三輪型自転車
【課題】車体シェルで覆われた三輪型自転車において,限られた横幅の車体シェル内で左右の後輪間のトレッドを最大限に設定することを可能にする。
【解決手段】車体フレームFに枢軸78を介して上下揺動可能に支持される左右一対のスイングアーム90の後端部相互を門形のクロスパイプ92を介して一体に結合してスイングアーム組立体14を構成し,一方のスイングアーム90の後端部に,その外側に隣接配置されて車体シェルSの内側面に近接する一方の後輪10rを回転自在に軸支し,他方のスイングアーム90の後端部に回転自在に支承される回転車軸47に,該他方のスイングアーム90の外側に隣接配置されて車体シェルSの内側面に近接する他方の後輪10rを結合し,回転車軸47にロータ軸59aを連結する発電・電動機59をクロスパイプ92に取り付けると共に,その門形の内側に配置した。
【解決手段】車体フレームFに枢軸78を介して上下揺動可能に支持される左右一対のスイングアーム90の後端部相互を門形のクロスパイプ92を介して一体に結合してスイングアーム組立体14を構成し,一方のスイングアーム90の後端部に,その外側に隣接配置されて車体シェルSの内側面に近接する一方の後輪10rを回転自在に軸支し,他方のスイングアーム90の後端部に回転自在に支承される回転車軸47に,該他方のスイングアーム90の外側に隣接配置されて車体シェルSの内側面に近接する他方の後輪10rを結合し,回転車軸47にロータ軸59aを連結する発電・電動機59をクロスパイプ92に取り付けると共に,その門形の内側に配置した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,左右一対の後輪の前方に,且つこれら後輪の上面より下方に配置されるサドルと,このサドルの前方に配置されるペダル付きクランク軸とを車体フレームに支持し,クランク軸及び後輪間を連結する伝動装置に発電・電動機のロータ軸を連結し,前輪,後輪及びサドルを覆って乗り手を収容するキャビンを画成する車体シェルを車体フレームに取り付けた三輪型自転車の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる三輪型自転車は,下記特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【特許文献1】特開2004−276755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かゝる三輪型自転車では,走行時の空気抵抗を極力少なくするために,車体シェルを流線型に形成しながら,その前後方向の投影面積を小さくすることが望まれる。しかしながら,車体シェルの前後方向の投影面積を小さくすべく,車体シェルの横幅を狭く設定すると,左右の後輪間のトレッドを充分大きく設定することが困難になる。特に,特許文献1に開示されるように,各後輪を,その両側に一対の脚部を配するリアフォークにより支持するものでは,そのリアフォークの外側の脚部に邪魔されて後輪を車体シェルの内側面に近接させることができないことから,後輪間のトレッドを大きく設定することは一層困難である。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,限られた横幅の車体シェル内で左右の後輪間のトレッドを最大に設定することを可能にすると共に,左右の後輪間のスペースを有効に利用して発電・電動機の設置を可能にする前記三輪型自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために,本発明は,左右一対の後輪の前方に,且つこれら後輪の上面より下方に配置されるサドルと,このサドルの前方に配置されるペダル付きクランク軸とを車体フレームに支持し,クランク軸及び後輪間を連結する伝動装置に発電・電動機のロータ軸を連結し,前輪,後輪及びサドルを覆って乗り手を収容するキャビンを画成する車体シェルを車体フレームに取り付けた三輪型自転車において,車体フレームに枢軸を介して上下揺動可能に支持される左右一対のスイングアームの後端部相互を門形のクロスパイプを介して一体に結合してスイングアーム組立体を構成すると共に,このスイングアーム組立体及び車体フレーム間に,スイングアーム組立体の上下揺動を緩衝するダンパを介装し,一方のスイングアームの後端部に,その外側に隣接配置されて車体シェルの内側面に近接する一方の後輪を回転自在に軸支し,他方のスイングアームの後端部に前記伝動装置に連結される回転車軸を回転自在に支承すると共に,この回転車軸に,該他方のスイングアームの外側に隣接配置されて車体シェルの内側面に近接する他方の後輪を結合し,また前記回転車軸にロータ軸を連結する発電・電動機を前記クロスパイプに取り付けると共に,その門形の内側に配置したことを第1の特徴とする。
【0006】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記枢軸を,相互に間隔を存して左右一対配設し,これら枢軸間に,車体フレームに支持される変速機の入力軸及び出力軸を同軸状に配置し,その入力軸を前記クランク軸に,また出力軸を前記ロータ軸にそれぞれチェーン伝動機構を介して連結したことを第2の特徴とする。
【0007】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,前記ロータ軸及び回転車軸との間に,その間を任意に連結,遮断し得るクラッチを介装し,このクラッチも前記クロスパイプに取り付けると共に,その門形の内側に配置したことを第3の特徴とする。
【0008】
尚,前記クロスパイプは,本発明の後述する実施例中の後部クロスパイプ92に対応する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば,左右のスイングアームの外側でそれらに片持ち支持される左右の後輪は,他物に干渉されることなく,車体シェルの左右内側面に近接させることができるので,車体シェルの限られた横幅内で両後輪間のトレッドを最大限に広げることができて,三輪型自転車の安定性の向上に寄与し得る。しかも左右のスイングアームの後端部間をクロスパイプで一体に連結してなるスイングアーム組立体は,枢軸を介して車体フレームに上下揺動可能に連結すると共に,このスイングアーム組立体及び車体フレーム間にダンパを介装し,スイングアーム組立体の上下揺動をダンパにより緩衝するようにしたので,乗り手に良好な乗り心地を与えることができる。
【0010】
また前記クロスパイプを門形に形成して,回転車軸にロータ軸を連結する発電・電動機をこのクロスパイプに取り付けると共に,その門形の内側に配置したことで,スイングアーム組立体,左右の後輪及び発電・電動機によりコンパクトな駆動ユニットを構成することができる。しかもこの駆動ユニットは,車体フレーム側とは別個に組み立てが可能であり,その組み立て後に枢軸を介して車体フレームに連結すればよいから,三輪型自転車の組み立て能率を高めることができる。
【0011】
その際,クロスパイプの門形の内側に発電・電動機を配置することで,発電・電動機とクロスパイプとの干渉を回避することができ,上記駆動ユニットのコンパクト化に寄与し得る。
【0012】
また本発明の第2の特徴によれば,変速機の入,出力軸がスイングアーム組立体の左右の枢軸間でそれらと同軸状に並ぶので,スイングアーム組立体の枢軸周りの揺動時でも,変速機の入,出力軸にそれぞれ連結されるチェーン伝動機構のチェーンに伸縮が生じないから,それらの耐久性の向上を図ることができる。
【0013】
さらに本発明の第3の特徴によれば,クラッチをオフ状態にするときは,停車状態を維持したまゝ,ペダルから発電・電動機を駆動して発電・電動機を発電機として機能させ,それに伴なう負荷によって乗り手の体力増進を図ることができる。したがって,この自転車は,自宅の車庫や庭先など設置場所を選ばず,体力増進のための定置型トレーニング装置として使用することができる。またクラッチをオン状態にすると,乗り手のペダル駆動による自転車の走行時,発電・電動機を電動機として機能させ,ペダルの駆動力をアシストすることができる。
【0014】
しかも上記クラッチも,発電・電動機と同様に,前記クロスパイプに,その門形の内側で支持されるので,これを前記駆動ユニットにコンパクトに組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を,図面に示す本発明の好適な実施例に基づき以下に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例に係る三輪型自転車の側面図,図2は同自転車の平面図,図3は同自転車の拡大正面図,図4は同自転車の拡大背面図,図5は同自転車を,車体シェルを取り外した状態で示す側面図,図6は同じく同自転車を,車体シェルを取り外した状態で示す平面図,図7は図1の7−7線断面図,図8は図1の8−8線拡大断面図,図9は図2中のルーフ部の拡大図,図10は図9の10−10線断面図,図11は図9の11部拡大図,図12は図11の12−12線断面図,図13は図9の13−13線拡大断面図,図14は図13の14−14線断面図,図15は図5中の後輪及びサドル周辺部の拡大図,図16は図15の16−16線断面図,図17は図15の17−17線断面図,図18は図16の18−18線拡大断面図,図19は同自転車の伝動装置を示す平面図,図20は図19中のクラッチをオン状態で示す拡大縦断面図,図21は図20の21−21線断面図,図22は同クラッチのオフ状態を示す,図20との対応図,図23は図1の23−23線断面図である。
【0017】
先ず,図5及び図6において,三輪型自転車Bの車体フレームFは,前部ヘッドパイプ1と,この前部ヘッドパイプ1から斜め下向きに延び,そして後方へ水平に延びるメインフレーム2と,前部ヘッドパイプ1からメインフレーム2の上方へ斜め後方に突出するハンドル支持パイプ3と,このハンドル支持パイプ3及びメインフレーム2間を連結する第1ステー4と,ハンドル支持パイプ3の後端部に固設される後部ヘッドパイプ5と,第1ステー4及びメインフレーム2間を連結する第2ステー6と,メインフレーム2の後端に直交して連結して水平に延びるメインクロスメンバ7と,このメインクロスメンバ7の左右両側部から立ち上がった後,後方へ水平に延びて後端で閉じるリアフレーム9とで構成される。
【0018】
前部ヘッドパイプ1では,前輪10fを支持するフロントフォーク11の上端に一体に突設されたフォークステム11aが回転自在に支承され,後部ヘッドパイプ5では,操向ハンドル12に結合されたハンドルステム12aが回転自在に支承される。そしてフォークステム11aの上端部と,ハンドルステム12aの下端部とは平行リンク機構13を介して連結され,操向ハンドル12の回動をフロントフォーク11に同期して伝達し得るようになっている。
【0019】
メインクロスメンバ7には,リアフレーム9の下方且つ左右両側に配置される一対の後輪10r,10rを支持するスイングアーム組立体14が上下揺動可能に連結される。
【0020】
図15に示すように,メインフレーム2には,左右の後輪10r,10rの前方且つそれらの上面より低い位置を占める背当て15a付きのサドル15がサドルレール65を介して取り付けられる。このサドル15は,左右の後輪10r,10rの前方且つそれらの上面より低い位置に配置される。このサドル15の前方において,左右一対のペダル16,16を備えたクランク軸17がメインフレーム2に回転自在に支承される。
【0021】
サドル15は,前方上向きに傾斜配置されるサドルレール65上で前後方向調節可能に支持される。サドルレール65の後端部下面には取り付けボス66が,またその前端部下面にはステー67が設けられており,その取り付けボス66は,メインフレーム2の上面に立設される後部ブラケット68に枢軸70を介して回動可能に支持され,ステー67は,メインフレーム2の上面に立設される前部ブラケット69にボルト71によって上下方向の複数段階調節可能に連結される。したがって,サドル15は,乗り手Rの体格に応じて前後方向及び上下方向に位置調節が可能である。
【0022】
