説明

主軸ユニット駆動装置、及び主軸ユニット駆動方法

【課題】主軸を保持する主軸ユニットの破損を防止可能な主軸ユニット駆動装置、及び主軸ユニット駆動方法を提供する。
【解決手段】工作機械100は、工具を装着可能な主軸、及び主軸を回転駆動させる主軸駆動モーター133を含む主軸ユニットと、主軸ユニットをワークに対して相対移動させる各軸モーター211を備えたユニット移動部と、各軸モーター211のトルクを検出する各トルクセンサー220と、検出トルクに基づいて、各軸モーター211の駆動速度を制御する数値制御装置300と、を具備し、数値制御装置300は、第一トルク制限値を記憶する記憶部310と、トルクを比較するトルク監視手段341と、トルク監視手段341により検出トルクが第一トルク制限値を超えると判断された場合に、対応する軸モーター211の駆動速度Vを低減させる速度制御手段342Aと、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主軸を保持する主軸ユニットを所定方向に移動させる際の駆動を制御する主軸ユニット駆動装置、及び主軸ユニット駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、主軸を回転させてワークを加工する工作機械がある(例えば、特許文献1参照)。
この工作機械では、工具に設けられたトルクセンサーにより工具に加わる加工トルクを検出する。また、外部から入力されたトルク目標値と、検出された加工トルクとの偏差を求め、この偏差に基づいて、送り修正量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−195256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の工作機械では、主軸に加わるトルクを検出するためのトルクセンサーがあり、このトルクセンサーにより検出されるトルクに基づいて主軸の駆動を制御することで、主軸に取り付けられた工具の破損を回避することができる。しかし、主軸を保持する主軸ユニットに対するトルクを検出するものではなく、主軸ユニットを保護することができない。
ここで、従来の工作機械を用いて穴あけ加工を実施した際の、主軸ユニットをワークに対して移動させるユニット駆動部に係るトルクの変動を図5に示す。図5において、(A)は、主軸ユニットに係る負荷が所定の制限値を超えず、通常通り穴あけ加工が完了した際のトルクの変動を示す図である。一方、(B)は、穴あけ加工時に、主軸ユニットに係る負荷が増大した場合のトルクの変動を示す図である。
【0005】
図5に示すように、主軸ユニットを駆動させる際に、主軸ユニットに係る負荷が増大すると、これに応じて主軸ユニットを駆動させるためのユニット駆動部に係るトルクも増大する。そして、主軸ユニットに係る負荷が過負荷をなると、ユニット駆動部に係るトルクも所定のトルク制限値を超え、例え工具が破損していない状態であっても、主軸ユニットが破損してしまうことがある。
一般に、工具が破損した場合と、主軸ユニットが破損した場合とを比較すると、工具が破損した場合は、当該工具を交換するだけでよいが、主軸ユニットが破損した場合、修理に要するコストや時間が大きくなる。したがって、主軸を含む主軸ユニットの破損を効果的に防止できる構成が望まれている。
【0006】
本発明は、主軸を保持する主軸ユニットの破損を防止可能な主軸ユニット駆動装置、及び主軸ユニット駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主軸ユニット駆動装置は、ワークを加工する工具を装着した主軸、及び当該主軸を回転駆動させる主軸駆動部を含む主軸ユニットと、前記主軸ユニットを前記ワークに対して相対的に移動させるユニット移動部と、前記ユニット移動部に加わるトルクを検出するトルク検出部と、前記トルク検出部により検出された検出トルクに基づいて、前記主軸ユニットの前記ワークに対する相対移動速度を制御する制御部と、を具備し、前記制御部は、前記主軸ユニットの破損を防止するための破損防止用トルク制限値を記憶する記憶手段と、前記検出トルク及び前記破損防止用トルク制限値を比較するトルク比較手段と、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えた場合に、前記ユニット移動部による前記ワークに対する前記主軸ユニットの前記相対移動速度を低減させる速度制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明では、主軸や主軸駆動部を有する主軸ユニットと、この主軸ユニットをワークに対して相対的に移動させるユニット移動部と、ユニット移動部により主軸ユニットを移動させる際に、ユニット移動部に加わるトルクを検出するトルク検出部と、ユニット移動部の移動を制御する制御部とを備えている。そして、制御部は、トルク検出部により検出された検出トルクと、記憶手段に記憶されている破損防止用トルク制限値とを比較して、検出トルクが破損防止用トルク制限値を超える場合に、主軸ユニットのワークに対する相対移動速度を低減させるように、ユニット移動部を制御する。
このような構成では、トルク検出部では、ユニット移動部に加わるトルクを検出するため、主軸を含む主軸ユニット全体に加わる負荷を検出することができる。したがって、このようなトルク検出部により検出された検出トルクに基づいて、ユニット移動部を制御することで、主軸ユニットの過負荷による破損を効果的に防止できる。
【0009】
本発明に主軸ユニット駆動装置では、前記制御部は、時間を計測する計時手段を備え、前記速度制御手段は、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えたタイミングから、所定の破損防止用不感帯時間を経過する間、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えたままである場合に、前記破損防止用不感帯時間の経過後に前記相対移動速度を低減させることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、速度制御手段は、検出トルクが破損防止用トルク制限値を超えて、破損防止用不感帯時間が経過した後に、ユニット移動部を制御して、ワークに対する主軸ユニットの相対的な移動速度を低減させる。すなわち、検出トルクが破損防止用トルク制限値を超えた場合でも、不感帯時間が経過する前に、ユニット移動部に加わるトルクが低下する場合がある。このような場合に、ユニット移動部による、ワークに対する主軸ユニットの相対的な移動速度を低下させると、加工に要する時間が長くなり、加工作業効率が低下してしまうおそれがある。これに対して、本発明では、速度制御手段は、破損防止用の不感帯時間経過後に、検出トルクが破損防止用トルク制限値を超えたままの状態である場合に、ワークに対する主軸ユニットの相対的な移動速度を低下させるため、一時的な負荷上昇による移動速度の低下を回避でき、作業効率の低下を抑制できる。
