説明

一体型モータ装置および、その放熱方法

【課題】熱伝達及び消散の取扱いの改善により特性を最適化する且つ特性が最適化されている一体型モータ装置および、その放熱方法を提供する。
【解決手段】本体部12を有するモータ10と、該モータ10に電流を供給するための少なくとも1つの熱発生電気要素と、少なくとも1つの熱過敏性電気要素とから構成される一体型モータ装置であって、前記熱発生電気要素は、前記モータ10の前記本体部12と実際に熱伝導接触して配置されており、前記熱発生電気要素は前記モータ10に電流を供給するための駆動出力要素であり、前記熱過敏性電気要素は制御要素であり、前記少なくとも1つの熱発生電気要素及び前記少なくとも1つの熱過敏性電気要素は、互いに物理的及び熱的に事実上隔てられた前記一体型モータ装置の部分と部分とに存在している、一体型モータにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型モータ装置および、その放熱方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の一体型モータ装置もしくはシステムに採用されている一部の電子要素の熱過敏性は、最高作動温度に制限を課し、そのため最適特性を妨げることになっている。電子式電力スイッチ装置、抵抗器及び同様の要素は、モータ自体により発生される熱の量を非常に増大させ、そしてこの問題は、ハウジング内の利用可能なスペースが非常に限られている(一般的に、米国電機製造業者協会(NEMA)のサイズ23のモータについての約4〜5in3からNEMAのサイズ34のモータについての約10in3(約163.87064cm3)の範囲にある)小形の一体型モータ装置において悪化される。
【0003】
これらの要因は、従来の一体型モータ装置においては適切に取り扱われていない。例えば熱を発生する酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)及び熱に対して過敏なマイクロプロセッサ(並びに他の集積回路装置)を含む全ての電気要素は、一般的に、モータドライブのハウジング内に画成された共通の密閉スペースに閉じ込められていて、一体型モータ装置の諸部品及び諸要素は、熱の最適な伝達及び消散を可能にするように配置されていない。
【0004】
しかしながら、従来の技術は、本発明が向けられている種類の一体型モータ装置において冷却効果をもたらすことの望ましさを認識している。特許文献1は、駆動回路構成要素を冷却するためにドライバハウジング内でモータシャフトにファンが装着されているステップモータを開示している。ファンを収容して適切に支持するためのスペース及び構造的要求は、必然的に且つ相当に、モータ装置全体の大きさ及び重量を増加させ、そのためこの特許文献1に記載の構造は小形の一体型モータ装置には特に不向きであることが分かるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−166264号公報(特願昭59−55238号)
【特許文献2】特開2004−135492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の広義の目的は、熱伝達及び消散の取扱いの改善により特性を最適化する且つ特性が最適化されている一体型モータ装置および、その放熱方法を提供することである。
本発明のより具体的な目的は、かかる特性を有する、比較的に小形で且つコンパクトである一体型ステップモータ、サーボモータ、又はハイブリッドモータ装置および、その放熱方法を提供することである。
【0007】
本発明の上述の目的及び関連目的は、モータ及び統合ドライバからなる装置であって、モータに電流を供給するための該装置の少なくとも1つの熱発生電気要素がモータ本体部と効果的に熱伝導接触して配置されていると共に、少なくとも1つの熱過敏性電気要素(代表的には制御部品)が該モータ本体部から遠く離れて配置されている装置を提供することにより概して達成される。このモータ装置に組み込まれた全ての熱発生電気要素は、通常、モータ装置に供給された電力の少なくとも約10%に匹敵する量の熱を累積的に発生するであろうし、また、各熱過敏性電気要素は、通常、100℃の最高温度、より典型的には約85℃の最高温度を有しているであろう。
