説明

両親媒性カチオン性の会合性ポリマー、その製造方法、増粘剤としての用途及びそれを含有する組成物

【課題】 好ましい感触を有し、かつ容易に拡げることができる組成物を作製するためのポリマーを提供する。
【解決手段】 次の一般式(I):
R-X-[L-(Y)]-L'-X'-R' (I)
[上式中:R及びR'は疎水性基又は水素原子を表し、X及びX'は疎水性基を担持していてもよい第3級又は第4級アミン官能基を有する基を表し、L及びL'はジイソシアナートから誘導される基を表し、Yは親水性基を表し、rは1〜100の整数であり、mは1〜1000の数である]
のポリマーであって、少なくとも1つのプロトン化した又は第4級化したアミン官能基及び少なくとも一つの疎水性基を有し、第4級化アミン単位の含有量が少なくとも85%であるポリマーを使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な水溶性又は水分散性で両親媒性カチオン性の会合性ポリマー(associative polymers)、及び局所適用組成物におけるその使用、特に化粧品又は製薬における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のポリマーに関して、「水溶性」なる用語は、これらのポリマーが室温(25℃)で少なくとも1重量%の溶解性を有していること、すなわち、この濃度まで、裸眼でいかなる沈殿も検出できず、かつ溶液が完全に透明で均一であることを意味している。
「水分散性」ポリマーとは、ポリマーを水に懸濁させた場合、コールター型の装置で光散乱によって計測して5nm〜600nm、特に5nm〜500nmの平均径を有する小球を自然に形成するポリマーを意味している。
【0003】
特に化粧品及び医薬品の分野において、ポリマーを用いての水性媒体の増粘及び/又はゲル化は長い間にわたる研究課題であった。一般的に、水溶性ポリマーで有利な増粘効果を得るには、大きな分子量と大きな水力学的容量が必要であると考えられている。そして、水性媒体のゲル化は、線形ポリマーの架橋又は二官能性及び多官能性モノマーの共重合によって得られる三次元ポリマー網目構造の結果であるとされている。しかしながら、分子量が非常に大きいこのようなポリマーを使用する場合には、幾らかの問題、例えばテクスチャーがあまり快適ではないとか得られたゲルを拡げるのが困難であるという問題がある。
一つの有利なアプローチ法は、相互に又は他の分子もしくは粒子と可逆的に会合することが可能なポリマーを増粘剤として使用するものであった。この物理的な会合によってチキソトロピー性又はずり流動化(shear-thinning)高分子系、すなわち系が受ける剪断力に粘度が依存する系が生じる。
相互に又は他の分子と可逆的に会合することができるこのようなポリマーは会合性ポリマーとして知られている。関与する相互作用の力は非常に異なった性質で、例えば静電的な性質、水素結合型又は疎水性の相互作用のものである。
会合性ポリマーの一つの特定の場合が両親媒性ポリマー、すなわちポリマーを水に溶解させるようにする一又は複数の親水性部分とポリマーが相互に又は他の分子と作用して結合することになる一又は複数の疎水性の領域を含むポリマーである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
会合性ポリマー、特に会合性ポリウレタン類を使用することは化粧品の分野で既に推奨されていることである。しかしながら、これらのポリマーのレオロジー特性及び化粧品としての特性は最適なものではない。
従来技術と比較してその増粘特性は改善され、かつ良好な化粧品特性を有している新規なファミリーの水溶性又は水分散性で両親媒性カチオン性の会合性ポリマーが見出された。
ポリマーの増粘特性が優れているために、ポリマーを少量で使用することが可能となる。この利点により、それを含む組成物のテクスチャーを改善することが可能となる。本発明のポリマーを使用することによって得られたゲルは好ましい感触を有し、かつ容易に拡げることができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の主題の一つは、次の一般式(I):
R-X-[L-(Y)]-L'-X'-R' (I)
[上式中:
− R及びR'は同一又は異なっていてもよく、疎水性基又は水素原子を表し、
− X及びX'は同一又は異なっていてもよく、疎水性基を担持していてもよい第3級又は第4級アミン官能基を有する基を表し、
− L及びL'は同一又は異なっていてもよく、ジイソシアナートから誘導される基を表し、
− Yは親水性基を表し、
− rは1〜100、好ましくは1〜50、特に1〜25の整数であり、
− mは1〜1000の数である]
