説明

上げ下げ式に移動可能な可動障子を備える開口部装置

【課題】簡易な構成で可動障子の不具合を感知し、可動障子の落下の発生を予防することができる上げ下げ障子を備える開口部装置を提供する。
【解決手段】一対の縦枠21、24、上横枠27及び下横枠28が枠状に組み合わされて形成される枠体20と、枠体の枠内に具備され、複数のワイヤ73、74を有して任意の位置に保持可能とされつつ、縦枠に沿って移動可能に設けられた少なくとも1つの可動障子30とを備え、縦枠には、その長手方向に沿ってガイド溝23p、26pが形成され、該ガイド溝の底部の一部には係合孔23g、26gが設けられ、可動障子には、ガイド溝の内側を移動可能であるとともに、係合孔に係合可能な大きさのガイド36、37、38、39が具備され、該ガイドの少なくとも1つ36、37は、係合孔の設けられたガイド溝の部位を移動の軌道に含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上げ下げ式に移動可能な可動障子を備える開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における建築物の多様化により、ここに用いられる窓、扉等の開口部装置も多種多様なものが提案されている。このような開口部装置の中に、障子を上げ下げして可動とし、開口部の開放、閉鎖を可能とするものがある。これによれば、上げ下げ可能に設けられた障子を、開放の姿勢で保持することにより、室内外を連通させることができる。
【0003】
上げ下げ可能な障子を開放の姿勢で保持するための手段にもいつくかの種類が提案されているが、ワイヤにより障子を吊ることにより、当該保持をするものがある。これによれば、障子を任意の位置に保持することが可能であり、利用者の利便性が高い。ワイヤをどのように用いるかに関してもいくつかの種類があり、例えば、バランサを用いたものや、室内外の2枚の障子をワイヤで連結してバランスをとりつつ連動させるもの等を挙げることができる。
【0004】
このような開口部装置においては、いずれの場合も、万が一ワイヤが切れたときには、吊られている障子が落下してしまう問題があった。このような問題を解消するために、例えば特許文献1には可動障子の落下防止機構が開示されている。当該落下防止機構は、該落下防止機構に備えられる爪等の作用により可動障子の下降を阻止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008‐223413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の落下防止機構によっても、ワイヤの切断が生じたときの可動障子の落下を防止させることは可能であるが、当該防止機構を追加して設置する必要があった。これに対してさらに簡易的に可動障子の落下を防止する手段が求められていた。
【0007】
ところで、このようなワイヤは、可動障子の左右に1つずつ、すなわち2つ備えられているのが通常である。そして、当該ワイヤが切れる場合には、はじめにいずれか一方が切れ、これに気がつかずに障子の上げ下げをしているうちに他方も切れてしまう態様が多い。ワイヤの一方が切れていても、上げ下げ障子はガイド溝によりガイドされているので、通常に操作することができるからである。
【0008】
従って、可動障子が落下する状態になる前に、ワイヤが1つ切れたときにできるだけ早くこれに気がついて対処できればよいといえる。これにより落下の発生そのものを防止することが可能となる。
【0009】
そこで本発明は、簡易な構成で可動障子の不具合を感知し、可動障子の落下の発生を予防することができる上げ下げ障子を備える開口部装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0011】
請求項1に記載の発明は、一対の縦枠(21、24)、上横枠(27)及び下横枠(28)が枠状に組み合わされて形成される枠体(20)と、枠体の枠内に具備され、複数のワイヤ(73、74)を有して任意の位置に保持可能とされつつ、縦枠に沿って移動可能に設けられた少なくとも1つの可動障子(30、50)と、を備える開口部装置(1)であって、少なくとも一方の縦枠には、その長手方向に沿ってガイド溝(23p、26p)が形成されるとともに、該ガイド溝の底部の一部には係合孔(23g、26g)が設けられ、可動障子には、ガイド溝の内側を移動可能であるとともに、係合孔に係合可能な大きさのガイド(36、37、38、39)が具備され、該ガイドの少なくとも1つ(36