説明

中空樹脂粒子の製造方法

【課題】ハンドリングの困難な中空樹脂粒子を乾燥する工程がなく、かつ、比重の小さな中空樹脂粒子を得ることができる中空樹脂粒子の製造方法を提供することである。
【解決手段】 ジャケット(C)を有するケーシングの内部に粉体を面更新させることが可能な攪拌羽根(A)が、ケーシングに対して平行かつ水平に配置された軸上に設置され、ジャケット(C)、攪拌羽根(A)及び軸からなる群から選ばれる少なくとも1種に熱媒を導入することができる伝熱面積/有効体積が10m-1以上である間接加熱型撹拌乾燥機(B)に、一端上部の供給口から熱膨張性マイクロカプセルを連続的に供給して、他端下部の排出口から中空樹脂粒子を連続的に排出することを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張性マイクロカプセルを加熱膨張して中空樹脂粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性マイクロカプセルは、加熱することにより数十倍の体積に膨張する粒子である。熱膨張性マイクロカプセルを加熱により膨張させる方法としては、高温スチームにより加熱する方法(以下、湿式法とする)が主流である。湿式法は、マイクロカプセルにかかる温度が極めて均一であるため、得られる中空樹脂粒子の比重が均一になるという利点がある。また、マイクロカプセルの品温を素早く膨張温度まで上げることができれば、膨張剤として内包されている炭化水素が無用に放出されることがなく膨張倍率が向上するが、湿式法によれば、マイクロカプセルの品温が素早く膨張温度に達するため高い膨張倍率が得られる。(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)
【特許文献1】特開2005−82718
【特許文献2】特開2005−254213
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
湿式法は、上記のような利点を有する反面、得られる中空樹脂粒子が水分を多量に含んでおり、乾燥した中空樹脂粒子が求められる場合には、極めて比重の小さな中空樹脂粒子を乾燥しなければならないという欠点がある。通常の用途においては、乾燥した中空樹脂粒子が求められる場合が多く、この乾燥工程が高コスト化の大きな原因となっている。また、粉塵による作業環境の汚染や、品質面においても水分含量が高く、水と反応する若しくは水が触媒となる樹脂等には使用しにくいといった問題もある。
一方、特開平4−9319に連続式レーディゲミキサーを使用した乾式による加熱膨張方法が例示されているが、レーディゲミキサーは加熱効率が高くなく膨張倍率が低下するばかりか、滞留時間の制御性が悪いため無機微粒子を添加して熱膨張性マイクロカプセルの合一を防止する必要がある。従って、この方法では比重の小さな中空樹脂粒子を得ることはできなかった。
すなわち、本発明の目的は、ハンドリングの困難な中空樹脂粒子を乾燥する工程がなく、かつ、比重の小さな中空樹脂粒子を得ることができる中空樹脂粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の中空樹脂粒子の製造方法の特徴は、ジャケット(C)を有するケーシングの内部に粉体を面更新させることが可能な攪拌羽根(A)が、ケーシングに対して平行かつ水平に配置された軸上に設置され、ジャケット(C)、攪拌羽根(A)及び軸からなる群から選ばれる少なくとも1種に熱媒を導入することができる伝熱面積/有効体積が10m-1以上である間接加熱型撹拌乾燥機(B)に、一端上部の供給口から熱膨張性マイクロカプセルを連続的に供給して、他端下部の排出口から中空樹脂粒子を連続的に排出する点を要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の加熱膨張方法によれば、乾式による加熱膨張方法であるため、湿式法のように得られた中空樹脂粒子を乾燥する工程がなく、乾燥することによる高コスト化や粉塵による作業環境の汚染等といった問題が発生しない。また、得られる中空樹脂粒子の水分が低く、水と反応する若しくは水が触媒となる樹脂等にも問題なく使用することができる。更に、湿式法と同等の膨張性を保持し、湿式法と同じように比重の小さな中空樹脂粒子を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明における間接加熱型撹拌乾燥機(B)のジャケット(C)とは、内部に空洞を有し、気体や液体からなる熱媒や冷媒を導入することが可能な金属性のカバーを意味する。ケーシングの外側に位置し、熱媒や冷媒を導入することでケーシングを加熱又は冷却する機能を有する。
【0007】
本発明においてケーシングとは、攪拌羽根、ジャケット、供給口及び排出口等が設置された装置の胴体部分を意味する。
攪拌羽根は、ケーシングの内部に配置され、ジャケットは外部に設置される。ケーシングとジャケットは一体として製造される場合もある。
供給口はケーシングの一端上部に設置されており、排出口はケーシングの一端下部に設置されている。供給口から供給された熱膨張性マイクロカプセルは、ケーシングの中で加熱処理されて、排出口より排出される。即ち、ケーシング内部は、熱膨張性マイクロカプセルの処理室の役割を果たす。
ケーシングの材質としては、熱伝導性及び耐久性が高いものであれば使用することができるが、SUS304、SUS316、SUS316Lが好ましい。
【0008】
粉体を面更新させることができる攪拌羽根(A)としては、種々の形状のものを使用することができ、円型、三角型、扇型、長方形型、円柱型などが挙げられる。
