説明

中性脂肪代謝制御剤、それを含有する飲食品、食品添加物及び医薬

【課題】天然物由来であって、中性脂肪に対する代謝制御作用を有し、かつ、副作用の可能性が極めて小さい中性脂肪代謝制御剤、さらに飲食品、食品添加物及び医薬を提供する。
【解決手段】リンゴ抽出物またはリンゴ由来のポリフェノールを有効成分として含有してなる中性脂肪代謝制御剤である。特に、バラ科リンゴ属の未熟果実より公知抽出手段により抽出して得られる。リンゴ由来のポリフェノールにはプロシアニジン類が含まれており、具体的には、カテキン縮重合したプロシアニジンB1、プロシアニジンB2,プロシアニジンC1等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リンゴより得られる中性脂肪代謝制御剤、それを含有する飲食品、食品添加物及び医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
近年日本において、食生活の欧米化などによって様々な生活習慣病が増加傾向にあり、その中の一つ高脂血症を見分けるバロメータとして、コレステロールと並んで中性脂肪がある。中性脂肪はトリグリセライドとも呼ばれ、グリセロールに3つの脂肪酸が結合した物質であり、我々が通常「脂肪」と呼んでいるものである。中性脂肪は、身体のエネルギー源として貯蓄されているが、一定以上に増加すると高脂血症の一種である「高トリグリセライド症」になり、動脈硬化や血栓症の原因となる。こうした状態にならない為には、中性脂肪値が高くならないよう、普段から食生活等に留意をしなければならない。
【0003】
平成14年国民栄養調査結果によると、中性脂肪値が150 mg/dL以上の割合は男性で39%、女性で24%にのぼる。脂肪の過剰摂取はたんに体脂肪の増加のみならず、各種のいわゆる生活習慣病の発症のリスクを高めることが指摘されてきた。現在、動脈硬化性疾患は日本人の死因統計で癌と並んで大きな位置を占め、またその多くは働き盛りに突然発症して、社会的にも家庭的にも極めて大きな損失を与えることから、その効果的な予防及び治療対策の確立は必須の課題である(非特許文献1)。
【0004】
中性脂肪は、リポたんぱくの一種カイロミクロンとして、また、肝臓で合成されるリポたんぱくの一種(VLDL)として血液中に運ばれ、通常は、体内で脂肪酸とグリセリンという物質に分解され、脂肪酸が筋肉などでエネルギー源として消費される。使われなかった脂肪酸は、細胞に蓄えられ、エネルギーが必要になった時に取り出される。 中性脂肪は、健康な成人の場合、空腹時、血液中に50〜150 mg/dL存在し、食後3−5時間後に最高値
となるが、中性脂肪がこの正常値を超えると、脂肪が皮膚の下や内臓の周りにたまり肥満となったり、肝臓にたまり脂肪肝となる。また、脂肪の多い食事や大量の酒を飲んで、中性脂肪値が非常に高くなると、激しい腹痛を伴う急性すい炎を起こすことがある。肝臓でできたVLDLは、最終的に“悪玉リポたんぱく”に変化し、VLDLが多いと、“善玉リポたんぱく”が少なくなりやすく、悪玉リポたんぱくの性質をさらに悪くし、動脈硬化を起こす要因となる。
【0005】
植物界に広く存在するポリフェノールは、最近の研究によって様々な生理機能性を有することが確認されており、特許文献1には「プロシアニジンを有効成分とする抗肥満剤」が、特許文献2には「ホップより得られるリパーゼ阻害物質」が、特許文献3には「リパーゼ阻害剤」が、特許文献4には「リパーゼ活性阻害剤」が公開されている。しかしながら、当該発明によると、ヒトあるいは動物において吸収・代謝後の血清中の中性脂肪濃度を調節することに関して全く言及しておらず、何ら実施例も設定されていない。
【特許文献1】特開平9-291039号公報
【特許文献2】特開2001-321166号公報
【特許文献3】特開2001-226274号公報
【特許文献4】特開2003-342185号公報
【非特許文献1】動脈硬化性疾患診療ガイドライン、日本動脈硬化学会編、2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
薬物治療の普及は安易に薬剤に依存し、ライフスタイルの改善が十分おこなわれない恐れもある。しかしながら、現状では、天然物由来であって、総合的脂質代謝に対する幅広い機能性を有し、かつ、副作用の可能性が極めて小さいという点において、十分満足できるものは見出されておらず、これらの性質を満足する中性脂肪代謝制御剤が切望されている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、中性脂肪吸収を抑制する効果があり、普通食を摂取し、食事制限がなく、天然物質由来で安全性が高く、中性脂肪代謝制御作用を有する飲食品、食品添加物または医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明者らはリンゴ抽出物が、中性脂肪代謝制御作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を要旨とするものである。
