け、またマス分光計LC−ESI−Q−TOF MS/MSで分析した。得られたデータをマスコットソフトウェアによるタンパク質同定用データベースと比較した。
【0149】
実施例3:幼虫の成長誘導における台湾グリーンプロポリス抽出物の効果
10種のプロポリン、すなわちプロポリンAからJは台湾グリーンプロポリス抽出物に見いだされ、プロポリンC,D,F及びGが主立った種類である。ミツバチは砂糖1kgに対して台湾グリーンプロポリス抽出物を1.25,2.5及び5.0g含ませた砂糖水を3回与えられ、1.5日齢の幼虫を移虫後、24,48及び72時間後に女王バチの幼虫と働きバチによって作り出されたローヤルゼリーを収集した。表1及び図1に示されるように、台湾グリーンプロポリス抽出物を1.25から5.0g/kg与えることで著しく幼虫の成長が促進された。24から48時間の期間では、対照群の幼虫は、その体重は約1.59倍に増え、4.73mgから12.26mgに成長した。一方、高投与量の台湾グリーンプロポリス抽出物(5g/kg)で処理した群の幼虫は、その体重が約2.94倍に増え、6.78mgから26.72mgに成長した。48から72時間の期間では、対照群の幼虫は、その体重は約1.58倍に増え、12.26mgから31.70mgに成長した。一方、高投与量の台湾グリーンプロポリス抽出物(5g/kg)で処理した群の幼虫は、その体重が約3.03倍に増え、26.72mgから107.55mgに成長した。
【0150】
表1:台湾グリーンプロポリス抽出物を与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発した。
【表1】
【0151】
上記データは台湾グリーンプロポリス抽出物を含む砂糖をミツバチに与えることで、働きバチは特別なローヤルゼリーを製造し、さらに当該特別なローヤルゼリーを与えられた幼虫は急速成長がおきたことを示す。
【0152】
特別なローヤルゼリーをさらに分析して、通常のローヤルゼリーと量及び質の点での相違点を決定した。我々が得たデータによれば、(処置群から得られた)特別なローヤルゼリーの収量は(対照群から得られた)通常のローヤルゼリーのそれと著しい相違はなかった(表2参照)。若い働きバチは、幼虫の大きさと消費に応じて、幼虫にとって十分なローヤルゼリーを提供した。
【0153】
表2:台湾グリーンプロポリス抽出物は若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーの収量に著しくは影響を及ぼさなかった。
【表2】
【0154】
通常のローヤルゼリーと特別なローヤルゼリー中の水溶性タンパク質の量についても比較したが、大きな差異は認められなかった(表3参照)。上記結果により、台湾グリーンプロポリス抽出物のみが、MRJP3タンパク質の異なるアイソフォームの発現レベルの比に影響を及ぼすが、新たなタンパク質合成は誘発しない。すなわち、総タンパク質量は変化しない。
【0155】
表3:台湾グリーンプロポリス抽出物は若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリー中の水溶性タンパク質の量に著しくは影響を及ぼさなかった。
【表3】
【0156】
また、特別なローヤルゼリーを消費することで、女王バチの幼虫の急速成長が誘発されたのみならず、これら幼虫のタンパク質レベルも増加したことがわかった(表4参照)。タンパク質レベルは、これらの幼虫に認められた体重増加に比例して増加していたように見受けられた(表1参照)。
【0157】
表4:台湾グリーンプロポリス抽出物は幼虫のタンパク質レベルの増加をもたらした。
【表4】
【0158】
実施例4:プロポリンCの幼虫成長に対する影響
プロポリンCは台湾グリーンプロポリスの主要成分であり、総プロポリン中でも最も豊富な種でもある。上記の実験方法を行うことで、50から100mg/kgのプロポリンCで処理することで若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーのタンパク質成分に著しく変化があり、また上記ローヤルゼリーを与えられた幼虫の急速成長が誘発された(表5及び図2参照)。幼虫の成長を促進するためには、プロポリンCの投与量は300mg/kgに調整すべきであるように見受けられた。データによれば、48から72時間の期間には、対照群の幼虫は、その体重は約3.58倍に増え、13.45mgから61.60mgに成長した。一方、高投与量のプロポリンC(100mg/kg)で処理した群の幼虫は、その体重が約6.30倍に増え、13.48mgから98.48mgに成長した。
【0159】
表5:プロポリンCを与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発した。
【表5】
【0160】
実施例5:プロポリンD,F及びGのMRJP3タンパク質の発現及び幼虫の成長に対する影響
プロポリンD,F及びGもまた、台湾グリーンプロポリスの主要成分である。我々の研究において、ミツバチは砂糖1kgに対して150,300及び600mgのプロポリンGを含む砂糖水を3回与え、1.5日齢の幼虫を移虫後、24,48及び72時間後に女王バチの幼虫と働きバチによって作り出されたローヤルゼリーを収集した。図3に示すように、特別なローヤルゼリー中の水溶性タンパク質MRJP3(試験/処理群から)の発現は、著しく通常のローヤルゼリーのそれ(対照群から)とは異なっていた。72時間後に、対照群の68及び64kDaのMRJP3は2:8の比率であったのに対して、中投与量(300mg/kg)のプロポリンGで処理した群におけるそれは6.5:3.5であった。明らかに、68kDaのMRJP3タンパク質の発現は増加し、64kDaのMRJP3タンパク質は著しく減少した。