、37)は、係合孔の設けられたガイド溝の部位を移動の軌道に含む、開口部装置を提供することにより前記課題を解決する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の開口部装置(1)において、ガイド溝(23p、26p)の係合孔(23g、26g)は、縦枠(21、24)のうち開口部装置が建物に取り付けられた姿勢における上部に相当する部位に設けられ、係合孔に係合可能なガイド(36、37)が可動障子(30)の上端に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成で可動障子の不具合を感知し、可動障子の落下の発生を予防することができる上げ下げ障子を備える開口部装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】1つの実施形態に係る開口部装置の室内側正面図(図1(a))、及び室外側正面図(図1(b))ある。
【図2】図1に示した開口部装置の垂直方向断面図である。
【図3】図1に示した開口部装置の水平方向断面図である。
【図4】図1に示した開口部装置の係合孔が表れる他の水平方向断面図である。
【図5】図3、図4に示した断面図の一部を拡大して示した図である。
【図6】スイング縦枠のうち、係合孔が表れる面を正面とした外観図である。
【図7】上障子、並びに下障子の構成、及びにその移動について説明する図である。
【図8】開口部装置の不具合を感知するための機構について説明するための図で、図8(a)が正常時、図8(b)が不具合を生じたときの図である。
【図9】ガイドの形状例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0016】
図1は1つの実施形態にかかる開口部装置1を正面から見た図で、図1(a)が室内側から見た図、図1(b)は室外側から見た図である。
図2は、開口部装置1の垂直断面図であり、紙面左が室外側、紙面右が室内側である。
図3は、開口部装置1の水平断面図であり、紙面上が室外側、紙面下が室内側である。
図4は、開口部装置1の他の水平断面図であり、スイング枠の吊元側縦枠に備えられる係合孔23g、及びスイング枠の戸先側縦枠の係合孔26gを含む水平断面図ある。図4も紙面上が室外側、紙面下が室内側である。
以下、図1〜図4及び適宜示す図を参照しつつ開口部装置1について説明する。
【0017】
開口部装置1は、固定枠体10、スイング枠20、上障子30、下障子50、及び隠蔽部材80を備えている。すなわち、開口部装置1は枠体10の枠内に具備されたスイング式に開閉するスイング枠20が設けられ、該スイング枠20内にさらに上げ下げ可能に可動障子である上障子30及び下障子50が備えられている。
【0018】
固定枠体10は、枠材である固定縦枠11、12、固定上横枠13、及び固定下横枠14が枠状に組み合わされて形成される枠状体である。当該固定枠体10が建物の開口部の縁に沿って取り付けられることにより、開口部装置1が建物に固定される。固定枠体10は、通常の開口部装置に用いられる枠体と同様のものを用いることができる。
【0019】
ここで図2からわかるように、固定上横枠13の吊元側端部にはスイング枠20に設けられたピボットヒンジのピボット軸6を受け入れる軸受7が具備されている。また、固定下横枠14の吊元側端部には、ピボットヒンジのピボット軸8が配置されている。後述するように、当該ピボットヒンジを軸としてスイング枠20がスイング式に開閉可能に固定枠体10内に配置される。
【0020】
スイング枠20は、吊元側縦枠21、戸先側縦枠24、スイング上横枠27、及びスイング下横枠28を備え、これらが枠状に組み合わせられて形成されている。スイング枠20は、固定枠体10にスイング式に開閉可能に取り付けられるとともに、その枠内に可動障子である上障子30及び下障子50を上げ下げ可能とするガイド溝も有している。
【0021】
吊元側縦枠21は、長尺の枠材であり、図3、図4に示したような断面を有して形成されている。また、わかりやすさのため図5には、図3、図4のうち当該吊元側縦枠21側に注目した拡大図を示した。図5(a)は図3に対応する図、図5(b)は図4に対応する図である。吊元側縦枠21は、図3〜図5にその断面が表れているように、長手方向に直交する断面において、軸側枠部材22とガイドレール部材23とが見付方向に組み合わされて形成されている。
【0022】