(1) リンゴ抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする中性脂肪代謝制御剤。
(2) 前記リンゴ抽出物がリンゴ由来ポリフェノールであることを特徴とする(1)に記載の中性脂肪制御剤。
(3) (1)または(2)に記載の中性脂肪代謝制御剤を含有する飲食品。
(4) (1)または(2)に記載の中性脂肪代謝制御剤を含有する食品添加物。
(5) (1)または(2)に記載の中性脂肪代謝制御剤を含有する医薬。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリンゴ抽出物を有効成分とする中性脂肪代謝制御剤は、副作用が極めて少なく中性脂肪の吸収を抑制することができる。
【0011】
また、上記の中性脂肪代謝制を有効成分として含有する飲食品、食品添加物及び医薬は、副作用が極めて少なく中性脂肪の吸収を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明におけるリンゴ由来ポリフェノールは、リンゴ抽出物中に有効成分として含まれているものである。本発明における中性脂肪代謝制御剤は、リンゴ抽出物あるいはリンゴ由来ポリフェノールのいずれでもよいが、好ましくはリンゴ由来ポリフェノールである。精製度の高いリンゴポリフェノールは、飲食品等に添加する場合、おりや濁りを発生しにくく、また、飲食品等自身に与える風味の影響も抑えることができるといった加工上の応用性が高い。
【0013】
さらに、本発明のリンゴ由来ポリフェノールにはプロシアニジン類が含まれている。プロシアニジン類とは、具体的には、カテキンが縮重合したプロシアニジンB1、プロシアニジンB2、プロシアニジンC1等を合せての総称である。
【0014】
本発明で使用するリンゴ由来ポリフェノールを含有するリンゴ抽出物は、バラ科リンゴ属植物の果実、例えば、フジ、陸奥、津軽、スターキング・デリシャス等の栽培品種及び原種リンゴ等より公知抽出手段により抽出して得られる。
【0015】
果実としては成熟果実、未熟果実ともに用いることができるが、より多くのポリフェノール化合物を含有すること、及び広範な生理作用を有する各種活性成分を多量に含むことから、未熟果実が特に好ましい。
【0016】
本発明のリンゴ抽出物中に含有されるリンゴ由来ポリフェノールは、リンゴ果実、若しくは未熟果実の搾汁果汁、抽出液より精製されたポリフェノール画分からなるものであるが、当該ポリフェノール画分の精製は、搾汁果汁、抽出液を吸着剤で処理することにより行なわれ、吸着剤に吸着する画分(以下、吸着画分という)にポリフェノールは含有されている。吸着剤としては、ポリフェノールを吸着するものであれば特に限定されないが、例えば親水性ビニルポリマー樹脂(東ソー社製「トヨパールHW40」)、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂(三菱化学社製「セパビーズSP−850」)、ゲル型合成樹脂(三菱化学社製「ダイヤイオンHP-20」)を挙げることができる。
【0017】
吸着剤に吸着した吸着画分を、例えばエタノール等の含水アルコールで溶出させることにより、ポリフェノール画分が精製される。当該ポリフェノール画分は、次いで濃縮処理することにより液体製剤を得ることができ、さらに、当該液体製剤を噴霧乾燥もしくは凍結乾燥処理することにより粉末製剤を得ることもできる。
【0018】
リンゴ由来ポリフェノール中においては、プロシアニジン類は大部分が2量体及び3量体として存在しているが、高分子プロシアニジン類は、加熱やアルカリ等の処理で変性や酸化分解されやすい。
【0019】
一方、低分子プロシアニジン類は体内に吸収されるが、高分子プロシアニジン類は容易には体内に吸収されず、多くは排泄されると考えられている。
【0020】
しかしながら、分子量の違いよる機能性の違いについては、検討はほとんどされていない。
【0021】
リンゴ由来ポリフェノールの原料となるリンゴ抽出物の抽出方法としては、例えば洗浄した原料をpH3.2〜4.6、好ましくはpH3.5〜4.3で破砕し、得られた果汁にペクチナーゼを5〜75℃、好ましくは30〜60℃で10〜100ppm、好ましくは20〜30ppmで清澄化を行い、遠心分離後、5〜75℃、好ましくは15〜25℃で珪藻土(商品名「シリカ300S」、中央シリカ社製)濾過によりさらに清澄化を行い、清澄果汁を得る。或いはヘキサン、クロロホルム等の有機溶媒による分配及び濾過を行い、清澄抽出液を得る。
【0022】
