説明

中間相組成物およびこれを用いた有機半導体素子

【課題】有機半導体材料等に用いられる、高速なキャリヤ移動度を示す材料を提供すること。
【解決手段】アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とを混合して得られる中間相組成物による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間相組成物およびこれを用いた有機半導体薄膜、有機半導体素子および有機半導体接合部に関する。
【背景技術】
【0002】
新しい剛直平板状の円盤状液晶(ディスコチック液晶)化合物としては、トリフェニレンを中心骨格に有する化合物が開発されている。前記化合物の半導体特性を測定したところ、10−1cm/V・sという非常に高い電荷移動度を示すことが報告され(例えば、非特許文献1参照。)、新しい有機半導体材料として興味が持たれている。
【0003】
ディスコチック液晶性化合物を有機半導体として用いる場合、カラムナー相、特にヘキサゴナルカラムナー相(Col)の液晶状態を示すことが好ましい。ヘキサゴナルカラムナー相(Col)とは、ディスコチック液晶性化合物の分子が六方晶柱状に積み重ってカラムを形成し、前記カラムが、二次元に配列をした液晶相である。
【0004】
一方、棒状液晶性化合物に関する分野においては、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物は、フッ素原子の電気陰性度が大きく且つファンデルワールス半径が小さいという特徴から、液晶性を損なうことなく大きな誘電率異方性値を発現することが数多く報告されている。
【0005】
一方、ディスコチック液晶では2種以上の液晶性化合物を混合した組成物を使用することは少なく、2種以上の液晶性化合物を混合することで高秩序のカラムナー相を発現することは、これまで知られていなかった。
【0006】
ディスコチック液晶性化合物としては、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物が報告されている(例えば、特許文献1,2および非特許文献2参照。)。特許文献1には、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物が、ヘキサゴナルカラムナー相のみならず、カラムナー相を発現するとの記載は全くなく、またそれらを有機半導体材料として用いることを示唆する記載さえない。
【0007】
非特許文献2には、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物が、カラムナー相を発現することは記載されていたが、Colを発現することは記載されてはおらず、さらにそれらの詳細なデータ(カラムナー相の種別、液晶相の温度範囲など)はほとんど示されていない。また、それらを有機半導体材料として用いることは、示唆されていない。
【0008】
特許文献2には、フッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物が、Colを発現することが記載されている。
【0009】
しかしながら、有機半導体材料の観点からみると、Colは高次の液晶相であるため、特許文献2に記載のフッ素で置き換えられたフェニレン環を有する化合物は、高い温度領域であると液晶状態から等方性液体(Iso)に状態が変化してしまうことから、高速な電荷輸送ができなくなる問題がある。なお、PN接合を持つ高性能の有機半導体素子(例えばトランジスタ、サイリスタ、ダイオード)の実現には、複数の半導体材料接合部分の制御が重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開94/29263号パンフレット
【特許文献2】特開2008−85289号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】D.Haarer et al, Nature, 371, 141(1994)
【非特許文献2】Mol.Cryst.Liq.Cryat.,1998,66,103-114
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、有機半導体材料等に用いられる、高速なキャリヤ移動度を示す材料を提供することを課題の1つとする。また、本発明は、有機半導体材料を用いた有機半導体を提供することを課題の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために創意研究した。その結果、アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とを混合して組成物とすることにより、粘度が高くなり、単独物質では形成されない新たな高粘性の中間相が特定の温度範囲で形成されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は下記に示す中間相組成物およびこれを用いた有機半導体薄膜、有機半導体素子および有機半導体接合部を提供するものである。
[1] アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とを混合して得られる中間相組成物。
[2] 前記中間相組成物は、アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物およびフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物がそれぞれ単独で示す液晶相の粘度を越える粘度を有することを特徴とする前記[1]項に記載の中間相組成物。
[3] アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物およびフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物の中心骨格が、共役π電子系化合物からなることを特徴とする前記[1]項に記載の中間相組成物。
[4] 10−3(cm−1−1)以上のキャリヤ移動度を示すことを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載の中間相組成物。
[5] アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、式(1)で表される化合物の少なくとも1種であり、フッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、式(2)で表される化合物の少なくとも1種である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の中間相組成物。
【0015】
【化1】