軸側枠部材22は、略矩形中空に設けられた中空部22aを具備している。当該中空部22aにおける図3〜図5に破線円形で示した部位を軸としてスイング枠20が固定枠体10に対してスイング式に開閉可能とされている。また、中空部22aの室内側で見付方向外側の角部はスイング式の開閉の際に固定枠体10に接触しないように円弧状に形成されている。加えて、中空部22aの室内側片と室外側片のそれぞれからは見付方向内側に向けて片22b、22cが延在する。
【0023】
ガイドレール部材23は、見込み方向に延在する片23aを有し、該片23aの一方の面から見付方向内側に向けて所定の間隔を有して片23b、23c、23dが並列して立設されている。これにより見込み方向に並列される2つのガイド溝23p、23qが形成される。すなわち、片23b、23a、23cで形成される室外側のガイド溝23p、片23c、23a、23dで形成される室内側のガイド溝23qである。また、片23aの他方の面からは係合片23e、23fが立設され、上記軸側枠部材22の片22b、22cに係合して軸側枠部材22とガイドレール部材23とが連結される。
【0024】
さらに、図4、図5(b)からわかるようにガイドレール部材23の片23aのうちの一部には係合孔23gが設けられている。図6には、図4、図5(b)に矢印VIで示した方向から見た吊元側縦枠21を示した。図4〜図6からわかるように、係合孔23gは、片23aのうち片23bと片23cとの間であるガイド溝23pで、吊元側縦枠21の長手方向の上部に設けられている。具体的には、後述する上障子30の上部ガイド36が移動するガイド溝23pの範囲のいずれかに設けられている。また係合孔23gの大きさは、当該上部ガイド36がその内側に入ることができるように形成される。
【0025】
当該係合孔23gにより、可動障子の不具合を感知し、可動障子の落下の発生を予防することが可能となる。詳しくは後で説明する。
【0026】
戸先側縦枠24は、長尺の枠材であり、図3又は図4に示したような断面を有して形成されている。戸先側縦枠24は、長手方向に直交する断面において、戸先枠部材25とガイドレール部材26とが見付方向に係合されて形成されている。
【0027】
戸先枠部材25は、略矩形中空に設けられた中空部25aを具備している。当該中空部25aには、取っ手15、15が設けられ(図1も参照)、使用者はここをつかんで上障子30、下障子50を含むスイング枠20をスイング式に開閉させることができる。従って、中空部25aの内部には不図示のラッチ機構、錠装置等が配置されている。また、中空部25aの室内側片と室外側片のそれぞれからは見付方向内側に向けて片25b、25cが延在する。
【0028】
ガイドレール部材26は、見込み方向に延在する片26aを有し、該片26aの一方の面から見付方向内側に向けて所定の間隔を有して片26b、26c、26dが並列して立設されている。これにより見込み方向に並列される2つのガイド溝26p、26qが形成される。すなわち、片26b、26a、26cで形成される室外側のガイド溝26p、片26c、26a、26dで形成される室内側のガイド溝26qである。また、片26aの他方の面からは係合片26e、26fが立設され、上記戸先枠部材25の片25b、25cに係合して戸先枠部材25とガイドレール部材26とが連結される。
【0029】
さらに、図4からわかるようにガイドレール部材26のガイド溝26pのうちの片26a一部には係合孔26gが設けられている。係合孔26gは係合孔23gに対向する位置に設けられている。その位置や大きさ等は上記係合孔23gと同じ趣旨で設けられているのでここでは説明を省略する。
【0030】
また、ガイドレール部材23、26には、後述するローラ70、71が備えられる(図7参照)。ここでは見やすさのため、当該ローラ70、71は省略している。
【0031】
スイング上横枠27は、長尺の枠材であり、図2に表れる断面を有して形成されている。スイング上横枠27は、長手方向に直交する断面において、矩形中空に備えられた中空部27aを有し、その下端部に上障子30の上端が接触し、これにより閉鎖の姿勢となる。また、中空部27aの室内側面と固定上横枠13とを渡すように不図示のドアクローザが取り付けられ、利用者の利便が図られている。
【0032】
さらに、スイング上横枠27の吊元側端部には図2に表れているようにピボットヒンジのピボット軸6が配置され、固定上横枠13の軸受け7と合わせられてスイングの軸となる。
【0033】