次いで清澄果汁を0〜40℃、好ましくは15〜25℃、pH1.5〜4.2、好ましくはpH3.0〜4.0で前記吸着剤を充填した吸着カラムに通液し、ポリフェノール類を吸着させる。続いて純水を通液し、カラム中の非吸着物質(糖類、有機酸類等)を除去した後、10〜90%、好ましくは30〜80%のエタノールで吸着画分を溶出する。得られた吸着画分からエタノールを25〜100℃、好ましくは35〜90℃で減圧留去し、濃縮液をそのままで液体のリンゴ由来ポリフェノールとしてもよい。或いはデキストリン等の粉末助剤を添加し、噴霧乾燥又は凍結乾燥を行い、リンゴ由来ポリフェノールの粉末品としてもよい。
【0023】
製剤(リンゴ由来ポリフェノール)中における総ポリフェノール中のプロシアニジン類の含有率としては、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは30〜90重量%、特に好ましくは40〜65重量%である。更に、プロシアニジンに占める2量体及び3量体の割合は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは25〜70重量%、特に30〜70重量%が好ましい。この範囲であると血清及び/あるいは肝臓中性脂肪代謝制御する効果が明瞭に発現される。
【0024】
また、プロシアニジン類の含有量の10〜80重量%、好ましくは15〜70重量%が、2量体及び/又は3量体から選ばれたものであると、製剤としての呈味が更に優れ、無理なく連用できるため、好ましい。
【0025】
本発明の中性脂肪代謝制御剤により、血清及び/あるいは肝臓中性脂肪代謝制御する効果を得るための成人1日あたりの投与量は、プロシアニジン類として、100〜2500 mgであるが、好ましくは150〜1500 mg、更に好ましくは150〜1000 mg、特に150〜750 mgである
のが好ましい。
【0026】
本発明の中性脂肪代謝制御剤を利用する場合、プロシアニジン類の吸収の点から、1日あたりのリンゴ抽出物量またはリンゴ由来ポリフェノール量を少ない回数で摂取する方がプロシアニジン類の血中濃度が高くなり、プロシアニジン類の作用を発現しやすい。
【0027】
本発明の中性脂肪代謝制御剤は、飲料を含む、広く食品一般に食品添加物として添加して用いることができ、例えばスープ類、飲料(ジュース、酒、ミネラルウォーター、コーヒー、茶、ノンアルコールビール等)、菓子類(ガム、キャンディー、チョコレート、スナック、ゼリー等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、アルコール飲料(ビール、発泡酒、カクテル、チューハイ、焼酎、日本酒、ウィスキー、ブランデー、ワイン等)に好適に用いられる。
【0028】
本発明の中性脂肪代謝制御剤を含む飲料の場合は、飲料中のリンゴ抽出物またはリンゴ由来ポリフェノール中に含まれるプロシアニジン類の含有量は0.05〜1.25重量%、好ましくは0.15〜0.75重量%、特に0.3〜0.5重量%が好ましい。この量であるとプロシアニジン類の多量の摂取が容易でありながら、苦味を生じなく好ましい。また0.05重量%以上であると、飲用時にコクを持った味となり好ましい。
【0029】
本発明の中性脂肪代謝制御剤を含む食品の場合は、食品の一部として中性脂肪を含有する食品に用いることができる。かかる中性脂肪含有食品としては、例えば特定の機能を発揮して健康増進を図る健康食品が挙げられる。具体的には、かかる中性脂肪を含有したホイップクリーム類、アイスクリーム類、チョコレート類、ドレッシング類、ソース類、揚げ物類等が挙げられる。
【0030】
本発明の中性脂肪代謝制御剤を食品添加剤や医薬に用いる場合の製剤としては、製剤中、プロシアニジン類が、0.05〜1.25重量%、好ましくは0.15〜0.75重量%、更に0.3〜0.5重量%含有するのが好ましい。この量であるとプロシアニジン類の苦味がなく、多量の摂取が容易であり、投与回数、効果の点で好ましい。
【0031】
本発明の中性脂肪代謝制御剤を含む医薬品の剤形は特に限定されないが、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、シロップ剤、乳剤等の液剤等の経口投与剤が挙げられる。この経口投与剤は、形態に応じて当分野において通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料、薬剤用担体等を添加して通常使用されている方法によって製造することができる。プロシアニジン類は、経口投与用医薬品中に、医薬品の用途及び形態によっても異なるが、一般に0.1〜100重量%、特に1〜80重量%含有するのが好ましい。
【0032】
実施例
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(製造例1)
青森県産リンゴ幼果300kgを破砕、圧搾し果汁210kgを得た。得られた果汁にペクチナーゼ30ppmで清澄化を行い、遠心分離後、珪藻土(シリカ300S、中央シリカ社製)濾過により清澄化を行い清澄果汁を得た。清澄果汁を吸着カラム(セパヒーズHP-20、三菱化学社製)に通液し、ポリフェノール類を吸着させた。続いて純水を通
