説明

ワーク搬送装置

【課題】プレス装置間の幅を短くし、その上で高速搬送することができるワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】フレーム2と、フレームに基端が昇降可能にガイドされると共に、フレームに対し基端が揺動可能に連結されている第1アーム3と、第1アームを昇降させる昇降駆動機構4と、第1アームを揺動させる第1揺動駆動機構5と、第1アームに基端が長手方向に移動可能にガイドされると共に、第1アームに対し基端を揺動可能に連結されている第2アーム6と、第2アームを移動させる移動駆動機構7と、第2アームを揺動させる第2揺動駆動機構8と、第2アームの先端付近に、第2アームに対して揺動可能に連結されたワークの保持手段9と、昇降駆動機構、第1揺動駆動機構、移動駆動機構および第2揺動駆動機構を制御する制御装置29とを備えたワーク搬送装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワークを搬送するワーク搬送装置に関する。さらに詳しくは、隣り合うプレス装置の間でアームを揺動してワークを搬送するワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のワーク搬送装置は(特許文献1の図2参照)、クラウンの下面からワークの搬送方向に向かって左右に垂下された一対の支柱を備えている。それら一対の支柱にはそれぞれブラケットが取り付けられ、それらブラケットには回動支持軸の両端が支持される。その回動支持軸の左右にはそれぞれ揺動体が枢支され、それぞれの揺動体にはサーボモータと、フィードレバーとが設けられる。前記左右のフィードレバーには前記サーボモータの駆動によりフィードレバーに対して直進運動するキャリアがそれぞれ支持される。そのキャリアの先端にはチルト装置によりクロスバーが傾動可能に設けられる。この搬送装置は左右のフィードレバーをプレス装置のスライドとコラムの間へ入り込むように揺動させて、スライドとの干渉を避け、クロスバーをスライドの下方の中央付近に到達させるものである。
【0003】
その他、特許文献1には前述したキャリアを直線運動させる代わりに、フィードレバーを揺動台に対し直線運動させるものが記載されている(特許文献1の図12参照)。このものの揺動台はプレス装置間で水平方向に移動自在に配置されており、そのフィードレバーの先端には回動自在に連結されたアームをさらに備える。このものは、前記アームの先端をスライドの側面を回り込ませないで、ワークの搬送方向から入れ込むものである。
【0004】
特許文献2には、複数のアームを直列に、かつ回動自在に互いに連結したものをスライドの下面側へ揺動させ、スライドの下方の中央付近までバキュームカップを到達させるものが記載されている。例えば、特許文献2の図5のワーク搬送装置は、隣接するプレス間にワークの搬送方向に延びるレールを備えている。そのレールには第1アームが支持される。その第1アームの基端はレール上を水平移動すると共に、レールに対し揺動自在に支持される。また前記第1アームには第2アームが支持される。その第2アームの基端は第1アームに対し揺動自在、かつ、第1アームに対して直進運動可能に支持される。その第2アームの先端にバキュームカップが取り付けられたフレーム体が設けられる。
【0005】
特許文献3の移送装置は、垂直ガイドに沿ってストローク駆動装置により昇降する左右のキャリッジを備えている。それらキャリッジにはそれぞれ揺動駆動装置が設けられる。その揺動駆動装置には脚部の基端が回動自在に連結されており、キャリッジに対して揺動する。その脚部の先端にはジョイントを介して連結部材が連結される。そのジョイントがサーボモータにより回動することにより、連結部材は脚部に対して回動する。また、前記連結部材の先端には1本の横棒(クロスバー)の左右端が固定され、そのクロスバーにワークを吸着する吸着スパイダが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−216452号公報
【特許文献2】特開平7−227776号公報
【特許文献3】独国特許発明第DE10328447B4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の搬送装置は、フィードレバーをスライドとコラムとの間のスペースに入りこませて揺動させるので、そのスペースにフィードレバーやそれを駆動させる機構などを配置する必要がある。そのため、プレス装置のワークの搬送方向に対し左右方向の幅が広くなり、プレス装置の剛性が低下する。
【0008】