図1〜図5及び図7に示すように,車体フレームFには,前輪10f,後輪10r,10r及びサドル15等を上方から覆う合成樹脂(例えば,再生利用が可能なABS)製の車体シェルSが取り付けられ,その内部は,乗り手Rを収容するキャビン30となる。この車体シェルS内において,前輪10fを覆う合成樹脂製のフロントフェンダ31と,左右の後輪10r,10r及びリアフレーム9を覆う合成樹脂製のリアフェンダ32が車体フレームFに取り付けられる。
【0023】
車体シェルSは,下面を開放した流線型をなしており,その左右両側壁には,それぞれドア64,64によって開閉された乗降口63,63が設けられる。また車体シェルSの前部及び後部には,フロントガラス33及びリアガラス34がそれぞれ嵌め込まれるフロントウインド35及びリアウインド36が設けられ,フロントガラス33の外面を払拭するワイパ37が車体シェルSに取り付けられる。
【0024】
図8に示すように,車体フレームFへの車体シェルSの取り付けのために,前部ヘッドパイプ1には,その左右外側方に突出した支持杆20(図6参照)が固設され,この支持杆20は,その両端に前部連結部材21,21を備えている。また前記メインクロスメンバ7の左右両端には後部連結部材25,25が設けられる。そして前部連結部材21,21には,車体シェルS前部の左右内壁固設された前部連結部材22,22が中間部材23を挟んでボルト結合され,また後部連結部材25,25には,車体シェルS後部の左右内壁固設された後部連結部材26,26が中間部材27を挟んでボルト28により結合され,こうして車体シェルSは車体フレームFに取り付けられる。尚,前記中間部材23,27を弾性部材で構成すれば,車体フレームF及び車体シェルS間の振動をこれら中間部材23,27に吸収させることができる。
【0025】
図6,図15及び図17において,前記リアフレーム9周りの構造について説明する。
【0026】
リアフレーム9は,メインクロスメンバ7の左右両側部から立ち上がると共に斜め後方に延びる2本の傾斜部9aと,これら傾斜部9aの後端から後方へ水平に延びて後端で閉じるコ字状の水平部9bと,この水平部9bの左右両側部間を連結する横クロスメンバ9cと,この横クロスメンバ9cと水平部9bの後側部との間を連結する縦クロスメンバ9dとで構成され,特に,その縦クロスメンバ9dは,上面を開放したチャンネル材で構成される。このリアフレーム9は,平面視では(図6参照)左右の後輪10r,10r間を通り,側面視では(図15参照)後輪10rの前部及び上部を通るように配置される。このリアフレーム9の傾斜部9aから水平部9bに亙り,その上面に前記リアフェンダ32が取り付けられる。このリアフェンダ32は,左右両側縁及び後縁を車体シェルSの内面に接し,若しくは近接して,左右の後輪10r,10rを覆うように合成樹脂により成形されるもので,その際,その水平部は,周縁に囲い壁73aを起立させた荷台73に形成される。
【0027】
またリアフレーム9の水平部9bの下面には,縦クロスメンバ9dを挟んで二枚の取り付け板74a,74bが固着され,一方の取り付け板74aの下面にはバッテリ60が,また他方の取り付け板74bの下面には制御回路ユニット61がそれぞれ取り付けられる。その制御回路ユニット61は,上記バッテリ60と,スイングアーム組立体14に支持される発電・電動機59との間の通電等を制御するものであり,これらバッテリ60及び制御回路ユニット61と発電・電動機59との間を接続するワイヤハーネス75(z17参照)がチャンネル状の縦クロスメンバ9d内に配線される。
【0028】
こうしてリアフレーム9の水平部9bの下面にバッテリ60及び制御回路ユニット61を取り付けることにより,それらの設置に左右の後輪10r,10r間のデッドスペースを有効に利用することができ,したがってバッテリ60及び制御回路ユニット61の設置による三輪型自転車Bの大型化を回避することができる。しかもバッテリ60及び制御回路ユニット61は,リアフレーム9の上面に取り付けられるリアフェンダ32によって覆われることになるから,外観を良好にすることができる。しかもリアフレーム9は,左右の後輪10r,10rを支持するスイングアーム組立体14の上下揺動の影響を受けないから,バッテリ60及び制御回路ユニット61は後輪10r,10rの上下振動を回避することができ,それらの耐久性能の向上を図ることができる。
【0029】
また合成樹脂製のリアフェンダ32には,その水平部を利用して荷台73が一体に成形されるので,リアフェンダ32及び荷台73を一部品とすることができ,部品点数及び組立工数の減少をもたらし,コスト低減に寄与し得る。そして乗り手Rはサドル15に腰掛けたまゝで荷台73への荷物の積み卸しを容易に行うことができる。
【0030】
しかもリアフェンダ32及び荷台73間には継ぎ目が無いから,後輪10r,10rから荷台73への泥の跳ね上がりを確実に防ぐことができる。さらに荷台73は,車体シェルSにより囲まれるため,荷台73からの荷物の脱落を車体シェルSにより防ぐことができる。
【0031】
図15〜図18により前記スイングアーム組立体14周りの構造について説明する。
【0032】
前記メインクロスメンバ7には,その後方に突出する左右一対の支持腕77,77が溶接されており,これら支持腕77,77に同軸状に並ぶ左右一対の枢軸78,78を介してスイングアーム組立体14が上下揺動自在に連結され,このスイングアーム組立体14とリアフレーム9との間に,スイングアーム組立体14の上下揺動を緩衝する左右一対のダンパ79,79が介装される。
【0033】
スイングアーム組立体14は,車体フレームFの前記一対の支持腕77,77に枢軸78,78を介して前端部を連結される左右一対のスイングアーム90,90と,この両スイングアーム90,90の中間部を相互に一体に連結する前部クロスパイプ91と,両スイングアーム90,90の後端部を相互に一体に連結する後部クロスパイプ92とで構成される。その一方のスイングアーム90(図示例では右方のスイングアーム)の後端部に固着された固定車軸44には,該スイングアーム90の外側に隣接配置されて車体シェルSの内側面に近接する一方の後輪10rのハブが回転自在に支承される。
【0034】
また他方のスイングアーム90(図示例では左方のスイングアーム)の後端部には,前記固定車軸44と同軸上に配置される回転車軸47が回転自在に支承され,該スイングアーム90の外側に隣接配置されて車体シェルSの内側面に近接する他方の後輪10rのハブがこの回転車軸47の外端部に結合される。こうして,左右の後輪10r,10rはスイングアーム組立体14に片持ち式に支持される。したがって,左右の後輪10r,10rは,他物に干渉されることなく,車体シェルSの左右内側面に近接させることができるので,車体シェルSの限られた横幅内で両後輪10r,10r間のトレッドを最大限に広げることができて,三輪型自転車Bの安定性の向上に寄与し得る。
【0035】
スイングアーム組立体14において,後部クロスパイプ92は,左右のスイングアーム90,90の後端部上面から立ち上がった門形をなしており,それの水平部と前部クロスパイプ91とに3本のブラケット95,95,95が橋渡されて溶接され,固定車軸44側の2本のブラケット95,95に前記発電・電動機59が取り付けられ,回転車軸47側の残る1本のブラケット95に後述するクラッチ46のクラッチベース163が固着される。その際,発電・電動機59及びクラッチ46は,門形の後部クロスパイプ92の内側に受け入れられながら,固定車軸44及び回転車軸47間,即ち左右の後輪10r,10r間でそれらと同軸状に配置される。
【0036】
而して,上記スイングアーム組立体14,左右の後輪10r,10r及び発電・電動機59及びクラッチ46により駆動ユニットDが構成される。しかもこの駆動ユニットDは,左右の後輪10r,10r,クラッチ46及び発電・電動機59の同軸配置によりコンパクトに構成される。
【0037】
またスイングアーム組立体14は,左右のスイングアーム90,90間を前部及び後部クロスパイプ91,92により連結して構成されるので,剛性が高く,左右の後輪10r,10rを強固に支持することができる。さらに後部クロスパイプ92を門形にすることで,この後部クロスパイプ92とクラッチ46及び発電・電動機59との干渉を回避することができ,これが駆動ユニットDのコンパクト化をもたらすのである。
【0038】
またこの駆動ユニットDは,車体フレームF側とは別個に組み立てが可能であり,その組み立て後に左右の枢軸78,78を介して車体フレームFに連結すればよいから,三輪型自転車Bの組み立て能率を高めることができる。
【0039】
図18において,前記左右のダンパ79,79は同一の構成である。各ダンパ79は,ダンパゴム97と,このダンパゴム97の前端面に焼き付けられた取り付け98と,ダンパゴム97の後端面に焼き付けられたフランジ99aを前端に備えたロッド99と,このロッド99に螺合される調整ナット100と,ロッド99の外周に摺動可能に嵌合して,先端を調整ナット100に当接させる有底円筒状の支持筒101とからなっており,取り付け98は,前記リアフレーム9の左右の基端部に溶接された前部ブラケット103aにボルト102により固着され,支持筒101は,その後端に突設されたボルト104,それに螺合されるナット105とにより,スイングアーム90に溶接された後部ブラケット103bに着脱可能に固着される。その際,支持筒101の先端を受け止める調整ナット100の,ロッド99に対する螺合位置を調節することにより,ダンパ79の有効長さが調整される。
【0040】
而して,スイングアーム組立体14が左右の後輪10r,10rと共に枢軸78,78周りに上下に揺動すれば,ダンパゴム97が取り付け98及びフランジ99a間で圧縮されたり,伸ばされたりすることで,そのスイングアーム組立体14の上下揺動を緩衝することができ,サドル15に座る乗り手Rに良好な乗り心地を与える。
【0041】
再び図1〜図4において,合成樹脂製の車体シェルSは,小規模の成形設備による成形を可能にするために複数の部分に分割され,成形後,ねじや接着剤等により結合される。具体的には,車体シェルSは,それぞれ乗降口63を有する左右のサイドパネル110,110と,これら左右のサイドパネル110,110の上端部間を連結するルーフパネル111と,左右のサイドパネル110,110の前端部間を接続するフロントパネル112と,左右のサイドパネル110,110の後端部間を接続するリアパネル113とに分割して成形される。
【0042】
またフロントパネル112及びリアパネル113は,それぞれ上下に二分割され,特に,それぞれの下半部112a,113aは着脱可能に構成される。而して,それら下方部分112a,113aを取り外せば,前輪10f及び後輪10rを露出させることができるから,前輪10f及び後輪10r,10rのパンク修理や後述のフロントブレーキ80及びリアブレーキ81の調整など,前輪10f及び後輪10r,10r周りのメンテナンス作業を,車体シェルSに邪魔されることなく容易に行うことができる。その上,上記下方部分112a,113aは,車体の前端及び後端に位置していて,他物との接触により損傷し易いものであるが,損傷時には,該下方部分112a,113aのみの新規部品との交換で補修し得るから,補修作業が容易であり,補修コストを低く抑えることができる。
【0043】
こゝで図9及び図10を参照しながら,左右の前記サイドパネル110,110及びルーフパネル111の接続構造について説明する。
【0044】
左右のサイドパネル110,110の上端部及びルーフパネル111の左右両端部には上面を開放した第1及び第2溝状部114,115がそれぞれ形成され,相隣る第1溝状部114上に第2溝状部115がシール剤を介して重ねられ,そして複数のビス116,116…により相互に接合される。その接合後,上側の第2溝状部115には合成樹脂製のモール117が嵌め込まれ,接着等により固着される。このモール117は,第2溝状部115の外方に突出して,ルーフパネル111の上面との間に前後方向に延びる樋溝118を画成するように形成されている。
【0045】
而して,互いに接合された第1及び第2溝状部114,115は,サイドパネル110及びルーフパネル111間を水密に接続するのみなず,車体シェルSの内側に隆起した厚肉の補強リブ119を構成するものであり,これによって車体シェルSの剛性を効果的に強化することができる。