のポリマーであって、少なくとも1つのプロトン化した又は第4級化したアミン官能基及び少なくとも一つの疎水性基を有し、
第4級化アミン単位の含有量(又は第4級化度)が少なくとも85%であると理解されるポリマーにある。
【0006】
本発明の他の主題は、「第4級化アミン誘導体」をジイソシアナートプレポリマーと反応させる、上述したポリマーの調製方法にある。
また、本発明の他の主題は、上述した少なくとも1種のポリマーの、増粘剤としての使用にある。
さらに本発明の他の主題は、上述したポリマーを含有する組成物にある。
本発明の新規の会合性ポリマーを示すために選択される「ポリマー」なる用語には、ポリウレタンそれ自体、ポリ尿素及びポリチオ尿素、並びにそれらのコポリマーが含まれる。
【0007】
本発明の水溶性又は水分散性で両親媒性カチオン性の会合性ポリマーのファミリーは、次の一般式(I):
R-X-[L-(Y)]-L'-X'-R' (I)
[上式中:
− R及びR'は同一又は異なっていてもよく、疎水性基又は水素原子を表し、
− X及びX'は同一又は異なっていてもよく、疎水性基を担持していてもよい第3級又は第4級アミン官能基を有する基を表し、
− L及びL'は同一又は異なっていてもよく、ジイソシアナートから誘導される基を表し、
− Yは親水性基を表し、
− rは1〜100、好ましくは1〜50、特に1〜25の整数であり、
− mは1〜1000の数である]
で表され、少なくとも1つのプロトン化した又は第4級化したアミン官能基及び少なくとも一つの疎水性基を有し、第4級化アミン単位の含有量が少なくとも85%であると理解されるものである。
【0008】
本発明のカチオン性の会合性ポリマーの好ましい一ファミリーは、第4級化アミン単位の含有量が87%〜100%、好ましくは88%〜99%である。
ポリマーの第4級化アミン官能基は、疎水性基を含むアルキル化剤、すなわち、RQ又はR'Q型の化合物で第3級アミンを第4級化することから得られ、ここでR及びR'は先に定義したものであり、Qは脱離基、例えばハライド又はスルファートを示す。
ポリマーの中和したアミン官能基は第3級アミンの中和によって得られ;それらは、また、鎖の末端における過剰のイソシアナート基を加水分解し、次いで形成された第1級アミン官能基を、疎水性基を含むアルキル化剤、すなわち、RQ又はR'Q型の化合物でアルキル化することによって得ることができ、ここでR及びR'は先に定義したものであり、Qは脱離基、例えばハライド又はスルファートを示す。
【0009】
本発明のポリマーの好ましいファミリーの一つは、上述した式(I)において:
− R及びR'が双方独立して疎水性基を表し、
− X及びX'が双方独立して第4級アミンを有する基を表す、
ものに相当する。
本発明のポリマーの疎水性基は第4級化反応の結果によるものであり;第4級化剤を介して導入される。
【0010】
本発明の両親媒性カチオン性の会合性ポリマーの数平均分子量は、好ましくは10000〜60000、特に15000〜55000、理想的には20000〜50000である。
「疎水性基」という用語は、一又は複数のヘテロ原子、例えばP、O、N又はSを含むことができる飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状の炭化水素ベース鎖を有する基又はポリマー、又はペルフルオロ又はシリコーン鎖を有する基を意味する。それが炭化水素ベース基を示す場合、疎水性基は少なくとも10の炭素原子、好ましくは10〜30の炭素原子、特に12〜30の炭素原子、より好ましくは18〜30の炭素原子を含む。この疎水性基は、好ましくは直鎖状又は分枝状のC12-C30アルキル基、例えばデシル、ドデシル、ミリスチル、パルミチル又はステアリル基である。
好ましくは、炭化水素ベースの疎水性基は一官能性化合物から誘導される。例として、疎水性基は、アルキル化剤、例えば不安定なHを有するアンモニウムハライド又はスルファート、例えばアルコール官能基、及びC10-30アルキル鎖により提供される。また疎水性基は炭化水素ベースポリマー、例えばポリブタジエンであることができる。
【0011】
X及び/又はX'は以下の式:
【化3】

[上式中:
は飽和又は不飽和の環を含んでいてもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキレン基、又はアリーレン基で、炭素原子の一又は複数はN、S、O及びPから選択されるヘテロ原子で置換することができるものを表し;
、R及びRは同一又は異なっていてもよく、直鎖状又は分枝状のC1-30アルキル又はアルケニル基又はアリール基で、炭素原子の少なくとも一つはN、S、O及びPから選択されるヘテロ原子で置換することができるものを示し;
は生理学的に受容可能な対イオンである]
の一つを表すことができる。
【0012】
