説明

ワイヤレスUSB通信システム、USBホスト及びUSBデバイス

【課題】USBデバイスの有する他の通信モジュールの設定をケーブルを用いずに比較的簡単に行う。
【解決手段】パソコン70は、プリンター20との間でワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキスト(CC)の共有を行ってプリンター20との接続を確立したあと、このプリンター20へ第1ワイヤレスUSB通信モジュール90を介して無線LAN通信モジュール48のSSID、暗号化の方式、暗号化キー、IPアドレス等の通信情報を送信する。一方、プリンター20は、CCの共有を行ってパソコン70との接続を確立する。そのあと、このプリンター20は、第2ワイヤレスUSB通信モジュール60を介して通信情報を受信したときには、その受信した通信情報をフラッシュメモリー34に記憶すると共に、無線LAN通信モジュール48の通信条件とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレスUSB通信システム、USBホスト及びUSBデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、USBデバイスの備える無線LAN通信モジュールの通信条件を設定するにあたり、ケーブルを介してその通信条件に関する通信情報をUSBホストからUSBデバイスへ送信することが知られている。例えば、特許文献1に記載のネットワーク印刷システムでは、パソコンとプリンターとがUSBインタフェースケーブルで接続され、このケーブルを介してパソコンからプリンターへSSID及びWEPキーが送信され、プリンターの無線LANインタフェース(無線LAN通信モジュール)の通信条件が設定される。
【特許文献1】特開2007−157008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、USBデバイスは、無線LAN通信モジュールや、有線USBの規格で通信を行う有線USB通信モジュールなど(他の通信モジュール)の他に、ワイヤレスUSBの規格で通信を行うワイヤレスUSB通信モジュールを有している場合がある。この場合、例えば、USBデバイスの無線LAN通信モジュールの通信条件を設定するにあたり、有線USBを用い特許文献1と同様にして行うと、USBインタフェースケーブルが必要となるという問題があった。特に、無線LAN通信モジュールを設定しこの設定のあとに有線USBを使わない場合には、この設定のためだけにUSBインタフェースケーブルが必要ということになり無駄であった。また、通信条件の設定を、無線LANを用いて行う場合には、例えば、USBデバイスの操作パネルにより無線LANの設定を入力する必要があった。しかし、一般的にUSBデバイスの操作パネルは、ディスプレイが小さかったりボタン数が少なかったりするなど無線LANの設定の入力に不都合な場合が多かった。
【0004】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、USBデバイスの有する、ワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールの設定をケーブルを用いずに比較的簡単に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明のワイヤレスUSB通信システムは、
ワイヤレスUSB規格で通信を行う第1の通信モジュールを有するUSBホストと、
前記ワイヤレスUSB規格で通信を行う第2の通信モジュール、ワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュール及び各種情報を記憶可能なメモリーを有するUSBデバイスと、
を備えたワイヤレスUSB通信システムであって、
前記USBホストは、前記USBデバイスとの間で前記ワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行って前記USBデバイスとの接続を確立したあと、前記USBデバイスへ前記第1の通信モジュールを介して前記他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を送信し、
前記USBデバイスは、前記コネクション・コンテキストの共有を行って前記USBホストとの接続を確立したあと、前記第2の通信モジュールを介して前記USBホストから前記通信情報を受信したときには、該受信した通信情報を前記メモリーに記憶すると共に、該通信情報に基づいて前記他の通信モジュールの通信条件を設定する、
ものである。
【0007】
