説明

両持ち型ワーク割出台

【課題】工作機械のテーブルに装着して対向する支持台でワークの両端を保持する両持ち型のワーク割出台に関し、ワークの捩れ変形による加工誤差や加工中のびびり振動が発生する問題を解決し、更に割出角の固定及び解除を軽い力でかつ短時間で行うことが可能で、工作機械の動きを利用して自動的に行わせることも容易に可能な装置を得る。
【解決手段】割出角を保持するカップリング8を駆動側支持台2aと従動側支持台2bとの両方に設け、2つのカップリングを同期して嵌脱させる同期機構を設けている。この同期機構中にばね24bを介在させて、一方が他方に対して僅かな時間差をもって嵌脱するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フライス盤やマシニングセンタのワークテーブルに装着して加工するワークの割出し(インデックス)を行う装置に関するもので、ワーク又はワークを搭載したパレットの対向両端を支持して割出す装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のワーク割出台は、工作機械のワークテーブルに固定するベースと、ベースに固定された駆動側支持台と従動側支持台との2つの支持台を備えている。2つの支持台は、その対向面に多角形又は円形のテーブル(以下、「割出テーブル」と言う。)を備えている。駆動側支持台には、当該側の割出テーブルを所定の割出角に回転する割出ハンドルなどの回転駆動装置が設けられている。従動側支持台には、自由回転可能に設けた当該側の割出テーブルを駆動側支持台に向けて近接離隔する方向に進退させてワークやワークを搭載したパレット(以下、両者を含めて「ワーク等」と言う。)のクランプアンクランプを行う進退ハンドルなどの進退駆動装置が設けられている。ワーク等は、駆動側支持台と従動側支持台の割出テーブルで挟持された状態で固定される。
【0003】
ワーク割出台には、所定の角度位置に割出された割出テーブルの角度を加工反力に抗して保持するためのカップリングが必要である。このカップリングとしては、精度と剛性が高く、割出しピッチも小さくできる面歯車継手(フェースギヤカップリング)が用いられている。従来装置では、このカップリングが駆動側支持台に内蔵されて、回転駆動装置で割出された割出テーブルの位置を固定するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対向配置された2つの割出テーブルでワーク等の両端を保持してワーク等を割出す従来の両持ち型ワーク割出台は、その割出角を固定するカップリングを支持台の一方の側のみに設けている。ワーク等の両端を保持している2つの割出テーブルは、ワーク等を介して連結されて同一角度に割出される。従って、ワーク等の割出角を固定するカップリングは、駆動側支持台にのみ設けられて従動側支持台には設けられていなかった。
【0005】
ところがこのような従来構造のワーク割出台では、細長いワーク等の両端を把持して従動側支持台の近くを加工するとき、加工反力によってワーク等に捩れ変形が発生することがあり、そのような捩れ変形が発生すると、加工誤差が大きくなって高精度の加工ができない問題や、加工中にびびり振動を生じて重切削ができない問題などを生じていた。
【0006】
また、従来割出角を固定するカップリングとして用いられている面歯車継手は、回転側と固定側の面歯車を強い力で押し付けておく必要があり、その押付け力を発生するために油圧シリンダを設けるか、手動の場合は、ねじ装置を設けるかして強い軸方向力を発生させる必要があった。しかし、ワーク割出台は、旋回したり二次元面台で移動するワークテーブルに搭載されるので、前者の構造では、油圧配管が面倒になり、ワークテーブルの動作が制限されるという問題がある。一方、後者の構造は、カップリングの嵌脱に時間がかかり、割出角の固定及び解除を短時間で行うことが困難になるという問題がある。
【0007】