L及びL'基は、次の式:
【化4】

[上式中:
Zは、-O-、-S-又は-NH-を表し;かつ
は、N、S、O及びPから選択される一又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖状、分枝状及び/又は環状で、飽和又は不飽和の二価のアルキレン基を表す]
の基を表すことができる。
【0013】
Yの意味に関し、「親水性基」という表現は、ポリマー又は非ポリマーの水溶性基を意味する。この基は、不安定な水素を有する少なくとも1つの官能基、好ましくは不安定Hを有する少なくとも2つの官能基を含む。不安定水素を有するこれらの官能基は、アルコール、第1又は第2アミン、又はチオール官能基であってよい。この化合物は不安定水素を有するこれら官能基の一つを鎖の末端に有するポリマー又は分子であってよい。
例えば、ポリマーではない場合、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールを挙げることができる。
本発明の好ましい一実施態様において、それが親水性ポリマーである場合、挙げることができる例には、ポリエーテル、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリアミド又はこれらのポリマーの混合物が含まれる。親水性化合物は好ましくはポリエーテルであり、特にポリ(エチレンオキシド)又はポリ(プロピレンオキシド)である。
【0014】
本発明の両親媒性カチオン性の会合性ポリマーは、不安定水素を有する官能基を有する種々の化合物とジイソシアナートから一般的に製造される。不安定水素を有する官能基は、アルコール、第1級又は第2級アミン、又はチオール官能基であってよく、ジイソシアナート官能基との反応後にそれぞれポリウレタン、ポリ尿素及びポリチオ尿素を生じる。
【0015】
本発明のポリマーは、特に、「第4級化アミン誘導体」を「ジイソシアナートプレポリマー」と反応させる、特定の方法により得ることができる。
この方法は、特に第4級化収率が制御され、ポリマー質量に依存しないようになされるので、高い第4級化度を得ることを特に可能にする。
「ジイソシアナートプレポリマー」は、式O=C=N-R-N=C=O(Rは上述したものである)のジイソシアナートと、上述した不安定Hを有する官能基を有するプレポリマーとをカップリングすることにより得ることができる。
イソシアナート末端の作製はOH/NCO比により制御される。好ましい比はNCOが過剰である。
挙げることのできるジイソシアナートの例には、メチレンジフェニルジイソシアナート、メチレンジシクロヘキシルジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、ナフタレンジイソシアナート、ブタンジイソシアナート及びヘキサンジイソシアナートが含まれる。
【0016】
「第4級化アミン誘導体」は、第4級化アミン官能基を有する少なくとも1つの単位、特にアミン官能基を有する少なくとも2つ又は複数の単位を有する化合物である。この化合物は、好ましくはアミン官能基を有する唯一の単位を含む。また、この化合物は、例えばヒドロキシル、第1級アミン、第2級アミン又はチオール官能基により担持されて、少なくとも1つの不安定水素原子、例えば2つ又はそれ以上の不安定Hsを有する。また、一官能性、二官能性及び/又は多官能性化合物(1、2又はそれ以上の不安定Hs)の混合物を使用することもできる;しかし、多官能性化合物のパーセンテージは、混合物中において好ましくは低い。好ましくは、化合物は一官能性である(一つの不安定Hのみ)。
特に挙げることのできる「第4級化アミン誘導体」には、i)N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-tert-ブチルジエタノールアミン及びN-スルホエチルジエタノールアミンから選択される化合物と、ii)C10−30、特にC12−18ハロアルキル類、特にブロモオクタデカン、クロロオクタデカン、クロロドデシル及びブロモドデシルから選択される化合物とを反応させた生成物が含まれる。
【0017】
本発明の式(I)の両親媒性カチオン性の会合性ポリマーは水溶性又は水分散性であり、溶解又は分散した水溶液の粘度を大きく増加させる。
特に、本発明のポリマーは、以下の実施例3に記載する方法で調製された、7重量%の水溶液における27℃での粘度ηが、5〜100Pa.s、好ましくは5〜70Pa.s、さらに好ましくは5〜60Pa.sであるものである。
【0018】
良好な増粘特性及びケラチン物質に対する優れた親和性が付与されるので、本発明のこの型の両親媒性カチオン性の会合性ポリマーは、化粧品又は製薬としての用途のための組成物を製造するのに特に適している。