このワイヤレスUSB通信システムでは、USBホストは、USBデバイスとの間でワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行ってUSBデバイスとの接続を確立したあと、USBデバイスへ第1の通信モジュールを介して他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を送信する。ここで、「他の通信モジュール」は、第1及び第2の通信モジュールとは別の通信モジュールである。一方、USBデバイスは、コネクション・コンテキストの共有を行ってUSBホストとの接続を確立する。そのあと、このUSBデバイスは、第2の通信モジュールを介してUSBホストから通信情報を受信したときには、その受信した通信情報をメモリーに記憶すると共に、その通信情報に基づいて他の通信モジュールの通信条件を設定する。ここで、USBホストから他の通信モジュールの通信条件を設定するには、USBデバイスへ通信情報を送信するためにUSBホストとUSBデバイスとの接続を確立する必要がある。例えば、有線USBや有線LANで接続する場合には、USBケーブルやLANケーブルを用いる必要がある。これに対して、ワイヤレスUSB規格で接続し、両者の接続の際にワイヤレスUSB規格のインバンド方式で両者の間でコネクション・コンテキストの共有を行う場合には、両者を接続するためにケーブルを用いる必要がない。また、無線LANで接続する場合には、両者を接続するために、例えば、USBデバイスの操作パネルにより、無線LANの設定を入力する必要がある。一般的にUSBデバイスの操作パネルは、ディスプレイが小さかったりボタン数が少なかったりするなど無線LANの設定の入力に不都合な場合が多い。これに対して、ワイヤレスUSB規格を用い、両者の接続の際にワイヤレスUSB規格のインバンド方式で両者の間でコネクション・コンテキストの共有を行う場合には、両者を接続するために入力に不都合な操作パネルなどで無線LANの設定を入力する必要がない。したがって、USBデバイスの有する、ワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールの設定をケーブルを用いずに比較的簡単に行うことができる。
【0008】
本発明のワイヤレスUSB通信システムにおいて、前記他の通信モジュールは、無線LAN通信モジュール又は有線LAN通信モジュールであるものとしてもよい。一般に、無線LAN通信モジュールや有線LAN通信モジュールは、設定項目が複数あり、操作パネルから入力すると手間がかかるため、本発明を適用する意義が高い。
【0009】
本発明のワイヤレスUSB通信システムにおいて、前記USBホストはパーソナルコンピューターであり、前記USBデバイスはプリンターであるものとしてもよい。こうすれば、一般に、パーソナルコンピューターは、プリンターよりも無線LAN等の設定の入力がしやすいため、本発明を適用する意義が高い。
【0010】
本発明のUSBホストは、
USBデバイスの有する第2の通信モジュールとワイヤレスUSB規格で通信を行う第1の通信モジュールと、
前記USBデバイスとの間で前記ワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行って前記USBデバイスとの接続を確立したあと、前記USBデバイスへ前記第1の通信モジュールを介して前記USBデバイスに備えられたワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を送信するホスト制御手段と、

を備えたものである。
【0011】
このUSBホストでは、USBデバイスとの間でワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行ってUSBデバイスとの接続を確立したあと、USBデバイスへ第1の通信モジュールを介してUSBデバイスに備えられたワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を送信する。このように、通信情報をUSBホストからUSBデバイスへ第1の通信モジュールを介して送信するため、USBデバイスの有する、ワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールの設定をケーブルを用いずに比較的簡単に行うことができる。
【0012】
本発明のUSBデバイスは、
USBホストの有する第1の通信モジュールとワイヤレスUSB規格で通信を行う第2の通信モジュールと、
ワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールと、
各種情報を記憶可能なメモリーと、