スイング下横枠28は、長尺の枠材であり、図2に表れる断面を有して形成されている。スイング下横枠28は、長手方向に直交する断面において、矩形中空に備えられた中空部28aを有している。当該中空部28aの上端部に下障子50の下端が接触し、これにより閉鎖の姿勢となる。また、スイング下横枠28の吊元側端部には図2に表れているようにピボットヒンジの軸受け9が配置され、固定下横枠14のピボット軸8と合わせられてスイングの軸となる。
【0034】
次に上障子30、及び下障子50について説明する。図7には、上障子30及び下障子50に注目した室外側から見た斜視図を示した。図7(a)が閉鎖の姿勢、図7(b)が開放の姿勢の一例を表している。
【0035】
上障子30は、室外側に備えられ、閉鎖の姿勢で上部に配置される障子であり、図1〜図5、図7に表れているように、縦框31、32、上横框33、下横框34を枠状に組み合わせた框体35と、框体35の枠状の内側に配置されるガラスパネル49とを備えている。また框体35の4隅には、上横框33、又は下横框34を長手方向に延長する方向に突出するブロック状のガイド(36、37、38、39)が設けられている。ここで、上横框33を延長する方向に設けられたガイドは上部ガイド36、37であり、下横枠34を延長する方向に設けられたガイドは下部ガイド38、39である。
【0036】
上部ガイド36、37、及び下部ガイド38、39の大きさは、これらガイドが上記吊元側縦枠21、戸先側縦枠24の室外側のガイド溝であるガイド溝23p、26p内を移動可能であればよい。これにより上障子30が吊元側縦枠21、戸先側縦枠24に沿って上下に移動することが可能となる。なお、下部ガイド38、39は、上障子30のがたつき防止の観点から、上障子30の円滑な移動を妨げない範囲で、見付方向及び見込み方向いずれも大きい方がよい。一方、上部ガイド36、37については、後述するように、不具合の発生時において当該上部ガイド36、37が係合孔23g、26gに係合するように構成されているため、正常時における誤動作を回避する観点から、当該上部ガイド36、37の見付方向の大きさは、小さく形成することが好ましい(図5(a)における矢印V参照)。
【0037】
また、本実施形態では図2、図3からわかるように、上障子30のガラスパネル49は、その端部が縦框31、32、上横框33、下横框34に差し込まれるとともに、接着剤により直接該框に接着されている。すなわち従来のようなグレージングチャンネルを介してガラスパネルが框に取り付けられる構成ではない。これにより、框の見付方向、及び見込み方向の大きさを小さくすることが可能となる。
ただし、本発明においてグレージングチャンネルを用いたガラスパネルと框との取り付け構造を妨げるものではなく、このような従来の構造であってもよい。本実施形態では、上記したように、框の見付方向、及び見込み方向の大きさを小さくすることができるとの観点から好ましい例として説明した。
【0038】
下障子50は、室内側に備えられるとともに閉鎖の姿勢では下部に配置される障子であり、図1〜図5及び図7に表れているように、縦框51、52、上横框53、下横框54を枠状に組み合わせた框体55と、框体55の枠状の内側に配置されるガラスパネル69とを備えている。また框体55の4隅には、上横框53、又は下横框54を長手方向に延長する方向に突出するブロック状のガイド(56、57、58、59)が設けられている。ここで、上横框53を延長する方向に設けられたガイドは上部ガイド56、57であり(上部ガイド56は死角により見えない。)、下横枠54を延長する方向に設けられたガイドは下部ガイド58、59である。
【0039】
上部ガイド56、57、及び下部ガイド58、59の大きさは、これらガイドが上記吊元側縦枠21、戸先側縦枠24のガイド溝23q、26q内を移動可能であればよい。これにより下障子50が吊元側縦枠21、戸先側縦枠24に沿って上下に移動することが可能となる。なお、上部及び下部ガイド56、57、58、59は、下障子50のがたつき防止の観点から、下障子50の円滑な移動を妨げない範囲で、見付方向及び見込み方向いずれも大きい方がよい。ただし、上部ガイド56、57は、ローラ70、71に接触しないような大きさ、形状とされている。
【0040】
また、本実施形態の下障子50では、上障子30と同様に、図2、図3からわかるように、ガラスパネル69は、その端部が縦框51、52、上横框53、下横框54に差し込まれるとともに、接着剤により直接該框に接着されている。すなわち従来のようなグレージングチャンネルを介してガラスパネルが框に取り付けられる構成ではない。これにより、框の見付方向、及び見込み方向の大きさを小さくすることが可能となる。