前記ポリマーは、好ましくは、最終組成物の重量に対して、固体で0.01〜40重量%、好ましくは0.05〜35重量%、さらに好ましくは0.05〜30重量%で、組成物、特に化粧品用組成物に存在する。
【0019】
本発明のポリマーを含有する組成物、特に化粧品用組成物は、化粧品的に許容可能な媒体に、この種の組成物に一般的に使用される成分を含有し得る。それらは、特に、水、又は水と溶媒、例えばC-Cアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール又はn-ブタノール;ポリオール、例えばグリセロール;グリコール、例えばブチレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール、例えばPEG-8;及びポリオールエーテルの混合物を含む。また、本発明の組成物は、一又は複数の添加剤、例えば固定又は非固定、アニオン性、両性、双性イオン性、非イオン性又はカチオン性ポリマー;界面活性剤;真珠光沢剤;乳白剤;有機溶媒;香料;増粘剤;ゲル化剤;鉱物、植物、動物又は合成由来の油及び/又はロウ;脂肪酸エステル類;着色料、揮発性又は非揮発性で有機変性又は非有機変性の、環状又は非環状で、分枝状又は非分枝状のシリコーン類;無機又は有機粒子;顔料及びフィラー;防腐剤;化粧品用活性剤;サンスクリーン剤;pH安定剤をさらに含有してよい。
言うまでもなく、当業者であれば、本発明の組成物の有利な特性が、考慮される添加により悪影響を受けないか、実質的に受けないように留意して、これ又はこれらの任意の付加的な化合物(類)及び/又はその量を選択するであろう。
【0020】
本発明の組成物は、顔及び/又は体の皮膚、粘膜(唇)、頭皮及び/又は毛髪のトリートメント及び手入れに使用することができる。
よって、それらは、体又は顔の手入れ用組成物;体又は顔の洗浄用組成物、例えばシャワーゲル、バスゲル又はメークアップ除去剤;体又は顔のメークアップ用組成物、例えばファンデーション、口紅、唇の手入れ用品、ネイルラッカー、爪の手入れ用品、マスカラ又はアイライナー;芳香組成物;毛髪用組成物、例えば毛髪の着色用組成物、毛髪のパーマネント-再成形用組成物;抗日光用組成物;洗浄又は毛髪の手入れ用組成物、例えばシャンプー、すすがれる又はそのまま残るコンディショナー、毛髪の染色、脱色、パーマネントウエーブ又はストレート化の前後、又はパーマネントウエーブ又は毛髪のストレート施術の2つの工程の間に適用されてすすがれる組成物;ヘアスタイルを保持するための毛髪用組成物、例えばスタイリングラッカー、ゲル、ムース又はスプレーとしての特別の用途が見出される。
【実施例】
【0021】
本発明を以下の実施例においてより詳細に例証する。
第4級化度(又は第4級化アミン単位の含有量)の決定
テスト用化合物のハライドイオン(臭化物又は塩化物)含有量を、次の方法で測定する。
仮定したハライド含有量に応じて、次の量のテスト用化合物を取り上げた:
【表1】

テスト用サンプルを70mlの脱塩水に溶解し、5mlのHNO(6N)を添加し、混合物を攪拌して、硝酸銀溶液(0.1N)を用いて攪拌しつつ電位差滴定を行った。テスト用サンプルを割愛し、テスト溶液と同じ容量になるように蒸留水を加えることによって、同様の方法でブランクテストを行った。
【0022】
使用した器具は以下の通りである:
−メトラー(Mettler)DL55メモ滴定器(memotitrator)
−アッセイに適した組み合わせ電極(メトラーDM141)
ハライド含有量(meq/g)は次の式で付与される:
[(Vi−Vo)xTxK]/m
[上式中:
−Vo:ブランクテストに対して添加した容量(ml)
−Vi:アッセイに対して添加した容量(ml)
−T :硝酸銀溶液の滴定濃度(0.1N)
−k :硝酸銀溶液の滴定ファクター
−m :テスト用サンプルの質量(g)]
第4級化度は、測定された含有量と100%第4級化に対する理論含有量との比に等しい。
【0023】
実施例1:本発明のポリマー
反応経路図は次の通りである:
【化5】

【0024】
第1段階では、メチルエチルケトン中50%溶液として、1モルのブロモオクタデカンで1モルのジメチルアミノエタノールを2時間還流して第4級化させることにより、N-ステアリル-N,N-ジメチルエタノールアンモニウムブロミドを調製した。得られた生成物を20〜25℃のアセトンで希釈し、濾過し、アセトンですすぎ、真空下のオーブンで乾燥させた。95%第4級化された真珠光沢のある白色結晶の形態の生成物が得られた(2.30meq/g;理論値=2.43meq/g)。
1280g(0.128モル)の無水ポリ(エチレンオキシド)(Mn 10000)を、窒素下で、840mlのメチルエチルケトンに溶解した。混合物を加熱して還流し、次に60.4g(0.23モル)のメチレンジシクロヘキシルジイソシアナートを滴下し、混合物を30mlのメチルエチルケトンですすいだ。反応媒体を8時間還流した。