【0046】
また上側の第2溝状部115に嵌め込まれるモール117は,その第2溝状部115及びビス116,116…の頭部を覆い隠して車体シェルSの外観を良好にすることができる。
【0047】
モール117は,さらに,ルーフパネル111と協働して,サイドパネル110の乗降口63の上方を前後方向に走る樋溝118を画成するので,特別な雨樋を設けずとも,雨天時には,ルーフパネル111に降った雨水を上記樋溝118に沿ってルーフパネル111の前後方向に流下させることになり,ドア64やドア64の窓の開放時,ルーフパネル111から乗降口63や窓への雨水の滴下を防ぐことができる。
【0048】
第1及び第2溝状部114,115を重ねる際,ルーフパネル111側の第2溝状部115を上側にすることは,万一,両溝状部114,115間のシール不良が生じた場合でも,ルーフパネル111上に降った雨水が両溝状部114,115間に浸入することを防ぐ上に有効である。
【0049】
図9〜図12において,ルーフパネル111の上面には,可及的広い範囲において内外2段の浅い凹部121,122が形成されており,その内側の凹部121に前記バッテリ60に充電し得るパネル状の太陽電池123が収納され,外側の凹部122には,太陽電池123に重ねてそれを覆う,例えばアクリル製の透明の保護カバー124が収納され,この保護カバー124は複数のビス125,125…によってルーフパネル111に固定される。上記内外2段の凹部121,122は,それぞれ太陽電池123及び保護カバー124の厚みに対応する深さに形成されていて,外側の凹部122に嵌め込まれた保護カバー124の上面はルーフパネル111の上面に略連続するようになっている。尚,太陽電池123の後端には,車体シェルSの内壁に配線されるリード線が接続されるが,図には省略されている。
【0050】
ルーフパネル111には,内側の凹部121の前後左右の四隅を,その凹部121より低いルーフパネル111の外面にそれぞれ連通させるドレン溝126,126…が形成される。具体的には,各ドレン溝126は,これを図9及び図11の実線示のように外側方に延ばして前記樋溝118に連通させ,若しくは前後方向に延ばしてフロントウインド35又はリアウインド36の上縁部に連通させる。各ドレン溝126は,下流端に向かって漸次浅くなっており,その下流端では溝底がルーフパネル111の一般外面に連続している(図11及び図12参照)。
【0051】
而して,外側の凹部122に収容される透明の保護カバー124は,内側の凹部121に収容される太陽電池123を完全に覆うことができるので,太陽電池123の受光を妨げることなく,飛石等の落下物による太陽電池123の損傷を確実に防ぐことができる。しかも保護カバー124は,ルーフパネル111の上面と滑らかに連続するので,太陽電池123及び保護カバー124による車体シェルSの空気抵抗の増加を回避することができる。
【0052】
また雨天時,内外の凹部121,122に雨水が浸入しても,その雨水は,四隅のドレン溝126,126…から外部に自然に流出する。特に,各ドレン溝126は,下流端に向かって漸次浅くなり,下流端で溝底が車体シェルSの外面に連続するので,ドレン溝126からの排水は確実で雨水が溜まることはない。しかも晴天時には,ドレン溝126,126…を通して凹部121,122内が走行風等により自然に換気されるので,太陽電池123の表面及び保護カバー124内面の曇りを防ぎ,太陽電池123の受光効率の低下を防ぐことができる。
【0053】
さらに保護カバー124は,外側の凹部122で複数のビス125,125…によってルーフパネル111に固定されて,太陽電池123を保持するので,保護カバー124の固定手段による太陽電池123の受光面積の減少を回避することができる。
【0054】
図9,図13及び図14において,ルーフパネル111の前端部上面には台座130が形成され,これに風速センサ131が取り付けられる。この風速センサ131は,台座130にビス132で固着されるセンサベース133と,このセンサベース133に回転自在に支持される回転軸134aを有するインペラ134と,センサベース133から起立する支柱133aに固着されてインペラ134を覆うカバー135とを備える。センサベース133には検出室136が設けられており,回転軸134aに固着される永久磁石137と,この永久磁石137に対置されるホール素子138とが収容され,インペラ134の回転数をホール素子138により電気信号として検出するようになっている。ホール素子138で検出された信号は前記制御回路ユニット61に入力される。制御回路ユニット61では,その入力信号を風速に変換して,操向ハンドル12に付設される操作パネル19(図4参照)の風速表示部140に風速を表示すると共に,所定風速以上の強風時には,操作パネル19等の適所に設けられた警報ブザー150を作動するようになっている。
【0055】
また制御回路ユニット61には,風速センサ131の発生信号と並行して,自転車Bの走行速度を検出する車速センサ151の検出信号が入力される。制御回路ユニット61では,その車速から自転車Bの発車状態を判別したとき,風速表示部140への表示及び警報ブザー150の作動を停止するようになっている。
【0056】
このように,風速センサ131は,車体シェルSのルーフ部に設置されるので,車体シェルSに影響されることなく外部の風速を正確に検知し得る。そしてキャビン30では,乗り手Rが発進前に操作パネル19の風速表示部140から風速を正確に知ることができ,しかも所定風速以上の強風時には,警報ブザー150の作動によりその状態を知ることができるので,その状況を安全運転に活かすことができる。
【0057】
しかも背当て15a付きのサドル15を,前輪10f及び後輪10r,10r間で,後輪10r,10rの上面よりも低い位置に配置したことで,乗り手Rの乗車姿勢を効果的に低くすることができ,これに伴い流線型の車体シェルSの全高を充分低くすることが可能になり,走行中,風の影響を極力少なくすることができる。
【0058】
また自転車Bが走行状態になると,風速センサ131は,走行風の影響を受けて,正確な風速を検知できなくなるが,この場合,制御回路ユニット61によって風速表示部140への表示及び警報ブザー150の作動が停止されるので,走行風の影響による風速表示部140及び警報ブザー150の誤作動を防ぐことができる。
【0059】
図5及び図19において,前記クランク軸17と一方の後輪10rのハブとは伝動装置Mによって連結される。この伝動装置Mについて説明する。
【0060】
伝動装置Mは,クランク軸17側から第1チェーン伝動機構41,第2チェーン伝動機構42,フリーホイール付きの多段変速機45,第3チェーン伝動機構43,駆動軸48,発電・電動機59,クラッチ46及び回転車軸47を順次連ねて構成される。
【0061】
第1チェーン伝動機構41は,クランク軸17に固設した第1駆動スプロケット50と,メインフレーム2に回転自在に軸支される第1被動スプロケット50′とに第1チェーン51を巻き掛けて構成される。メインフレーム2には,第1チェーン51の緊張度合いから,クランク軸17に作用する負荷,即ちペダル負荷を検知するペダル負荷センサ58が取り付けられる。
【0062】
第2チェーン伝動機構42は,第1被動スプロケット50′に隣接して前記伝動軸59に固設した第2駆動スプロケット52と,変速機45の入力軸45aに固設した第2被動スプロケット52′とに第2チェーン53を巻き掛けて構成される。
【0063】
変速機45は,その入力軸45aから出力軸45b側への一方向へのみ伝動を可能にするフリーホイールとを内蔵している。そのフリーホイールはクランク軸17への逆負荷を遮断するものであるから,第1チェーン伝動機構41又は第2チェーン伝動機構42に設けることもできる。
【0064】
変速機45の出力軸45bには第3駆動スプロケット55が固設される。また発電・電動機59のロータ軸59aにはジョイント57を介して駆動軸48が連結され,この駆動軸48に第3被動スプロケット55′が固設される。これら第3駆動スプロケット55及び第3被動スプロケット55′に第3チェーン56を巻き掛けて,前記第3チェーン伝動機構43が構成される。その第3被動スプロケット55′の出力側では,駆動軸48及び回転車軸47間を連結,遮断し得る前記クラッチ46が設けられる。
【0065】
変速機45は,図16に示すように,車体フレームFのメインクロスメンバ7に左右のブラケット153,153を介して支持されると共に,スイングアーム組立体14の左右の枢軸78,78間に,それらと入,出力軸45a,45bが同軸状に並ぶように配置される。したがって,スイングアーム組立体14の枢軸78,78周りの揺動時でも,変速機45の入力軸45a及び出力軸45bにそれぞれ連結される第2及び第3チェーン伝動機構42,43のチェーン53,56に伸縮が生じないから,それらの耐久性の向上を図ることができる。
【0066】
続いて図19により,自転車Bのブレーキ装置について説明する。
【0067】
前輪10fには,これを制動するキャリパ式のフロントブレーキ80が,また従動側の後輪10rには,これを制動するドラム式のリアブレーキ81がそれぞれ設けられる。フロントブレーキ80の作動部には,操向ハンドル12に右グリップに隣接して取り付けられたフロントブレーキレバー82と,メインフレーム2の前部に取り付けられたパーキングレバー83とが,フロントブレーキワイヤ84及びパーキングワイヤ85をそれぞれ介して接続される。したがって,フロントブレーキレバー82及びパーキングレバー83の何れか一方を操作することにより,フロントブレーキ80を作動することができる。
【0068】
またリアブレーキ81の作動部には,操向ハンドル12に左グリップに隣接して取り付けられたリアブレーキレバー86にリアブレーキワイヤ88を介して接続される。したがって,リアブレーキレバー86を操作することによりリアブレーキ81を作動することができる。尚,図8中,符号89は変速機45の切り換えのためのシフトレバーである。
【0069】
次に前記伝動装置M中のクラッチ46について,図20〜図22により説明する。
【0070】
クラッチ46は,前記駆動軸48に摺動可能にスプライン嵌合される駆動ドグクラッチ部材155と,前記回転車軸47に固着されて駆動ドグクラッチ部材155と対置される被動ドグクラッチ部材156と,駆動軸48に固着されたリテーナ157と駆動ドグクラッチ部材155との間に縮設されて駆動ドグクラッチ部材155を,被動ドグクラッチ部材156との係合方向に付勢するクラッチばね158とを備える。駆動ドグクラッチ部材155の,クラッチばね158側の端部外周にはフランジ155aが形成されている。
【0071】
一方,前記スイングアーム組立体14のブラケット95に固着されたクラッチベース163は,駆動軸48をベアリング154を介して支承する。また駆動軸48は,その先端部でベアリング164を介して被動ドグクラッチ部材156を支承する。
【0072】
クラッチベース163には,被動ドグクラッチ部材156を囲繞するレリーズフォーク159の基端がピボット軸160を介して連結され,このレリーズフォーク159にレリーズリング161が,同軸状に並ぶ一対のトラニオン162,162を介して揺動自在に連結される。このレリーズリング161は,前記駆動ドグクラッチ部材155を囲繞して,そのフランジ155aに面同士で当接するようになっている。
【0073】
レリーズフォーク159の先端部には,操向ハンドル12又はその近傍の車体フレームFに軸支されたクラッチレバー87(図19参照)に連なるクラッチワイヤ87aが接続される。
【0074】
而して,クラッチレバー87の不作動状態では,駆動ドグクラッチ部材155がクラッチばね158の付勢力により被動ドグクラッチ部材156との係合することで,クラッチ46は,駆動軸48及び回転車軸47間を連結するオン状態を保ち,クラッチレバー87を操作してクラッチワイヤ87aを牽引すると,レリーズフォーク159がレリーズリング161を介してフランジ155aを押圧し,駆動ドグクラッチ部材155を被動ドグクラッチ部材156から引き離することで,クラッチ46は,駆動軸48及び回転車軸47間を遮断するオフ状態となる。このクラッチ46のオフ状態では,自転車Bの停止状態で,乗り手Rによるクランク軸17の回転を発電・電動機59に伝達することにより,発電・電動機59を発電機として機能させることができる。