攪拌羽根(A)は、伝熱面積の向上やメンテナンス容易性の観点から、ケーシングに対して平行かつ水平に配置された軸上に設置される。軸を設けて該軸上に攪拌羽根(A)を設置することにより、ケーシング中央部の大きな空間が軸及び攪拌羽根(A)で埋まることになり、有効体積が減少するし、後述のように、軸及び攪拌羽根(A)にも熱媒を導入すれば伝熱面積も大幅に向上することになる。
【0009】
ここで粉体を面更新させることができるとは、粉体を移動させることができることを意味し、移動させる方向は供給口側又は排出口側、若しくは、上部又は下部のいずれであってもよい。この面更新によって、熱膨張性マイクロカプセルをケーシング内壁や攪拌羽根等の熱媒が導入される部位に接触させて熱処理し、熱処理が完了して得られた中空樹脂粒子を熱媒が導入される部位から離隔させる。面更新による粉体の移動が排出口方向以外である場合には、原料の供給によるピストンフローや装置自体の角度を排出口側に傾けることによる重力沈降等により粉体を排出口側に移動させることができる。
【0010】
本発明において熱媒とは、装置を加熱する媒体であって、スチーム又は耐熱性オイル等が使用される。導入する熱媒の温度としては、後述する熱可塑性ポリマーの軟化温度より5〜50℃高いことが好ましく、さらに好ましくは10〜40℃高いことである。具体的には、120〜200℃であることが好ましく、更に好ましくは130〜180℃である。この範囲内であると、膨張倍率が更に良好なものとなる。
【0011】
本発明において伝熱面積とは、粉体に熱を加えることができる部分の総面積であって、ケーシング内の粉体が接触可能な部分であり、かつ、熱媒により加熱することが可能な部分の面積を意味する。従って、例えば、ジャケット及び攪拌羽根に熱媒を導入することが可能な場合、粉体が接触可能なケーシング内部のジャケット及び攪拌羽根の表面積が伝熱面積となる。また、ジャケット、攪拌羽根及び軸のいずれにも熱媒を導入することが可能な場合、粉体が接触可能なケーシング内部のジャケット、攪拌羽根及び軸の表面積が伝熱面積となる。
間接加熱型撹拌乾燥機(B)において熱媒を導入する部位はジャケット、攪拌羽根及び軸からなる群から選ばれる少なくとも1種であるが、ジャケット、攪拌羽根及び軸すべてに導入するのが好ましい。
【0012】
有効体積とは、ケーシング内部の有効体積であって、ケーシング内部の総体積から攪拌羽根や軸等の体積を差し引いたものを意味する。従って、ケーシングが大きくても、攪拌羽根等の占める体積が大きい場合には有効体積は小さくなる。有効体積が小さい場合、即ち、ケーシング中央部の大きな空間が軸及び攪拌羽根(A)で埋まっている等の場合では、熱膨張性マイクロカプセルの拡散距離が小さくなる。従って、攪拌により伝熱面に熱膨張性マイクロカプセルが接触する頻度が高くなり、膨張倍率が良好なものとなる。
伝熱面積/有効体積とは、伝熱効率の指標であって、単位はm-1である。この値が大きいほど、伝熱効率がよく、粉体の温度を迅速に上げることができる。熱膨張性マイクロカプセルの温度を迅速に膨張温度まで上げることにより、高い膨張性を確保するためには、伝熱面積/有効体積(m-1)は、10以上であることが必要であり、15〜100であることが好ましく、更に好ましくは20〜100、特に好ましくは30〜100である。伝熱面積/有効体積(m-1)が10未満であると、熱膨張性マイクロカプセルの品温上昇が極めて緩やかとなり、熱可塑性ポリマーシェルの軟化温度に達するまでに多量の膨張剤(低沸点溶剤等)が拡散し、膨張倍率が大幅に低下することになる。一方、膨張性向上の観点からは、伝熱面積/有効体積(m-1)は大きい方がよいが、大凡100を超える市販の間接加熱型撹拌乾燥機(又は改良機種)は存在しない。装置の設計が不可能又は極端に難しいためであり、伝熱面積/有効体積(m-1)の上限は自ずと100程度になる。
【0013】
熱膨張性マイクロカプセルの供給から中空樹脂粒子の排出までの時間は、任意に制御することが可能で、熱媒温度や熱可塑性ポリマーの軟化温度等に従って調整する。膨張性、生産性等の観点から、0.5〜15分であることが好ましく、更に好ましくは0.6〜12分、特に好ましくは0.8〜10分である。
熱膨張性マイクロカプセルの供給から中空樹脂粒子の排出までの時間は、主に攪拌羽根(A)の回転速度及び熱膨張性マイクロカプセルの供給速度によって決定される。回転速度は、装置の容量等によっても異なるが、有効体積が5〜100m3の装置の場合、20〜80rpmが適正であり、好ましくは30〜50rpmである。熱膨張性マイクロカプセルの供給速度も装置の容量等により異なるが、有効体積が5〜100m3の装置の場合、5〜50kg/時間が適正であり、好ましくは10〜40kg/時間である。
【0014】
間接加熱型攪拌乾燥機としては、前記の条件を満たすものであれば使用することができ、たとえ既存の乾燥機であっても前記の条件を満たすものであれば使用することができる。
ここで間接加熱型とは、ジャケット、攪拌羽根及び軸等の熱媒が導入される部位に粉体が接触することにより加熱されるという方式であって、直接炎やスチーム等により粉体が加熱される直接加熱型と区別される。
間接加熱型攪拌乾燥機の実例としては例えば、パドルドライヤー(奈良機械社製)、コンティーニアンスニーダー、CDドライヤー(栗本鉄工所社製)、インナーチューブロータリー(大川原製作所社製)、ロータリーキルン(栗本鉄工所、高砂社製)、ソリッドエア、サーモプロセッサ(ホソカワミクロン社製)等が挙げられる。
これらのうち、膨張性、生産性等の観点から、パドルドライヤー(奈良機械社製)、コンティーニアンスニーダー、CDドライヤー(栗本鉄工所社製)、インナーチューブロータリー(大川原製作所社製)、ソリッドエア、サーモプロセッサ(ホソカワミクロン社製)が好ましく、更に好ましくは、パドルドライヤー(奈良機械社製)、コンティーニアンスニーダー、CDドライヤー(栗本鉄工所社製)、特に好ましくは、パドルドライヤー(奈良機械社製)、CDドライヤー(栗本鉄工所社製)である。