次いで、38g(0.114モル)のN-ステアリル-N,N-ジメチルエタノールアンモニウムブロミドを添加し、続いて800mlのメチルエチルケトンを添加した;媒体の濃度は52%であった。9時間還流し続けた。
次いで2300mlのメチルエチルケトンを添加し、その後、8リットルの冷ヘプタン中、70℃で、生成物が2つの部分で沈殿した。生成物を4リットルのヘプタンですすぎ、焼結漏斗で濾過し、真空下、40℃で24時間乾燥させた。1356gの白色粉末が得られた(収率98%)。
第4級化度は91%であった(0.06meq/g;理論値=0.066meq/g)。
【0025】
実施例2:比較ポリマー
試薬:
ポリエチレンオキシド(PEG)(Mn10000): 0.010モル
メチレンジシクロヘキシルジイソシアナート: 0.018モル
N,N-ジメチルエタノールアミン: 0.020モル
臭化ステアリル: 0.024モル
オクタン酸スズ(触媒): 0.2%
数平均分子量が10000の0.010モル(100g)のポリ(エチレンオキシド)を、0.2%のオクタン酸スズ(触媒)を含むTHF105gに溶解し、次いで0.018モル(4.71g)のメチレンジシクロヘキシルジイソシアナートを滴下した。反応媒体をTHFの還流温度で15時間加熱し、6時間後に100mlのTHFを加えた。反応中にイソシアナートのNCOバンドの部分的消失を、形成されたアミド結合のCOとNHのバンドの出現と共にFTIRで観察した。媒体は非常に粘稠かつ透明であった。次いで0.020モル(1.78g)のN,N-ジメチルエタノールアミンを加え、NCOバンド及びアルコールのOHバンドが完全に消失するまで、THFの還流点で4時間反応を続けた。第4級化のために、臭化ステアリルを0.024モル(8g)、すなわちN,N-ジメチルエタノールアミンに対して20モル%過剰に反応混合物に加え、次いで非常に粘稠な反応媒体を流動化するためにTHF100gを加えた。THFの還流点でさらに36時間加熱を継続した。得られたポリマーを石油エーテルから沈殿させ、濾過し、真空下にて40℃で24時間乾燥した。これによりもろい白色粉末が得られた。水性媒体中におけるゲル浸透クロマトグラフィーで測定して(ポリスチレンで較正)数平均分子量は70000、重量平均分子量は115000であり、これは1.65の多分散性指数に相当する。
第4級化度は30%であった(0.02meq/g;理論値=0.066meq/g)。
【0026】
実施例3:粘度測定
脱イオン水に7重量%のポリマーを含有する水溶液を、最小限12時間磁石攪拌して、室温で調製した。レオロジー特性を特徴付ける前に、溶液を27℃で最小で12時間放置した。
粘度の測定を、直径35mm、角度2°のコーン−プレートジオメトリを備えたHaakeRS150制御応力レオメーターを用いて27℃で行った。サンプルを、0.1〜1000Paの間で対数分布する剪断応力の増加勾配にかけた。勾配の持続時間は2分30秒である。
粘度値を、レオグラムにおける第1ニュートン領域で決定したが、該領域では、しばしば静止時の粘度としても知られている粘度η=τ/V)が、付与される応力(τ)又は測定される剪断速度(V)と独立して一定である。
次の結果が得られた:
−実施例1のポリマー(本発明品):η=17.0±0.1Pa.s
−実施例2のポリマー(比較品):η=0.6±0.1Pa.s
【0027】
実施例4:本発明のポリマー
1/次の式:
【化6】

のN-ラウリル-N,N-ジメチルエタノールアンモニウムブロミドの調製
第1段階では、メチルエチルケトン中50%溶液として、1モルのブロモドデカンで1モルのジメチルアミノエタノールを4時間還流して第4級化させることにより、N-ラウリル-N,N-ジメチルエタノールアンモニウムブロミドを調製した。得られた生成物を1リットルの冷ヘプタンに注ぎ、濾過し、アセトンですすぎ、真空下のオーブンで40℃で乾燥させた。100%第4級化された真珠光沢のある白色結晶の形態の生成物が得られた(2.96meq/g)。
【0028】
2/ポリマーの調製
300gの無水ポリ(エチレンオキシド)(Mn 10000)を、窒素下で、300mlのメチルエチルケトンに溶解した。混合物を加熱して還流し、次に14.15gのメチレンジシクロヘキシルジイソシアナートを滴下し、得られた混合物を10mlのメチルエチルケトンですすいだ。反応媒体を6.5時間還流した。
次いで、7.1gのN-ラウリル-N,N-ジメチルエタノールアンモニウムブロミドを添加し、続いて100mlのメチルエチルケトンを添加した。8時間還流し続けた。
次に2リットルのヘプタンを添加して、生成物を60℃まで冷却して沈殿させた。