前記他の通信モジュールの通信条件を設定するにあたり、前記USBホストとの間で前記ワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行って前記USBホストとの接続を確立したあと、前記第2の通信モジュールを介して前記USBホストから前記他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を受信したときには、該受信した通信情報を前記メモリーに記憶すると共に、該通信情報に基づいて前記他の通信モジュールの通信条件を設定するデバイス制御手段と、
を備えたものである。
【0013】
このUSBデバイスでは、他の通信モジュールの通信条件を設定するにあたり、USBホストとの間でワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行ってUSBホストとの接続を確立する。そのあと、第2の通信モジュールを介してUSBホストから他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を受信したときには、その受信した通信情報をメモリーに記憶すると共に、その通信情報に基づいて他の通信モジュールの通信条件を設定する。したがって、USBデバイスの有する、ワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールの設定をケーブルを用いずに比較的簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、ワイヤレスUSB通信システム10の構成の概略を示す構成図である。このワイヤレスUSB通信システム10は、USBデバイスとしての機能を備えており画像データの印刷を行うプリンター20と、USBホストとしてプリンター20とワイヤレスUSB規格により情報のやりとりを行うパソコン70とによって構成されている。
【0015】
プリンター20は、印刷機構40と、操作パネル50と、第2ワイヤレスUSB通信モジュール60と、第3ワイヤレスUSB通信モジュール42と、有線USB通信モジュール44と、有線LAN通信モジュール46と、無線LAN通信モジュール48と、プリンターコントローラー30とを備えている。
【0016】
印刷機構40は、プリンターコントローラー30から印刷指令を受けると、その印刷指令の対象である印刷ジョブに基づいて、印刷ヘッドから記録紙Sへインクを吐出することにより印刷を実行する周知のインクジェット方式のカラープリンター機構として構成されている。
【0017】
操作パネル50は、ユーザーがプリンター20に対して各種の指示を入力するためのデバイスであり、各種の指示に応じた文字や画像が表示される表示部51や、ユーザーの指示を各種のキーにより入力可能である操作部52などが設けられている。各種のキーとして、上下左右の4つのボタンからなるカーソルキー52a、1つのボタンからなるOKキー52b、接続確認キー52cなどを備えている。
【0018】
第2及び第3ワイヤレスUSB通信モジュール60,42は、ワイヤレスUSBの規格で接続されたUSBホスト(例えば、パソコン70)との情報のやりとりを行うものである。第2ワイヤレスUSB通信モジュール60は、USBホストとの情報のやりとりを制御するUSBコントローラー61と、USBホストとの情報の送受信を無線で行う送受信機62とを備えている。この第2ワイヤレスUSB通信モジュール60は、パソコン70の第1ワイヤレスUSB通信モジュール90との接続を確立するには、コネクション・コンテキスト(CC:Connection Context)を両者の間で共有する必要がある。ここで、CCは、USBホスト(ここではパソコン70)固有のIDであるCHID(Connection Host ID)、USBデバイス(ここではプリンター20)固有のIDであるCDID(Connection Device ID)及び両者に共有されるマスター鍵であるCK(Connection Key)からなる。また、第3ワイヤレスUSB通信モジュール42は、詳しくは図示しないが第2ワイヤレスUSB通信モジュール60と同様の構成である。
【0019】
有線USB通信モジュール44は、この有線USB通信モジュール44にUSBケーブルを介して接続されたパソコンなどとこのプリンター20との間で情報のやり取りを行うものである。
【0020】
有線LAN通信モジュール46は、この有線LAN通信モジュール46にLANケーブルを介して接続されたハブやパソコンなどとこのプリンター20との間で情報のやりとりを行うものである。この有線LAN通信モジュール46を用いてハブやパソコンなどと情報のやり取りを行うには、IPアドレスやサブネットマスク、デフォルトゲートウェイなどを設定する必要がある。
【0021】