【0011】
本発明の主軸ユニット駆動装置では、前記速度制御手段は、前記相対移動速度を低減させたタイミングから、所定の破損防止用見直し時間が経過するまでの間、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えたままである場合に、前記相対移動速度を低減したタイミングから前記破損防止用見直し時間が経過した後に、前記相対移動速度を更に低減させることが好ましい。
【0012】
本発明では、速度制御手段は、ワークに対する主軸ユニットの相対移動速度を低減させた後も検出トルクを監視し、相対移動速度を低減させたタイミングから破損防止用見直し時間が経過する間も、検出トルクが破損防止用トルク制限値を超える場合に、更に、相対移動速度を低減させる。すなわち、速度制御手段は、検出トルクが破損防止用トルク制限値を下回るまで、相対移動速度を低減させる。これにより、確実にユニット移動部に係るトルクを破損防止用トルク制限値以下に設定することができ、確実に主軸ユニットの破損を防止することができる。
【0013】
本発明の主軸ユニット駆動装置では、前記速度制御手段は、基準となる相対移動速度に対して一定の比率で前記相対移動速度を低減させることが好ましい。
ここで、基準となる相対移動速度としては、例えば予め設定された基準相対移動速度であってもよく、速度変更前の相対移動速度であってもよい。
本発明によれば、速度制御手段は、相対移動速度を一定の比率で低減させる。すなわち、速度制御手段は、検出トルクが破損防止用トルク制限値以上となる場合に相対移動速度を低減させるが、この際、例えば一度に最低速度まで低減させると、加工作業効率性が著しく低下する。これに対して、上述のように、相対移動速度を一定の比率で徐々に低下させることで、主軸ユニットに加わるトルクを最適な大きさに維持して加工作業を継続でき、作業効率の低下を抑制できる。
【0014】
本発明の主軸ユニット駆動装置では、前記記憶手段は、前記主軸ユニットの移動を促すための移動促進用トルク制限値を記憶し、前記速度制御手段は、前記検出トルクが前記移動促進用トルク制限値を下回る場合に、前記相対移動速度を上昇させることが好ましい。
【0015】
本発明では、主軸ユニットのワークに対する相対移動速度が小さく、ユニット移動部に係るトルク(検出トルク)が移動促進用トルク制限値を下回る場合、制御部は、ユニット移動部による主軸ユニットのワークに対する相対移動速度を上昇させる。上記のように、主軸ユニットのワークに対する相対移動速度を低減させると、作業効率性が低下してしまうが、本発明のように、相対移動速度を上昇(復帰)させることで、加工作業効率を向上させることができる。
【0016】
本発明の主軸ユニット駆動装置では、前記制御部は、時間を計測する計時手段を備え、前記速度制御手段は、前記検出トルクが前記移動促進用トルク制限値を下回ったタイミングから所定の移動促進用不感帯時間を経過する間、前記検出トルクが前記移動促進用トルク制限値を下回ったままである場合に、前記移動促進用不感帯時間の経過後に前記相対移動速度を上昇させることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、制御部の速度制御手段は、検出トルクが移動促進用トルク制限値を超えて、移動制限用不感帯時間が経過した後に、ユニット移動部を制御して、ワークに対する主軸ユニットの相対的な移動速度を上昇させる。
ここで、制御部は、検出トルクが移動促進用トルク制限値を下回る場合に即座にユニット移動部を制御してワークに対する主軸ユニットの相対的な移動速度を上昇させてもよい。しかしながら、例えば、検出トルク及び破損防止用トルク制限値の比較に基づいて、ワークに対する主軸ユニットの相対的な速度を低下させた直後などでは、一時的にトルクが低下したものの、時間経過後にトルクが上昇する場合がある。この場合、検出トルクが移動促進用トルクを下回ったタイミングで、ワークに対する主軸ユニットの相対的な移動速度を上昇させると、検出トルクが再び破損防止用トルク制限値を超える場合があり、再度速度制御手段による速度低減処理を実施する必要がある。
これに対して、本発明では、上記のように、移動促進用不感帯時間を設けることで、ユニット移動部及び主軸ユニットに係るトルクの変化を確認でき、適切なタイミングでワークに対する主軸ユニットの相対的な移動速度を上昇させることができる。
【0018】
本発明の主軸ユニット駆動装置では、前記速度制御手段は、基準となる相対移動速度に対して一定の割合で前記相対移動速度を上昇させることが好ましい。
本発明によれば、速度制御手段は、相対移動速度を一定の比率で上昇させる。すなわち、速度制御手段は、検出トルクが移動促進用トルク制限値以下となる場合に相対移動速度を上昇させる。ここで、例えば、破損防止用トルク制限値に基づいて主軸ユニットのワークに対する相対移動速度を低減させた後、検出トルクが移動促進用トルク制限値を下回ったために相対移動速度を元の速度に復帰させた場合、再び検出トルクが破損防止用トルク制限値を上回ることも考えられる。これに対して、主軸ユニットのワークに対する相対移動速度を一定の比率で徐々に上昇させる場合では、速度の上がりすぎによる主軸ユニットへの過負荷を防止でき、主軸ユニットに最適な負荷が係った状態を維持して加工作業を継続できる。
【0019】