一方、フィードレバーをスライドとコラムとの間に入り込ませないで、搬送方向からスライドの下面に入り込ませる場合でも、揺動台をプレス装置間で水平方向に移動自在にし、かつフィードバーの先端にアームを回動自在に連結するので、プレス装置間の距離を広げなければならない。また、揺動の下死点付近において、ワークを上方に上げるために、フィードレバーとアームとを反対方向に回動させなければならず、それらの間の相対角度が大きくなる。さらに、ワークを持ち上げる際に、フィードレバーの先端をスライドに干渉させないように、プレス装置間の距離を広げなければならない。そのため、搬送に時間がかかり、生産効率が低下する。
【0009】
特許文献2のワーク搬送装置は、水平移動と揺動運動とが別個に行われるため、搬送速度が遅い。また、アームが水平移動する距離が必要なためプレスラインが長くなる。さらに、第1アームと第2アームとはワークの搬送の中間付近でV字状になり(特許文献2の図2参照)、それら第2アームと第1アームとの相対角度が大きくなる。そのため高速搬送すると、第2アームの回転速度が速くなり、第2アームを揺動駆動する装置の不具合の原因となる。
【0010】
特許文献3の移送装置は、搬送中間で脚部と連結部材がI字状(一直線)に配置されるので、脚部を昇降するためのストロークが長くなる。またストロークが長くなる分フレームも長くなり、装置が大きく嵩張る。さらに高速搬送する場合には昇降のエネルギが大きくなる。特に、プレス装置間の間隔(ピッチ)が短くなると、連結部材を上方に上げなければならないので、昇降のエネルギが大きくなる。また左右の移送装置で同期がずれるとクロスバーが破損する。さらに脚部、連結部およびクロスバーの側面にワークを傾けるアクチュエータなどを取り付けているので(Fig.9参照)、スライドとコラムの間にアクチュエータなどを配置するためのスペースが必要になる。また、このものはピッチ方向にワークを傾けることはできるが、ロール、ヨー方向に傾けることができない。
【0011】
そこで、本発明はプレス装置間を短い間隔で配置できると共に、アームをスライドの下に潜り込ませ、かつ高速搬送することができるワーク搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のワーク搬送装置(請求項1)は、隣接するプレス装置の金型間でワークを搬送するワーク搬送装置であって、前記金型より上方に配置され、上下方向に延びるフレームと、基端がそのフレームに対して昇降可能、かつ揺動可能に連結されている第1アームと、その第1アームの基端を昇降駆動する昇降駆動機構と、前記第1アームを揺動駆動する第1揺動駆動機構と、基端が前記第1アームに対して長手方向に移動可能に設けられると共に、第1アームの揺動の中心軸と平行の軸周りに揺動可能に連結されている第2アームと、その第2アームの基端を移動駆動する移動駆動機構と、前記第2アームを揺動駆動する第2揺動駆動機構と、前記第2アームの先端付近に、第2アームの揺動の軸に平行の軸周りに揺動可能に連結されたワークの保持手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
このようなワーク搬送装置において、前記昇降駆動機構、第1揺動駆動機構、移動駆動機構および第2揺動駆動機構の駆動を制御する制御装置を備えており、その制御装置が、前記フレーム、第1アームおよび第2アームのそれぞれの長手方向を揃えて互いに重なって吊られる待機姿勢と、下向きに凸の略円弧状に湾曲し、第2アームが横向きに伸びて先
端が金型付近に到達する進入姿勢との間で作動するように、それら駆動機構を制御するものが好ましい(請求項2)。
また、前記フレームがプレス装置に固定されるものがましい(請求項3)。
さらに、前記昇降駆動機構はフレームによって昇降自在にガイドされる昇降ベースを備え、前記第1揺動駆動機構が昇降ベースに対して第1アームの基端を揺動するものであり、前記移動駆動機構は第1アームに移動自在にガイドされた移動ベースを備え、前記第2揺動駆動機構は移動ベースに対して第2アームの基端を揺動するものが好ましい(請求項4)。
また、前記昇降ベースおよび移動ベースがそれぞれ無端状の歯付きベルトに固着されており、それらの歯付きベルトにより往復直線運動が伝達されるものが好ましい(請求項5)。
さらに、前記第2アームの基端と先端との間に第2アームの軸方向に対して直角の軸周りに回動自在なチルト関節あるいは/および第2アームの軸周りに回転自在な捩り関節を有するものが好ましい(請求項6)。