液し、カラム中の非吸着物室(糖類、有機酸類など)を除去したのち、80%アルコールで溶出した。得られた画分からアルコールを減圧濃縮し、抽出粉末品約2kを調製した。抽出粉末品を逆相計高速液体クロマトグラフィーを用いて検定したところ、クロロゲン酸類(約20%)、フロレチレン配糖体類(約5%)、フラボノール類(約15%)、プロアントシアニジン(約50%)及びその他褐変物質(約10%)からなることが確認できた。更に、このプロシアジニン類は、マトリックス支援レーザーイオン化―飛行時間型質量分析計(MALDI−TOF/MS、アプライドバイオシステム社製)による解析の結果、フラボノール類であるカテキンやエビカテキンから構成される2量体から15量体までのオリゴマーやポリマーであることが確認された。(M.Ohnishi−kameyama et al.Mass Spectrometry,11,31,-36,1997)
【0034】
(試験例1)プロシアニジン類の測定
フィルター(0.8μm)で濾過した液体のリンゴリンゴ由来ポリフェノールを、高速液体クロマトグラフ(日立社製、型式L7000)を用い、逆相液体クロマトグラフ用パックドカラムODS C18(4.6mmφ×250mm、GLサイエンス社製)に装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。移動相A液はリン酸カリウム10mmol/L含有の10%メタノール水溶液、B液はリン酸カリウムを10mmol/L含有の10%メタノール水溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280 nmの条件で行った。
【0035】
(試験例2)リンゴ由来ポリフェノールのリパーゼ阻害作用
1mg/mLのブタ膵臓リパーゼ(脂質分解酵素)、水もしくは8〜1000μg/mLリンゴ由来ポリフェノール水溶液、0.1mM オレイン酸メチルウンベリフェロンを1容:1容:2容で混合し、室温で60分間反応させた。5容の0.1N 塩酸を加えた後、さらに5容の0.1M クエン酸3ナトリウムを加え、励起320nm、吸収450nmの蛍光量を測定してリパーゼ活性によりオレイン酸メチルウンベリフェロンから遊離した4−メチルウンベリフェロン量を算出した。製造例1で得られたリンゴ由来ポリフェノールの添加による、4−メチルウンベリフェロン遊離量の抑制率を以て、リパーゼ阻害率とした。
【0036】
製造例1で得られたリンゴ由来ポリフェノール水溶液の添加により、4−メチルウンベリフェロンの遊離量はリンゴ由来ポリフェノールの濃度に依存して低下し、IC50値は412μg/mLであった。リンゴ由来ポリフェノールにリパーゼ阻害活性が確認された(表1)。
【0037】
【表1】

【0038】
(試験例3)リンゴ由来ポリフェノールの中性脂肪代謝制御作用(動物)
20時間絶食した7週齢の雄性ddY系マウス(一群9匹)から眼窩採血を行い、10mL/kgのサラダ油を経口投与した後、直ちに10mL/kgの水、もしくは10%(w/v)のリンゴ由来ポリフェノール水溶液(製造例1)を経口投与した。60分、120分、180分後に再度眼窩採血を行い、血漿を分離して中性脂肪濃度を測定した。リンゴ由来ポリフェノールの投与により、サラダ油負荷後の血漿中性脂肪値上昇が顕著に抑制され、リンゴ由来ポリフェノールに中性脂肪分吸収抑制作用が認められた(表2)。
【0039】
【表2】

【0040】
使用したリンゴ由来ポリフェノール:
プロシアニジン類 63.8%
成分 2量体 11.1%
3量体 12.3%
4量体 8.7%
5量体 5.9%
6量体 4.9%
7量体以上 20.9%
総ポリフェノール類 93.5%
【0041】
(比較例1)錠剤
ラクトース140gとコーンスターチ17gとを混合し、この混合物をあらかじめコーンスターチ70gから調整したペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム1gを加えてよく混合し、この混合物を打錠機にて打錠して錠剤1000個を製造した。
【0042】
(実施例1)錠剤
製造例1で得られたリンゴ由来ポリフェノール150gとラクトース90gとコーンスターチ17gを混合し、この混合物をあらかじめコーンスターチ70gから調整したペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム1gを加えてよく混合し、この混合物を打錠機にて打錠して錠剤1000個を製造した。
使用したリンゴ由来ポリフェノール:
プロシアニジン類 52.0%
成分 2量体 13.5%
3量体 15.1%
4量体 5.0%
5量体 3.4%
6量体 2.8%
7量体以上 12.1%
総ポリフェノール類 91.2%
【0043】
(実施例2)錠剤