本発明の主軸ユニット駆動方法は、ワークを加工する工具を装着した主軸、及び当該主軸を回転駆動させる主軸駆動部を含む主軸ユニットと、前記主軸ユニットを前記ワークに対して相対的に移動させるユニット移動部と、前記ユニット移動部に加わるトルクを検出するトルク検出部と、を備え、前記トルク検出部により検出された検出トルクに基づいて、前記ユニット移動部における前記主軸ユニットの移動速度を制御する主軸ユニット駆動方法であって、前記主軸ユニットの破損を防止するための破損防止用トルク制限値と前記検出トルクとを比較する比較ステップと、前記比較ステップにおいて、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えた場合に、前記ユニット移動部による前記ワークに対する前記主軸ユニットの相対的な移動速度を低減させる速度制御ステップと、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、上述した発明と同様に、主軸ユニットの負荷増大による破損を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る一実施形態の工作機械(主軸ユニット駆動装置)の概略構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態の工作機械の概略構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態の工作機械の動作を示すフローチャート。
【図4】本実施形態の工作機械において、検出トルクと時間との関係、駆動速度と時間との関係を示す図。
【図5】従来の工作機械における主軸ユニットに係るトルクと、時間との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る一実施形態について、図面に基づいて説明する。
[工作機械の構成]
図1は、本発明の第一実施形態の主軸ユニット駆動装置である工作機械の概略構成を示す斜視図である。図2は、第一実施形態の工作機械の概略構成を示すブロック図である。
工作機械100は、交換可能な工具132が装着された主軸131を備える主軸ユニット130を、3軸方向(XYZ方向)に移動させ、ワーク10に対して工具132により各種加工処理を実施する装置である。この工作機械100は、図1に示すように、ベース110と、ベース110に設けられたステージ120と、ベース110に設けられた一対のコラム111と、コラム111に設けられたビーム112と、ビーム112に設けられたスライダ113と、スライダ113に設けられた主軸ユニット130と、主軸ユニット130をワーク10に対して相対移動させるユニット移動部200と、当該工作機械100の駆動を制御する数値制御装置300(図2参照)と、を備えている。
なお、本実施形態では、工作機械100として、ワーク10に対して、主軸ユニット130を3軸方向(XYZ方向)に相対的に移動可能に設けられた門型構造を有する装置を例示するが、ワーク10に対して主軸ユニット130を1方向のみに相対移動させる構成や、2次元方向(2方向)に移動させる構成の装置としてもよい。
【0022】
ベース110は、ステージ120やコラム111が設けられる台座であり、ワーク10の加工時に移動されないように固定されている。
一対のコラム111は、ベース110に対して立設されており、これらの一対のコラム111の先端部間に、ビーム112が水平に(Y方向に沿って)架設されている。ビーム112は、Y方向に沿うガイドレール212Yを備え、このガイドレール212Yに、Y方向に沿って移動可能にスライダ113が保持されている。スライダ113は、内部にZ方向に沿うガイドレール(図示略)を備え、このガイドレールに、Z方向に沿って移動可能に主軸ユニット130が保持されている。ステージ120は、ワーク10が載置される部分であり、ベース110にX方向に沿って敷設されたガイドレール212X上に、X方向に沿って移動可能に設けられている。
【0023】
主軸ユニット130は、ワーク10を加工するための工具132と、工具132を取付可能な主軸131と、主軸131を、軸心を中心として回転駆動させる主軸駆動モーター133(図2参照)とを備えている。ワーク10を加工する工具132としては、例えば、ワーク10に対して穴あけ加工を実施するドリルや、ワーク10を摩擦攪拌接合する摩擦攪拌用工具など、主軸の回転によりワーク10を加工可能なあらゆる工具を用いることができる。
【0024】
ユニット移動部200は、X軸移動機構210Xと、Y軸移動機構210Yと、Z軸移動機構210Zとを備えている。
X軸移動機構210Xは、X軸モーター211X(図2参照)を備え、当該X軸モーター211Xの駆動力により、ステージ120をガイドレール212Xに沿って、X方向に移動させる。Y軸移動機構210Yは、Y軸モーター211Y(図2参照)を備え、当該Y軸モーター211Yの駆動力により、スライダ113をガイドレール212Yに沿って、Y方向に沿って移動させる。Z軸移動機構210Zは、Z軸モーター211Z(図2参照)を備え、当該Z軸モーター211Zの駆動力により、スライダ113内に設けられたガイドレールに沿って、主軸ユニット130をZ方向に沿って移動させる。
これらの各軸モーター211(211X,211Y,211Z)は、数値制御装置300から出力される制御信号に基づいて、所定の駆動速度で駆動され、主軸ユニット130がワーク10に対する相対的に移動する。
また、各軸モーター211(211X,211Y,211Z)には、それぞれ本発明のトルク検出部であるトルクセンサー220(X軸トルクセンサー220X、Y軸トルクセンサー220Y、Z軸トルクセンサー220Z)が設けられ、各軸モーター211のモーター軸に係るトルクを検出する。各トルクセンサー220により検出された検出トルクは、数値制御装置300に出力される。つまり、各トルクセンサー220は、数値制御装置300に接続され、トルクセンサー220から出力された検出信号が数値制御装置300に入力される。
【0025】
数値制御装置300は、工作機械100における主軸ユニット130の移動量や工具132の回転速度をコンピューターによって数値制御する、いわゆるコンピューター数値制御(CNC:Computerized Numerically Controlled)を実施する。このような数値制御装置300としては、リレー回路を記号化したプログラミング言語(例えば、G言語等)を用いて工作機械100の制御を実施する、いわゆるPLC(programmable logic controller)を採用することができる。なお、数値制御装置300としては、上記のようなPLCに限定されず、例えば汎用パーソナルコンピューター等を用いてもよい。