【0008】
熱絶縁手段が熱過敏性電気要素(単数又は複数)と熱発生電気要素(単数又は複数)との間に、有効に入れるのが有利である。かかる熱絶縁手段は、(a)実質的に滞留空気スペースを画成する構造、及び/又は(b)熱エネルギーを保護された熱過敏性電気要素から離れるよう反射させるべく構成されかつ配置された(例えば、間挿シート、フィルム又はフォイルの)放射−反射表面から概して構成されるであろう。
【0009】
本発明のモータ装置は、通常、熱発生電気要素(単数又は複数)を実質的に囲む第1ハウジングと、熱過敏性電気要素(単数又は複数)を実質的に囲む事実上別個の第2ハウジングとを含んでおり、該第1及び第2ハウジングは、比較的に低熱伝導率の材料(通常、合成樹脂材料)から製造されるであろう。熱発生電気要素(単数又は複数)は、通常、電子式電力スイッチ装置(例えば、酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、統合ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、統合電力モジュール(IPM)又はバイポーラトランジスタ)ばかりでなく、電流検知抵抗器、電力抵抗器、又はそれらの双方から構成されるであろう。通常、モータ装置において採用される熱発生電気要素の全ては、共通の装着板に搭載されるのが望ましく、これは、モータに作動可能に取り付けられると共に、熱をより効率的に分布且つ消散させ、それによりホットスポットを避けるように、高熱伝導率の金属(例えば、アルミニウム)から製作されるのが有利であろう。通常熱的利点が幾分落ちる例えばガラス繊維充填エポキシのような他のPCB基板を使用することもできる。
【0010】
熱過敏性電気要素は、通常、マイクロプロセッサ(CPU)と、少なくとも1つの他の集積回路(IC)制御器(例えば、結合プログラム可能論理回路(CPLD)、演算増幅器又はDC/DC変換器(レギュレータIC、コイル、コンデンサ及びダイオードを含む)等)とである。本モータ装置のような工業製品において使用されるIC装置は、通常、最高定格作動温度を有していて、対応する囲い内に最高雰囲気温度限界を課し、熱的停止点に関する適切な安全余裕を与えるであろう。例えば、最も熱に敏感な要素の最高有効作動温度が85℃である場合、最高雰囲気温度限界は典型的には75〜80℃であろう。
【0011】
熱発生電気要素(単数又は複数)及び熱過敏性電気要素(単数又は複数)は、これらニ種の要素を互いに物理的及び熱的に実質的に隔てるよう事実上分離されたモータ装置の部分と部分とに存在しているのが好ましいであろう。保護された制御部品(単数又は複数)の近くから離れる方に伝導熱の伝達を増すため、これらの部分、幾つかの電気要素、モータ本体部、及びハウジング部品間に配設される熱パッド等のような複数の熱伝導要素が設けられることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、本体部を有するモータと、該モータに電流を供給するための少なくとも1つの熱発生電気要素と、少なくとも1つの熱過敏性電気要素とから構成される一体型モータ装置であって、前記熱発生電気要素は、前記モータの前記本体部と実際に熱伝導接触して配置されており、前記熱発生電気要素は前記モータに電流を供給するための駆動出力要素であり、前記熱過敏性電気要素は制御要素であり、前記少なくとも1つの熱発生電気要素及び前記少なくとも1つの熱過敏性電気要素は、互いに物理的及び熱的に事実上隔てられた前記一体型モータ装置の部分と部分とに存在している、一体型モータ装置にある。