【0016】
式(1)および(2)において、R、R’は独立して、水素、炭素数1〜24のアルキル、炭素数1〜23のアルコキシ、炭素数2〜24のアルケニル、炭素数2〜24のアルキニル、炭素数2〜23のアルコキシアルキル、炭素数2〜23のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、または炭素数2〜23のチオアルケニルであり;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシルアルキル、アルケニルオキシ、チオアルキルおよびチオアルケニルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられていてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;
Aは独立して、アリーレンであり;
A’は独立して、少なくとも1個の水素がフッ素で置き換えられているアリーレンであり;
Z、Z’は独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−CHCO−、−COCH−、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、−(CHCH=CH−、−(CHCFO−、または−OCF(CH−である。
[6] アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、式(1A)で表される化合物の少なくとも1種であり、フッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、式(2A)で表される化合物の少なくとも1種である前記[5]項記載の中間相組成物:
【0017】
【化2】

【0018】
式(1A)および式(2A)において、Z、Z’は独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−である。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載の中間相組成物で構成される有機半導体薄膜。
[8] 前記[7]に記載の有機半導体薄膜および複数の電極で構成される有機半導体素子。
[9] 前記[1]〜[6]のいずれかに記載の中間相組成物で構成される有機半導体接合部。
[10] 前記[9]に記載の有機半導体接合部を有する有機半導体素子。
【発明の効果】
【0019】
本発明の中間相組成物は、フッ素置換されたアリール部分とフッ素置換されていないアリール部分とが強い相互作用を生じ、この相互作用により、高い粘度の中間相に相転移すると考えられる。この新たな中間相では分子中央のπ電子共役系部分の強い相互作用をもたらし、その結果としてより高速なキャリヤ移動度を示す半導体材料となる。これにより液晶性化合物の混合による新たな高性能有機半導体材料の提供および有機半導体接合部における効率的な電荷輸送層の形成を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】左図は、混合物のDSC測定結果(昇温、降温速度:1℃/min)を示す。右図は、127℃における光学組織(モザイク組織)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の中間相組成物は、アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とを混合して得られる中間相組成物である。本発明の中間相組成物は、フッ素化アリール部分とフッ素化されていないアリール部分とが強い相互作用を生じることにより、粘度が上昇すると考えられる。
【0022】
本発明において、アリール部分を有するとは、ディスコチック液晶性化合物の中心骨格と直接または連結基を介して結合するアリーレンを有していることをいう。相互作用の観点から、本発明では、例えば、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物において、各A,A’で表されるアリーレン骨格部分が同じであることが好ましい。
【0023】
前記中間相組成物は、アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物およびフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物がそれぞれ単独で示す液晶相の粘度を越える粘度を有する。
【0024】
アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物との混合比率は、アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物1モルに対して、フッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、0.1〜10モルであり、好ましくは、0.5〜5モルである。この範囲の混合比率とすることで、高粘度の中間相組成物が得られる。また、必要に応じて、溶媒に溶解させて調製することもできる。
【0025】
また、アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物およびフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物の中心骨格が、共役π電子系化合物であることが好ましい。共役π電子系化合物としては、平面上に広がりを持つ化合物であり、環状構造を有する中心骨格に数本の側鎖が結合した構造を採るのが一般的である。中心骨格としては、例えば、ベンゼン、トリフェニレン、ポルフィリン、フタロシアニンおよびシクロヘキサンが挙げられ、トリフェニレンが好ましい。
【0026】
【化3】

【0027】
式(1)および式(2)において、R、R’は独立して、水素、炭素数1〜24のアルキル、炭素数1〜23のアルコキシ、炭素数2〜24のアルケニル、炭素数2〜24のアルキニル、炭素数2〜23のアルコキシアルキル、炭素数2〜23のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、または炭素数2〜23のチオアルケニルであり;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシルアルキル、アルケニルオキシ、チオアルキルおよびチオアルケニルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−または−SiH−で置き換えられていてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよい。また、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシルアルキル、アルケニルオキシ、チオアルキルおよびチオアルケニルは、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。また、Aは独立して、アリーレンであり、A’は独立して、少なくとも1個の水素がフッ素で置き換えられているアリーレンである。A’としては、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、および2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−フェニレン等が例示できる。
【0028】
本発明の好ましい化合物は、式(1)および式(2)において、R、R’は独立して、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルコキシ、炭素数2〜20のアルケニル、炭素数2〜20のアルキニル、炭素数2〜20のアルコキシアルキル、炭素数1〜20のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、または炭素数2〜20のチオアルケニルであり、前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシルアルキル、アルケニルオキシ、チオアルキルおよびチオアルケニルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−または−SiH−で置き換えられていてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよい。また、前記アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アルケニルオキシ、チオアルキルおよびチオアルケニルは、直鎖であっても、分岐鎖であってもよく、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。Zは独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−である化合物である。
【0029】
本発明の好ましい式(1)で表される化合物は、下記の式(1A)表される化合物である。また、本発明の好ましい式(2)で表される化合物は、下記の式(2A)表される化合物である。
【0030】
【化4】