【0161】
プロポリンGを与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーが幼虫の成長に与える効果に関しては、24から48時間の期間では、対照群の幼虫は、その体重が約1.60倍に増え、5.23mgから13.57mgに成長した。高投与量の台湾グリーンプロポリス抽出物(5g/kg)で処理したポジティブ対照群の幼虫は、その体重が約4.47倍に増え、5.53mgから30.27mgに成長した。一方、300mg/kgのプロポリンGで処理した群の幼虫は、その体重が約5.05倍に増え、3.93mgから23.80mgに成長した。48から72時間の期間では、対照群の幼虫は、その体重が約1.22倍に増え、13.57mgから30.07mgに成長した。高投与量の台湾グリーンプロポリス抽出物(5g/kg)で処理したポジティブ対照群の幼虫は、その体重が約2.41倍に増え、30.27mgから103.30mgに成長した。一方、300mg/kgのプロポリンGで処理した群の幼虫は、その体重が約5.79倍に増え、23.80mgから161.73mgに成長した(表6参照)。
【0162】
表6:プロポリンGを与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発した
【表6】
【0163】
上記データは特別なローヤルゼリーがより滋養分のある組成をなしていること、またそれゆえ、幼虫の急速成長を誘発することができること、を意味している。
【0164】
プロポリンD及びFについても同様の効果となった結果が見られた。しかし、効果はあまり顕著ではなかった。
【0165】
実施例6:新規HDAC阻害剤NBM−HD−1のMRJP3タンパク質の発現及び幼虫の成長への影響
NBM−HD−1はプロポリンGの合成に由来し、新規なヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤として知られている。上記の実験方法を行うことで、50から200mg/kgのNBM−HD−1で処理を行うと、若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーのタンパク質成分の比率が著しく変化することが見いだされた。例えば、72時間において、対照群における68及び64kDaのMRJP3はその比が4:6であり、一方、高投与量(5g/kg)の台湾グリーンプロポリス抽出物で処理した群(すなわち、ポジティブ対照群)のこれらに対する比は7:3であった。一方、200mg/kgのNBM−HD−1で処理した群における68kDaと64kDaのMRJP3はその比が9:1であった(図4参照)。
【0166】
さらに、表7に示すように、NBM−HD−1での処理は幼虫の急速成長を誘発する。
【0167】
表7:NBM−HD−1を与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発する。
【表7】
【0168】
上記データは、異なるMRJP3タンパク質のアイソフォーム間のタンパク質比の変化は、幼虫の体重増加で示されたように、女王バチの幼虫の急速成長に帰着することを証明している。
【0169】
二次元ゲル電気泳動と高解像度質量分析法により異なる対照群と試験群とからの幼虫において発現した水溶性タンパク質を分析すると、NBM−HD−1で処理した群からの幼虫においてMRJP1,2及び3(特にMRJP3)のタンパク質レベルの増加が証明された(図5参照)。
【0170】
実施例7:HDAC阻害剤SAHAのMRJP3タンパク質の発現と幼虫成長への影響
SAHAは非常に効果的なHDAC阻害剤である。5から15mg/kgのSAHAで処理を行うと、若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーのタンパク質成分の比率が著しく変化した。例えば、72時間において対照群における68及び64kDaのMRJP3はその比が2:8であり、一方、高投与量(5g/kg)の台湾グリーンプロポリス抽出物と150mg/kgのプロポリンGで処理した群(すなわち、ポジティブ対照群)のこれらに対する比は、それぞれ5.5:4.5及び8:2であった。一方、15mg/kgのSAHAで処理した群における68kDaと64kDaのMRJP3はその比が4:6であった(図6参照)。
【0171】
表8:SAHAを与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーは幼虫の急速成長を誘発する。
【表8】
【0172】
実施例8:特別な女王バチの発達