また、前述のワーク搬送装置を複数備え、それらワークの搬送装置をワークの搬送方向に向かって左右両側に配置したものが好ましい(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本発明のワーク搬送装置(請求項1)は、フレーム、第1アームおよび第2アームを長手方向に重ねて配置すると、全体を短くすることができる。そして、それらを長手方向に伸ばすことができる。このため、省スペースでありながら、保持手段を配置できる範囲を広くすることができる。その上で第1アームをフレームの下端付近まで移動させ、かつスライド側に揺動させた状態で、その第1アームの下端を起点として第2アームを略水平方向に直線運動させることができる。そのため、プレス装置のスライドと同じ高さ付近で保持手段を略水平方向に移動させて、保持手段をスライドの下へ潜り込ませることができる。
【0015】
このようなワーク搬送装置が前記昇降駆動機構、第1揺動駆動機構、移動駆動機構および第2揺動駆動機構の駆動を制御する制御装置を備えており、その制御装置が、前記フレーム、第1アームおよび第2アームのそれぞれの長手方向を揃えて互いに重なって吊られる待機姿勢と、下向きに凸の略円弧状に湾曲し、第2アームが横向きに伸びて先端が金型付近に到達する進入姿勢との間で作動するように、それら駆動機構を制御する場合は(請求項2)、待機姿勢にすると幅方向に省スペースであるので、プレス装置間の間隔を短くすることができ、プレスラインの長さを短くすることができる。また、第1揺動駆動機構および第2揺動駆動機構を同じ方向に揺動させ、その上で第1アームおよび第2アームを伸ばすと進入姿勢にすることができる。同じ方向に揺動するので、稼働の負荷が偏らない。そのため、耐久性を向上させることができる。なお、進入姿勢から待機姿勢に戻す際も同様である。
【0016】
また、前記フレームがプレス装置に固定される場合は(請求項3)、フレームを下方に延ばし、そのフレームに第1アームなどの構成を設けているので、フレームの下方にスペースが確保されている。そのスペースによりプレス装置内へのアクセスが容易になる。さらに、そのスペースに前記保持手段を交換するための台車などを配置するなど、有効に活用することができる。
【0017】
さらに、前記昇降駆動機構はフレームによって昇降自在にガイドされる昇降ベースを備え、前記第1揺動駆動機構が昇降ベースに対して第1アームの基端を揺動するものであり、前記移動駆動機構は第1アームに移動自在にガイドされた移動ベースを備え、前記第2揺動駆動機構は移動ベースに対して第2アームの基端を揺動する場合は(請求項4)、昇降ベースおよび移動ベースの直線運動がガイドされているので、揺動運動が安定する。
【0018】
また、前記昇降ベースおよび移動ベースがそれぞれ無端状の歯付きベルトに固着されており、それらの歯付きベルトにより往復直線運動が伝達される場合(請求項5)は、昇降ベースあるいは/および移動ベースの位置精度を高めることができる。
【0019】
さらに、前記第2アームの基端と先端との間に第2アームの軸方向に対して直角の軸周りに回動自在なチルト関節あるいは/および第2アームの軸周りに回転自在な捩り関節を有する場合(請求項6)は、ワークを3軸(ピッチ、ロール、ヨー)でチルトさせることができる。そのためワークをどのような向きにも傾けることができる。そして保持手段の位置を微調整することができる。
【0020】
さらに、前述のワーク搬送装置を複数備え、それらワークの搬送装置をワークの搬送方向の両側に配置した場合(請求項7)は、複数のワーク搬送装置を同期させることにより大きなワークあるいは左右に長いワークを搬送することができる。また、それぞれのワーク搬送装置により別個のワークを搬送することができる。特に、ワーク搬送装置が保持手段の位置を調節できる場合は、クロスバーによって保持手段同士が連結されていないので、同期ズレによりクロスバーが破損する不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明のワーク搬送装置の実施形態を示す概略正面図である。
【図2】図2はプレスラインの概略側面図である。
【図3】図3は図2のA矢視を示す。
【図4】図4は図1のワーク搬送装置の側面図である。
【図5】図5は図1のワーク搬送装置が作動する様子を示す概略工程図である。
【図6】図6はワーク搬送装置の他の実施形態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、図2を用いて本発明のワーク搬送装置を用いたプレスラインの概略を説明する。図2に示すプレスライン40は、直列に配置された複数のプレス装置41、41、41、41を備えている(図では4台)。それら隣接するプレス装置41の間に、本発明のワーク搬送装置1が1台ずつ配置される(図では3台)。このプレスライン40では、ワーク搬送装置1により上流(図の左側)のプレス装置41から下流(図の右側)のプレス装置41へワークWが搬送され、各プレス装置41にてワークWにプレス加工が施される。隣接するプレス装置41、41の間隔は等間隔であっても、異なる間隔であってもよい。なお、前記隣接するプレス装置41、41同士は平面視でほぼ一直線上に配置するのが好ましい。なお、高さ方向(図の上下方向)には傾斜してもよい。また、図中のプレスライン40は、実際の作動中の特定の時点の様子を表したものでなく、簡易のため4台のプレス装置41のスライド46が全て上昇し、かつワーク搬送装置1の姿勢を異にした状態を表している。
