説明

ロールグラインダーのビビリ検知方法

【目的】 ロールグラインダーのビビリを検知する。
【構成】 ロールグラインダー1のロール軸受部3に取り付けた振動センサー4からの振動信号を周波数解析器7に入力して周波数帯域毎の振動レベルを解析し、解析した振動レベルのうちビビリに関する特定の振動帯域の振動レベルをビビリ判定器10に入力し、このビビリ判定器10にあらかじめ設定したしきい値と比較して振動レベルがしきい値を超えたときには、ビビリが発生したと判定するロールグラインダーのビビリ検知方法。
【効果】 圧延ロールのロールマークを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鋼材等の金属材料を圧延する圧延ロールをロールグラインダーで研削するときに、圧延ロールの表面にビビリマークが発生したことを検知するためのロールグラインダーのビビリ検知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】高精度極薄鋼材を圧延ロールで圧延すると、時々製品の品質に影響を及ぼす程のロールマークが、鋼材の表面に付くことがある。このロールマークは、従来から圧延されている比較的厚さの厚い鋼材を圧延するときには、製品の品質に影響を及ぼす程の疵とはならず、特にその発生を防止するような対策は実施されてこなかった。
【0003】しかしながら、高精度極薄鋼材においては、このようなロールマークは、品質上重大な表面欠陥となるので、その発生を防止する方法の確立が望まれている。
【0004】上述したロールマークは、圧延ロールの表面に形成された細かなビビリマークが、圧延鋼材の表面に転写されたものであり、圧延ロールのビビリマークの発生を防止すれば、ロールマークも無くなると考えられる。
【0005】圧延ロールの表面に発生するビビリマークは、圧延ロール研削時に形成されたものと考えられるので、どのような研削条件の時にビビリマークが発生するかを検知できれば、おのずからビビリマークの発生を防止することはできる。
【0006】ビビリマーク発生のような研削(切削)異常を検出する従来の技術としては、特開昭63−188735号公報に開示された技術がある。この技術は、オンラインで鋳片から成分分析用円柱状サンプルを切削方式で採取するに際して、切削部にビビリが発生したときに、切削条件を変更してサンプルの切削を継続するというものである。その方法は、予め切削時における切削装置系の振動を測定解析して、サンプルリング切削条件と振動との因果関係を求めておき、切削装置系の振動を振動センサーにより常時とらえ、得られた振動に応じてサンプルリング切削条件をダイナミックに制御するというものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した特開昭63−188735号公報に開示されている切削時におけるビビリ検出方法には、次のような問題点があった。すなわち、この方法においては、広い周波数帯域にわたっての振動レベルの平均値を常時把握し、この振動レベルの平均値が一定値以上になったときに、ビビリが発生したとして、切削条件をビビリの発生しない条件に変更して、切削を継続するというものであるが、ビビリの程度が非常に大きいものである場合には、このような方法でビビリの発生を検知することもできるが、高精度極薄鋼材圧延時に問題となるロールマークを発生させる原因となる程度の軽度のビビリは検出できないという問題点がある。
【0008】この発明は、従来技術の上述のような問題点を解消するためになされたものであり、高精度極薄鋼材圧延時に問題となるロールマークを発生させる原因となる程度の低いビビリが検知できる、ロールグラインダーのビビリ検知方法を提供することを目的としている。
【0009】
【問題点を解決するための手段】請求項1に係るロールグラインダーのビビリ検知方法は、ロールグラインダーのロール軸受部の振動信号のうち、特定周波数帯域の成分のレベルがしきい値を超えたとき、ビビリが発生したと判定することを特徴とするものである。なお、特定周波数帯域としては、一つでも複数でもよく、複数を設けた場合には、いずれか一つの特定周波数帯域の成分のレベルがしきい値を超えたとき、又はそれらの全てがしきい値を超えたときにビビリが発生したと判定することになる。複数の特定周波数帯域を設けた場合には、しきい値は各特定周波数帯域毎に設ければよい。より具体的な発明の形態としては、ロールグラインダーのロール軸受部に取り付けた振動センサーからの振動信号を周波数解析器に入力し、この周波数解析器により周波数帯域毎の振動レベルを解析し、ビビリに関する特定の振動帯域の振動レベルをビビリ判定器に入力し、このビビリ判定器にあらかじめ設定したしきい値と比較して振動レベルがしきい値を超えたときには、ビビリが発生したと判定する方法が考えられる。