実験を行い、台湾グリーンプロポリス抽出物を与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーを与えられた幼虫の発達及び変態について検討した。先に証明されたように、台湾グリーンプロポリス抽出物を用いた処理は、幼虫段階における幼虫の成長を著しく促進した。幼虫が発達するにしたがい、さなぎ段階において試験群(5.0g/kgの台湾グリーンプロポリス抽出物で処理)からの第4日目から第8日目におけるさなぎは、あきらかに対照群からのそれよりも大きいサイズであった(図9(a)参照)。幼虫とさなぎの体重を測定したところ、試験群からの(幼虫段階における)第3日目の幼虫は対照群のそれよりも100%の割合で重かった(図9(b)参照)。さなぎ段階において、第4日目と第8日目のさなぎの体重は、対照群で(さなぎ当たり)196.0mgから136.10mgに低下していた(約30%減少)。それに対して試験群においては(さなぎ当たり)271.30mgから244.53mgに低下していた(約9.8%減少)(図9(c)参照)。明らかに、台湾グリーンプロポリス抽出物で処理した試験群からのさなぎは、変態中にエネルギー消費が少なく済んでいる。また試験群からの第8日目のさなぎは対照群のそれと比較して約80%で重いことが分かった。これは上記のように、幼虫段階における対照群と試験群との間の体重差が100%有ることによる。
【0173】
実施例9:我々の特別なローヤルゼリーの生物学的機能
次に、台湾グリーンプロポリス抽出物を与えられた若い働きバチによって分泌される特別なローヤルゼリーの、抗ガン機能及び神経幹細胞分化における役割について調査した。
【0174】
抗ガン研究においては、財団法人食品工業発展研究所(Food Industry Research and Development Institute)(新竹市、台湾)から購入したHs683細胞(ヒト神経膠腫細胞)を、2mMグルタメート及び0.1mM NEAA、100mg/Lピルビン酸ナトリウム、10%FBS,並びに1%希釈ペニシリン及びストレプトマイシンとともに、RPMI1640(Gibco)中で培養し、95%空気、5%CO2の多湿環境で37℃に維持した。細胞(3×105/ディッシュ)を6ウェルディッシュ中で培養し、一晩インキュベートした後、血清飢餓培地に変更し、異なる濃度の水溶性ローヤルゼリータンパク質で処理し、4日培養した。ポジティブ対照として、5ng/mLのEGFを用いた。45μg/mLのローヤルゼリータンパク質で48時間処理することで、B1及びC1群においてHs683細胞の成長が著しく抑制された(図7参照)。
【0175】
分化についての研究においては、神経幹細胞をB27(Gibco)と共にNeural−basal培地(Gibco)中で培養し、95%空気、5%CO2の多湿環境で37℃に維持した。ニューロスフェアを10μg/mLの水溶性ローヤルゼリータンパク質で処理し、3日培養した。ポジティブ対照として、EGF(5ng/mL)を用いた。図8に示すように、10μg/mLのローヤルゼリータンパク質で72時間処理することで、B1及びC1群において、神経幹細胞のニューロン細胞、膠細胞、希突起膠細胞及びへの分化が明らかに誘発された。
【0176】
上記データにより、HDAC阻害剤は若い働きバチの下咽頭腺及び大顎腺におけるクロマチンリモデリングに影響しうること、それゆえ他のMRJPタンパク質の発現を変化させることなく、68及び64kDaのMRJP3タンパク質の発現を変化することを示している。68及び64kDaのMRJP3タンパク質の間の比の変化は、各体重増加幼虫において認められ、シフトは68kDaあるいは64kDaのMRJP3アイソフォームいずれでもあり得る。多形型MRJP3の選択的スプライシングはHDAC阻害剤によって影響を受ける可能性があり、そしてその結果として68kDa及び64kDaのアイソフォームの発現の変化に帰着する。それゆえ、二種のアイソフォームタンパク質の発現を調整することで、幼虫の成長を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対照幼虫よりも少なくとも体重で100%大きいミツバチの幼虫を製造する方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これらの若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることとを含み、一方、対照群のミツバチの幼虫にはHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与えることを特徴とする方法。
【請求項2】
ローヤルゼリーを与えられた幼虫の体重が72時間後で1.5倍より高い倍率で増加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ローヤルゼリーを与えられた幼虫の体重が72時間後で約2〜5倍の倍率で増加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ローヤルゼリーを与えられた幼虫の体重が72時間後で約3〜5倍の倍率で増加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ローヤルゼリーが、68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が、対照に対して約1.5〜12倍、1.5〜5倍、2〜6倍、2〜10倍、4〜12倍、または2〜4倍で増加することで変化することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