【0075】
ところで,クラッチ46のオフ状態では,レリーズフォーク159にトラニオン162,162を介して揺動自在に連結されるレリーズリング161は,駆動ドグクラッチ部材155のフランジ155aと面同士で当接することになるから,その当接部での面圧を低く抑えて,耐摩耗性を高めることができる。
【0076】
上記クラッチ46の入力側の回転部材,図示例では駆動軸48とクラッチベース163との間に車速センサ151が設けられる。この車速センサ151は,駆動軸48に,それと共に回転するよう結合されたパルスロータ165と,このパルスロータ165に対向してクラッチベース163に固着され,パルスロータ165の回転に応じてパスルを発生するピックアップコイル166とで構成され,このピックアップコイル166の発生パルスは前記制御回路ユニット61で車速に変換され,操向ハンドル12上の操作パネル19(図4参照)の車速表示部167に表示される。
【0077】
この三輪型自転車Bは,次のようなモードで使用される。
[電動アシスト走行]
先ずクラッチレバー72をオン位置にセットしてクラッチ46をオン状態にし,制御回路ユニット61をアシスト側に切り換えた状態で,乗り手Rがペダル16,16を漕いでクランク軸17を駆動すれば,その駆動力は,第1チェーン伝動機構41,第2チェーン伝動機構42,変速機45,第3チェーン伝動機構43,クラッチ46及び回転車軸47を順次経て後輪10rに伝達し,同時に発電・電動機59がペダル負荷に応じてバッテリ60から給電され,ペダル負荷に応じた動力を回転車軸47に与えるので,乗り手Rの負担を軽減するアシスト走行状態となる。
[体力増進走行トレーニング]
クラッチレバー72は,上記の場合と同様にオン位置にセットしてクラッチ46をオン状態にしておき,制御回路ユニット61を充電側に切り換えると,発電・電動機59は,逆負荷を受けると発電してバッテリ60に充電し得るようになる。そこで,乗り手Rがペダル16,16を漕いでクランク軸17を駆動すれば,その駆動力は,第1チェーン伝動機構41,第2チェーン伝動機構42,変速機45,第3チェーン伝動機構43,クラッチ46及び回転車軸47を順次経て後輪10rに伝達し,それを駆動すると同時に,上記駆動軸48の回転により発電・電動機59は発電状態となって,バッテリ60に充電する。その発電に伴い発生する負荷が乗り手Rのペダル負荷に加えられることで,乗り手Rは,自転車Bを走行させながら体力増進トレーニングを行い,同時にバッテリ60への充電を果たすことができる。この場合,操作パネル19に設けられたペダル負荷調節ダイヤル168を操作することにより,発電・電動機59からバッテリ60への充電量が増減制御することができ,それによってペダル負荷の強弱を自由に調節することができるので,乗り手Rの体力や疲労度などに応じてペダル負荷を自由に調節し,トレーニングを無理なく快適に行うことができる。
[体力増進定置トレーニング]
先ず,パーキングレバー83を作動してフロントブレーキ80を作動状態にすると共に,クラッチレバー72をオフ位置に操作してクラッチ46をオフ状態にし,また制御回路ユニット61を充電側に切り換えと,[体力増進走行トレーニング]の場合と同様に,発電・電動機59は,逆負荷を受けると発電してバッテリ60に充電し得るようになる。そこで,乗り手Rがペダル16,16を漕いでクランク軸17を駆動すれば,その駆動力は,第1チェーン伝動機構41,第2チェーン伝動機構42,変速機45及び第3チェーン伝動機構43を経て発電・電動機59に伝達されるが,クラッチ46のオフ状態により,回転車軸47への伝達は行われない。したがって後輪10rを停止したまゝで,クランク軸17の駆動により発電・電動機59を駆動することになるから,発電・電動機59は発電状態となって,バッテリ60に充電する。その発電に伴い発生する負荷が乗り手Rのペダル負荷に加えられることで,乗り手Rは体力増進トレーニングを行い,同時にバッテリ60への充電を果たすことができる。この場合も前記ペダル負荷調節ダイヤル168を操作することにより,発電・電動機59からバッテリ60への充電量を増減制御することができ,それによってペダル負荷の強弱を自由に調節することができるので,この場合も乗り手Rの体力や疲労度などに応じてペダル負荷を自由に調節し,トレーニングを無理なく快適に行うことができる。
【0078】
この場合,自転車Bは,パーキングレバー83の作動より定置状態に保持され,しかも前輪10fを一輪,後輪10rを二輪とした三輪車であって,特別なスタンド装置を用いることなく自立が可能であるから,自宅の車庫や庭先など設置場所を選ばず,体力増進のための定置型トレーニング装置として安全に使用することができ,しかも乗り手Rの運動エネルギはバッテリに充電される電力に変換されることになるから,エネルギの無駄がない。しかも,この三輪型自転車Bは乗り手Rを収容する車体シェルSを備えているから,天候の如何に拘らず,走行及びトレーリングを快適に行うことができる。
【0079】
また前述のように,車速センサ151は,クラッチ46の入力側の駆動軸48の回転速度を車速として検知するものであり,その車速は操作パネル19の車速表示部167に表示されるので,クラッチ46をオフ状態にして行う定置トレーリング中にも,クランク軸17の回転数に対応した車速が車速表示部167に表示されることになり,乗り手Rに疑似走行トレーリングを体験させ,トレーリングに興味を持たせることができる。
【0080】
尚,クラッチワイヤ87a及びパーキングワイヤ85を共通1本の操作レバーにより操作し得るようにすれば,クラッチ46をオフ状態にする定置トレーニングの際には,自動的にフロントブレーキ80が作動状態となり,操作の簡素化を図ることができる。
【0081】
最後に,車体シェルSに装備される照明装置について説明する。
【0082】
図1〜図3及び図23において,車体シェルSの前面の左右両側には前方に開口するランプハウジング170と,その前方開口部を覆うレンズ171とが固着される。ランプハウジング170の内面は反射面となっている。このランプハウジング170の背面にはランプ取り付けベース172が調整可能に取り付けられ,このランプ取り付けベース172には,それぞれ先端部をランプハウジング170内に突入させるヘッドランプ38,補助ヘッドランプ173及びウインカランプ39が装着される。その際,特に,補助ヘッドランプ173は,ヘッドランプ38の外側に配置されて,照射方向が車両の外側方下向きに設定される。
【0083】
一方,車体シェルSの左右の側壁の下部には,図1及び図23に示すように,乗降口63とランプハウジング170との中間部において下窓174が設けられ,乗り手Rがキャビン30から,この下窓174を通して自転車Bの前部の左右外側方の路面を見ることができるようになっており,前記補助ヘッドランプ173は,この下窓174の外に広がる視界を照らすことになる。この下窓174をキャビン30側で開閉し得る透明のリッド175が車体シェルSに軸支される。
【0084】
このように,乗り手Rはサドル15に腰掛けたまゝで,下窓174及び透明のリッド175を通して,自車の前部外側方の路面状況を確認することができ,また夜間でも,補助ヘッドランプ173の点灯により,下窓174の外の視界が照し出されるので,上記路面状況を確認することができる。したがって,乗り手Rの死角が減少し,安心運転に寄与し得る。リッド175を開放すれば,下窓174から外気をキャビン30に導入することができる。
【0085】
またヘッドランプ38,補助ヘッドランプ173及びウインカランプ39が共通のランプハウジング170に配設されることで,補助ヘッドランプ173の新設によるも,照明装置の簡素化を図ることができる。
【0086】
車体シェルSの後部には,図1及び図4に示すように,中央部にテイルランプ176,左右両側部にウインカランプ40,40がそれぞれ装備される。
【0087】
本発明は,上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えばダンパ79は,前記ゴム式に代えて,ばね式,油圧式等,種々の形式のものと置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例に係る三輪型自転車の側面図。
【図2】同自転車の平面図。
【図3】同自転車の拡大正面図。
【図4】同自転車の拡大背面図。
【図5】同自転車を,車体シェルを取り外した状態で示す側面図。
【図6】同自転車を,車体シェルを取り外した状態で示す平面図。
【図7】図1の7−7線断面図。
【図8】図1の8−8線拡大断面図。
【図9】図2中のルーフ部の拡大図。
【図10】図9の10−10線断面図。
【図11】図9の11部拡大図。
【図12】図11の12−12線断面図。
【図13】図9の13−13線拡大断面図。
【図14】図13の14−14線断面図。
【図15】図5中の後輪及びサドル周辺部の拡大図。
【図16】図15の16−16線断面図。
【図17】図15の17−17線断面図。
【図18】図16の18−18線拡大断面図。
【図19】同自転車の伝動装置を示す平面図。
【図20】図19中のクラッチをオン状態で示す拡大縦断面図。
【図21】図20の21−21線拡大断面図。
【図22】同クラッチのオフ状態を示す,図20との対応図。
【図23】図1の23−23線拡大断面図。
【符号の説明】
【0089】
B・・・・・三輪型自転車
D・・・・・駆動ユニット
F・・・・・車体フレーム
M・・・・・伝動装置
R・・・・・乗り手
S・・・・・車体シェル
10f・・・前輪
10r・・・後輪
14・・・・スイングアーム組立体
15・・・・サドル
16・・・・ペダル
17・・・・クランク軸
30・・・・キャビン
42・・・・チェーン伝動機構(第2チェーン伝動機構)
43・・・・チェーン伝動機構(第3チェーン伝動機構)
45・・・・変速機
45a・・・入力軸
45b・・・出力軸
47・・・・回転車軸
59・・・・発電・電動機
59・・・・ロータ軸
78・・・・枢軸
79・・・・ダンパ
【技術分野】
【0001】
本発明は,左右一対の後輪の前方に,且つこれら後輪の上面より下方に配置されるサドルと,このサドルの前方に配置されるペダル付きクランク軸とを車体フレームに支持し,クランク軸及び後輪間を連結する伝動装置に発電・電動機のロータ軸を連結し,前輪,後輪及びサドルを覆って乗り手を収容するキャビンを画成する車体シェルを車体フレームに取り付けた三輪型自転車の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる三輪型自転車は,下記特許文献1に開示されるように,既に知られている。
【特許文献1】特開2004−276755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かゝる三輪型自転車では,走行時の空気抵抗を極力少なくするために,車体シェルを流線型に形成しながら,その前後方向の投影面積を小さくすることが望まれる。しかしながら,車体シェルの前後方向の投影面積を小さくすべく,車体シェルの横幅を狭く設定すると,左右の後輪間のトレッドを充分大きく設定することが困難になる。特に,特許文献1に開示されるように,各後輪を,その両側に一対の脚部を配するリアフォークにより支持するものでは,そのリアフォークの外側の脚部に邪魔されて後輪を車体シェルの内側面に近接させることができないことから,後輪間のトレッドを大きく設定することは一層困難である。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,限られた横幅の車体シェル内で左右の後輪間のトレッドを最大に設定することを可能にすると共に,左右の後輪間のスペースを有効に利用して発電・電動機の設置を可能にする前記三輪型自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために,本発明は,左右一対の後輪の前方に,且つこれら後輪の上面より下方に配置されるサドルと,このサドルの前方に配置されるペダル付きクランク軸とを車体フレームに支持し,クランク軸及び後輪間を連結する伝動装置に発電・電動機のロータ軸を連結し,前輪,後輪及びサドルを覆って乗り手を収容するキャビンを画成する車体シェルを車体フレームに取り付けた三輪型自転車において,車体フレームに枢軸を介して上下揺動可能に支持される左右一対のスイングアームの後端部相互を門形のクロスパイプを介して一体に結合してスイングアーム組立体を構成すると共に,このスイングアーム組立体及び車体フレーム間に,スイングアーム組立体の上下揺動を緩衝するダンパを介装し,一方のスイングアームの後端部に,その外側に隣接配置されて車体シェルの内側面に近接する一方の後輪を回転自在に軸支し,他方のスイングアームの後端部に前記伝動装置に連結される回転車軸を回転自在に支承すると共に,この回転車軸に,該他方のスイングアームの外側に隣接配置されて車体シェルの内側面に近接する他方の後輪を結合し,また前記回転車軸にロータ軸を連結する発電・電動機を前記クロスパイプに取り付けると共に,その門形の内側に配置したことを第1の特徴とする。