ただし、本発明においてグレージングチャンネルを用いたガラスパネルと框との取り付け構造を妨げるものではなく、このような従来の構造であってもよい。本実施形態では、上記したように、框の見付方向、及び見込み方向の大きさを小さくすることができるとの観点から好ましい例として説明した。
【0041】
このように形成された上障子30及び下障子50は次のように上げ下げ可能とされている。すなわち、図7に示したように、滑車を具備するローラ70、71が吊元側縦枠21、戸先側縦枠24の長手方向略中央に取り付けられる(図7では一方のローラ70のみが見え、ローラ71は死角となって見えない。ただし構造は同じである。)。そしてワイヤ73がローラ70の滑車に引っ掛けられ、該ワイヤ73の一端が下障子50の下部ガイド59に、他端が上障子30の下部ガイド39にそれぞれ固定される。同様に、図7では死角となって見えないが、ワイヤ74がローラ71の滑車に引っ掛けられ、該ワイヤ74の一端が下障子50の下部ガイド58に、他端が上障子30の下部ガイド38にそれぞれ固定される。
【0042】
このような構成により、例えば図7(a)に示した閉鎖の姿勢から下障子50を上方に開放させる。すると、下部ガイド58、59が上がり、ワイヤ73、74の張力が下がり、これと釣り合っていた上障子30が重力により下がる。これにより上障子30及び下障子50は、連動して図7(b)に表したように開放の姿勢となる。
【0043】
このとき、上障子30のガイド36、38は吊元側縦枠21の室外側のガイド溝23pを移動し、上障子30のガイド37、39は戸先側縦枠24の室外側のガイド溝26pを移動する。一方、下障子50のガイド56、58は吊元側縦枠21の室内側のガイド溝23qを移動し、下障子50のガイド57、59は戸先側縦枠24の室内側ガイド溝26qを移動する。
【0044】
逆に、図7(b)の姿勢から下障子50を下方に移動させると、ワイヤ73、74により引っ張られ、上障子50は上方に移動し、上記と逆の移動をすることによって上障子30及び下障子50は連動して図7(a)の閉鎖の姿勢に戻る。
【0045】
ここで、上記のような通常の開閉において上障子30の上部ガイド36、37は、その移動中に吊元側縦枠21、戸先側縦枠24に設けられた係合孔23g、26gに係合することなく該係合孔23g、26gの前を通過する。詳しくは後で説明する。
【0046】
引き続き開口部装置1の構成について説明する。図1〜図3からわかるように、開口部装置1はさらにその室外側に隠蔽部材80を具備している。隠蔽部材80はスイング枠体20の室外側から被せるように該スイング枠体20に取り付けられる部材である。隠蔽部材80は、所定の間隔を有して上下方向に並列される横長矩形の隠蔽板81、81、…を具備している。これにより、室外視から室内を隠蔽することが可能となる。また、隠蔽板81、81、…の室内側には網材82が張られ、害虫の侵入を防止している。
【0047】
本実施形態では上記したように上障子30及び下障子50において、そのガラスパネル49、69を直接に框体35、55の内側に配置して接着しているので、見込み方向にもその厚さを薄くすることが可能となった。これによりスイング枠体20の室外側において室外側に突出する部材をなくすことができるので、図2にIIで示した大きさを薄く抑えることが可能となった。
【0048】
上記の構成を備える開口部装置1により、簡易な構成で可動障子の不具合を感知し、可動障子の落下の発生を予防することができる。
【0049】
次に、どのように開口部装置1の不具合を感知し、可動障子の落下の発生を予防することができるかについて説明する。図8に模式図を示した。図8は、係合孔23g、26gを具備する片23a、26a、及び上障子30を模式的に示した図で、図8(a)は正常に作動する場合を表しており、図8(b)はワイヤ73が切れた不具合を生じた場合を表している。
【0050】
開口部装置1が正常な状態にある場合に、上障子30を図8(a)の左側の図から右側の図のように下げたときを考える。この場合には、上障子30は、左右のワイヤ73、74により吊られており平衡が保たれているため、上部ガイド36、37は円滑にガイド溝23p、26p内を移動することが可能である。従って、下障子50と合わせて上障子30の移動も円滑(通常)に行われる。
【0051】
