説明

一輪車付きほだ木間欠回転機

【課題】径の違う多数のほだ木に対し植菌用の孔明けや菌打ち込み作業を均等に行うことができるとともに山間地等での移動が可能な装置を提供する。
【解決手段】ほだ木14の受けは駆動輪10、自由回転輪13で行い、足踏み式のペダル8によりほだ木周方向への作動力を駆動輪10に間欠的に伝える。駆動輪10は両挟み方式により常時適度なブレーキが掛かった状態として、間欠駆動はこのブレーキ力に抗して行う。また装置全体を運搬できるよう、装置の進行方向少し前寄りに一輪車2を装備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は椎茸の栽培に当たり、ほだ木(原木)に植菌用の孔明け、及び植菌作業を行い易くするための、一輪車付きほだ木間欠回転機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
山間地等で、多数のほだ木の全周に渡り、所定の間隔で穴を明け、植菌作業を行うのはかなり大変な作業である。これに対し背景技術として下記のような公報文献がある。
【公報文献1】
公開実用新案公報 実開平5−43834
公報文献1は横向き姿勢に置かれたほだ木の外側面に円盤を接触させ、この円盤を1回の操作で所定角度づつ回動するようにした足踏み式の駆動手段を備え、ほだ木が間欠的に共回りするようにしたもので、円盤の側面には接触圧力を調節し得るようにしたブレーキ手段を設けたものであるが、この考案の実施例ではほだ木への接触円盤が手前側のみで、奥側のほだ木支持が傾斜部材になっているため、ほだ木が共回りするには傾斜部材との滑りを要し、摩擦による回りにくさがある。またこの考案の実施例ではブレーキ手段が駆動円盤の片面のみを押しつける方式になっているが、これでは円盤が変形してしまい必要なブレーキ力を得ることが難しい。ほだ木への孔明けや植菌作業は山間部で行うことが多いが、この考案では運搬手段についての考慮はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
椎茸栽培においては、ほだ木に椎茸菌を植え込むために植菌用の孔明けや菌駒等の打ち込み作業を行う必要があるが、通常は簡易台の上に載せたほだ木の長手方向に約10cm間隔で一列に電気ドリルで孔を明け、その孔に菌駒打ち込み等による植菌作業を行い、長手方向の一列が済んだら、周方向の表面で5cm間隔程度手で回して、再度電気ドリルで長手方向に孔を明けて、その孔に菌駒等を打ち込む作業をほだ木の全周に渡り行う必要があった。山間地等で行うことが多く、長さはほぼ等しくしてあるが、径がそれぞれ異なる多数のほだ木に同様な作業を行うことは、かなり大変な労力であった。これに対して公報文献1のような装置の提案があるが、改善が必要であると共に、山間地等での装置の移動が容易であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では横たえたほだ木の受けはほだ木の両端近くに各2輪づつの、計4輪で行う。駆動輪以外は全てゴム質のタイヤを履いた自由回転輪とする。駆動輪は連結した2輪又は1輪とし、駆動輪の外周はほだ木表皮に対して滑りにくい歯車状又はその他の滑りにくい表面とする。間欠駆動は足踏み式のペダルにより行い、ペダルの押し方向又は引き方向を利用した作動片により、駆動輪の側面に多数植え込んだ受け片を間欠的に押し上げ、又は押し下げて間欠駆動を行う。なお本発明の実施例ではペダルの押し方向用作動片について取り上げる。引き方向駆動では作動片の形状とペダルの支点位置が異なってくる。いずれの場合も駆動輪は両挟み方式により常時適度なブレーキ力が掛かった状態として、間欠駆動はこのブレーキ力に抗して行う。なお間欠駆動はほだ木の周方向で5cm程度になるよう設定調整する。次に本発明の最も特徴とするものであるが、本装置全体を一輪車で運搬できるよう、装置の進行方向で中央少し前寄りに一輪車を装備する。装置の進行方向手前側には手持ち用のハンドルを固定し、ハンドルを持ち上げて移動できるようにする。進行方向前方にある前足は運搬時には折り畳み、作業時には出して装置がしっかり踏ん張れるようにする。本装置には電気ドリル他の道具等を一時的に置ける着脱可能な置き台を設置する。なお山間地等で電気ドリル用の電源がない場合は携帯小型発電機を使用する。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、多数のほだ木に対しても植菌用の孔明け及び菌打ち込み作業が行い易くなり、径の異なるほだ木に対しても周方向で約5cmの間隔を空けて作業できる。一輪車付きであることより山間地等での短距離移動が容易で、折り畳み式前足のため作業時には前足を出してしっかり踏ん張ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1に本発明の植菌作業用、一輪車付きほだ木間欠回転機の一例の正面図を示す。図において1は主枠、2は一輪車で主枠の中央近く図の左側進行方向寄りに設置される。3は進行方向前方にある前足で両前足は連結している。作業時は下ろした状態にし、主枠側と前足側とを上方にあるピン4により固定する。一輪車使用時はピンを抜き、主枠に付いている取手5を持ち上げて少し浮かせた上で前足を押せば、前足はヒンジ6を支点に回り、少し回れば一輪車が接地するため、以降の取手持ち上げは不要である。