一端上部の供給口から熱膨張性マイクロカプセルを連続的に供給する方法としては、品質の安定化等の観点から、定量フィーダーを用いて供給する方法が適当である。定量フィーダーとしては、アキュレートフィーダー(ミュー精器社製)、ヒートンフィーダー(ラサ工業社製)等を使用することができる。
【0015】
本発明において熱膨張性マイクロカプセルとは、加熱することにより体積が数倍〜数十倍に膨張する粒子であって、熱可塑性ポリマーからなるポリマーシェル内に低沸点溶剤や昇華性固体が膨張剤として内包されている。
【0016】
ポリマーシェルを構成する熱可塑性ポリマーとしては、加熱することにより軟化するポリマーであれば使用でき、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ビニルポリマーなどが挙げられる。また、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂のような一般的には熱硬化性と言われるポリマーであっても加熱により軟化するポリマーであれば使用できる。
ポリマーシェルを構成する熱可塑性ポリマーの軟化温度は、熱膨張性マイクロカプセルが使用される目的に応じて任意に制御できるが、一般的には、100〜180℃が好ましく、さらに好ましくは110〜170℃、特に好ましくは120〜160℃である。なお、軟化温度はJISK5601−2−2:1999の5.1粉末法(測定サンプルは、50℃、0.1〜3torrで90分間加熱処理を行なう)に準拠して測定される。
これらのうち、膨張性の観点からガスバリア性の高いポリマーが好ましく、具体的には、ポリアミド及びビニルポリマーが好ましく、特に好ましくはビニルポリマーである。
【0017】
ここでビニルポリマーとは、ビニルモノマーを構成単位とするポリマーであって、シアノ基含有ビニルモノマーを構成単位とすることが好ましい。ビニルモノマーとしては、シアノ基含有ビニルモノマーの他、(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマー、炭素数8〜12の芳香族ビニル炭化水素、炭素数2〜18の脂肪族ビニル炭化水素、炭素数5〜15の脂環式ビニル炭化水素、炭素数3〜22の(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のビニルスルホン酸、炭素数3〜10のビニルエーテル、炭素数4〜11のビニルケトン、架橋性モノマー等を使用することができる。
これらのうち、膨張性及び膨張温度制御の観点等から、シアノ基含有ビニルモノマーの他に、(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマー、芳香族ビニル炭化水素、(メタ)アクリルアミドを併用することが好ましく、更に好ましくは、(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有ビニルモノマーの併用である。
【0018】
シアノ基含有ビニルモノマーとしては、シアノ基を持つビニルポリマーであれば制限なく使用でき、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル、α−エトキシ(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、マレオイルニトリル、シアノスチレン及びこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、ガスバリア性の観点等から、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル及びα−エトキシ(メタ)アクリロニトリルが好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリロニトリル、特に好ましくはアクリロニトリルである。
なお、本明細書において、(メタ)アクリ・・・は、アクリ・・・及びメタクリル・・・を意味する。
【0019】
(メタ)アクリレートとしては、炭素数4〜24のアルキル(メタ)アクリレート等が使用でき、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリレートとしては、アルキル(メタ)アクリレート以外にも、各種官能基を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基の炭素数2〜20:2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等(アルキル基については以下同様))、アミノアルキル(メタ)アクリレート(アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノイソプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート及びアミノヘキシル(メタ)アクリレート等)、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート(イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、イソシアナトブチル(メタ)アクリレート及びイソシアナトヘキシル(メタ)アクリレート等)、グリシジルメタクリレート(GMA)、ポリエチレングリコール(重量平均分子量100〜10000)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレン・ポリプロピレングリコール(重量平均分子量200〜10000、オキシエチレンの含有量10〜90重量%)モノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコール(重量平均分子量100〜10000)モノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらのうち、膨張性向上の観点等から、炭素数4〜15の(メタ)アクリレートが好ましく、更に好ましくは、メチルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり、特に好ましくは、メチルメタクリレートである。