【0010】請求項2に係るロールグラインダーのビビリ検知方法は、上記ロールグラインダーのビビリ検知方法において、特定周波数帯域としきい値を設定するにあたり、ロールグラインダーに意図的にビビリを発生させたときの振動周波数分布をビビリを発生させないときの振動周波数分布と比較し、振動レベルが一定値以上変化している周波数帯域を特定周波数帯域として設定するとともに、その周波数帯域のビビリを発生させたときの振動レベルを基にしきい値を設定することを特徴とするものである。
【0011】
【作用】この発明に係るロールグラインダーのビビリ検知方法において、ロールグラインダーのロール軸受部の振動信号の中から、特定周波数帯域の振動レベルに着目したのは、次の理由によるものである。すなわち、ロールグラインダーで研削中のロールに標準以上の切り込みを入れて、意図的にビビリを発生させたときに得られるロール軸受部に設けた振動センサーからの振動信号と、意図的にビビリを発生させないときに得られる振動信号とを、従来のように広い周波数帯域の平均振動レベルで比較した場合、平均振動レベルはほとんど変化せず、このような方法では、ロールマークの原因となるようなビビリを検出することは不可能と判明した。
【0012】しかしながら、振動周波数波形を周波数分析器で分析し、一定の周波数帯域毎の振動レベルを把握して、同一周波数帯域毎に振動レベルを比較してみると、ある特定の周波数帯域において、ビビリ発生後の振動レベルがビビリを発生させない場合の振動レベルに比較して大幅に高くなっていることが分かった。
【0013】すなわち、図2(a)に示すビビリを発生させない場合の振動周波数波形と、図2(b)に示すビビリを発生させた場合の振動周波数波形とを比較すると、広い周波数帯域にわたっての振動レベルには大きな変化がないが、175Hz付近の周波数帯域において、十分に識別できるほどに変化していることが分かる。
【0014】したがって、この周波数帯域において、振動レベルが例えば図2(a)および(b)の□印で表示したレベルになるかならないかを常時検知していれば、ビビリが発生したことを確実に把握することができる。
【0015】逆に、図2(c)に示した振動周波数波形のように、ビビリ発生に関係のない周波数帯域の振動レベルが高くなって、図2(a)の振動周波数波形に比較して、全体の振動レベルが高くなる場合もあるが、この例で明らかなように、全体の振動レベルが高くなったからといって、ビビリが発生しているとは判断できないのである。
【0016】すなわち、本発明で目的としているロールマークの原因となるビビリの発生を把握するためには、特定の周波数帯域における振動レベルを検知する必要があるのである。
【0017】ビビリ発生に関する特定の周波数帯域の許容振動レベルを設定する方法としては、ビビリの程度を種々変えてビビリを意図的に発生させ、その時の振動レベルと発生するロール表面のビビリマークの程度との関係から決定すればよい。
【0018】なお、ビビリ発生に関する特定の周波数帯域は、ロールを含む研削装置系の固有振動によって決定すると考えられるので、同一種類のロールにおいては、同一周波数帯域となり、研削の都度特定周波数帯域を設定することはない。
【0019】
【実施例】この発明の実施例のロールグラインダーのビビリ検知方法を、図1により説明する。図1は、このビビリ検知方法を実施する手順を示したブロック図である。
【0020】このビビリ検知方法においては、ロールグラインダー1のロール2の軸受部3に取り付けた電荷型加速度センサー4により振動を検出し、この電荷型加速度センサー4により振動を電荷に変換した振動信号を、電荷ー電圧変換器5を通して電圧に変換した振動信号とし、この電圧に変換した振動信号を増幅アンプ6で増幅した上で、周波数解析演算器7に入力する。
【0021】そして、周波数解析演算器7により、細分された周波数帯域毎の振動レベルを演算する。これら複数の周波数帯域の振動レベルの値を二次変換器8に送り、二次変換器8にあらかじめ周波数設定器9により設定されているビビリに関する周波数帯域の振動レベルを抽出する。