【0006】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記枢軸を,相互に間隔を存して左右一対配設し,これら枢軸間に,車体フレームに支持される変速機の入力軸及び出力軸を同軸状に配置し,その入力軸を前記クランク軸に,また出力軸を前記ロータ軸にそれぞれチェーン伝動機構を介して連結したことを第2の特徴とする。
【0007】
さらに本発明は,第1又は第2の特徴に加えて,前記ロータ軸及び回転車軸との間に,その間を任意に連結,遮断し得るクラッチを介装し,このクラッチも前記クロスパイプに取り付けると共に,その門形の内側に配置したことを第3の特徴とする。
【0008】
尚,前記クロスパイプは,本発明の後述する実施例中の後部クロスパイプ92に対応する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1の特徴によれば,左右のスイングアームの外側でそれらに片持ち支持される左右の後輪は,他物に干渉されることなく,車体シェルの左右内側面に近接させることができるので,車体シェルの限られた横幅内で両後輪間のトレッドを最大限に広げることができて,三輪型自転車の安定性の向上に寄与し得る。しかも左右のスイングアームの後端部間をクロスパイプで一体に連結してなるスイングアーム組立体は,枢軸を介して車体フレームに上下揺動可能に連結すると共に,このスイングアーム組立体及び車体フレーム間にダンパを介装し,スイングアーム組立体の上下揺動をダンパにより緩衝するようにしたので,乗り手に良好な乗り心地を与えることができる。
【0010】
また前記クロスパイプを門形に形成して,回転車軸にロータ軸を連結する発電・電動機をこのクロスパイプに取り付けると共に,その門形の内側に配置したことで,スイングアーム組立体,左右の後輪及び発電・電動機によりコンパクトな駆動ユニットを構成することができる。しかもこの駆動ユニットは,車体フレーム側とは別個に組み立てが可能であり,その組み立て後に枢軸を介して車体フレームに連結すればよいから,三輪型自転車の組み立て能率を高めることができる。
【0011】
その際,クロスパイプの門形の内側に発電・電動機を配置することで,発電・電動機とクロスパイプとの干渉を回避することができ,上記駆動ユニットのコンパクト化に寄与し得る。
【0012】
また本発明の第2の特徴によれば,変速機の入,出力軸がスイングアーム組立体の左右の枢軸間でそれらと同軸状に並ぶので,スイングアーム組立体の枢軸周りの揺動時でも,変速機の入,出力軸にそれぞれ連結されるチェーン伝動機構のチェーンに伸縮が生じないから,それらの耐久性の向上を図ることができる。
【0013】
さらに本発明の第3の特徴によれば,クラッチをオフ状態にするときは,停車状態を維持したまゝ,ペダルから発電・電動機を駆動して発電・電動機を発電機として機能させ,それに伴なう負荷によって乗り手の体力増進を図ることができる。したがって,この自転車は,自宅の車庫や庭先など設置場所を選ばず,体力増進のための定置型トレーニング装置として使用することができる。またクラッチをオン状態にすると,乗り手のペダル駆動による自転車の走行時,発電・電動機を電動機として機能させ,ペダルの駆動力をアシストすることができる。
【0014】
しかも上記クラッチも,発電・電動機と同様に,前記クロスパイプに,その門形の内側で支持されるので,これを前記駆動ユニットにコンパクトに組み込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を,図面に示す本発明の好適な実施例に基づき以下に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例に係る三輪型自転車の側面図,図2は同自転車の平面図,図3は同自転車の拡大正面図,図4は同自転車の拡大背面図,図5は同自転車を,車体シェルを取り外した状態で示す側面図,図6は同じく同自転車を,車体シェルを取り外した状態で示す平面図,図7は図1の7−7線断面図,図8は図1の8−8線拡大断面図,図9は図2中のルーフ部の拡大図,図10は図9の10−10線断面図,図11は図9の11部拡大図,図12は図11の12−12線断面図,図13は図9の13−13線拡大断面図,図14は図13の14−14線断面図,図15は図5中の後輪及びサドル周辺部の拡大図,図16は図15の16−16線断面図,図17は図15の17−17線断面図,図18は図16の18−18線拡大断面図,図19は同自転車の伝動装置を示す平面図,図20は図19中のクラッチをオン状態で示す拡大縦断面図,図21は図20の21−21線断面図,図22は同クラッチのオフ状態を示す,図20との対応図,図23は図1の23−23線断面図である。
【0017】
先ず,図5及び図6において,三輪型自転車Bの車体フレームFは,前部ヘッドパイプ1と,この前部ヘッドパイプ1から斜め下向きに延び,そして後方へ水平に延びるメインフレーム2と,前部ヘッドパイプ1からメインフレーム2の上方へ斜め後方に突出するハンドル支持パイプ3と,このハンドル支持パイプ3及びメインフレーム2間を連結する第1ステー4と,ハンドル支持パイプ3の後端部に固設される後部ヘッドパイプ5と,第1ステー4及びメインフレーム2間を連結する第2ステー6と,メインフレーム2の後端に直交して連結して水平に延びるメインクロスメンバ7と,このメインクロスメンバ7の左右両側部から立ち上がった後,後方へ水平に延びて後端で閉じるリアフレーム9とで構成される。
【0018】
前部ヘッドパイプ1では,前輪10fを支持するフロントフォーク11の上端に一体に突設されたフォークステム11aが回転自在に支承され,後部ヘッドパイプ5では,操向ハンドル12に結合されたハンドルステム12aが回転自在に支承される。そしてフォークステム11aの上端部と,ハンドルステム12aの下端部とは平行リンク機構13を介して連結され,操向ハンドル12の回動をフロントフォーク11に同期して伝達し得るようになっている。
【0019】
メインクロスメンバ7には,リアフレーム9の下方且つ左右両側に配置される一対の後輪10r,10rを支持するスイングアーム組立体14が上下揺動可能に連結される。
【0020】
図15に示すように,メインフレーム2には,左右の後輪10r,10rの前方且つそれらの上面より低い位置を占める背当て15a付きのサドル15がサドルレール65を介して取り付けられる。このサドル15は,左右の後輪10r,10rの前方且つそれらの上面より低い位置に配置される。このサドル15の前方において,左右一対のペダル16,16を備えたクランク軸17がメインフレーム2に回転自在に支承される。
【0021】
サドル15は,前方上向きに傾斜配置されるサドルレール65上で前後方向調節可能に支持される。サドルレール65の後端部下面には取り付けボス66が,またその前端部下面にはステー67が設けられており,その取り付けボス66は,メインフレーム2の上面に立設される後部ブラケット68に枢軸70を介して回動可能に支持され,ステー67は,メインフレーム2の上面に立設される前部ブラケット69にボルト71によって上下方向の複数段階調節可能に連結される。したがって,サドル15は,乗り手Rの体格に応じて前後方向及び上下方向に位置調節が可能である。
【0022】
図1〜図5及び図7に示すように,車体フレームFには,前輪10f,後輪10r,10r及びサドル15等を上方から覆う合成樹脂(例えば,再生利用が可能なABS)製の車体シェルSが取り付けられ,その内部は,乗り手Rを収容するキャビン30となる。この車体シェルS内において,前輪10fを覆う合成樹脂製のフロントフェンダ31と,左右の後輪10r,10r及びリアフレーム9を覆う合成樹脂製のリアフェンダ32が車体フレームFに取り付けられる。
【0023】
車体シェルSは,下面を開放した流線型をなしており,その左右両側壁には,それぞれドア64,64によって開閉された乗降口63,63が設けられる。また車体シェルSの前部及び後部には,フロントガラス33及びリアガラス34がそれぞれ嵌め込まれるフロントウインド35及びリアウインド36が設けられ,フロントガラス33の外面を払拭するワイパ37が車体シェルSに取り付けられる。
【0024】
図8に示すように,車体フレームFへの車体シェルSの取り付けのために,前部ヘッドパイプ1には,その左右外側方に突出した支持杆20(図6参照)が固設され,この支持杆20は,その両端に前部連結部材21,21を備えている。また前記メインクロスメンバ7の左右両端には後部連結部材25,25が設けられる。そして前部連結部材21,21には,車体シェルS前部の左右内壁固設された前部連結部材22,22が中間部材23を挟んでボルト結合され,また後部連結部材25,25には,車体シェルS後部の左右内壁固設された後部連結部材26,26が中間部材27を挟んでボルト28により結合され,こうして車体シェルSは車体フレームFに取り付けられる。尚,前記中間部材23,27を弾性部材で構成すれば,車体フレームF及び車体シェルS間の振動をこれら中間部材23,27に吸収させることができる。
【0025】
図6,図15及び図17において,前記リアフレーム9周りの構造について説明する。
【0026】
リアフレーム9は,メインクロスメンバ7の左右両側部から立ち上がると共に斜め後方に延びる2本の傾斜部9aと,これら傾斜部9aの後端から後方へ水平に延びて後端で閉じるコ字状の水平部9bと,この水平部9bの左右両側部間を連結する横クロスメンバ9cと,この横クロスメンバ9cと水平部9bの後側部との間を連結する縦クロスメンバ9dとで構成され,特に,その縦クロスメンバ9dは,上面を開放したチャンネル材で構成される。このリアフレーム9は,平面視では(図6参照)左右の後輪10r,10r間を通り,側面視では(図15参照)後輪10rの前部及び上部を通るように配置される。このリアフレーム9の傾斜部9aから水平部9bに亙り,その上面に前記リアフェンダ32が取り付けられる。このリアフェンダ32は,左右両側縁及び後縁を車体シェルSの内面に接し,若しくは近接して,左右の後輪10r,10rを覆うように合成樹脂により成形されるもので,その際,その水平部は,周縁に囲い壁73aを起立させた荷台73に形成される。
【0027】
またリアフレーム9の水平部9bの下面には,縦クロスメンバ9dを挟んで二枚の取り付け板74a,74bが固着され,一方の取り付け板74aの下面にはバッテリ60が,また他方の取り付け板74bの下面には制御回路ユニット61がそれぞれ取り付けられる。その制御回路ユニット61は,上記バッテリ60と,スイングアーム組立体14に支持される発電・電動機59との間の通電等を制御するものであり,これらバッテリ60及び制御回路ユニット61と発電・電動機59との間を接続するワイヤハーネス75(z17参照)がチャンネル状の縦クロスメンバ9d内に配線される。
【0028】