【0021】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、炭素数3〜20のビニルカルボン酸等が用いられ、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル(アルキルの炭素数1〜20:マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル及びマレイン酸モノヘキシルエステル等(アルキルについては以下同様))、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル(グリコールの炭素数2〜20:エチレングリコール、プロピレングリコール及びヘキセングリコール等)、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル及び桂皮酸等、並びにこれらのアルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウム及びマグネシウム等)塩、アミン(炭素数3〜20:トリメチルアミン、トリエチルアミン、ブチルジメチルアミン及びトリエタノールアミン等)塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。
これらのうち、膨張性及び耐熱性(膨張開始温度の向上、高温での膨張性等を意味する。以下同様)の観点等から、炭素数3〜10のビニルカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸及びマレイン酸モノアルキルエステル、特に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0022】
炭素数8〜12の芳香族ビニル炭化水素としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルピリジン、クロロスチレン、アミノスチレン、及びジクロロスチレン等が挙げられる。
炭素数2〜18の脂肪族ビニル炭化水素(D2)としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、オクテン、ドデセン、オクタデセン1−ブテン−3−オール及び2−ブテン−1−オール等が挙げられる。
炭素数5〜15の脂環式ビニル炭化水素としては、ビニルシクロヘキサン、シクロヘキセン、ピネン、リモネン及びインデン等が挙げられる。
【0023】
炭素数3〜22の(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド(N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド及びN−ベンジル(メタ)アクリルアミド等)、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド等)、N−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド及びN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等)、及びアミノアルキル(メタ)アクリルアミド(ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等)等が挙げられる他に、N−ビニルラクタム(N−ビニルピロリドン等)等も使用できる。
【0024】
炭素数2〜10のビニルスルホン酸としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、(メタ)アクリロキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及びプロピルアリルスルホコハク酸、並びにこれらのアルカリ金属(ナトリウム及びカリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウム及びマグネシウム等)塩、アミン塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。
【0025】
炭素数3〜10のビニルエーテルとしては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、ビニル2−ブトキシエチルエーテル、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル及びビニル2−エチルメルカプトエチルエーテル等が挙げられる。
【0026】
炭素数4〜11のビニルケトンとしては、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルフェニルケトン及びビニル2−エチルヘキシルケトン等が挙げられる。
【0027】