HDAC阻害剤は、以下の化学式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物、以下の化学式(II)の化合物または/及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物、SAHA,プロポリス及びプロポリンからなる群から選択され、
【化94】
ここで、
R1及びR2はそれぞれ独立してOH,OC(=O)アルキル,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニル,N−アルキニル,O−C3−8シクロアルキル,S−C3−8シクロアルキル,N−C3−8シクロアルキル,O−不飽和5〜10員単環または二環式リング,S−不飽和5〜10員単環または二環式リング,N−不飽和5〜10員単環または二環式リング,アルキル,アルキレニル,アルキニル,C3−8シクロアルキル,N,O,及びSからなる群から選ばれる少なくとも一つのリングヘテロ原子を含む不飽和5〜10員単環または二環式リングまたは飽和もしくは不飽和5〜10員ヘテロ環状リング;またはR1及びR2は共同してジオキソランを形成しうる;
R3及びR4はそれぞれ独立してOH,OC(=O)アルキル,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニル,N−アルキニル,O−C3−8シクロアルキル,S−C3−8シクロアルキル,N−C3−8シクロアルキル,O−不飽和5〜10員単環または二環式リング,S−不飽和5〜10員単環または二環式リング,N−不飽和5〜10員単環または二環式リング,アルキル,アルキレニル,アルキニル,C3−8シクロアルキル,N,O,及びSからなる群から選ばれる少なくとも一つのリングヘテロ原子を含む不飽和5〜10員単環または二環式リングまたは飽和もしくは不飽和5〜10員ヘテロ環状リング;
R5はC4−16アルキルまたはC4−16アルケニルであって、ここでアルキルまたはアルケニルは未置換またはC1−6アルキル,OH,ハロゲン,CN,NO,N3,NH2,CHO,OR9,SR9,NR9,orCOOR9の1以上で置換されている;
R6はC2−12アルキルまたはC2−12アルケニルであって、ここでアルキルまたはアルケニルは未置換またはC1−6アルキル,OH,ハロゲン,CN,NO,N3,NH2,CHO,OR9,SR9,またはNR9の1以上で置換されている;またはR5及びR6の一つは、水素、ハロゲンまたはOHであり、その他方は未置換またはC1−6アルキル,OH,NH2,ハロゲン,CN,NOまたはN3の1以上で置換されているC4−16アルキルまたはC4−16アルキレン;
R7及びR8はそれぞれ独立して水素、ハロゲン,OH,NH2,COOH,CHO,CN,NO,未置換またはOH,NH2,COOH,ハロゲン,CN,NOもしくはCHOで置換されたC1−6アルキル,=O,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニルもしくはN−アルキニル,またはR7及びR8は共同して二重結合,C3−6シクロアルキル,もしくはN,O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を少なくとも含む5〜10員ヘテロ環状リング;
R9はフェニル,C(=O)R10,C(=O)OR10またはベンジル;及び
R10はOH,NHOH,NH2,C1−6アルキル,フェニルまたはベンジル;
【化95】
ここで、
R1は水素,アルキル,アルケニル,C5−6シクロアルキル,5員もしくは6員の不飽和炭素環または5員もしくは6員のヘテロ環;
XはC,O,NまたはS;
YはO,NHまたはO−C1−4アルキル;
nは0〜10の整数;
mは0〜5の整数;
R2及びR3は独立してC1−6アルキル;
R4はC5−6シクロアルキルまたは5員もしくは6員不飽和炭素環もしくはヘテロ環であって、ハロゲン,CF3,OR7またはNR7R8で置換されていてもよい、ここでR7及びR8は独立して水素またはC1−6アルキル;
R5はOH,NH2またはC5−6シクロアルキル,5員もしくは6員の不飽和炭素環もしくはヘテロ環であって、シクロアルキル、炭素環及びヘテロ環は任意でハロゲン,NH2,NO2,C1−6アルコキシ,C1−6アルキルチオ,OR7,NR7R8またはCF3で置換されていてもよい;及び
R6はH,ヒドロキシまたはC2−10アルケニルで置換されていてもよいC1−10アルキルであり,またはR1と共同して−C2H2−を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
HDAC阻害剤は、台湾グリーンプロポリス、プロポリンA,プロポリンB,プロポリンC,プロポリンD,プロポリンE,プロポリンF,プロポリンG、プロポリンH,プロポリンI,プロポリンJ、SAHA、NBM−HD−1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
HDAC阻害剤が、
【化96】
NBM−HD−1,
【化97】
,
【化98】
,
【化99】
,
【化100】
,
【化101】
,
【化102】
,
【化103】
,
【化104】
,
【化105】
,
【化106】
,
【化107】
,
【化108】
,
【化109】
,
【化110】
,
【化111】
,
【化112】
,
【化113】
【化114】
【化115】
プロポリンA,
【化116】
プロポリンB,
【化117】
プロポリンC,
【化118】