具体的には、数値制御装置300は、図2に示すように、記憶部310、X軸駆動部320X,Y軸駆動部320Y、Z軸駆動部320Z、主軸駆動部330、及び演算部340を備えている。
【0026】
記憶部310は、工作機械100を制御してワークに対して加工を実施するための加工プログラムや、加工プログラムを実施する際の各種パラメーターが記憶されている。
記憶部310に記憶される各種パラメーターとしては、本発明の破損防止用トルク制限値である第一トルク制限値N、本発明の移動促進用トルク制限値である第二トルク制限値N、本発明の破損防止用不感帯時間である第一時間T、本発明の破損防止用見直し時間である第二時間T、本発明の移動促進用不感帯時間である第三時間T、各軸モーター211における基準駆動速度V、各軸モーター211の速度変動比率m、速度復帰処理のフラグ情報等が挙げられる。ここで、これらの第一トルク制限値N、第二トルク制限値N、第一時間T、第二時間T、及び第三時間Tは、各軸モーター211に対してそれぞれ個別に設定されている。また、基準駆動速度V、及び速度変動比率mは、各軸モーター211に対してそれぞれ個別に設定されていてもよく、各軸モーター211において共通としてもよい。さらに、記憶部310に記憶される各種パラメーターとして、主軸駆動モーター133の駆動速度が記憶されていてもよい。
ここで、第一トルク制限値とは、各軸モーター211に係るトルクが当該第一トルク制限値を超える場合に、主軸ユニット130やユニット移動部200が破損する恐れがあるとされる値の上限値である。したがって、当該第一トルク制限値以下の値で各軸モーター211を駆動させることで、主軸ユニット130やユニット移動部200の破損を防止することが可能となる。
また、第二トルク制限値とは、各軸モーター211に係るトルクが小さく、加工処理を迅速に実施するために、より速く各軸モーター211を駆動させることが可能であるとされる値の下限値である。したがって、当該第二トルク制限値以上の値で各軸モーター211を駆動させることで、主軸ユニット130やユニット移動部200の破損を防止しつつ、かつ迅速な加工処理を実施することが可能となる。
また、これらの各種パラメーターは、利用者により適宜設定入力することが可能であり、例えば、工作機械100によりワーク10の加工処理開始時に、変更等することができる。
【0027】
各軸駆動部320(320X,320Y,320Z)は、各軸モーター211(211X,211Y,211Z)を所定駆動速度で駆動させるための駆動回路である。各軸駆動部320は、演算部340から入力された速度指令信号に基づいて、各軸モーター211に対する駆動電圧を設定して出力する。これにより、速度指令信号に応じた速度で各軸モーター211が駆動し、主軸ユニット130の送り速度が設定される。
【0028】
主軸駆動部330は、主軸ユニット130を所定駆動速度で駆動させるための駆動回路である。主軸駆動部330は、演算部340から入力された加工指令信号に基づいて、主軸駆動モーター133に対する駆動電圧(パルス信号)を設定して出力する。これにより、主軸ユニット130の主軸駆動モーター133が加工指令信号に基づいた速度で回転し、主軸131及び主軸131に取り付けられた工具132が回転してワーク10の加工が実施される。
【0029】
演算部340は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の集積回路や記憶回路により構成され、記憶部310から読み出したプログラムを実行する。これにより、演算部340は、図2に示すように、トルク監視手段341、加工実行手段342、及び計時手段343として機能する。
トルク監視手段341は、本発明のトルク比較手段を構成し、各トルクセンサー220(220X,220Y,220Z)から入力される検出信号から、各軸モーター211に加えられたトルク(検出トルク)を取得する。また、トルク監視手段341は、記憶部310から第一トルク制限値N、及び第二トルク制限値Nを読み込んで検出トルクNと比較し、検出トルクNと第一トルク制限値Nとの大小関係、検出トルクNと第二トルク制限値Nとの大小関係を判断する。
【0030】
加工実行手段342は、記憶部310から加工プログラムを読み出して、ワーク10を加工する加工処理を実施する。具体的には、加工実行手段342は、速度制御手段342A、及び主軸制御手段342Bの機能を有する。
速度制御手段342Aは、各軸モーター211の駆動速度Vを決定して各軸駆動部320に速度指令信号を出力する。これにより、各軸駆動部320は、速度指令信号に基づいて、各軸モーター211に制御信号を出力して駆動させる。
また、速度制御手段342Aは、トルク監視手段341により、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたと判断された場合に、当該検出トルクNが検出された軸モーター211の駆動速度Vを低減させる処理をする。この時、速度制御手段342Aは、記憶部310から第一時間T,第二時間T,基準駆動速度V,速度変動比率mを読み出す。そして、速度制御手段342Aは、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたタイミングから第一時間Tが経過するまでの間、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたままである場合に、軸モーター211の駆動速度Vを、基準駆動速度Vの速度変動比率m分だけ減速させる。また、駆動速度Vを低減させたタイミングで、依然として検出トルクNが第一トルク制限値Nを超える場合、さらに第二時間Tが経過するまでの間検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたままである場合に、軸モーター211の駆動速度Vを、基準駆動速度Vの速度変動比率m分だけ減速させる。以降、速度制御手段342Aは、検出トルクNが第一トルク制限値N以下となるまで、駆動速度Vを低減させる処理を実施する。
ここで、駆動速度Vが予め設定された最低駆動速度Vmin以下となった場合は、それ以上の駆動速度Vの低減処理を停止してもよく、この場合、工作機械100を緊急停止させる処理をしてもよい。
【0031】