架橋性モノマーとしては、ビニル基を少なくとも2個有するモノマー等が使用でき、炭素数4〜10のジエン、炭素数8〜12のビス(メタ)アクリルアミド、ポリオール(炭素数2〜10)のポリ(メタ)アクリレート、炭素数6〜9のポリアリルアミン、炭素数6〜17のポリアリルエーテル及び炭素数9〜14のジアリルエステル等が使用できる。
ジエンとしては、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びジアリルカルビノール等が挙げられる。
ビス(メタ)アクリルアミドとしては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド及びN,N’−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ポリオールのポリ(メタ)アクリレートとしては、ポリオールジ(メタ)アクリレート{エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(重合度2〜5)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びグリセリンジ(メタ)アクリレート等}、及びポリオールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート{グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート等}等が挙げられる。
ポリアリルアミンとしては、ジアリルアミン及びトリアリルアミン等が挙げられる。
ポリビニルエーテルとしては、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル{ジアリルエーテル、ジアリロキシメタン、ジアリロキシエタン及びペンタエリスリトールジアリルエーテル等}、及びトリ−又はテトラ−アリルエーテル{テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等}等が挙げられる。
ジアリルエステルとしては、フタル酸ジアリル、マロン酸ジアリル、コハク酸ジアリル及びアジピン酸ジアリル等が挙げられる。
【0028】
シアノ基含有ビニルモノマーと、その他のビニルモノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のビニルモノマーとを構成単位とする場合、シアノ基含有ビニルモノマー単位の含有量(モル%)は、構成単位とするビニルモノマーの全モル数に基づいて、50〜99.5が好ましく、さらに好ましくは60〜96、特に好ましくは70〜93である。この範囲であると、ガスバリア性が十分に発揮でき膨張性がさらに良好となる。
シアノ基含有ビニルモノマー以外のビニルモノマーからなる群より選ばれる少なくとも1種のビニルモノマー単位の含有量(モル%)は、構成単位とするビニルモノマーの全モル数に基づいて、0.5〜50が好ましく、さらに好ましくは4〜40、特に好ましくは7〜30である。この範囲であると、膨張性及び耐熱性がさらに良好となる。
(メタ)アクリレート又はカルボキシル基含有ビニルモノマーを構成単位として含む場合、この含有量(モル%)は、構成単位とするビニルモノマーの全モル数に基づいて、0.5〜50が好ましく、さらに好ましくは2〜30、特に好ましくは5〜20である。
架橋性ビニルモノマーを構成単位として含む場合、この含有量(モル%)は、構成単位とするビニルモノマーの全モル数に基づいて、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5、特に好ましくは0.09〜1である。この範囲であると、膨張性及び耐熱性がさらに良好となる。
【0029】
熱可塑性ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、5000〜100万が好ましく、さらに好ましくは1万〜50万、特に好ましくは2万〜30万である。なお、Mwは、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエションクロマトグラフィにより測定される。
【0030】
揮発性液体及び/又は昇華性固体(SL)としては、ポリマーシェル(PS)の構成成分を溶解しないものであれば特に限定されず、公知のもの等使用でき、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン及び昇華性化合物等が含まれる。
炭化水素としては、炭素数3〜15の炭化水素等が用いられ、プロパン、ブタン、ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロペンタン及びメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、炭素数1〜4のハライド等が用いられ、塩化エチル、塩化メチル、臭化メチル、クロロホルム、ジクロロブタン及びトリクロロエタン等が挙げられる。
アルコールとしては、炭素数1〜20のアルコール等が用いられ、メタノール、エタノール、ブタノール、シクロヘキサノール及びt−ブタノール等が挙げられる。
エーテルとしては、炭素数2〜15のエーテル等が用いられ、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジオキサン及びテトラヒドロフラン等が挙げられる。
ケトンとしては、炭素数3〜13のケトン等が用いられ、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ベンゾフェノン及びジシクロヘキシルケトン等が挙げられる。