こうしてリアフレーム9の水平部9bの下面にバッテリ60及び制御回路ユニット61を取り付けることにより,それらの設置に左右の後輪10r,10r間のデッドスペースを有効に利用することができ,したがってバッテリ60及び制御回路ユニット61の設置による三輪型自転車Bの大型化を回避することができる。しかもバッテリ60及び制御回路ユニット61は,リアフレーム9の上面に取り付けられるリアフェンダ32によって覆われることになるから,外観を良好にすることができる。しかもリアフレーム9は,左右の後輪10r,10rを支持するスイングアーム組立体14の上下揺動の影響を受けないから,バッテリ60及び制御回路ユニット61は後輪10r,10rの上下振動を回避することができ,それらの耐久性能の向上を図ることができる。
【0029】
また合成樹脂製のリアフェンダ32には,その水平部を利用して荷台73が一体に成形されるので,リアフェンダ32及び荷台73を一部品とすることができ,部品点数及び組立工数の減少をもたらし,コスト低減に寄与し得る。そして乗り手Rはサドル15に腰掛けたまゝで荷台73への荷物の積み卸しを容易に行うことができる。
【0030】
しかもリアフェンダ32及び荷台73間には継ぎ目が無いから,後輪10r,10rから荷台73への泥の跳ね上がりを確実に防ぐことができる。さらに荷台73は,車体シェルSにより囲まれるため,荷台73からの荷物の脱落を車体シェルSにより防ぐことができる。
【0031】
図15〜図18により前記スイングアーム組立体14周りの構造について説明する。
【0032】
前記メインクロスメンバ7には,その後方に突出する左右一対の支持腕77,77が溶接されており,これら支持腕77,77に同軸状に並ぶ左右一対の枢軸78,78を介してスイングアーム組立体14が上下揺動自在に連結され,このスイングアーム組立体14とリアフレーム9との間に,スイングアーム組立体14の上下揺動を緩衝する左右一対のダンパ79,79が介装される。
【0033】
スイングアーム組立体14は,車体フレームFの前記一対の支持腕77,77に枢軸78,78を介して前端部を連結される左右一対のスイングアーム90,90と,この両スイングアーム90,90の中間部を相互に一体に連結する前部クロスパイプ91と,両スイングアーム90,90の後端部を相互に一体に連結する後部クロスパイプ92とで構成される。その一方のスイングアーム90(図示例では右方のスイングアーム)の後端部に固着された固定車軸44には,該スイングアーム90の外側に隣接配置されて車体シェルSの内側面に近接する一方の後輪10rのハブが回転自在に支承される。
【0034】
また他方のスイングアーム90(図示例では左方のスイングアーム)の後端部には,前記固定車軸44と同軸上に配置される回転車軸47が回転自在に支承され,該スイングアーム90の外側に隣接配置されて車体シェルSの内側面に近接する他方の後輪10rのハブがこの回転車軸47の外端部に結合される。こうして,左右の後輪10r,10rはスイングアーム組立体14に片持ち式に支持される。したがって,左右の後輪10r,10rは,他物に干渉されることなく,車体シェルSの左右内側面に近接させることができるので,車体シェルSの限られた横幅内で両後輪10r,10r間のトレッドを最大限に広げることができて,三輪型自転車Bの安定性の向上に寄与し得る。
【0035】
スイングアーム組立体14において,後部クロスパイプ92は,左右のスイングアーム90,90の後端部上面から立ち上がった門形をなしており,それの水平部と前部クロスパイプ91とに3本のブラケット95,95,95が橋渡されて溶接され,固定車軸44側の2本のブラケット95,95に前記発電・電動機59が取り付けられ,回転車軸47側の残る1本のブラケット95に後述するクラッチ46のクラッチベース163が固着される。その際,発電・電動機59及びクラッチ46は,門形の後部クロスパイプ92の内側に受け入れられながら,固定車軸44及び回転車軸47間,即ち左右の後輪10r,10r間でそれらと同軸状に配置される。
【0036】
而して,上記スイングアーム組立体14,左右の後輪10r,10r及び発電・電動機59及びクラッチ46により駆動ユニットDが構成される。しかもこの駆動ユニットDは,左右の後輪10r,10r,クラッチ46及び発電・電動機59の同軸配置によりコンパクトに構成される。
【0037】
またスイングアーム組立体14は,左右のスイングアーム90,90間を前部及び後部クロスパイプ91,92により連結して構成されるので,剛性が高く,左右の後輪10r,10rを強固に支持することができる。さらに後部クロスパイプ92を門形にすることで,この後部クロスパイプ92とクラッチ46及び発電・電動機59との干渉を回避することができ,これが駆動ユニットDのコンパクト化をもたらすのである。
【0038】
またこの駆動ユニットDは,車体フレームF側とは別個に組み立てが可能であり,その組み立て後に左右の枢軸78,78を介して車体フレームFに連結すればよいから,三輪型自転車Bの組み立て能率を高めることができる。
【0039】
図18において,前記左右のダンパ79,79は同一の構成である。各ダンパ79は,ダンパゴム97と,このダンパゴム97の前端面に焼き付けられた取り付け98と,ダンパゴム97の後端面に焼き付けられたフランジ99aを前端に備えたロッド99と,このロッド99に螺合される調整ナット100と,ロッド99の外周に摺動可能に嵌合して,先端を調整ナット100に当接させる有底円筒状の支持筒101とからなっており,取り付け98は,前記リアフレーム9の左右の基端部に溶接された前部ブラケット103aにボルト102により固着され,支持筒101は,その後端に突設されたボルト104,それに螺合されるナット105とにより,スイングアーム90に溶接された後部ブラケット103bに着脱可能に固着される。その際,支持筒101の先端を受け止める調整ナット100の,ロッド99に対する螺合位置を調節することにより,ダンパ79の有効長さが調整される。
【0040】
而して,スイングアーム組立体14が左右の後輪10r,10rと共に枢軸78,78周りに上下に揺動すれば,ダンパゴム97が取り付け98及びフランジ99a間で圧縮されたり,伸ばされたりすることで,そのスイングアーム組立体14の上下揺動を緩衝することができ,サドル15に座る乗り手Rに良好な乗り心地を与える。
【0041】
再び図1〜図4において,合成樹脂製の車体シェルSは,小規模の成形設備による成形を可能にするために複数の部分に分割され,成形後,ねじや接着剤等により結合される。具体的には,車体シェルSは,それぞれ乗降口63を有する左右のサイドパネル110,110と,これら左右のサイドパネル110,110の上端部間を連結するルーフパネル111と,左右のサイドパネル110,110の前端部間を接続するフロントパネル112と,左右のサイドパネル110,110の後端部間を接続するリアパネル113とに分割して成形される。
【0042】
またフロントパネル112及びリアパネル113は,それぞれ上下に二分割され,特に,それぞれの下半部112a,113aは着脱可能に構成される。而して,それら下方部分112a,113aを取り外せば,前輪10f及び後輪10rを露出させることができるから,前輪10f及び後輪10r,10rのパンク修理や後述のフロントブレーキ80及びリアブレーキ81の調整など,前輪10f及び後輪10r,10r周りのメンテナンス作業を,車体シェルSに邪魔されることなく容易に行うことができる。その上,上記下方部分112a,113aは,車体の前端及び後端に位置していて,他物との接触により損傷し易いものであるが,損傷時には,該下方部分112a,113aのみの新規部品との交換で補修し得るから,補修作業が容易であり,補修コストを低く抑えることができる。
【0043】
こゝで図9及び図10を参照しながら,左右の前記サイドパネル110,110及びルーフパネル111の接続構造について説明する。
【0044】
左右のサイドパネル110,110の上端部及びルーフパネル111の左右両端部には上面を開放した第1及び第2溝状部114,115がそれぞれ形成され,相隣る第1溝状部114上に第2溝状部115がシール剤を介して重ねられ,そして複数のビス116,116…により相互に接合される。その接合後,上側の第2溝状部115には合成樹脂製のモール117が嵌め込まれ,接着等により固着される。このモール117は,第2溝状部115の外方に突出して,ルーフパネル111の上面との間に前後方向に延びる樋溝118を画成するように形成されている。
【0045】
而して,互いに接合された第1及び第2溝状部114,115は,サイドパネル110及びルーフパネル111間を水密に接続するのみなず,車体シェルSの内側に隆起した厚肉の補強リブ119を構成するものであり,これによって車体シェルSの剛性を効果的に強化することができる。
【0046】
また上側の第2溝状部115に嵌め込まれるモール117は,その第2溝状部115及びビス116,116…の頭部を覆い隠して車体シェルSの外観を良好にすることができる。
【0047】
モール117は,さらに,ルーフパネル111と協働して,サイドパネル110の乗降口63の上方を前後方向に走る樋溝118を画成するので,特別な雨樋を設けずとも,雨天時には,ルーフパネル111に降った雨水を上記樋溝118に沿ってルーフパネル111の前後方向に流下させることになり,ドア64やドア64の窓の開放時,ルーフパネル111から乗降口63や窓への雨水の滴下を防ぐことができる。
【0048】
第1及び第2溝状部114,115を重ねる際,ルーフパネル111側の第2溝状部115を上側にすることは,万一,両溝状部114,115間のシール不良が生じた場合でも,ルーフパネル111上に降った雨水が両溝状部114,115間に浸入することを防ぐ上に有効である。
【0049】
図9〜図12において,ルーフパネル111の上面には,可及的広い範囲において内外2段の浅い凹部121,122が形成されており,その内側の凹部121に前記バッテリ60に充電し得るパネル状の太陽電池123が収納され,外側の凹部122には,太陽電池123に重ねてそれを覆う,例えばアクリル製の透明の保護カバー124が収納され,この保護カバー124は複数のビス125,125…によってルーフパネル111に固定される。上記内外2段の凹部121,122は,それぞれ太陽電池123及び保護カバー124の厚みに対応する深さに形成されていて,外側の凹部122に嵌め込まれた保護カバー124の上面はルーフパネル111の上面に略連続するようになっている。尚,太陽電池123の後端には,車体シェルSの内壁に配線されるリード線が接続されるが,図には省略されている。
【0050】
ルーフパネル111には,内側の凹部121の前後左右の四隅を,その凹部121より低いルーフパネル111の外面にそれぞれ連通させるドレン溝126,126…が形成される。具体的には,各ドレン溝126は,これを図9及び図11の実線示のように外側方に延ばして前記樋溝118に連通させ,若しくは前後方向に延ばしてフロントウインド35又はリアウインド36の上縁部に連通させる。各ドレン溝126は,下流端に向かって漸次浅くなっており,その下流端では溝底がルーフパネル111の一般外面に連続している(図11及び図12参照)。
【0051】
而して,外側の凹部122に収容される透明の保護カバー124は,内側の凹部121に収容される太陽電池123を完全に覆うことができるので,太陽電池123の受光を妨げることなく,飛石等の落下物による太陽電池123の損傷を確実に防ぐことができる。しかも保護カバー124は,ルーフパネル111の上面と滑らかに連続するので,太陽電池123及び保護カバー124による車体シェルSの空気抵抗の増加を回避することができる。
【0052】
また雨天時,内外の凹部121,122に雨水が浸入しても,その雨水は,四隅のドレン溝126,126…から外部に自然に流出する。特に,各ドレン溝126は,下流端に向かって漸次浅くなり,下流端で溝底が車体シェルSの外面に連続するので,ドレン溝126からの排水は確実で雨水が溜まることはない。しかも晴天時には,ドレン溝126,126…を通して凹部121,122内が走行風等により自然に換気されるので,太陽電池123の表面及び保護カバー124内面の曇りを防ぎ,太陽電池123の受光効率の低下を防ぐことができる。
【0053】
さらに保護カバー124は,外側の凹部122で複数のビス125,125…によってルーフパネル111に固定されて,太陽電池123を保持するので,保護カバー124の固定手段による太陽電池123の受光面積の減少を回避することができる。