【0031】
式(1A)および式(2A)において、R、R’は、前記の式(1)および式(2)の定義と同様である。また、Z、Z’は独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−である。
【0032】
式(2A)表される化合物は、1個のフェニレンに4個のフッ素原子を有しているが、フッ素原子が1個、2個又は3個の化合物をさらに組み合わせることにより、高粘度かつ安定な新たな構造の中間相組成物を得ることもできる。
【0033】
別の好ましい実施形態において、本発明の好ましい式(2)で表される化合物は、下記の式(2B)表される化合物である。
【0034】
【化5】

【0035】
式(2B)中、R、R’は前記に定義される通りであり、Xは水素又はフッ素であり、1つのフェニレンに1〜4個のフッ素原子を有するように選択される。
【0036】
「アルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−などで置き換えられていてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−などで置き換えられていてもよく」の句の意味を一例で示す。CH(CH−において任意の−CH−を−O−で、また任意の−(CH−を−CH=CH−で置き換えた基の例は、CH(CH)O−、CH−O−(CH−、CH−O−CH−O−、HC=CH−(CH−、CH−CH=CH−CH−、CH−CH=CH−O−などである。このように「任意の」語は、「区別なく選択された少なくとも一つの」を意味する。化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接した−CH−O−O−CH−よりも、酸素と酸素が隣接しないCH−O−CH−O−の方が好ましい。
【0037】
RおよびR’の例は、水素、フッ素、塩素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、アルキルチオアルコキシ、アシル、アシルアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシ、シラアルキル、およびジシラアルキルである。少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたこれらの基も好ましい。好ましいハロゲンはフッ素および塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。これらの基において、RおよびR’は、分岐鎖であっても直鎖であってもよいが、RおよびR’が光学活性であるとき以外は、分岐鎖よりも直鎖の方が好ましい。
【0038】
好ましいRおよびR’は、フッ素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルキニル、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、ポリフルオロアルキル、およびポリフルオロアルコキシである。さらに好ましいRは、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ポリフルオロアルキル、およびポリフルオロアルコキシである。もっとも好ましいRおよびR’は、アルキル、アルコキシ、およびアルキルチオである。
【0039】
アルキルの具体的な例は、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1224、−C1327、−C1429、および−C1531である。
【0040】
アルコキシの具体的な例は、−OC、−OC11、−OCH(CH)C、−OC13、−OCH(CH)C、−OC15、−OCH(CH)C11、−OC17、−OCH(CH)C13−OC19、−OCH(CH)C15、−OC1021、−OCH(CH)C17、−OC1123、−OCH(CH)C19、−OC1224、−OCH(CH)C1021、−OC1327、−OC1429および−OC1531である。
【0041】
アルコキシアルキルの具体的な例は、−(CH−O−CH、−(CH−O−C、−(CH−O−CH、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−C、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−C、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−(CHCH、−(CH−O−C、および−(CH−O−CHである。
【0042】
アルケニルの具体的な例は、−CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHCH、−(CHCH=CH、−CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CH(CHCH、−(CHCH=CHC、−(CHCH=CHCHおよび−(CHCH=CHである。
【0043】
アルケニルオキシの具体的な例は、−OCHCH=CHCH、−O(CHCH=CH、−OCHCH=CHC、−O(CHCH=CHCH、−O(CHCH=CH、−OCHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CHC、−O(CHCH=CHCH、−O(CHCH=CH、−OCHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CHC、−O(CHCH=CHCH、−O(CHCH=CH、−OCHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CH(CHCH、−O(CHCH=CHC、−O(CHCH=CHCHおよび−O(CHCH=CHである。
【0044】
アルキニルの具体的な例は、−C≡CC、−C≡C(CHCH、−C≡C(CHCH、−C≡C(CHCH、−C≡C(CHCH、−C≡C(CHCHおよび−C≡C(CHCHである。
【0045】
チオアルキルの具体的な例は、−SC、−SC11、−SCH(CH)C、−SC13、−SCH(CH)C、−SC15、−SCH(CH)C11、−SC17、−SCH(CH)C13、−SC19、−SCH(CH)C15、−SC1021、−SCH(CH)C17、−SC1123、−SCH(CH)C19、−SC1224、−SCH(CH)C1021、−SC1327、−SC1429および−SC1531である。
【0046】