【0023】
前記プレス装置41は、ベッド42と、そのベッド42の前後左右の4箇所から立ち上がる4本のコラム43と、それらのコラム43の上端に設けられるクラウン44とから構成される枠状のフレームを備えている。前記ベッド42の上方にはボルスタ45が設けられる。また、クラウン44には、図示しないクランク軸の端部が回転自在に支持される。そのクランク軸にはコンロッドが設けられ、そのコンロッドを介して前記スライド46が上下動する。そのスライド46の下面には上型47が、前記ボルスタ45の上面には下型48がそれぞれ取り付けられる。
【0024】
図3に示すように、前記プレス装置41には、その搬送方向を挟んで向かい合うコラム43、43の間に上方のビーム49aが渡されている。また、その上方のビームの下方に
は片側のコラム43に固定された短いビーム49bが延びる。前記ワーク搬送装置1のフレーム2(後述する)は、その上端付近を上方のビーム49aに固定され、中間付近を短いビーム49bに固定される。なお、前後のプレス装置41、41のコラム43、43の間に前記上方のビーム49aを渡し、そのビーム49aにワーク搬送装置1を取り付けてもよい。さらに、プレス装置41、41の間の天井に取り付けてもよい。
【0025】
前記フレーム2はビーム49a、49bに吊り下げられるので、フレーム2の下方にはスペースが確保される。そのスペースによりプレスライン40内へのアクセスが容易になる。例えば、そのスペースに保持手段9の自動交換台車(図示せず)を配置したり、保持手段9の調整あるいはそのメンテナンスに用いることによりスペースを有効に活用することができる。
【0026】
図1にワーク搬送装置の一実施形態を示す。そのワーク搬送装置1はビーム49a、49bから鉛直下方に延びるフレーム2を備えている。そのフレーム2には第1アーム3が支持される。その第1アーム3は、その基端がフレーム2に昇降自在にガイドされると共に、フレーム2に対し基端がワーク搬送方向に向かって左右に延びる軸方向に揺動自在に連結される。その第1アーム3はフレーム2に設けられた昇降駆動機構4の駆動力により昇降する。そして、前記第1アーム3とフレーム2との間には第1揺動駆動機構5が配置される。
【0027】
前記昇降駆動機構4はフレーム2に昇降自在にガイドされた昇降ベース10を備えている。その昇降ベース10には第1揺動駆動機構5が設けられる。その第1揺動駆動機構5には第1アーム3の基端が連結される。
【0028】
前記フレーム2は断面が略コ字状の部材であり、そのコ字状の内部に前記昇降駆動装置4が配置されている。そのフレーム2の昇降駆動機構4と反対側の面には、垂直に突出する2本の昇降ガイド11、11がそれぞれ上下方向に延びる。それら昇降ガイド11、11は前記昇降ベース10の回転方向のトルクを受ける。なお、前記ガイド11にリニアモーションレールを設け、その昇降ベース10にリニアモーションベアリングを設けてもよい。また、隣接するプレス装置41、41のうち、片側のプレス装置へアーム(後述する第1アーム3、第2アーム6)を進入させるのが困難な場合がある。例えば、一方のプレス装置41の金型へ進入するためのスペースが狭かったり、金型が遠いなど。この場合に、フレーム2をアームの移動の困難なプレス装置41側に斜めに延ばしたり、その方向に湾曲させてもよい。これにより、アームの進入が困難なプレス装置41側へのアームの移動(移動(昇降)、揺動を含む)を容易にし、搬送速度を向上させることができる。
【0029】
前記昇降駆動機構4はフレーム2の上端付近に設けられたモータ12と、そのモータ12の出力軸に図示しないカップリングにより連結した減速機13とを備え、さらに前記フレーム2の上下端に上下のプーリ14、14を備えている。それら上下のプーリ14、14はフレーム2に、その板面に平行で、かつ昇降方向に垂直な軸まわりに回動自在に設けられる。そして、上方のプーリ14に、前記減速機13の出力軸が連結される。前記フレーム2のプーリ14、14が設けられた付近の板面には、上下の開口部2a、2bがそれぞれ形成される。また、それら上下のプーリ14、14は、その外周面から突出する複数の歯(図示しない)を有する。前記プーリ14、14には、それら歯と噛合う2本の歯付きベルト(タイミングベルト)15、15が並列に掛けられる。それら歯付きベルト15、15はそれぞれフレーム2の上方の開口部2aから昇降ガイド11と同じ側に通され、下方の開口部2bから裏面に回され、フレーム2を昇降方向に一周する。前記歯付きベルト15は並行に2本掛けられ、一方が切れても第1アーム3が落下しないようにされる。なお、前記歯付きベルトの他に、ネジ−ナット機構、チェーン機構、ケーブル機構など従来公知の直進駆動機構を用いることができる。