前足は3aの位置まで持ち上げ、前足側の差し込み部と主枠側の受け部を合わせて、先程抜いたピンを4aの位置に差し込めば、前足は折り畳んだ位置に固定される。7はハンドルで、進行方向手前側の主枠左右に固定する。8はペダルで、9は作動片、10は駆動輪である。作動片は駆動輪の側面に多数植え込まれた受け片11を間欠的に一つづつ押し上げることにより、駆動輪の周方向が約5cm動くように設定する。直径20cmの駆動輪の場合、受け片の数は12〜13本になる。駆動輪は別の両挟み方式のブレーキ装置12により、常時適度なブレーキが掛かった状態になっており、駆動はこのブレーキ力に抗して行われる。図では前後にチェンで連結した2輪が駆動輪になっている。13は前後2輪の自由回転輪で、上記計4輪の間にほだ木14をセットする。15は置き台で差し込みにより、着脱可能になっている。
【0007】
図2は図1を右側から見た側面図で、ペダル8を踏むことにより、16をペダルの支点として作動片9が上に押され、図の右側駆動輪の側面に付いた受け片11を一つづつ押し上げることにより、駆動輪が間欠的に駆動される。左右の駆動輪はチェン17により連結しており、左側駆動輪に付いたブレーキ装置12により、常時適度なブレーキが掛かった状態で、駆動はこのブレーキ力に抗して行われる。図で駆動の2輪が右回転すれば、上に乗ったほだ木は周の動き分、左回転することになる。
【0008】
図3は図1を上から見た平面図で、4が両前足を下ろした時に使用するピンで、4aが両前足を折り畳んだ時に使用するピン位置である。図で7がハンドル、8がペダル、9が作動片、10が駆動輪で、11が図の上側の駆動輪にのみある受け片である。17は上側の駆動輪と下側の駆動輪とを連結するチェンで、12が下側の駆動輪に付いたブレーキ装置である。本図では主枠に開いた穴18により、ほだ木の長さに応じて自由回転輪13の位置が変更できるようになっている。
【0009】
図4は図1のブレーキ装置12の部分を拡大した説明図で、10が手前側の駆動輪で、12がブレーキ装置、19はブレーキ装置の両側のアーム、20はブレーキ装置の支点、21は両挟み用の貫通ボルトを、22は両側にあるブレーキ力調整用スプリングを示している。23はガイドプレートである。
【0010】
図5は本発明による植菌作業用の一輪車付きほだ木間欠回転機を使用した場合の特徴を示す説明図で、上側の太いほだ木の場合も、下側の細いほだ木の場合も周方向で約5cmの間隔を保つことができる。径により一周の終わりが合わない場合がでるが、孔明け及び菌駒等の打ち込みは手作業のため、全体として均一になるよう、最終部では間隔や角度で手調整する。
【0011】
図6は本発明の一輪車付きほだ木間欠回転機の前足部を折り畳んで、一輪車運搬をしている状態を示す説明図である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 本発明の一輪車付きほだ木間欠回転機の一例を示す正面図
【図2】 図1を右側から見た側面図
【図3】 図1を上から見た平面図
【図4】 図1のブレーキ装置12の部分を拡大した説明図
【図5】 本発明による一輪車付きほだ木間欠回転機を使用した場合の特徴を示す説明図
【図6】 本発明の一輪車付きほだ木間欠回転機で一輪車運搬をしている状態を示す説明図
【符号の説明】
【0013】
1 主枠
2 一輪車
3 前足
3a 前足の折り畳み後位置
4 ピン
4a 前足折り畳み後のピン位置
5 取手
6 ヒンジ
7 ハンドル
8 ペダル
9 作動片
10 駆動輪
11 受け片
12 ブレーキ装置
13 自由回転輪
14 ほだ木
15 置き台
16 ペダルの支点
17 チェン
18 主枠に開いた穴
19 ブレーキ装置の両側アーム
20 ブレーキ装置の支点
21 両挟み用の貫通ボルト
22 ブレーキ力調整用スプリング
23 ガイドプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横置きした椎茸栽培用ほだ木に植菌用の穴を明け、椎茸菌の打ち込み作業をするためのほだ木間欠回転機において進行方向少し前寄りに一輪車を装備、進行方向前方にある前足は作業時には出し、装置運搬時には折り畳むことができて、進行方向手前側にある手持ち用のハンドルを持ち上げて移動を可能としたほだ木間欠回転機。
【請求項2】
請求項1の一輪車付きほだ木間欠回転機において、間欠駆動は足踏みペダルの押し方向又は引き方向を利用した作動片が、両挟み方式のブレーキにより常時適度なブレーキ力が掛かった駆動輪にブレーキ力に抗して間欠的に伝えて行い、駆動輪以外のほだ木受けは全て自由回転輪にて受ける一輪車付きほだ木間欠回転機。
【請求項3】
請求項1の一輪車付きほだ木間欠回転機において、植菌用の穴明けや菌の打ち込み作業用の道具等をすぐ取れる位置に置くための置き台を装置の一部に着脱容易に取付けた一輪車付きほだ木間欠回転機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−234708(P2011−234708A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123490(P2010−123490)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(310011309)
【出願人】(506125591)
【Fターム(参考)】