【0054】
図9,図13及び図14において,ルーフパネル111の前端部上面には台座130が形成され,これに風速センサ131が取り付けられる。この風速センサ131は,台座130にビス132で固着されるセンサベース133と,このセンサベース133に回転自在に支持される回転軸134aを有するインペラ134と,センサベース133から起立する支柱133aに固着されてインペラ134を覆うカバー135とを備える。センサベース133には検出室136が設けられており,回転軸134aに固着される永久磁石137と,この永久磁石137に対置されるホール素子138とが収容され,インペラ134の回転数をホール素子138により電気信号として検出するようになっている。ホール素子138で検出された信号は前記制御回路ユニット61に入力される。制御回路ユニット61では,その入力信号を風速に変換して,操向ハンドル12に付設される操作パネル19(図4参照)の風速表示部140に風速を表示すると共に,所定風速以上の強風時には,操作パネル19等の適所に設けられた警報ブザー150を作動するようになっている。
【0055】
また制御回路ユニット61には,風速センサ131の発生信号と並行して,自転車Bの走行速度を検出する車速センサ151の検出信号が入力される。制御回路ユニット61では,その車速から自転車Bの発車状態を判別したとき,風速表示部140への表示及び警報ブザー150の作動を停止するようになっている。
【0056】
このように,風速センサ131は,車体シェルSのルーフ部に設置されるので,車体シェルSに影響されることなく外部の風速を正確に検知し得る。そしてキャビン30では,乗り手Rが発進前に操作パネル19の風速表示部140から風速を正確に知ることができ,しかも所定風速以上の強風時には,警報ブザー150の作動によりその状態を知ることができるので,その状況を安全運転に活かすことができる。
【0057】
しかも背当て15a付きのサドル15を,前輪10f及び後輪10r,10r間で,後輪10r,10rの上面よりも低い位置に配置したことで,乗り手Rの乗車姿勢を効果的に低くすることができ,これに伴い流線型の車体シェルSの全高を充分低くすることが可能になり,走行中,風の影響を極力少なくすることができる。
【0058】
また自転車Bが走行状態になると,風速センサ131は,走行風の影響を受けて,正確な風速を検知できなくなるが,この場合,制御回路ユニット61によって風速表示部140への表示及び警報ブザー150の作動が停止されるので,走行風の影響による風速表示部140及び警報ブザー150の誤作動を防ぐことができる。
【0059】
図5及び図19において,前記クランク軸17と一方の後輪10rのハブとは伝動装置Mによって連結される。この伝動装置Mについて説明する。
【0060】
伝動装置Mは,クランク軸17側から第1チェーン伝動機構41,第2チェーン伝動機構42,フリーホイール付きの多段変速機45,第3チェーン伝動機構43,駆動軸48,発電・電動機59,クラッチ46及び回転車軸47を順次連ねて構成される。
【0061】
第1チェーン伝動機構41は,クランク軸17に固設した第1駆動スプロケット50と,メインフレーム2に回転自在に軸支される第1被動スプロケット50′とに第1チェーン51を巻き掛けて構成される。メインフレーム2には,第1チェーン51の緊張度合いから,クランク軸17に作用する負荷,即ちペダル負荷を検知するペダル負荷センサ58が取り付けられる。
【0062】
第2チェーン伝動機構42は,第1被動スプロケット50′に隣接して前記伝動軸59に固設した第2駆動スプロケット52と,変速機45の入力軸45aに固設した第2被動スプロケット52′とに第2チェーン53を巻き掛けて構成される。
【0063】
変速機45は,その入力軸45aから出力軸45b側への一方向へのみ伝動を可能にするフリーホイールとを内蔵している。そのフリーホイールはクランク軸17への逆負荷を遮断するものであるから,第1チェーン伝動機構41又は第2チェーン伝動機構42に設けることもできる。
【0064】
変速機45の出力軸45bには第3駆動スプロケット55が固設される。また発電・電動機59のロータ軸59aにはジョイント57を介して駆動軸48が連結され,この駆動軸48に第3被動スプロケット55′が固設される。これら第3駆動スプロケット55及び第3被動スプロケット55′に第3チェーン56を巻き掛けて,前記第3チェーン伝動機構43が構成される。その第3被動スプロケット55′の出力側では,駆動軸48及び回転車軸47間を連結,遮断し得る前記クラッチ46が設けられる。
【0065】
変速機45は,図16に示すように,車体フレームFのメインクロスメンバ7に左右のブラケット153,153を介して支持されると共に,スイングアーム組立体14の左右の枢軸78,78間に,それらと入,出力軸45a,45bが同軸状に並ぶように配置される。したがって,スイングアーム組立体14の枢軸78,78周りの揺動時でも,変速機45の入力軸45a及び出力軸45bにそれぞれ連結される第2及び第3チェーン伝動機構42,43のチェーン53,56に伸縮が生じないから,それらの耐久性の向上を図ることができる。
【0066】
続いて図19により,自転車Bのブレーキ装置について説明する。
【0067】
前輪10fには,これを制動するキャリパ式のフロントブレーキ80が,また従動側の後輪10rには,これを制動するドラム式のリアブレーキ81がそれぞれ設けられる。フロントブレーキ80の作動部には,操向ハンドル12に右グリップに隣接して取り付けられたフロントブレーキレバー82と,メインフレーム2の前部に取り付けられたパーキングレバー83とが,フロントブレーキワイヤ84及びパーキングワイヤ85をそれぞれ介して接続される。したがって,フロントブレーキレバー82及びパーキングレバー83の何れか一方を操作することにより,フロントブレーキ80を作動することができる。
【0068】
またリアブレーキ81の作動部には,操向ハンドル12に左グリップに隣接して取り付けられたリアブレーキレバー86にリアブレーキワイヤ88を介して接続される。したがって,リアブレーキレバー86を操作することによりリアブレーキ81を作動することができる。尚,図8中,符号89は変速機45の切り換えのためのシフトレバーである。
【0069】
次に前記伝動装置M中のクラッチ46について,図20〜図22により説明する。
【0070】
クラッチ46は,前記駆動軸48に摺動可能にスプライン嵌合される駆動ドグクラッチ部材155と,前記回転車軸47に固着されて駆動ドグクラッチ部材155と対置される被動ドグクラッチ部材156と,駆動軸48に固着されたリテーナ157と駆動ドグクラッチ部材155との間に縮設されて駆動ドグクラッチ部材155を,被動ドグクラッチ部材156との係合方向に付勢するクラッチばね158とを備える。駆動ドグクラッチ部材155の,クラッチばね158側の端部外周にはフランジ155aが形成されている。
【0071】
一方,前記スイングアーム組立体14のブラケット95に固着されたクラッチベース163は,駆動軸48をベアリング154を介して支承する。また駆動軸48は,その先端部でベアリング164を介して被動ドグクラッチ部材156を支承する。
【0072】
クラッチベース163には,被動ドグクラッチ部材156を囲繞するレリーズフォーク159の基端がピボット軸160を介して連結され,このレリーズフォーク159にレリーズリング161が,同軸状に並ぶ一対のトラニオン162,162を介して揺動自在に連結される。このレリーズリング161は,前記駆動ドグクラッチ部材155を囲繞して,そのフランジ155aに面同士で当接するようになっている。
【0073】
レリーズフォーク159の先端部には,操向ハンドル12又はその近傍の車体フレームFに軸支されたクラッチレバー87(図19参照)に連なるクラッチワイヤ87aが接続される。
【0074】
而して,クラッチレバー87の不作動状態では,駆動ドグクラッチ部材155がクラッチばね158の付勢力により被動ドグクラッチ部材156との係合することで,クラッチ46は,駆動軸48及び回転車軸47間を連結するオン状態を保ち,クラッチレバー87を操作してクラッチワイヤ87aを牽引すると,レリーズフォーク159がレリーズリング161を介してフランジ155aを押圧し,駆動ドグクラッチ部材155を被動ドグクラッチ部材156から引き離することで,クラッチ46は,駆動軸48及び回転車軸47間を遮断するオフ状態となる。このクラッチ46のオフ状態では,自転車Bの停止状態で,乗り手Rによるクランク軸17の回転を発電・電動機59に伝達することにより,発電・電動機59を発電機として機能させることができる。
【0075】
ところで,クラッチ46のオフ状態では,レリーズフォーク159にトラニオン162,162を介して揺動自在に連結されるレリーズリング161は,駆動ドグクラッチ部材155のフランジ155aと面同士で当接することになるから,その当接部での面圧を低く抑えて,耐摩耗性を高めることができる。
【0076】
上記クラッチ46の入力側の回転部材,図示例では駆動軸48とクラッチベース163との間に車速センサ151が設けられる。この車速センサ151は,駆動軸48に,それと共に回転するよう結合されたパルスロータ165と,このパルスロータ165に対向してクラッチベース163に固着され,パルスロータ165の回転に応じてパスルを発生するピックアップコイル166とで構成され,このピックアップコイル166の発生パルスは前記制御回路ユニット61で車速に変換され,操向ハンドル12上の操作パネル19(図4参照)の車速表示部167に表示される。
【0077】
この三輪型自転車Bは,次のようなモードで使用される。
[電動アシスト走行]
先ずクラッチレバー72をオン位置にセットしてクラッチ46をオン状態にし,制御回路ユニット61をアシスト側に切り換えた状態で,乗り手Rがペダル16,16を漕いでクランク軸17を駆動すれば,その駆動力は,第1チェーン伝動機構41,第2チェーン伝動機構42,変速機45,第3チェーン伝動機構43,クラッチ46及び回転車軸47を順次経て後輪10rに伝達し,同時に発電・電動機59がペダル負荷に応じてバッテリ60から給電され,ペダル負荷に応じた動力を回転車軸47に与えるので,乗り手Rの負担を軽減するアシスト走行状態となる。
[体力増進走行トレーニング]
クラッチレバー72は,上記の場合と同様にオン位置にセットしてクラッチ46をオン状態にしておき,制御回路ユニット61を充電側に切り換えると,発電・電動機59は,逆負荷を受けると発電してバッテリ60に充電し得るようになる。そこで,乗り手Rがペダル16,16を漕いでクランク軸17を駆動すれば,その駆動力は,第1チェーン伝動機構41,第2チェーン伝動機構42,変速機45,第3チェーン伝動機構43,クラッチ46及び回転車軸47を順次経て後輪10rに伝達し,それを駆動すると同時に,上記駆動軸48の回転により発電・電動機59は発電状態となって,バッテリ60に充電する。その発電に伴い発生する負荷が乗り手Rのペダル負荷に加えられることで,乗り手Rは,自転車Bを走行させながら体力増進トレーニングを行い,同時にバッテリ60への充電を果たすことができる。この場合,操作パネル19に設けられたペダル負荷調節ダイヤル168を操作することにより,発電・電動機59からバッテリ60への充電量が増減制御することができ,それによってペダル負荷の強弱を自由に調節することができるので,乗り手Rの体力や疲労度などに応じてペダル負荷を自由に調節し,トレーニングを無理なく快適に行うことができる。
[体力増進定置トレーニング]