無線LAN通信モジュール48は、無線LANの規格で接続されたアクセスポイントやコンピューターなどとの間で情報のやりとりを行うものである。この無線LAN通信モジュール48を用いてアクセスポイントやコンピューターなどとの間で情報のやり取りを行うには、まず、通信モード(インフラストラクチャモードかアドホックモード)や、SSID(Service Set Identifier)、暗号化の方式、暗号化キーなどを設定する必要がある。更に、IPアドレスやサブネットマスク、デフォルトゲートウェイなども設定する必要がある。
【0022】
プリンターコントローラー30は、CPU31を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種プログラムを記憶したROM32と、一時的にデータを記憶可能なRAM33と、電気的に書き換え可能で電源を切ってもデータが保持されるフラッシュメモリー34とを備えている。このプリンターコントローラー30は、バス25を介して印刷機構40や操作パネル50、第2及び第3ワイヤレスUSB通信モジュール60,42、有線USB通信モジュール44、有線LAN通信モジュール46及び無線LAN通信モジュール48と電気的に接続されている。
【0023】
パソコン70は、周知の汎用パソコンであり、各種制御を実行するCPU81や各種制御プログラムを記憶するROM82、データを一時記憶するRAM83などを備えたパソコンコントローラー80を備えている。このパソコン70は、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する大容量メモリーであるHDD84と、ワイヤレスUSBの規格で接続されたUSBデバイス(例えば、プリンター20)との情報のやりとりを行う第1ワイヤレスUSB通信モジュール90とを備えている。第1ワイヤレスUSB通信モジュール90は、USBデバイスとの情報のやり取りを制御するUSBコントローラー91と、USBデバイスとの情報の送受信を無線で行う送受信機92とを備えている。また、パソコン70は、各種情報を画面表示するディスプレイ86やユーザーが各種の指令や情報を入力するキーボード及びマウス等の入力装置87を備えている。パソコンコントローラー80は、入力装置87の操作に応じて発生する操作信号を入力する。また、各種データをワイヤレスUSBの規格で出力するよう第1ワイヤレスUSB通信モジュール90へ制御信号を出力したり、ディスプレイ86に制御信号を出力したりする。ここで、パソコンコントローラー80、HDD84、CD−ROMドライブ85及び第1ワイヤレスUSB通信モジュール90は、図示しないバスで電気的に接続されている。
【0024】
次に、こうして構成された本実施形態のワイヤレスUSB通信システム10の動作、特に、ユーザーがプリンター20を購入しパソコン70を操作して始めてプリンター20の無線LAN通信モジュール48の設定を行うときの動作について説明する。ここでは、パソコン70の処理について主として説明する。図2は、CPU81により実行される要求送信処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、以下の手順によって実行される。即ち、まず、ユーザーによりパソコン70及びプリンター20の電源がオンされ、CD−ROMドライブ85にプリンター20の設定用ソフトウェアの記憶されたCD−ROMがセットされる。次に、入力装置87が操作されてプリンター20の設定用ソフトウェアが実行され、無線LAN通信モジュール48の設定が指示されたときに実行される。ここでは、インフラストラクチャモードの設定を行うものとして説明する。
【0025】
このルーチンが開始されると、CPU81は、まず、プリンター20の第2ワイヤレスUSB通信モジュール60との間でCCの共有を開始する指示が入力されたか否かを判定する(ステップS100)。ここで、CCの共有は、以下の手順によりユーザーがプリンター20の操作部52やパソコン70の入力装置87を操作したときに、開始される。即ち、まず、ユーザが操作部52を操作して図3に例示する接続開始確認画面88をプリンター20の表示部51に表示させると共に、入力装置87を操作して図3と同様の画面をパソコン70のディスプレイ86に表示させる。図示するように、接続開始確認画面88には、開始ボタン88aが設けられている。次に、ユーザーが、プリンター20の操作部52のカーソルキー52aにより開始ボタン88aを選択しOKキー52bにより確定すると共に、パソコン70のマウスを操作して開始ボタン88aをクリックする。このパソコン70では、開始ボタン88aがクリックされると、CCの共有を開始する指示が入力される。このステップS100で、CCの共有を開始する指示が入力されるのを待って、CPU81は、USBコントローラー91が数字列である公開キー(Public Key cryptography)の交換をUSBコントローラー61との間で行うよう制御する。