そこでこの発明は、加工反力によるワーク等の捩れ変形による加工誤差の発生や加工中にびびり振動が発生して加工精度が低下する問題を解決することを課題としている。更にワークの割出角の固定に大きな力が必要であったり時間がかかる問題を解決して、割出角の固定及び解除を軽い力でかつ短時間で行うことを可能にし、割出角の固定及び解除を工作機械の動きを利用して自動的に行わせることも容易に可能な、両持ち形のワーク割出台を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のワーク割出台は、対向する支持台2a、2bでワーク等50の両端を保持する両持ち型のワーク割出台において、ワーク等の割出角を保持するカップリング8を駆動側支持台2aと従動側支持台2bとの両方に設けて、ワーク等50の割出角の保持剛性を高くしている。この構造により、細長いワーク等の両端を保持して加工を行うとき、従動側支持台2bに近い部分を加工するときのワーク等50の捩れによる誤差やびびり振動の発生が防止できる。
【0009】
カップリング8a、8bを両支持台2a、2bに設けた場合、2つのカップリングの嵌脱を個別に行う構造では、割出角の固定及び固定解除に時間がかかり、加工能率が低下する。そこでこの発明では、2つのカップリング8a、8bを同期して嵌脱させる同期機構33a、6、43、33bを設けている。そして、同期動作する両方のカップリングが共に所定の押付け力で嵌合するように、この同期機構中にばね24a、24bを介在させて、一方が他方に対して僅かな時間差をもって嵌脱するようにしている。
【0010】
更に比較的小さい軸方向力での割出角の確実な固定を実現するために、カップリング8a、8bとして、テーパ歯16a、16bを備えた外歯歯車(嵌脱リング)17a、17bと、テーパ歯19a、19bを備えた多面ラックないし内歯歯車(固定リング)18a、18bとの円錐面相互ないし円錐面と多角錐面との嵌合によるカップリングを採用している。この構造のカップリング8a、8bを採用したときには、嵌脱時の軸方向ストロークが大きくなることを利用して、カップリング嵌合時に回転側の外歯歯車17a、17bと割出軸11a、11bとの間に設けたスプライン15a、15bを締め付けることにより、更に高剛性かつ高精度で割出角を保持することができる。。
【0011】
この発明の両持ち型ワーク割出台は、駆動側割出テーブルの割出回転、従動側割出テーブルの進退動作によるワーク等の保持及び開放、所定の割出角におけるカップリング8a、8bの嵌脱をハンドル4a、4bやレバーなどの手動で行う構造とすることもできるし、この発明のワーク割出台を取り付けた工作機械のワークテーブルと工具主軸との相対動きを利用して、これらの操作を行わせる構造とすることもできる。
【0012】
この出願の請求項1の発明に係る両持ち型ワーク割出台は、同一軸線上に配置された駆動側割出軸11a及び従動側割出軸11bと、この2本の割出軸の対向端に固定された割出テーブル3a、3bと、駆動側割出軸11aを回転する回転駆動装置4aと、従動側割出軸11bを軸方向に進退させる進退駆動装置4bと、前記割出テーブルの割出角を固定するカップリングとを備えた両持ち型ワーク割出台において、駆動側割出軸11aの割出角を固定する駆動側カップリング8aと従動側割出軸11bの割出角を固定する従動側カップリング8bとを備え、当該2個のカップリング8a、8bを同期嵌脱させる同期機構6を備えている両持ち型ワーク割出台である。
【0013】
この出願の請求項2の発明に係る両持ち型ワーク割出台は、上記構成を備えたワーク割出台において、前記駆動側カップリング8a及び従動側カップリング8bのそれぞれの嵌合を保持するためのそれぞれのばね24a、24bを備え、当該それぞれのばねのばね常数に差を持たせることにより、駆動側カップリングの嵌脱動作と従動側カップリングの嵌脱動作とに時間差を持たせたことを特徴とする両持ち型ワーク割出台である。
【0014】
この出願の請求項3の発明に係る両持ち型ワーク割出台は、上記構成を備えたワーク割出台において、前記同期機構6が、前記割出軸の軸方向移動により駆動側及び従動側のカップリング8a、8bを嵌脱するそれぞれの嵌脱リング17a、17bと、これらの嵌脱リングを前記軸方向に移動させるそれぞれの揺動腕13a、13bと、当該それぞれの揺動腕を連結する同期ロッド6と、この同期ロッドと前記それぞれの揺動腕の一方との間に介装された逆動機構(例えば中間歯車やシーソーアームのように動きの方向を逆にする機構)とを備えていることを特徴とする両持ち型ワーク割出台である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、この発明の両持ち型ワーク割出台の一実施例を示す斜視図である。図において、1はベース、2aは駆動側支持台、2bは従動側支持台、wはワーク、50は複数のワークwを搭載したパレット、51はパレットローディング用の台車、52はローディング台車51のガイドレールである。