先ず,パーキングレバー83を作動してフロントブレーキ80を作動状態にすると共に,クラッチレバー72をオフ位置に操作してクラッチ46をオフ状態にし,また制御回路ユニット61を充電側に切り換えと,[体力増進走行トレーニング]の場合と同様に,発電・電動機59は,逆負荷を受けると発電してバッテリ60に充電し得るようになる。そこで,乗り手Rがペダル16,16を漕いでクランク軸17を駆動すれば,その駆動力は,第1チェーン伝動機構41,第2チェーン伝動機構42,変速機45及び第3チェーン伝動機構43を経て発電・電動機59に伝達されるが,クラッチ46のオフ状態により,回転車軸47への伝達は行われない。したがって後輪10rを停止したまゝで,クランク軸17の駆動により発電・電動機59を駆動することになるから,発電・電動機59は発電状態となって,バッテリ60に充電する。その発電に伴い発生する負荷が乗り手Rのペダル負荷に加えられることで,乗り手Rは体力増進トレーニングを行い,同時にバッテリ60への充電を果たすことができる。この場合も前記ペダル負荷調節ダイヤル168を操作することにより,発電・電動機59からバッテリ60への充電量を増減制御することができ,それによってペダル負荷の強弱を自由に調節することができるので,この場合も乗り手Rの体力や疲労度などに応じてペダル負荷を自由に調節し,トレーニングを無理なく快適に行うことができる。
【0078】
この場合,自転車Bは,パーキングレバー83の作動より定置状態に保持され,しかも前輪10fを一輪,後輪10rを二輪とした三輪車であって,特別なスタンド装置を用いることなく自立が可能であるから,自宅の車庫や庭先など設置場所を選ばず,体力増進のための定置型トレーニング装置として安全に使用することができ,しかも乗り手Rの運動エネルギはバッテリに充電される電力に変換されることになるから,エネルギの無駄がない。しかも,この三輪型自転車Bは乗り手Rを収容する車体シェルSを備えているから,天候の如何に拘らず,走行及びトレーリングを快適に行うことができる。
【0079】
また前述のように,車速センサ151は,クラッチ46の入力側の駆動軸48の回転速度を車速として検知するものであり,その車速は操作パネル19の車速表示部167に表示されるので,クラッチ46をオフ状態にして行う定置トレーリング中にも,クランク軸17の回転数に対応した車速が車速表示部167に表示されることになり,乗り手Rに疑似走行トレーリングを体験させ,トレーリングに興味を持たせることができる。
【0080】
尚,クラッチワイヤ87a及びパーキングワイヤ85を共通1本の操作レバーにより操作し得るようにすれば,クラッチ46をオフ状態にする定置トレーニングの際には,自動的にフロントブレーキ80が作動状態となり,操作の簡素化を図ることができる。
【0081】
最後に,車体シェルSに装備される照明装置について説明する。
【0082】
図1〜図3及び図23において,車体シェルSの前面の左右両側には前方に開口するランプハウジング170と,その前方開口部を覆うレンズ171とが固着される。ランプハウジング170の内面は反射面となっている。このランプハウジング170の背面にはランプ取り付けベース172が調整可能に取り付けられ,このランプ取り付けベース172には,それぞれ先端部をランプハウジング170内に突入させるヘッドランプ38,補助ヘッドランプ173及びウインカランプ39が装着される。その際,特に,補助ヘッドランプ173は,ヘッドランプ38の外側に配置されて,照射方向が車両の外側方下向きに設定される。
【0083】
一方,車体シェルSの左右の側壁の下部には,図1及び図23に示すように,乗降口63とランプハウジング170との中間部において下窓174が設けられ,乗り手Rがキャビン30から,この下窓174を通して自転車Bの前部の左右外側方の路面を見ることができるようになっており,前記補助ヘッドランプ173は,この下窓174の外に広がる視界を照らすことになる。この下窓174をキャビン30側で開閉し得る透明のリッド175が車体シェルSに軸支される。
【0084】
このように,乗り手Rはサドル15に腰掛けたまゝで,下窓174及び透明のリッド175を通して,自車の前部外側方の路面状況を確認することができ,また夜間でも,補助ヘッドランプ173の点灯により,下窓174の外の視界が照し出されるので,上記路面状況を確認することができる。したがって,乗り手Rの死角が減少し,安心運転に寄与し得る。リッド175を開放すれば,下窓174から外気をキャビン30に導入することができる。
【0085】
またヘッドランプ38,補助ヘッドランプ173及びウインカランプ39が共通のランプハウジング170に配設されることで,補助ヘッドランプ173の新設によるも,照明装置の簡素化を図ることができる。
【0086】
車体シェルSの後部には,図1及び図4に示すように,中央部にテイルランプ176,左右両側部にウインカランプ40,40がそれぞれ装備される。
【0087】
本発明は,上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えばダンパ79は,前記ゴム式に代えて,ばね式,油圧式等,種々の形式のものと置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施例に係る三輪型自転車の側面図。
【図2】同自転車の平面図。
【図3】同自転車の拡大正面図。
【図4】同自転車の拡大背面図。
【図5】同自転車を,車体シェルを取り外した状態で示す側面図。
【図6】同自転車を,車体シェルを取り外した状態で示す平面図。
【図7】図1の7−7線断面図。
【図8】図1の8−8線拡大断面図。
【図9】図2中のルーフ部の拡大図。
【図10】図9の10−10線断面図。
【図11】図9の11部拡大図。
【図12】図11の12−12線断面図。
【図13】図9の13−13線拡大断面図。
【図14】図13の14−14線断面図。
【図15】図5中の後輪及びサドル周辺部の拡大図。
【図16】図15の16−16線断面図。
【図17】図15の17−17線断面図。
【図18】図16の18−18線拡大断面図。
【図19】同自転車の伝動装置を示す平面図。
【図20】図19中のクラッチをオン状態で示す拡大縦断面図。
【図21】図20の21−21線拡大断面図。
【図22】同クラッチのオフ状態を示す,図20との対応図。
【図23】図1の23−23線拡大断面図。
【符号の説明】
【0089】
B・・・・・三輪型自転車
D・・・・・駆動ユニット
F・・・・・車体フレーム
M・・・・・伝動装置
R・・・・・乗り手
S・・・・・車体シェル
10f・・・前輪
10r・・・後輪
14・・・・スイングアーム組立体
15・・・・サドル
16・・・・ペダル
17・・・・クランク軸
30・・・・キャビン
42・・・・チェーン伝動機構(第2チェーン伝動機構)
43・・・・チェーン伝動機構(第3チェーン伝動機構)
45・・・・変速機
45a・・・入力軸
45b・・・出力軸
47・・・・回転車軸
59・・・・発電・電動機
59・・・・ロータ軸
78・・・・枢軸
79・・・・ダンパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の後輪(10r)の前方に,且つこれら後輪(10r)の上面より下方に配置されるサドル(15)と,このサドル(15)の前方に配置されるペダル(16)付きクランク軸(17)とを車体フレーム(F)に支持し,クランク軸(17)及び後輪(10r)間を連結する伝動装置(M)に発電・電動機(59)のロータ軸(59a)を連結し,前輪(10f),後輪(10r)及びサドル(15)を覆って乗り手(R)を収容するキャビン(30)を画成する車体シェル(S)を車体フレーム(F)に取り付けた三輪型自転車において,
車体フレーム(F)に枢軸(78)を介して上下揺動可能に支持される左右一対のスイングアーム(90)の後端部相互を門形のクロスパイプ(92)を介して一体に結合してスイングアーム組立体(14)を構成すると共に,このスイングアーム組立体(14)及び車体フレーム(F)間に,スイングアーム組立体(14)の上下揺動を緩衝するダンパ(79)を介装し,一方のスイングアーム(90)の後端部に,その外側に隣接配置されて車体シェル(S)の内側面に近接する一方の後輪(10r)を回転自在に軸支し,他方のスイングアーム(90)の後端部に前記伝動装置(M)に連結される回転車軸(47)を回転自在に支承すると共に,この回転車軸(47)に,該他方のスイングアーム(90)の外側に隣接配置されて車体シェル(S)の内側面に近接する他方の後輪(10r)を連結し,また前記回転車軸(47)にロータ軸(59a)を連結する発電・電動機(59)を前記クロスパイプ(92)に取り付けると共に,その門形の内側に配置したことを特徴とする三輪型自転車。
【請求項2】
請求項1記載の三輪型自転車において,
前記枢軸(78)を,相互に間隔を存して左右一対配設し,これら枢軸(78)間に,車体フレーム(F)に支持される変速機(45)の入力軸(45a)及び出力軸(45b)を同軸状に配置し,その入力軸(45a)を前記クランク軸(17)に,また出力軸(45b)を前記ロータ軸(59a)にそれぞれチェーン伝動機構(42,43)を介して連結したことを特徴とする三輪型自転車。
【請求項3】
請求項1又は2記載の三輪型自転車において,
前記ロータ軸(59a)及び回転車軸(47)との間に,その間を任意に連結,遮断し得るクラッチ(46)を介装し,このクラッチ(46)も前記クロスパイプ(92)に取り付けると共に,その門形の内側に配置したことを特徴とする三輪型自転車。
【請求項1】
左右一対の後輪(10r)の前方に,且つこれら後輪(10r)の上面より下方に配置されるサドル(15)と,このサドル(15)の前方に配置されるペダル(16)付きクランク軸(17)とを車体フレーム(F)に支持し,クランク軸(17)及び後輪(10r)間を連結する伝動装置(M)に発電・電動機(59)のロータ軸(59a)を連結し,前輪(10f),後輪(10r)及びサドル(15)を覆って乗り手(R)を収容するキャビン(30)を画成する車体シェル(S)を車体フレーム(F)に取り付けた三輪型自転車において,
車体フレーム(F)に枢軸(78)を介して上下揺動可能に支持される左右一対のスイングアーム(90)の後端部相互を門形のクロスパイプ(92)を介して一体に結合してスイングアーム組立体(14)を構成すると共に,このスイングアーム組立体(14)及び車体フレーム(F)間に,スイングアーム組立体(14)の上下揺動を緩衝するダンパ(79)を介装し,一方のスイングアーム(90)の後端部に,その外側に隣接配置されて車体シェル(S)の内側面に近接する一方の後輪(10r)を回転自在に軸支し,他方のスイングアーム(90)の後端部に前記伝動装置(M)に連結される回転車軸(47)を回転自在に支承すると共に,この回転車軸(47)に,該他方のスイングアーム(90)の外側に隣接配置されて車体シェル(S)の内側面に近接する他方の後輪(10r)を連結し,また前記回転車軸(47)にロータ軸(59a)を連結する発電・電動機(59)を前記クロスパイプ(92)に取り付けると共に,その門形の内側に配置したことを特徴とする三輪型自転車。
【請求項2】
請求項1記載の三輪型自転車において,
前記枢軸(78)を,相互に間隔を存して左右一対配設し,これら枢軸(78)間に,車体フレーム(F)に支持される変速機(45)の入力軸(45a)及び出力軸(45b)を同軸状に配置し,その入力軸(45a)を前記クランク軸(17)に,また出力軸(45b)を前記ロータ軸(59a)にそれぞれチェーン伝動機構(42,43)を介して連結したことを特徴とする三輪型自転車。
【請求項3】
請求項1又は2記載の三輪型自転車において,
前記ロータ軸(59a)及び回転車軸(47)との間に,その間を任意に連結,遮断し得るクラッチ(46)を介装し,このクラッチ(46)も前記クロスパイプ(92)に取り付けると共に,その門形の内側に配置したことを特徴とする三輪型自転車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2006−142863(P2006−142863A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−331947(P2004−331947)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000234627)シロウマサイエンス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000234627)シロウマサイエンス株式会社 (40)
【Fターム(参考)】
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