また、本発明は、本体部を有するモータと、該モータに電流を供給するための少なくとも1つの熱発生電気要素と、少なくとも1つの熱過敏性電気要素とから構成される一体型モータ装置の放熱方法であって、前記熱発生電気要素は、前記モータの前記本体部と実際に熱伝導接触して配置されており、前記少なくとも1つの熱発生電気要素及び前記少なくとも1つの熱過敏性電気要素は、互いに物理的及び熱的に事実上隔てられており、前記少なくとも1つの熱発生電気要素は、電力スイッチ装置を含み、異なる速度での前記モータ及び前記電力スイッチ装置の補完的熱発生特性により、前記一体型モータ装置の前記熱発生要素と前記モータとにより発生される熱を消散させる方法にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明により提供される一体型モータ装置においては、また同一体型モータ装置により、熱エネルギーの流れ及び消散の取扱い改善により特性が最適化されることが分かる。更に本発明は、かかる特性を有する比較的に小型かつコンパクトである、一体型ステップモータ、サーボモータ又はハイブリッドモータを提供する。放射、対流及び伝導メカニズムによる熱に敏感な諸要素への熱エネルギーの伝達は、モータ装置への反射素子、停滞空気スペース、並びに/或いは、高熱伝導率又は低熱伝導率の材料から選択的に製造される部品及び素子の組込みにより、低減される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施する統合ステップモータ装置の立面図であり、諸ハウジング要素は内部の特徴を見せるために離されている。
【図2】図1のモータ装置の分解立面図であって、縮小したスケールで描かれている。
【図3】その分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に添付図面を詳細に参照すると、そこには、総括的に符号10で表わされた、モータ及びセンサアセンブリと隣接センサカバー14とを含むと共に、本発明を実施する、一体型ステップモータ装置が例示されている。モータは、回転子を囲む本体部(固定子)12を含み、図では回転子の軸13が見えている。また、該モータ及びセンサアセンブリは、モータの本体部12に取り付けられたハウジング15を含んでいる。前述した諸要素は、全体として、一体型ステップモータ装置のモータを構成すると一般に考えられる。
【0016】
符号16により総括的に表わされたプリント配線(PC)板は、例えば8個の酸化金属半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)18のアレイと、例えば2個の電流検出抵抗器17とに加えて、電力抵抗器19(これはオプションであり、大きい制動負荷を受けて発生されたエネルギーを消散させるために外部から装着しうる)も搭載している。プリント配線板16(ここでは時には“MOSFET”ボードと呼ぶこともある)は、ねじ20によりセンサカバー14に組み付けられており、そしてセンサカバー14を経由するモータ本体部12への熱の効率的な伝導のために熱パッド22が間挿されており、従って、これはMOSFET18及び抵抗器17,19により発生されたエネルギーを消散させるための熱シンクとして機能する。カバーもしくはハウジング24はプリント配線板16及び熱パッド22を覆って設けられている。前述したように、従来の一体型モータ装置において、熱を発生する要素であるMOSFET18及び抵抗器17,19は、熱過敏性要素と一緒に共通のPC板に装着されるのが典型的である。
【0017】
総括的に符号26で表わされた外側配置の制御板は、モータ装置用のマイクロプロセッサ(CPU)27を搭載すると共に、ねじ20によりドライバケース28に固定されている。熱パッド30は、制御板26とドライバケース28との間に配置されていて、過熱からマイクロプロセッサ27を保護するのに役立っている。ドライバハウジング32は、ねじ20によりドライバケース28に取り付けられると共に、内側配置の制御板34と外側配置の制御板26の双方を共同して囲んでいる。これらの制御板26,34は多素子金属コネクタ35により相互に電気的に接続されている。
【0018】
比較的に大きな熱パッド(図示せず)を制御板26,34の間に配置して、熱をドライバケース28に伝導する際に熱パッド30と協働するようにしてよい。これらの熱パッドの使用により3〜4℃の温度低下を実現することができる。また、電力調整集積回路(内側の制御板34の背面に装着されていて、見えない)から出る熱を伝える目的で、小さな熱パッド37が電力調整集積回路とドライバケース28の内壁との間に(外側の制御板26に形成された切欠きを介して)配置されている。また、線間電圧フィルタとして機能するアルミニウムコンデンサ33も制御板34の背面に装着されている。