アルキルチオアルキルの具体的な例は、−(CH−S−CH、−(CH−S−C、−(CH−S−CH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−C、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−C、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−(CHCH、−(CH−S−Cおよび−(CH−S−CHである。
【0047】
少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたアルキルの具体的な例は、−(CHCF、−(CHCHF、−(CH2)CFCF、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCFおよび−CHCHF(CHCHである。
【0048】
少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられたアルコキシの具体的な例は、−OCHCF、−O(CHCHF、−O(CH2)CFCF、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCFおよび−OCHCHF(CHCHである。
【0049】
少なくとも一つの水素がハロゲンで置き換えられていてもよいアルケニルの具体的な例は、−CHCF=CFCF、−(CHCH=CF、−CHCF=CFC、−(CHCF=CFCF、−(CHCH=CF、−CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CFC、−(CHCF=CFCF、−(CHCH=CF、−CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CF(CFCF、−、−(CHCF=CFC、−(CHCF=CFCF、−(CHCH=CF、−CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CF(CFCF、−(CHCF=CFC、−(CHCF=CFCFおよび−(CHCH=CFである。
【0050】
好ましいRおよびR’の具体的な例は、−C、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−C1123、−C1224、−OC、−OC11、−OCH(CH)C、−OC13、−OCH(CH)C、−OC15、−OCH(CH)C11、−OC17、−OCH(CH)C13−OC19、−OCH(CH)C15、−OC1021、−OCH(CH)C17、−OC1123、−OCH(CH)C19、−OC1224、−OCH(CH)C1021、−(CH−O−CH、−(CH−O−CH、−(CH−O−C、−(CH−O−C、−(CH−O−C、−(CH−O−CH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CH、−(CHCH=CH、−O(CHCH=CH、−O(CHCH=CH、−O(CHCH=CH、−O(CHCH=CH、−SC、−SC11、−SCH(CH)C、−SC13、−SCH(CH)C、−SC15、−SCH(CH)C11、−SC17、−SCH(CH)C13、−SC19、−SCH(CH)C15、−SC1021、−SCH(CH)C17、−SC1123、−SCH(CH)C19、−SC1224、−SCH(CH)C1021、−(CH−S−CH、−(CH−S−C、−(CH−S−CH、−(CH−S−C、−(CH−S−C、−(CH−S−C、−(CH−S−CH、−(CHCFCF、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−(CH(CFCF、−CHCHF(CHCH、−O(CHCFCF、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCFおよび−OCHCHF(CHCHである。
【0051】
さらに好ましいRおよびR’の具体的な例は、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−OC、−OC11、−OCH(CH)C、−OC13、−OCH(CH)C、−OC15、−OCH(CH)C11、−OC17、−OCH(CH)C13、−OC19、−OCH(CH)C15、−OC1021、−SC、−SC11、−SCH(CH)C、−SC13、−SCH(CH)C、−SC15、−SCH(CH)C11、−SC17、−SCH(CH)C13、−SC19、−SCH(CH)C15、−SC1021、−SCH(CH)C17、−(CHCFCF、−(CH(CFCF、−(CH(CFCF、−(CH(CFCF、−(CH(CFCF、−(CH(CFCF、−O(CH2)CFCF、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCF、−OCHCHF(CHCH、−O(CH(CFCFおよび−OCHCHF(CHCHである。
【0052】
最も好ましいRおよびR’の具体的な例は、−C11、−C13、−C15、−C17、−C19、−C1021、−OC、−OC11、−OCH(CH)C、−OC13、−OCH(CH)C、−OC15、−OCH(CH)C11、−OC17、−OCH(CH)C13、−OC19、−OC1021、−SC、−SC11、−SCH(CH)C、−SC13、−SCH(CH)C、−SC15、−SCH(CH)C11、−SC17、−SCH(CH)C13、−SC19、−SC1021および−SCH(CH)C17である。
【0053】
Aで表されるアリーレンとしては、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、フェナンスリレンなどが挙げられる。
【0054】
A’で表される、少なくとも1個の水素がフッ素で置き換えられているアリーレンとしては、2−フルオロフェニレン、3−フルオロフェニレン、2,3−ジフルオロフェニレン、2,5−ジフルオロフェニレン、2,6−ジフルオロフェニレン、3,5−ジフルオロフェニレン、2,3,5−トリフルオロフェニレン、2,3,6−トリフルオロフェニレン、2,3,5,6−テトラフルオロフェニレンなどのフッ素置換フェニレン、モノフルオロナフチレン、ジフルオロナフチレン、トリフルオロナフチレン、テトラフルオロナフチレン、ペンタフルオロナフチレン、ヘキサフルオロナフチレンなどのフッ素置換ナフチレン、1〜8個のフッ素原子で置換されたアントラセニレン、1〜8個のフッ素原子で置換されたフェナンスリレンなどが挙げられる。
【0055】
「少なくとも1個の水素がフッ素で置き換えられている1,4−フェニレン」の例は、下記の環(5−1)〜(5−9)である。好ましい例は環(5−3)〜(5−9)である。より好ましい例は環(5−4)、(5−5)、(5−7)〜(5−9)である。最も好ましい例は環(5−9)である。
【0056】
【化6】