公開キーの交換後、CPU31は、USBコントローラ61がこれら双方の公開キーを元にディスプレイ51に表示可能な2桁または4桁のハッシュ値を求めるよう制御する。その後、CPU31は、求めたハッシュ値を確認用数値として表示部51に表示する。また、CPU81は、USBコントローラ91がUSBコントローラ61と同様にしてプリンター20から通知された桁数のハッシュ値を求めるよう制御したあと求めたハッシュ値を確認用数値としてディスプレイ86に表示する。ここで、パソコン70及びプリンター20にて同じ確認用数値が表示されたときはCCの共有が成功であり、違う数値が表示されたときは失敗である。ユーザーは、パソコン70及びプリンター20にて同じ確認用数値が表示されたのを確認して、ディスプレイ86の画面上の図示しない接続確認ボタンをクリックすると共に、操作部52の接続確認キー52cを押下する。CPU81は、ディスプレイ86の画面上の図示しない接続確認ボタンがクリックされたとき、USBコントローラー91にCKを生成させ、CHID及びCDIDと共にCCとして、いわゆるインバンド方式によりパソコン70とプリンター20との間で共有する(ステップS110)。具体的には、CPU81は、USBコントローラー91が、CCをHDD84に記憶すると共に、送受信機92によりプリンター20へ転送するよう制御する。CPU31は、USBコントローラー61が、送受信機62を介してこのCCを受信すると、受信したCCをフラッシュメモリー34へ記憶するよう制御する。このように、CCの共有はケーブルを用いずに行われる。
【0026】
続いて、CPU81は、プリンター20との通信接続を確立するようUSBコントローラー91を制御する(ステップS120)。ここで、通信接続の確立は、例えば4ウェイハンドシェイクにより行うものとする。この4ウェイハンドシェイクは、例えば、CPU81はUSBコントローラ91が、また、CPU31はUSBコントローラ61が、以下の手順を実行するように制御することで行う。パソコン70とプリンター20は、CKを相互で保有している。まず、パソコン70のUSBコントローラー91がユニークな乱数であるHNonce及びTKID(Temporal Key Identifier)を送受信機92を介してプリンター20へ送信する。これを受けたプリンター20のUSBコントローラー61は、CK、HNonce及び自ら生成したユニークな乱数であるDNonceからPTK(Pairwise Temporal Key)を生成し、TKID及びDnonceを送受信機62を介してパソコン70へ送信する。これを受けたUSBコントローラー91は、USBコントローラー61と同様に、CK、HNonce及びDnonceからPTKを生成する。この時点でパソコン70とプリンター20とは同じCKを保有していれば、同じPTKを保つことになる。このため、プリンター20から受信したPTKと自らが生成したPTKとを比較し、両者が一致していれば、パソコン70とプリンター20が同じCKを保有していると判断できる。USBコントローラー91は、プリンター20から受信したPTKと自らが生成したPTKとが一致していることを確認し、プリンター20へUSBコントローラー61の生成したPTKを使用する指示を送信する。これを受けたUSBコントローラー61は、自らが生成したPTKの使用を開始し、パソコン70へその旨を送信する。これを受けたUSBコントローラー91は、自らが生成したPTKの使用を開始する。これにより、パソコン70とプリンター20との接続が確立されPTKによる両者の間の暗号化通信を行うことが可能な状態となる。このように、パソコン70とプリンター20との通信接続の確立もケーブルを用いずに行われる。
【0027】
続いて、CPU81は、USBコントローラー91に、USBのデバイス列挙処理を行わせ、プリンター20を認識する(ステップS130)。続いて、インフラストラクチャモードにおけるSSIDの設定を行う(ステップS140)。具体的には、CPU81が図4(a)に例示するSSID入力画面89aをディスプレイ86に表示させ、ユーザーが入力装置87を操作して入力ボックス93aにSSIDを入力したあと決定ボタン94aをクリックすることによって設定される。続いて、暗号化の方式を設定する(ステップS150)。具体的には、CPU81が図4(b)に例示する暗号化方式設定画面89bをディスプレイ86に表示させ、ユーザーが入力装置87を操作してリストボックス93bの中から暗号化の方式を選択したあと決定ボタン94bをクリックすることによって設定される。ここでは、WEP−64bit(40bit)が選択されたとする。続いて、暗号化キーを設定する(ステップS160)。