【0030】
前記昇降ベース10は歯付きベルト15、15に固定された上で、フレーム2の昇降ガイド11、11によってガイドされる。前記第1揺動駆動機構5はモータ16と、そのモータ16の出力軸が連結された減速機17(図4参照)とを備える。そのモータ16は第1アーム3の基端に固定される。そして、減速機17の出力軸(図示しない)を昇降ベース10に取り付ける。その減速機17の出力軸は昇降ベース10の昇降方向に垂直で、かつワークWの搬送方向にほぼ垂直である。前記モータ16が回転駆動すると、前記昇降ベース10の回転しようとする力は昇降ガイド11、11によって受け止められ、その反力により第1アーム3が揺動する。なお、昇降ベース10側に第1揺動駆動機構5を取り付け、減速機17の出力軸を第1アーム3側に固定してもよい。
【0031】
前記第1アーム3は第2アーム6を支持する。その第2アーム6の基端は、第1アーム3に対して長手方向に移動可能に設けられると共に、第1アーム3に対し第1アーム3の揺動の軸に平行の軸周りに回動可能に連結される。その第2アーム6は第1アーム3に設けられた移動駆動機構7の駆動力により移動する。そして、前記第1アーム3と第2アーム6との間には第2揺動駆動機構8が設けられ、その第2揺動駆動機構8の駆動力により、第2アーム6は第1アーム3の揺動の中心軸と平行の軸周りに揺動可能に連結される。また、前記第2アーム6の先端付近には、ワークWの保持手段9が第2アーム6の揺動の軸に平行の軸周りに揺動可能に連結される。
【0032】
前記第1アーム3はフレーム2とほぼ同じ形状である。第1アーム3は断面が略コ字状で、その内部に移動駆動機構7が配置される。そして、前記移動駆動機構7と反対側の面には、第2アーム6をガイドする2本の移動ガイド18、18が突出する。なお、本実施形態では前記昇降駆動機構4と移動駆動機構7とはほぼ同じ機構であるので、同じ部分には同じ名称を用い、それの詳細な説明は省略する。前記移動駆動機構7はモータ19と、その出力軸が連結された減速機20とを備える。前記第1アーム3の上下には上下のプーリ21、21を備え、上方のプーリ21に減速機20の出力軸が連結される。そして、上下のプーリ21、21には2本の歯付きベルト22、22が並行に掛けられる。それら歯付きベルト22、22には移動ベース23が固着される。その移動ベース23は第1アーム3の移動ガイド18、18によって移動自在にガイドされる。前記第2揺動駆動機構8はモータ30と、そのモータ30の出力軸が連結された減速機31(図4参照)とを備え、第2アーム6の基端に固定される。そして、前記減速機31の出力軸(図示しない)は移動ベース23に取り付けられる。
【0033】
前記昇降駆動機構4、第1揺動駆動機構5、移動駆動機構7および第2揺動駆動機構8のそれぞれのモータ12、16、19、30はサーボモータであり、制御装置29によりその回転運動が制御される。それらサーボモータには回転角度を検出するエンコーダが設けられ、そのパルスをカウントすることにより、第1アーム3および第2アーム6の位置制御が行われる。なお、サーボモータの他、回転角度、回転速度を制御できる従来公知のモータを用いることができる。
【0034】
前記第2アーム6が第1アーム3と同じ長さであると、第2アーム6を第1アーム3上に重ねて配置して省スペースにしたときと、それらを伸ばして直列にしたときの差が大きい。このため、省スペースでありながら、保持手段9を広い範囲に配置できる。
【0035】
前記保持手段9は長尺なクロスバー24と、そのクロスバー24に取り付けられたバキュームカップ25とを備えている(図4参照)。前記クロスバー24は第2アーム6の先端に傾動自在に設けられ、第2アーム6の先端からワークの搬送方向に向かって左右に延びる。そのクロスバー24は第2アーム6の先端に設けられたチルト駆動装置26により第2アーム6の揺動の軸に平行の軸周りに傾動駆動する。なお、前記バキュームカップ2
5の他に磁力などを用いた従来公知のものを用いてもよい。また、前記保持手段9はチルト駆動装置26により第1アーム3および第2アーム6の揺動に応じてバキュームカップ25の向きを常に一定の方向にするように前記制御装置29により制御される。なおクロスバー24の延びる方向は搬送方向に沿った方向など他の方向にしてもよい。
【0036】