【0016】
3a及び3bは、両支持台2a、2bの対向端に位置している駆動側と従動側の割出テーブル、4aは駆動側割出テーブル3aを割出回転するための割出ハンドル、4bは従動側割出テーブル3bを進退させるための進退ハンドル、5は割出角固定用のカップリング8a、8bを嵌脱する嵌脱レバー、9は嵌脱レバー5のデテント動作、すなわち嵌脱レバー5を嵌合側揺動端と嵌合解除側揺動端に保持するための引っ張りばね、6は嵌脱レバー5の揺動を従動側支持台2bに伝達して従動側支持台のカップリングを駆動側と同期して嵌脱する同期ロッドである。
【0017】
パレット50は、細長い矩形のパレット板53とその両端に一体に設けた円形のフランジ54と、パレット板53に取り付けられたワーク固定用のクランパ55とを備えている。フランジ54には、その円の中心を中心とする円周上に等間隔で4個の円錐凹所56が設けられており、割出テーブル3a、3bには、この円錐凹所に嵌合する4個の円錐突起57が設けられている(図2、5、6参照)。ローディング台車51に搭載されて両割出テーブル3a、3b間に移動したパレット50は、従動側割出テーブル3bの進出動作により、上記円錐凹所と円錐突起とを嵌合して、両割出テーブル3a、3b間に挟持した状態で保持される。
【0018】
ローディング台車51には、パレットのフランジ54の外周を支持する2個の支持ローラ58が設けられている。フランジ54は、この2このローラ58でその中心軸回りに回転自在に支持される。パレット50は、両側のフランジ54をそれぞれの側の台車51で支持して台車51をガイドレール52に沿って滑らすことにより、対向する割出テーブル3a、3bの間に挿入される。そして、ローラ58上でフランジ54を回転させてフランジの円錐凹所56と割出テーブルの円錐突起57とを位置合せし、進退ハンドル4bを回して従動側割出テーブル3bを進出させることにより、パレット50を2つの割出テーブル3a、3bで挟持する。ローラ58は、この挟持動作のときにパレット50が軸方向に移動してもフランジ54が脱落しない軸方向長さを備えている。この状態でパレット50は、フランジ54の円中心回りに割出回転自在に保持される。
【0019】
図2は駆動側支持台2aの縦断面図、図3は図2のカップリング8a部分の拡大図、図4は図2のA方向で見た駆動側支持台2aの要部の横断面図である。駆動側支持台のハウジング7aは、図示しないボルトでベース1に固定されている。ハウジング7aをベース1と平行な方向に貫通する割出軸11aの一端には割出テーブル3aが固定され、他端には割出ハンドル4aが取り付けられている。上端に嵌脱レバー5を固定した揺動シャフト12aは、これに固定した揺動腕13aの腕長さだけ割出軸11aの軸心から間隔を隔ててハウジング7a内にベース1の面直角方向に装架されている。
【0020】
割出軸11aの割出テーブル側の部分は大径となっており、この大径部14aの外周にスプライン15aが設けられ、このスプラインに嵌合して、割出軸11aに対して相対回動不能かつ軸方向移動自在に、外周にテーパ外歯16aを設けた嵌脱リング17aが装着されている。ハウジング7aには、この嵌脱リング17aと対向するように固定リング18aが固定されており、この固定リングの内周にテーパ内歯19aが形成されている。嵌脱リング17aがスプライン15aに沿って図で左移動してテーパ内歯19aと噛み合うことにより、割出軸11aの割出角が固定され、右移動して両者の噛合が外れることにより、割出軸11aは自由回転可能になる。
【0021】
テーパ外歯16a及びテーパ内歯19aは、歯厚が楔状に変化している歯で、互いに噛合する2つの歯車の軸方向の相対位置を調整することにより、バックラッシュを調整可能な歯車の噛み合い歯として利用されている。割出角を固定するカップリングとしてテーパ外歯歯車とテーパ内歯歯車を用いることにより、両者を嵌合するときの位相ずれの許容値が大きくなり、比較的ラフな割出軸11aの割出し操作でカップリング8aを嵌合させることができ、割出し操作が容易になる。また、両噛合い歯16a、19aの嵌合を維持するための軸方向力が小さくて済み、カップリング8aを嵌脱するときの操作力を小さくすることができると共に、同様な構造のカップリングを従動側割出テーブルの割出角を固定するカップリングとして用いることにより、簡単な構造で両カップリングの同期機構を実現できる。