一方、図8(b)に示したようにワイヤ73が切れる不具合が生じ、ワイヤ74のみで上障子30及び下障子50が吊られている例を考える。このときには、図8(b)の左側の図のように、上障子30は平衡を失って傾いた状態となる。すると上障子30の上部ガイド36は、片23aに常に接触して押圧するようにガイド溝23p内を移動する。この状態で下障子50を操作し、上障子30を下げると上部ガイド36が係合孔23gに達したとき、図8(b)の右側の図に示したように上部ガイド36は係合孔23gに入り、係合する。これにより、上障子30、及びこれに連動する下障子50の移動が中断される。従って使用者は開口部装置1の不具合に気づくことができ、他方のワイヤ74が切れて可動障子の落下を予防することが可能となる。
【0052】
このように、上部ガイドは係合孔に係合する形状であればよい。従って本実施形態のように、正面視で矩形である形状(図9(a))の他、図9(b)に示した上部ガイド36’ように上部にテーパを形成したものであってもよい。これによれば、修理等をするまでの間の一時的に図8(b)の姿勢から手動で上障子30を図8(a)の姿勢に戻すとき、係合孔28gから上部ガイド36を離脱させることが容易となる。また、一方で、例えば図9(c)示した上部ガイド36’’の形状のような鉤型であれば、係合をより強固なものとすることができる。
【0053】
上記の実施形態では、上障子の上部ガイドとスイング枠体のガイド溝の係合孔との関係により開口部装置の不具合を認識することができる構造として説明した。しかし、これに限定されるものではなく、係合孔を他のガイド溝に設けることによって、他のガイドとガイド溝との関係により不具合を認識することができるように構成してもよい。
【0054】
また、本実施形態では、スイング枠体の枠内に設けられた上げ下げ可能な障子について説明したが、固定枠体の枠内に設けられた上げ下げ可能な障子であってもよく、また、バランサ方式の上げ下げ障子にも適用することが可能である。
さらに、本実施形態では、ピボット軸を用いたスイング枠体による開口部装置について説明したが、これに限定されるものではなく、いわゆる吊丁番を用いたスイング枠体による開口部装置であってもよい。また、引き戸式に開閉可能な枠体による開口部装置であってもよく、開閉の態様も本実施形態に限定されるものではない。
【0055】
以上、現時点において、実践的でありかつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいはは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う開口部装置もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0056】
1 開口部装置
10 固定枠体
20 スイング枠体(枠体)
21 吊元側縦枠(縦枠)
22 軸枠側部材
23 ガイドレール部材
23g 係合孔
23p、23q ガイド溝
24 戸先側縦枠(縦枠)
25 戸先枠部材
26 ガイドレール部材
26g 係合孔
26p、26q ガイド溝
27 スイング上横枠(横枠)
28 スイング下横枠(横枠)
30 上障子(可動障子)
36、37、38、39 ガイド
50 下障子
56、57、58、59 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の縦枠、上横枠及び下横枠が枠状に組み合わされて形成される枠体と、
前記枠体の枠内に具備され、複数のワイヤを有して任意の位置に保持可能とされつつ、前記縦枠に沿って移動可能に設けられた少なくとも1つの可動障子と、を備える開口部装置であって、
少なくとも一方の前記縦枠には、その長手方向に沿ってガイド溝が形成されるとともに、該ガイド溝の底部の一部には係合孔が設けられ、
前記可動障子には、前記ガイド溝の内側を移動可能であるとともに、前記係合孔に係合可能な大きさのガイドが具備され、該ガイドの少なくとも1つは、前記係合孔の設けられた前記ガイド溝の部位を移動の軌道に含む、開口部装置。
【請求項2】
前記ガイド溝の前記係合孔は、前記縦枠のうち開口部装置が建物に取り付けられた姿勢における上部に相当する部位に設けられ、前記係合孔に係合可能な前記ガイドが前記可動障子の上端に設けられている、請求項1に記載の開口部装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−275788(P2010−275788A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130069(P2009−130069)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】