昇華性化合物としては、アゾ化合物(アゾイソブチロニトリル(AIBN)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、バリウムアゾジカルボキシレート、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンニトリル、ジアゾアミノベンゼン等)、スルホヒドラジド化合物(ジフェニルスルホン−3,3′−ジスルホヒドラジド、4,4′−ヒドロキシ−ビス−(ベンゼンスルホヒドラジド)、トリヒドラジノトリアジン、アリール−ビス−(スルホヒドラジド)、p−トルエンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシベンゼンスルホニルヒドラジド等)、ニトロソ化合物(N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N−ジメチル−N,N′−ジニトロソフタラミド等)、セミカルバジド(p−トリレンスルホニルセミカルバジド、4,4′−ヒドロキシ−ビス−(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等)、トリアゾール(5−モルホリル−1,2,3,4−チアトリアゾール等)、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酒石酸水素カリウム、フマル酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0031】
これらのうち、膨張性の観点等から、炭化水素及びアゾ化合物が好ましく、さらに好ましくは炭化水素、特に好ましくはペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン及びイソヘキサンである。
揮発性液体及び/又は昇華性固体(SL)の含有量(重量%)は、ポリマーシェル(PS)の重量に基づいて、1〜50が好ましく、さらに好ましくは5〜20、特に好ましくは10〜15である。
【0032】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、ポリマーシェル(PS)内に、熱膨張性マイクロカプセルの重量に基づいて1〜50重量%の(SL)を含有することが好ましく、更に好ましくは2〜40重量%、特に好ましくは3〜20重量%である。
この範囲であれば、膨張性が良好な熱膨張性マイクロカプセルが得られる。
【0033】
本発明の熱膨張性マイクロカプセルは、公知の方法により製造することができ、例えば、アクリロニトリル、メタクリル酸、(メタ)アクリレート及び必要によりその他のモノマー、揮発性液体(SL)、並びに重合開始剤を混合し、この混合物を界面活性剤及び/又は分散安定剤を含む水性媒体中で懸濁重合させる方法(特公昭42−26524号公報等)等により製造することができる。
重合温度(℃)は、40〜120が好ましく、さらに好ましくは45〜90、特に好ましくは50〜80である。重合は、大気圧下で行ってもよいが、揮発性液体等(SL)を気体状にさせないようにするため加圧下(大気圧+0.1〜1MPa)で行うことが好ましい。
懸濁重合は、耐圧容器を用い、密閉下で行うことが好ましい。また、分散機等で懸濁してから、耐圧容器に移して懸濁重合してもよく、耐圧容器内で懸濁させてもよい。
重合終了後は、公知の方法(遠心分離や濾過等)によって、固液分離及び/又は洗浄してもよい。一方、固液分離を行わず、水に分散した状態若しくは溶剤等に分散した状態で製品とすることもできる。
固液分離及び/又は洗浄する場合、この後、ポリマーシェル(PS)の軟化温度以下にて乾燥及び/又は粉砕してもよい。乾燥及び粉砕は、既知の方法により行うことができ、気流乾燥機、順風乾燥機及びナウターミキサー(ホソカワミクロン社製)等を使用できる。また、乾燥及び粉砕は粉砕乾燥機等によって同時に行うこともできる。
【0034】
重合開始剤としては特に限定されるものではないが、モノマーに可溶の油溶性開始剤が好ましく、公知のパーオキサイド開始剤及びアゾ開始剤等を使用できる。これらのうち、アゾ開始剤が好ましく、さらに好ましくは2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン1−カーボニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル及び2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、特に好ましくは2,2’−アゾビスイソブチロニトリルである。
重合開始剤を用いる場合、この使用量(重量%)は、構成単位とするビニルモノマーの全重量に基づいて、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.05〜2、特に好ましくは0.1〜1である。
【0035】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(重合度1〜100)ラウリル硫酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度1〜100)ラウリル硫酸トリエタノールアミン等)、カチオン性界面活性剤(塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等)、ノニオン性界面活性剤(アジピン酸ジエタノールアミン縮合物、ラウリルジメチルアミンオキシド、モノステアリン酸グリセリン、モノラウリン酸ソルビタン及びステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩等)及び両性界面活性剤(ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びβ−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等)が含まれ、これらの界面活性剤の他に、高分子型分散剤(ポリビニルアルコール、デンプン及びカルボキシメチルセルロース等)を使用することができる。