【0022】
テーパ外歯歯車及びテーパラック(テーパ直線歯車)は、精度の高いものを比較的容易に製作することができるが、円錐状の内周面を有するテーパ内歯歯車は、製作が困難である。そこで図の実施例では、図4に示すように、テーパ内歯歯車19aとして角錐内歯歯車を用いている。ここで角錐内歯歯車とは、テーパラックを多角筒の内周に設けたもので、具体的には所定長さのテーパラックの複数個(図4のものは8個)を固定リング18aの内周に固定した構造である。
【0023】
テーパ外歯16aを設けた嵌脱リング17aの背後側(ハンドル4a側)には、嵌脱リング16aを軸方向に押付ける押動リング21aが割出軸11aに回動かつ軸方向移動自在に装着されている。押動リング21aが嵌脱リング17aをカップリング8aの嵌合方向に押すときに当接する押動面22aは、嵌脱リング側が円錐外周面に、押動リング側が内錐内周面となっている。押動リング21aが嵌脱リング17aを押してカップリング8aが嵌合したあと更に嵌脱リング17aの円錐外周面を押すことにより、楔作用で当該円錐外周面が内側に絞られて、嵌脱リング17aの内周がスプライン15aをクランプする。この構造により、カップリング8aの高精度の位置決めとスプライン15aの遊隙による誤差の発生の防止とが同時に行われる。
【0024】
押動リング21aの背後側(ハンドル4a側)には、嵌脱リング17aを軸方向に進退させる駆動リング23aが割出軸11aに回動かつ軸方向移動自在に装着されている。駆動リング23aと押動リング21aとの間には、押動リング21aを嵌脱リング17a側に付勢するばね24aが介装されている。このばね24aは、皿ばね座金を重ね合わせた構造で、カップリング8aの噛み合いを保持する付勢力を与えるために設けられているものである。このばね24aは、従動側支持台2bにも同様な構造で設けられているが、そのばね力を若干異ならせることにより、駆動側支持台2aのカップリング8aと従動側支持台2bのカップリング8bとの嵌合に時間差を持たせることができる。
【0025】
駆動リング23aと押動リング21a及び嵌脱リング17aとは、軸方向の長孔25a、26aとそれに挿入されたピン27aを介して軸方向に若干移動可能にして連結されている。駆動リング23aが図で右動したときは、押動リングの長孔26aとピン27aとの当接により、押動リング21aが少し遅れて右移動して円錐押動面22aの押圧によるスプライン15aのクランプを解いた後、嵌脱リングの長孔25aの端部にピン27aが当接して、嵌脱リング17aを右動させてカップリング8aの嵌合が解かれる。
【0026】
駆動リング23aの外周には、円周溝が設けられており、この円周溝に外周180度の位置にピン31aを設けたシフトリング32aが嵌挿されている。ピン31aには揺動シャフト12aに固定した揺動腕13aの先端のフォークが嵌合している。すなわち、嵌脱レバー5の揺動が揺動腕13aを揺動させ、シフトリング32aを割出軸11aの軸方向に前後動させることにより、カップリング8aの嵌脱が行われる。揺動シャフト12aの下端には、ピニオン33aが固定され、このピニオンが同期ロッド6に設けたラック34aと噛合している。揺動腕13aを揺動すると、同期ロッド6が軸方向に進退して揺動腕13aの動きを従動側支持台2bに同様な構造で設けた揺動腕13b(図5参照)に伝達する。
【0027】
割出軸11aには、嵌脱リングのテーパ外歯16aの歯数と等しい歯数の平歯車35が固定されており、ハウジング7aにはばね36でこの平歯車の歯面に弾圧されるボール37が設けられている。割出ハンドル4aで割出軸11aを回転させると、平歯車35の一歯毎にボール37が平歯車35の歯の間に嵌り込んで割出軸11aの角度が軽く保持されるので、その位置でカップリング8aの嵌合を行うことにより、歯の端面を衝突させることなく、カップリング8aの嵌合を行うことができる。駆動側割出テーブル3aの外周には、その回転角度を示す目盛38が設けられており、作業者はこの目盛を見ながら割出ハンドル4aを回して割出テーブル3aの割出角を設定する。
【0028】