具体的には、CPU81が図4(c)に例示する暗号化キー入力画面89cをディスプレイ86に表示させ、ユーザーが入力装置87を操作して入力ボックス93cに暗号化キーを入力したあと決定ボタン94cをクリックすることによって設定される。続いて、設定内容を確定する(ステップS170)。具体的には、CPU81が図4(d)に例示する確認画面89dをディスプレイ86に表示させ、ユーザーが設定内容を確認し入力装置87を用いて決定ボタン94dを押下することによって設定内容が確定される。続いて、ステップS140〜S160で入力された、SSID、暗号化の方式及び暗号化キー(SSID等)をHDD84へ記憶すると共に、送受信機92を介してプリンター20へ送信する(ステップS180)。このSSID等を受信したプリンター20のCPU31は、このSSID等をフラッシュメモリー34に記憶すると共に、無線LAN通信モジュール48の通信条件の1つとする。続いて、IPアドレス、サブネットマスク及びデフォルトゲートウェイ(IPアドレス等)を設定する(ステップS190)。具体的には、CPU81が図4(e)に例示するIPアドレス等設定画面89eをディスプレイ86に表示させ、ユーザーが入力装置87を操作してIPアドレス等を3つの入力ボックス93eに入力したあと決定ボタン94eをクリックすることによって設定される。続いて、設定されたIPアドレス等をプリンター20へ送信し(ステップS200)、本ルーチンを終了する。このIPアドレス等を受信したプリンター20のCPU31は、このIPアドレス等をフラッシュメモリー34に記憶すると共に、無線LAN通信モジュール48の通信条件の1つとする。このように、上述したステップS140〜S160,S190では、ユーザーは、ディスプレイ86よりも小さい表示部51やボタンの数が少ない操作部52を有し情報を入力するのに不都合なプリンター20の操作パネル50よりも入力のしやすいパソコン70の入力装置87を用いて情報を入力する。また、設定されたSSID等やIPアドレス等のプリンター20への送信も、ケーブルを用いずに行われる。ここで、図2の無線LAN設定処理ルーチンの終了時にHDD84に記憶されている設定情報を図5に示す。また、図2の無線LAN設定処理ルーチンの終了時にフラッシュメモリー34に記憶されている設定情報を図6に示す。HDD84及びフラッシュメモリー34にはIPアドレス以外同じ情報が記憶されている。
【0028】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のワイヤレスUSB通信システム10が本発明のワイヤレスUSB通信システムに相当し、パソコン70がUSBホストに相当し、プリンター20がUSBデバイスに相当し、第1ワイヤレス通信モジュール90が第1の通信モジュールに相当し、第2ワイヤレス通信モジュール60が第2の通信モジュールに相当し、無線LAN通信モジュール48が他の通信モジュールに相当し、フラッシュメモリー34がメモリーに相当する。また、パソコンコントローラー80がホスト制御手段に相当し、プリンターコントローラー30がデバイス制御手段に相当する。
【0029】
以上詳述した本実施形態のワイヤレスUSB通信システム10によれば、プリンター20の有する無線LAN通信モジュール48の設定をケーブルを用いずに比較的簡単に行うことができる。一般に、無線LAN通信モジュール48は、設定項目が複数あり、操作パネル50から入力すると手間がかかるため、本発明を適用するのが好ましい。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0031】
例えば、上述した実施形態では、無線LAN通信モジュール48の設定を行うものとして説明したが、有線LAN通信モジュール46の設定を行うものとしてもよい。この場合には、図2の無線LAN設定処理ルーチンのステップS110〜S130,S190,S200の処理を実行するものとする。
【0032】
上述した実施形態では、ワイヤレスUSB通信システム10として説明したが、USBデバイスがワイヤレスUSB通信モジュール以外の通信モジュールを有し、USBホストとUSBデバイスとがワイヤレスUSB規格で接続可能であれば、例えば、PDAなどパソコン70以外のUSBホストや、デジカメなどプリンター20以外のUSBデバイスを備えたものに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ワイヤレスUSB通信システム10の構成を表す説明図。
【図2】無線LAN設定処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図3】接続開始確認画面88の一例を示す説明図。
【図4】ディスプレイ86に表示される各種画面の一例を示す説明図。
【図5】無線LAN設定後、HDD84に記憶されている情報の説明図。