【0019】
アルミニウム製の熱反射板36は、MOSFETボード16のカバー24とドライバハウジング32との間に画成されたスペースB−B(図1において対峙する矢印により指示されている)内に配置されている。可撓性の帯状ケーブル38は、同スペースB−B内に配置されていて、MOSFETボード16及び内側の制御板34を電気的に接続する働きをしている。もっと慣用的な電気コネクタと比較すると、帯状ケーブル38は、モータや、MOSFETボード16にあって熱を発生する諸要素からの熱伝導を減少させる働きをすると共に、ドライバケース28内の温度の低下(典型的には2〜3℃)に非常に寄与している。他方、金属コネクタ(例えば、金属コネクタ35)の使用により制御板26,34を相互に電気的に接続してドライバケース(ここから熱を消散させることができる)への熱流を促進することが望ましく、それにより温度の低減に更に寄与する。
【0020】
幾つかのドライバ−ハウジング部材、及びドライバ要素装着板は、2本の長いねじ40によりモータ(センサハウジング及びモータ本体部)に取り付けられる。該ねじは、モータから並びに他の熱発生電気要素からの熱流を最少にするプラスチック構造のものであることが望ましく、金属ねじをプラスチックねじに換えることによりドライバケース内の雰囲気温度を2〜3℃だけ低減させることができる。
【0021】
第1温度センサ41は、MOSFETボード16に搭載されてモータの温度を基本的に検知する働きをする。そして、第2温度センサ42は、制御板26に搭載されてドライバケース28内の温度を基本的に検知する働きをする。第1及び第2温度センサ41,42の双方からの信号はCPU27に送られるので、モータ部(例えば、105℃)又はドライバ部(例えば、80℃)のどちらかの温度がユーザーがプログラムした限界に達したときに、目視又は可聴アラームを作動させるか、或いは他の適当なアクションを自動的に開始させることができる。この種のモータ装置において、ドライバ領域温度を監視することは慣行であることに注目しておいたほうがよい。この現モータ装置のモータ及びドライバ部は互いに物理的及び熱的に分離されているので、各部内の雰囲気温度を別々に監視することが容易に行なわれ、それにより最適の制御及び過熱防止が提供される。
【0022】
モータ本体部12、センサカバー14、センサハウジング15及びドライバケース28は金属から形成されるのが普通であり(例えば、固定子は層状鋼構造のものであり、他の部分はアルミニウムから形成されるであろう)、比較的に高レベルの熱伝導率、従って優れた熱伝導性及び熱消散性を本質的にもたらすであろう。逆に、MOSFETボードのカバー24及びドライバハウジング32は合成樹脂材料(例えば、ポリブチレンテレフタレート)から形成されるのが普通であり、比較的に低レベルの熱伝導率、従って優れた熱絶縁性を本質的に与えるであろう。
【0023】
上述したモータ装置は、諸熱過敏性電気要素を所定の上限温度未満に維持するように熱エネルギーの伝達及び消散を調節かつ制御する働きのある多数の特徴を実行することが分かるであろう。また、開示したこれらの特徴は、共同して最も効率的に機能すると共に、互いに相乗的に補完すると考えられるが、これらの特徴の各々は、単独でも、或いはどんな場合にも本発明の諸目的の達成を最も適当に進めるようなサブコンビネーションでも使用しうることが分かるであろう。
【0024】
従って(また、前述の開示を参照すると)、本発明の一実施形態において、採用された電力スイッチ装置(例えば、MOSFETのアレイ)は、双方の制御板とは別個の、かつモータ/センサアセンブリの直ぐ近くに離間した位置へ該制御板からずれたMOSFETボードに搭載されている一方、通常、かかる電力スイッチ装置は、制御板(その上にCPU及びその他の集積回路装置が搭載されている)の直近に配置された配電板に装着されている。他の全ての点で同一である種々の一体型ステップモータ装置を使用して行なったテストにおいて(モータ及びMOSFETボードを除いて、全ての要素及びプリント配線板が約65.5cm3(4in3)の密閉容積を占めていた)、モータを毎分30回転及び全定格電流で1.5時間運転した後、温度測定を種々の個所で行なった。前述した従来の構造と比較すると、本発明を実施する一体型モータ装置において、MOSFET、コンデンサ、制御板、CPU、並びにドライバケースの外部及びフィンの近くで測定した温度に大きな低下が確認された。モータ結線及び端栓においてのみ温度上昇が確認された。