プロポリンD,
【化119】
プロポリンE,
【化120】
プロポリンF,
【化121】
プロポリンG,
【化122】
プロポリンH,
【化123】
プロポリンI,
【化124】
プロポリンJ,
【化125】
NBM−HB−OS01,
【化126】
NBM−C−BCA−OS01,
【化127】
NBM−C−BA−OS01,
【化128】
NBM−C−BMA−OS01,
【化129】
NBM−C−BX−OS01,
【化130】
NBM−C−BCX−OS01,
【化131】
NBM−C−BMX−OS01,
【化132】
NBM−C−BFX−OS01,
【化133】
NBM−C−BBX−OS01,
【化134】
NBM−T−BX−OS01,
【化135】
NBM−T−BA−OS01,
【化136】
NBM−T−BCA−OS01,
【化137】
NBM−T−BBA−OS01,
【化138】
NBM−T−BFA−OS01,
【化139】
NBM−T−BMA−OS01,
【化140】
NBM−T−BCX−OS01,
【化141】
NBM−T−L−BCX−OS01,
【化142】
NBM−T−BMX−OS01,
【化143】
NBM−T−K−BMX−OS01,
【化144】
NBM−T−L−BMX−OS01,
【化145】
NBM−T−BTX−OS01,
【化146】
NBM−T−L−BTX−OS01,
【化147】
NBM−T−BBX−OS01,
【化148】
NBM−T−L−BBX−OS01,
【化149】
NBM−T−BFX−OS01,
【化150】
NBM−C−BBX−OS01,
【化151】
NBM−C−BFX−OS01,
【化152】
NBM−T−TMX−OS01,
【化153】
NBM−T−BMX−L−OS01,
【化154】
NBM-I-BCX−OS01,
【化155】
NBM−T−I−BMX−OS01,
【化156】
NBM−T−L−I−BMX−OS01,
【化157】
NBM−T−I−BBX−OS01,
【化158】
NBM−T−L−I−BBX−OS01,
【化159】
NBM−T−I−BCX−OS01,
【化160】
NBM―T−L−I−BCX−OS01,
【化161】
NBM−T−I−MCX−OS01
からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ミツバチの幼虫が働きバチによってそれらが分泌するローヤルゼリーを与えられうる、または人間によって働きバチから収集したローヤルゼリーを与えられうることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
対照さなぎよりも少なくとも体重で50%大きいさなぎを、または、対照女王バチよりも少なくとも体重で50%大きい女王バチを製造する方法であって、当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これら若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることと、当該ミツバチの幼虫から発達させたさなぎまたは女王バチを得ることとを含み、一方、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与えるミツバチの幼虫から対照さなぎまたは対照女王バチを発達させることを特徴とする方法。
【請求項12】
ミツバチの幼虫が働きバチによってそれらが分泌するローヤルゼリーを与えられうる、または人間によって働きバチから収集したローヤルゼリーを与えられうることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
対照ローヤルゼリーに対して68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むローヤルゼリーを製造する方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤を与えることと、若い働きバチによって製造されたローヤルゼリーを収集することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が、対照に対して約1.5〜12倍、1.5〜5倍、2〜8倍、2〜10倍、4〜12倍、または2〜4倍で増加することで変化することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
HDAC阻害剤が、請求項7に記載の以下の化学式(I)の化合物またはこれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
HDAC阻害剤が、請求項8に記載の化合物またはこれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
HDAC阻害剤は、台湾グリーンプロポリス、プロポリンA,プロポリンB,プロポリンC,プロポリンD,プロポリンE,プロポリンF,プロポリンG、プロポリンH,プロポリンI,プロポリンJ、SAHA、NBM−HD−1であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
HDAC阻害剤は、請求項10に記載の化合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