製造例1で得られたリンゴ由来ポリフェノール60gとラクトース90gとコーンスターチ17gを混合し、この混合物をあらかじめコーンスターチ70gから調整したペーストとともに顆粒化した。得られた顆粒にステアリン酸マグネシウム1gを加えてよく混合し、この混合物を打錠機にて打錠して錠剤1000個を製造した。
使用したリンゴ由来ポリフェノール:
プロシアニジン類 52.0%
成分 2量体 13.5%
3量体 15.1%
4量体 5.0%
5量体 3.4%
6量体 2.8%
7量体以上 12.1%
総ポリフェノール類 91.2%
【0044】
(試験例4)リンゴ由来ポリフェノールの中性脂肪代謝制御作用(ヒト)
次に、臨床試験により、リンゴ由来ポリフェノールの血清中性脂肪の代謝制御作用を検討した。
【0045】
血清総中性脂肪が150 mg/dL以下である健康な試験対象者12名(20〜65歳の男)に試験
食である錠剤10個(対照群(比較例1、リンゴ由来ポリフェノール含量 0 mg)、投与
群(実施例1、リンゴ由来ポリフェノール含量 1500 mg)及び(実施例2、リンゴ由来ポリフェノール含量 600mg))を市販のコーンクリームポタージュスープ(「スジャータたっぷりコーンクリームポタージュ生」(商品名、名古屋製酪(株)製、)200gに雪印無塩バター(雪印乳業(株)製)17gと雪印ラード(雪印乳業(株)製)14gを添加し、加温溶解した)とともに摂取させた。試験対象者の血清総中性脂肪値(TG)を測定した。投与群では血清総中性脂肪値(TG)が低下した。その結果を図1に示す。図1中、P
は対照群、A1500は実施例1の錠剤の投与群(リンゴ由来ポリフェノール含量1500mg)、A600は実施例2の錠剤の投与群(リンゴ由来ポリフェノール含量600mg)を表す。また、各種血液検査から異常は認められなかった。摂取期間中、問題となるような訴えは全く見られなかった。
【0046】
(試験例5)リンゴ由来ポリフェノールの安全性試験
{14日間反復投与毒性試験}
SD系ラット(日本チャールスリバー)の雌雄を各3匹に分け、リンゴ由来のポリフェノ
ールを2000、3000 mg/kg量、胃ゾンデにて14日間投与を行った。実験時の一般状態、体重に異常は見られず、実験終了後の一般血液検査及び解剖所見も異常が見られなかった。
【0047】
{90日間反復投与毒性試験}
SD系ラット(日本チャールスリバー)の雌雄を各10匹に分け、リンゴ由来のポリフェノールを500、1000、2000 mg/kg量、胃ゾンデにて90日間投与を行った。実験時の一般状態
、体重に異常は見られず、実験終了後の一般血液検査及び解剖所見も異常が見られなかった。
【0048】
{変異原性試験}
SD系ラット(日本チャールスリバー)の雄性を5匹に分け、リンゴ由来のポリフェノ
ールを500、1000、2000 mg/kg量、胃ゾンデにて投与を行った。一般状態、体重に異常は
見られず、小核をもつ多染性赤血球及び多染性赤血球の出現頻度において、陰性対照群と比較して有意な差はなく、小核誘発性は陰性であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
リンゴ由来ポリフェノールを有効成分とする中性脂肪代謝制御剤は、副作用が極めて少なく中性脂肪の吸収を抑制することができるので、本発明は有用である。
【0050】
また、上記の中性脂肪代謝制御剤を有効成分として含有する飲食品、食品添加物及び医薬は、副作用が極めて少なく中性脂肪の吸収を抑制することができるので、本発明は有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】リンゴ由来のポリフェノールを摂取した健常人の血清中性脂肪濃度推移を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンゴ抽出物を有効成分として含有してなることを特徴とする中性脂肪代謝制御剤。
【請求項2】
前記リンゴ抽出物がリンゴ由来ポリフェノールであることを特徴とする請求項1に記載の中性脂肪制御剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の中性脂肪代謝制御剤を含有する飲食品。
【請求項4】
請求項1または2に記載の中性脂肪代謝制御剤を含有する食品添加物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の中性脂肪代謝制御剤を含有する医薬。

【図1】
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【公開番号】特開2006−151944(P2006−151944A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124435(P2005−124435)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】