沈殿した生成物を500mlのヘプタンですすぎ、焼結漏斗で濾過し、真空下、40℃で24時間乾燥させた。
302gの白色粉末が得られた(収率94%)。
第4級化度は97%であった(0.064meq/g;理論値=0.066meq/g)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(I):
R-X-[L-(Y)]-L'-X'-R' (I)
[上式中:
− R及びR'は同一又は異なっていてもよく、疎水性基又は水素原子を表し、
− X及びX'は同一又は異なっていてもよく、以下の式:
【化1】

[上式中:
は飽和又は不飽和の環を含んでいてもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキレン基、又はアリーレン基で、炭素原子の一又は複数はN、S、O及びPから選択されるヘテロ原子で置換することができるものを表し;
、R及びRは同一又は異なっていてもよく、直鎖状又は分枝状のC1-30アルキル又はアルケニル基又はアリール基で、炭素原子の少なくとも一つがN、S、O及びPから選択されるヘテロ原子で置換することができるものを示し;
は生理学的に受容可能な対イオンである]
の一つを表し、
− L及びL'は同一又は異なっていてもよく、次の式:
【化2】

[上式中:
Zは、-O-、-S-又は-NH-を表し;かつ
は、N、S、O及びPから選択される一又は複数のヘテロ原子を含有していてもよい、1から20の炭素原子を有する、直鎖状、分枝状及び/又は環状で、飽和又は不飽和の二価のアルキレン基を表す]
の基を表し、
− Yはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、スルホン化ポリエステル、スルホン化ポリアミド、又はこれらのポリマーの混合物、から選択されるものを表し、
− rは1〜100であり、
− mは1〜1000の数である]
のポリマーであって、少なくとも1つのプロトン化した官能基又は第4級化したアミン官能基及び少なくとも一つの疎水性基を有し、
第4級化アミン単位の含有量が少なくとも85%であるポリマー。
【請求項2】
第4級化アミン単位の含有量が87%〜100%である請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
− R及びR'が、疎水性基を表し、
− X及びX'が、第4級アミンを有する基を表す、
請求項1又は2に記載のポリマー。
【請求項4】
10000〜60000の数平均分子量を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
疎水性基が、ペルフルオロ化鎖又はシリコーン鎖を有する基、又は一又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状の炭化水素鎖を有する基又は該基からなるポリマーである請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
疎水性基が炭化水素基であり、少なくとも10の炭素原子を含む請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
7重量%の水溶液における27℃での粘度ηが、5〜100Pa.sであるものである請求項1ないし6のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のポリマーを含んでなる増粘剤。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のポリマーを含有する化粧品組成物。
【請求項10】
化粧品的に許容可能な媒体に、最終組成物の重量に対して、固体で0.01〜40重量%の量のポリマーを含有してなる、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
体又は顔の手入れ用組成物;体又は顔の洗浄用組成物;体又は顔のメークアップ用組成物;芳香組成物;毛髪用組成物;抗日光用組成物;毛髪の洗浄又は手入れ用組成物;又はヘアスタイルを保持するための毛髪用組成物の形態である請求項9又は10に記載の組成物。

【公開番号】特開2007−238947(P2007−238947A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76633(P2007−76633)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【分割の表示】特願2003−12898(P2003−12898)の分割
【原出願日】平成15年1月21日(2003.1.21)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】