これらのうち、カチオン性、ノニオン性、両性の界面活性剤及びこれらと高分子型分散剤との併用が好ましく、さらに好ましくはノニオン性活性剤及びノニオン性活性剤と高分子型分散剤との併用、特に好ましくはノニオン性活性剤である。
界面活性剤を使用する場合、この使用量(重量%)は、モノマーと揮発性液体(SL)との全重量に基づいて、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5、特に好ましくは0.1〜2である。
【0036】
分散安定剤としては、シリカ(コロイダルシリカ等)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム及び水酸化マグネシウム等が使用され、2種類以上を併用することもできる。
これらのうち、分散安定性の観点等から、コロイダルシリカが好ましい。
分散安定剤を使用する場合、この使用量(重量%)は、モノマーと揮発性液体(SL)との全重量に基づいて、0.01〜30が好ましく、さらに好ましくは0.1〜20、特に好ましくは0.5〜10である。
【0037】
熱膨張マイクロカプセルの体積平均粒径(μm)は、0.1〜100が好ましく、さらに好ましくは0.5〜60、特に好ましくは1〜30である。
なお、樹脂等の軽量化材に使用される場合、10〜100μmが好ましく、さらに好ましくは20〜60μmである。また、自動車用等の塗料に使用される場合、0.5〜60μmが好ましく、さらに好ましくは1〜20μmである。また、体積平均粒径は、JIS Z8825−1:2001に記載された測定原理{光散乱法(25℃)}を有するレーザー回折式粒度分布測定装置{たとえば、堀場製作所製LA−920、島津製作所製SALD−1100型等)により求められる。
体積平均粒径は、公知の方法によって制御でき、界面活性剤の種類及び量(量を増やすと小さくなる)、分散安定剤の種類及び量(量を増やすと小さくなる)、分散条件(条件をきつくすると小さくなる)等によって任意に制御できる。
熱膨張性マイクロカプセルの形状は、針状や扁平状でもよいが、膨張性の観点等から、球状であることが好ましい。シェルの厚みは、体積平均粒子径等により異なるが、通常、0.5〜75μm程度であり、(SL)の量(量を多くすると薄くなる)等により調整することができる。
【0038】
中空樹脂粒子は、熱膨張性マイクロカプセルを熱処理することにより得られる。
中空樹脂粒子の体積平均粒径(μm)は、0.1〜200が好ましく、さらに好ましくは0.5〜150、特に好ましくは1〜100である。
また、体積平均粒径は、JIS Z8825−1:2001に記載された測定原理{光散乱法(25℃)}を有するレーザー回折式粒度分布測定装置{たとえば、堀場製作所製LA−920、島津製作所製SALD−1100型等)により求められる。
体積平均粒径は、熱膨張性マイクロカプセルの粒径を制御することにより調整できるし、また熱膨張性マイクロカプセルの加熱膨張温度や時間によっても任意に制御できる。
【0039】
中空樹脂粒子の比重(g/cm3)は、0.6〜0.008が好ましく、さらに好ましくは0.5〜0.01、特に好ましくは0.4〜0.02である。
ここで、中空樹脂粒子の比重とは、中空部を含んだ粒子全体の比重(見掛け密度)を意味する。
なお、比重はJIS Z8807−1976「固体比重測定方法」の2.比重びんによる測定方法(液体;蒸留水又はメタノール)に準拠して測定される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0041】
<中空樹脂粒子の比重>
JIS Z8807−1976「固体比重測定方法」の2.比重びんによる測定方法(液体;メタノール)に準拠して測定した。本比重が小さい方が、熱膨張性マイクロカプセルの膨張性が優れることを意味する。
【0042】
<中空樹脂粒子の水分含量>
JISK6828−1合成樹脂エマルジョン不揮発分の求め方に準拠して測定する。尚、水分含量測定時の加熱温度は80℃とする。
【0043】
<実施例1>
脱イオン水340重量部、20%コロイダルシリカ水溶液17.6重量部、アジピン酸−ジエタノールアミン縮合物1.0重量部及び塩化ナトリウム110重量部を均一に混合した後、これに、アクリロニトリル83重量部、メタクリル酸10重量部、メチルメタクリレート14重量部、ペンタン23重量部及びアゾビスイソブチロニトリル0.5重量部からなる溶液を加え、ホモミキサー(特殊機械(株)製 ROBOMICS、4000rpm)を用いて2分間撹拌して、懸濁液を得た。
この懸濁液を耐圧反応容器に移し、ゲージ圧0.25MPa、60℃にて20時間重合させた。次いで、重合液を濾過した後、60℃にて5時間乾燥させて熱膨張性マイクロカプセルを得た。
この熱膨張性マイクロカプセルを図1に記載の間接加熱型撹拌乾燥機(L;0.5m、W;0.2m、伝熱面積;0.35m2、有効体積;0.005m3、伝熱面積/有効体積;70m-1、熱媒はジャケット、攪拌羽根及び軸に導入)にて熱処理(供給から排出までの時間3分)することにより中空樹脂粒子を得た。定量フィーダーからの供給スピードは10kg/時間に設定した。熱媒には170℃のスチームを使用した。
【0044】
<実施例2>
図1に記載の間接加熱型攪拌乾燥機のジャケットのみに熱媒を導入して使用する(伝熱面積/有効体積;20m-1)以外は実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。