さらに、速度制御手段342Aは、駆動速度Vが低減された際に、駆動速度Vを元の速度に復帰させるか否かを示す速度復帰処理のフラグ情報を読み出す。ここで、フラグ情報に速度復帰処理を許可する旨のフラグが記憶されている場合、速度制御手段342Aは、速度復帰処理を実施する。具体的には、速度制御手段342Aは、トルク監視手段341により検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ったと判断された場合、当該検出トルクNが検出された軸モーター211の駆動速度Vを上昇させる処理を実施する。この時、速度制御手段342Aは、記憶部310から第三時間T,基準駆動速度V,速度変動比率mを読み出し、検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ったタイミングから第三時間Tが経過するまでの間、検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ったままである場合に、軸モーター211の駆動速度Vを、基準駆動速度Vの速度変動比率m分だけ上昇させる。以降、速度制御手段342Aは、検出トルクNが第二トルク制限値N以上となるまで、駆動速度Vを上昇させる処理を実施する。
【0032】
主軸制御手段342Bは、主軸駆動モーター133の駆動のオン・オフの決定、及び主軸駆動モーター133の回転駆動速度を決定する処理を実施する。すなわち主軸制御手段342Bは、記憶部310から読み出された加工プログラム及び各種パラメーターに基づいて、主軸ユニット130がワーク10上に移動されたタイミングで主軸駆動モーター133を一定の駆動速度で回転駆動させる。また、主軸制御手段342Bは、各トルクセンサー220で検出されたトルクに基づいて、加工が終了したと判断すると、主軸駆動モーター133の駆動を停止させる処理を実施する。
計時手段343は、工作機械100に内蔵された図示略の内蔵タイマーを監視し、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたタイミングからの経過時間、駆動速度Vを低減させたタイミングからの経過時間、及び検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ったタイミングからの経過時間をカウントする。
【0033】
[工作機械の動作]
次に上述したような工作機械100の動作について、図面に基づいて説明する。
図3は、工作機械100の動作を示すフローチャートである。図4は、本実施形態の工作機械100により、ワーク10に穴あけ加工を実施した際のZ軸モーターに係るトルクの変化、及びZ軸モーターの駆動速度Vの変化を示す図である。
本実施形態の工作機械100は、ワーク10を加工する加工処理を実施する際、数値制御装置300は、図3に示すような手順に従って各種処理を実施する。すなわち、利用者により加工処理を実施する旨の設定が成されると、加工実行手段342は、記憶部310から加工プログラムを読み込んで起動させる。これにより、加工実行手段342は、加工処理における初期設定を実施する(ステップS1)。すなわち、加工実行手段342は、記憶部310から、各軸モーター211の基準駆動速度Vを読み出し、当該各軸モーター211の駆動速度Vとして設定する。また、加工実行手段342は、速度を変動させた回数を示す変化回数カウンターiを初期化し、「i=0」を設定する。さらに、加工実行手段342は、検出トルクNが制限値を超えた場合にカウントする経過時間を示すカウンター値Tを初期化し、「T=0」を設定する。さらには、速度制御手段342Aにより、速度を変動させる際に必要となる各種パラメーターである第一トルク制限値N,第二トルク制限値N,第一時間T,第二時間T,第三時間T,速度変動比率m,速度復帰処理を実施するか否かを示すフラグ情報、及び主軸駆動モーター133の駆動速度を読み込む。
【0034】
そして、加工実行手段342は、加工プログラムに従って、工作機械100を駆動させる。すなわち、速度制御手段342Aは、設定された駆動速度Vで各軸モーター211を駆動させて、主軸ユニット130をワーク10の加工部位に移動させ、主軸制御手段342Bは、主軸駆動モーター133を駆動させてワーク10に対して加工を実施する。
この時、トルク監視手段341は、各トルクセンサー220から入力された検出トルクから、各軸モーター211に係る検出トルクNを監視する。そして、トルク監視手段341は、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたか否かを判断する比較ステップを実行する(ステップS2)。
【0035】
このステップS2において、トルク監視手段341により検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたと判断されると、加工実行手段342の速度制御手段342Aは、速度制御ステップを実施する。
この速度制御ステップでは、速度制御手段342Aは、まずカウンター値Tが0であるか否かを判断する(ステップS3)。このステップS3において、カウンター値Tが、「T=0」である場合、計時手段343は、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたタイミングからの経過時間のカウントを開始する(ステップS4)。
【0036】
ステップS4の後、又はステップS3において、カウンター値Tが0ではないと判断された場合、速度制御手段342Aは、駆動速度Vが予め設定された最低駆動速度Vmin以下であるか否かを判断する(ステップS5)。このステップS5において、駆動速度Vが最低駆動速度Vmin以下である場合、ステップS2の処理に戻る。なお、駆動速度Vが最低駆動速度Vmin以下である場合、ユニット移動部200又は主軸ユニット130に異常があると判定し、工作機械100を緊急停止させる処理をしてもよい。
【0037】
そして、ステップS5において、駆動速度Vが最低駆動速度Vminより大きい場合、速度制御手段342Aは、更に変化回数カウンターiがi≧1であるか否かを判断する(ステップS6)。このステップS6において、変化回数カウンターiがi=0である場合、すなわち、図4に示すタイミングAに示すように、駆動速度Vが初速として設定された基準駆動速度Vであり、検出トルクNが初めて第一トルク制限値Nを超えた場合では、速度制御手段342Aは、第一時間Tが経過した否かを判断する(ステップS7)。ステップS7において、カウンター値Tが第一時間Tより小さい場合は、ステップS2に戻り、トルク監視手段341によるトルク監視を継続する。