【0057】
ZおよびZ’は独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−CHCO−、−COCH−、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、−(CHCH=CH−、−(CHCFO−、または−OCF(CH−である。−CH=CH−のような結合基の二重結合に関する立体配置はシスよりもトランスが好ましい。
【0058】
好ましいZおよびZ’の例は、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−および−(CHCH=CH−である。
【0059】
さらに好ましいZおよびZ’の例は、単結合、−(CH−、−COO−、−CONH−、−CHO−、−CH=CH−、−C≡C−、−(CH−、−(CHO−、−(CHCOO−および−(CHCONH−である。
【0060】
最も好ましいZの例は、単結合、−(CH−、−COO−、−CHO−、−CH=CH−および−C≡C−である。
【0061】
材料の物性に大きな差異が生じないことから、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【0062】
なお、本明細書において、「ディスコチック液晶性化合物の分子が六方晶状に積み重なってカラムを形成し、前記カラムが、二次元に配列」するとは、剛直平板状の中心骨格周辺に置換基を有する液晶性化合物の分子が六方晶状に積み重なってカラムを形成し、前記カラムが、二次元に配列することを意味する。
【0063】
さらに上記材料以外に必要に応じて各種添加剤として、たとえば酸化防止剤、光安定剤、表面調整剤(レベリング剤)、界面活性剤、保存安定剤、滑剤、溶媒、濡れ性改良材等を必要に応じて配合することができる。
【0064】
本発明の中間相組成物を有機半導体等の材料として利用する場合には、中間相組成物は、1種単独で使用することも、2種以上混合して使用することも可能である。
【0065】
本発明の中間相組成物は、式(1)で表される化合物と、式(2)で表される化合物とを溶液中で混合し、高粘性の溶液として調製することができる。式(1)で表される化合物と式(2)で表される化合物との混合は、式(1)で表される化合物1モルに対し、式(2)で表される化合物を0.2〜4.0モル、好ましくは0.3〜3.0モル使用する。
【0066】
本発明の中間相組成物を加熱融解させ、融解液として、基板上に塗布または印刷することができる。また、この融解液を用いると毛細管現象を利用して狭間隔のセルに材料を封入することができ、ノズルを使ったインクジェット法による印刷方法も利用することができる。他方、この融解液をペーストとして用いることにより、任意の厚さを持つ有機半導体厚膜を作成することができる。
【0067】
本発明の中間相組成物を溶かすことができる有機溶媒としては、種々の有機溶媒を挙げることができる。有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、乳酸エチル、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、アセトン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ブチルセルソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水およびこれらの混合物が挙げられる。
【0068】
本発明の中間相組成物は、有機溶媒などに溶解させた溶液、または融解させた状態で、基板上に塗布または印刷することにより、有機半導体薄膜を作成することができる。有機半導体素子に使用する有機半導体薄膜の厚さは、通常10〜1000ナノメートルが用いられる。この場合、溶液中の中間相組成物の濃度は、0.1〜10重量%が好ましい。また、1,000ナノメートルより厚い有機半導体薄膜を作成するときには、融解した中間相組成物をそのまま使用することが好ましい。
【0069】
本発明の中間相組成物を塗布または印刷できる基板としては種々の基板が挙げられる。使用する基板としては、例えば、ガラス基板、金や銅や銀等の金属基板、結晶性シリコン基板、アモルファスシリコン基板、トリアセチルセルロース基板、ノルボルネン基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエステル基板、ポリビニル基板、ポリプロピレン基板およびポリエチレン基板が挙げられる。
【0070】
本発明の中間相組成物を塗布する方法としては種々の方法が挙げられ、例えばスピンコート法、ディップコート法およびブレード法が挙げられる。
【0071】
本発明の中間相組成物を印刷する方法としては種々の方法が挙げられ、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、平版印刷、凹版印刷、凸版印刷が挙げられる。なかでも材料の溶液をそのままインクとして用いたプリンタにより行うインクジェット印刷は、簡易な方法であり好ましい。
【0072】
本発明の中間相組成物は、有機溶媒に対する高い溶解性を有するため、キャスト法または印刷法等の簡便な製膜工程を利用することができる。そのため、中間組成物が有する本来の電荷移動度を損なうことなく、有機半導体薄膜または有機半導体素子を製造することができる。