図4に示すように、本実施形態では、前記第2アーム6の第2揺動駆動機構8の下方付近に、第2アーム6の途中を長手方向の軸周りに捩り回動させる捩り関節27が設けられている。これにより、第2アーム6は捩り関節27より下方の部分を上方の部分に対して第2アーム6の延びる軸周りに回動(図4の矢印B参照)させることができる。また、前記捩り関節27の下方には第2アーム6を搬送方向に延びる軸周りに(図4の矢印C参照)傾動させるチルト関節28が設けられる。本実施形態ではチルト関節28の揺動軸は第2アーム6の揺動軸に直角で、かつ、第2アーム6の長手方向の軸に直角である。これにより、第2アーム6はチルト関節28より下方の部分を上方の部分に対して左右に傾動させることができる。これら捩り関節27およびチルト関節28により、隣接するプレス装置41、41間でワークWの向きや左右の傾きを調整することができる。これら捩り関節27およびチルト関節28は必要に応じて設けるのがよい。また、どちらか一方の関節を設けるようにしてもよい。これら捩り関節27およびチルト関節28はそれぞれ捩り用サーボモータ27aおよびチルト用サーボモータ28a(図1参照)により駆動される。なお、回動あるいは傾動の量が予め決まっている場合は、エンコーダなどを備えない従来公知のモータやエアシリンダなどを用いてもよい。
【0037】
次に、ワーク搬送装置1によりワークWが搬送される様子を詳述する。図5では上流のプレス装置をプレス装置41aとし、下流のものをプレス装置41bとしている。図5に示す基準の工程S1では、前記フレーム2、第1アーム3および第2アーム6が、それぞれの長手方向を揃えて重ねて配置される。この姿勢がワークWを搬送する前の待機姿勢である。また、この待機姿勢は上流のプレス装置41aから下流のプレス装置41bへワークWを搬送する途中の中間姿勢と同一である(後述する中間工程S5参照)。この待機(中間)姿勢では、フレーム2、第1アーム3および第2アーム6が長手方向に揃えられ、それらが少なくとも重なっている部分がある姿勢である。そのため、それぞれの部材を最大に重ねなくてもよい。
【0038】
次いで、取出し工程S2では前記昇降駆動機構4、第1揺動駆動機構5を駆動させることにより、第1アーム3をフレーム2に対し下方に移動させ、かつ上流のプレス装置41a側(図の左側)へ揺動させている。同時に前記移動駆動機構7および第2揺動駆動機構8を駆動させることにより、第2アーム6を第1アーム3に沿って下方に移動させ、かつ上流のプレス装置41a側(図の左側)へ揺動させる。これらの動作により保持手段9を上型47と下型48との間のプレス加工がされる空間の手前付近へ配置させる。なお、このアーム入れ工程S2(S4)の姿勢は動作の途中であり、通常はこの状態では停止しない。この姿勢は前記待機姿勢から以下に詳述するワーク持ち上げ工程S3における進入姿勢(以下に詳述する)へ遷移する姿勢であり、進入姿勢の一態様である。
【0039】
ワーク持ち上げ工程S3では、第2アーム6や保持手段9が上型47と下型48に干渉しないように、前記第1アーム3および第2アーム6をそれぞれ下方に移動させると共に、それら第1アーム3および第2アーム6をそれぞれ上流のプレス装置41aのスライド46側へさらに揺動させ、前記保持手段9をワークWの上方に導いている。そして、この実施形態ではプレス装置41のスライド46が上死点に達する前に搬送装置1の作動を開始する。このときの前記フレーム2、大きく傾いた第1アーム3およびほぼ水平の第2アーム6の全体で表される姿勢は進入姿勢である。この進入姿勢のとき、第1アーム3のフレーム2に対する揺動方向および揺動角度と、第2アーム6の第1フレーム3に対する揺動方向および揺動角度とをほぼ同じにすることができる。その場合は、サーボモータの回
動速度、回動時間をほぼ同じにすることができるので、搬送速度を高め、かつサーボモータの運転が偏らず、耐久性を向上させることができる。なお、前記昇降駆動機構4、移動駆動機構7、第1揺動駆動機構5および第2揺動駆動機構8を同時に動作させることにより、搬送速度を向上させることができる。
【0040】
前記進入姿勢は、待機姿勢から第1アーム3および第2アーム6をいくらか伸ばすと共に、それらを同じ方向に揺動させた状態である。前記進入姿勢は上流および下流のプレス装置41a、41bにおいて前後に対称の同じ形状であるのが好ましい。上流および下流のプレス装置41a、41bへのワークWの搬送速度をほぼ同じにし、耐久性を高めることができるからである。なお、上流および下流のプレス装置41a、41bにおいてワークWを配置する場所が異なる場合には前後に対称な形状にならない。その場合は、前述したように、フレーム2を斜めに延ばすなどし、上流および下流への搬送においてサーボモータの回転量が同じになるように調整してもよい。
【0041】