また、ステップS6において、変化回数カウンターiがi≧1である場合、すなわち、図4に示すタイミングA,Aに示すように、1回以上駆動速度Vが低減された場合では、速度制御手段342Aは、第二時間Tが経過したか否かを判断する(ステップS8)。ステップS8において、カウンター値Tが第二時間Tより小さい場合は、ステップS2に戻り、トルク監視手段341によるトルク監視を継続する。
【0038】
そして、ステップS7において、カウンター値Tが第一時間T以上である場合、またはステップS8において、カウンター値Tが第二時間T以上である場合、速度制御手段342Aは、駆動速度Vを低減させる処理をする(ステップS9)。
この時、速度制御手段342Aは、駆動速度Vを基準駆動速度Vの速度変動比率m分だけ低減させる処理(V=V−V×m)を実施する。ここで、速度変動比率mとしては、例えば10%等を設定することができる。
この後、加工実行手段342は、変化回数カウンターiを1だけ加算し(ステップS10)、カウンター値Tを初期化して0に設定する(ステップS11)。この後、ステップS2に戻り、トルク監視手段341によるトルク監視を継続する。
【0039】
そして、ステップS2において、トルク監視手段341により検出トルクNが第一トルク制限値N以下であると判断された場合、加工実行手段342は、記憶部310から読み出した速度復帰処理のフラグ情報に、速度復帰を許可する旨の情報が記録されているか否か、すなわち、速度復帰が有効であるか否かを判断する(ステップS12)。
ステップS12において、速度復帰を許可しない旨のフラグ情報が記録されている場合、加工実行手段342は、速度復帰処理を実施しない。この場合、加工実行手段342は、処理を継続するか否かの判断を実施する(ステップS21)。そして、例えば利用者により、加工処理を終了する旨の入力が実施された場合は、一連の工作機械100のよる加工処理を終了する。また、ステップS21において、処理を終了しない場合は、ステップS2に戻り、トルク監視手段341によるトルク監視を継続する。
【0040】
一方、ステップS12において、速度復帰を許可する旨のフラグ情報が記録されている場合、加工実行手段342は、速度復帰処理を実施する。
この速度復帰処理では、加工実行手段342は、まず、駆動速度Vが基準駆動速度Vより小さいか否かを判断する(ステップS13)。ステップS13において、駆動速度Vが基準駆動速度V以上である場合は、速度を復帰させる必要がないとして、ステップS21の処理を実施する。
ステップS13において、駆動速度Vが基準駆動速度Vより小さいと判断された場合、トルク監視手段341によるトルク監視により、検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ったか否かを判断する(ステップS14)。
このステップS14において、検出トルクNが第二トルク制限値N以上である場合、駆動速度Vを上昇させると、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えて主軸ユニット130が破損する恐れがあるため、駆動速度Vを上昇させない。この場合、ステップS21の処理に移行する。
一方、ステップS14において、トルク監視手段341により検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ると判断された場合、速度制御手段342Aは、まずカウンター値Tが0であるか否かを判断する(ステップS15)。このステップS15において、カウンター値Tが、「T=0」である場合、計時手段343は、検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ったタイミング(図4におけるタイミングA)からの経過時間のカウントを開始する(ステップS16)。
【0041】
ステップS16の後、又はステップS15において、カウンター値Tが0ではないと判断された場合、速度制御手段342Aは、第三時間Tが経過した否かを判断する(ステップS17)。ステップS7において、カウンター値Tが第三時間Tより小さい場合は、ステップS14に戻り、トルク監視手段341によるトルク監視を継続する。
また、ステップS17において、カウンター値Tが第三時間T以上となった場合、速度制御手段342Aは、駆動速度Vを上昇(復帰)させる処理をする(ステップS18)。この時、速度制御手段342Aは、駆動速度Vを基準駆動速度Vの速度変動比率m分だけ上昇させる処理(V=V+V×m)を実施する。ここで、速度変動比率mとしては、ステップS9と同様の値を用い、例えば10%等を設定してもよく、別途異なる比率が設定されていてもよい。以上により、速度復帰処理が実施される。
【0042】
また、このステップS18の後、速度制御手段342Aは、駆動速度Vが基準駆動速度V以上となったか否かを判断する(ステップS19)。そして、ステップS19において、駆動速度Vが基準駆動速度V以上となったと判断された場合、速度制御手段342Aは、変化回数カウンターiを初期化し、i=0を設定した後、ステップS21を実施する。ステップS19において、駆動速度Vが基準駆動速度Vより小さいと判断された場合は、そのままステップS21に移行する。
以上により、工作機械100によるワーク10の加工処理、及びトルク制御処理が実施される。