【0073】
本発明の中間相組成物の構成要素である式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物は、特許文献2に記載されるように公知であり、公知の方法に従い製造することができる。
【0074】
本発明の中間相組成物を用いて製造できる有機半導体薄膜および有機半導体素子について説明する。
【0075】
本発明の中間相組成物は、合成有機高分子を組み合わせて、樹脂組成物(ブレンド樹脂)として使用することができる。ブレンド樹脂における本発明の化合物の含有量は、1重量%〜99重量%、好ましくは10重量%〜99重量%、より好ましくは50重量%〜99重量%である。
【0076】
上記合成有機高分子としては、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、エンジニアリングプラスチックス、導電性高分子が挙げられる。具体的にはポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアリレンビニレンなどが挙げられる。
【0077】
本発明の有機半導体薄膜を構成要素の一つとし、整流機能または信号処理機能を有する素子として用い、他の半導体性を有する有機物または無機物と組み合わせることによって、整流素子または電流駆動型トランジスタ、スイッチング動作を行うサイクリスタ・トライアック・ダイアックなどの素子を構成することができる。また、表示素子としても用いることができ、特にすべての部材を有機化合物で構成した表示素子が有用である。例えば液晶表示素子や電子ペーパーなどに使用することができる。具体的には可とう性を示す高分子体でできた絶縁基板の上に、本発明の有機半導体薄膜と、この薄膜を機能させる構成要素を含む1つ以上の層とを形成し、電子ペーパーやICカードタグなどのフレキシブルなシート状表示装置または固有識別符号応答装置を作成することができる。本発明の組成物は、太陽電池に使用しても好ましい。
【0078】
フレキシブルなシート状表示素子は、本発明の有機半導体薄膜を可とう性のある高分子基板上に形成した表示素子を用いることで提供する。この可とう性の効果により、衣類のポケットや財布などに入れて携帯することができる表示素子が実現される。
【0079】
固有識別符号応答装置は、特定周波数または特定符号を持つ電磁波に反応し、固有識別符号を含む電磁波を返答するものである。固有識別符号応答装置は、例えば、再利用可能な乗車券または会員証、代金の決済手段、荷物または商品の識別用シール、荷札または切手の役割、会社または行政サービスなどにおいて、高い確率で書類または個人を識別する手段として用いられる。
【0080】
固有識別符号応答装置は、ガラス基板または可とう性のある高分子基板の上に、信号に同調して受信するための空中線と、受信電力で動作し識別信号を返信する半導体素子とによって構成される。
【0081】
本発明の有機半導体素子は電力増幅素子や信号制御素子として用いられるが、その具体的例として、断面構造を有する電界効果型トランジスタ(FET)がある。FETを作成するには、まずガラス基板やドレイン電極を形成する。必要に応じて絶縁層を積層してもよい。その上に、本発明の中間相組成物の溶液または融解液を印刷、塗布または滴下することによって有機半導体薄膜を形成し、さらに必要に応じて絶縁膜を形成し、その上にゲート電極を形成すればよい。
【0082】
このFETは、液晶表示素子やEL素子としても用いることができる。また本発明の中間相組成物の薄膜を含むFET測定用セルを作成し、ゲート電極を変化させながらソース・ドレイン電極間の電流/電圧曲線を測定すると、ドレイン電極/ゲート電極曲線から電界効果移動度を求めることができる。さらにゲート電極によるドレイン電極のon/off動作を観測することもできる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。
【0084】
[測定方法]
相転移点は、TA−Instrument社製、示差走査熱量計(DSC:2920 MDSC)を用い、5℃/分の速度で測定した。相の同定は温度制御装置(Mettler,FP80HT)付き偏光顕微鏡(Olympus、BH−2)に試料を置き、1℃/分の速度で加熱し、試料の相変化を光学組織観察にて決定した。H−NMRは、日本電子(株)製の500MHz核磁気共鳴装置(JNM−ECA500)を用いて測定した。
【0085】
[測定方法]
結晶はCryと表した。結晶の区別がつく場合は、それぞれCryまたはCryと表した。ヘキサゴナルカラムナー相(六方晶柱状相)はColと表した。モザイク組織はColと表した。液体(アイソトロピック)はIsoと表した。レクタンギュラーカラムナー相(短形柱状相)Dと表した。ディスコチックネマチック相はNと表した。相転移温度の表記として、「Cry 133 Col 308 Iso」とは、結晶からヘキサゴナルカラムナー相への転移温度が133℃であり、ヘキサゴナルカラムナー相から液体への転移温度が308℃であることを示す。他の表記も同様である。
【0086】
(実施例)
化合物1(式(2)で表される化合物)および化合物2(式(1)で表される化合物)をそれぞれ6.2mg、9.8mgを秤りとり、瑪瑙の乳鉢上で乳棒を用いて、室温下で、混ぜることにより10.3mgの混合物(モル比で、化合物1:化合物2=1:2)を得た。
【0087】
【化7】