なお、ワーク持ち上げ工程S3に続いて、前記バキュームカップ25は捩り関節27およびチルト関節28の作動により、その位置が制御(調整)される。その制御とほぼ同時に、保持手段9を前記昇降駆動機構4、移動駆動機構7、第1揺動駆動機構5および第2揺動駆動機構8のうちの1つ以上を作動させて下降させる。そして、ワークWをバキュームカップ25(図4参照)により吸引保持し、ワークWを持ち上げる。
【0042】
ワーク取出し工程S4では、前記昇降駆動機構4および第1揺動駆動機構5を駆動させることにより、第1アーム3をフレーム2に対し上方に移動させ、かつ下流(図の右側)へ揺動させる。同時に前記移動駆動機構7および第2揺動駆動機構8を駆動させることにより、第2アーム6を第1アーム3に沿って上方に移動させ、かつ下流のプレス装置41b側(図の右)へ揺動させる。これらの動作により保持手段9を上型47と下型48との間のプレス加工がされる空間の手前付近へ抜き出す。このワーク取出し工程S4におけるワーク搬送装置1の姿勢はアーム挿入工程S2の姿勢を前後に対称にした姿勢である。このとき、ワークWの取り出しが完了する前に、プレス装置41のスライド47は下降工程に入るようにすることができる。本搬送装置1はアーム3、6の自由度が高い、特に第1アーム3をフレーム2の下端付近まで移動させた状態で第2アーム6を水平方向に移動できるので、スライド47との干渉を回避するのが容易である。このため、プレス装置41のプレス工程(1サイクル)中に使える搬送時間の割合を多くでき、高spm(サイクル/分)でプレス装置41で運転する、プレス連続運転に対応した搬送を行うことができる。また搬送装置1も連続運転することができ、その場合は待機(中間)姿勢で停止せず、そのまま通過する。
【0043】
次いで中間工程S5において、第1アーム3および第2アーム6をそれぞれ上方に移動させると共に、さらに下流のプレス装置41b側(図の右)へ揺動させ、前記工程S1と同じ中間(待機)姿勢にしている。このとき、下流のプレス装置41aからさらに下流のプレス装置(図示していない)へワークを搬送する。
【0044】
ワーク挿入工程S6では、前記昇降駆動機構4により第1アーム3をフレーム2に対し下方に移動させ、第1揺動駆動機構5により下流のプレス装置41b側(図の右)へ揺動させている。同時に前記移動駆動機構7により第2アーム6を第1アーム3に沿って下方に移動させ、第2揺動駆動機構8により下流のプレス装置41b側(図の右)へ揺動させる。これによりワークWは下流のプレス装置41bの上型47と下型48との間のプレス加工がされる空間の手前付近へ配置される。このワーク挿入工程S6におけるワーク搬送装置1の姿勢は進入姿勢である。
【0045】
ワークリリース工程S7では、第1アーム3および第2アーム6をそれぞれ下方の移動
端まで移動させると共に、下流のプレス装置41b側へ揺動させ、前記保持手段9を下流のプレス装置41bの下型48の上方に配置している。そして、前記捩り関節27(図4参照)および揺動関節28を作動させてワークWの位置を調整し、保持手段9を下降させ、バキュームカップ25による吸引を解除し、ワークWを下型48の所定の位置へ載置する。このワークリリース工程S7におけるワーク搬送装置1の姿勢は進入姿勢である。
【0046】
アーム戻り工程S8では、前記昇降駆動機構4により第1アーム3をフレーム2に対し上方に移動させ、かつ第1揺動駆動機構5により上流のプレス装置41a側(図の左)へ揺動させている。同時に前記移動駆動機構7により第2アーム6を第1アーム3に沿って上方に移動させ、かつ第2揺動駆動機構8により上流のプレス装置41a側(図の左)へ揺動させる。これにより保持手段9を上型47と下型48との間のプレス加工がされる空間の手前付近まで離脱させる。このアーム戻り工程S8におけるワーク搬送装置1の姿勢はワーク挿入工程S6と同じ姿勢である。最後に第1アーム3および第2アーム6をそれぞれ再び基準工程S1(待機姿勢)に戻す。
【0047】
なお、ワーク取出し工程S4およびアーム戻り工程S8において第2アーム6を待機姿勢に戻す際には、第2アーム6の基端を揺動させながら、その基端を第1アーム3の基端側に移動させる。そうすると、アームの全長が次第に短くなるので、第1アーム3に生じる揺動の運動エネルギーが小さくなり、第1揺動駆動機構5の揺動に係る運動エネルギーを少なくすることができる。
【0048】