【0043】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態の工作機械100は、上述したように、工具132が装着される主軸131、及び主軸131を回転駆動させる主軸駆動モーター133を備えた主軸ユニット130と、この主軸ユニット130をXYZの各軸方向に移動させるユニット移動部200とを備え、ユニット移動部200における各軸モーター211には、トルクセンサー220が設けられている。そして、工作機械100の駆動を制御する数値制御装置300は、トルク監視手段341と、速度制御手段342Aを有する加工実行手段342を備えている。トルク監視手段341は、各トルクセンサー220において検出される検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたか否かを判断し、速度制御手段342Aは、トルク監視手段341により検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたと判断された場合に、当該検出トルクNが検出された軸モーター211の駆動速度Vを低減させる処理を実施する。このため、主軸ユニット130に係る負荷が限界を超えて破損する前に、軸モーター211の駆動速度Vを低減させて主軸ユニット130に係る負荷を軽減でき、主軸ユニット130の破損を効果的に防止することができる。
【0044】
また、速度制御手段342Aは、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたタイミングから第一時間Tが経過したタイミングで、駆動速度Vを低減させる。このような不感帯時間を設けることで、作業効率の低下を抑制することができる。例えば一時的に検出トルクNが上昇しただけで、比較的早く検出トルクNが第一トルク制限値N以下に戻る場合がる。このような場合に対しても、駆動速度Vを低減させると、作業効率が低下してしまう。これに対して、不感帯時間である第一時間Tを設けることで、このような作業効率の低下を抑制できる。
【0045】
さらに、速度制御手段342Aは、駆動速度Vを低減した後、依然として検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えている場合、駆動速度Vを低減したタイミングから第二時間Tが経過したタイミングで、更に駆動速度Vを低減させる。これにより、確実に検出トルクNが第一トルク制限値N以下となる安定な駆動状態に設定することができ、主軸ユニット130の破損をより確実に防止することができる。
【0046】
また、速度制御手段342Aは、速度制限ステップにおいて、基準駆動速度Vの速度変動比率m分だけ駆動速度Vを低減させる。このため、駆動速度Vの過剰な低下による作業効率の低下を抑制でき、最適な駆動速度Vにより主軸ユニット130をワーク10に対して相対的に移動させて加工作業を効率的に続行させることができる。
【0047】
記憶部310には、速度復帰処理のフラグ情報が記憶され、このフラグ情報に速度復帰処理を許可する情報が記録されており、記憶部310により検出トルクNが第二トルク制限値Nよりも下回ったと判断されると、速度制御手段342Aは、駆動速度Vを上昇させて元の速度に近づけるように復帰させる速度復帰処理を実施する。このため、主軸ユニット130に係る負荷が小さい場合には、速度を上昇させることができ、加工作業の効率を向上させることができる。
【0048】
また、速度制御手段342Aは、速度復帰処理において、検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ったタイミングから第二時間Tが経過したタイミングで駆動速度Vを上昇させる。このような不感帯時間を設けることで、速度復帰時に、主軸ユニット130が過負荷となる不都合を回避でき、安定した加工作業を実施することができる。
さらに、速度制御手段342Aは、速度復帰処理時においても、基準駆動速度Vの速度変動比率m分だけ駆動速度Vを上昇させる。これにより、駆動速度Vの過剰な上昇による主軸ユニット130の負荷増大を抑制でき、最適な駆動速度Vにより主軸ユニット130の送り速度を設定して、効率的な加工作業を実施することができる。
【0049】
また、速度制御手段342Aによる駆動速度Vを変動させる際、基準となる速度を基準駆動速度Vとし、基準駆動速度Vの速度変動比率m分ずつ駆動速度Vを変動させる。このように、基準駆動速度Vを基準とすることにより、一定の速度ずつ駆動速度Vを変動させることができ、安定した速度管理を実施することができる。
【0050】
〔その他の実施の形態〕
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0051】
例えば、上記実施形態において、初速である基準駆動速度Vから駆動速度Vを変動させた回数を変化回数カウンターiとしたが、これに限定されない。例えば検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えた際に、連続して速度を変化させた回数を変化回数カウンターiとしてもよい。この場合、速度制御手段342Aにより速度制限処理が実施された後、ステップS2で検出トルクNが第一トルク制限値N以下である判断されたタイミングで、変化回数カウンターiを初期化してi=0を設定すればよい。
【0052】
速度制御手段342Aにより速度を低減させる際に、基準駆動速度Vに対して速度変動比率m分だけ駆動速度Vを低減させるとし、本発明の基準となる相対移動速度を、基準駆動速度Vとしたが、これに限らない。例えば、本発明の基準となる相対移動速度を、速度低減前の駆動速度Vとしてもよい。この場合、ステップS9では、速度制御手段342Aは、「V=V−V×m」として新たな駆動速度Vを設定すればよい。このような場合では、速度を低下させるほど、速度低減幅が小さくなる。したがって、駆動速度Vの過剰な低下がより確実に抑えられ、各軸モーター211に係るトルクを第一トルク制限値N以下に抑えつつ、作業効率性を維持することができる。
【0053】
速度制御手段342Aは、変化回数カウンターiに応じて、駆動速度Vを低減させるまでの時間を第一時間T、および第二時間Tのいずれかに設定したが、変化回数カウンターiに関わらず、常にT=Tとなるタイミングで駆動速度Vを低減させる処理を実施してもよい。つまり、T=Tとしてもよい。
さらには、駆動速度Vを変動させるまでの第一時間T、第二時間T、第三時間Tを設定したが、不感帯時間や見直し時間が設定されていなくてもよい。つまり、速度制御手段342Aは、検出トルクNが第一トルク制限値Nを超えたタイミングで駆動速度Vを低減させ、検出トルクNが第二トルク制限値Nを下回ったタイミングで駆動速度Vを上昇させる処理をしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、主軸ユニット130を3軸方向に移動させる構成としたが、例えば、主軸に係る負荷が最も懸念されるスラスト方向(XY方向)に対して、本発明を適用し、スラスト方向に係るトルクを軽減させる構成としてもよい。