【0088】
1:Cry 133 Col 308 等方性液体
2:Cry 152 Col 168 N 244℃ 等方性液体
【0089】
これをDSCおよび偏光顕微鏡による光学組織を観察したところ、図1に示される相転移を示し、新たなモザイク組織を伴う、高粘性の液晶相が形成された。
【0090】
この新たな相は昇温時210℃付近まで、新たな相を保持することから、混合により全く異なる配向構造でかつモザイク組織を示すような高次配向秩序、高粘性相を新たに形成している。またこの相は降温時は室温まで結晶化することなく維持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物とを混合して得られる中間相組成物。
【請求項2】
前記中間相組成物は、アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物およびフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物がそれぞれ単独で示す液晶相の粘度を越える粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の中間相組成物。
【請求項3】
アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物およびフッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物の中心骨格が、共役π電子系化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の中間相組成物。

【請求項4】
10−3(cm−1−1)以上のキャリヤ移動度を示すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の中間相組成物。
【請求項5】
アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、式(1)で表される化合物の少なくとも1種であり、フッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、式(2)で表される化合物の少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の中間相組成物。
【化1】

式(1)および式(2)において、R、R’は独立して、水素、炭素数1〜24のアルキル、炭素数1〜23のアルコキシ、炭素数2〜24のアルケニル、炭素数2〜24のアルキニル、炭素数2〜23のアルコキシアルキル、炭素数2〜23のアルケニルオキシ、炭素数1〜20のチオアルキル、または炭素数2〜23のチオアルケニルであり;前記アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシルアルキル、アルケニルオキシ、チオアルキルおよびチオアルケニルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられていてもよく、任意の−(CH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられていてもよく;
Aは独立して、アリーレンであり;
A’は独立して、少なくとも1個の水素がフッ素で置き換えられているアリーレンであり;
Z、Z’は独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−CHCO−、−COCH−、−(CH−、−(CH−O−、−O−(CH−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、−(CHCH=CH−、−(CHCFO−、または−OCF(CH−である。
【請求項6】
アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、式(1A)で表される化合物の少なくとも1種であり、フッ素化アリール部分を有するディスコチック液晶性化合物が、式(2A)で表される化合物の少なくとも1種である請求項5に記載の中間相組成物:
【化2】

式(1A)および式(2A)において、Z、Z’は独立して、単結合、−(CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−(CHCOO−、−OCO(CH−、−(CHCONH−、−NHCO(CH−、−CH=CH(CH−、または−(CHCH=CH−である。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の中間相組成物で構成される有機半導体薄膜。
【請求項8】
請求項7に記載の有機半導体薄膜および複数の電極で構成される有機半導体素子。

【図1】
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【公開番号】特開2011−187868(P2011−187868A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54210(P2010−54210)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】