対照ローヤルゼリーに対して68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むことを特徴とする、請求項13の方法で製造されたローヤルゼリー。
【請求項20】
MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が、対照に対して1.5〜5倍、2〜8倍、2〜10倍、4〜12倍、または2〜4倍で増加することで変化することを特徴とする請求項19のローヤルゼリー。
【請求項21】
ローヤルゼリー中のMRJP3の68対64kDaタンパク質の比を変化させる方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤またはその混合物を与えることで、対照となるローヤルゼリーに対して、MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が変化したローヤルゼリーを製造することを特徴とする方法。
【請求項22】
働きバチのmrjp3遺伝子に対するエピジェネティクスを調整する方法であって、働きバチにHDAC阻害剤を与えることで、働きバチのmrjp3遺伝子の発現を調整することを含む方法。
【請求項23】
エピジェネティクスは、DNAメチル化またはHDAC活性の阻害であることを特徴とする請求項20の方法。
【請求項1】
対照幼虫よりも少なくとも体重で100%大きいミツバチの幼虫を製造する方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これらの若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることとを含み、一方、対照群のミツバチの幼虫にはHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与えることを特徴とする方法。
【請求項2】
ローヤルゼリーを与えられた幼虫の体重が72時間後で1.5倍より高い倍率で増加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ローヤルゼリーを与えられた幼虫の体重が72時間後で約2〜5倍の倍率で増加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ローヤルゼリーを与えられた幼虫の体重が72時間後で約3〜5倍の倍率で増加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ローヤルゼリーが、68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が、対照に対して約1.5〜12倍、1.5〜5倍、2〜6倍、2〜10倍、4〜12倍、または2〜4倍で増加することで変化することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
HDAC阻害剤は、以下の化学式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物、以下の化学式(II)の化合物または/及びその薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物、SAHA,プロポリス及びプロポリンからなる群から選択され、
【化94】
ここで、
R1及びR2はそれぞれ独立してOH,OC(=O)アルキル,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニル,N−アルキニル,O−C3−8シクロアルキル,S−C3−8シクロアルキル,N−C3−8シクロアルキル,O−不飽和5〜10員単環または二環式リング,S−不飽和5〜10員単環または二環式リング,N−不飽和5〜10員単環または二環式リング,アルキル,アルキレニル,アルキニル,C3−8シクロアルキル,N,O,及びSからなる群から選ばれる少なくとも一つのリングヘテロ原子を含む不飽和5〜10員単環または二環式リングまたは飽和もしくは不飽和5〜10員ヘテロ環状リング;またはR1及びR2は共同してジオキソランを形成しうる;
R3及びR4はそれぞれ独立してOH,OC(=O)アルキル,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニル,N−アルキニル,O−C3−8シクロアルキル,S−C3−8シクロアルキル,N−C3−8シクロアルキル,O−不飽和5〜10員単環または二環式リング,S−不飽和5〜10員単環または二環式リング,N−不飽和5〜10員単環または二環式リング,アルキル,アルキレニル,アルキニル,C3−8シクロアルキル,N,O,及びSからなる群から選ばれる少なくとも一つのリングヘテロ原子を含む不飽和5〜10員単環または二環式リングまたは飽和もしくは不飽和5〜10員ヘテロ環状リング;
R5はC4−16アルキルまたはC4−16アルケニルであって、ここでアルキルまたはアルケニルは未置換またはC1−6アルキル,OH,ハロゲン,CN,NO,N3,NH2,CHO,OR9,SR9,NR9,orCOOR9の1以上で置換されている;
R6はC2−12アルキルまたはC2−12アルケニルであって、ここでアルキルまたはアルケニルは未置換またはC1−6アルキル,OH,ハロゲン,CN,NO,N3,NH2,CHO,OR9,SR9,またはNR9の1以上で置換されている;またはR5及びR6の一つは、水素、ハロゲンまたはOHであり、その他方は未置換またはC1−6アルキル,OH,NH2,ハロゲン,CN,NOまたはN3の1以上で置換されているC4−16アルキルまたはC4−16アルキレン;