【0025】
他のテストは、電流検知抵抗器及び電力抵抗器を配電板から別個のMOSFETボードに移すことにより上述した従来の一体型モータ装置を再構成した後に行なわれた。そうすることにより、ドライバハウジング内で高くなった温度が実質的に低下することが分かった。
【0026】
モータ/センサアセンブリとドライバ部構造との間にスペースを形成し、それにより実質的に何ら対流熱の流れが起きない停滞空気スペース(これは、必要ならば、周方向に開放しうることを理解すべきである)を画成するようにモータ装置ハウジングを構成することにより、大きな温度低下を生じさせることが分かった。また、合成樹脂材料からのMOSFETボードカバーの製造は、熱絶縁効果に大きく寄与することも分かった。
【0027】
最後に、反射アルミニウムシートがモータ/センサアセンブリとドライバ部との間に介在した一体型モータ装置に関して行なわれたテストは、それにより更なる相当な熱絶縁効果がもたらされることを実証した。前述したように、反射要素は、赤外線を諸熱過敏性電気要素の一部又は全部から離れるよう指向させるのに有効な任意の形態とすることができる。該反射要素は、例えば、モータ装置の研磨もしくは鍍金した構造部分、反射シート、真空蒸着フィルム、又は金属フォイルからなっていてよい。前述したように、MOSFETボードを制御板に接続するために可撓性の帯状ケーブルを使用することは、多数の金属ピンから構成される差込み可能のコネクタを採用した従来のモータ装置と比較して、熱伝達を望ましく減少させることも分かった。
【0028】
概して、電力スイッチ装置と、多くの熱量を発生する他の諸要素(これらは、通常、機能的に駆動電子機器回路の一部である)とのために別個の“配電”板を提供すると共に、配電板をモータの直ぐ近くに物理的に位置決めすることにより、熱は、モータ本体部全体に効果的に散逸される。このことや、諸熱過敏性電気要素及び諸熱発生電気要素間における非対流空気層の確立や、赤外線を効率的に反射する表面の介在はいずれも、(通常、2つの主要部を有する一体型モータ装置のドライバ側からモータ側への)熱エネルギーの流れ及び/又は伝達を調節し指示する、従って、過熱の影響を受け易い諸駆動回路要素の近傍における温度を低下させるのに貢献する。事実上、モータ本体部は熱シンク及び熱放射体として使用され、そして諸熱過敏性電気要素は諸熱発生電気要素から分離されている。その結果、モータ装置の実用運転範囲が広がり、延いては最適特性が可能とされる。
【0029】
一体型モータ装置の諸熱過敏性電気要素から電力スイッチ装置(MOSFET)及び他の諸熱発生電気要素を分離させることは、全て、ドライバケースにより散逸しなければならない熱の量を最少とし、延いてはその大きさを最少にすることを可能にする。MOSFET及び他の諸熱発生電気要素をそのように再配置する機能は、異なる速度でのモータ及びMOSFETの補完的熱発生特性のため実現可能である。従って、モータにより発生される熱の量はモータ速度の上昇につれて増加すること、そして逆に電力スイッチ装置により発生される熱の量はモータ速度の上昇につれて減少することが知られている。その結果、熱シンクとして機能するモータ/センサハウジングアセンブリは、モータ装置の諸電子的熱発生要素とモータとにより発生される熱の最大量をいっせいに消散させることを必要とされない。
【0030】