【0045】
<実施例3>
アクリロニトリル83重量部、メタクリル酸10重量部、メチルメタクリレート14重量部に代えて、アクリロニトリル83重量部、メタクリル酸15重量部、メチルメタクリレート9重量部を使用する以外は実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。
【0046】
<実施例4>
アクリロニトリル83重量部、メタクリル酸10重量部、メチルメタクリレート14重量部に代えて、アクリロニトリル85重量部、メタクリル酸7重量部、メチルメタクリレート14重量部、N,N−ジメチルアクリルアミド1重量部を使用し、かつ、図1に記載の間接加熱型攪拌乾燥機の攪拌羽根及び軸のみに熱媒を導入して使用する(伝熱面積/有効体積;50m-1)以外は実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。
【0047】
<実施例5>
アクリロニトリル83重量部、メタクリル酸10重量部、メチルメタクリレート14重量部に代えて、アクリロニトリル83重量部、メチルメタクリレート20重量部、N,N−ジメチルアクリルアミド3重量部を使用する以外は実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。
【0048】
<実施例6>
伝熱面積等が(L;0.5m、W;0.35m、伝熱面積;0.10m2、有効体積;0.01m3、伝熱面積/有効体積;10m-1)である図1に記載の間接加熱型攪拌乾燥機のジャケットにのみ熱媒を導入して使用する以外は実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。
【0049】
<比較例1>
図2に記載の間接加熱型攪拌乾燥機(L;0.5m、W;0.3m、伝熱面積;0.47m3、有効体積;0.07m3、伝熱面積/有効体積;7m-1、熱媒はジャケットにのみ導入)を使用する以外は実施例1と同様にして、中空樹脂粒子を得た。
【0050】
<比較例2>
熱膨張性マイクロカプセルの膨張工程を、特許2927933実施例1に記載の方法に準拠して行う。
実施例1で製造した熱膨張性マイクロカプセルを15重量%を含有する水分散液に調整し、この分散液を図3に示す装置で処理し中空微粒子組成物を得た。分散液は35kg/時間の流速でスラリー導入管(13)から発泡管(直径36mm長さ600mm,SUS304TP製)(5)に送り込み、さらにタンク(6)中の水を熱交換器(7)で160℃に加熱し、これを150kg/時間の流量で熱交換器(5)の導入部(14)に供給し、前記スラリーと混合した。このときの発泡管内の温度は、140℃に設定した。発泡管吐出部(9)から流出する発泡体スラリー液に、常温の水を250kg/時間で導入し、スラリー液を60℃以下に冷却した後、吸引脱水機(10)により脱液して、85%の水を含む中空樹脂粒子が得られた。
【0051】
実施例1〜6、比較例1〜2の中空樹脂粒子について、ポリマーシェルの軟化温度、比重、及び水分を測定し、表1に結果を記載した。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例のいずれの中空樹脂粒子の製造方法においても、得られた中空樹脂粒子の比重が小さい。熱膨張性マイクロカプセルの膨張倍率が高いことが分かる。また、得られる中空樹脂粒子は水分をほとんど有さず、湿式法のように多量の水分を含むことはない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の製造方法により得られる中空樹脂粒子は、湿式法と同等の低比重性を有し、かつ、水分が少なく、水と反応する若しくは水が触媒となる樹脂等にも問題なく使用することができる。従って、湿式法により得られる中空樹脂粒子全ての用途に使用することができ、特に、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の厳格な水分管理が必要とされる樹脂に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】間接加熱型攪拌乾燥機−2軸型
【図2】間接加熱型攪拌乾燥機−軸なし型
【図3】湿式膨張装置(特許2927933図面1より引用)
【符号の説明】
【0056】
A:攪拌羽根
C:ジャケット
S:軸
FI:供給口
F:定量フィーダー
EX:排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャケット(C)を有するケーシングの内部に粉体を面更新させることが可能な攪拌羽根(A)が、ケーシングに対して平行かつ水平に配置された軸上に設置され、ジャケット(C)、攪拌羽根(A)及び軸からなる群から選ばれる少なくとも1種に熱媒を導入することができる伝熱面積/有効体積が10m-1以上である間接加熱型撹拌乾燥機(B)に、一端上部の供給口から熱膨張性マイクロカプセルを連続的に供給して、他端下部の排出口から中空樹脂粒子を連続的に排出することを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
導入する熱媒の温度が120〜200℃である請求項1に記載の中空樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
供給する熱膨張性マイクロカプセルを構成するポリマーシェルの軟化温度が100〜180℃である請求項1又は2に記載の中空樹脂粒子の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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