R7及びR8はそれぞれ独立して水素、ハロゲン,OH,NH2,COOH,CHO,CN,NO,未置換またはOH,NH2,COOH,ハロゲン,CN,NOもしくはCHOで置換されたC1−6アルキル,=O,O−アルキル,S−アルキル,N−アルキル,O−アルケニル,S−アルケニル,N−アルケニル,O−アルキニル,S−アルキニルもしくはN−アルキニル,またはR7及びR8は共同して二重結合,C3−6シクロアルキル,もしくはN,O及びSからなる群から選択されるヘテロ原子を少なくとも含む5〜10員ヘテロ環状リング;
R9はフェニル,C(=O)R10,C(=O)OR10またはベンジル;及び
R10はOH,NHOH,NH2,C1−6アルキル,フェニルまたはベンジル;
【化95】
ここで、
R1は水素,アルキル,アルケニル,C5−6シクロアルキル,5員もしくは6員の不飽和炭素環または5員もしくは6員のヘテロ環;
XはC,O,NまたはS;
YはO,NHまたはO−C1−4アルキル;
nは0〜10の整数;
mは0〜5の整数;
R2及びR3は独立してC1−6アルキル;
R4はC5−6シクロアルキルまたは5員もしくは6員不飽和炭素環もしくはヘテロ環であって、ハロゲン,CF3,OR7またはNR7R8で置換されていてもよい、ここでR7及びR8は独立して水素またはC1−6アルキル;
R5はOH,NH2またはC5−6シクロアルキル,5員もしくは6員の不飽和炭素環もしくはヘテロ環であって、シクロアルキル、炭素環及びヘテロ環は任意でハロゲン,NH2,NO2,C1−6アルコキシ,C1−6アルキルチオ,OR7,NR7R8またはCF3で置換されていてもよい;及び
R6はH,ヒドロキシまたはC2−10アルケニルで置換されていてもよいC1−10アルキルであり,またはR1と共同して−C2H2−を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
HDAC阻害剤は、台湾グリーンプロポリス、プロポリンA,プロポリンB,プロポリンC,プロポリンD,プロポリンE,プロポリンF,プロポリンG、プロポリンH,プロポリンI,プロポリンJ、SAHA、NBM−HD−1であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
HDAC阻害剤が、
【化96】
NBM−HD−1,
【化97】
,
【化98】
,
【化99】
,
【化100】
,
【化101】
,
【化102】
,
【化103】
,
【化104】
,
【化105】
,
【化106】
,
【化107】
,
【化108】
,
【化109】
,
【化110】
,
【化111】
,
【化112】
,
【化113】
【化114】
【化115】
プロポリンA,
【化116】
プロポリンB,
【化117】
プロポリンC,
【化118】
プロポリンD,
【化119】
プロポリンE,
【化120】
プロポリンF,
【化121】
プロポリンG,
【化122】
プロポリンH,
【化123】
プロポリンI,
【化124】
プロポリンJ,
【化125】
NBM−HB−OS01,
【化126】
NBM−C−BCA−OS01,
【化127】
NBM−C−BA−OS01,
【化128】
NBM−C−BMA−OS01,
【化129】
NBM−C−BX−OS01,
【化130】
NBM−C−BCX−OS01,
【化131】
NBM−C−BMX−OS01,
【化132】
NBM−C−BFX−OS01,
【化133】
NBM−C−BBX−OS01,
【化134】
NBM−T−BX−OS01,
【化135】
NBM−T−BA−OS01,
【化136】
NBM−T−BCA−OS01,
【化137】
NBM−T−BBA−OS01,
【化138】
NBM−T−BFA−OS01,
【化139】
NBM−T−BMA−OS01,
【化140】
NBM−T−BCX−OS01,
【化141】
NBM−T−L−BCX−OS01,
【化142】
NBM−T−BMX−OS01,
【化143】
NBM−T−K−BMX−OS01,
【化144】
NBM−T−L−BMX−OS01,
【化145】
NBM−T−BTX−OS01,
【化146】
NBM−T−L−BTX−OS01,
【化147】
NBM−T−BBX−OS01,
【化148】
NBM−T−L−BBX−OS01,
【化149】
NBM−T−BFX−OS01,
【化150】
NBM−C−BBX−OS01,
【化151】
NBM−C−BFX−OS01,
【化152】
NBM−T−TMX−OS01,
【化153】
NBM−T−BMX−L−OS01,
【化154】
NBM-I-BCX−OS01,
【化155】
NBM−T−I−BMX−OS01,
【化156】
NBM−T−L−I−BMX−OS01,
【化157】
NBM−T−I−BBX−OS01,
【化158】
NBM−T−L−I−BBX−OS01,
【化159】
NBM−T−I−BCX−OS01,
【化160】
NBM―T−L−I−BCX−OS01,
【化161】
NBM−T−I−MCX−OS01
からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ミツバチの幼虫が働きバチによってそれらが分泌するローヤルゼリーを与えられうる、または人間によって働きバチから収集したローヤルゼリーを与えられうることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
対照さなぎよりも少なくとも体重で50%大きいさなぎを、または、対照女王バチよりも少なくとも体重で50%大きい女王バチを製造する方法であって、当該方法は、若い働きバチにHDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えることと、これら若い働きバチによって分泌されるローヤルゼリーをミツバチの幼虫に与えることと、当該ミツバチの幼虫から発達させたさなぎまたは女王バチを得ることとを含み、一方、HDAC阻害剤またはHDAC阻害剤の混合物を与えられなかった若い働きバチによって作られたローヤルゼリーを与えるミツバチの幼虫から対照さなぎまたは対照女王バチを発達させることを特徴とする方法。
【請求項12】
ミツバチの幼虫が働きバチによってそれらが分泌するローヤルゼリーを与えられうる、または人間によって働きバチから収集したローヤルゼリーを与えられうることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
対照ローヤルゼリーに対して68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むローヤルゼリーを製造する方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤を与えることと、若い働きバチによって製造されたローヤルゼリーを収集することとを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が、対照に対して約1.5〜12倍、1.5〜5倍、2〜8倍、2〜10倍、4〜12倍、または2〜4倍で増加することで変化することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
HDAC阻害剤が、請求項7に記載の以下の化学式(I)の化合物またはこれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
HDAC阻害剤が、請求項8に記載の化合物またはこれらの薬学的に許容される塩、立体異性体、光学異性体、プロドラッグ並びに溶媒和物からなる群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
HDAC阻害剤は、台湾グリーンプロポリス、プロポリンA,プロポリンB,プロポリンC,プロポリンD,プロポリンE,プロポリンF,プロポリンG、プロポリンH,プロポリンI,プロポリンJ、SAHA、NBM−HD−1であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
HDAC阻害剤は、請求項10に記載の化合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
対照ローヤルゼリーに対して68対64kDaタンパク質の比が変化したMRJP3を含むことを特徴とする、請求項13の方法で製造されたローヤルゼリー。
【請求項20】
MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が、対照に対して1.5〜5倍、2〜8倍、2〜10倍、4〜12倍、または2〜4倍で増加することで変化することを特徴とする請求項19のローヤルゼリー。
【請求項21】
ローヤルゼリー中のMRJP3の68対64kDaタンパク質の比を変化させる方法であって、若い働きバチにHDAC阻害剤またはその混合物を与えることで、対照となるローヤルゼリーに対して、MRJP3の68対64kDaタンパク質の比が変化したローヤルゼリーを製造することを特徴とする方法。
【請求項22】
働きバチのmrjp3遺伝子に対するエピジェネティクスを調整する方法であって、働きバチにHDAC阻害剤を与えることで、働きバチのmrjp3遺伝子の発現を調整することを含む方法。
【請求項23】
エピジェネティクスは、DNAメチル化またはHDAC活性の阻害であることを特徴とする請求項20の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(a)】
【図9(b)】
【図9(c)】
【公開番号】特開2011−24559(P2011−24559A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−232802(P2009−232802)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(506107726)彦臣生技藥品股▲ふん▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232802(P2009−232802)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(506107726)彦臣生技藥品股▲ふん▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】
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