【0055】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、主軸を保持する主軸ユニットを所定方向に移動させる際の駆動を制御する主軸ユニット駆動装置や、当該主軸ユニット駆動装置の駆動方法に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
10…ワーク、100…工作機械(主軸ユニット駆動装置)、130…主軸ユニット、131…主軸、132…工具、133…主軸駆動モーター(主軸駆動部)、200…ユニット移動部、220…トルクセンサー(トルク検出部)、300…数値制御装置(制御部)、310…記憶部(記憶手段)、341…トルク監視手段(トルク比較手段)、342A…速度制御手段、N…検出トルク、N…第一トルク制限値(破損防止用トルク制限値)、N…第二トルク制限値(移動促進用トルク制限値)、T…第一時間(破損防止用不感帯時間)、T…第二時間(破損防止用見直し時間)、T…第三時間(移動促進用不感帯時間)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工する工具を装着した主軸、及び当該主軸を回転駆動させる主軸駆動部を含む主軸ユニットと、
前記主軸ユニットを前記ワークに対して相対的に移動させるユニット移動部と、
前記ユニット移動部に加わるトルクを検出するトルク検出部と、
前記トルク検出部により検出された検出トルクに基づいて、前記主軸ユニットの前記ワークに対する相対移動速度を制御する制御部と、を具備し、
前記制御部は、
前記主軸ユニットの破損を防止するための破損防止用トルク制限値を記憶する記憶手段と、
前記検出トルク及び前記破損防止用トルク制限値を比較するトルク比較手段と、
前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えた場合に、前記ユニット移動部による前記ワークに対する前記主軸ユニットの前記相対移動速度を低減させる速度制御手段と、
を備えたことを特徴とする主軸ユニット駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の主軸ユニット駆動装置において、
前記制御部は、時間を計測する計時手段を備え、
前記速度制御手段は、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えたタイミングから、所定の破損防止用不感帯時間を経過する間、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えたままである場合に、前記破損防止用不感帯時間の経過後に前記相対移動速度を低減させる
ことを特徴とする主軸ユニット駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載の主軸ユニット駆動装置において、
前記速度制御手段は、前記相対移動速度を低減させたタイミングから、所定の破損防止用見直し時間が経過するまでの間、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えたままである場合に、前記相対移動速度を低減したタイミングから前記破損防止用見直し時間が経過した後に、前記相対移動速度を更に低減させる
ことを特徴とする主軸ユニット駆動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の主軸ユニット駆動装置において、
前記速度制御手段は、基準となる相対移動速度に対して、一定の比率で前記相対移動速度を低減させる
ことを特徴とする主軸ユニット駆動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の主軸ユニット駆動装置において、
前記記憶手段は、前記主軸ユニットの移動を促すための移動促進用トルク制限値を記憶し、
前記速度制御手段は、前記検出トルクが前記移動促進用トルク制限値を下回る場合に、前記相対移動速度を上昇させる
ことを特徴とする主軸ユニット駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の主軸ユニット駆動装置において、
前記制御部は、時間を計測する計時手段を備え、
前記速度制御手段は、前記検出トルクが前記移動促進用トルク制限値を下回ったタイミングから所定の移動促進用不感帯時間を経過する間、前記検出トルクが前記移動促進用トルク制限値を下回ったままである場合に、前記移動促進用不感帯時間の経過後に前記相対移動速度を上昇させる
ことを特徴とする主軸ユニット駆動装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の主軸ユニット駆動装置であって、
前記速度制御手段は、基準となる相対移動速度に対して一定の比率で前記相対移動速度を上昇させる
ことを特徴とする主軸ユニット駆動装置。
【請求項8】
ワークを加工する工具を装着した主軸、及び当該主軸を回転駆動させる主軸駆動部を含む主軸ユニットと、前記主軸ユニットを前記ワークに対して相対的に移動させるユニット移動部と、前記ユニット移動部に加わるトルクを検出するトルク検出部と、を備え、前記トルク検出部により検出された検出トルクに基づいて、前記ユニット移動部における前記主軸ユニットの移動速度を制御する主軸ユニット駆動方法であって、
前記主軸ユニットの破損を防止するための破損防止用トルク制限値と、前記検出トルクとを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて、前記検出トルクが前記破損防止用トルク制限値を超えた場合に、前記ユニット移動部による前記ワークに対する前記主軸ユニットの相対的な移動速度を低減させる速度制御ステップと、
を備えたことを特徴とする主軸ユニット駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232387(P2012−232387A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103535(P2011−103535)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】