【図6】無線LAN設定後、フラッシュメモリー34に記憶されている情報の説明図。
【符号の説明】
【0034】
10 ワイヤレスUSB通信システム、20 プリンター、25 バス、30 プリンターコントローラー、31 CPU、32 ROM、33 RAM、34 フラッシュメモリー、40 印刷機構、42 第3ワイヤレスUSB通信モジュール、44 有線USB通信モジュール、46 有線LAN通信モジュール、48 無線LAN通信モジュール、50 操作パネル、51 表示部、52 操作部、52a カーソルキー、52b OKキー、52c 接続確認キー、60 第2ワイヤレスUSB通信モジュール、61,91 USBコントローラー、62,92 送受信機、70 パソコン、80 パソコンコントローラー、81 CPU、82 ROM、83 RAM、84 HDD、85 CD−ROMドライブ、86 ディスプレイ、87 入力装置、88 接続開始確認画面、88a 開始ボタン、89a SSID入力画面、89b 暗号化方式設定画面、89c 暗号化キー入力画面、89d 確認画面、89e IPアドレス等設定画面、93a,93c 入力ボックス、93b リストボックス、94a,94b,94c,94d 決定ボタン、90 第1ワイヤレスUSB通信モジュール、S 記録紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレスUSB規格で通信を行う第1の通信モジュールを有するUSBホストと、
前記ワイヤレスUSB規格で通信を行う第2の通信モジュール、ワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュール及び各種情報を記憶可能なメモリーを有するUSBデバイスと、
を備えたワイヤレスUSB通信システムであって、
前記USBホストは、前記USBデバイスとの間で前記ワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行って前記USBデバイスとの接続を確立したあと、前記USBデバイスへ前記第1の通信モジュールを介して前記他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を送信し、
前記USBデバイスは、前記コネクション・コンテキストの共有を行って前記USBホストとの接続を確立したあと、前記第2の通信モジュールを介して前記USBホストから前記通信情報を受信したときには、該受信した通信情報を前記メモリーに記憶すると共に、該通信情報に基づいて前記他の通信モジュールの通信条件を設定する、
ワイヤレスUSB通信システム。
【請求項2】
前記他の通信モジュールは、無線LAN通信モジュール又は有線LAN通信モジュールである、
請求項1に記載のワイヤレスUSB通信システム。
【請求項3】
前記USBホストはパーソナルコンピューターであり、
前記USBデバイスはプリンターである、
請求項1又は2に記載のワイヤレスUSB通信システム。
【請求項4】
USBデバイスの有する第2の通信モジュールとワイヤレスUSB規格で通信を行う第1の通信モジュールと、
前記USBデバイスとの間で前記ワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行って前記USBデバイスとの接続を確立したあと、前記USBデバイスへ前記第1の通信モジュールを介して前記USBデバイスに備えられたワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を送信するホスト制御手段と、
を備えたUSBホスト。
【請求項5】
USBホストの有する第1の通信モジュールとワイヤレスUSB規格で通信を行う第2の通信モジュールと、
ワイヤレスUSB以外の規格で通信を行う他の通信モジュールと、
各種情報を記憶可能なメモリーと、
前記他の通信モジュールの通信条件を設定するにあたり、前記USBホストとの間で前記ワイヤレスUSB規格のインバンド方式でコネクション・コンテキストの共有を行って前記USBホストとの接続を確立したあと、前記第2の通信モジュールを介して前記USBホストから前記他の通信モジュールの通信条件に関する通信情報を受信したときには、該受信した通信情報を前記メモリーに記憶すると共に、該通信情報に基づいて前記他の通信モジュールの通信条件を設定するデバイス制御手段と、
を備えたUSBデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−141586(P2010−141586A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315874(P2008−315874)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】