図5は、従動側支持台2bの縦断面図である。従動側支持台の割出軸11bは、割出回転が可能であると共に、軸方向移動も可能に設けられているため、駆動側のものより構造が複雑である。大まかに言えば、進退ハンドル4bの回転で割出軸11bを軸方向に進退させるためのねじ装置41が設けられていること、駆動側における割出軸の大径部14aに相当する部分が軸方向移動を固定された(従って、割出軸と軸方向相対移動可能な)割出スリーブ14bとなっていること、割出スリーブ14bの回転を軸方向移動する割出テーブル3bに伝達するためのに第2のスプライン42が設けられていること、ハンドルにクリック感を与えるための平歯車35及びボール37が設けられていないこと、同期ロッド6の軸方向移動に対して揺動シャフト12bの揺動方向を反転させるための中間ピニオン43が設けられていることである。
【0029】
従動側割出テーブル3bは、割出軸11bの先端に固定されており、かつ割出スリーブ14bの第2スプライン42に嵌合している。割出軸11bの基端は、ねじ装置41に設けたスラスト軸受44を介して進退ハンドル4bのボス45に相対回転可能かつ軸方向移動不能に連結されている。進退ハンドルのボス45は、ハウジング7bに設けた雌ねじ孔46に螺合している。従って、進退ハンドル4bを正逆転することにより、割出軸11b及び従動側割出テーブル3bは、軸方向に進退する。このとき従動側割出テーブル3bの割出角は、駆動側割出テーブル3aとの間に挟持したパレット50によって駆動側割出テーブル3aの割出角と同じ角度に割出され、その割出角は第2スプライン42を介して割出スリーブ14bに伝達される。パレット50との周方向の位置決め部材となる円錐突起57が円周を4等分した4箇所に設けられている関係上、割出テーブル3a、3bの割出数(従って、カップリング8a、8bの割出数)は、4の整数倍(例えば5度ピッチの72分割)としてある。
【0030】
カップリング8b、押動リング21b、駆動リング23b、シフトリング32b及び揺動シャフト12bの構造及び動作は、駆動側のものと同じであるので、対応する部材に同一の数字で添え字をaからbに変更した符号を付して説明を省略する。カップリング8bを嵌脱するときのこれらの部材の動きは、駆動側のものに対して左右逆になる。そこで、揺動シャフト12bの下端に固定したピニオン33bを中間ピニオン43を介して同期ロッド6に設けたラック34bに噛合させることにより、揺動シャフト12bの揺動方向を逆転させている。前述したように、駆動側と従動側とでカップリング8a、8bの嵌脱に若干の時間差を持たせるために、押動リング21a、21bと駆動リング23a、23bとの間に介装したばね24a、24bのばね定数に若干の差を持たせている。
【0031】
次に図示実施例の両持ち型ワーク割出台の動作を説明する。パレット50を複数個準備し、加工しようとするワークwは、予めパレット50に固定しておく。ワークwを固定したパレットは、割出テーブル3a、3bの間から引出された両側の台車51のローラ58の上に両側のフランジ54を載せた状態で置かれる。そして台車51を割出テーブル3a、3bの間の位置に移動し、駆動側割出テーブル3aを原点角に合せてカップリング8aで嵌合した状態で、ローラ58で支持されたフランジ54を回転してパレット50の姿勢を初期姿勢にして駆動側に手で移動し、フランジの円錐凹所56に駆動側割出テーブル]の円錐突起57を差込む。次に従動側割出テーブル3bを手で回してその円錐突起57をフランジの円錐凹所56と合せた状態で、進退ハンドル4bを回転させて従動側割出テーブル3bを進出させることにより、パレット50を対向する割出テーブル3a、3bで把持する。
【0032】
必要ならこの状態で原点角でのワークwの加工を行う。原点角以外の角度に割出してワークwの加工を行うときは、嵌脱レバー5を嵌合解除側に揺動する。これにより、駆動側及び従動側のカップリング8a、8bが外れて割出軸11a、11bが自由回転可能な状態になるので、割出ハンドル4aを回して所望の割出角に設定し、嵌脱レバー5を嵌合側に揺動する。これにより両側のカップリング8a、8bが同時に嵌合する。この状態でパレット50は新たな割出角に固定されるから、その状態で当該割出角におけるワークwの加工を行う。
【0033】