本発明の概念は、少なくとも1つの熱発生電気要素と少なくとも1つの熱過敏性電気要素とが含まれていると共に該熱過敏性電気要素が作動温度に対して上限を課している統合電気ドライバを採用したどんなモータ装置にも事実上適用可能であることが分かるであろう。この点に関し、マイクロプロセッサ及び他のIC(それらの全ては、通常、熱過敏性である)は、作動中に多少の熱を一般的に発することが分かるであろう。しかしながら、これに関係する熱の量は多くはなく(MOSFET及び電力検知抵抗器により一般的に発生される12ワットほどと比較して、約1ワットを超えていない)、従って、ICにより発生される熱がモータ装置の作動又は特性に制約を課すことはないことが分かるであろう。また、以前に言及した入力電圧安定化コンデンサ(これは約105℃での作動が典型的であると評価されている)のような一部の要素は、通常、熱停止限界を定めないが、それらを比較的に低温に維持することは、化学的エージング(chemical aging)の速度を減じて、それによりそれらの有効寿命を最大化するのに役立つであろう。
【0031】
モータ装置において採用された電子制御の特質は、広範囲にわたって変わりうるし、また本発明の範囲についての限定となることはないが、有利に用いられうる適当な制御装置の一つはホダ(Hoda)等の米国特許第6,121,744号明細書に開示されており、同明細書の全体はその参照によりここに組み込まれる。この米国特許については、回転子位置を検出するための位置検出部と、該位置検出部の出力信号を指令位置信号と比較すると共に、該出力信号及び該指令位置信号間の偏差に基づいて、モータの巻線に流れるべき電流に対応する信号を出力する制御部と、該制御部の出力信号に基づいて前記モータの前記巻線に供給されるべき電流を出力すると共に、前記指令位置信号に基づいて前記モータの位置を制御するドライバ部とから構成される一体型モータ装置のための位置制御装置を開示する、と言えば十分である。制御部は、偏差が90°の電気角の範囲内にあるときに、正弦波データテーブルから前記指令位置信号に対応する正弦波データ信号を出力する。そして同制御部は、偏差が90°の電気角を越えるときに、モータが回転子位置を90°の電気角だけリードする励起安定点に達するような方法でモータを励起する正弦波データ信号を前記正弦波データテーブルから出力する。
【0032】
技術的に使用されている通り、“ドライバ”及びその諸要素という呼称は、熱を発生する電子的な諸“駆動”要素及び熱に敏感な電子的な諸“制御”要素の双方を含んでいることを強調しておくべきであろう。モータ部との電子“ドライバ”部(これはモータへの電流の供給を行なうと共に制御する)の統合とは、上述した装置“一体型モータ装置”として特徴付けることである。
【0033】
従って、本発明により提供される一体型モータ装置においては、また同一体型モータ装置により、熱エネルギーの流れ及び消散の取扱い改善により特性が最適化されることが分かる。更に具体的に言うと、本発明は、かかる特性を有する比較的に小型かつコンパクトである、一体型ステップモータ、サーボモータ又はハイブリッドモータを提供する。放射、対流及び伝導メカニズムによる熱に敏感な諸要素への熱エネルギーの伝達は、モータ装置への反射素子、停滞空気スペース、並びに/或いは、高熱伝導率又は低熱伝導率の材料から選択的に製造される部品及び素子の組込みにより、低減される。
【符号の説明】
【0034】
10 一体型ステップモータ装置
12 モータ本体部
14 モータカバー
16 プリント配線板
18 酸化金属半導体電界効果トランジスタ
17 電流検出抵抗器
19 電力抵抗器
20 ねじ(締結具)
22 熱パッド
24 カバーもしくはハウジング
26 制御板(装着板)
27 マイクロプロセッサ(CPU)
28 ドライバケース
30 熱パッド
32 ドライバハウジング
33 コンデンサ
34 制御板(装着板)
35 多素子金属コネクタ
37 熱パッド
36 熱反射板
38 帯状ケーブル
40 ねじ
41 第1温度センサ
42 第2温度センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部を有するモータと、該モータに電流を供給するための少なくとも1つの熱発生電気要素と、少なくとも1つの熱過敏性電気要素とから構成される一体型モータ装置であって、
前記熱発生電気要素は、前記モータの前記本体部と実際に熱伝導接触して配置されており、
前記熱発生電気要素は前記モータに電流を供給するための駆動出力要素であり、前記熱過敏性電気要素は制御要素であり、