前述の実施形態では隣接するプレス装置41、41の間に1つのワーク搬送装置1を配置したが、図6に示すように2つのワーク搬送装置1、1を並列に配置することもできる。2つ配置することで、同時に2つのワークW、Wを搬送することができる。この場合、左右の勝手違いの部品を同時に加工すると、個数管理や金型管理が容易になる。なお組み合わせて用いる、例えば容器とその蓋のような別個の部品を加工してもよい。なお3つ以上のワーク搬送装置1、1、1を配置してもよい。さらに、2つのワーク搬送装置1、1のそれぞれの駆動部の駆動する量を同じにするように、かつそれらを同期して駆動させて、それぞれの第1アーム3、3、第2アーム6、6および保持手段9、9を同じ高さ、同じ角度、同じ速度で駆動させることができる。これにより、1つの大きな(左右に長いワークW)ワークを2つの搬送装置1、1で協働して搬送することができる。それぞれの搬送装置1、1を独立して制御することにより、保持手段9、9の位置を制御して、1つのワークWを傾けることもできる。特に、第2アーム6に捩り関節27およびチルト関節28を設けている場合は、ワークを傾けるような動作を容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ワーク搬送装置
2 フレーム
2a 上方の開口部
2b 下方の開口部
3 第1アーム
4 昇降駆動機構
5 第1揺動駆動機構
6 第2アーム
7 移動駆動機構
8 第2揺動駆動機構
9 保持手段
10 昇降ベース
11 昇降ガイド
12 サーボモータ
13 減速機
14 プーリ
15 歯付きベルト
16 サーボモータ
17 減速機
18 移動ガイド
19 サーボモータ
20 減速機
21 プーリ
22 歯付きベルト
23 移動ベース
24 クロスバー
25 バキュームカップ
26 チルト駆動装置
27 捩り関節
27a 捩り用サーボモータ
28 チルト関節
28a チルト用サーボモータ
29 制御装置
30 サーボモータ
31 減速機
40 プレスライン
41 プレス装置
41a プレス装置(上流)
41b プレス装置(下流)
42 ベッド
43 コラム
44 クラウン
45 ボルスタ
46 スライド
47 上型
48 下型
49a 上方のビーム
49b 短いビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接するプレス装置の金型間でワークを搬送するワーク搬送装置であって、
前記金型より上方に配置され、上下方向に延びるフレームと、
基端がそのフレームに対して昇降可能、かつ揺動可能に連結されている第1アームと、
その第1アームの基端を昇降駆動する昇降駆動機構と、
前記第1アームを揺動駆動する第1揺動駆動機構と、
基端が前記第1アームに対して長手方向に移動可能に設けられると共に、第1アームの揺動の中心軸と平行の軸周りに揺動可能に連結されている第2アームと、
その第2アームの基端を移動駆動する移動駆動機構と、
前記第2アームを揺動駆動する第2揺動駆動機構と、
前記第2アームの先端付近に、第2アームの揺動の軸に平行の軸周りに揺動可能に連結されたワークの保持手段とを備えたワーク搬送装置。
【請求項2】
前記昇降駆動機構、第1揺動駆動機構、移動駆動機構および第2揺動駆動機構の駆動を制御する制御装置を備えており、
その制御装置が、前記フレーム、第1アームおよび第2アームのそれぞれの長手方向を揃えて互いに重なって吊られる待機姿勢と、下向きに凸の略円弧状に湾曲し、第2アームが横向きに伸びて先端が金型付近に到達する進入姿勢との間で作動するように、それら駆動機構を制御する請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記フレームがプレス装置に固定される請求項1または2のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記昇降駆動機構はフレームによって昇降自在にガイドされる昇降ベースを備え、
前記第1揺動駆動機構が昇降ベースに対して第1アームの基端を揺動するものであり、
前記移動駆動機構は第1アームに移動自在にガイドされた移動ベースを備え、
前記第2揺動駆動機構は移動ベースに対して第2アームの基端を揺動するものである請求項1〜3のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
前記昇降ベースおよび移動ベースがそれぞれ無端状の歯付きベルトに固着されており、
それらの歯付きベルトにより往復直線運動が伝達される請求項4記載のワーク搬送装置。
【請求項6】
前記第2アームの基端と先端との間に第2アームの軸方向に対して直角の軸周りに回動自在なチルト関節あるいは/および第2アームの軸周りに回転自在な捻り関節を有する請求項1〜5のいずれかに記載のワーク搬送装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のワーク搬送装置を複数備え、
それらワークの搬送装置をワークの搬送方向に向かって左右両側に配置したワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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