ワークwの加工がすべて終了したら、割出テーブル3a、3bを原点角に戻して嵌脱レバー5を嵌合側に揺動してカップリング8a、8bを嵌合し、進退ハンドル4bを逆転して従動側割出テーブル3bを退避させることにより、パレット50の挟持を解く。そして、パレットのフランジ54を台車のローラ58に載せ、台車51を引出すことにより、加工済ワークを搭載したパレット50が割出台の割出テーブル3a、3bの間から引出される。
【0034】
上記実施例は手動の構造であるが、割出軸11aや進退ハンドルのボス45の回転操作及び嵌脱レバー5の揺動操作をこの割出台が固定された工作機械のワークテーブルと当該工作機械の工具軸との相対運動により行わせるようにすることもできる。例えば、ベース1に割出軸の軸方向に移動自在にスライダを設け、このスライダの移動をラックピニオン、傘歯車対及びタイミングベルトなどで駆動側支持台の割出軸に連結する機構を設け、更に工作機械の工具軸の押し下げ動作で揺動動作する揺動体をベース1に設けて、この揺動体の揺動動作により、前記スライダを工作機械側に設けた不動部材に係脱する機構と、当該揺動動作で嵌脱レバー5を揺動させる揺動伝達機構とを設ける。これにより、工作機械の工具軸の軸方向移動動作で、カップリング8a、8bを嵌脱し、カップリングが離れた状態で工作機械のワークテーブルを割出し軸方向に移動させることで割出軸11aを回動させる構造とすることができる。このときの割出軸の割出角は、工作機械のワークテーブルの移動ストロークをNC装置で制御することによって設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】両持ち型ワーク割出台の一実施例を示す斜視図
【図2】駆動側支持台の縦断面図
【図3】図2のカップリング部分の拡大図
【図4】図2のA方向で見た駆動側支持台の要部の横断面図
【図5】従動側支持台縦断面図
【図6】ローラによるパレットの支持を示す断面正面図
【符号の説明】
【0036】
3a,3b 割出テーブル
4a 割出ハンドル
4b 進退ハンドル
6 同期ロッド
8a 駆動側カップリング
8b 従動側カップリング
11a 駆動側割出軸
11b 従動側割出軸
17a,17b嵌脱リング
24a,24b ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一軸線上に配置された駆動側割出軸(11a)及び従動側割出軸(11b)と、この2本の割出軸の対向端に固定された割出テーブル(3a,3b)と、駆動側割出軸(11a)を回転する回転駆動装置(4a)と、従動側割出軸(11b)を軸方向に進退させる進退駆動装置(4b)と、前記割出テーブルの割出角を固定するカップリングとを備えた両持ち型ワーク割出台において、
駆動側割出軸(11a)の割出角を固定する駆動側カップリング(8a)と従動側割出軸(11b)の割出角を固定する従動側カップリング(8b)とを備え、当該2個のカップリング(8a,8b)を同期嵌脱させる同期機構(6)を備えている、両持ち型ワーク割出台。
【請求項2】
前記駆動側カップリング及び従動側カップリングのそれぞれの嵌合を保持するためのそれぞれのばね(24a,24b)を備え、当該それぞれのばねのばね常数に差を持たせることにより、駆動側カップリングの嵌脱動作と従動側カップリングの嵌脱動作とに時間差を持たせたことを特徴とする、請求項1記載の両持ち型ワーク割出台。
【請求項3】
前記同期機構が、前記割出軸の軸方向移動により駆動側及び従動側のカップリング(8a,8b)を嵌脱するそれぞれの嵌脱リング(17a,17b)と、これらの嵌脱リングを前記軸方向に移動させるそれぞれの揺動腕(13a,13b)と、当該それぞれの揺動腕を連結する同期ロッド(6)と、この同期ロッドと前記それぞれの揺動腕の一方との間に介装された逆動機構とを備えている、請求項1又は2記載の両持ち型ワーク割出台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−119568(P2009−119568A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296858(P2007−296858)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(393028117)株式会社テック・ヤスダ (12)
【Fターム(参考)】