前記少なくとも1つの熱発生電気要素及び前記少なくとも1つの熱過敏性電気要素は、互いに物理的及び熱的に事実上隔てられた前記一体型モータ装置の部分と部分とに存在している、一体型モータ装置。
【請求項2】
前記熱発生電気要素を実質的に囲む第1ハウジングと、前記熱過敏性電気要素を実質的に囲む別個の第2ハウジングとを更に含む、請求項1に記載の一体型モータ装置。
【請求項3】
前記第1及び第2ハウジングは、低熱伝導率の材料から製造されている、請求項2に記載の一体型モータ装置。
【請求項4】
前記熱発生電気要素を実質的に囲む第1ハウジングと、前記熱過敏性電気要素を実質的に囲む別個の第2ハウジングの間は、
(a)実質的に滞留空気スペースを画成する構造、及び(b)熱エネルギーを前記熱過敏性電気要素から離れるよう反射させるべく構成されかつ配置された放射−反射表面のうち少なくとも一方から構成されている、請求項2または3に記載の一体型モータ装置。
【請求項5】
前記放射−反射表面は、放射−反射シート、フィルム又はフォイルから構成されている、請求項4に記載の一体型モータ装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの熱発生電気要素は、電子式電力スイッチ装置と、電流検知抵抗器及び電力抵抗器のうちの少なくとも1つとから構成され、前記熱発生電気要素の全ては共通の装着板に搭載されている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の一体型モータ装置。
【請求項7】
前記熱過敏性電気要素を複数備えると共に、前記第2ハウジング内に配置された一対の制御板を備えており、前記複数の熱過敏性電気要素のうちの少なくとも1つは、前記制御板の各々に装着されており、前記一対の制御板は、比較的に高熱伝導率の複数の金属導体により作動可能に電気的に相互接続されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の一体型モータ装置。
【請求項8】
前記熱発生電気要素の全てが共通に搭載されている、前記第1のハウジング内に配置された装着板と、前記熱過敏性電気要素を複数備えると共に、前記第2ハウジング内に配置された一対の制御板とは、可撓性の帯状ケーブルにより電気的に接続され、前記可撓性の帯状ケーブルは、前記滞留空気スペースに配置されている、請求項7に記載の一体型モータ装置。
【請求項9】
前記第1ハウジング内に実質的に配置された第1温度センサと、前記第2ハウジング内に配置された第2温度センサと、前記第1及び第2ハウジングの各々の雰囲気温度を別個に監視すると共に、前記第1及び第2ハウジングの1つにおいて特定値を超える温度が検出された時期を指示するため前記第1及び第2温度センサに作動可能に接続された監視手段とを更に含む、請求項2ないし4のいずれか1項に記載の一体型モータ装置。
【請求項10】
本体部を有するモータと、該モータに電流を供給するための少なくとも1つの熱発生電気要素と、少なくとも1つの熱過敏性電気要素とから構成される一体型モータ装置の放熱方法であって、
前記熱発生電気要素は、前記モータの前記本体部と実際に熱伝導接触して配置されており、
前記少なくとも1つの熱発生電気要素及び前記少なくとも1つの熱過敏性電気要素は、互いに物理的及び熱的に事実上隔てられており、
前記少なくとも1つの熱発生電気要素は、電力スイッチ装置を含み、
異なる速度での前記モータ及び前記電力スイッチ装置の補完的熱発生特性により、
前記一体型モータ装置の前記熱発生要素と前記モータとにより発生される熱を消散させる方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−239675(P2011−239675A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163388(P2011−163388)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【分割の表示】特願2006−8591(P2006−8591)の分割
【原出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】