【0022】そして、この振動レベルの値をビビリ判定器10に送り、あらかじめしきい値設定器11により設定してあるしきい値と比較する。そして、振動レベルがしきい値を超えているときには、ビビリが発生しているとして、信号を警報ブザー12に送り警報を発する。したがって、この警報を基に切削条件を変更して、ビビリの発生を解消することができる。
【0023】また、この信号に基づいて、波形出力器13によりその時の振動周波数波形を、プロッタ−でプロットすることもできる。
【0024】また、同じ信号に基づいて、波形表示器14によりそのときの振動周波数波形をCRT上に表示することもできる。
【0025】また、波形出力器13および波形表示器14は、前記周波数解析演算器7により解析された振動波形を、ビビリの発生に関係なく出力したり、表示したりすることができる。したがって、波形出力器13や波形表示器14により得られる人為的に発生させたビビリの情報と正常時の情報を基に、ビビリに関する適正なしきい値を設定することもできる。
【0026】なお、ビビリに関する特定の周波数帯域の幅は、調査の結果からは±2〜3Hzであり、ビビリ以外の要因により発生した振動とを明確に区別することができる。
【0027】図2は、ロールグラインダーの振動波形を示すグラフである。図2(a)はビビリの発生がない場合の振動波形である。
【0028】図2(b)はビビリが発生したときの振動波形であり、この時のロール研削条件は、ロールグラインダーの砥石径が600mm、砥石回転数が580rpm、研削されるワークロールの径が70mm、回転数が粗研削で35〜40rpm、中仕上で45rpm、仕上で50〜55rpmである。図2(b)においては、全周波数帯域の振動レベルを表しているが、図2(a)における周波数が175Hzの振動レベルが1.5Vと特に大きくなっており、175Hzがビビリに起因する周波数であると認識できる。そして、この周波数は被研削ロールの固有振動数に略一致している。
【0029】したがって、本発明におけるビビリに関する特定周波数帯域としきい値の設定は、全周波数帯域におけるスペクトル表示を見て、容易に決定することができる。また、被研削ロールの固有振動数を計算して、当りをつけることもできる。
【0030】なお、図2(c)はビビリ発生がない場合でかつ全体の振動レベルが上昇した場合を示すが、この場合には、前記175Hzの振動レベルには変化がなく、単に全周波数帯域の平均振動レベルの変動によって、ビビリの発生を検知しようとするのは無理であることが分かる。
【0031】
【発明の効果】この発明により、圧延ロールを研削中に発生するビビリを正確に検知することができ、研削条件を変更してビビリをなくすことができるので、高精度極薄材圧延時に問題となる圧延ロールのビビリマークに起因するロールマークを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例のロールグラインダーのビビリ検知方法の実施手順を示したブロック図である。
【図2】ロールグラインダーの振動波形を示すグラフであり、(a)はビビリ発生がない場合、(b)はビビリ発生がある場合、(c)はビビリ発生がない場合でかつ全体の振動レベルが上昇した場合を示す。
【符号の説明】
1 ロールグラインダー
2 ロール
3 軸受部
4 電荷型加速度センサー
5 電荷ー電圧変換器
6 増幅アンプ
7 周波数解析演算器
8 二次変換器
9 周波数設定器
10 ビビリ判定器
11 しきい値設定器
12 警報ブザー
13 波形出力器
14 波形表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロールグラインダーのロール軸受部の振動信号のうち、特定周波数帯域の成分のレベルがしきい値を超えたとき、ビビリが発生したと判定することを特徴とするロールグラインダーのビビリ検知方法。
【請求項2】 請求項1に記載のロールグラインダーのビビリ検知方法において、特定周波数帯域としきい値を設定するにあたり、ロールグラインダーに意図的にビビリを発生させたときの振動周波数分布をビビリを発生させないときの振動周波数分布と比較し、振動レベルが一定値以上変化している周波数帯域を特定周波数帯域として設定するとともに、その周波数帯域のビビリを発生させたときの振動レベルを基にしきい値を設定することを特徴とするロールグラインダーのビビリ検知方法。

【図1】
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【図2】
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